(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183603
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】空気調和機の室内機
(51)【国際特許分類】
F24F 13/20 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
F24F1/00 401E
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-195724(P2013-195724)
(22)【出願日】2013年9月20日
(65)【公開番号】特開2015-59735(P2015-59735A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100083194
【弁理士】
【氏名又は名称】長尾 常明
(72)【発明者】
【氏名】西岡 真吾
【審査官】
久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−153748(JP,A)
【文献】
特開平11−190066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調制御用のプリント基板が搭載される電装品箱が配置された空気調和機の室内機において、
前記電装品箱は、前記プリント基板が搭載され前記プリント基板の周囲が周壁板で囲まれた電装品箱本体と、該電装品箱本体の前記周壁板で囲まれた空間の開放側を閉じる電装品箱蓋とを備え、
前記電装品箱本体の前記周壁板に前記周壁板の端部から切り込んで形成した配線通過用のスリットを設け、前記電装品箱蓋に前記スリットの一部を閉じるためのシャッタ板を設けて成り、
前記スリットは、前記シャッタ板によって閉じられた部分以外が配線通過用となり、該配線通過用の部分の内の配線部分を除く部分は、空気が流通可能な大きさで且つその実行直径Rが3mm以下となるように設定され、前記実行直径Rは、「R=4×S×L」で求められ、Sは前記シャッタ板によって閉じられた前記スリットの空間の内の配線部分を除く面積、Lは該面積部分の周囲長である、
ことを特徴とする空気調和機の室内機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機の室内機において、
前記スリットは、切り込みの開放端側が拡がった形状であることを特徴とする空気調和機の室内機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電装品箱を備えた空気調和機の室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機には、その室内機に空調制御用の電装品箱が装備されているが、その電装品箱に搭載されたプリント基板には、火種となり得る電気部品が多く組み込まれている。このため、冷凍サイクル用に可燃性の冷媒を使用する場合、その冷媒が配管から漏れ出て電装品箱に侵入したとき、その冷媒の濃度が所定値を超えると、火災を引き起こすおそれがある。
【0003】
このような火災の発生を防止するには、冷媒が電装品箱内に侵入しないように、電装品箱を密閉構造にすればよいが、これでは発熱する電気部品の放熱ができなくなる。
【0004】
そこで従来では、特許文献1に記載のように、室内機に、電装品箱から外部に通じる空気流通路を形成して、電装品箱内に冷媒が侵入したときは、その空気流通路を経由して冷媒を外部に放出できるようにして、電装品箱内に残留する冷媒の濃度を所定値以下にすることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−094291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の構成では、特別な空気流通路を形成する必要がある。
【0007】
本発明の目的は、配線通過用のスリットを利用し、特別な空気流通路を設けなくても、発熱部品の冷却及び内部に侵入する冷媒の量を規制できるようにした空気調和機の室内機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、空調制御用のプリント基板が搭載される電装品箱が配置された空気調和機の室内機において、前記電装品箱は、前記プリント基板が搭載され前記プリント基板の周囲が周壁板で囲まれた電装品箱本体と、該電装品箱本体の前記周壁板で囲まれた空間の開放側を閉じる電装品箱蓋とを備え、前記電装品箱本体の前記周壁板に前記周壁板の端部から切り込んで形成した配線通過用のスリットを設け、前記電装品箱蓋に前記スリットの一部を閉じるためのシャッタ板を設けて成り、前記スリットは、前記シャッタ板によって閉じられた部分以外が配線通過用となり、該配線通過用の部分
