特許第6183602号(P6183602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱自動車工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6183602-車体構造 図000002
  • 特許6183602-車体構造 図000003
  • 特許6183602-車体構造 図000004
  • 特許6183602-車体構造 図000005
  • 特許6183602-車体構造 図000006
  • 特許6183602-車体構造 図000007
  • 特許6183602-車体構造 図000008
  • 特許6183602-車体構造 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183602
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   B62D25/20 E
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-188645(P2013-188645)
(22)【出願日】2013年9月11日
(65)【公開番号】特開2015-54600(P2015-54600A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 貞行
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−039839(JP,A)
【文献】 特開2010−163039(JP,A)
【文献】 特開2008−265416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側面の下縁部を構成し、前記車体の前後方向に延びて配されるサイドシルと、
前記車体の幅方向の中央部に膨出し、前記車体の前後方向に延びて配されるセンタートンネルと、
両端の一端が前記サイドシルに結合されると共に他端が前記センタートンネルに結合され、上面にシートが支持されるシートクロスメンバとを備え、
前記シートクロスメンバには、
前記一端の一端部と、
前記他端の他端部と、
前記両端の前記一端部と前記他端部に対して上側に向かって凸状に形成された中央部が連続して設けられ
前記一端部と前記他端部には、前記シートを支持するシートレールが設けられている
ことを特徴とする車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車体構造において、
前記シートクロスメンバの前記中央部は、
前記両端に連続して形成され、前記サイドシルとの結合部よりも上側に位置する部位である
ことを特徴とする車体構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車体構造において、
前記シートクロスメンバの前記一端及び前記他端の断面形状、及び、前記中央部の断面形状は、同一形状で連続している
ことを特徴とする車体構造。
【請求項4】
請求項2もしくは請求項3に記載の車体構造において、
前記シートクロスメンバの前記一端は、前記サイドシルの上面側に結合され、
前記シートクロスメンバの前記他端は、前記センタートンネルの上面側に結合されている
ことを特徴とする車体構造。
【請求項5】
請求項2もしくは請求項3に記載の車体構造において、
前記シートクロスメンバの前記一端は、前記サイドシルの側面側に結合され、
前記シートクロスメンバの前記他端は、前記センタートンネルの側面側に結合されている
ことを特徴とする車体構造。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の車体構造において、
前記シートは前記車体の前側及び後側のクロスメンバに支持され、
前記シートクロスメンバは、前記シートの後側を支持するクロスメンバである
ことを特徴とする車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面衝突時におけるクロスメンバの下方への変形を阻止した車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の側面衝突時における乗員の保護性能の手段として、車体骨格の変形を抑制する機能が知られている。側面衝突に対する車体骨格は、主に、サイドシル、ピラー、ルーフレール、シートクロスメンバ、センタートンネル、及び、これらの補強部材により構成されている(例えば、特許文献1参照)。側面衝突時には、ピラーの下部からサイドシルに亘り荷重が加わり、荷重は、ルーフレール、シートクロスメンバ、センタートンネル等で受け止められている。
