特許第6183579号(P6183579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

特許6183579自動車の衝撃吸収部材およびサイドメンバー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6183579
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】自動車の衝撃吸収部材およびサイドメンバー
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/15 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   B62D21/15 B
【請求項の数】11
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-529109(P2017-529109)
(86)(22)【出願日】2017年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2017013566
【審査請求日】2017年5月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】三日月 豊
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 栄志
(72)【発明者】
【氏名】石井 誠也
【審査官】 森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−227104(JP,A)
【文献】 特開平6−135355(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/026028(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車両長さ方向に延び、前記車両長さ方向における両端部が、前記車両長さ方向から見た場合に互いに異なる位置となるようにオフセットした衝撃吸収部材であって、
フランジ部で互いに結合されたハット形状の、アウター部材およびインナー部材を備え、
前記アウター部材および前記インナー部材の、前記車両長さ方向に対する垂直な切断面の重心から前記インナー部材の頂部までのオフセット方向の長さGinと、該切断面の重心から前記アウター部材の頂部までのオフセット方向の長さGoutとの比(Gin/Gout)を重心比と定義したとき、
前記両端部のうち、前記車両長さ方向から見た位置が車外側にオフセットした端部側から、車内側にオフセットした端部側に向かって前記重心比が大きくなる、自動車の衝撃吸収部材。
【請求項2】
自動車の車両長さ方向に延び、前記車両長さ方向における両端部が、前記車両長さ方向から見た場合に互いに異なる位置となるようにオフセットした衝撃吸収部材であって、
フランジ部で互いに結合されたハット形状の、アウター部材およびインナー部材を備え、
前記アウター部材および前記インナー部材の、前記車両長さ方向に対する垂直な切断面において、前記インナー部材のハット高Hinと、前記アウター部材のハット高Houtとの比(Hin/Hout)をハット高比と定義したとき、
前記両端部のうち、前記車両長さ方向から見た位置が車外側にオフセットした端部側から、車内側にオフセットした端部側に向かって前記ハット高比が大きくなる、自動車の衝撃吸収部材。
【請求項3】
フランジ突出方向が鉛直方向であり、前記オフセットの方向が車両幅方向である、請求項1又は2に記載された自動車の衝撃吸収部材。
【請求項4】
前記両端部は、衝突側端部と非衝突側端部からなり、
前記衝突側端部における前記アウター部材の頂部から前記アウター部材と前記インナー部材との結合面までの車両幅方向長さをWout、前記非衝突側端部における前記アウター部材の頂部から前記結合面までの車両幅方向長さをWout’、前記衝突側端部における前記インナー部材の頂部から前記結合面までの車両幅方向長さをWin、前記非衝突側端部における前記インナー部材の頂部から前記結合面までの車両幅方向長さをWin’としたとき、
前記衝突側端部が前記非衝突側端部に対し前記車両幅方向の車外側に位置する場合には、Wout≧Wout’×2.8を満足し、
前記衝突側端部が前記非衝突側端部に対し前記車両幅方向の車内側に位置する場合には、Win≧Win’×2.8を満足する、請求項3に記載された自動車の衝撃吸収部材。
【請求項5】
前記両端部は、衝突側端部と非衝突側端部からなり、
前記非衝突側端部における前記アウター部材の頂部から前記アウター部材と前記インナー部材との結合面までの車両幅方向長さをWout’、前記非衝突側端部における前記インナー部材の頂部から前記結合面までの車両幅方向長さをWin’としたとき、
前記衝突側端部が前記非衝突側端部に対し前記車両幅方向の車外側に位置する場合には、Wout’≧8mmを満足し、
前記衝突側端部が前記非衝突側端部に対し前記車両幅方向の車内側に位置する場合には、Win’≧8mmを満足する、請求項3又は4に記載された自動車の衝撃吸収部材。
【請求項6】
フランジ突出方向が車両幅方向であり、前記オフセットの方向が鉛直方向である、請求項1又は2に記載された自動車の衝撃吸収部材。
【請求項7】
前記両端部は、衝突側端部と非衝突側端部からなり、
前記衝突側端部における前記アウター部材の頂部から前記アウター部材と前記インナー部材との結合面までの鉛直方向長さをVout、前記非衝突側端部における前記アウター部材の頂部から前記結合面までの鉛直方向長さをVout’、前記衝突側端部における前記インナー部材の頂部から前記結合面までの鉛直方向長さをVin、前記非衝突側端部における前記インナー部材の頂部から前記結合面までの鉛直方向長さをVin’としたとき、
前記衝突側端部が前記非衝突側端部に対し前記鉛直方向の車外側に位置する場合には、Vout≧Vout’×2.8を満足し、
前記衝突側端部が前記非衝突側端部に対し前記鉛直方向の車内側に位置する場合には、Vin≧Vin’×2.8を満足する、請求項6に記載された自動車の衝撃吸収部材。
【請求項8】
前記両端部は、衝突側端部と非衝突側端部からなり、
前記非衝突側端部における前記アウター部材の頂部から前記アウター部材と前記インナー部材との結合面までの鉛直方向長さをVout’、前記非衝突側端部における前記インナー部材の頂部から前記結合面までの鉛直方向長さをVin’としたとき、
前記衝突側端部が前記非衝突側端部に対し前記鉛直方向の車外側に位置する場合には、Vout’≧8mmを満足し、
前記衝突側端部が前記非衝突側端部に対し前記鉛直方向の車内側に位置する場合には、Vin’≧8mmを満足する、請求項6又は7に記載された自動車の衝撃吸収部材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載された衝撃吸収部材を有する部材と、キャビン側に接続される、湾曲部を有する変形抑制部材とを備えた、自動車のサイドメンバー。
【請求項10】
フロントサイドメンバーとして用いられる、請求項9に記載された自動車のサイドメンバー。
【請求項11】
リアサイドメンバーとして用いられる、請求項9に記載された自動車のサイドメンバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車やトラック等の自動車の衝撃吸収部材に関する。具体的には、自動車衝突時のエネルギーを吸収するための衝撃吸収部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体の主流はモノコック構造である。モノコック構造は、通常、鋼板がハット部品と呼ばれるフランジを有する部品にプレス成形され、その後、フランジ部同士がスポット溶接等により箱状に組み立てられ、それら複数の箱状の部品が互いに結合された構成になっている。それらの構造部材のうち、図1に示すようなサイドメンバーやサイドシル等の構造部材は、衝突時に衝撃を吸収する性能、いわゆる衝撃吸収性能を有することが必要とされる。
【0003】
例えば自動車のサイドメンバーには、前面衝突時の衝撃を吸収するためのフロントサイドメンバーと、後面衝突時の衝撃を吸収するためのリアサイドメンバーがある。図2(斜視図)および図3(平面図)に示すようにフロントサイドメンバーは、車両のライト側に取り付けられるものと、レフト側に取り付けられるものがある。また、フロントサイドメンバーは、衝撃吸収部材を有するフロントサイドメンバーフロントと、キャビン側に接続される、湾曲部を有するフロントサイドメンバーリアとが互いに結合されることで構成される。フロントサイドメンバーフロントは前面衝突時の衝撃を吸収する衝撃吸収機能を有し、フロントサイドメンバーリアは衝突時に変形がしにくい変形抑制機能を有する。
【0004】
また、図4(斜視図)に示すようにリアサイドメンバーも車両のライト側に取り付けられるものと、レフト側に取り付けられるものがある。リアサイドメンバーは、衝撃吸収部材を有するリアサイドメンバーリアと、キャビン側に接続される、湾曲部を有するリアサイドメンバーフロントとが互いに結合されることで構成される。リアサイドメンバーフロントは衝突時に変形がしにくい変形抑制機能を有し、リアサイドメンバーリアは後面衝突時の衝撃を吸収する衝撃吸収機能を有する。
【0005】
