特許第6183597号(P6183597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183597
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】液滴塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20170814BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   B05C5/00 101
   B05C11/10
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-162238(P2013-162238)
(22)【出願日】2013年8月5日
(65)【公開番号】特開2015-29966(P2015-29966A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(72)【発明者】
【氏名】進藤 修
(72)【発明者】
【氏名】水野 亨
(72)【発明者】
【氏名】石井 政裕
(72)【発明者】
【氏名】和田 将弥
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−148235(JP,A)
【文献】 特開2004−344883(JP,A)
【文献】 特開2002−282740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00− 5/04
B05C 7/00−21/00
B05D 1/00− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布する液体が溜まる液溜まり部と、
前記液溜まり部から延び、先端が吐出口となる吐出路と、
先端が前記液溜まり部内で前記吐出路に向けて往復動するロッドと、
前記ロッドの基端側に設けられたピストンと、
前記ピストンを収容するシリンダと、
前記ピストンを、前記ロッドが前記吐出路に向かう方向に付勢する付勢手段と、
前記ピストンによって仕切られた前記シリンダ内の空間の少なくとも一方の空気圧を変化させて前記ピストンを往復動させるピストン駆動手段と、
前記吐出口から吐出される液滴のワンショットあたりの吐出量を、前記ピストンのストロークを変更することで調整する吐出量調整手段とを備え、
ある基板への塗布が完了すると前記吐出量調整手段により前記吐出量を調整し、前記調整が完了し且つ次に塗布する基板の準備が完了すると当該基板への塗布を開始する、液滴塗布装置。
【請求項2】
前記吐出量調整手段は、前記ピストン駆動手段によって前記ピストンを後退させる際の空気の流量を変化させることで前記吐出量を調整する手段をさらに備える、請求項1に記載の液滴塗布装置。
【請求項3】
塗布する液体が溜まる液溜まり部と、
前記液溜まり部から延び、先端が吐出口となる吐出路と、
先端が前記液溜まり部内で前記吐出路に向けて往復動するロッドと、
前記ロッドの基端側に設けられたピストンと、
前記ピストンを収容するシリンダと、
前記ピストンを、前記ロッドが前記吐出路に向かう方向に付勢する付勢手段と、
前記ピストンによって仕切られた前記シリンダ内の空間の少なくとも一方の空気圧を変化させて前記ピストンを往復動させるピストン駆動手段と、
前記吐出口から吐出される液滴のワンショットあたりの吐出量を、前記ピストン駆動手段によって前記ピストンを後退させる際の空気の流量を変化させることで調整する吐出量調整手段とを備え、
ある基板への塗布が完了すると前記吐出量調整手段により前記吐出量を調整し、前記調整が完了し且つ次に塗布する基板の準備が完了すると当該基板への塗布を開始する、液滴塗布装置。
【請求項4】
塗布する液体が溜まる液溜まり部と、
前記液溜まり部から延び、先端が吐出口となる吐出路と、
先端が前記液溜まり部内で前記吐出路に向けて往復動するロッドと、
前記ロッドの基端側に設けられたピストンと、
前記ピストンを収容するシリンダと、
前記ピストンを、前記ロッドが前記吐出路に向かう方向に付勢する付勢手段と、
