(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183587
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】容器のヒートシール方法、ヒートシールヘッド及び容器
(51)【国際特許分類】
B65B 7/28 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
B65B7/28 A
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-56570(P2013-56570)
(22)【出願日】2013年3月19日
(65)【公開番号】特開2014-181056(P2014-181056A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2016年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097205
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎治
(72)【発明者】
【氏名】福井 健
(72)【発明者】
【氏名】松本 健吾
(72)【発明者】
【氏名】本田 裕崇
【審査官】
高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−165204(JP,U)
【文献】
特開平01−213171(JP,A)
【文献】
米国特許第05034074(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B7/00−7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の開口部に形成されたフランジ部に、前記開口部を覆うように蓋材をセットし、ヒートシールヘッドのシール面を前記蓋材に押し当てて該蓋材と前記フランジ部とを熱溶着させ、前記容器本体を密封するヒートシール方法であって、
前記シール面が、該シール面の内端部側から下方に湾曲する湾曲部の第1部分と、該シール面の外端部側から下方に湾曲し、前記第1部分に続くように形成された湾曲部の第2部分から成り、前記第1部分の曲率半径を第2部分の曲率半径より大きくしたヒートシールヘッドを用いることを特徴とする容器のヒートシール方法。
【請求項2】
前記第1部分の曲率半径が50mm以上、前記第2部分の曲率半径が4mm乃至20mmの範囲にある請求項1に記載の容器のヒートシール方法。
【請求項3】
容器本体の開口部に形成されたフランジ部に、前記開口部を覆うように蓋材をセットし、ヒートシールヘッドの環状のシール面を前記蓋材に押し当てると共に、当該蓋材と前記フランジ部とを熱溶着させ、前記容器本体を密封するヒートシール方法であって、
前記環状のシール面が、該シール面の、全周にわたって、内端部側から平坦面に形成された第1部分と、該シール面の、全周にわたって、外端部側から下方に湾曲し、前記第1部分に続くように形成された湾曲部の第2部分から成るヒートシールヘッドを用いることを特徴とする容器のヒートシール方法。
【請求項4】
前記第2部分の曲率半径が4mm乃至20mmの範囲にある請求項3に記載のヒートシール方法。
【請求項5】
容器本体の開口部に形成されたフランジ部に、前記開口部を覆うようにセットされた蓋材にヒートシールヘッドのシール面を押し当てて該蓋材と前記フランジ部とを熱溶着させ、前記容器本体を密封するヒートシールヘッドであって、
前記シール面が、該シール面の内端部側から下方に湾曲する湾曲部の第1部分と、該シール面の外端部側から下方に湾曲し、前記第1部分に続くように形成された湾曲部の第2部分から成り、前記第1部分の曲率半径を第2部分の曲率半径より大きくしたことを特徴とするヒートシールヘッド。
【請求項6】
前記第1部分の曲率半径が50mm以上、前記第2部分の曲率半径が4mm乃至20mmの範囲にある請求項5に記載のヒートシールヘッド。
【請求項7】
容器本体の開口部に形成されたフランジ部に、前記開口部を覆うようにセットされた蓋材にヒートシールヘッドの環状のシール面を押し当てると共に該蓋材と前記フランジ部とを熱溶着させ、前記容器本体を密封するヒートシールヘッドであって、前記環状のシール面が、該シール面の、全周にわたって、内端部側から平坦面に形成された第1部分と、該シール面の、全周にわたって、外端部側から下方に湾曲し、前記第1部分に続くように形成された湾曲部の第2部分から成ることを特徴とするヒートシールヘッド。
【請求項8】