ここで、本明細書における“衝撃吸収部材”とは、衝突時の圧縮力によって座屈し、大きな塑性変形(例えば軸圧潰変形や曲げ変形)をすることにより衝撃を吸収(緩和)する部材を指す。衝撃吸収部材は衝突時に大きく塑性変形するため、衝突時の乗員空間確保の観点から、衝撃吸収部材は乗員搭乗箇所に対し車両長さ方向の車外側および車両幅方向の車外側の少なくともいずれかに配置される。図5(平面図)に例示するフロントサイドメンバーの場合、フロントサスペンション部品の取付部となるフロントサブフレームよりも前方、即ち、車両長さ方向Lの車外側にあるストレート部が衝撃吸収部材である。一方、図6(側面図)に例示するリアサイドメンバーの場合、リアサスペンション部品の取付部となるリアサブフレームよりも後方、即ち、車両長さ方向Lの車外側に位置するストレート部が衝撃吸収部材である。また、サイドメンバーが屈曲部を有する場合、その屈曲部よりも車両長さ方向の車外側に位置するストレート部が衝撃吸収部材である。なお、“ストレート部” の形状は、車両長さ方向Lに対して屈曲しない厳密なストレート形状に限らず、略ストレート形状も含んでいる。また、本明細書における“衝撃吸収部材”には、フロントサイドメンバーの前端部あるいはリアサイドメンバーの後端部に設けられることがあるクラッシュボックスは含まれない。
【0006】
自動車衝突時の安全性を向上させるためには、このような衝撃吸収部材の衝撃吸収性能を高めていくことが求められる。従来の衝撃吸収部材には特許文献1〜3に記載されたものがある。
【0007】
特許文献1には、自動車のフロントサイドメンバーを構成するアウターパネルおよびインナーパネルのそれぞれに複数のビードを半ピッチずらして配置する技術が開示されている。そのようなビードが設けられることで、衝撃荷重の負荷時にそれら複数のビードのそれぞれを起点とした蛇腹状の軸圧潰変形が発生する。特許文献1では、これにより衝撃吸収性能の向上を図っている。
【0008】
特許文献2には、トラック用シャシーオフセットフレームにおいて、衝撃吸収性能を高めるために、衝撃荷重負荷時の折れの起点となる応力集中部位の鉛直方向の反対側の部位に応力集中助長手段を設ける技術が開示されている。特許文献2では、このような応力集中助長手段を設けることで、折れの起点近傍の応力値をほぼ一定にしてZ字の折れを抑制している。特許文献2では、これにより折れの起点間で蛇腹状の軸圧潰変形を発生させて衝撃吸収性能の向上を図っている。
【0009】
特許文献3には、車両長さ方向に延びる前部メンバーと、前部メンバーの後端部から屈曲して後方に延びる中途部メンバーと、中途部メンバーの後端部から後方に延びる後部メンバーで構成されるサイドメンバーが開示されている。特許文献3ではこのサイドメンバーにより、衝突時の衝撃を吸収している。なお、特許文献3のサイドメンバーが取り付けられる車両構造は、フロアパネルの一部が上方に膨出し、その内部空間にエンジンが収容され、エンジンの上方に乗員用シートが配置された、いわゆるキャブオーバー型の車両構造である。このような車両構造の場合、サイドメンバーを構成する前部メンバー、中途部メンバーおよび後部メンバーのうち、中途部メンバーが衝撃吸収部材として大きく塑性変形すると、乗員用シートの下方が変形することになってしまい、乗員空間確保に問題が生じる。このため、特許文献3に記載されたサイドメンバーの衝撃吸収部材は前部メンバーである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−105110号公報
【特許文献2】特開2000−289646号公報
【特許文献3】特開2014−40209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
衝撃吸収部材の形状は車体形状に合わせて造り込まれるが、サイドメンバー等の車両長さ方向に延びる衝撃吸収部材の中には、車両長さ方向から見て衝突側端部の位置と非衝突側端部の位置が互いに異なるものがある。なお、本明細書における“衝突側端部”とは、車両長さ方向に延びる衝撃吸収部材の両端部のうち、相対的に車両長さ方向の車外側に位置している端部のことを指し、“非衝突側端部”とは相対的に車両長さ方向の車内側に位置している端部のことを指す。例えば衝撃吸収部材をフロントサイドメンバーとして用いた場合の“衝突側端部”とは車両長さ方向の前方側の端部である。また、衝撃吸収部材をリアサイドメンバーとして用いた場合の“衝突側端部”は車両長さ方向の後方側の端部である。また、本明細書における“衝突側端部の位置”とは、車両長さ方向Lから見た衝突側端部の重心(図心)の位置を指す。また、“非衝突側端部の位置”とは、車両長さ方向Lから見た非衝突側端部の重心(図心)の位置を指す。
【0012】
図7は、図5のような形状を有するフロントサイドメンバー(レフト側)の衝撃吸収部材を示す平面図である。図7に示す例では、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対し車両幅方向Wの車外側に変位Wだけオフセットしている。この衝撃吸収部材51はハットチャンネル形状の、アウター部材52とインナー部材53を備えている。図8図10に示すように、アウター部材52とインナー部材53は衝突側端部Eから非衝突側端部E’まで断面形状が同一となっており、各断面における車両幅方向Wの長さや鉛直方向Vの長さも等しくなっている。
【0013】
このような衝撃吸収部材51の場合、前面衝突時に車両長さ方向Lの前方から衝突側端部Eに衝撃荷重が入力されると、衝撃吸収部材51には軸圧縮力に加え、車両幅方向Wの車外側に衝撃吸収部材51を折り曲げるような曲げモーメントMが発生する。この曲げモーメントMにより、図11に示すように衝撃吸収部材51の車両幅方向Wの車外側の部分に車両長さ方向Lに沿った圧縮応力が発生する。また、曲げモーメントMにより衝撃吸収部材51の車両幅方向Wの車内側の部分に車両長さ方向Lに沿った引張応力が発生する。その曲げモーメントMは衝突側端部Eに比べ、非衝突側端部E’において高くなる。即ち、衝撃吸収部材51の非衝突側端部E’の車両幅方向Wの車外側の部分には、高い圧縮応力が発生して曲げ変形を誘発する状況にある。加えて、衝撃吸収部材51の車両幅方向Wの車内側の部分には車両長さ方向Lの引張応力が発生することにより、車両幅方向Wの車内側が座屈変形しにくい状況となる。即ち、図7のような衝撃吸収部材51は、衝撃荷重の入力時に曲げ変形が生じやすく、安定的な軸圧潰変形が起こりにくいために、衝撃吸収性能を十分に向上させることができなかった。
【0014】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、衝突側端部と非衝突側端部の車両幅方向における位置が同一である衝撃吸収部材を対象とするものである。このため、図7のような形状の衝撃吸収部材に特許文献1の技術を適用すると、前方からの衝突の初期段階で非衝突側端部に曲げモードの変形が発生してしまい、衝撃吸収部材として狙っていた衝撃吸収性能が得られないおそれがある。
【0015】
一方で、特許文献2に開示された技術は、車両長さ方向から見て衝突側端部と非衝突側端部の位置が互いに異なる衝撃吸収部材に適用し得る。しかしながら、特許文献2の技術は、折れ起点間に蛇腹状の軸圧潰変形を発生させる技術であることから、衝撃吸収性能の向上効果が得られる場合は複数個の折れ起点がある場合に限定される。
【0016】
また、特許文献3の衝撃吸収部材である前部メンバーを図7のような形状の衝撃吸収部材として適用しても、衝撃荷重の入力時において、前部メンバーの車両幅方向の車外側の部分に高い圧縮応力が発生して曲げ変形が誘発されてしまう。加えて、前部メンバーの車両幅方向の車内側の部分には車両長さ方向の引張応力が発生することにより、車両幅方向の車内側が座屈変形しにくい状況となる。このため、衝撃吸収性能を十分に向上させることができない。
【0017】
本発明は、従来技術が有するこのような課題に鑑みてなされたものであり、(a)車両長さ方向に延びる形状であり、かつ、車両長さ方向から見て衝突側端部と非衝突側端部の位置(例えば車両幅方向の位置や鉛直方向の位置)が互いに異なる衝撃吸収部材において、(b)非衝突側端部における曲げモードでの変形を抑制し、(c)衝突側端部における蛇腹状の軸圧潰モードの変形を安定的に発生させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、以下の知見を得た。即ち、上記課題を解決する本発明は、自動車の車両長さ方向に延び、前記車両長さ方向における両端部が、前記車両長さ方向から見た場合に互いに異なる位置となるようにオフセットした衝撃吸収部材であって、フランジ部で互いに結合されたハット形状の、アウター部材およびインナー部材を備え、前記アウター部材および前記インナー部材の、前記車両長さ方向に対する垂直な切断面の重心から前記インナー部材の頂部までのオフセット方向の長さGinと、該切断面の重心から前記アウター部材の頂部までのオフセット方向の長さGoutとの比(Gin/Gout)を重心比と定義したとき、前記両端部のうち、前記車両長さ方向から見た位置が車外側にオフセットした端部側から、車内側にオフセットした端部側に向かって前記重心比が大きくなることを特徴としている。
【0019】
別の観点による本発明は、自動車の車両長さ方向に延び、前記車両長さ方向における両端部が、前記車両長さ方向から見た場合に互いに異なる位置となるようにオフセットした衝撃吸収部材であって、フランジ部で互いに結合されたハット形状の、アウター部材およびインナー部材を備え、前記アウター部材および前記インナー部材の、前記車両長さ方向に対する垂直な切断面において、前記インナー部材のハット高Hinと、前記アウター部材のハット高Houtとの比(Hin/Hout)をハット高比と定義したとき、前記両端部のうち、前記車両長さ方向から見た位置が車外側にオフセットした端部側から、車内側にオフセットした端部側に向かって前記ハット高比が大きくなることを特徴としている。
【0020】
また、別の観点による本発明は、自動車のサイドメンバーであって、上記の衝撃吸収部材を有する部材と、キャビン側に接続される、湾曲部を有する変形抑制部材とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、衝撃吸収部材の衝撃吸収性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】自動車の車両構造の一例を示す斜視図である。
