(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(B)エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂、結晶性2官能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂及びこれらのエポキシ樹脂の混合物からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項記載の硬化性樹脂組成物。
前記硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、前記(A)フェノキシ樹脂の含有量が0.3〜10質量%であり、前記(B)エポキシ樹脂の含有量が5〜30質量%であり、前記(C)硬化剤の含有量が3〜20質量%である、請求項1〜5のいずれか1項記載の硬化性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[硬化性樹脂組成物]
本発明の態様の一つである硬化性樹脂組成物は、(A)フルオレン構造を有するフェノキシ樹脂、(B)エポキシ樹脂、及び(C)硬化剤を含有する樹脂組成物であって、(C)硬化剤がフェノール硬化剤、シアネートエステル硬化剤、活性エステル硬化剤から選択される1種以上を含み、前記(A)フェノキシ樹脂と前記(B)エポキシ樹脂と前記(C)硬化剤の合計を100質量%とした場合に、前記(A)フェノキシ樹脂が1〜20質量%であることを特徴とする硬化性樹脂組成物である。以下、本発明の硬化性樹脂組成物について、詳細に説明する。
【0010】
(A)フルオレン構造を有するフェノキシ樹脂
本発明で使用し得るフルオレン構造を有するフェノキシ樹脂としては、以下に示すフルオレン構造を少なくとも1種以上有するフェノキシ樹脂であれば、あらゆるフェノキシ樹脂を使用することができる。
フルオレン構造:
フルオレン構造として好ましくは、ビスフェノールフルオレン構造である。当該フェノキシ樹脂は、フルオレン構造の他、任意にビキシレノール構造及びビスフェノールアセトフェノン構造を少なくとも1種以上有していてもよい。各構造は以下の式(1)〜(3)で表すことができる。
【0011】
ビスフェノールフルオレン構造(特開2003−252951参照)
(式(1)中、R
1は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、C
1~10の炭化水素基及びハロゲン元素からなる群から選ばれる基であり、R
2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、C
1~10の炭化水素基又はハロゲン元素から選ばれる基であり、nは、互いに同一であっても異なっていてもよく、0〜4の整数である。)
【0012】
ビスフェノールフルオレン構造としては、特に以下の構造が好ましい。
無置換ビスフェノールフルオレン構造
ビスクレゾールフルオレン構造
【0014】
ビスフェノールアセトフェノン構造(特開2003−252951参照)
(式(3)中、R
3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、C
1~10の炭化水素基及びハロゲン元素からなる群から選ばれる基であり、R
4は、水素原子、C
1~10の炭化水素基及びハロゲン元素からなる群から選ばれる基であり、R
5は、水素原子又はC
1~10の炭化水素基であり、mは0〜5の整数である。)
【0015】
更に好ましい態様としては、式(1)中、R
1は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はC
1~8の炭化水素基、より好ましくは水素原子又はC
1~6のアルキル基、更に好ましくは水素原子又はメチル基であり、R
2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はC
1~8の炭化水素基、より好ましくは水素原子又はC
1~6のアルキル基、更に好ましくは水素原子又はメチル基、特に好ましくは水素原子であり、nは、互いに同一であっても異なっていてもよく、0〜3、より好ましくは1〜2の整数である。
また、式(3)中、R
3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はC
1~8の炭化水素基、より好ましくは水素原子又はC
1~6のアルキル基、更に好ましくは水素原子又はメチル基、特に好ましくは水素原子であり、R
4は、水素原子又はC
1~8の炭化水素基、より好ましくは水素原子又はC
1~6のアルキル基、更に好ましくは水素原子又はメチル基、特に好ましくは水素原子であり、R
5は、水素原子又はC
1~8の炭化水素基、より好ましくは水素原子又はC
1~6のアルキル基、更に好ましくは水素原子又はメチル基、特に好ましくはメチル基であり、mは0〜3、より好ましくは1〜2の整数である。
【0016】
フルオレン構造を有するフェノキシ樹脂としては、少なくとも1種以上のフルオレン構造と、少なくとも1種以上のフルオレン構造以外の任意の構造を有するフェノキシ樹脂が好ましい。具体的にはビキシレノール構造及び置換又は無置換のビスフェノールフルオレン構造を有するフェノキシ樹脂や、ビキシレノール構造、ビスフェノールアセトフェノン構造及びビスクレゾールフルオレン構造を有するフェノキシ樹脂が好ましい。より具体的には、ビスフェノールフルオレン構造は、式(1)中、R
1が水素原子及びメチル基を有し、R
2が水素原子(即ち、ビスクレゾールフルオレン構造(1−2))であることが好ましい。ビスフェノールアセトフェノン構造は、式(3)中、R
3が水素原子、R
4が水素原子、R
5がメチル基であることが好ましい。
【0017】
フルオレン構造を有するフェノキシ樹脂の製造方法の一例としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂のエポキシ基と、ビスフェノールフルオレン誘導体のフェノール基とを反応させることで製造することができる。具体的には、ビキシレノール型エポキシ樹脂のエポキシ基数と、ビスフェノールフルオレン誘導体由来のフェノール基数との比が、1:1〜1.3:1が好ましく、1:1〜1.2:1がより好ましく、1.01:1〜1.1:1が更に好ましい。さらに、ビスフェノールアセトフェノン構造とビスクレゾールフルオレン構造とを有するフェノキシ樹脂の場合、ビスフェノールアセトフェノン誘導体由来のフェノール基数と、ビスクレゾールフルオレン誘導体由来のフェノール基数との比が1:5〜1:15が好ましく、1:7〜1:11がより好ましい。これによりエポキシ樹脂Aの線熱膨張係数を低くすることができる。
【0018】
フルオレン構造を有するフェノキシ樹脂の含有量は、(A)フェノキシ樹脂と、後述する(B)エポキシ樹脂と、後述する(C)硬化剤の合計を100質量%とした場合に、(A)フェノキシ樹脂が1〜20質量%、好ましくは、2〜15質量%であり、より好ましくは、5〜12質量%である。フェノキシ樹脂の含有量が1質量%以上であれば、低い算術平均粗さ及び低い二乗平均平方根粗さとなり、また、20質量%以下であれば架橋部位を十分保てるのでやはり低い算術平均粗さ及び低い二乗平均平方根粗さとなり、かつ、低い線熱膨張係数を維持できる。
また、(A)フェノキシ樹脂と、後述する(B)エポキシ樹脂との合計を100質量%とした場合、(A)フェノキシ樹脂が好ましくは、2〜30質量%であり、より好ましくは、4〜20質量%である。
フルオレン構造を有するフェノキシ樹脂のエポキシ当量(1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量)は、好ましくは5000〜30000(g/当量)、より好ましくは7000〜20000(g/当量)、更に好ましくは9000〜15000(g/当量)であることが適当である。フルオレン構造を有するフェノキシ樹脂のエポキシ当量が5000以上であれば、優れた破壊伸びを有し、また、30000以下であれば架橋部位を十分保てるので低い算術平均粗さ及び低い二乗平均平方根粗さとなり、かつ、低い線熱膨張係数を維持できる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236(2001)に従って測定することができる。
フルオレン構造を有するフェノキシ樹脂の重量平均分子量は、例えば、8000〜100000、好ましくは15000〜80000、より好ましくは20000〜60000、更に好ましくは25000〜40000である。フェノキシ樹脂の重量平均分子量が、8000以上であれば、優れた破壊伸びを有し、また、100000以下であれば樹脂組成物との相溶性が向上し、低い算術平均粗さ及び低い二乗平均平方根粗さとすることができる。当該フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定することができる。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0019】