の内の配線部分を除く部分は、空気が流通可能な大きさで且つその実行直径Rが3mm以下となるように設定され、前記実行直径Rは、「R=4×S×L」で求められ、Sは前記シャッタ板によって閉じられた前記スリットの空間の内の配線部分を除く面積、Lは該面積部分の周囲長である、ことを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の空気調和機の室内機において、前記スリットは、切込みの開放端側が広がった形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電装品箱本体の周壁板に、該周壁板の端部から切り込んで形成した配線通過用のスリットを設け、電装品箱蓋に、スリットの一部を閉じるためのシャッタ板を設けたので、電装品箱蓋を電装品箱本体に対してかぶせてシャッタ板でスリットの一部を閉じたとき、スリットの残りの部分を空気流通可能な配線通過用とすることができる。このため、その配線通過用の部分によって、空気流通路を特別に形成することなく、発熱部品冷却のための通路を確保しながら、電装品箱に冷媒が侵入することによる電装品箱内の冷媒の残留濃度の上昇を防ぐことができる利点がある。また、このようにその配線通過用の部分は電装品箱内に浸入する冷媒の濃度が上がらない大きさに制限された空間となるので、電装品箱内の電気部品がたとえ発火したときでも、その炎が電装品箱の外に出ることを防止することができ、電装品箱の外に漏れ出ている冷媒に着火することを防止することができる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の1つの実施例の空気調和機の室内機の右側部分の斜視図である。
【
図2】同室内機の右部分の前面パネルの内側に組み込まれる電装品箱の分解斜視図である。
【
図3】電装品箱から電装品箱蓋と表示/受信ケースと人検知センサを取り外した状態の斜視図である。
【
図4】表示/受信ケースと人検知センサを取り外した電装品箱本体と電装品箱蓋の組み合わせを示す斜視図である。
【
図8】別の例のスリットとシャッタ板の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に本発明の1つの実施例の空気調和機の室内機の右側部分を示す。40は熱交換器や後記する電装品箱10等の構成部分の外側を覆う前面パネルであり、熱交換器用開口部41、風向板42、ディフューザ43等が設けられる中央部分より右側の奥に、電装品箱10を収納する領域44が設けられる。45はその領域44に収納された電装品箱10のメンテナンス用の着脱自在のメンテナンス蓋、46は内側に後記する表示/受信ケース20が配置される表示/受信部、47は内側に後記する人検知センサ30が配置される人検知センサ飾り枠である。
【0012】
図2に電装品箱10を分解した状態を示す。電装品箱10は、電装品箱本体11と、電装品箱蓋12と、電装品箱本体11に一体化された電源ケーブル取付部13とで構成されている。電装品箱本体11と電装品箱蓋12と電源ケーブル取付部13は、基体が樹脂製であるが、そのうちの電装品箱10の電装品箱本体11と電装品箱蓋12には、外面に耐熱用および電磁シールド用の板金B(
図6参照)が取り付けられている。そして、電源ケーブル取付部13には、前記した表示/受信ケース20が取り付けられ、さらにその表示/受信ケース20には、前記した人検知センサ30が取り付けられている。
【0013】
電源ケーブル取付部13では、下側から挿入され引出口13aから上方に引き出された電源ケーブル(図示せず)をバンド13bで押さえてから、そのケーブルの先端を端子台13cに接続することで、電源ケーブルが取り付けられる。表示/受信ケース20は、電源ケーブル取付部13のフック13dと弾性片13e(
図3、
図4、
図5参照)とに係合することで取り付けられる。この表示/受信ケース20は、電源のオン/オフや現在の運転状況等を表示するLED群と、リモコンの操作によって発射されたリモコン信号(光あるいは電波)を受信する受信器を備え、室内機の前面パネル40の表示/受信部46の裏面に配置される。人検知センサ30は室内機近傍に人がいるか否かを検知するセンサであり、人検知センサ飾り枠46の裏側に配置される。なお、これら電源ケーブル取付部13、表示/受信ケース20、人検知センサ30等については本願発明と関係がないので、これ以上の詳しい説明は省略する。
【0014】
電装品箱本体11には、周囲のほぼ全周にわたって周壁板11aが設けられている。そして、その周壁板11aの内の左壁板11a1に、前端部を開放端部とするように切り込みを形成することで、配線通過用の所定の深さの長方形のスリットSLが設けられている。このスリットSLの近傍には、電装品箱本体11の奥面から伸びる配線Lをガイドする配線ガイド11f,11gが形成されている(
図4、
図6)。また、この周壁板11aの内の下壁板11a2には、電装品箱蓋12を取り付けるための舌片11a21,11a22が形成されている。
【0015】
また、周壁板11aで囲まれた内部は、周壁板11aと第1縦壁板11bと第1横壁板11cと第2横壁板11dとによって、第1のプリント基板PWB1の搭載領域が区画され、さらに、壁板11aと第1縦壁板11bと第2横壁板11dと第2縦壁板11eによって第2のプリント基板PWB2の搭載領域が区画されている。そして、この第1縦壁板11bにおける第2のプリント基板PWB2が搭載された側の壁面には、マイカシートMSが貼り付けられている。このマイカシートMSは、第1のプリント基板PWB1の側と第2のプリント基板PWB2の側との間を、熱的および電気的に絶縁するためのものである。
【0016】
第1のプリント基板PWB1が搭載される領域は、周壁板11aと第1縦壁板11bと第1横壁板11cと第2横壁板11dとによって、第1のプリント基板PWB1の大きさに対応した面積に区画されている。なお、第1縦壁板11bの下端と第2横壁板11dとは直接的には接触せず、そこには配線通過用および空気流通用の空間SPが形成されている。
【0017】
第1のプリント基板PWB1には、第1縦壁板11bと第1横壁板11cとの内角に近い奥隅の部分に、ブザーBZが搭載されている(
