(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
眼鏡レンズを加工するための加工具と、前記眼鏡レンズを直接的に保持する一対のレンズチャック軸を軸回りに回転させるための第1回転機構と、前記第1回転機構を駆動させる第1駆動部と、前記第1駆動部を制御する第1制御部と、を備え、玉型データとレイアウトデータに基づいて前記眼鏡レンズを加工する眼鏡レンズ加工装置であって、
前記眼鏡レンズを前記眼鏡レンズ加工装置まで搬送するためのレンズ搬送ユニットと、
前記眼鏡レンズを保持するために前記レンズ搬送ユニットに設けられたレンズ保持部と、
前記レンズ保持部に保持された前記眼鏡レンズを、前記眼鏡レンズの周方向に回転させるための第2回転機構と、前記第2回転機構を駆動させる第2駆動部と、前記第2駆動部を制御する第2制御部と、を有し、前記眼鏡レンズの光学中心と乱視軸の基準方向の少なくともいずれかを規定するために前記眼鏡レンズに施されたマークを検出するマーク検出ユニットによって検出された検出結果に基づいて、前記レンズチャック軸に保持された前記眼鏡レンズの光学中心と前記レイアウトデータによって定まる光学中心を整合させる、及び/又は、前記レンズチャック軸に保持された前記眼鏡レンズの乱視軸の基準方向と前記玉型データにおける乱視軸の基準方向を整合させる整合手段と、
を備え、
前記第2制御部は前記第2駆動部を制御して前記保持部に保持された前記眼鏡レンズを前記周方向に回転させることによって、整合させることを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。第1実施形態の眼鏡レンズ加工装置は、眼鏡レンズの周縁等を加工するための眼鏡レンズ加工装置である。
図1は第1実施形態に係る眼鏡レンズ加工装置の外観略図を示す図である。眼鏡レンズ加工装置は、眼鏡枠の玉型に関する玉型データに基づいて眼鏡レンズを加工する。眼鏡レンズ加工装置は、眼鏡レンズ加工ユニット(以下、加工ユニットと略す)1000、トレイ搬送ユニット1500、レンズ搬送ユニット1200、マーク検出ユニット1300を備える。
【0013】
加工ユニット1000は眼鏡レンズを研削加工する。トレイ搬送ユニット1500は、左右一対の眼鏡レンズLEが載置されたトレイ1400を所定の受け渡し位置まで搬送する。レンズ搬送ユニット1200は、所定の受け渡し位置に置かれたトレイと加工ユニット1000との間で眼鏡レンズLEを保持して搬送する。マーク検出ユニット1300はレンズ搬送ユニット1200によって保持される眼鏡レンズに施される印点等の種々のマークを検出して、その位置、または方向等を測定する。以下、各装置の構成を順に説明する。
【0014】
<レンズ搬送ユニット>
まず、レンズ搬送ユニット1200の構成を
図2〜
図4により説明する。搬送ベース1201は加工ユニット1000、マーク検出ユニット1300及びトレイ搬送ユニット1500と平行に延びる。この搬送ベース1201にはレール1202が設けられる。また、搬送ベース1201にはレール1202上を左右方向(X方向)に移動するX移動ベース1210が取り付けられている。搬送ベース1201に取り付けられたモータ1203の回転軸にはボールネジ1204が連結される。このボールネジ1204にはX移動ベース1210に固定された接続ブロック1211が螺合している。モータ1203が回転駆動することによって、X移動ベース1210が搬送ベース1201上をX方向に移動する。
【0015】
X移動ベース1210上にはガイド軸1212に沿って前後方向(Y方向)に移動するY移動ベース1220が取り付けられている。Y移動ベース1220の下部にはモータ1214に連結されたボールネジ1215が螺合している。そして、モータ1214の回転駆動によってY移動ベース1220がY方向に移動する。また、Y移動ベース1220上には、ホルダ1222が旋回可能に取り付けられている。ホルダ1222には、未加工のレンズLEを吸着保持するためのレンズ保持部である第1ハンド1230と、加工済みレンズLEを吸着保持するための保持部である第2ハンド1240とが備えられる。ホルダ1222はY移動ベース1220内に収められたモータ1221によってギヤを介して180度旋回するようになっている。第1ハンド1230及び第2ハンド1240は、モータ1231、1241によりそれぞれ上下方向(Z方向)に移動可能にホルダ1222に保持されている。
【0016】
以上のように、レンズ搬送ユニット1200にはレンズLEを保持するためのレンズ保持部である第1ハンド1230または第2ハンド1240が設けられる。
【0017】
第1ハンド1230の端部には吸着基部1232が固定されている。吸着基部1232の先端部は
図3に示すように、略U字状に形成されている。これは、後述するマーク検出ユニット1300による印点等のマーク検出の際に、吸着基部1232が邪魔にならないようにするためである。また、この吸着基部1232には未加工レンズLEの表面を吸着するために下側に突出した3つの吸着片1233が、第1ハンド1230が有するXY方向の保持基準軸線L101を中心にして等間隔に備えられている。各吸着片1233には吸引孔が設けられており、その吸引孔は吸着基部1232、第1ハンド1230の内部に形成された空気通路を経てチューブ1235に連通している。チューブ1235は空気の吸引と送出を行うポンプユニット1236に接続され、ポンプユニット1236の吸引駆動によって、未加工のレンズLEは3つの吸着片1233によって吸着保持され、逆に空気を送出することによってその吸着保持が解除されるようになっている。
【0018】
一方、第2ハンド1240の端部には吸着基部1242が固定されている。吸着基部1242の先端側には、
図4に示すように、第2ハンド1240が有するXY方向の保持基準軸線L102を中心にして、下側に突出したラッパ状の吸着片1243が備えられている。この吸着片1243にも吸引孔が設けられている。吸着片1243は第1ハンド1230と同様にチューブ1245を介してポンプユニット1246に接続され、吸着片1243による加工済みレンズLEの吸着保持とその解除が行われるようになっている。
【0019】
なお、レンズ保持部(例えば、第1ハンドまたは第2ハンド)については、本実施形態の構成に限定されない。例えば、レンズLEの周縁を挟持する構成としても良い。レンズLEを保持した状態でマーク検出ユニット1300による印点等のマークの検出を行えるような構成が好ましい。そして、レンズLEを保持する保持部分がレンズLEに施された印点等のマークと重ならないような構成が好ましい。もちろん、マーク検出ユニット1300にレンズLEを置くためのレンズ置載部が備わり、レンズLEの保持部によってレンズLEをレンズ置載部に載せる構成でもよい。このような構成であれば、レンズLEを保持する保持部分(例えば、吸着基部1232)がレンズLEに施された印点等のマークと重ならないように保持部分の形状を考慮する必要がない。