上記硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(A)フルオレン構造を有するフェノキシ樹脂の含有量が好ましくは0.3〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜7質量%、より好ましくは0.7〜5質量%であることが適当である。
【0020】
(B)エポキシ樹脂
(B)成分のエポキシ樹脂は、(A)成分のフェノキシ樹脂とは異なるエポキシ樹脂である。(B)成分のエポキシ樹脂として好ましくは、(A)成分のフェノキシ樹脂とは異なるエポキシ当量を有するものである。(B)成分のエポキシ樹脂のエポキシ当量(1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量)は、好ましくは50〜3000(g/当量)、より好ましくは100〜2000(g/当量)、更に好ましくは150〜1000(g/当量)、特に好ましくは200〜500(g/当量)であることが適当である。これにより、硬化性樹脂組成物から得られる絶縁層の架橋密度が十分となり、低粗度化に有利となる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236(2001)に従って測定することができる。また、好ましくは、エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂である。
具体的なエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂のようなビスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂、結晶性2官能エポキシ樹脂等が挙げられる。より好ましくは、(B)エポキシ樹脂は、ビスフェノール型エポキシ樹脂、結晶性2官能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂及びこれらのエポキシ樹脂の混合物からなる群から選択される。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0021】
これらのエポキシ樹脂の中でも、耐熱性向上という観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、結晶性2官能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂及びこれらの2種以上の混合物が好ましい。具体的には、例えば、ビスフェノールA型とF型の混合エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ZX1059」)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「エピコート828EL」、「YL980」、「jER1009」)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「jER806H」、「YL983U」)、ナフタレン型2官能エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」、「EXA4032SS」)、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4700」、「HP4710」)、ナフトール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ESN−475V」)、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂(ダイセル化学工業(株)製「PB−3600」)、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000H」、「NC3000L」、「NC3100」)、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000」、「YX4000H」、「YX4000HK」、「YL6121」)、アントラセン型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX8800」)、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC(株)製「EXA−7310」、「EXA−7311」、「EXA−7311L」、「EXA7311−G3」)、グリシジルエステル型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス(株)製「EX711」、「EX721」、(株)プリンテック製「R540」)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP−7200H」)などが挙げられる。
【0022】
なお、HP4032SSの主成分の構造式は以下の通りである。
【0023】
また、YX4000HKの構造式は以下の通りである。
(式中、Grはグリシジル基。)
【0024】
また、HP−7200Hの構造式は以下の通りである。
(式中、nは1〜20までの整数。)
【0025】
また、NC3000Lの構造式は以下の通りである。
(式中、nは1〜20までの整数。)
【0026】
また、jER1009の構造式は以下の通りである。
【0027】
(B)エポキシ樹脂の含有量は、(A)フェノキシ樹脂と前記(B)エポキシ樹脂と前記(C)硬化剤の合計を100質量%とした場合、好ましくは30〜80質量%、より好ましくは、35〜75質量%であり、より好ましくは、40〜70質量%である。
本発明の硬化性樹脂組成物中の(B)エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、絶縁層の低粗度化と高ピール強度とを両立させるという観点から、当該硬化樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、5〜30質量%が好ましく、7〜25質量%がより好ましく、10〜20質量%が更に好ましい。
【0028】
(C)硬化剤
本願発明で使用される硬化剤は、上記フェノキシ樹脂及びエポキシ樹脂を架橋して硬化することができるものであり、フェノール硬化剤、シアネートエステル硬化剤、活性エステル硬化剤から選択される1種以上を含む。これらフェノール硬化剤、シアネートエステル硬化剤及び活性エステル硬化剤をそれぞれ構成するフェノール樹脂、シアネートエステル樹脂及び活性エステル樹脂は、有意に絶縁層の表面粗度を低下することができる。
【0029】
フェノール樹脂としては、特に制限はないが、ビフェニル型フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ナフチレンエーテル型フェノール樹脂、トリアジン骨格含有フェノール樹脂が好ましい。具体的には、ビフェニル型フェノール樹脂のMEH−7700、MEH−7810、MEH−7851(明和化成(株)製)、ナフタレン型フェノール樹脂のNHN、CBN、GPH(日本化薬(株)製)、SN−170、SN−180、SN−190、SN−475、SN−485、SN−495、SN−375、SN−395(新日鐵化学(株)製)、EXB9500(DIC(株)製)、フェノールノボラック樹脂のTD2090(DIC(株)製)、ナフチレンエーテル型フェノール樹脂のEXB−6000(DIC(株)製)、トリアジン骨格含有フェノール樹脂のLA−3018、LA−7052、LA−7054、LA−1356(DIC(株)製)、等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を併用してもよい。
【0030】
なお、SN−485の構造式は以下式(4)の通りである。
(nは1〜20までの整数。)
【0031】
また、LA−7054の構造式は以下式(5)の通りである。
(nは1〜20までの整数。)
【0032】