図2】フロントサイドメンバーの形状の一例を示す斜視図である。
図3】フロントサイドメンバーの形状の一例を示す平面図である。
図4】リアサイドメンバーの形状の一例を示す斜視図である。
図5】衝撃吸収部材の定義を説明するために例示されたフロントサイドメンバーの平面図である。
図6】衝撃吸収部材の定義を説明するために例示されたリアサイドメンバーの側面図である。
図7】従来の衝撃吸収部材(フロントレフト側)の概略形状を示す図である。
図8図7中のA−A断面図である。
図9図7中のB−B断面図である。
図10図7中のC−C断面図である。
図11】従来の衝撃吸収部材(フロントレフト側)における衝撃荷重入力時の応力分布図を示す図である。
図12】本発明の第1の実施形態に係る衝撃吸収部材(フロントレフト側)の概略形状を示す平面図である。
図13図12中のA−A断面図である。
図14図12中のB−B断面図である。
図15図12中のC−C断面図である。
図16】本発明の第1の実施形態に係る衝撃吸収部材(フロントレフト側)における衝撃荷重入力時の応力分布図を示す図である。
図17】本発明の第2の実施形態に係る衝撃吸収部材(フロントレフト側)の概略形状を示す平面図である。
図18図17中のA−A断面図である。
図19図17中のB−B断面図である。
図20図17中のC−C断面図である。
図21】本発明の第2の実施形態に係る衝撃吸収部材(フロントレフト側)における衝撃荷重入力時の応力分布図を示す図である。
図22】本発明の第3の実施形態に係るフロントサイドメンバーの概略形状を示す平面図である。
図23】本発明の第3の実施形態に係る衝撃吸収部材(フロントレフト側)の概略形状を示す平面図である。
図24図23中のA−A断面図である。
図25図23中のB−B断面図である。
図26図23中のC−C断面図である。
図27】本発明の第3の実施形態に係る衝撃吸収部材(フロントレフト側)における衝撃荷重入力時の応力分布図を示す図である。
図28】本発明の第4の実施形態に係る衝撃吸収部材(リアレフト側)の概略形状を示す側面図である。
図29図28中のA−A断面図である。
図30図28中のB−B断面図である。
図31図28中のC−C断面図である。
図32】本発明の第4の実施形態に係る衝撃吸収部材(リアレフト側)における衝撃荷重入力時の応力分布図を示す図である。
図33】本発明の第5の実施形態に係る衝撃吸収部材(リアレフト側)の概略形状を示す側面図である。
図34図33中のA−A断面図である。
図35図33中のB−B断面図である。
図36図33中のC−C断面図である。
図37】本発明の第5の実施形態に係る衝撃吸収部材(リアレフト側)における衝撃荷重入力時の応力分布図を示す図である。
図38】衝撃荷重入力シミュレーションにおける本発明の実施例の検証モデルを示す平面図である。
図39】衝撃荷重入力シミュレーションにおける本発明の実施例の検証モデルを示す側面図である。
図40】衝撃荷重入力シミュレーションにおける比較例の検証モデルを示す平面図である。
図41】衝撃荷重入力シミュレーションにおける比較例の検証モデルを示す側面図である。
図42】衝撃荷重入力シミュレーションの解析条件を示す図である。
図43】シミュレーション後の実施例の衝撃吸収部材の変形状態を示す図である。
図44】シミュレーション後の比較例の衝撃吸収部材の変形状態を示す図である。
図45】剛体壁の変位と衝撃吸収部材への入力荷重との関係を示す図である。
図46】剛体壁の変位と衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
<第1の実施形態>
第1の実施形態で例示する衝撃吸収部材は、図3のような形状を有するフロントサイドメンバー(レフト側)の衝撃吸収部材である。図12に示すように第1の実施形態における衝撃吸収部材1は、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対し、車両幅方向Wの車外側に変位Wだけオフセットした形状となっている。なお、図12ではフロントレフト側の衝撃吸収部材1を例示しているが、フロントライト側の衝撃吸収部材としては、例えばフロントレフト側の衝撃吸収部材1を車両長さ方向Lから見て左右反転した形状のものが適用される。
【0025】
衝撃吸収部材1はアウター部材2とインナー部材3からなる。図13図15に示すようにアウター部材2とインナー部材3の両部材は、車両長さ方向Lに対し垂直な切断面の形状が、いわゆるハット形状を有しており、鉛直方向Vに突出するフランジ部2a、3aが形成されている。アウター部材2とインナー部材3は、互いのフランジ部2a、3aの面同士が合わされて結合される。これにより衝撃吸収部材1は車両長さ方向Lから見て閉断面形状となる。また、図12に示すようにアウター部材2とインナー部材3は、フランジ部2a、3aが突出する方向(第1の実施形態では鉛直方向V)から見たときに、アウター部材2とインナー部材3の結合面Jが直線状となるように形成されている。以降の説明では、アウター部材2とインナー部材3の結合面(ここでは、フランジ部2aとフランジ部3aとの結合面)を単に“結合面J”と称する場合もある。なお、アウター部材2のフランジ部2aとインナー部材3のフランジ部3aの結合方法としては通常スポット溶接が用いられるが、レーザー溶接やアーク溶接、シーム溶接等の他の結合方法を用いても良い。
【0026】
図13に示すように衝突側端部Eの車両長さ方向Lから見た断面においては、アウター部材2の頂部2bから結合面Jまでの車両幅方向長さWout(ハット高Houtとも称す)が、インナー部材3の頂部3bから結合面Jまでの車両幅方向長さWin(ハット高Hinとも称す)よりも長くなっている。図13図15に示すように、アウター部材2の頂部2bから結合面Jまでの車両幅方向長さWoutは、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に近づくにつれて短くなっている。一方で、インナー部材3の頂部3bから結合面Jまでの車両幅方向長さWinは、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に近づくにつれて長くなっている。そして、図15に示すように非衝突側端部E’においては、アウター部材2の頂部2bから結合面Jまでの車両幅方向長さWout’が、インナー部材3の頂部3bから結合面Jまでの車両幅方向長さWin’よりも短くなっている。なお、“アウター部材の頂部”とは車両長さ方向Lから見て、アウター部材2の、フランジ突出方向(例えば第1の実施形態では鉛直方向V)に対する垂直な方向(例えば第1の実施形態では車両幅方向W)におけるフランジ部2aから最も遠い部位のことを指す。同様に“インナー部材の頂部”とは車両長さ方向Lから見て、インナー部材3の、フランジ突出方向に対する垂直な方向におけるフランジ部3aから最も遠い部位のことを指す。
【0027】
本一例の場合、インナー部材3のハット高Hinと、アウター部材2のハット高Houtとの比(以下、ハット高比Hin/Houtと称す)は、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に向かうに従い漸増する。衝突側端部Eから非衝突側端部E’に向かう方向に対するハット高比Hin/Houtの増加率は任意に設定できる。例えば、ハット高Hin、Houtの和を一定、ハット高比Hin/Houtの増加率を一定にする。この場合、フランジが突出する方向から見たフランジの形状(結合面J)は、直線となり、シンプルな形状のアウター部材2及びインナー部材3により衝撃吸収部材1を形成できる。なお、“ハット高比Hin/Houtの増加率”は、衝突側端部Eにおけるハット高比Hin/HoutをA、非衝突側端部E’におけるハット高比Hin/HoutをB、衝撃吸収部材1の車両長さ方向Lの長さをL1としたときに、(B−A)/L1で算出される。ハット高比(Hin/Hout)の増加率は0.033以上であることが好ましい。これにより衝撃吸収部材1の衝撃吸収性能を向上させることができる。
【0028】
このような形状の衝撃吸収部材1の場合、車両長さ方向Lに垂直な切断面の、非衝突側端部E’における重心Gは、衝突側端部Eにおける重心Gに対し、車両幅方向Wにおける衝撃吸収部材1内のフランジ部2a、3aの位置の変化に伴い、車両幅方向Wの車外側に移動することになる。図13図15に示すように衝撃吸収部材1の重心Gの位置は、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に近づくにつれ、衝突側端部Eの重心Gの位置から車両幅方向Wの車外側に移動していく。なお、図14および図15においては、図13に示す衝突側端部Eにおける重心Gの位置を点線で示している。
【0029】
第1の実施形態の衝撃吸収部材1には、前面衝突時において図12に示すような、鉛直方向Vの車内側から見て反時計回りの曲げモーメントMが生じる。一方、第1の実施形態の衝撃吸収部材1は、前述の通り、衝突側端部Eから非衝突側端部E’にかけて重心の位置が車両幅方向Wの車外側に移動していくような形状を有している。これにより、曲げモーメントMが、車両長さ方向Lに対して一定であると仮定した場合、図16に示す応力分布図のように曲げモーメントMによって衝突側端部Eで発生する衝撃吸収部材1の車両幅方向Wの車内側の引張応力は、非衝突側端部E’で発生する引張応力に比べて小さくなる。即ち、図8図10のような衝突側端部Eから非衝突側端部E’にかけて車両長さ方向Lに垂直な切断面の重心の位置が変わらず、図11のような応力分布となる従来の衝撃吸収部材51に比べて、衝突側端部Eにおける衝撃吸収部材1の車両幅方向Wの車内側の引張応力が小さくなる。これにより衝突側端部Eにおける車両幅方向Wの車内側が座屈しにくい状況が改善され、軸圧潰変形が誘発されやすくなる。さらに、曲げモーメントMによって非衝突側端部E’で発生する衝撃吸収部材1の車両幅方向Wの車外側の圧縮応力は、衝突側端部Eで発生する圧縮応力に比べて小さくなる。これにより非衝突側端部E’における衝撃吸収部材1の車両幅方向Wの車外側は、非衝突側端部E’における従来の衝撃吸収部材51の車両幅方向Wの車外側よりも圧縮されにくい状況になり、非衝突側端部E’における曲げ変形が抑制されやすくなる。なお、図16中の1点鎖線は、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に至る、車両長さ方向Lに垂直な切断面の重心を結んだ中立軸Nである。