【0020】
以上のように、レンズ搬送ユニット1200はレンズLEをレンズ加工ユニット1000まで搬送する。
【0021】
<マーク検出ユニット>
マーク検出ユニット1300の筐体1301は略コ字状の側面を持ち、その筐体1301内には
図5に示す測定光学系及び制御系が配置されている。
【0022】
マーク検出ユニット1300は、例えば、レンズの全体を照明する照明光学系と、照明光学系により照明されたレンズの輪郭像及び印点マークを撮像する撮像素子を有する撮像光学系と、備える。
【0023】
制御部1310は、例えば、撮像素子によって撮像された撮像画像における印点マークを画像処理によって抽出する。例えば、印点マークは、眼鏡レンズの光学中心の位置と乱視軸の基準方向の少なくともいずれかを規定する。そこで、制御部1310は、抽出された印点マークに基づいて、眼鏡レンズにおける光学中心の位置データ、乱視軸の基準方向データを取得する。
【0024】
なお、レンズの光学特性を測定する光学系との違いは、例えば、照明光の照射範囲が広い、レンズの前面又は後面に設けられる視標板がない等が考えられる。また、光学特性を測定する場合、印点マークが検出されない。
【0025】
図5において、筐体1301内には、測定位置にあるレンズLEの裏面側に反射部材1305などが配置される。また、レンズLEの表面側には照明光源1302、コリメータレンズ1303、ハーフミラー1306、絞り1307、撮像レンズ1308、撮像素子1309が配置される。反射部材1305は、照明光源1302からの照明光を反射し、レンズLEを裏面から照明する。撮像素子1309は照明されたレンズLEの表面に施された印点等のマーク及びレンズの像を撮影する。撮像素子1309のピント位置は、撮像レンズ1308によって測定光軸L100に配置されたレンズLEの表面付近に合わされている。これにより、レンズLE表面に付された印点等の種々のマーク及びレンズ像が撮像素子1309によりほぼ焦点が合った状態で撮像される。マーク検出ユニット1300は、レンズ全体の像を検出してもよいし、レンズの一部の像を検出してもよい。
【0026】
未加工の眼鏡レンズLEは前述のレンズ搬送ユニット1200が有する第1ハンド1230に保持されて、第1ハンド1230の基準軸線L101が測定光軸L100と一致するようにXY方向が位置決めされて配置される。
【0027】
なお、マーク検出ユニット1300は上記の構成に限らず、レンズLEの表面に施された印点等のマークの位置を検出することができればよい。また、本実施形態のように必ずしもレンズLEの画像を取得する必要はない。
【0028】
上記のように、マーク検出ユニット1300は、レンズに付されたレンズの光学中心と乱視軸の基準方向とが規定されたマークを検出する。
【0029】
<トレイ搬送ユニット>
図1において、トレイ搬送ユニット1500は、例えば、ベルトコンベア1501で構成され、ベルトコンベア1501上のトレイ1400は矢印A方向に順次移動される。トレイ1400の搬送は、レンズ搬送ユニット1200がレンズLEの受け渡しを行う所定の位置Q1で止められる。トレイ1400には左右一対のレンズの作業番号が記憶されたIDタグ1401が取り付けられている。そして、位置Q1で停止したトレイ1400のIDタグの作業番号がIDタグ読取器1502によって読み取られるようになっている。また、トレイ搬送ユニット1500には制御部1510が備わり、トレイ搬送ユニット1500の各駆動を制御する。
【0030】
<加工ユニット>
次に、加工ユニット1000の構成を
図6、
図7に基づいて説明する。加工ユニット1000は、レンズチャック軸として上下に伸びる上チャック軸1111と下チャック軸1121により加工治具の装着されていない眼鏡レンズLEを挟持して回転させることができる。上チャック軸1111は、サブベース1102の中央に備えられたチャック上部機構1110により、上下方向に移動されるとともに、ホルダ1112に取り付けられたパルスモータ1113によって回転される。上チャック軸1111の下端には、レンズ押え1115が取付けられている(
図7参照)。
【0031】
下チャック軸1121は、メインベース1101に固定されたホルダ1120に回転可能に保持され、パルスモータ1123により上チャック軸1111と同期して回転される。
【0032】
すなわち、上チャック軸1111と下チャック軸1121は、第1制御部(例えば、制御部1160)が第1駆動部(例えば、パルスモータ1113、パルスモータ1123など)の駆動を制御し、上下チャック軸を軸回りに回転させるための第1回転機構を回転させることによって、回転される。
【0033】
下チャック軸1121の上端には、ゴム製の吸着部1130aを持つ吸着部材1130が取り付けられている(
図7参照)。吸着部1130aは中央部が窪んだラッパ状に形成されている。その中央部には吸引孔が開けられて下チャック軸1121の内部に形成された空気通路1131を介して、空気の吸引及び送出を行うポンプユニット1135が接続されている。レンズLEがレンズ搬送ユニット1200により吸着部材1130上にセットされたら、上チャック軸1111を下降するとともにポンプユニット1135の吸引動作を作動する。これにより加工中にレンズが移動しない様に保持することができるようになる。レンズLEを取り外すときは、空気を送出することによりその吸着保持が解除されるようになる。
【0034】
上下のチャック軸に保持された眼鏡レンズLEは、砥石群1151(例えば、プラスチック粗砥石及びヤゲン溝を持つ仕上砥石等)を砥石回転軸に持つ左右のレンズ研削部1150R、1150Lにより、2方向から研削加工される。レンズ研削部1150R、1150Lは左右対称であり、それぞれサブベース1102に備えられた移動機構により、上下左右方向に移動される。
【0035】
また、サブベース1102中央の奥側には図示無きレンズ形状測定部が収納されている。このレンズ形状測定部の測定動作、レンズ研削部1150R、1150Lの移動、及び上下のチャック軸の回転角は、後述する制御部1160に入力されたデータに基づいて制御する。なお、下チャック軸部分を除いた構成は、本出願人による特開平8−97445号のものと同様のものを用いることができるので、その詳細はこれを参照されたい。
【0036】
なお、本実施形態の加工ユニットはレンズ研削部1150R、1150Lによって研削加工するものとしたが、これに限らない。切削加工具等によってレンズを切削加工してもよい。
【0037】
なお、本実施形態のチャック軸はレンズを吸着保持するものとしたが、これに限定されない。例えば、粘着性の樹脂等によってレンズを粘着させて保持するような構成でもよい。レンズチャック軸はレンズLEを保持するものであればよい。
【0038】