シアネートエステル樹脂としては、特に制限はないが、ノボラック型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂、及びこれらが一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。具体的には、下式(6)で表されるフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製、PT30S:数平均分子量380、PT60:数平均分子量560)、下式(7)で表されるビスフェノールA型シアネートエステル樹脂の一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマーであるビスフェノールA型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製、BA230S75)、下式(8)で表されるジシクロペンタジエン型シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製、DT−4000、DT−7000)、等が挙げられる。具体的には、数平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。ここれらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0033】
[式中、nは平均値として任意の数(好ましくは0〜20、より好ましくは1〜10)を示す。]
【0035】
(式中、nは平均値として0〜5の数を表す。)
【0036】
本発明で使用し得る活性エステル樹脂は、1分子中に活性エステル基を1個以上有する樹脂化合物である。ここで、「活性エステル基」とは、エポキシ樹脂と反応するエステル基を意味する。活性エステル樹脂は、エポキシ樹脂と反応することができ、1分子中に活性エステル基を2個以上有する樹脂化合物が好ましい。一般的には、フェノールエステル、チオフェノールエステル、N−ヒドロキシアミンエステル及び複素環ヒドロキシ化合物エステルからなる群より選択される、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する樹脂化合物が、活性エステル樹脂として好ましく用いられる。活性エステル樹脂は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0037】
耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物とを縮合反応させたものから得られる活性エステル樹脂がより好ましい。フェノール化合物、ナフトール化合物及びチオール化合物とから選択される1種又は2種以上と、カルボン酸化合物とを反応させたものから得られる活性エステル樹脂が更に好ましい。カルボン酸化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させたものから得られる1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族樹脂化合物が更に一層好ましい。少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させたものから得られる芳香族樹脂化合物であり、かつ該芳香族樹脂化合物の1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族樹脂化合物が殊更好ましい。活性エステル樹脂は、直鎖状または多分岐状であってもよい。また、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物が脂肪族鎖を含む化合物であれば樹脂組成物との相溶性を高くすることができ、芳香族環を有する化合物であれば耐熱性を高くすることができる。
【0038】
上記カルボン酸化合物としては、具体的には、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。なかでも耐熱性の観点からコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましい。チオカルボン酸化合物としては、具体的には、チオ酢酸、チオ安息香酸等が挙げられる。
【0039】
上記フェノール化合物又はナフトール化合物としては、具体的には、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。なかでも耐熱性向上、溶解性向上の観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが好ましく、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックがより好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが更に好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが更に一層好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエニルジフェノールが殊更好ましく、ジシクロペンタジエニルジフェノールが特に好ましい。チオール化合物としては、具体的には、ベンゼンジチオール、トリアジンジチオール等が挙げられる。
【0040】
活性エステル樹脂としては、具体的には、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル樹脂が好ましく、なかでもナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル樹脂がより好ましい。市販品としては、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル樹脂として、EXB9451、EXB9460、EXB9460S、HPC−8000−65T(DIC(株)製)、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂としてEXB9416−70BK(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル樹脂としてDC808(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル樹脂としてYLH1026(三菱化学(株)製)、などが挙げられる。
【0041】
特に好ましい活性エステル樹脂は、以下の一般式(9)
(式中、mは0又は1であり、nが平均値として0.25〜1.5、好ましくは、0.4〜1.2である)で表されるジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含み、末端にX−基及びXO−基(ここでXは置換基を有していてもよいフェニル基又はナフチル基である)を有する樹脂化合物である。当該活性エステル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1500〜4000であり、より好ましくは2000〜3000である。
殊更好ましい活性エステル樹脂は、以下の式(10)で表されるジシクロペンタジエニルジフェノール構造を有し、末端にX−基及びXO−基(ここでXは置換基を有していてもよいナフチル基である)を有し、重量平均分子量が約2700の活性エステル樹脂であるHPC−8000−65Tである。
【0042】
(式中、mは0又は1であり、nが平均値として0.4〜1.2である)
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物中の(C)硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、絶縁層の低粗度化と高ピール強度とを両立させるという観点から、当該硬化樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、3〜20質量%が好ましく、5〜18質量%がより好ましく、7〜15質量%が更に好ましい。
【0044】
また、エポキシ樹脂全体のエポキシ基数を1とした場合、硬化剤の反応基数は0.2〜2が好ましく、0.3〜1.5がより好ましく、0.4〜1が更に好ましい。ここで、「エポキシ樹脂全体のエポキシ基数」とは、硬化性樹脂組成物中に存在する各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値である。また、「反応基」とはエポキシ基と反応することができる官能基のことを意味し、「反応基数」とは、樹脂組成物中に存在する硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値を全て合計した値である。
【0045】
(D)無機充填材