前記ピストンによって仕切られた前記シリンダ内の空間の少なくとも一方の空気圧を変化させて前記ピストンを往復動させるピストン駆動手段と、
前記吐出口から吐出される液滴のワンショットあたりの吐出量を調整する吐出量調整手段とを備え、
前記吐出量調整手段は、前記ピストンのストロークを変更することで前記吐出量を調整する第1の吐出量調整と、前記ピストン駆動手段によって前記ピストンを後退させる際の空気の流量を変化させることで前記吐出量を調整する第2の吐出量調整とを実行可能であり、塗布する液体の粘度に応じていずれの吐出量調整を実施するか又は双方の吐出量調整を実施するかを決定し、
ある基板への塗布が完了すると前記吐出量調整手段により前記吐出量を調整し、前記調整が完了し且つ次に塗布する基板の準備が完了すると当該基板への塗布を開始する、液滴塗布装置。
【請求項5】
前記流量を変化させるときの供給圧力が一定である請求項2からのいずれか一項に記載の液滴塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂や接着剤等の液体(液滴)を基板等の被塗布物に所定量塗布する液滴塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴塗布装置に関し、電子部品業界においては、被塗布物に対して高速かつ精密な塗布量(吐出量)の液滴塗布を行うことが求められている。下記特許文献1は、重量計上に分配された粘性材料の点滴の量と予め記憶された制御量とを比較してエラー信号を発生し、エラー信号が許容範囲内になるように較正する方法を開示する。下記特許文献2は、液滴塗布装置(ジェットディスペンサー)において、プランジャーロッドを退行させる際に流量制御されたエアーを供給してプランジャーロッドの退行速度を制御することで、ノズル先端の吐出口から空気を吸い込むことを防止する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4643021号公報
【特許文献2】特許第4663894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液滴の吐出量を調整する動作は精密塗布には欠かせないが、高速塗布の観点では、吐出量の調整に伴う時間のロスは小さいことが望ましい。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、吐出量を調整することによる時間のロスを小さくすることが可能な液滴塗布装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、液滴塗布装置である。この液滴塗布装置は、
塗布する液体が溜まる液溜まり部と、
前記液溜まり部から延び、先端が吐出口となる吐出路と、
先端が前記液溜まり部内で前記吐出路に向けて往復動するロッドと、
前記ロッドの基端側に設けられたピストンと、
前記ピストンを収容するシリンダと、
前記ピストンを、前記ロッドが前記吐出路に向かう方向に付勢する付勢手段と、
前記ピストンによって仕切られた前記シリンダ内の空間の少なくとも一方の空気圧を変化させて前記ピストンを往復動させるピストン駆動手段と、
前記吐出口から吐出される液滴のワンショットあたりの吐出量を、前記ピストンのストロークを変更することで調整する吐出量調整手段とを備え、
ある基板への塗布が完了すると前記吐出量調整手段により前記吐出量を調整し、前記調整が完了し且つ次に塗布する基板の準備が完了すると当該基板への塗布を開始する。
【0007】
前記吐出量調整手段は、前記ピストン駆動手段によって前記ピストンを後退させる際の空気の流量を変化させることで前記吐出量を調整する手段をさらに備えてもよい。
【0008】
本発明のもう1つの態様は、液滴塗布装置である。この液滴塗布装置は、
塗布する液体が溜まる液溜まり部と、
前記液溜まり部から延び、先端が吐出口となる吐出路と、
先端が前記液溜まり部内で前記吐出路に向けて往復動するロッドと、
前記ロッドの基端側に設けられたピストンと、
前記ピストンを収容するシリンダと、
前記ピストンを、前記ロッドが前記吐出路に向かう方向に付勢する付勢手段と、