また、加工ユニット1000は本実施形態の構成に限らない。例えば、複数の切削工具を備え、レンズを自動で切削加工する構成でもよい。レンズを眼鏡枠の玉型形状に合うように加工できればよい。加工ユニット1000は眼鏡枠の玉型データに基づいてレンズLEを加工する。
【0039】
<制御系>
本実施形態の制御系を図面に基づいて説明する。
図8は本実施形態の制御系を示すブロック図である。レンズ搬送ユニット1200には制御部1250が、マーク検出ユニット1300には制御部1310が、加工ユニット1000には制御部1610がそれぞれ備わり、各制御部は各装置の駆動を制御する。また、各制御部はホストコンピュータ(以下、ホストPCと略す)1030、IDタグ読取器1502と接続され、無線または有線により通信が可能になっている。ホストPCには図示無き入力手段が備わり、レンズデータ等を入力することができる。また、ホストPC1030には、記憶部としてメモリ1031が備わってもよい。
【0040】
なお、制御部1310は、眼鏡レンズLEに施されたレンズLEの光学中心ならびに乱視軸の基準方向またはレンズLEの上下が規定されるマークの検出結果をマーク検出手段1200から取得することができる。また、制御部1310は、取得したマークの検出結果に基づいて、眼鏡レンズLEの上下を検知する上下検知手段として用いてもよい。本実施形態においては、マーク検出ユニット1200は印点などのマークの画像を撮像する。制御部1310は、マーク検出ユニット1200によって撮像された画像からマークの方向を解析し、レンズLEの上下を検知するための上下検知手段としてもよい。
【0041】
次に、以上のような構成の眼鏡レンズ加工装置において、レンズに施されたマークを検出するときの動作を説明する。
【0042】
まず、操作者によってホストPC1030に眼鏡枠の玉型データ、レイアウトデータ、レンズ処方の柱面軸角度データ等のレンズデータが入力される。入力されたレンズデータ毎に作業番号が付与され、レンズトレイ1400のIDタグ1401に作業番号が登録される。レンズトレイ1400には作業番号によりホストPC1030から読み出される明細のレンズLEを、左右一対にしてトレイ1400上にセットしておく。レンズLEには、図示無き印点装置(またはプリンター)にて予めレンズLEの光学中心ならびに乱視軸の方向またはレンズLEの上下を規定する印点等のマークが施されている。この印点についての詳細は後述する。
【0043】
レンズLEをトレイ1400にセットするとき、各レンズの概略中心がトレイ1400上で予め決められたポイントに来るようにセットする。その後、レンズLEがセットされたトレイ1400をトレイ搬送ユニット1500のベルトコンベア1501に順次載せる(これらの工程は作業者が行っても良いが、ロボットにより自動的に行う構成とすると、より自動化が図れる)。
【0044】
トレイ1400のセットが完了したら、トレイ搬送ユニット1500の制御部1510はベルトコンベア1501を動作させて搬送を行う。そして、レンズ受け渡しのための所定位置にトレイ1400が来ると、その移動を停止する。このとき、IDタグ読取器1502によりトレイ1400に添付されたIDタグの作業番号が読み取られ、その信号がホストPC1030に入力される。ホストPC1030は、この作業番号に対応したレンズ加工に関するデータを加工ユニット1000に送信する。
【0045】
また、ホストPC1030はトレイ1400が所定位置まで運ばれてくると、レンズ搬送ユニット1200に作動指令信号を送信する。レンズ搬送ユニット1200の制御部1250は各モータを駆動制御して、次のようにしてレンズをマーク検出ユニット1300の測定位置まで搬送する。まず、第1ハンド1230が有する保持基準軸線L101が、片方のレンズLEが置かれているトレイ1400上の所定のポイントに来るように、X移動ベース1210及びY移動ベース1220を移動させる。これにより、レンズLEの光学中心は吸着基部1232に形成された略U字形状内の基準軸線L101の付近に位置するようになる。その後、第1ハンド1230を吸着位置まで下降させ、ポンプユニット1236による吸引を開始することにより右眼用のレンズLEが3つの吸着片1233によって吸着保持される。
【0046】
レンズLEの保持ができると、第1ハンド1230を一旦上昇させた後、ホルダ1222とともに第1ハンド1230を180度旋回させ、第1ハンド1230がマーク検出ユニット1300側に向くようにする。その後、X移動ベース1210及びY移動ベース1220を移動して、第1ハンド1230が有する保持基準軸線L101がマーク検出ユニット1300の測定光軸L100に合致する位置までレンズLEを搬送するとともに、所定の高さにレンズLEを位置させる。これにより測定位置へのレンズLEの配置が完了する。
【0047】
レンズLEの配置が完了すると、マーク検出ユニット1300にはホストPC1030から測定開始信号が入力され、制御部1310は、撮像素子1309から得られるレンズ画像からレンズLEに施された印点等のマークを検出する。
【0048】
ここで、レンズLEに施されるレンズLEの光学中心ならびに乱視軸の基準方向またはレンズLEの上下が規定される印点について説明する。レンズLEの上下とは、レンズLEが眼鏡枠に嵌ったときのレンズLEの上下である。したがって、レンズLEの上下はX方向、Y方向、Z方向の上下とは異なる。
【0049】
図9に示すのは、レンズに施される印点の一例である。レンズLEの表面には印点2120a,2120b,2120c,2120dの計4点が施される。そのうち印点2120a,2120b,2120cは直線上に配置される。印点はインクによる印でもよいし、シールによる印でもよい。印点2120aは眼鏡レンズの光学中心を示す。印点2120b,2120cは印点2120aを中心にして左右に配置されており、印点2120bと2120cとを結ぶ直線はレンズLEの乱視軸角度を規定する基準軸方向(水平方向)を示す。印点2120dは、眼鏡レンズの上下を示す役割を持っており、印点2120aより上側に印点される。
【0050】
制御部1310は撮像素子1309によって撮像されたレンズ画像を解析し、印点2120a〜2120dの中心座標を求める。このとき、制御部1310は、直線上に並んだ印点の中央が印点2120a、印点2120aの左右が印点2120b,2120cであると識別するよう設定されている。また、3つの印点が並ぶ直線上から外れた印点が印点2120dであると識別するよう設定されている。制御部1310は、印点2120aの中心座標から測定光軸L100に対するその偏心情報を得る。すなわち、これは第1ハンド1230の保持基準軸線L101に対する偏心位置情報となる。また、印点2120a,2120b,2120cの中心座標から、レンズの水平方向を取得する。レンズの水平方向とは、レンズの乱視軸角度を規定する方向であって、この方向は眼鏡としてレンズが患者に装着されたときの患者の水平方向と一致する。
【0051】