【0003】
フロントシートの前後位置を固定するシートクロスメンバは、サイドシルとセンタートンネルの間に2本備えられている。フロントシートの後側を支持するシートクロスメンバは、後席乗員の足元のスペースを確保するために、中央部は床面とのスペースが確保されている。
【0004】
このため、側面衝突時に、サイドシルに対して内側に荷重が加わると、フロントシートの後側を支持するシートクロスメンバの中央部が下側に折れ曲がり、フロントシートの後側(シートバック)が下側に移動(フロントシートが傾動)してしまう虞があった。
【0005】
一方、車両の側面衝突時に乗員を直接保護する手段として、サイドエアバッグ装置が知られている。サイドエアバッグ装置は、側面衝突時に、シートバックに収容されたエアバッグが乗員と車体骨格との間の所望の位置に展開して乗員の側部を保護する装置となっている。
【0006】
上述したように、側面衝突時にフロントシートの後側(シートバック)が下側に移動(フロントシートが傾動)してしまうと、シートバックに対して乗員の位置がずれてしまい、サイドエアバッグ装置のエアバッグが乗員に対して適切な部位に展開しない虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−12634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、側面衝突時におけるクロスメンバの下方への変形を阻止することができる車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の車体構造は、車体側面の下縁部を構成し、前記車体の前後方向に延びて配されるサイドシルと、前記車体の幅方向の中央部に膨出し、前記車体の前後方向に延びて配されるセンタートンネルと、両端の一端が前記サイドシルに結合されると共に他端が前記センタートンネルに結合され、上面にシートが支持されるシートクロスメンバとを備え、前記シートクロスメンバには、前記一端の一端部と、前記他端の他端部と、前記両端の前記一端部と前記他端部に対して上側に向かって凸状に形成された中央部が連続して設けられ、前記一端部と前記他端部には、前記シートを支持するシートレールが設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項1に係る本発明では、側面衝突時に、サイドシルに車体の内側方向へ働く力が加わった場合、シートクロスメンバの中央部が上側に変形するので、クロスメンバの下方への変形を阻止することができる。
【0011】
このため、シートが下側に移動する(シートが傾動する)ことがなくなり、サイドエアバッグ装置のエアバッグを乗員に対して適切な部位に展開させることができる。
【0012】
そして、請求項2に係る本発明の車体構造は、請求項1に記載の車体構造において、前記シートクロスメンバの前記中央部は、前記両端に連続して形成され、前記サイドシルとの結合部よりも上側に位置する部位であることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る本発明では、サイドシルとの結合部よりも上側に位置する部位によりシートクロスメンバの中央部を構成し、側面衝突時に、クロスメンバの下方への変形を阻止することができる。
【0014】
例えば、シートクロスメンバの中央部の両端に、シートを支持するシートレールを有する一端部及び他端部を設け、シートクロスメンバの前記中央部は、両端に連続して形成されて一端部及び他端部よりも上側に位置させることが好ましい。
【0015】
また、請求項3に係る本発明の車体構造は、請求項2に記載の車体構造において、前記シートクロスメンバの前記一端及び前記他端の断面形状、及び、前記中央部の断面形状は、同一形状で連続していることを特徴とする。
【0016】
請求項3に係る本発明では、サイドシルメンバよりも上側に位置する中央部を含めてシートクロスメンバの断面形状が同一形状で連続しているので、シートクロスメンバを、上側に凸状態となるアーチ状にすることができる。この場合、シートクロスメンバの一端及び他端と、中央部とを傾斜部で連続させたり、一端及び他端と、中央部とを彎曲部で円弧状に連続させたり、シートクロス中央部に穴、ビード等の構造物的特徴を設けることが可能である。
【0017】
また、請求項4に係る本発明の車体構造は、請求項2もしくは請求項3に記載の車体構造において、前記シートクロスメンバの前記一端は、前記サイドシルの上面側に結合され、前記シートクロスメンバの前記他端は、前記センタートンネルの上面側に結合されていることを特徴とする。
【0018】