前記ピストンによって仕切られた前記シリンダ内の空間の少なくとも一方の空気圧を変化させて前記ピストンを往復動させるピストン駆動手段と、
前記吐出口から吐出される液滴のワンショットあたりの吐出量を、前記ピストン駆動手段によって前記ピストンを後退させる際の空気の流量を変化させることで調整する吐出量調整手段とを備え、
ある基板への塗布が完了すると前記吐出量調整手段により前記吐出量を調整し、前記調整が完了し且つ次に塗布する基板の準備が完了すると当該基板への塗布を開始する。
【0009】
本発明のもう1つの態様は、液滴塗布装置である。この液滴塗布装置は、
塗布する液体が溜まる液溜まり部と、
前記液溜まり部から延び、先端が吐出口となる吐出路と、
先端が前記液溜まり部内で前記吐出路に向けて往復動するロッドと、
前記ロッドの基端側に設けられたピストンと、
前記ピストンを収容するシリンダと、
前記ピストンを、前記ロッドが前記吐出路に向かう方向に付勢する付勢手段と、
前記ピストンによって仕切られた前記シリンダ内の空間の少なくとも一方の空気圧を変化させて前記ピストンを往復動させるピストン駆動手段と、
前記吐出口から吐出される液滴のワンショットあたりの吐出量を調整する吐出量調整手段とを備え、
前記吐出量調整手段は、前記ピストンのストロークを変更することで前記吐出量を調整する第1の吐出量調整と、前記ピストン駆動手段によって前記ピストンを後退させる際の空気の流量を変化させることで前記吐出量を調整する第2の吐出量調整とを実行可能であり、塗布する液体の粘度に応じていずれの吐出量調整を実施するか又は双方の吐出量調整を実施するかを決定し、
ある基板への塗布が完了すると前記吐出量調整手段により前記吐出量を調整し、前記調整が完了し且つ次に塗布する基板の準備が完了すると当該基板への塗布を開始する。
【0010】
前記流量を変化させるときの供給圧力が一定であってもよい。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、吐出量を調整することによる時間のロスを小さくすることが可能な液滴塗布装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る液滴塗布装置の概略構成図。
図2図1の吸気口12及び排気口13を吸排気口16とした構成の一部拡大図。
図3図1の液滴塗布装置における吐出時のロッド8の動作説明図。
図4図1の液滴塗布装置における、ロッドセットストロークと吐出量との関係を示すグラフ。
図5図1の液滴塗布装置においてロッド8が下降し始める直前に、吐出口5から下側に形成されている液溜まりの拡大図。
図6】供給圧力を一定とし、流量を大又は小とした2通りについて、ピストン7の下側空間の気圧の時間変化を示したグラフ。
図7】供給圧力を大又は小とした2通りについて、ピストン7の下側空間の気圧の時間変化を示したグラフ。
図8図1の液滴塗布装置における吐出量調整(補正)動作のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る液滴塗布装置の概略構成図である。この液滴塗布装置は、シリンジ1の内部に塗布対象となる液体(樹脂や接着剤等)を貯留する。シリンジ1から液通路2が延びて液溜まり部3に至る。液溜まり部3の内底面はテーパー面となっており、このテーパー面の先端(内底面中央)から吐出路としてのノズル4が下方に延びる。ノズル4の先端は、液滴を吐出する吐出口5である。シリンジ1の内部の液面は所定の圧力で加圧されており、液通路2、液溜まり部3、及びノズル4は塗布対象となる液体で満たされる。
【0016】
液溜まり部3の上方には、シリンダ6及びピストン7が設けられる。ピストン7の下面からはロッド8が延びて液溜まり部3に至る。ピストン7の上方には付勢手段としてのスプリング9が設けられる。スプリング9は、ピストン7の上面を押圧し、ピストン7を下方、すなわちロッド8がノズル4に向かう方向(ロッド8が下降(前進)する方向)に付勢する。ピストン7の外周面には環状のシール10が設けられる。シール10は、ゴム等の弾性部材であり、ピストン7で仕切られた上下の空間の間の空気の流通を防止する。シリンダ6と液溜まり部3との境界部には環状のエア用シール11aと液体用シール11bが設けられる。エア用シール11aおよび液体用シール11bは、ともにゴム等の弾性部材である。エア用シール11aはロッド8の外周面と当接し、シリンダ6から液溜まり部3に空気が漏れることを防止する。液体用シール11bもまたロッド8の外周面と当接し、液溜まり部3からシリンダ6に液体が漏れることを防止する。