次に、制御部1310は、印点2120a,2120b,2120cに対する印点2120dの位置によって眼鏡レンズLEの上下を検知する。例えば、制御部1310は印点2120a,2120b,2120cを結ぶ直線によってレンズLEを2つの領域に別けたとき、印点2120dの印点された方の領域がレンズの上部(上側)であると検知するようにプログラミングされてもよい。また、制御部1310は印点2120a,2120b,2120cを結ぶ直線によってレンズLEを2つの領域に別けたとき、印点2120dの印点された方の領域がレンズの上部(上側)であるという検知基準をメモリ1031に記憶しておく。そして、制御部1310は、印点2120a〜2120dの検出結果から、検知基準に基づいてレンズの上下を検知するものとしてもよい。
【0052】
制御部1310は、上記の方法でレンズLEの上下検知情報またはレンズの水平方向、及び保持基準軸線L101に対する光学中心の偏心情報等を含む加工条件データを取得し、ホストPC1030に送信する。
【0053】
マーク検出ユニット1300による測定が完了すると、レンズ搬送ユニット1200は第1ハンド1230に保持したレンズLEを加工ユニット1000まで搬送する。第1ハンド1230のXY方向への移動制御によって、加工ユニット1000が有するチャック軸の回転軸線L103と第1ハンド1230の基準軸線L101が一致するようにレンズLEを置いた後、第1ハンド1230の下降動作によりレンズLEを吸着部材1130上にセットする。
【0054】
その後、第1ハンド1230側の吸着を解除するとともに、ポンプユニット1135の吸引動作の作動によりレンズLEの後面側を吸着部材1130に吸引し、上チャック軸1111を下降する。これにより、レンズLEは印点位置の測定時の状態が維持されたままチャッキングされる。レンズLEの吸着を解除した第1ハンド1230は、加工ユニット1000から離脱させる。
【0055】
なお、レンズLEを吸着部材1130上にセットする際、チャック軸の回転軸線L103に対してレンズLEの光学中心が大きくずれていると、加工形状の精度に影響を与えることがある。このため、ホストPC1030がマーク検出ユニット1300により得られた光学中心の偏心量が所定の範囲内(例えば、10mm)のものかを検知し、これを超えるときにはその偏心分を補正するように第1ハンド1230の移動を制御してレンズをセットするとよい。
【0056】
レンズLEのチャッキングが完了したら、次に、ホストPC1030はマーク検出ユニット1300により得られた加工条件データを加工ユニット1000に出力し、加工を開始させる。加工ユニット1000の制御部1160は、先に入力された眼鏡枠の玉型データ、レイアウトデータ、レンズ処方の柱面軸角度データ等に加工条件データを加味し、回転軸線L103に対する光学中心の偏心分及び水平方向のずれ分、を補正した加工データを演算する。この加工データはホストPC1030側で得るようにしても良い。
【0057】
演算方法としては、例えば、
図10に示すように、玉型の幾何学中心F0を基準とする玉型データの動径情報(rn,θn)を、レンズ回転中心G0を基準にして座標変換して新たな動径情報(r´n,θ´n)を求める。変換する際は、幾何学中心F0に対してレイアウトデータにより定まる光学中心O0の座標位置と、この光学中心O0の座標位置に対して加工条件データから定まるレンズ回転中心G0の座標位置を用いるとよい。
【0058】
また、乱視軸角度については、玉型データの水平方向に対して印点2120a〜2120cの検出によって得られたレンズLEの水平方向のずれ分を補正するように、光学中心O0を中心にして玉型データの玉型形状を回転させた動径形状に変換して求める。
【0059】
乱視軸角度に関して玉型データが補正されると、同様に、玉型データの上下と、印点2120dの検出によって得られたレンズの上下が整合(一致)するように、例えば、光学中心O0を中心にして玉型データの玉型形状を180度回転させた動径形状に変換して求める。
【0060】
このようにして、制御部1310は、まず3点の印点2120a、2120b、2120cを検出することによって、レンズLEの光学中心及びレンズLEの乱視軸を規定する水平方向を読み取る。そしてレンズLEの光学中心及び乱視軸を規定する水平方向と、玉型データの光学中心及び乱視軸を規定する水平方向とを整合させる。さらに、制御部1310は印点2120dを検出することによって、加工時のレンズLEの上下と玉型データの上下とを整合させる。
【0061】
なお、玉型データの上下とは、玉型データを取得した元の眼鏡枠の上下である。従って、玉型データの上下とは、X方向、Y方向、Z方向の上下方向とは異なる。
【0062】
このように、制御部1310は、演算によって玉型データを補正することで、眼鏡レンズLEの光学中心の位置及び乱視軸の方向と、レイアウトデータによって定まる光学中心の位置、及び/又は、玉型データの乱視軸の方向を整合させる整合手段として用いられてもよい。
【0063】
その後、制御部1160は算出した加工データに基づき、レンズの回転角及びレンズ研削部1150R、1150Lのレンズに対する移動(チャック軸と砥石回転軸との軸間距離、眼鏡レンズLEに対する砥石回転軸の軸方向の位置)を制御しながら加工を行う。これにより、眼鏡レンズLEは精度良く予定する形状に加工される。
【0064】
なお、レンズLEをチャック軸1111、1121によるチャッキング位置にセットする際には、上記のように行う他、第1ハンド1230のXY移動制御により、光学中心位置の偏心分を補正するようにしてもよい。すなわち、レンズ回転中心と光学中心とが一致するようにしてもよい。また、眼鏡枠の幾何学中心とレンズ回転中心を一致させるようにして枠心加工を行うこともできる。
【0065】
このようにレンズ回転中心に対して、第1ハンド1230の基準軸線L1を一致させるか、レンズの光学中心を一致させるか、又は眼鏡枠の幾何学中心を一致させるかは、予めホストPC1030で選択しておけば良い。さらに、玉型データ及びレイアウトデータに基づいて加工形状が安定するようにホストPC1030が判断し、選択しても良い。
【0066】
このように第1ハンド1230のXY移動制御によりレンズLEをセットする場合は、加工データをホストPC1030側で得るようにして、その移動制御はホストPC1030が行う。
【0067】
眼鏡レンズLEの加工が終了すると、加工終了信号がホストPC1030に送信される。ホストPC1030は再びレンズ搬送ユニット1200を作動させる。加工済みのレンズは第2ハンド1240により搬送する。第2ハンド1240が加工ユニット1000側に旋回され、加工ユニット1000側の上チャック軸1111が上昇した後、第2ハンド1240の保持基準軸線L102がチャック軸の回転軸線L103と一致する位置まで第2ハンド1240が移動する。その後、下チャック軸1121側の吸着を解除して第2ハンド1240が有する吸着片1243により加工済みレンズを吸着保持する。レンズの保持ができると、第2ハンド1240のXYZ方向の移動及び回旋動作により、レンズを搬送して再びトレイ1400まで加工済みレンズを戻す。