本発明で使用し得る無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、雲母、マイカ、珪酸塩、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられ、シリカ、アルミナが好ましく、特に無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ、球状シリカ等のシリカが好ましく、球状シリカ、溶融シリカがより好ましい。硬化性樹脂組成物を含む本発明のシート状積層材料に対する無機充填材の充填性向上の観点から、球状溶融シリカが更に好ましい。1種又は2種以上の無機充填材を使用することができる。市販されている球状溶融シリカとして、(株)アドマテックス製「SOC2」、「SOC1」が挙げられる。
【0046】
無機充填材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、絶縁層上へ微細配線形成を行うという観点から、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、1μm以下が更に好ましく、0.8μm以下が更に一層好ましく、0.6μm以下が殊更好ましい。一方、硬化性樹脂組成物をワニスとした場合に、ワニスの粘度が上昇し、取り扱い性が低下するのを防止するという観点から、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.07μm以上が更に好ましく、0.1μm以上が更に一層好ましい。上記無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製 LA−950等を使用することができる。
【0047】
無機充填材の含有量は、特に制限されないが、シート状積層材料のシート形態の可撓性が低下するのを防止するという観点から、硬化性樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、無機充填材の量が30〜90質量%であることが好ましく、40〜85質量%がより好ましく、50〜85質量%が更に好ましい。とくに本発明においては、無機充填材を50質量%以上含む硬化性樹脂組成物においても、ピール強度を向上させることが可能となる。
【0048】
無機充填材は、耐湿性向上、分散性向上のためにカップリング剤等で表面処理(コーティング)されたものが好ましい。表面処理剤(カップリング剤)としては、エポキシシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤から選択される1種以上が好ましい。これらのなかでもアミノシラン系カップリング剤は耐湿性、分散性、硬化物の特性などに優れていて好ましく、フェニルアミノシラン系カップリング剤がより好ましい。市販品としては、信越化学工業(株)製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
【0049】
[その他の成分]
本発明の硬化性樹脂組成物には、上述した成分の他、その他の成分として、硬化促進剤;熱可塑性樹脂;ビニルベンジル化合物、アクリル化合物、マレイミド化合物、ブロックイソシアネート化合物のような熱硬化性樹脂;リン系化合物、水酸化金属物等の難燃剤;シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー、ゴム粒子等の有機充填剤;有機溶媒;オルベン、ベントン等の増粘剤;シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤;イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤;フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤;添加剤などを適宜配合することができる。
【0050】
硬化促進剤としては、上記硬化剤による上記エポキシ樹脂の架橋及び硬化を促進することができるものであればいかなる硬化促進剤も使用することができるが、例えば、アミン化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、ホスホニウム化合物及び金属系硬化促進剤などが挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0051】
本発明で使用し得るアミン化合物としては、特に限定されるものではないが、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン(以下、DBUと略記する。)などのアミン化合物などが挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0052】
本発明で使用し得るイミダゾール化合物としては、以下の一般式(11)
(式中、R
6〜R
9は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ホルミル基、C
1~20アルキル基、C
2~20アルケニル基、C
2~20アルキニル基、C
3~20アリル基、C
4~20アルキルジエニル基、C
4~20ポリエニル基、C
6~20アリール基、C
6~20アルキルアリール基、C
6~20アリールアルキル基、C
4~20シクロアルキル基、C
4~20シクロアルケニル基、(C
5~10シクロアルキル)C
1~10アルキル基、C
1~10炭化水素基を有していてもよいシリル基、エポキシ樹脂に由来するヒドロキシエチル基である)で表される化合物であってもよい。
【0053】
より具体的には、イミダゾール化合物は、1−ベンジル−2-フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−S−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、イミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体及び2,4−ジアミノ−6−ビニル−S−トリアジンからなる群から選択される化合物であり得る。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0054】
本発明で使用し得る金属系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体などが挙げられる。有機金属塩としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0055】
硬化促進剤の含有量は、硬化性樹脂組成物中の不揮発成分の合計を100質量%とした場合、0.005〜3質量%の範囲で使用することが好ましく、0.01〜1質量%の範囲で使用することがより好ましい。
【0056】
熱可塑性樹脂としては、本発明の効果を阻害しない程度において、例えば、(A)フルオレン構造を有するフェノキシ樹脂以外のフェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、シクロオレフィンポリマー及びポリスルホン樹脂等が挙げられ、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0057】
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は8000〜70000の範囲が好ましく、10000〜60000の範囲がより好ましく、20000〜60000の範囲が更に好ましい。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、(A)フェノキシ樹脂の重量平均分子量の測定方法と同様に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定することができる。
【0058】
有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、ソルベントナフサ、トルエン、キシレン、等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。有機溶剤は2種以上を組みわせて用いてもよい。
【0059】
[硬化性樹脂組成物の調製]
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記成分を適宜混合し、また、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいは高速回転ミキサー、スーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または混合することにより調製することができる。また、さらに上述した有機溶剤を加えることで樹脂ワニスとしても調製することができる。