請求項4に係る本発明では、サイドシル及びセンタートンネルの上面側でシートクロスメンバを接合しているので、端部の断面形状の制約を少なくすることができる。
【0019】
また、請求項5に係る本発明の車体構造は、請求項2もしくは請求項3に記載の車体構造において、前記シートクロスメンバの前記一端は、前記サイドシルの側面側に結合され、前記シートクロスメンバの前記他端は、前記センタートンネルの側面側に結合されていることを特徴とする。
【0020】
請求項5に係る本発明では、サイドシル及びセンタートンネルの側面側でシートクロスメンバを接合しているので、高さ方向のスペースを抑制することができる。
【0021】
また、請求項6に係る本発明の車体構造は、請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の車体構造において、前記シートは前記車体の前側及び後側のクロスメンバに支持され、前記シートクロスメンバは、前記シートの後側を支持するクロスメンバであることを特徴とする。
【0022】
請求項6に係る本発明では、中央部がサイドシルよりも上方に位置するシートクロスメンバがシートの後側を支持するクロスメンバであるため、シートの後側の席の乗員の足元のスペースを確保することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の車体構造は、側面衝突時におけるクロスメンバの下方への変形を阻止することが可能になる。この結果、シートが傾動することがなくなり、サイドエアバッグ装置のエアバッグを乗員に対して適切な部位に展開させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施例に係る車体構造の外観図である。
図2図1中のII−II線矢視図である。
図3】シートクロスメンバの断面図である。
図4】シートクロスメンバの変形状況の説明図である。
図5】サイドエアバック展開時の説明図である。
図6】他の実施例に係るシートクロスメンバの断面図である。
図7】他の実施例に係る車体構造の断面図である。
図8】他の実施例に係る車体構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1から図5に基づいて本発明の一実施例に係る車体構造を説明する。
【0026】
図1には本発明の一実施例に係る車体構造の要部の(一部をカットした状態の)車体骨格を車体の後側から示した外観、図2にはシートクロスメンバの幅方向の形状を表すために車体の幅方向に沿った断面を車体の後側から示した状況(図1中のII−II線矢視)、図3にはシートクロスメンバの複数箇所(図2中ABCの箇所)での断面形状、図4には側面衝突時におけるシートクロスメンバの変形状況、図5にはサイドエアバッグと乗員との関係を示してある。
【0027】
図1に示すように、車体骨格として、車体側面の開口の下縁部を構成するサイドシル1が車体の前後方向に延びて配されている。サイドシル1には車体の上下方向に延びるAピラー2、Bピラー3、Cピラー4が車体の前側から順に設けられ、Aピラー2、Bピラー3、Cピラー4の上部には車体の前後方向に延びるルーフレール5が設けられている。
【0028】
車体の幅方向の中央部には、上面側に膨出し車体の前後方向に延びて配されるセンタートンネル7が配され、サイドシル1とセンタートンネル7の間にフロアパネル8が配されている。サイドシル1とセンタートンネル7の間のフロアパネル8の上面側にはシートクロスメンバ9が備えられ、シートクロスメンバ9の上面にフロントシート(シート)が支持されている。
【0029】
即ち、シートクロスメンバ9は、前側シートクロスメンバ11、及び、後側シートクロスメンバ12により構成され、前側シートクロスメンバ11、及び、後側シートクロスメンバ12がフロントシート10の前後の固定位置となっている。
【0030】
前側シートクロスメンバ11の一端(図中左側端)はサイドシル1に接続され、前側シートクロスメンバ11の他端はセンタートンネル7に接続されている。そして、前側シートクロスメンバ11の下面側はフロアパネル8に接合されている。
【0031】
図1図2に示すように、後側シートクロスメンバ12の一端(図中左側端)の一端部41は、Bピラー3の下部近傍のサイドシル1に接続され、後側シートクロスメンバ12の他端の他端部42はセンタートンネル7に接続されている。
【0032】
即ち、サイドシル1のサイドシルインナ15の上面15a、及び、車室内側の側面15bには、後側シートクロスメンバ12の一端が、例えば、ボルト止めにより固定(結合)されている。また、センタートンネル7の上面7a、及び、側面7bには、後側シートクロスメンバ12の他端が、例えば、ボルト止めにより固定(結合)されている。