【0068】
片方のレンズ加工ができると、続いてもう片方のレンズを同様な手順で搬送して自動的に加工を行う。以後、各トレイ1400に載せられたレンズの搬送、加工が自動的に繰り返される。
【0069】
上記のように、印点等のマークを検出する場合、例えば、測定ユニット(本実施形態においてはマーク検出ユニット1300)はマークの位置を検出するだけでよい。したがって、レンズの光学特性を検出するよりも、容易にレンズの所定位置(例えば、光学中心)または所定方向(例えば、乱視軸の基準方向)を求めることができる。
【0070】
例えば、眼鏡レンズに施された印点等のマークを検出する場合、眼鏡レンズの光学特性を測定する場合に比べて、装置の構成が簡単になる。例えば、印点等のマークを検出する場合は、少なくとも一つの撮像素子によって、レンズに付された印点等のマークを撮像できればよい。これは、レンズの光学特性を測定する測定光学系が必ずしも必要でないからである。レンズの光学特性を測定する光学系としては、例えば、特開2008−299140号公報に開示されるカップ取付け装置に備わる光学系がある。レンズに付されたマークを検出する光学系は、例えば、光学特性を測定するために用いられる指標板等が不要になる。レンズに施された印点等のマークを検出する光学系は、本実施形態の構成に限らず、例えば、少なくとも一つの撮像素子を備え、レンズに施されたマークの像またはレンズ像を撮像できればよい。例えば、レンズの表面側に撮像素子と照明光源が備わるものでもよい。もちろん、本実施形態の眼鏡レンズ加工装置はレンズの光学特性を測定する測定光学系を備えてもよい。
【0071】
例えば、CPU等の計算機に実行させる演算方法も簡単になる。例えば、レンズと、レンズチャック軸の回転中心の位置または方向を合わせるために必要となるレンズの光学中心の位置を求めることが容易になる。レンズの光学特性を検出する場合は、例えば、レンズ、指標板を通過した光をスクリーンに投影させて撮像し、撮像した指標像の位置のずれによってレンズの光学中心を求める。撮像された複数の指標像のずれを算出する必要があるため、光学中心等の所定位置または所定方向を求める演算も複雑になる。これに比べ、レンズに施された印点を検出する場合は、例えば、画像処理によって印点の中心座標を検出するだけでよいため、演算処理も簡単である。
【0072】
本実施形態の眼鏡レンズ加工装置においては、マーキング装置(例えば、印点装置など)によって予め施されたマークを検出するだけであるので、精度よくレンズの所定位置または所定方向を検出することができる。
【0073】
また、プリズム量の小さいレンズにおいては、レンズの光学特性を検出することがさらに難しくなる。したがって、レンズの光学特性を検出することで、レンズの所定位置所定方向を求める方法では、プリズム量の小さいレンズを加工することが困難になる。
【0074】
このように、プリズム量の小さいレンズを加工する場合でも、レンズに施された印点を検出する方法であれば、容易に所定位置または所定方向を求め、加工を行うことができる。
【0075】
また、例えば、加工前の眼鏡レンズの幾何学中心に光学中心が位置していない場合は、光学特性の測定によって光学中心を求めることが困難になる。
【0076】
このように、眼鏡レンズの幾何学中心に光学中心が位置していない場合でも、予め、光学中心にマークが施されていれば、画像処理によって簡単にマークの所定位置を検出することができる。
なお、以上の説明では、マーク検出ユニット1300は、レンズLEの光学中心と乱視軸の基準方向が規定するためにレンズLEに施されたマークを検出する。そして、本装置には、レンズチャック軸に保持されたレンズLEの光学中心と乱視軸の基準方向を、レイアウトデータによって定まる光学中心と玉型データにおける乱視軸緒基準方向にそれぞれ整合させた。しかしながら、これに限定されない。
【0077】
例えば、マーク検出ユニット1300は、レンズLEの光学中心を規定するためにレンズLEに施されたマーク検出する。そして、本装置は、レンズLEの光学中心と、レイアウトデータによって定まる光学中心を整合させてもよい。
【0078】
また、例えば、マーク検出ユニット1300は、レンズLEの乱視軸の基準方向が規定するためにレンズLEに施されたマークを検出する。そして、本装置は、レンズチャック軸に保持されたレンズLEの乱視軸の基準方向と玉型データにおける乱視軸の基準方向を整合させてもよい。
【0079】
以上の説明のように、本実施形態の眼鏡レンズ加工装置は、眼鏡レンズの光学中心と乱視軸の基準方向の少なくともいずれかを規定するためにレンズLEに施されたマークを検出するマーク検出ユニットによって検出された検出結果に基づいて、レンズチャック軸に保持されたレンズLEの光学中心とレイアウトデータによって定まる光学中心を整合させる、及び/又は、レンズチャック軸に保持されたレンズLEの乱視軸の基準方向と玉型データにおける乱視軸の基準方向を整合させてもよい。なお、これらを整合させるための手段としては、例えば、制御部1160によるレンズの位置制御が含まれてもよいし、制御部1160に玉型データの位置制御等がありうる。
【0080】
なお、印点を検出する方法は、眼鏡レンズがフレームに組み付けた際、印点を残しておくと、瞳孔間距離の測定検査等が行い易い。
【0081】
また、上記のように、レンズの上下が規定される印点等のマークを検出することによって、上下左右で光学特性の異なるレンズLEの上下を自動で検知することができる。これによって、レンズの上下左右を間違えて加工することが防がれる。また、レンズLEの上下を自動で検知することにより、操作者がレンズの上下を判断する手間が省け、作業効率の向上が期待できる。
【0082】
また、上記のように、レンズの上下を自動で検知し、その検知結果に基づいて、レンズを加工するための加工データを補正する、又はレンズLEの方向を自動で補正することによって、操作者がレンズの方向または位置を変更する手間を省くことができる。つまり、眼鏡レンズの上下と玉型の上下とを整合させるための構成を備えることにより、レンズを加工するときの作業効率が上がる。
【0083】
整合手段としては、例えば、レンズを回転させる回転機構(例えば、第1回転機構または後述する第2〜第3回転機構)、または回転機構を駆動させる駆動部(例えば、第1駆動部または後述する第2〜第3駆動部)、駆動部を制御する制御部(例えば、第1制御部または後述する第2〜第3制御部)などが含まれる。
【0084】