【0060】
本発明の硬化性樹脂組成物においては、絶縁層表面の算術平均粗さが低いのみならず、二乗平均平方根粗さも低く、その上に十分なピール強度を有するめっき導体層を形成することができるので、多層プリント配線板の製造において、多層プリント配線板の絶縁層用硬化性樹脂組成物として好適に使用することができる。更に、めっきにより導体層を形成するための硬化性樹脂組成物(めっきにより導体層を形成する多層プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができ、更に多層プリント配線板のビルドアップ層用硬化性樹脂組成物として好適である。
【0061】
本発明の硬化性樹脂組成物の形態としては、特に限定されないが、接着フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料、回路基板(積層板用途、多層プリント配線板用途等)に適用することが出来る。本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で回路基板に塗布して絶縁層を形成することもできるが、工業的には一般に、接着フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料の形態で用いるのが好ましい。樹脂組成物の軟化点は、シート状積層材料のラミネート性の観点から40〜150℃が好ましい。
【0062】
[多層プリント配線板]
本発明の硬化性樹脂組成物は、多層プリント配線板の絶縁層用硬化性樹脂組成物として用いることができる。本発明で使用され得る多層プリント配線板は、本発明の硬化性樹脂組成物やシート状積層材料を熱硬化して得られた絶縁層を含む、多層プリント配線板である。
ここで、熱硬化の条件は、硬化性樹脂組成物中のエポキシ樹脂の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、例えば硬化温度は90〜220℃、好ましくは160℃〜210℃であり、硬化時間は10分〜180分、好ましくは20〜120分として加熱されることによって行う。また、2段階に分けて熱硬化を行っても良い。
ここで絶縁層の線熱膨張係数(CTE)(JIS K7197)は、25〜150℃の平均の線熱膨張係数で測定して、20ppm/℃以下となるのが好ましく、19ppm/℃以下となるのがより好ましい。下限値に特に制限はないが、一般的に4ppm/℃となる。これにより、絶縁層(ビルドアップ層)と導体層(配線)とのひずみを防止し、信頼性の高い多層プリント配線板を得ることができる。
【0063】
絶縁層表面は粗化処理してもよい。乾式の粗化処理としてはプラズマ処理等が挙げられる。湿式の粗化処理は、例えば、種々の処理液を適用することによって行われる。膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理及び中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。従って、処理液はこれら膨潤液、酸化剤、中和液のキットであってもよい。湿式の粗化処理の方が、大面積や複数枚を一度に処理でき生産性が高い点で好ましい。
膨潤液による膨潤処理は、絶縁層を50〜80℃で5〜20分間(好ましくは55〜70℃で8〜15分間)、膨潤液に浸漬させることで行われる。膨潤液としては、例えばアルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液である。該アルカリ溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液等が挙げられる。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガントP(Swelling Dip Securiganth P)、スウェリング・ディップ・セキュリガントSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)等を挙げることができる。
酸化剤による粗化処理は、絶縁層を60〜80℃で10〜30分間(好ましくは70〜80℃で15〜25分間)、酸化剤溶液に浸漬させることで行われる。酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等を挙げることができる。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5〜10質量%とするのが好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP、ドージングソリューション セキュリガントP等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
中和液による中和処理は、30〜50℃で3〜10分間(好ましくは35〜45℃で3〜8分間)、中和液に浸漬させることで行われる。中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、アトテックジャパン(株)製のリダクションソリューシン・セキュリガントPが挙げられる。
粗化処理後、絶縁層を50〜120℃で10〜60分間(好ましくは60〜100℃で20〜40分間)乾燥してもよい。
【0064】
粗化処理後の絶縁層表面の表面粗さは、微細配線形成向上のために、算術平均粗さ(Ra)が350nm以下となるのが好ましく、300nm以下となるのがより好ましく、200nm以下となるのがさらに好ましく、100nm以下となるのが特に好ましい。算術平均粗さ(Ra)の下限値に制限はないが、一般的に10nm以上、40nm以上、70nm以上などとなる。二乗平均平方根粗さ(Rq)は450nm以下となるのが好ましく、350nm以下となるのがより好ましく、250nm以下となるのが更に好ましく、150nm以下となるのが特に好ましい。二乗平均平方根粗さ(Rq)の下限値に制限はないが、一般的に20nm以上、50nm以上、90nm以上などとなる。なお、二乗平均平方根粗さ(Rq)は絶縁層表面の局所的な状態が反映されるため、Rqの把握によってより緻密で平滑な絶縁層表面になっていることが確認でき、ピール強度が安定化する。これは、硬化性樹脂組成物を熱硬化して、粗化処理した後の絶縁層の表面粗さに相当する。
【0065】
ピール強度は、絶縁層とこれに隣接する層、例えば導体層とを十分に密着させておくために0.45kgf/cm(4.41N/cm)以上が好ましく、0.50kgf/cm(4.90N/cm)以上がより好ましい。ピール強度の上限値は高いほどよく、特に制限は無いが、一般的に1.5kgf/cm(14.7N/cm)以下、1.2kgf/cm(11.8N/cm)以下、1.0kgf/cm(9.81N/cm)以下、0.8kgf/cm(7.85N/cm)以下などとなる。
【0066】
破断点伸びは、硬化性樹脂組成物を熱硬化させて得られた硬化物の引張強度を、JIS K7127に準拠して測定する。具体的に、この硬化物からダンベル状に切り出された試験片を作成し、PETフィルムを剥がして、オリエンテック社製引張試験機RTC−1250Aを用いて測定することができる。破断点伸びは、1.5%であることが好ましく、1.7%以上であることがより好ましい。
【0067】
[シート状積層材料]
本発明で用いられるシート状積層材料は、上記硬化性樹脂組成物を層形成した、硬化前のシート状材料である。当該シート状積層材料は、当業者に公知の方法、例えば、上述した有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーターなどを用いて、支持体に塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて支持体上に樹脂組成物層(シート状積層材料)を形成させることにより支持体付きシート状積層材料として製造することができる。また、樹脂ワニスをガラスクロス等のシート状補強基材にホットメルト法又はソルベント法により含浸、乾燥させることで、シート状積層材料をプリプレグとすることもできる。なお、支持体付きシート状積層材料を接着フィルムという場合もある。
【0068】
乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層への有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。ワニス中の有機溶剤量、有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスを50〜150℃で3〜10分程度乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