【0030】
以上の通り、衝撃吸収部材1の衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対しオフセット方向(第1の実施形態では車両幅方向W)の車外側に位置する場合、第1の実施形態のように車両長さ方向Lに垂直な切断面における重心の位置が、衝突側端部Eから非衝突側端部E’にかけて車両幅方向Wの車外側に移動するような構成の衝撃吸収部材1であれば、衝突側端部Eの軸圧潰変形を安定的に発生させることができると共に、非衝突側端部E’の曲げ変形を抑制することができる。換言すると、衝突側端部Eにおける衝撃吸収部材1の車両幅方向Wの車内側の引張応力と、非衝突側端部E’における衝撃吸収部材1の車両幅方向Wの車外側の圧縮応力の差を小さくすることで、衝突側端部Eの軸圧潰変形を安定的に発生させることができると共に、非衝突側端部E’の曲げ変形を抑制することができる。
【0031】
なお、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対し車両幅方向Wの車外側に位置する場合の、衝突側端部Eにおけるアウター部材2の頂部2bから結合面Jまでの車両幅方向長さWoutと、非衝突側端部E’におけるアウター部材2の頂部2bから結合面Jまでの車両幅方向長さWout’は、Wout≧Wout’×2.8を満たすことが好ましい。これにより、衝突側端部Eの車両幅方向Wの車内側における車両長さ方向Lの引張応力と非衝突側端部E’の車両幅方向Wの車外側における車両長さ方向Lの圧縮応力の差を十分に小さくすることができ、Wout<Wout’×2.8となる場合に比べて衝撃吸収性能を向上させることができる。また、WoutとWout’のより好ましい関係は、Wout≧Wout’×3である。
【0032】
また、Wout’は、Wout’≧8mmを満たすことが好ましい。これにより、アウター部材2の曲げ剛性,強度を大きくすることができる。その結果、Wout’<8mmの場合に比べて非衝突側端部E’の曲げ変形を抑制することができ、衝撃吸収性能を向上させることができる。Wout’のより好ましい範囲は、Wout’≧10mmである。
【0033】
そして、Wout≧Wout’×3を満たし、かつ、Wout’≧10mmを満たす衝撃吸収部材1であれば衝撃吸収性能を更に向上させることができる。
【0034】
また、衝撃吸収性能の向上の観点からは、衝撃吸収部材1の車両長さ方向Lの長さL1が300mm≦L1≦650mmの範囲であって、かつ、衝突側端部Eと非衝突側端部E’の車両幅方向Wのオフセット量WとL1の比が0.017≦W/L1≦0.087を満たすことが好ましい。L1<300mm、またはW/L1<0.017の範囲では非衝突側端部E’を曲げるモーメントを抑える効果が小さく、非衝突側端部E’の曲げ変形抑制効果が小さい。また、650mm<L1、または0.087<W/L1の範囲では、衝突側端部Eを曲げるモーメントが過大であり、曲げ変形の抑制効果が小さくなる。なお、衝撃吸収部材1の車両長さ方向Lの長さL1のより好ましい数値範囲は400mm≦L1≦600mmである。また、衝突側端部Eと非衝突側端部E’の車両幅方向Wのオフセット量WとL1の比のより好ましい数値範囲は0.035≦W/L1≦0.070である。
【0035】
<第2の実施形態>
第2の実施形態の衝撃吸収部材も第1の実施形態と同様にフロントサイドメンバー(レフト側)の衝撃吸収部材である。また、図17図20に示すように第2の実施形態の衝撃吸収部材1は、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対し、車両幅方向Wの車外側に変位Wだけオフセットしているという点で第1の実施形態と同様である。一方、第2の実施形態では、衝撃吸収部材1の形状が第1の実施形態のものとは異なっている。具体的に説明すると、図12図15に示す第1の実施形態ではインナー部材3が矩形断面部材にフランジ部3aが形成されるようなハット形状であったところ、第2の実施形態では、インナー部材3が多角形断面部材にフランジ部3aが形成されるようなハット形状となっている。
【0036】
図18図20に示すように第2の実施形態の衝撃吸収部材1も第1の実施形態と同様、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に近づくにつれ、アウター部材2の車両幅方向長さが短くなり、インナー部材3の車両幅方向長さが長くなっている。
【0037】
このため、第2の実施形態の衝撃吸収部材1の場合も、非衝突側端部E’における重心が、衝突側端部Eにおける重心に対し、車両幅方向Wにおける衝撃吸収部材1内のフランジ部2a、3aの位置の変化に伴い、車両幅方向Wの車外側に移動する。これにより、図18図20にも示すように衝撃吸収部材1の重心Gの位置は、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に近づくにつれ、衝突側端部Eの重心Gの位置から車両幅方向Wの車外側に移動していく。なお、図19および図20においては、図18に示す衝突側端部Eにおける重心Gの位置を点線で示している。
【0038】
衝突側端部Eの重心と非衝突側端部E’の重心がこのような位置関係となることで、曲げモーメントMが、車両長さ方向Lに対して一定であると仮定した場合、図21に示す応力分布図のように曲げモーメントMによって衝突側端部Eで発生する車両幅方向Wの車内側の引張応力は、非衝突側端部E’で発生する引張応力に比べて小さくなる。さらに、曲げモーメントMによって非衝突側端部E’で発生する車両幅方向Wの車外側の圧縮応力は、衝突側端部Eで発生する圧縮応力に比べて小さくなる。したがって、第2の実施形態の衝撃吸収部材1も第1の実施形態と同様に、非衝突側端部E’の曲げ変形を抑制しつつ、衝突側端部Eの軸圧潰変形を安定的に発生させることができる。これにより、衝撃吸収性能を高めることが可能となる。なお、図21中の1点鎖線は、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に至る、車両長さ方向Lに垂直な切断面の重心を結んだ中立軸Nである。
【0039】
以上の通り、衝撃吸収部材1の衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対しオフセット方向(第2の実施形態では車両幅方向W)の車外側に位置する場合、第2の実施形態のように車両長さ方向Lに垂直な切断面における重心の位置が、衝突側端部Eから非衝突側端部E’にかけて車両幅方向Wの車外側に移動するような構成の衝撃吸収部材1であれば、衝突側端部Eの軸圧潰変形を安定的に発生させることができると共に、非衝突側端部E’の曲げ変形を抑制することができる。換言すると、衝突側端部Eにおける衝撃吸収部材1の車両幅方向Wの車内側の引張応力と、非衝突側端部E’における衝撃吸収部材1の車両幅方向Wの車外側の圧縮応力の差を小さくすることで、衝突側端部Eの軸圧潰変形を安定的に発生させることができると共に、非衝突側端部E’の曲げ変形を抑制することができる。
【0040】
<第3の実施形態>
第3の実施形態で例示する衝撃吸収部材は、図22のような形状を有するフロントサイドメンバー(レフト側)の衝撃吸収部材である。図23に示すように第3の実施形態における衝撃吸収部材1は、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対し、車両幅方向Wの車内側に変位Wだけオフセットした形状となっている。なお、図23ではフロントレフト側の衝撃吸収部材1を例示しているが、フロントライト側の衝撃吸収部材としては、例えばフロントレフト側の衝撃吸収部材1を車両長さ方向Lから見て左右反転した形状のものが適用される。
【0041】
衝撃吸収部材1はアウター部材2とインナー部材3からなる。図24図26に示すようにアウター部材2とインナー部材3の両部材は、第1の実施形態と同様に車両長さ方向Lに対し垂直な切断面の形状が、いわゆるハット形状を有しており、鉛直方向Vに突出するフランジ部2a、3aが形成されている。アウター部材2とインナー部材3は、互いのフランジ部2a、3aの面同士が合わされて結合される。また、図23に示すようにアウター部材2とインナー部材3は、フランジ部2a、3aが突出する方向(第2の実施形態では鉛直方向V)から見たときに結合面Jが直線状となるように形成されている。
【0042】
図24に示すように、第3の実施形態では、衝突側端部Eの車両長さ方向Lから見た断面において、アウター部材2の頂部2bから結合面Jまでの車両幅方向長さWout(ハット高Houtとも称す)が、インナー部材3の頂部3bから結合面Jまでの車両幅方向長さWin(ハット高Hinとも称す)よりも短くなっている。図24図26に示すようにアウター部材2の頂部2bから結合面Jまでの車両幅方向長さは、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に近づくにつれて長くなっている。一方で、インナー部材3の頂部3bから結合面Jまでの車両幅方向長さは、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に近づくにつれて短くなっている。そして、図26に示すように非衝突側端部E’においては、アウター部材2の頂部2bから結合面Jまでの車両幅方向長さWout’が、インナー部材3の頂部3bから結合面Jまでの車両幅方向長さWin’よりも長くなっている。