なお、本実施形態の眼鏡レンズ加工装置は、マーク検出ユニットによって検出されたレンズLEの乱視軸の方向を規定するマーク(例えば、印点2120a〜2120c)とレンズLEの上下を規定するマーク(例えば、印点2120d)の検出結果に基づいて、整合手段(例えば、制御部1310など)は、レンズLEの乱視軸を規定する方向と玉型データの乱視軸を規定する方向を整合させた状態で、さらに加工時のレンズLEの上下と玉型データの上下とを整合させる眼鏡レンズ加工装置と表現することもできる。ただし、レンズLEの乱視軸の方向を規定するマークは印点(例えば、印点2120a〜2120c)だけでなく、レンズLEの光学的な特性及び光学的な特徴部分であってもよい。
【0085】
なお、本実施形態のように装置によって自動でレンズの方向を補正しなくてもよく、レンズの上下検知結果に基づいて操作者が手動でレンズの方向または位置を変えてもよい。
【0086】
なお、本実施形態のレンズ加工装置は、
図9に示す印点2120a〜2120dを読み取ってレンズLEの上下左右を検知するとしたが、上下検知可能な印点はこれに限らない。例えば、
図11に示すような印点であってもよい。
図11(a)〜(d)は、上下検知可能な印点の例を示す図である。
図11(a)の印点は印点2121a,2121b,2121c,2121dの計4点が直線的に施されている。印点2121aは眼鏡レンズの光学中心を示す。印点2121b,2121cは印点2121aを中心にして左右に配置されており、印点2121bと2121cとを結ぶ直線は乱視軸を規定する基準軸方向(水平方向)を示す。印点2121dは、眼鏡レンズの上下を示す。
【0087】
印点2121a,2121b,2121cは、等間隔に印点されており、それらの間隔は16mmに設定される。印点2121dは、印点2121cの外側に10mmの間隔を隔てて印点される。制御部1310は、印点の間隔の違いから、外側の印点2121bと印点2121dを見分けることができる。すなわち、外側の印点の内、隣の印点との間隔が狭い方が、印点2121dであり、間隔が広い方が印点2121bであることが判る。また、印点2121bの隣が印点2121aであり、印点2121dの隣が印点2121cであることが判る。印点2121dが識別できれば、レンズLEの上下左右方向を検知することができる。
【0088】
例えば、
図11(a)の印点の配置では、印点2121aに対して印点2121dを右に配置させたときのレンズの上下は、レンズの光学特性上の上下に一致する。逆に、印点2121dを左側に配置させたときレンズの上下は、光学特性上の上下と反対になる。このように、
図11(a)の印点を検出することによって、自動でレンズの上下左右方向を検知し、レンズLEの上下と玉型の上下を演算によって整合させてもよい。印点2121a〜2121dの像も同じ配置となるため、制御部1310は撮像素子によって得られた印点マーク像に基づいて同様に上下を検知することができる。
【0089】
また、上下検知可能な印点としては、例えば、
図11(b)に示すような印点であってもよい。
図11(b)の印点は、印点2122a,2122b,2122dの計3点が直線的に施されている。印点2122aは眼鏡レンズLEの光学中心を示す。印点2122b,2122dは印点2122aを中心にして左右に配置されており、印点2122bと2122dとを結ぶ直線は乱視軸を規定する基準軸方向(水平方向)を示す。また、印点2122dは印点2122a,2122bとは異なり、十字型のマークである。制御部1310は、印点2122aの像と印点2122dの像を印点のマークの違いによって識別する。
【0090】
このような配置の印点においても、制御部1310は印点2122aの像に対して印点2122dの像が左右のどちらに存在するかを検出することによってレンズの上下を検知することができる。
【0091】
また、上下検知可能な印点としては、例えば、
図11(c)に示すような印点であってもよい。
図11(c)の印点は、印点2123a,2123b,2123dの計3点が直線的に施される。印点2123aは眼鏡レンズLEの光学中心を示す。印点2123b,2123dは印点2123aを中心にして左右に配置されており、印点2123bと2123dとを結ぶ直線は乱視軸を規定する基準軸方向(水平方向)を示す。また、印点2123a,2123bが赤色で印点されるのに対して、印点2123dは青色で印点される。制御部1310は印点2123aの像と2123dの像を色の違いによって識別する。
【0092】
このような印点においても、制御部1310は印点2123aの像に対して印点2123dの像が左右のどちらに存在するかを検出することによって、レンズの上下を検知することができる。
【0093】
また上下検知可能な印点としては、例えば、
図11(d)に示すような印点であってもよい。
図11(d)の印点には、印点2124a,2124dの計2点が施されている。印点2124aは眼鏡レンズの光学中心を示す。印点2124dは印点2124aの下方(あるいは上方)に施される。ライン状の印点2124dの直線方向は乱視軸の基準軸方向(水平方向)を示す。
【0094】
このような印点においても、制御部1310は印点2124aの像に対する印点2124dの像の位置を検出することによって、レンズの上下を検知することができる。
【0095】
このように、レンズの上下を検知可能な印点は多種多様であり、本実施形態の眼鏡レンズ加工装置においても、種々の印点が利用できる。
なお、本実施形態の眼鏡レンズ加工装置は、レンズLEの上下が規定されるマークとして印点を検出し、レンズLEの上下左右方向を検知するもとしたが、これに限らない。例えば、累進焦点レンズにプリントされたレイアウトマークを検出することによって、レンズの上下を検出することも可能である。
【0096】
なお、本実施形態において、レンズLEの上下と玉型の上下とを整合(一致)させるために、レンズLEの上下の検知結果から加工データを補正するものと説明したが、これに限らない。例えば、マーク検出ユニット1300によって上下検知可能なマークが検出されると、第1制御部(例えば、制御部1310)は上記の第1回転機構を駆動させるための第1駆動部を制御する。第1制御部は第1駆動部を制御することによって、上下チャック軸を軸回りに回転させる。これにより、吸着部材1130に吸着保持されたレンズLEも回転させることができ、レンズLEの上下と玉型の上下とを整合(一致)させるために、レンズLEを加工ユニット1000に対して正しい向きに配置させることができる。これにより、制御部1310はレンズLEの上下を正しく加工するために、加工データを上下反転させる必要がなくなり、制御プログラムを簡略化できる。
【0097】
同様に、第1回転機構、第1制御部、第1駆動部等の整合手段によって、印点等のマークの検出結果から、レンズの光学中心または乱視軸の方向と、レイアウトデータによって定まる光学中心または玉型データの乱視軸の方向を整合させてもよい。
【0098】