前記第2部分の曲率半径が4mm乃至20mmの範囲にある請求項7に記載のヒートシールヘッド。
【請求項9】
開口部にフランジ部が形成された容器本体と、該容器本体の前記開口部を覆う蓋材とを有し、当該蓋材と前記フランジ部とを熱溶着してシール部を形成した容器であって、
前記シール部が、前記フランジ部の内周端部側に形成された第1樹脂溜まりと、前記フランジの外周端部側に形成された第2樹脂溜まりとを有し、前記第1樹脂溜まりのフランジ部の表面からの突出長が、前記第2樹脂溜まりのフランジ部表面からの突出長よりも小さいことを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン樹脂等の樹脂から成り、内容物が充填された容器本体の開口部に形成されたフランジ部に、前記開口部を覆うようにセットされたシート状或いはフィルム状の蓋材をヒートシールヘッドのシール面で押し当てて、当該蓋材と前記フランジ部とを
熱溶着させ、前記容器本体を密封するヒートシール方法、そのヒートシール方法に用いられるシールヘッド及びそのヒートシール方法によって製造される容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品や飲料などの包装形態として、食品等の内容物を容器本体に充填した後、容器本体の開口部に形成されたフランジ部にシート状或いはフィルム状の蓋材を被せ、ヒートシールヘッドのシール面により加圧加熱を行い、当該蓋材と前記フランジ部をヒートシール(
熱溶着)することで密封を保つ方法が広く採用されている。このような包装形態の場合、内容物の保存性を高めるための十分な密封性が必要とされる一方、内容物を取り出すために蓋材を容易に開封できる易開封性が必要とされている。
【0003】
これら課題に対し、特許文献1に開示される易開封性の容器が知られている。この容器は、開口部にフランジ部が形成された容器本体と、該フランジ部の表面にヒートシールされるシール層を有するシート状或いはフィルム状の蓋材とを有し、シール面(押圧面)を傾斜面部とした環状シール盤(ヒートシールヘッド)を前記蓋材に押し当て、当該蓋材のシール層と前記フランジ部の樹脂を熱溶着してシール部を形成し、前記容器本体が密封されている。そして、この容器は、前記した熱溶着による密封によって、容器本体のシール部の内周縁近傍(フランジ部の内周端部側)に瘤状の樹脂だまりが形成されている。
【0004】
また、このような容器においては、蓋材が容器本体のフランジ部から凝集破壊によって開封されるため、界面剥離に比して初期開封強度が安定し、開封がスムースに行われる。さらに、容器のフランジ部の内周端部側に形成される瘤状の樹脂溜まりによって、当該樹脂溜まり部における蓋材と容器本体のフランジ部の凝集破壊が良好に行われ、内圧による容器本体と蓋材の剥離も防止され、密封性も良好に保ち得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−206128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような容器は、通常、容器本体に内容物を充填し、蓋材をフランジ部に
熱溶着して密封した後に、シュリンクラベルを用いてラベリングする。この際、容器本体のフランジ部が上方からのシュリンクラベルの装着を困難とするため、容器のフランジ部及び蓋材を下にした状態でシュリンクラベルの装着が行われる。このため、内容物充填後の蓋材で密封された容器は、コンベア等で容器のフランジ部(蓋材)を下にするように反転され、前記シュリンクラベルの装着工程に反転搬送される。また、充填密封された複数の容器を、仕切り板を介して複数段積み重ねて収納したダンボール箱、或いはフルシュリンク、ダンボールのハーフトレイの上部をハーフシュリンクした包装体等が、天地を逆にして搬送、輸送される場合がある。
【0007】
このような場合、前述した樹脂溜まりが、容器のシール部のフランジ部の内周端部側に形成されていると、前記樹脂溜まりによって、フランジ部の内周端部側の蓋材のシール面内側に集中的に荷重が作用するため、前記蓋材の穴あきの発生の要因となる。そして、この蓋材のフランジ部の内周端部側の穴あきが生じると、前記フランジ部の内周端部側から外周端部側にシール部が形成されていても、この部位から漏洩すると、容器内からの内容物の漏洩を防止することができない。
【0008】