【0033】
尚、サイドシル1及びセンタートンネル7と後側シートクロスメンバ12との接合は、スポット溶接、アーク溶接等により適宜実施することも可能である。
【0034】
そして、後側シートクロスメンバ12の一端部41と他端部42には乗員が座るシートを支持するための一対のシートレール43が、前側シートクロスメンバ11と後側シートクロスメンバ12とに亘り(間に)設けられており、その一対のシートレール43(後部)の間には、サイドシル1に車体の内側方向へ働く力(例えば、側面衝突時の力)が加わった際に、車体の上側に変形する中央部21が設けられている。
【0035】
即ち、後側シートクロスメンバ12の一端には、一端部41から上方側に傾斜する一端傾斜部22が連続して形成され、一端傾斜部22から中央部21が連続して形成されている。そして、後側シートクロスメンバ12の他端には、他端部42から上方側に傾斜する他端傾斜部23が連続して形成され、他端傾斜部23から中央部21が連続して形成されている。
【0036】
つまり、後側シートクロスメンバ12の中央部21は、一端部41(サイドシル1との結合部)及び他端部42よりも上側に位置している。
【0037】
図2中の端部の断面(A−A線矢視)、一端傾斜部22及び他端傾斜部23の断面(B−B線矢視)、中央部21の断面(C−C線矢視)を表す図3に示すように、後側シートクロスメンバ12は、板状の上面部材27の下側にハット形の矩形部材28が接合されて構成されている。
【0038】
後側シートクロスメンバ12は、一端部41及び他端部42、一端傾斜部22及び他端傾斜部23、中央部21が同一の断面形状とされているので、両端に対して中央部21が上側に向かって凸状に形成された状態になり、フロアパネル8との間にスペース25が確保される。つまり、後側シートクロスメンバ12の中央部21は、サイドシルメンバよりも上側に位置する部位となっている。
【0039】
後側シートクロスメンバ12は、サイドシル1との結合部よりも上側に位置する中央部21を含めて断面形状が同一形状で連続しているので、後側シートクロスメンバ12を、上側に凸状態となるアーチ状にすることができる。この場合、後側シートクロスメンバ12の一端及び他端と中央部とを、彎曲部で円弧状に連続させることも可能である。また、中央部21には上側変形のきっかけとなる穴、ビード等の構造的特徴を設ける事も可能である。
【0040】
図4に示すように、例えば、側面衝突時等でBピラー3の下部からサイドシル1にわたり車体の内側方向に入力があった場合(図中白抜き矢印)、サイドシル1の上部に車体の内側方向へ働く力(図中白抜き矢印)が加わる。この時、サイドシル1の上部に図中時計回り方向に傾動する力が働くことになるが、後側シートクロスメンバ12の中央部21は両端に対して上側に向かって凸状に形成された状態になっているので(アーチ状になっているので)、中央部21は上側に変形する。
【0041】
このため、側面衝突時に、サイドシル1に車体の内側方向へ働く力が加わった場合であっても、後側シートクロスメンバ12の中央部21の下方への変形を阻止することができる。後側シートクロスメンバ12にはフロントシート10の後側(シートバック)が支持されているが、後側シートクロスメンバ12は中央部21が下方への変形が阻止されているので、フロントシート10の後側(シートバック)が下側に移動(フロントシートが傾動)することがない。
【0042】
図5(a)に示すように、サイドエアバッグ装置のエアバッグ18が展開した際にフロントシート10の後側(シートバック)が下側に移動(フロントシートが傾動)すると、乗員19に対してシートバックと一緒にエアバッグ18も下側に傾動し、エアバッグ18に対して乗員19の位置が相対的にずれてしまう。このため、側面衝突時にサイドシル1に力が働いて後側シートクロスメンバ12が変形すると、エアバッグ18が乗員19に対して適切な部位に展開しない虞があった。
【0043】
これに対し、上述した実施例の構造では、側面衝突時に、サイドシル1に車体の内側方向へ働く力が加わった場合であっても、後側シートクロスメンバ12の中央部21は上側に変形する。このため、図5(b)に示すように、フロントシート10のシートバックと乗員19は一緒に移動し、サイドエアバッグ装置のエアバッグ18と乗員19の位置がずれることがない。このため、側面衝突時にサイドシル1に力が働いて後側シートクロスメンバ12が変形しても、エアバッグ18を乗員19に対して適切な部位への展開を維持することができる。
【0044】