例えば、整合手段は、駆動源(例えば、モータ)を持ち、眼鏡レンズを直接的に保持する一対のレンズチャック軸を軸回りに回転させるための第1回転機構と、第1回転機構(例えば、駆動源)を駆動させる第1駆動部と、第1駆動部を制御する第1制御部と、を備え、第1制御部は第1駆動部を制御してレンズ回転軸を回転させることによって、レンズ回転軸に直接狭持された眼鏡レンズの光学中心の位置及び乱視軸の方向と、レイアウトデータによって定まる光学中心の位置、及び玉型データの乱視軸の方向を整合させてもよい。
【0099】
また、レンズLEの上下を反転させる方法として、例えば、上下の検知結果に基づいて、第1ハンド1230に吸着されたレンズの角度を変更するような構成でもよい。例えば、
図12に示すように、第1ハンド1230(保持部)の端部の吸着基部1232に、中央に穴の開いた回転盤1234(第2回転機構)が保持基準軸線L101を中心に回転可能に設けられるとする。また、回転盤1234には吸着片1233が備えられる。そして、駆動部1601(第2駆動部)の駆動が駆動伝達部1602によって回転盤1234に伝達されることで、回転盤1234は保持基準軸線L101を中心に回転する。
【0100】
このような構成の場合、マーク検出ユニット1300によって上下検知可能なマークが検出されると、制御部1310(第2制御部)は、レンズの上下に関する情報に基づいて駆動部1601を制御し、回転盤1234を回転させる。これにより、吸着片1233に吸着保持されたレンズLEも回転させることができ、レンズLEの上下をと玉型の上下とを整合(一致)させるために、レンズLEを加工ユニット1000に対して正しい向きに配置させることができる。この状態で、レンズLEを吸着部材1130上にセットすることにより、制御部1310はレンズLEの上下を正しく加工するために、加工データを上下反転させる必要がなくなり、制御プログラムを簡略化できる。
【0101】
同様に、第2回転機構、第2制御部、第2駆動部等の整合手段によって、印点等のマークの検出結果から、レンズの光学中心または乱視軸の方向と、レイアウトデータによって定まる光学中心または、玉型データの乱視軸の方向を整合させてもよい。
【0102】
例えば、整合手段は、レンズ保持部に保持された眼鏡レンズを、眼鏡レンズの周方向に回転させるための第2回転機構と、第2回転機構を駆動させる第2駆動部と、第2駆動部を制御する第2制御部と、を備えており、第2制御部は第2駆動部を制御してレンズ保持部に保持された眼鏡レンズを周方向に回転させることによって、眼鏡レンズの光学中心の位置及び乱視軸の方向と、レイアウトデータによって定まる光学中心の位置及び、玉型データの乱視軸の方向を整合させてもよい。
【0103】
また、レンズLEの上下を反転させる方法として、例えば、マーク検出ユニット1300においてレンズの位置を調整する方法が考えられる。例えば、
図13に示すマーク検出ユニット1300には、測定光軸L100を中心に回転可能なレンズ置載部1621(第1レンズ置載部)と、レンズ置載部をレンズLEの周方向に回転させるための第3回転機構と、レンズ置載部1621を駆動させる第3駆動部1623が設けられる。このような場合、第1ハンド1230によってレンズLEがレンズ置載部1621に載せられると、測定光学系はレンズLEの測定を開始する。そして、印点等のマークの検出結果に基づいてレンズLEの光学中心,水平方法,上下等のレンズ情報が取得されると、制御部1310(第3制御部)は第3駆動部1623を回転させてレンズ置載部1621を回転させてレンズLEを周方向に回転させ、レンズLEが加工装置に対して適した方向になるように調整することができる。レンズLEの方向が調整されると、再び第1ハンド1230によって吸着保持され、レンズLEを加工装置に運搬されるようにしてもよい。これにより、レンズLEの上下を測定する手段とレンズの方向を補正する手段をマーク検出ユニット1300に集約できる。
【0104】
同様に、第3回転機構、第3制御部、第3駆動部等の整合手段によって、印点等のマークの検出結果から、レンズの光学中心または乱視軸の方向と、レイアウトデータによって定まる光学中心または、玉型データの乱視軸の方向を整合させてもよい。
【0105】
また、レンズの上下を反転させる方法として、例えば、加工ユニット1000は、マーク検出ユニット1300によって測定済みのレンズLEを第1ハンド1230から受け取り、チャック軸1111、1121にてチャックする。そして、マーク検出装置1300からのレンズの水平方向と上下に関する情報に基づいて、チャック軸1111、1121を回転させ、レンズの水平方向及び上下が加工装置に対して適切な方向になるように調整するような構成でもよい。このようにすれば、レンズの測定結果に基づいて、加工データを補正する必要がなくなり、制御プログラムを簡略化することができる。
【0106】
同様に、印点等のマークの検出結果から、レンズ回転軸を回転させることで、レンズの光学中心または乱視軸の方向と、レイアウトデータによって定まる光学中心または、玉型データの乱視軸の方向を整合させてもよい。
【0107】
なお、本実施形態の眼鏡レンズ加工装置は、マーク検出装置1300、レンズ搬送ユニット1200、トレイ搬送ユニット1500を備えるものとしたが、これに限らない。各装置は独立して設けられており、各装置によって眼鏡レンズ加工システムが構成されてもよい。そして、この眼鏡レンズ加工システムは、マーク検出ユニット1300の検出結果に基づいて、レンズLEの上下と玉型の上下を整合させ、正しく加工を行うようにしてもよい。
【0108】
また、この眼鏡レンズ加工システムは、各種制御処理を司るプロセッサ(例えば、CPU)と、以上に説明した方法で眼鏡レンズLEを加工するためのプログラムを記憶する記憶媒体と、を備える少なくとも1つの制御部(例えば、ホストPC1030,制御部1250,制御部1300,制御部1160,制御部1510等)を備えてもよい。そして、プロセッサは記憶されたプログラムを実行するようにしてもよい。
【0109】
また、以上の説明において、眼鏡レンズ加工装置または眼鏡レンズ加工システムは、マーク検出ユニット1300を備えるものとしたが、これに限らない。眼鏡レンズ加工装置または眼鏡レンズ加工システムはマーク検出ユニット1300を備えず、外部から印点等のマークの検出結果を取得してもよい。そして、取得された情報に基づいてレンズLEとレンズ回転軸の位置を調整してもよい。同様に、眼鏡レンズ加工装置または眼鏡レンズ加工システムは、外部からレンズLEの上下が検知可能な情報を取得するようにしてもよい。そして、取得された情報に基づいてレンズLEの上下と玉型の上下を整合させて、レンズLEを正しく加工するようにしてもよい。
【0110】
上下検知マークとしては、例えば、
図14(a)に示すように、上下検知用マークとして三角形の上マークMuと円形の下マークMdがプリントされているとする。このような場合、三角形の上マークMuがレンズの上側に位置し、円形の下マークMdがレンズの下側に位置することを予め設定しておくことで、レンズの上下を検知することができる。