さらに、容器本体のフランジ部の表面に蓋材を熱溶着して、前記容器本体を密封する際に、シール面を傾斜部とした環状シール盤(ヒートシールヘッド)を用いると、特に、シール面の幅が前記フランジ幅よりも狭い場合は、容器本体のフランジ部と蓋材とのシール部のシール幅が一定幅になり難く、易開封性、密封性が安定しない。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、充填密封された容器の易開封性及び密封性を維持し、前記容器のフランジ部、蓋材を下にして置かれる状況下であっても、蓋材のフランジ部の内周端部側での穴あきが防止される容器のヒートシール方法及びヒートシールヘッドを提供するものである。
【0010】
また、本発明は、充填密封された容器の易開封性及び密封性を維持し、前記容器のフランジ部、蓋材を下にした状況下であっても、蓋材のフランジ部の内周端部側での穴あきが防止される容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るヒートシール方法は、容器本体の開口部に形成されたフランジ部に、前記開口部を覆うように蓋材をセットし、ヒートシールヘッドのシール面を前記蓋材に押し当てて該蓋材と前記フランジ部とを
熱溶着させ、前記容器本体を密封するヒートシール方法であって、前記シール面が、該シール面の内端部側から下方に湾曲する湾曲部の第1部分と、該シール面の外端部側から下方に湾曲し、前記第1部分に続くように形成された湾曲部の第2部分から成り、前記第1部分の曲率半径を第2部分の曲率半径より大きくしたヒートシールヘッドを用いることを特徴とする。
【0012】
このような構成により、容器本体の開口部に形成したフランジ部に蓋材を
熱溶着してシール部を形成する際に、前記シール部に、前記フランジ部の内周端部側の第1樹脂溜まりと、前記フランジの外周端部側の第2樹脂溜まりとが形成され、前記第1樹脂溜まりのフランジ部の表面からの突出長が、前記第2樹脂溜まりのフランジ部表面からの突出長より小さくなる。
【0013】
本発明に係るヒートシール方法において、前記第1部分の曲率半径が50mm以上、前記第2部分の曲率半径が4mm乃至20mmの範囲であることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係るヒートシール方法は、容器本体の開口部に形成されたフランジ部に、前記開口部を覆うように蓋材をセットし、ヒートシールヘッドの
環状のシール面を前記蓋材に押し当てると共に、当該蓋材と前記フランジ部とを
熱溶着させ、前記容器本体を密封するヒートシール方法であって、前記
環状のシール面が、該シール面の
、全周にわたって、内端部側から平坦面に形成された第1部分と、該シール面の
、全周にわたって、外端部側から下方に湾曲し、前記第1部分に続くように形成された湾曲部の第2部分から成るヒートシールヘッドを用いることを特徴とする。
【0015】
このような構成により、容器本体の開口部に形成したフランジ部に蓋材を
熱溶着してシール部を形成する際に、前記シール部に、前記フランジ部の内周端部側の第1樹脂溜まりと、前記フランジの外周端部側の第2樹脂溜まりとが形成され、前記第1樹脂溜まりが該フランジ部の内周端部下方に向かう当該容器本体の内面側に形成され、前記第2樹脂溜まりが該フランジ部の表面から突出して形成される。
【0016】
本発明に係るシートシール方法において、前記第2部分の曲率半径が4mm乃至20mmの範囲であることが好ましい。
【0017】
本発明に係るヒートシールヘッドは、容器本体の開口部に形成されたフランジ部に、前記開口部を覆うようにセットされた蓋材にヒートシールヘッドのシール面を押し当てて該蓋材と前記フランジ部とを熱溶着させ、前記容器本体を密封するヒートシールヘッドであって、前記シール面が、該シール面の内端部側から下方に湾曲する湾曲部の第1部分と、該シール面の外端部側から下方に湾曲し、前記第1部分に続くように形成された湾曲部の第2部分から成り、前記第1部分の曲率半径を第2部分の曲率半径より大きくしたことを特徴とする。
【0018】
このような構成により、容器本体の開口部に形成したフランジ部に蓋材を
熱溶着してシール部を形成する際に、前記シール部に、前記フランジ部の内周端部側の第1樹脂溜まりと、前記フランジの外周端部側の第2樹脂溜まりとが形成され、前記第1樹脂溜まりのフランジ部の表面からの突出長が、前記第2樹脂溜まりのフランジ部表面からの突出長より小さくなる。
【0019】
本発明に係るヒートシールヘッドにおいて、前記第1部分の曲率半径が50mm以上、前記第2部分の曲率半径が4mm乃至20mmの範囲であることが好ましい。
【0020】
また、本発明に係るヒートシールヘッドは、容器本体の開口部に形成されたフランジ部に、前記開口部を覆うようにセットされた蓋材にヒートシールヘッドの
環状のシール面を押し当てると共に該蓋材と前記フランジ部とを熱溶着させ、前記容器本体を密封するヒートシールヘッドであって、前記
環状のシール面が、該シール面の