【0017】
シリンダ6の外周面には吸気口12及び排気口13が開口する。吸気口12及び排気口13は、シリンダ6内の、ピストン7の下側の空間とそれぞれ連通する。吸気口12は可変絞り弁14を介して切替弁15(電磁切替弁)に接続される。排気口13は切替弁15に接続される。切替弁15は、不図示の圧縮空気源又は大気に選択的に連通する。可変絞り弁14及び切替弁15は、ピストン駆動手段の例示である。なお、図1に示す吸気口12及び排気口13をまとめて、図2に示すように吸排気口16としてもよい。この場合、可変絞り弁14を可変スピードコントローラ17に置換する。可変スピードコントローラ17は、可変絞り弁とチェック弁(逆止弁)を並列接続したものである。チェック弁は排気方向に空気を流すように設けられる。可変絞り弁およびチェック弁(逆止弁)は電気制御式の比例制御弁を用いる。電気制御式の比例制御弁は、印加電流または印加電圧に対する流量の応答性に優れており、高速かつ高精度な制御が可能となる。
【0018】
ピストン7の上面(ロッド8の基端となる面の反対面)の中央には、ストッパ端18が設けられる。ストッパ端18はピストン7と一体の凸部である。シリンダ6内の、ピストン7の上側の空間には、ストッパ端18と対向する可変ストッパ19が設けられる。可変ストッパ19の突出量は、不図示の制御装置により調節可能である。なお、可変ストッパの制御装置として、電気制御式の比例制御弁を用いた機構を用いることにより、応答性に優れ、高速かつ高精度な制御が可能となる。ストッパ端18が可変ストッパ19に当接することにより、ピストン7の上昇(後退)位置が定められる。
【0019】
図3は、図1の液滴塗布装置における吐出時のロッド8の動作説明図である。図1に示す切替弁15が大気と連通した状態では、ピストン7は、スプリング9の付勢により、ロッド8の先端がノズル4の上部開口を塞ぐまで下降(前進)している(図3(A))。ここから切替弁15を圧縮空気源に連通した状態にすると、可変絞り弁14を介して吸気口12からシリンダ6内のピストン7の下側の空間に圧縮空気が供給される。すると、当該空間が所定の空気圧を超えたところでピストン7はスプリング9の付勢に抗して上昇(後退)し、ロッド8の先端はノズル4の上部開口から遠ざかる(図3(A)→図3(B))。このときのピストン7及びロッド8の上昇距離(ストローク)、すなわち図3(B)に示すロッドセットストロークは、図1に示す可変ストッパ19の突出長によって決まる。また、可変絞り弁14の流量を調節することで、ピストン7及びロッド8が上昇し始めるタイミングを変更することができる。
【0020】
その後、切替弁15を大気と連通した状態にすると、シリンダ6内のピストン7の下側の空間から排気口13を介して当該空間内が大気圧になるまで空気が流出する。すると、ピストン7はスプリング9の付勢により再度下降(前進)し、ロッド8の先端はノズル4の上部開口を塞ぎ(図3(B)→図3(C)→図3(A))、ノズル4の先端の吐出口5から液滴が吐出される。以上説明したピストン7及びロッド8の動作は図2に示す構成でも同様である。図2に示す構成では、吸気時には、可変スピードコントローラ17の可変絞り弁によって制御された流量で、ピストン7の下側の空間に吸排気口16を介して圧縮空気が供給される。排気時には、吸排気口16及び可変スピードコントローラ17の逆止弁を介してピストン7の下側の空間が排気され、当該空間が大気圧となる。
【0021】
本実施の形態では、吐出口5から吐出される液滴のワンショットあたりの吐出量を調整するために、以下の2つの手法のいずれか又は両方を実施する。1つ目の手法は、図3(B)に示すロッドセットストロークの変更(調節)である。2つ目の手法は、ピストン7の下側の空間に圧縮空気を供給するときの流量変更(調節)である。なお、流量変更の際に、供給圧力は一定にすることが好ましい。供給圧力を一定とし流量を変更することは、応答性に優れた流量調整のみで吐出量を調整できる点において有利である。