【0111】
また、例えば、
図14(b)に示すように、上下検知用マークとして上下左右で非対称なマークM1、または英数字等の文字によるマークM2がプリントされているとする。このような場合、マークの形状または文字の方向等の位置を検出した検出結果に基づいて、レンズの上下を検出するよう設定されてもよい。
【0112】
なお、加工前のレンズ形状が上下で異なるレンズまたはグラデーションレンズ等の外観によって上下が検知できるレンズは、印点等のマークが施されていない場合でも、画像処理によって上下を自動で検知することができる。このような場合も、上下を検知できる特徴部分(レンズの形状または色)をメモリ51に記憶させて予め設定しておくことで、レンズの上下を自動で検知することは可能である。
【0113】
また、レンズLEの上下を検知するマークとして開けられた穴を検出することによっても、レンズの上下を自動で検知することは可能である。例えば、
図15に示すように、上部に穴H0が開いたレンズLEの穴H0の位置を検知し、レンズの上下を自動で検知することができる。この場合、レンズの光学中心(または枠中心)、レンズの水平方向等がマーキングされていることが好ましい。
【0114】
レンズLEの穴H0を検出する場合、制御部50は、撮像素子33により撮像された画像に基づいて穴位置の測定を開始する。このとき、穴H0は、反射部材20によりレンズの後面側から照明されているので、穴H0のエッジで反射光が拡散する。これにより、撮像素子33で受光される光量が減少し、穴H0の輪郭が明確に検出される。
【0115】
そして、制御部50は、穴H0とは別に施された印点などを検出することによってレンズの光学中心(又は枠中心)レンズの水平方向等の情報を取得し、取得した情報と穴の位置に基づいてレンズLEの上下を検知する。このように、レンズの上下が検知できるマークとして開けられた穴を検出することによって、レンズの上下を検知することもできる。また、穴だけでなく、傷、凹み、窪み、レーザ加工機等によって形成されたレーザ痕などの物理的な加工でもよい。眼鏡レンズの上下を規定するために施された特定の物理的な加工等のマークについても同様に、レンズLEの上下を検知することができる。
【0116】
なお、以上の説明において、レンズの幾何学中心にカップの中心を合わせるのであれば、レンズの光学中心(又は枠中心)に印点等のマーク等が施されている必要はない。撮像素子33により撮像されたレンズ像の明暗を画像処理することによって、レンズの外形が計測されるため、計測された外形の幾何学中心に対する穴の位置に基づいて、レンズの上下を検出してもよい。
【0117】
なお、本実施形態において、レンズの印点等のマーク等を検出する方法として、撮像素子で撮影した画像を解析することで、印点等のマーク等を検出するものとしたが、これに限らない。画像解析でなくとも、印点または穴などの種々のマークを検出することができればよい。例えば、磁気を帯びた塗料で印点等のマークが施されれば、塗料の磁気を検出してマークの位置を検出することができる。
【0118】
なお、以上の説明において、レンズに施されたマークを検出するために撮像素子を用いた光イメージングまたは磁気イメージングによって画像解析をするものとしたが、これに限らない。撮像素子は用いず、光または磁気等の有無を検出するセンサを用いて、光または磁気の検出される位置を測定することによっても、レンズの所定位置または所定方向、レンズの上下を検知することは可能である。例えば、レンズの上部に光を遮断するマークが施してあるとすれば、光センサによって光が弱く検出される部分がレンズの上部であることが検知できる。このように、レンズの所定位置ならびに所定方向または上下が規定されるマークの方向が検出できればよい。マークの方向は、マークの位置から検出してもよい。
【0119】
なお、本件発明の第1実施形態及び第2実施形態において、眼鏡レンズ加工装置(例えば、眼鏡レンズ加工装置またはカップ取付け装置など)はマーク検出ユニット(例えば、マーク検出ユニット1300、200など)を備えるものとしたが、これに限らない。マーク検出ユニット1300、200は備えず、外部から眼鏡レンズLEに施された印点等のマーク等の検出結果を取得する取得手段(信号受信ユニットなど)を有し、取得された検出結果に基づいてレンズLEの所定位置または所定方向、レンズLEの上下を検知するものでもよい。
【0120】
また、眼鏡レンズ加工装置は、眼鏡レンズに染色加工を施す染色装置であってもよい。染色装置は、例えば、グラデーション染色加工等の方向性のある染色加工をレンズに施す場合、レンズに施された上下が規定されるマークを検出してレンズの上下を検知するものとしてもよい。そして、レンズの上下に合わせて染色加工を施してもよい。これにより、レンズの上下を誤って染色加工することが防がれ、レンズに対して正しい方向に染色加工を施すことができる。
【0121】
なお、本実施形態の眼鏡レンズ加工装置に備わる上下検知部(例えば、制御部1310又は制御部50)は、マーク検出ユニット(例えば、マーク検出ユニット1300又は200)によって検出されたレンズの上下を規定するマークの検出結果に基づいて、マークの方向を検知することで眼鏡レンズの上下を検知してもよい。なお、マークの方向を検知するとは、基準位置(例えば、眼鏡レンズの光学中心位置、レンズ画像に形成されるレンズ置載部の位置)に対するマークの位置からマークの方向を検知する手法も含む。
【0122】
上下を検知する場合、上下検知部(例えば、制御部1310又は制御部50など)は、マーク検出ユニットによって検出されたマークの検出結果から、レンズの上方向の角度を検知してもよい。上下方向の角度検知の結果に基づいて、装置は、レンズの上下と玉型データの上下とを整合させるようにしてもよい。これにより、適正な整合が可能となる。
【0123】
上方向の角度を検知する方法としては、マーク検出ユニットの測定光学系に対するマークの角度を検知することによって、レンズの上方向の角度を検知してもよい。もちろん、上方向の角度を検知するとは、眼鏡レンズの所定方向(例えば、下方向)の角度を検知することによって、上方向の角度を検知することを含む。つまり、上下の方向が検知できればよい。
【0124】
もちろん、上下検知部は、マークの角度を検知しなくともよく、マーク検出ユニットによって検出されたマークの検出結果から、例えば、マーク検出ユニットの測定光学系の基準方向に対して、レンズの上下が一致しているか否か検知してもよい。
【0125】
また、本実施形態においては、上下判別が可能な印点を検出するものとしてが、これに限らない。上下判別ができない印点であってもよい。例えば、光学中心と、その左右に直線上に並ぶ3点の印点を検出するようにしてもよい。
【0126】
なお、以上の説明においては、光学特性を測定する機能を持たない装置を例に説明したが、光学特性の測定に加えてマークを検出する機能を有する装置であれ、本実施形態の適用は可能である。