、全周にわたって、内端部側から平坦面に形成された第1部分と、該シール面の
、全周にわたって、外端部側から下方に湾曲し、前記第1部分に続くように形成された湾曲部の第2部分から成ることを特徴とする。
【0021】
このような構成により、容器本体の開口部に形成したフランジ部に蓋材を
熱溶着してシール部を形成する際に、前記シール部に、前記フランジ部の内周端部側の第1樹脂溜まりと、前記フランジの外周端部側の第2樹脂溜まりとが形成され、前記第1樹脂溜まりが該フランジ部の内周端部下方に向かう当該容器本体の内面側に形成され、前記第2樹脂溜まりが該フランジ部の表面から突出して形成される。
【0022】
本発明に係るヒートシールヘッドにおいて、前記第2部分の曲率半径は、4mm乃至20mmの範囲であることが好ましい。
【0023】
本発明に係る容器は、開口部にフランジ部が形成された容器本体と、該容器本体の前記開口部を覆う蓋材とを有し、該蓋材と前記フランジ部とを熱溶着してシール部を形成した容器であって、前記シール部が、前記フランジ部の内周端部側に形成された第1樹脂溜まりと、前記フランジの外周端部側に形成された第2樹脂溜まりとを有し、前記第1樹脂溜まりのフランジ部の表面からの突出長が、前記第2樹脂溜まりのフランジ部表面からの突出長よりも小さいことを特徴とする。
【0024】
このような構成により、容器のフランジ部、蓋材を下にして置かれる状態では、容器のシール部にかかる荷重は、フランジ部の内周端部側に形成された第1樹脂溜まりが、前記フランジの外周端部側に形成された第2樹脂溜まりより小さくなる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るヒートシール方法及びヒートシールヘッドによれば、充填密封された容器の易開封性及び密封性を維持し、前記容器のフランジ部、蓋材を下にして置かれる状況下であっても、蓋材のフランジ部の内周端部側での穴あきが防止される容器を容易に製造することができる。
【0028】
また、本発明に係る容器によれば、充填密封された容器の易開封性及び密封性を維持し、前記容器のフランジ部、蓋材を下にして置かれる状況下であっても、蓋材のフランジ部の内周端部側での穴あきが防止される容器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の実施の形態に係る容器における容器本体の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す容器本体に蓋体を熱溶着するヒートシールヘッドを示す断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る容器の外観を示す斜視図である。
【
図4】ヒートシールヘッドを拡大して示す断面図である。
【
図5】フランジ部の表面とヒートシールヘッドのシール面の形状との関係を示す図である。
【
図6】ヒートシールヘッドが蓋材をフランジ部にヒートシールしている状態を拡大して示す断面図である。
【
図7】蓋材とフランジ部のシール部を拡大して示す断面図である。
【
図8】
図7に示す容器がフランジ部、蓋材を下にして置かれた状態を拡大して示す断面図である。
【
図9】フランジ部とヒートシールヘッドのシール面の他の形状との関係を示す図である。
【
図10】
図9に示すシール面を有するヒートシールヘッドによる蓋材とフランジ部のヒートシール状態を拡大して示す断面図である。
【
図11】
図10に示す蓋材とフランジ部とを熱溶着させて形成したシール部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0031】
本発明の実施の一形態に係る容器における容器本体は、
図1に示すように構成される。
【0032】
図1において、カップ状の容器本体10の開口部11の周縁11aに、外方に張り出すフランジ部12が形成され容器本体10は、例えば、シート状のポリプロピレン等の熱可塑性樹脂にて形成されている。
【0033】
この容器本体10を用いた内容物が充填された容器の密封は、
図2に示すように、内容物が充填された容器本体10の開口部11に形成されたフランジ部12に、開口部11を覆うようにシート状、或いはフィルム状の蓋材20がセットされる。この蓋材20として、例えば、シール層:ポリプロピレン系シーラント、中間層:アルミニウム箔、外層:ポリエチレンテレフタレートフィルムから成る多層フィルムが用いられる。
【0034】