そして、後側シートクロスメンバ12は、中央部21が上側に向かって凸状に形成された状態になり、フロアパネル8との間にスペース25が確保されているので、後席の乗員の足元のスペースを確保することができる。後席の乗員の足元の損傷をなくすため、樹脂製等のカバーで後側シートクロスメンバ12を覆うことも可能である。
【0045】
図6に基づいて後側シートクロスメンバの他の実施例を説明する。図6には他の実施例に係る後側シートクロスメンバの断面を示してある。
【0046】
図6(a)に示した後側シートクロスメンバの形状は、板状の上面部材31の下側にハット形の矩形部材32がフランジ部を介して接合され、矩形部材32の中央に長手方向(紙面に直交する方向)に延びる凹部33が形成されている。図6(a)に示した形状では、凹部33により高い剛性を確保することができる。
【0047】
また、図6(b)に示した後側シートクロスメンバの形状は、板状の上面部材34の下側にハット形の矩形部材35がフランジ部を介して2つ接合されている。図6(b)に示した形状では、2つの矩形部材35により小面積の閉断面で大きな剛性を確保することができる。
【0048】
また、図6(c)に示した後側シートクロスメンバの形状は、高さが低いハット形の上面部材36の下側にハット形の矩形部材37がフランジ部を介して接合されている。図6(c)に示した形状では、閉断面の面積が大きく確保され、剛性を高めることができる。
【0049】
後席の乗員の足元のスペースを狭くしないために、図6に示したフランジ部(接合部)は、上下方向の中心よりも高い位置に配することが好ましい。
【0050】
図7図8に基づいて後側シートクロスメンバの他の実施例を説明する。図7図8には後側シートクロスメンバの他の結合例を示してある。後側シートクロスメンバの形状は、両端部の形状(結合部の形状)を除き、図2に示したものと同一であるため、同一符号を付してある。
【0051】
図7に示すように、後側シートクロスメンバ12の一端(図中左側端部)は、例えばボルト止めにより、サイドシル1のサイドシルインナ15の上面15aに結合されている。そして、後側シートクロスメンバ12の他端(図中右側端部)は、例えばボルト止めにより、センタートンネル7の上面7aに結合されている。
【0052】
図7に示した結合の例では、サイドシル1及びセンタートンネル7の上面側で後側シートクロスメンバ12の端部を結合しているので、端部の断面形状の制約を少なくすることができる。
【0053】
図8に示すように、後側シートクロスメンバ12の一端(図中左側端部)は、例えばボルト止めにより、サイドシル1のサイドシルインナ15の車室内側の側面15bに結合されている。そして、後側シートクロスメンバ12の他端(図中右側端部)は、例えばボルト止めにより、センタートンネル7の側面7bに結合されている。
【0054】
図8に示した結合の例では、サイドシル1及びセンタートンネル7の側面側で後側シートクロスメンバ12の端部を結合しているので、高さ方向のスペースを抑制することができる。尚、センタートンネル7に補強板を設けることも可能である。
【0055】
上述した車体構造は、側面衝突時に、Bピラー3の下部からサイドシル1にかけて車体の内側方向へ働く力が加わった場合、後側シートクロスメンバ12の中央部21が上側に変形するので、後側シートクロスメンバ12の下方への変形を阻止することができる。
【0056】
このため、フロントシート10が下側に移動する(フロントシートが傾動する)ことがなくなり、側面衝突時に、フロントシート10の後方回転を防止することができ、サイドエアバッグ装置のエアバッグ18の乗員19に対する適切な部位への展開が阻害されることがなくなる。
【0057】
尚、上記実施例では、シートとしてフロントシート10を例に挙げて車体構造を説明したが、例えば、3列シートの中央部のシート等、他のシートを適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、側面衝突時におけるクロスメンバの下方への変形を阻止した車体構造の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 サイドシル
2 Aピラー
3 Bピラー
4 Cピラー
5 ルーフレール
7 センタートンネル
8 フロアパネル
9 シートクロスメンバ
10 フロントシート
11 前側シートクロスメンバ
12 後側シートクロスメンバ
15 サイドシルインナ
18 エアバッグ
19 乗員
21 中央部
22 一端傾斜部
23 他端傾斜部
25 スペース
27、31、34、36 上面部材
28、32、35、37 矩形部材
33 凹部
41 一端部
42 他端部
43 シートレール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8