【0022】
ストローク変更による吐出量調整
図4は、図1の液滴塗布装置における、ロッドセットストロークと吐出量との関係を示すグラフである。ロッド8が下降すると、液溜まり部3内の液体には、図3(C)に示すようにC方向及びD方向に押し出す力が働く。図3(B)に示すロッドセットストロークを変更すると、D方向の力が変化して、吐出口5から吐出される液滴のワンショットあたりの吐出量が変化する。具体的には、図4に示すように、ロッドセットストロークを長くするほどワンショットあたりの吐出量が増加する。
【0023】
流量変更による吐出量調整
図5は、図1の液滴塗布装置においてロッド8が下降し始める直前に、吐出口5から下側に形成されている液溜まりの拡大図である。図5(A)に示すように、ピストン7の下側の空間に圧縮空気を供給するときの流量が小さいと、吐出口5から下側に形成されている液溜まりは小さい。これに対し、図5(B)に示すように、ピストン7の下側の空間に圧縮空気を供給するときの流量が大きいと、吐出口5から下側に形成されている液溜まりは大きい。図5(A)及び図5(B)における液溜まりの大きさの違いは、ピストン7及びロッド8が上昇し始めるタイミングの違いに起因する。
【0024】
図6は、供給圧力を一定とし、流量を大又は小とした2通りについて、ピストン7の下側空間の気圧の時間変化を示したグラフである。ピストン7及びロッド8が上昇し始めるタイミングは、ピストン7の下側の空間の気圧によるピストン7を上昇させようとする力がスプリング9の付勢力を超えたタイミングであり、流量が大きいほど当該タイミングは早く到来する(図6の時刻T1,T2)。液溜まりは、ピストン7及びロッド8が上昇してノズル4の上部開口が開いてから形成され始め、時間の経過につれて大きくなる。このため、ピストン7の下側の空間に圧縮空気を供給するときの流量が小さいと、ピストン7及びロッド8が上昇し始めるタイミングが遅くなるため、次にロッド8が下降し始めるまでの液溜まりの形成時間が短く、液溜まりが小さい。このため、次にロッド8が下降した際の液滴の吐出量は小さくなる。これに対し、ピストン7の下側の空間に圧縮空気を供給するときの流量が大きいと、ピストン7及びロッド8が上昇し始めるタイミングが早くなるため、次にロッド8が下降し始めるまでの液溜まりの形成時間が長く、液溜まりが大きい。このため、次にロッド8が下降した際の液滴の吐出量は大きくなる。
【0025】
図7は、供給圧力を大又は小とした2通りについて、ピストン7の下側空間の気圧の時間変化を示したグラフである。供給圧力を変化させることによっても、図7に示すようにピストン7及びロッド8が上昇し始めるタイミングを変化させることができる(図7の時刻T1,T2)。しかし、図6の流量変更の場合と比較すると、供給圧力変更ではタイミングの差を大きくとることができない。また、タイミングの差を大きくとろうとして供給圧力を更に小さくすると、ピストン7及びロッド8を上昇させるのに必要な気圧に近くなり、ピストン7及びロッド8の上昇動作が不安定になる恐れがある。こうした観点から、図6に示したように、供給圧力は一定としつつ流量を変化させることでピストン7及びロッド8が上昇し始めるタイミングを調節することが好ましい。
【0026】
図8は、本実施の形態の液滴塗布装置における吐出量調整(補正)動作のフローチャートである。この動作は、吐出量調整プログラムを実行する制御装置(吐出量調整手段)によって行われ、例えば所定枚数の基板への塗布が完了すると開始される。まず、吐出量の補正方法を選択する(S1)。ここでは、塗布する液体の粘度が「高」、「中」、「低」のいずれであるかに応じて異なる手法での補正を実施する。液体の粘度は、例えば手入力された液体の種類に応じて制御装置が判別する。その後、所定回数ショットの量計測を行う(S2)。なお、ワンショットあたりの吐出量は、所定回数ショットにおける量を当該回数で割った値とみなす(例:100ショット後の量を計測する場合、測定量を100で割ったものをワンショットの吐出量とみなす)。