次いで、容器本体10と蓋材20のヒートシールは、容器本体10のフランジ部12に蓋材20がセットされ、ヒートシール装置のヒートシールヘッド100を用いてヒートシールされる。そして、このヒートシールヘッド100は、容器本体10の開口部11に形成されたフランジ部12の形状に対応して、下端面をシール面(押圧面)111とした環状突起部110を有している。また、ヒートシールヘッド100にはヒータ(図示略)が埋設されており、シール面111の表面温度が、ヒートシールに適した所定の温度に維持される。
【0035】
前述したヒートシールは、ヒートシールヘッド100のシール面111を、蓋材20、容器本体10のフランジ部に上方から押し当て、ヒートシールヘッド100によって蓋材20が容器本体10のフランジ部12に対して加圧加熱されて
熱溶着する。これにより、
図3に示すように、容器本体10が蓋材20によって密封された容器が製造される。尚、この容器は断面形状が矩形を呈する場合は、
図3に示すように、蓋材20の角部20aを持って、当該蓋材20が容器本体10から開封されるが、このとき、蓋材20シール層と容器本体10のフランジ部12とのシール部が凝集破壊して開封される。
【0036】
次に、前述したヒートシールに用いるヒートシールヘッド100における環状突起部110の下端面に形成するシール面111の形状を、
図4を参照して詳細に説明する。
【0037】
図4において、ヒートシールヘッド100における環状突起部110の下端面に形成されるシール面111の形状は、前記シール面111の内端部側から外端部側に向かう方向Dout(外端部側から内端部側に向かう方向Dinでも同じ)の断面において、その両端に面取り部112、113が形成されている。そして、このシール面111は、内端部側から下方に湾曲する湾曲部から成る第1部分111aと、外端部側から下方に湾曲し、前記第1部分111aに続くように形成された湾曲部から成る第2部分111bから構成されている。そして、前記第1部分111aと第2部分111bの曲率半径は、第1部分111aの曲率半径が第2部分111bの曲率半径よりも大きくなるように設定される。
【0038】
前述した曲率半径は、容器本体10のフランジ部の寸法によって決定するが、一般的なの容器本体10の充填容量は60ml乃至300mlであり、この場合のフランジ部の寸法はあまり変動しない。このため、第1部分111aの曲率半径R1は、50mm以上が好ましく、第2部分111bの曲率半径R2は、4mm乃至20mmが好ましい。曲率半径R1、R2を前記範囲とすることにより、シール面111の境界114を中心としてシールの圧力が集中するため、より密封性を確保することができる。また、各面取り部112、113の曲率半径は、容器本体10のフランジ部12に蓋材20をヒートシール際に、ヒートシールヘッド100のシール面111による押圧が関与しない曲率半径であればよく、例えば、1mm程度で良い。また、本形態においては、ヒートシールヘッド100のシール面111の幅を、容器本体10のフランジ部12の幅よりも大きくするのが、ヒートシール後の容器の易開封性、密封性をより安定させる点で好ましい。尚、前述したヒートシールヘッド100シール面111の第1部分111aと第2部分111bとの間には、僅かな平坦部が存在してもよい。
【0039】
そして、このような形状のシール面111を有するヒートシールヘッド100を用いて、容器本体10のフランジ部12と蓋材20のヒートシールを行うと、蓋材20が熱溶着されるフランジ部12の表面12a(平坦面)と、前記シール面111との関係は、
図5に示すようになる。即ち、ヒートシールヘッド100のシール面111における曲率半径R1の曲率が大きく、曲率半径R2の曲率が小さいため、第1部分111aの容器本体10のフランジ部12の表面12aに対する立ち上がりは、第2部分111bの前記フランジ部12の表面12aに対する立ち上がりに比べて緩やかになる。
【0040】
このようなシール面111を形成したヒートシールヘッド100で、
図6に示すように、蓋材20を容器本体10のフランジ部12にヒートシールすると、該ヒートシールヘッド100のシール面111による加圧及び加熱が行われ、前記蓋材20のシール層とフランジ部12の樹脂が熱溶着されてシール部30が形成される。そして、容器のシール部30のフランジ部12の内周端部側に、軟化してヒートシールヘッド100のシール面111の第1部分111aによって押し出された樹脂の塊である樹脂溜まり(以下、第1樹脂溜まりという)31aが形成される。一方、前記シール部30のフランジ部12の外周端部側に、軟化して前記シール面111の第2部分111bによって押し出された樹脂の塊である樹脂溜まり(以下、第2樹脂溜まりという)31bが形成される。
【0041】
このとき、前述したように、ヒートシールヘッド100のシール面111の形状(
図4、