【0043】
第3の実施形態の場合、前面衝突時に衝撃吸収部材1に生じる曲げモーメントMは、図12に示す第1の実施形態の衝撃吸収部材1に生じる曲げモーメントMとは逆回りのモーメントである。このため、第3の実施形態の衝撃吸収部材1は第1の実施形態の場合と異なり、車両幅方向Wの車内側に曲がっていく。
【0044】
一方、第3の実施形態の場合、非衝突側端部E’における重心は、衝突側端部Eにおける重心に対し、車両幅方向Wにおける衝撃吸収部材1内のフランジ部2a、3aの位置の変化に伴い、車両幅方向Wの車内側に移動することになる。このため、図24図26にも示すように衝撃吸収部材1の重心Gの位置は、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に近づくにつれ、衝突側端部Eの重心Gの位置から車両幅方向Wの車内側に移動していく。なお、図25および図26においては、図24に示す衝突側端部Eにおける重心Gの位置を点線で示している。
【0045】
衝突側端部Eの重心と非衝突側端部E’の重心がこのような位置関係となることで、曲げモーメントMが、車両長さ方向Lに対して一定であると仮定した場合、図27に示す応力分布図のように曲げモーメントMによって衝突側端部Eで車両幅方向Wの車外側に発生する引張応力は、非衝突側端部E’で発生する引張応力に比べて小さくなる。さらに、曲げモーメントMによって非衝突側端部E’で車両幅方向Wの車内側に発生する圧縮応力は、衝突側端部Eで発生する圧縮応力に比べて小さくなる。
【0046】
その結果、図8図10のような衝突側端部Eから非衝突側端部E’にかけて車両長さ方向Lに垂直な切断面の重心の位置が変わらず、図11のような応力分布となる従来の衝撃吸収部材に比べて、非衝突側端部E’における曲げ変形の誘発を抑制することが可能になると共に、衝突側端部Eにおける車両幅方向Wの車外側が座屈しにくい状況も改善することができる。即ち、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対しオフセット方向(第3の実施形態では車両幅方向W)の車内側に位置する場合、第3の実施形態のような衝撃吸収部材1であれば、非衝突側端部E’の曲げ変形を抑制しつつ、衝突側端部Eの軸圧潰変形を安定的に発生させることができる。これにより、衝撃吸収性能を高めることが可能となる。なお、図27中の1点鎖線は、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に至る、車両長さ方向Lに垂直な切断面の重心を結んだ中立軸Nである。
【0047】
以上の通り、衝撃吸収部材1の衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対しオフセット方向(第3の実施形態では車両幅方向W)の車内側に位置する場合、第3の実施形態のように車両長さ方向Lに垂直な切断面における重心の位置が、衝突側端部Eから非衝突側端部E’にかけて車両幅方向Wの車内側に移動するような構成の衝撃吸収部材1であれば、衝突側端部Eの軸圧潰変形を安定的に発生させることができると共に、非衝突側端部E’の曲げ変形を抑制することができる。換言すると、衝突側端部Eにおける衝撃吸収部材1の車両幅方向Wの車外側の引張応力と、非衝突側端部E’における衝撃吸収部材1の車両幅方向Wの車内側の圧縮応力の差を小さくすることで、衝突側端部Eの軸圧潰変形を安定的に発生させることができると共に、非衝突側端部E’の曲げ変形を抑制することができる。
【0048】
なお、衝撃吸収部材1の衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対し車両幅方向Wの車内側に位置する場合の、衝突側端部Eにおけるインナー部材3の頂部3bから結合面Jまでの車両幅方向長さWinと、非衝突側端部E’におけるインナー部材3の頂部3bから結合面Jまでの車両幅方向長さWin’は、Win≧Win’×2.8を満たすことが好ましい。これにより、衝突側端部Eの車両幅方向Wの車外側における車両長さ方向Lの引張応力と非衝突側端部E’の車両幅方向Wの車内側における車両長さ方向Lの圧縮応力の差を十分に小さくすることができ、Win<Win’×2.8の場合に比べて衝撃吸収性能を向上させることができる。また、WinとWin’のより好ましい関係は、Win≧Win’×3 である。
【0049】
また、Win’は、Win’≧8mmを満たすことが好ましい。これにより、インナー部材3の曲げ剛性,強度を大きくすることができる。その結果、Win’<8mmの場合に比べて非衝突側端部E’の曲げ変形を抑制することができ、衝撃吸収性能を向上させることができる。Win’のより好ましい範囲は、Win’≧10mmである。
【0050】
そして、Win≧Win’×3を満たし、かつ、Win’≧10mmを満たす衝撃吸収部材1であれば衝撃吸収性能を更に向上させることができる。
【0051】
また、衝撃吸収性能の向上の観点からは、衝撃吸収部材1の車両長さ方向Lの長さL1が300mm≦L1≦650mmの範囲であって、かつ、衝突側端部Eと非衝突側端部E’の車両幅方向Wのオフセット量WとL1の比が0.017≦W/L1≦0.087を満たすことが好ましい。L1<300mm、またはW/L1<0.017の範囲では非衝突側端部E’を曲げるモーメントを抑える効果が小さく、非衝突側端部E’の曲げ変形抑制効果が小さい。また、650mm<L1、または0.087<W/L1の範囲では、衝突側端部Eを曲げるモーメントが過大であり、曲げ変形の抑制効果が小さくなる。なお、衝撃吸収部材1の車両長さ方向Lの長さL1のより好ましい数値範囲は400mm≦L1≦600mmである。また、衝突側端部Eと非衝突側端部E’の車両幅方向Wのオフセット量WとL1の比のより好ましい数値範囲は0.035≦W/L1≦0.070である。
【0052】
<第4の実施形態>
第1〜第3の実施形態ではフロントサイドメンバーの衝撃吸収部材を例に挙げて本発明の実施形態について説明したが、第4の実施形態ではリアサイドメンバーの衝撃吸収部材を例に挙げて本発明の実施形態について説明する。第4の実施形態で例示する衝撃吸収部材は、図4のような形状を有するリアサイドメンバー(レフト側)の衝撃吸収部材である。図28に示すように第4の実施形態における衝撃吸収部材1は、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対し、鉛直方向Vの車内側に変位Vだけオフセットした形状となっている。なお、図28ではリアレフト側の衝撃吸収部材1を例示しているが、リアライト側の衝撃吸収部材としては例えばリアレフト側の衝撃吸収部材1を車両長さ方向Lから見て左右反転した形状のものが適用される。
【0053】
衝撃吸収部材1はアウター部材2とインナー部材3からなる。図29図31に示すようにアウター部材2とインナー部材3の両部材は、車両長さ方向Lに対し垂直な切断面の形状が、いわゆるハット形状を有しており、車両幅方向Wに突出するフランジ部2a、3aが形成されている。アウター部材2とインナー部材3は、互いのフランジ部2a、3aの面同士が合わされて結合される。これにより衝撃吸収部材1は車両長さ方向Lから見て閉断面形状となる。また、アウター部材2とインナー部材3は、図28に示すようにフランジ部2a、3aが突出する方向(第4の実施形態では車両幅方向W)から見たときに結合面Jが直線状となるように形成されている。
【0054】
図29に示すように衝突側端部Eの車両長さ方向Lから見た断面においては、アウター部材2の頂部2bから結合面Jまでの鉛直方向長さVout(ハット高Houtとも称す)が、インナー部材3の頂部3bから結合面Jまでの鉛直方向長さVin(ハット高Hinとも称す)よりも短くなっている。図29図31に示すように、アウター部材2の頂部2bから結合面Jまでの鉛直方向長さは、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に近づくにつれて長くなっている。一方で、インナー部材3の頂部3bから結合面Jまでの鉛直方向長さは、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に近づくにつれて短くなっている。そして、図31に示すように非衝突側端部E’においては、アウター部材2の頂部2bから結合面Jまでの鉛直方向長さVout’が、インナー部材3の頂部3bから結合面Jまでの鉛直方向長さVin’よりも長くなっている。
【0055】
このような形状の衝撃吸収部材1の場合、非衝突側端部E’における重心は、衝突側端部Eにおける重心に対し、鉛直方向Vにおける衝撃吸収部材1内のフランジ部2a、3aの位置の変化に伴い、鉛直方向Vの車内側に移動することになる。このため、図29図31にも示すように衝撃吸収部材1の重心Gの位置は、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に近づくにつれ、衝突側端部Eの重心Gの位置から鉛直方向Vの車内側に移動していく。なお、図30および図31においては、図29に示す衝突側端部Eにおける重心Gの位置を点線で示している。
【0056】