得られたシート状積層材料の厚さは特に限定されないが、例えば1〜150μmの範囲が好ましく、2〜100μmの範囲がより好ましく、3〜50μmの範囲がさらに好ましく、5〜30μmの範囲が特に好ましい。
【0069】
当該シート状積層材料は、樹脂組成物層が複数層になっていてもよく、樹脂組成物層の一方の面に支持体を有していてもよく、他方の面に保護フィルム有していても良い。
【0070】
[支持体]
本発明で使用し得る支持体としては、プラスチックフィルムや金属箔が挙げられる。具体的に、プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET 」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース、ポリエーテルサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリイミドなどが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましく、特に安価で入手容易なポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔などが挙げられる。
【0071】
汎用性の点から、プラスチックフィルムが好ましく、プラスチックフィルムを使用する場合、剥離性を向上させるために、硬化性樹脂組成物を含む層と接する面が離型処理された支持体を使用するのが好ましい。離型処理に使用する離型剤としては、硬化性樹脂組成物を含む層が支持体から剥離可能であれば特に限定されず、例えば、シリコン系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。なお、離型処理された支持体として、市販されている離型層付きプラスチックフィルムを用いてもよく、好ましいものとしては、例えば、アルキッド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムであるSK−1、AL−5、AL−7(リンテック(株)製)などが挙げられる。また、プラスチックフィルムは、マット処理又はコロナ処理を施してあってもよく、当該処理面上に離型層を形成してもよい。一方、金属箔はエッチング溶液により除去することもできるし、除去せずに該金属箔を導体層として利用してもよい。
支持体の厚さは特に限定されないが、10〜150μmの範囲が好ましく、20〜50μmの範囲がより好ましく、25〜45μmの範囲がさらに好ましい。
【0072】
本発明で使用し得る保護フィルムは、硬化性樹脂組成物を含む層へのごみ等の付着防止等を目的として設けられてもよい。当該保護フィルムとしては、支持体と同様のプラスチックフィルムを使用することができる。また保護フィルムには、マッド処理、コロナ処理等の表面処理が施してあってもよく、上記と同様の離型処理が施してあってもよい。保護フィルムの厚みは、3〜30μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。
【0073】
[シート状積層材料を用いた多層プリント配線板]
次に、上記のようにして製造したシート状積層材料を用いて多層プリント配線板を製造する方法の一例を説明する。
まず、シート状積層材料を、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネート(積層)する。回路基板に用いられる基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいう。また導体層と絶縁層とを交互に積層してなる多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっているものも、ここでいう回路基板に含まれる。なお導体層表面には、黒化処理、銅エッチング等により予め粗化処理が施されていてもよい。
【0074】
上記ラミネートにおいて、シート状積層材料が保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、必要に応じてシート状積層材料及び回路基板をプレヒートし、シート状積層材料を加圧及び加熱しながら回路基板にラミネートする。本発明のシート状積層材料においては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネートの条件は、特に限定されるものではないが、例えば、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下に10〜120秒間程度減圧し、その後圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力(ラミネート圧力)を好ましくは0.1〜1.5MPa、より好ましくは0.5〜1.2MPaとし、圧着時間(ラミネート時間)を好ましくは5〜180秒としてラミネートするのが好ましい。また、ラミネートの方法は、バッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。真空ラミネートは、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製真空加圧式ラミネーター、(株)日立インダストリイズ製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。
その後、室温付近に冷却してから、支持体を剥離する場合は剥離し、樹脂組成物を熱硬化して硬化物を形成することで、回路基板上に絶縁層を形成することができる。熱硬化の条件は、樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、たとえば硬化温度は100〜220℃、好ましくは160℃〜210℃であり、硬化時間は20分〜180分、好ましくは30〜120分として加熱されることによって行う。また、2段階に分けて熱硬化を行っても良い。絶縁層を形成した後、硬化前に支持体を剥離しなかった場合は、必要によりここで剥離することもできる。
【0075】
また、シート状積層材料を、真空プレス機を用いて回路基板の片面又は両面に積層することもできる。減圧下、加熱及び加圧を行う積層工程は、一般の真空ホットプレス機を用いて行うことが可能である。例えば、加熱されたSUS板等の金属板を支持体側からプレスすることにより行うことができる。プレス条件は、70〜250℃、好ましくは100〜230℃の温度で、減圧度を通常0.01MPa以下、好ましくは0.001MPa以下の減圧下とし、プレス圧力が0.5〜4MPaの範囲、プレス時間を30〜150分間として行うのが好ましい。加熱及び加圧は、1段階で行うことも出来るが、樹脂のしみだしを制御する観点から2段階以上に条件を分けて行うのが好ましい。例えば、1段階目のプレスを、温度が70〜150℃、プレス圧力が0.1〜1.5MPaの範囲、2段階目のプレスを、温度が150〜200℃、圧力が0.5〜4MPaの範囲で行うのが好ましい。各段階の時間は20〜120分間で行うのが好ましく、である。このように樹脂組成物層を熱硬化することにより回路基板上に絶縁層を形成することができる。市販されている真空ホットプレス機としては、例えば、MNPC−V−750−5−200((株)名機製作所製)、VH1−1603(北川精機(株)製)等が挙げられる。
【0076】
次いで、回路基板上に形成された絶縁層に穴開け加工を行ってビアホール、スルーホールを形成してもよい。穴あけ加工は、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけ加工が最も一般的な方法である。穴あけ加工前に支持体を剥離しなかった場合は、ここで剥離することになる。
【0077】
次いで、絶縁層表面に上述した粗化処理を行い、さらに乾式めっき又は湿式めっきにより絶縁層上に導体層を形成し得る。乾式めっきとしては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の方法を使用することができる。湿式めっきとしては、無電解めっきと電解めっきとを組み合わせて導体層を形成する方法、導体層とは逆パターンのめっきレジストを形成し、無電解めっきのみで導体層を形成する方法、等が挙げられる。その後のパターン形成の方法として、例えば、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができ、上述の一連の工程を複数回繰り返すことで、ビルドアップ層を多段に積層した多層プリント配線板となる。本発明においては、低粗度、高ピールであるため、多層プリント配線板のビルドアップ層として好適に使用することができる。
【0078】
[半導体装置]