図5参照)において、前記シール面111の内端部側(Din側)から形成された第1部分111aの曲率半径が、この第1部分111aに連続して前記シール面111の外端部側(Dout側)から形成された第2部分111bの曲率半径より大きくなるように形成されている。このため、
図7に拡大して示すように、前記した容器のシール部30において、第1樹脂溜まり31aのフランジ部12の表面12aからの突出長H1(突出程度)は、第2樹脂溜まり31bのフランジ部12の表面12aからの突出長H2(突出程度)より小さくなる。
【0042】
そして、前述したヒートシールによって製造された容器が、フランジ部12、蓋材20を下にして置かれる状態では、
図8に示すように、容器(内容物も含む)のシール部30は、主に、フランジ部12の表面12aからの突出長H2(
図7参照)が大きい第2樹脂溜まり31bによって支えられる。フランジ部12の表面12aからの突出長H1(
図7参照)が小さい第1樹脂溜まり31aにかかる荷重は、第2樹脂溜まり31bにかかる荷重より小さくなる。従って、容器のシール部30において、フランジ部12の内周端部側に形成される第1樹脂溜まり31aによる蓋材20のシール面内側への荷重の負荷が少なくなる。なお、
図8では、第1樹脂溜まり31a及び第2樹脂溜まり31bが凸形状で表されているが、これは、断面形状であり、前記第1樹脂溜まり31a及び第2樹脂溜まり31bは、環状に突出した形状である。
【0043】
従って、前記容器によれば、容器の易開封性と密封性が維持され、容器のフランジ部12、蓋材20を下にして置かれる状況下であっても、蓋材20のフランジ部12の内周端部側での穴あきを防止することができる。そして、この穴あきによる容器本体10内の内容物の漏洩を確実に防止することができる。
【0044】
また、ヒートシールヘッド100のシール面111の形状は、前述した形状(
図4及び
図5参照)に限定されない。すなわち、ヒートシールヘッド100のシール面111の内端部側から外端部側(方向Dinから方向Dout)へのシール面111の第1部分111aの形状を、フランジ部12の表面12aに対して、例えば、
図9に示すような関係となるように形成することができる。
【0045】
この場合、ヒートシールヘッド100のシール面111を、該シール面111の内端部側から形成する第1部分を平坦面とし、この第1部分111aに続く該シール面111の外端部側から形成する第2部分111bを前述した形状(
図4及び
図5参照)と同様の曲率半径R2とした湾曲部とする。このようなヒートシールヘッド100シール面111とフランジ部12の表面12aとの間に、
図10に示すように、蓋材20をセットしてシール面111により蓋材20をフランジ部12に押し当て、ヒートシールヘッド100の加圧及び加熱によって、蓋材20のシール層とフランジ部12の樹脂が熱溶着されて容器が密封される。
【0046】
この密封に際しては、
図10と共に
図11に拡大して示すように、シール部30のフランジ部12の外周端部側には、前述した第2樹脂溜まり31b(
図7参照)と同様の第2樹脂溜まり31bが形成される。一方、シール部30のフランジ部12の内周端部側には、フランジ部12の表面12aと合致する平坦面のシール面111の第1部分111aによって、フランジ部12の内周端部側から容器本体10内面に押し出され、容器本体10のフランジ部12の内周端部下方に向かって、当該容器本体10内面側に第1樹脂溜まり31aが形成される。そして、シール部30の第2樹脂溜まり31bのフランジ部12の表面12aからの突出長H2は、前述した突出長H2(
図7参照)と同程度であり、一方、第1樹脂溜まり31aのフランジ部12の表面12aからの突出長H1は、実質的にゼロとなり得る。また、本形態においても、ヒートシールヘッド100のシール面111の幅を、容器本体10のフランジ部12の幅よりも大きくするのが、ヒートシール後の容器の易開封性、密封性をより安定させる点で好ましい。
【0047】
このようにして製造された容器においても、容器のフランジ部12、蓋材20を下にして置かれる状態では、容器のシール部30は、第2樹脂溜まり31b(環状)によって支えられる。従って、シール部30のフランジ部12の内周端部側のシール部30の部分にかかる荷重が小さくなる。よって、容器のフランジ部12、蓋材20を下にして置かれる状況であっても、蓋材20のフランジ部12の内周端部側での穴あきを防止することができる。また、平坦面のシール面111の第1部分111aによって、容器本体10のフランジ部12の内周端部下方に向かう当該容器本体10の内面側に、前述した第1樹脂溜まり31aを形成するため、容器本体10のフランジ部12と蓋材20とのシール部30のシール幅が一定幅となり、易開封性、密封性が安定する。