そして計測した量と目標吐出量との差により合否判別を行う(S3)。その結果、計測した量と目標吐出量との差が所定値以内で合格と判断された場合は(S3のOK)、補正動作を終了する。一方、計測した量と目標吐出量との差が所定値を超えて不合格となった場合は(S3のNG)、今回の補正動作における補正回数が規定回数を超過していないかを確認する(S4)。補正回数が規定回数を超えている場合は(S4のYes)、アラーム(光や音)により使用者に報知し(S5)、装置を停止する。補正回数が規定回数以内であれば、(S4のNo)、S1で選択した補正方法にしたがった補正を行う。すなわち、補正方法選択(S1)で低粘度が選択された場合は、流量変更指令を出し(S6)、可変絞り弁14の開度を調整し、再度量計測を行う(S2)。S1で中粘度が選択された場合は、今回の補正動作における流量変更回数が規定回数を超過していないかを確認する(S7)。流量変更回数が規定回数以内であれば(S7のNo)、流量変更指令を出し(S8)、可変絞り弁14の開度を調整し、再度量計測を行う(S2)。流量変更回数が規定回数を超過していれば(S7のYes)、ストローク変更指令を出し(S9)、可変ストッパ19の突出量を調節し、再度量計測を行う(S2)。S1で高粘度が選択された場合は、ストローク変更指令を出し(S10)、可変ストッパ19の突出量を調節し、再度量計測を行う(S2)。流量変更あるいはストローク変更は、合否判別(S3)において合格になるまで、あるいは今回の補正動作における補正回数が規定回数を超過するまで(S4)繰り返される。そして、吐出量調整(補正)が完了し且つ次に塗布する基板の準備が完了すると当該基板への塗布が開始される。
【0027】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0028】
(1) ある基板(例えば所定枚数目の基板)への塗布が完了すると吐出量調整を行い、調整が完了し且つ次に塗布する基板の準備が完了すると当該基板への塗布を開始するため、塗布対象となる基板を入れ替えている時間を有効に活用でき、吐出量を調整することによる時間のロスを小さくすることが可能となる。
【0029】
(2) 図3(B)に示すロッドセットストロークの変更という新たな吐出量調整手法を用いており、塗布対象の液体が高粘度である場合にも適切に吐出量を調整することができる。
【0030】
(3) ピストン7の下側の空間に圧縮空気を供給する際に供給圧力は一定としつつ流量を変更するという新たな吐出量調整手法を用いており、供給圧力を変化させる場合と比較してピストン7及びロッド8が上昇し始めるタイミングを柔軟かつ安定に制御できる。
【0031】
(4) 上記2つの手法を塗布対象の液体の粘度に応じて使い分けており、塗布対象の液体に応じた柔軟な吐出量調整が可能となる。
【0032】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。
【0033】
実施の形態ではピストン7の上側をスプリングで加圧することでピストン7を下降させた(単動式)が、ピストン7の上側の空間を加圧することでピストン7を下降させる方式(複動式)を用いてもよい。
【0034】
実施の形態では吐出量調整の際に液滴の量を計測して目標値と比較したが、量に替えて例えば画像処理により液滴の径を特定して目標値と比較してもよい。
【0035】
図7に示す動作において、流量変更(S8)及びストローク変更(S9)の双方を1度の合否判別の後(S3のNG)に行ってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 シリンジ、2 液通路、3 液溜まり部、4 ノズル、5 吐出口、6 シリンダ、7 ピストン、8 ロッド、9 スプリング、10,11 シール、12 吸気口、13 排気口、14 可変絞り弁、15 切替弁、16 吸排気口、17 可変スピードコントローラ、18 ストッパ端、19 可変ストッパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8