図4)。このブザーBZは、室内機の表示/受信ケースの受信器がリモコンの操作の信号を受信したときに鳴動するもので、その受信の確認用に使用されている。
【0018】
電装品箱蓋12は電装品箱本体11に対応した大きさである。この電装品箱蓋12には、その電装品箱蓋12を電装品箱本体11にかぶせたときに周壁板11aのスリットSLの内側の一部を閉じるシャッタ板12aが形成され、また、電装品箱本体11の舌片11a21,11a22に係合するボックス12b,12cが形成されている。
【0019】
さて、電装品箱10の電装品箱本体11を電装品箱蓋12によって閉じるに当たっては、電装品箱本体11において、あらかじめ、第1および第2のプリント基板PWB1,PWB2に関するあらゆる配線の接続を完了させるとともに、第1のプリント基板PWB1から延びる配線Lを配線ガイド11f,11gにガイドさせてスリットSLから外部に引き出しておく。そして、電装品箱蓋12を、そのボックス12b,12cが電装品箱本体11の舌片11a21,11a22に係合するように位置合わせをしてから、電装品箱蓋12を電装品箱本体11にかぶせる。
【0020】
これにより、電装品箱蓋12のシャッタ板12aが、電装品箱本体11のスリットSLにおけるプリント基板PWB2の側に位置する。このとき、そのシャッタ板12aの先端がそのスリットSLに挿通されている配線Lを押し付けることもある。また、シャッタ板12a自体がスリットSLの開放端側のプリント基板PWB2の側の一部を閉じるようになる(
図6、
図7参照)。これによって、スリットSLは、シャッタ板12aによって閉じられなかった領域の空間が、空気流通可能な配線通過用となり、その空間を介して空気が外部と電装品箱10の内部との間を流通可能となる。
【0021】
そこで、本実施例では、スリットSLの内の閉じられなかった配線通過用の空間が、電装品箱内に浸入する冷媒の残留濃度が着火しない程度に低くなり且つ発熱部品を冷却する空気が流通可能な大きさとなるように、そのスリットSLの長さと幅を設定する。この配線通過用の空間の大きさとしては、例えば、その実行直径Rを3mm以下にすることが望ましい。実行直径Rは、「R=4×S/L」で求められる。Sは前記した空間の空気流通方向に直交する面の内の配線部分を除く部分の面積、Lはその面積部分の周囲長である。
【0022】
これにより、冷媒配管から冷媒が漏れ出た場合であっても、前記した配線通過用の空間からその冷媒が電装品箱10内に入り難くなり、電装品箱10内での冷媒濃度を着火濃度以下に規制することができ、電装品箱10の防爆を実現できる。また、電装品箱内の電気部品がたとえ発火したときでも、その炎が電装品箱の外に出ることを防止することができ、電装品箱の外に漏れ出ている冷媒に着火することを防止することができる。さらに、配線通過用の空間を通過する空気により電装品箱10の冷却が可能となり、プリント基板PWB1,PWB2に搭載した発熱部品によって生じた熱の放熱を効果的に行うことも可能となる。
【0023】
また、電装品箱本体11を電装品箱蓋12によって閉じたとき、電装品箱本体11の奥面と周壁体11aの一部と第1縦壁板11bと第1横壁板11cと第2横壁板11dと電装品箱蓋12とによって、第1のプリント基板PWB1に対応したほぼ同じ大きさの空間として形成される共鳴室RESに閉じ込められる。
【0024】
このため、その第1のプリント基板PWB1の奥隅に搭載されているブザーBZが鳴動したとき、そのブザーBZを囲む共鳴室RESがない場合に比べて、大きな反響音が発生する。
【0025】
以上から、ブザーBZの鳴動音を大きくすることができるので、実際にブザーBZで鳴動する原音量を小さな音量にすることが可能となる。つまり、従来に比べて小さなブザーBZを使用することが可能となり、コストの低減を実現できる。
【0026】
なお、ブザーBZの配置位置は、第1縦壁板11bと第1横壁板11cの内角に限らず、第1のプリント基板PWB1を囲む周壁体11aの一部、第1縦壁板11b、第1横壁板11c、第2横壁板11d等の近傍に配置すればよい。
【0027】
また、電装品箱本体11のスリットSLは、以上で説明した長方形に限らず、
図8に示すように、開放端側の両方の角に斜めのカット部11a11,11a12を形成することで、その開放端側を奥端よりも拡大した形状のスリットSL2としてもよい。この場合、電装品箱蓋12には、スリットSL2の開放部の広さに応じて広くしたシャッタ板12dを設ける。このような形状のスリットSL2は、配線Lをそこにガイドする作業が容易になる。
【符号の説明】
【0028】
PWB1:第1のプリント基板、PWB2:第2のプリント基板、RES:共鳴室、MS:マイカシート、BZ:ブザー、SP:空間、SL、SL2:スリット、B:板金
10:電装品箱
11:電装品箱本体、11a:周壁板、11a1:左壁板、11a11,11a12:切欠き、11a2:下壁板、11a21,11a22:舌片、11b:第1縦壁板、11c:第1横壁板、11d:第2横壁板、11e:第2縦壁板、11f,11g:配線ガイド
12:電装品箱蓋、12a:シャッタ板、12b,12c:ボックス
13:電源ケーブル取付部、13a:引出口、13b:バンド、13c:端子台、13d:フック、13e:弾性片
20:表示/受信ケース
30:人検知センサ
40:前面パネル、41:熱交換器用開口部、42:風向板、43:ディフューザ、44:電装品箱収納領域、45:メンテナンス蓋、46:表示/受信部、46:人検知センサ飾り枠