【0048】
一方、容器が蓋材20を下にして置かれた状態では、フランジ部12の外周端部側に形成された第2樹脂溜まり31bに荷重の負荷がかかり、蓋材20のフランジ部12の外周端部側での穴あきが懸念される。しかしながら、この部分は、容器本体10の開口部11から遠い位置にあり、且つヒートシールヘッド100のシール面111の第1部分111aによって形成された第1樹脂溜まり31aを含むシール部30によって密封されているため、容器内からの内容物の漏洩は防止される。
【0049】
[実験例]
容器のシール部30において、第1樹脂溜まり31aの突出長H1と第2樹脂溜まり31bの突出長H2との好ましい関係(H1<H2)を確認するため、ヒートシールヘッド100のシール面111における第1部分111aの形状(曲率半径R1、平坦面)と第2部分の曲率半径R2とを実験的に以下のように求めた。
【0050】
<条件>
1.容器本体10の構成
・材質:チタン系白顔料添加ポリプロピレン製の1.5mm厚のシート
・開口部11の形状(フランジ部12内側形状):49.0mm×66.6mm
・底部の形状:34.4mm×52.0mm
・高さ:44mm
・フランジ部12の幅:6mm
・フランジ部12の厚さ:0.6mm
・容器本体11の胴部の厚さ:0.4mm
・底部の厚さ:0.6mm
図1に示すカップ状の容器本体10をプラグアシスト成型により作成した。
2.蓋材20の構成
・外層:ポリエチレンテレフタレート(12μm)
・中間層:アルミフィルム(7μm)/ポリウレタン系接着剤/ナイロン(15μm)
・内層:ポリプロピレン系シーラント(50μm)
各樹脂層間にポリウレタン系接着剤を介在させ、ドライラミネーションにより作成した。
3.ヒートシールヘッド100のシール面111の形状
・シール面111(環状)の幅:8mm
・面取り部112、113の形状:曲率半径1mm
・第1部分111aの幅:5.5mm
・第2部分111bの幅:2.5mm
・第1部分111aの曲率半径R1:50mm、70mm、平坦面(R1=∞)
・第2部分111bの曲率半径R2:4mm、8mm、20mm
4.その他
ヒートシールヘッド100のシール面111の第1部分111aと第2部分111bとの境界114が、容器のフランジ部12の幅方向の中心に位置するように位置決めして下降させ、蓋材20を容器本体10のフランジ部12にヒートシールした。
なお、ヒートシールに際しては、ヒートシールヘッド100のシール面111(第1部分111a、第2部分111b)の温度を185℃とし、1.2秒間のヒートシールを行った。
<観察>
次いで、ヒートシール後、密封状態の容器のシール部30(フランジ部12と蓋材20)を径方向に縦切断し、その切断端面におけるフランジ部12の内周端部側、外周端部側の第1、第2樹脂溜まりの有無、突出長(高さ(H1、H2))及びその形態を確認した。その結果を
図12に示す。
<結果>
本実験によれば、ヒートシールヘッド100のシール面111の内端部側における第1部分111a形状が、曲率半径R1=50mmから平坦面までの範囲で、また、前記シール面111の外端部側における第2部分111bの湾曲部が、曲率半径R2=4mmから20mmの範囲で、第1樹脂溜まり31aの突出長(高さ)H1が、第2樹脂溜まり31bの突出長(高さ)H2より小さく、適切なシール部30が形成された。特に、前記第1部分111aが曲率半径R1=70mmの湾曲部で、第2部分111bが曲率半径R2=8mmの湾曲部を形成したシール面111によるヒートシールが、前述した第1樹脂溜まり31aの突出長H1と第2樹脂溜まり31bの突出長H2との関係が最も好ましいいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る容器のヒートシール方法及びヒートシールヘッドは、容器本体の開口部に形成されたフランジ部に、前記開口部を覆う蓋材を
熱溶着させ、前記容器本体を密封するヒートシール方法及びそのヒートシール方法に用いられるヒートシールヘッドとして有用である。また、本発明に係る容器は、内容物を充填した容器本体に、蓋材をヒートシールして密封された容器として有用である。
【符号の説明】
【0052】
10 容器本体
11 開口部
11a 周縁
12 フランジ部
12a 表面
20 蓋材
30 シール部
31a 第1樹脂溜まり
31b 第2樹脂溜まり
100 ヒートシールヘッド
110 環状突出部
111 シール面(押圧面)
111a 第1部分
111b 第2部分
112、113 面取り部
114 第1部分111aと第2部分111bとの境界