第4の実施形態の衝撃吸収部材1には、後面衝突時において図28に示すような、車両幅方向Wの車外側から見て反時計回りの曲げモーメントMが生じる。一方で、第4の実施形態の衝撃吸収部材1は、前述の通り、衝突側端部Eから非衝突側端部E’にかけて重心の位置が鉛直方向Vの車内側に移動していくような形状を有している。これにより、曲げモーメントMが、車両長さ方向Lに対して一定であると仮定した場合、図32に示す応力分布図のように曲げモーメントMによって衝突側端部Eで発生する衝撃吸収部材1の鉛直方向Vの車外側の引張応力は、非衝突側端部E’で発生する引張応力に比べて小さくなる。これに加え、曲げモーメントMによって非衝突側端部E’で発生する鉛直方向Vの車内側の圧縮応力は、衝突側端部Eで発生する圧縮応力に比べて小さくなる。
【0057】
その結果、図8図10のような衝突側端部Eから非衝突側端部E’にかけて車両長さ方向Lに垂直な切断面の重心の位置が変わらず、図11のような応力分布となる従来の衝撃吸収部材に比べて、非衝突側端部E’における曲げ変形の誘発を抑制することが可能になると共に、衝突側端部Eにおける鉛直方向Vの車外側が座屈しにくい状況を改善することができる。即ち、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対しオフセット方向(第4の実施形態では鉛直方向V)の車内側に位置する場合、第4の実施形態のような衝撃吸収部材1であれば、非衝突側端部E’の曲げ変形を抑制しつつ、衝突側端部Eの軸圧潰変形を安定的に発生させることができる。これにより、衝撃吸収性能を高めることが可能となる。なお、図32中の1点鎖線は、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に至る、車両長さ方向Lに垂直な切断面の重心を結んだ中立軸Nである。
【0058】
以上の通り、衝撃吸収部材1の衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対しオフセット方向(第4の実施形態では鉛直方向V)の車内側に位置する場合、第4の実施形態のように車両長さ方向Lに垂直な切断面における重心の位置が、衝突側端部Eから非衝突側端部E’にかけて鉛直方向Vの車内側に移動するような構成の衝撃吸収部材1であれば、衝突側端部Eの軸圧潰変形を安定的に発生させることができると共に、非衝突側端部E’の曲げ変形を抑制することができる。換言すると、衝突側端部Eにおける衝撃吸収部材1の鉛直方向Vの車外側の引張応力と、非衝突側端部E’における衝撃吸収部材1の鉛直方向Vの車内側の圧縮応力の差を小さくすることで、衝突側端部Eの軸圧潰変形を安定的に発生させることができると共に、非衝突側端部E’の曲げ変形を抑制することができる。
【0059】
なお、衝撃吸収部材1の衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対し鉛直方向Vの車内側に位置する場合の、衝突側端部Eにおけるインナー部材3の頂部3bから結合面Jまでの鉛直方向長さVinと、非衝突側端部E’におけるインナー部材3の頂部3bから結合面Jまでの鉛直方向長さVin’は、Vin≧Vin’×2.8を満たすことが好ましい。これにより、衝突側端部Eの鉛直方向Vの車外側における車両長さ方向Lの引張応力と非衝突側端部E’の鉛直方向Vの車内側における車両長さ方向Lの圧縮応力の差を十分に小さくすることができ、Vin<Vin’×2.8の場合に比べて衝撃吸収性能を向上させることができる。また、VinとVin’のより好ましい関係は、Vin≧Vin’×3である。
【0060】
また、Vin’は、Vin’≧8mmを満たすことが好ましい。これにより、インナー部材3の曲げ剛性,強度を大きくすることができる。その結果、Vin’<8mmの場合に比べて非衝突側端部E’の曲げ変形を抑制することができ、衝撃吸収性能を向上させることができる。Vin’のより好ましい範囲は、Vin’≧10mmである。
【0061】
そして、Vin≧Vin’×3を満たし、かつ、Vin’≧10mmを満たす衝撃吸収部材1であれば衝撃吸収性能を更に向上させることができる。
【0062】
また、衝撃吸収性能の向上の観点からは、衝撃吸収部材1の車両長さ方向Lの長さL1が300mm≦L1≦650mmの範囲であって、かつ、衝突側端部Eと非衝突側端部E’の鉛直方向Vのオフセット量VとL1の比が0.017≦V/L1≦0.087を満たすことが好ましい。L1<300mm、またはV/L1<0.017の範囲では非衝突側端部E’を曲げるモーメントを抑える効果が小さく、非衝突側端部E’の曲げ変形抑制効果が小さい。また、650mm<L1、または0.087<V/L1の範囲では、衝突側端部Eを曲げるモーメントが過大であり、曲げ変形の抑制効果が小さくなる。なお、衝撃吸収部材1の車両長さ方向Lの長さL1のより好ましい数値範囲は400mm≦L1≦600mmである。また、衝突側端部Eと非衝突側端部E’の鉛直方向Vのオフセット量VとL1の比のより好ましい数値範囲は0.035≦V/L1≦0.070である。
【0063】
<第5の実施形態>
第5の実施形態の衝撃吸収部材も第4の実施形態と同様にリアサイドメンバー(レフト側)の衝撃吸収部材である。ただし、第5の実施形態の衝撃吸収部材は、衝突側端部Eと非衝突側端部E’との位置関係が第4の実施形態の衝撃吸収部材と逆になっている。即ち、第5の実施形態の衝撃吸収部材は、図33に示すように衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対し、鉛直方向Vの車外側に変位Vだけオフセットした形状となっている。
【0064】
衝撃吸収部材1はアウター部材2とインナー部材3からなる。図34図36に示すようにアウター部材2とインナー部材3の両部材は、第4の実施形態と同様に車両長さ方向Lに対し垂直な切断面の形状が、いわゆるハット形状を有しており、車両幅方向Wに突出するフランジ部2a、3aが形成されている。アウター部材2とインナー部材3は、互いのフランジ部2a、3aの面同士が合わされて結合される。また、図33に示すようにアウター部材2とインナー部材3は、フランジ部2a、3aが突出する方向(第5の実施形態では車両幅方向W)から見たときに結合面Jが直線状となるように形成されている。
【0065】
図34に示すように第5の実施形態では、衝突側端部Eの車両長さ方向Lから見た断面において、アウター部材2の頂部2bから結合面Jまでの鉛直方向長さVout(ハット高Houtとも称す)が、インナー部材3の頂部3bから結合面Jまでの鉛直方向長さVin(ハット高Hinとも称す)よりも長くなっている。図34図36に示すように、アウター部材2の頂部2bから結合面Jまでの鉛直方向長さは、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に近づくにつれて短くなっている。一方で、インナー部材3の頂部3bから結合面Jまでの鉛直方向長さは、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に近づくにつれて長くなっている。そして、図36に示すように非衝突側端部E’においては、アウター部材2の頂部2bから結合面Jまでの鉛直方向長さVout’が、インナー部材3の頂部3bから結合面Jまでの鉛直方向長さVin’よりも短くなっている。
【0066】
第5の実施形態の場合、後面衝突時に衝撃吸収部材1に生じる曲げモーメントMは、図28に示す第4の実施形態の衝撃吸収部材1に生じる曲げモーメントMとは逆回りのモーメントである。このため、第5の実施形態の衝撃吸収部材1は第4の実施形態の場合と異なり、鉛直方向Vの車外側に曲がっていく。
【0067】
一方、第5の実施形態の衝撃吸収部材1の場合、非衝突側端部E’における重心は、衝突側端部Eにおける重心に対し、鉛直方向Vにおける衝撃吸収部材1内のフランジ部2a、3aの位置の変化に伴い、鉛直方向Vの車外側に移動することになる。このため、図34図36にも示すように衝撃吸収部材1の重心Gの位置は、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に近づくにつれ、衝突側端部Eの重心Gの位置から鉛直方向Vの車外側に移動していく。なお、図35および図36においては、図34に示す衝突側端部Eにおける重心Gの位置を点線で示している。
【0068】
衝突側端部Eの重心と非衝突側端部E’の重心がこのような位置関係となることで、曲げモーメントMが、車両長さ方向Lに対して一定であると仮定した場合、図37に示す応力分布図のように曲げモーメントMによって衝突側端部Eで発生する鉛直方向Vの車内側の引張応力は、非衝突側端部E’で発生する引張応力に比べて小さくなる。一方で、曲げモーメントMによって非衝突側端部E’で発生する鉛直方向Vの車外側の圧縮応力は、衝突側端部E側で発生する圧縮応力に比べて小さくなる。なお、図37中の1点鎖線は、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に至る、車両長さ方向Lに垂直な切断面の重心を結んだ中立軸Nである。
【0069】
その結果、図8図10のような衝突側端部Eから非衝突側端部E’にかけて車両長さ方向Lに垂直な切断面の重心の位置が変わらず、図11のような応力分布となる従来の衝撃吸収部材に比べて、非衝突側端部E’における曲げ変形の誘発を抑制することが可能になると共に、衝突側端部Eにおける鉛直方向Vの車外側が座屈しにくい状況を改善することができる。即ち、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対してオフセット方向(第5の実施形態では鉛直方向V)の車外側に位置する場合、第5の実施形態のような衝撃吸収部材1であれば、非衝突側端部E’の曲げ変形を抑制しつつ、衝突側端部Eの軸圧潰変形を安定的に発生させることができる。これにより、衝撃吸収性能を高めることが可能となる。
【0070】