上述のようにして製造された多層プリント配線板を用いることで半導体装置を製造することができる。本発明で使用され得る多層プリント配線板の導通箇所に、半導体チップを実装することにより半導体装置を製造することができる。「導通箇所」とは、「多層プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、導通するのであれば、導体層の一部であってもそれ以外のコネクタ等の導電部分であってもよい。「半導体チップ」とは、半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0079】
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、などが挙げられる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載中の「部」は、特に断らない限り「質量部」を意味し、「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
【0081】
<測定方法・評価方法>
まずは各種測定方法・評価方法について説明する。
【0082】
〔ピール強度、算術平均粗さ(Ra値)、二乗平均平方根粗さ(Rq値)測定用サンプルの調製〕
(1)積層板の下地処理
ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.3mm、松下電工(株)製R5715ES)の両面をメック(株)製CZ8100にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理をおこなった。
(2)接着フィルムのラミネート
実施例及び比較例で作成した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP-500(名機製作所製)を用いて、上記粗化処理したエポキシ樹脂両面銅張積層板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaで圧着することにより行った。
【0083】
(3)樹脂組成物の硬化
ラミネートされた接着フィルムから支持体であるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを剥離した後、100℃、30分続けて180℃、30分の硬化条件で樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成した。
【0084】
(4)粗化処理
絶縁層を形成した積層板を、膨潤液である、アトテックジャパン(株)のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスウェリング・ディップ・セキュリガントP(グリコールエーテル類、水酸化ナトリウムの水溶液)に、60℃で5分間(実施例1、比較例1、4、5)又は10分間(実施例2、3、比較例2、3、6)浸漬した。次に粗化液として、アトテックジャパン(株)のコンセントレート・コンパクトP(KMnO
4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に、80℃で15分間(実施例1、比較例1、4、5)、20分間(実施例2、3、比較例2、3、6)浸漬した。最後に中和液として、アトテックジャパン(株)のリダクションショリューシン・セキュリガントP(硫酸の水溶液)に40℃で5分間浸漬した。80℃で30分乾燥後、この基板を評価基板Aとした。
【0085】
(5)セミアディティブ工法によるめっき
評価基板Aをめっきして導体層を形成した。具体的には、評価基板Aを、PdCl
2を含む無電解めっき用溶液に40℃で5分間浸漬し、次に無電解銅めっき液に25℃で20分間浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成の後に、硫酸銅電解めっきを行い、30μmの厚さで導体層を形成した。次に、アニール処理を190℃にて60分間行った。この基板を評価基板Bとした。
【0086】
〔粗化後の算術平均粗さ(Ra値)、二乗平均平方根粗さ(Rq値)の測定〕
評価基板Aを、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製WYKO NT3300)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして得られる数値によりRa値、Rq値を求めた。それぞれ10点の平均値を求めることにより測定した。
【0087】
〔めっき導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定〕
評価基板Bの導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具(株式会社ティー・エス・イー、オートコム型試験機 AC−50C−SL)で掴み、室温(25℃)中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm(N/cm))を測定した。
【0088】
〔線熱膨張係数(CTE)の測定〕
実施例及び比較例において得られた接着フィルムを200℃で90分間加熱することで熱硬化させ、支持体であるPETフィルムから剥離することによりシート状の硬化物を得た。その硬化物を、幅5mm、長さ15mm、厚さ30mmの試験片に切断し、熱機械分析装置Thermo Plus TMA8310((株)リガク製)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における25℃から150℃までの平均線熱膨張係数(ppm)を算出した。
【0089】
〔破壊伸びの測定〕
実施例及び比較例において得られた接着フィルムを200℃で90分間加熱することで熱硬化させ、この硬化物をダンベル状に切り出し、PETフィルムを剥がして、試験片を得た。その試験片を、JIS K7127に準拠し、オリエンテック社製引張試験機RTC−1250Aを用いて引張強度測定を行い、23℃における破壊伸びを求めた。
【0090】
<合成例1>
ビキシレノール構造、ビスフェノールフルオレン構造を有するフェノキシ樹脂の合成
反応容器に、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製YX4000、エポキシ当量185)190g、ビスフェノールフルオレン(フェノール性水酸基当量175)175g、シクロヘキサノン150gを入れ、攪拌して溶解させた。次いで、テトラメチルアンモニウムクロライド溶液0.5gを滴下し、窒素雰囲気下、180℃5時間にて反応させた。反応終了後、濾布を用いて濾過して、溶剤により希釈することでフェノキシ樹脂Aを得た。
・エポキシ当量:12200
・重量平均分子量:38000
・固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液
なお、フェノキシ樹脂Aは、以下の構造を有していた。
【0091】
<合成例2>
ビキシレノール構造、ビスフェノールアセトフェノン構造、ビスクレゾールフルオレン構造を有するフェノキシ樹脂の合成
反応容器に、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製YX4000、エポキシ当量185)190g、ビスフェノールアセトフェノン(フェノール性水酸基当量145)14g、ビスクレゾールフルオレン(JFEケミカル(株)製、フェノール性水酸基当量190)170g、シクロヘキサノン150gを入れ、攪拌して溶解させた。次いで、テトラメチルアンモニウムクロライド溶液0.5gを滴下し、窒素雰囲気下、180℃5時間にて反応させた。反応終了後、濾布を用いて濾過して、溶剤により希釈することでフェノキシ樹脂Bを得た。
・エポキシ当量:11000
・重量平均分子量:36000
・固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液
なお、フェノキシ樹脂Bは、以下の構造を有していた。
【0092】
<合成例3>
ビキシレノール構造、ビスフェノールアセトフェノン構造を有するフェノキシ樹脂の合成
反応容器に、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000」、エポキシ当量185)100g、ビスフェノールアセトフェノン80g、およびシクロヘキサノン150gを入れ攪拌して溶解させた。次いで、テトラメチルアンモニウムクロライド溶液0.5gを滴下し、窒素雰囲気下、180℃5時間にて反応させた。反応終了後、濾布を用いて濾過して、溶剤により希釈することでフェノキシ樹脂Cを得た。なお、フェノキシ樹脂Cは、フルオレン構造を有していないため、本発明の参考例である。
・エポキシ当量:13000