以上の通り、衝撃吸収部材1の衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対しオフセット方向(第5の実施形態では鉛直方向V)の車外側に位置する場合、第5の実施形態のように車両長さ方向Lに垂直な切断面における重心の位置が、衝突側端部Eから非衝突側端部E’にかけて鉛直方向Vの車外側に移動するような構成の衝撃吸収部材1であれば、衝突側端部Eの軸圧潰変形を安定的に発生させることができると共に、非衝突側端部E’の曲げ変形を抑制することができる。換言すると、衝突側端部Eにおける衝撃吸収部材1の鉛直方向Vの車内側の引張応力と、非衝突側端部E’における衝撃吸収部材1の鉛直方向Vの車外側の圧縮応力の差を小さくすることで、衝突側端部Eの軸圧潰変形を安定的に発生させることができると共に、非衝突側端部E’の曲げ変形を抑制することができる。
【0071】
なお、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対し鉛直方向Vの車外側に位置する場合の、衝突側端部Eにおけるアウター部材2の頂部2bから結合面Jまでの鉛直方向長さVoutと、非衝突側端部E’におけるアウター部材2の頂部2bから結合面Jまでの鉛直方向長さVout’は、Vout≧Vout’×2.8を満たすことが好ましい。これにより、衝突側端部Eの鉛直方向Vの車内側における車両長さ方向Lの引張応力と非衝突側端部E’の鉛直方向Vの車外側における車両長さ方向Lの圧縮応力の差を十分に小さくすることができ、Vout<Vout’×2.8となる場合に比べて衝撃吸収性能を向上させることができる。また、VoutとVout’のより好ましい関係は、Vout≧Vout’×3である。
【0072】
また、Vout’は、Vout’≧8mmを満たすことが好ましい。これにより、アウター部材2の曲げ剛性,強度を大きくすることができる。その結果、Vout’<8mmの場合に比べて非衝突側端部E’の曲げ変形を抑制することができ、衝撃吸収性能を向上させることができる。Vout’のより好ましい範囲は、Vout’≧10mmである。
【0073】
そして、Vout≧Vout’×3を満たし、かつ、Vout’≧10mmを満たす衝撃吸収部材1であれば衝撃吸収性能を更に向上させることができる。
【0074】
また、衝撃吸収性能の向上の観点からは、衝撃吸収部材1の車両長さ方向Lの長さL1が300mm≦L1≦650mmの範囲であって、かつ、衝突側端部Eと非衝突側端部E’の鉛直方向Vのオフセット量VとL1の比が0.017≦V/L1≦0.087を満たすことが好ましい。L1<300mm、またはV/L1<0.017の範囲では非衝突側端部E’を曲げるモーメントを抑える効果が小さく、非衝突側端部E’の曲げ変形抑制効果が小さい。また、650mm<L1、または0.087<V/L1の範囲では、衝突側端部Eを曲げるモーメントが過大であり、曲げ変形の抑制効果が小さくなる。なお、衝撃吸収部材1の車両長さ方向Lの長さL1のより好ましい数値範囲は400mm≦L1≦600mmである。また、衝突側端部Eと非衝突側端部E’の鉛直方向Vのオフセット量VとL1の比のより好ましい数値範囲は0.035≦V/L1≦0.070である。
【0075】
第1〜第5の実施形態における衝撃吸収部材の説明は以上の通りであるが、衝撃吸収部材の形状は第1〜第5の実施形態で説明したものに限定されない。
【0076】
例えば第1〜第5の実施形態では、アウター部材2のフランジ部2aおよびインナー部材3のフランジ部3aが、衝撃吸収部材1の閉断面の外側に突出するように形成されていたが、フランジ部2a、3aが閉断面の内側に突出するように形成されていても良い。また、アウター部材2およびインナー部材3は、フランジ突出方向から見た結合面Jの少なくとも一部が曲線状となるように形成されていても良い。即ち、第1〜第5の実施形態では、ハット高比(Hin+Hout)の増加率が一定である場合について例示したが、フランジ突出方向から見たフランジ部2a、3aの形状は直線状のものに限定されず、曲線状のものであっても良い。また直線状の部分と曲線状の部分を有するものであっても良い。このようにフランジ突出方向から見たフランジ部2a、3aの形状に曲線状の部分がある場合には、ハット高比(Hin+Hout)の増加率が平均で0.033以上であれば良い。ただし、途中で変曲点があるような結合面を有するものは、衝撃荷重の入力時にその変曲点で衝撃吸収部材が折れるおそれがあるため、好ましくない。また、例えば衝突側端部Eおよび非衝突側端部E’の車両幅方向Wのサイズや鉛直方向Vのサイズは互いに異なっていても良い。さらに、第1〜第5の実施形態の衝撃吸収部材1は、アウター部材2の頂部2bやインナー部材3の頂部3bが平面状の形状であったが、曲面部を有する形状であっても良い。
【0077】
このように、衝撃吸収部材の形状としては様々なものが考えられるが、衝撃吸収性能を向上させるためには、衝突側端部Eおよび非衝突側端部E’のオフセット状態に応じ、衝突側端部Eから非衝突側端部E’にかけて重心の位置が適切な方向に移動していることが重要となる。ここで、アウター部材2およびインナー部材3の、車両長さ方向Lに対する垂直な切断面において、その切断面の重心Gからインナー部材3の頂部3bまでのオフセット方向の長さGinと、その切断面の重心Gからアウター部材2の頂部2bまでのオフセット方向の長さGoutとの比(Gin/Gout)を“重心比”と定義する。
【0078】
第1の実施形態の場合、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対しオフセット方向の“車外側”に位置しており、図13図15に示すように衝突側端部Eから非衝突側端部E’に向かって重心比(Gin/Gout)が大きくなっている。第2の実施形態の場合、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対しオフセット方向の“車外側”に位置しており、図18図20に示すように衝突側端部Eから非衝突側端部E’に向かって重心比(Gin/Gout)が大きくなっている。第3の実施形態の場合、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対しオフセット方向の“車内側”に位置しており、図24図26に示すように衝突側端部Eから非衝突側端部E’に向かって重心比(Gin/Gout)が小さくなっている。第4の実施形態の場合、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対しオフセット方向の“車内側”に位置しており、図29図31に示すように衝突側端部Eから非衝突側端部E’に向かって重心比(Gin/Gout)が小さくなっている。第5の実施形態の場合、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対しオフセット方向の“車外側”に位置しており、図34図36に示すように衝突側端部Eから非衝突側端部E’に向かって重心比(Gin/Gout)が大きくなっている。
【0079】
即ち、衝撃吸収部材1の衝撃吸収性能を向上させるためには、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対しオフセット方向の“車外側”に位置する場合には、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に向かって重心比(Gin/Gout)が大きくなっていくように衝撃吸収部材1が構成されていれば良い。一方で、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対しオフセット方向の“車内側”に位置する場合には、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に向かって重心比(Gin/Gout)が小さくなっていくように衝撃吸収部材1が構成されていれば良い。
【0080】
換言すると、自動車の車両長さ方向Lに延び、車両長さ方向Lにおける両端部が、車両長さ方向Lから見た場合に互いに異なる位置となるようにオフセットした衝撃吸収部材1の衝撃吸収性能を向上させるためには、アウター部材2およびインナー部材3の、車両長さ方向Lに対する垂直な切断面の重心からインナー部材3の頂部3bまでのオフセット方向の長さGinと、該切断面の重心からアウター部材2の頂部2bまでのオフセット方向の長さGoutとの比(Gin/Gout)を重心比と定義したとき、車両長さ方向Lにおける両端部のうち、車両長さ方向Lから見た位置が車外側にオフセットした端部側から、車内側にオフセットした端部側に向かって上記重心比が大きくなっていれば良い。
【0081】
また、前述のインナー部材3のハット高Hinと、アウター部材3のハット高Houtとの比(Hin/Hout)をハット高比と定義したとすると、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対しオフセット方向の“車外側”に位置している第1の実施形態の場合、図13図15に示すようにハット高比(Hin/Hout)が衝突側端部Eから非衝突側端部E’に向かって車外側に移動していく。第2の実施形態の場合、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対しオフセット方向の“車外側”に位置しており、図18図20に示すようにハット高比(Hin/Hout)が衝突側端部Eから非衝突側端部E’に向かって車外側に移動していく。第3の実施形態の場合、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対しオフセット方向の“車内側”に位置しており、図24図26に示すようにハット高比(Hin/Hout)が衝突側端部Eから非衝突側端部E’に向かって車内側に移動していく。第4の実施形態の場合、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対しオフセット方向の“車内側”に位置しており、図29図31に示すようにハット高比(Hin/Hout)が衝突側端部Eから非衝突側端部E’に向かって車内側に移動していく。第5の実施形態の場合、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対しオフセット方向の“車外側”に位置しており、図34図36に示すようにハット高比(Hin/Hout)が衝突側端部Eから非衝突側端部E’に向かって車外側に移動していく。