・重量平均分子量:38000
・固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液とした。
なお、フェノキシ樹脂Cは、以下の構造を有していた。
【0093】
<実施例1>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量169)10部、結晶性2官能エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)10部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP−7200H」、エポキシ当量275)20部を、ソルベントナフサ35部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却後、そこへ、フェノキシ樹脂Aを12部、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」水酸基当量125の固形分60%のMEK溶液)12部、ナフタレン型硬化剤(新日鐵化学(株)製「SN−485」水酸基当量215の固形分60%のMEK溶液)15部、硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分2質量%のMEK溶液)3部、難燃剤(三光(株)製「HCA−HQ」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド、平均粒径2μm)2部、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.24μm、(株)アドマテックス製「SOC1」、単位面積当たりのカーボン量0.36mg/m
2)150部、を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次いで、離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック(株)製「AL5」、厚さ38μm、及び線熱膨張係数(CTE)、破壊伸びの測定用硬化物作製には「PET501010」、厚さ50μm)の離型面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが30μmとなるように樹脂ワニスを均一に塗布し、80〜120℃(平均100℃)で4分間乾燥させて、接着フィルムを作製した。
【0094】
<実施例2>
液状ナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ当量144、DIC(株)製「HP4032SS」)5部、結晶性2官能エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)5部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量269)12部を、ソルベントナフサ30部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却後、そこへ、フェノキシ樹脂Aを5部、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230S75」、シアネート当量約232、不揮発分75質量%のMEK溶液)20部、フェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30S」、シアネート当量約133、不揮発分85質量%のMEK溶液)6部、硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン、固形分2質量%のMEK溶液)1部、硬化促進剤(東京化成(株)製、コバルト(III)アセチルアセトナート(Co(III)Ac)、固形分1質量%のMEK溶液)3部、ゴム粒子(ガンツ化成(株)製、スタフィロイドAC3816N)2部、難燃剤(三光(株)製「HCA−HQ」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド、平均粒径2μm)2部、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」、単位面積当たりのカーボン量0.39mg/m
2)100部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次いで、実施例1と同様にして、接着フィルムを作製した。
【0095】
<実施例3>
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鐵化学(株)製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量169)10部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量269)12部を、ソルベントナフサ30部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却後、そこへ、フェノキシ樹脂Bを17部、活性エステル化合物(DIC(株)製「HPC8000−65T」、重量平均分子量が約2700、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)34部、硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン、固形分2質量%のMEK溶液)6部、難燃剤(三光(株)製「HCA−HQ」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド、平均粒径2μm)2部、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」、単位面積当たりのカーボン量0.39mg/m
2)150部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次いで、実施例1と同様にして、接着フィルムを作製した。
【0096】
<比較例1>
実施例1のフェノキシ樹脂A12部を、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「E1256B40」、固形分40質量%のMEK溶液、エポキシ当量8000、重量平均分子量約50000)10部に変更する以外は、実施例1と全く同様にして接着フィルムを作製した。
<比較例2>
実施例2のフェノキシ樹脂A5部を、合成例3のフェノキシ樹脂C5部に変更する以外は、実施例2と全く同様にして接着フィルムを作製した。
【0097】
<比較例3>
実施例3のフェノキシ樹脂B17部を、合成例3のフェノキシ樹脂C17部に変更する以外は、実施例3と全く同様にして接着フィルムを作製した。
<比較例4>
実施例1のフェノキシ樹脂12部を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「jER1009」、エポキシ当量2740、固形分40質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部に変更する以外は、実施例1と全く同様にして接着フィルムを作製した。
<比較例5>
実施例1のエポキシ樹脂Aの添加量を12部から50部に変更する以外は、実施例1と全く同様にして接着フィルムを作製した。
<比較例6>
実施例1のエポキシ樹脂Aのトリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC(株)製「LA−7054」水酸基当量125の固形分60%のMEK溶液)12部、ナフタレン型硬化剤(新日鐵化学(株)製「SN−485」水酸基当量215の固形分60%のMEK溶液)15部を、硬化剤(ジシアンジアミド、三菱化学(株)製「DICY7」)3部に変更する以外は、実施例1と全く同様にして接着フィルムを作製した。なお、上記DICY7はジシアンジアミドであるため、フェノール硬化剤、シアネートエステル硬化剤、活性エステル硬化剤のどれにも該当しない。
結果を表1及び表2に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
表1及び2の結果から、本願発明の硬化性樹脂組成物を用いている実施例3では、低粗度、十分なピール強度、低い線熱膨張係数、十分な破壊伸びを有する。一方、比較例1〜6では本願発明の硬化性樹脂組成物を用いていないため、算術平均粗さ、二乗平均平方根粗さが大きくなり、ピール強度も小さく、線熱膨張係数も大きくなった。
なお、実施例1及び2はビスフェノールアセトフェノン構造を有しないため、本願発明の参考例である。