【0082】
換言すると、自動車の車両長さ方向Lに延び、車両長さ方向Lにおける両端部が、車両長さ方向Lから見た場合に互いに異なる位置となるようにオフセットした衝撃吸収部材1の衝撃吸収性能を向上させるためには、アウター部材2およびインナー部材3の、車両長さ方向Lに対する垂直な切断面において、インナー部材3のハット高Hinと、アウター部材2のハット高Houtとの比(Hin/Hout)をハット高比と定義したとき、車両長さ方向Lにおける両端部のうち、車両長さ方向Lから見た位置が車外側にオフセットした端部側から、車内側にオフセットした端部側に向かって上記ハット高比が大きくなっていれば良い。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範疇に属するものと了解される。
【実施例】
【0084】
本発明の効果を検証するための実施例として、図38および図39に示すような本発明に係る衝撃吸収部材のモデルを作成し、衝撃吸収部材の衝突側端部に衝撃荷重を負荷するシミュレーションを実施した。
【0085】
実施例のモデルは、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対し車両幅方向Wの車外側に位置している。衝突側端部Eにおけるアウター部材2の頂部2bから結合面Jまでの車両幅方向Wの長さWoutは31mmであり、非衝突側端部E’におけるアウター部材2の頂部2bから結合面Jまでの車両幅方向Wの長さWout’は10mmである。即ち、Wout/Wout’は3.1である。車両幅方向Wへのオフセット量Wは42.0mmであり、衝撃吸収部材の車両長さ方向の長さL1は600mmである。即ち、W/L1が0.070である。なお、実施例においてはWin/Wout=0.65、Win’/Wout’=4.12であり、衝突側端部Eから非衝突側端部E’に向かって漸増するWin/Woutの増加率((4.12−0.65)/600)は0.058である。また、衝突側端部Eにおける重心比(Gin/Gout)は0.93であり、非衝突側端部E’における重心比(Gin/Gout)は1.19である。Win/Woutの増加率と同様に計算すると、重心比(Gin/Gout)の増加率は0.0004である。平面視におけるアウター部材2の頂部2bと車両長さ方向Lとのなす角は86度であり、平面視における結合面Jと車両長さ方向Lとのなす角は88度である。
【0086】
また、比較例として図40および図41に示すような従来の衝撃吸収部材のモデルを作成し、衝撃吸収部材の衝突側端部に衝撃荷重を負荷するシミュレーションを実施した。
【0087】
比較例のモデルは、実施例と同様、衝突側端部Eが非衝突側端部E’に対し車両幅方向Wの車外側に位置している。衝突側端部Eにおけるアウター部材52の頂部52bから結合面Jまでの車両幅方向Wの長さWoutは10mmであり、非衝突側端部E’におけるアウター部材52の頂部52bから結合面Jまでの車両幅方向Wの長さWout’は10mmである。即ち、Wout/Wout’は1.0である。衝撃吸収部材の車両長さ方向の長さL1は600mmである。なお、比較例におけるWin/Woutの増加率および重心比(Gin/Gout)の増加率は共に0である。平面視におけるアウター部材52の頂部52bと車両長さ方向Lとのなす角は86度であり、平面視における結合面Jと車両長さ方向Lとのなす角も同様に86度である。
【0088】
なお、実施例の衝撃吸収部材、比較例の衝撃吸収部材ともに、アウター部材およびインナー部材が590MPa級の板厚1.2mmのハイテン材であることを想定して物性値が設定されている。
【0089】
解析条件は図42に示す通りであり、前面衝突(剛体壁衝突ともいう)を想定してシミュレーションを実施した。具体的には、車両長さ方向Lの前方から衝突側端部Eに当てた剛体壁を約28km/hの一定速度で移動させていき、非衝突側端部E’を完全拘束状態とした。なお、図42で図示されたモデルは比較例のモデルであるが、実施例のモデルを用いたシミュレーションも同一の解析条件で実施している。
【0090】
シミュレーション後の実施例における衝撃吸収部材の変形状態を図43に示す。また、シミュレーション後の比較例における衝撃吸収部材の変形状態を図44に示す。図43に示すように実施例の衝撃吸収部材では、非衝突側端部において曲げ変形が発生しておらず、衝突側端部において蛇腹状の軸圧潰変形をしていることがわかる。一方、図44に示すように比較例の衝撃吸収部材では、非衝突側端部近傍において曲げ変形が発生し折れ曲がっていることがわかる。以上より、本発明に係る衝撃吸収部材は非衝突側端部の曲げ変形を抑制し、衝突側端部に蛇腹状の軸圧潰変形を安定的に発生させる効果があることがわかる。
【0091】
ここで、本シミュレーションにおける剛体壁の変位と入力荷重との関係を図45に示す。なお、図45の縦軸の“荷重比”とは、実施例および比較例のそれぞれの入力荷重値を比較例の最大入力荷重値で除して規格化したものである。図45に示すように実施例の衝撃吸収部材は、安定的に荷重が入力されており、剛体壁の変位と共に継続的に軸圧潰変形が発生していることがわかる。一方、比較例の衝撃吸収部材は途中で曲げ変形が発生してしまい、それ以降の入力荷重が小さくなっている。
【0092】
次に、剛体壁の変位量に対する入力荷重の積分値を衝撃吸収部材のエネルギー吸収量として、図46に剛体壁の変位とエネルギー吸収量との関係を示す。なお、図46の縦軸の“吸収エネルギー比”とは、実施例および比較例のそれぞれのエネルギー吸収量を、剛体壁の変位が150mmのときの比較例のエネルギー吸収量で除して規格化したものである。図46によれば、実施例の衝撃吸収部材が比較例の衝撃吸収部材に比べてエネルギー吸収量が高いことがわかる。即ち、本発明に係る衝撃吸収部材は、非衝突側端部における曲げ変形を抑制し、衝突側端部において蛇腹状の軸圧潰変形を安定的に発生させる効果があり、これにより衝撃吸収性能が向上することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の衝撃吸収部材は、自動車の衝撃吸収構造に組み込むことができる。例えば本発明によれば、衝撃吸収部材を有する部材と、キャビン側に接続される、湾曲部を有する変形抑制部材とを備えたサイドメンバーを構成することが可能である。フロントサイドメンバーの場合、“衝撃吸収部材を有する部材”とは例えば図2に示すようなフロンドサイドメンバーフロントであり、“キャビン側に接続される、湾曲部を有する変形抑制部材”とは例えば図2に示すようなフロントサイドメンバーリアである。また、リアサイドメンバーの場合、“衝撃吸収部材を有する部材”とは例えば図4に示すようなリアサイドメンバーリアであり、“キャビン側に接続される、湾曲部を有する変形抑制部材”とは例えば図4に示すようなリアサイドメンバーフロントである。また、本発明の衝撃吸収部材は、図1に示すようなサイドシルの車両長さ方向の端部に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 衝撃吸収部材
2 アウター部材
2a アウター部材のフランジ部
2b アウター部材の頂部
3 インナー部材
3a インナー部材のフランジ部
3b インナー部材の頂部
51 従来の衝撃吸収部材
52 従来のアウター部材
52a 従来のアウター部材のフランジ部
53 従来のインナー部材
53a 従来のインナー部材のフランジ部
E 衝撃吸収部材の衝突側端部
E’ 衝撃吸収部材の非衝突側端部
G 重心
衝突側端部の重心
in 重心からインナー部材頂部までの長さ
out 重心からアウター部材頂部までの長さ
in インナー部材のハット高さ
out アウター部材のハット高さ
J アウター部材とインナー部材の結合面
L 車両長さ方向
L1 衝撃吸収部材の車両長さ方向の長さ
N 中立軸
V 鉛直方向
鉛直方向における非衝突側端部に対する衝突側端部のオフセット量
in 衝突側端部におけるインナー部材の頂部から結合面までの鉛直方向長さ
in’ 非衝突側端部におけるインナー部材の頂部から結合面までの鉛直方向長さ
out 衝突側端部におけるアウター部材の頂部から結合面までの鉛直方向長さ
out’ 非衝突側端部におけるアウター部材の頂部から結合面までの鉛直方向長さ
W 車両幅方向
車両幅方向における非衝突側端部に対する衝突側端部のオフセット量
in 衝突側端部におけるインナー部材の頂部から結合面までの車両幅方向長さ
in’ 非衝突側端部におけるインナー部材の頂部から結合面までの車両幅方向長さ
out 衝突側端部におけるアウター部材の頂部から結合面までの車両幅方向長さ
out’ 非衝突側端部におけるアウター部材の頂部から結合面までの車両幅方向長さ
【要約】
自動車の車両長さ方向に延び、車両長さ方向における両端部が、車両長さ方向から見た場合に互いに異なる位置となる衝突側端部と非衝突側端部を有する衝撃吸収部材において、衝突時に衝突側端部に発生する引張応力が抑制され、かつ、非衝突側端部に発生する圧縮応力が抑制されるように、衝突側端部と非衝突側端部の位置関係に応じて、衝突側端部の重心の位置と非衝突側端部の重心の位置が互いに異なるように、衝撃吸収部材のアウター部材とインナー部材を成形する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46