特許第6183608号(P6183608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183608
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】車両のインサイドドアハンドル装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/24 20060101AFI20170814BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   B60R22/24
   B60J5/04 H
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-261436(P2013-261436)
(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公開番号】特開2015-116928(P2015-116928A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】荘司 馨
(72)【発明者】
【氏名】荻野 貴士
(72)【発明者】
【氏名】大西 亮之
【審査官】 粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−029377(JP,A)
【文献】 特開2003−312440(JP,A)
【文献】 特開2002−200919(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0043762(US,A1)
【文献】 米国特許第05749611(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00−48
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアの内面に設けられたインサイドドアハンドルと、
車両のドアの内面に設けられ、前記インサイドドアハンドルの変位を受け前記ドアの施開錠操作をする操作機構部と、
前記ドアの内面と前記操作機構部との間を通して、ドアの内面沿いに配置されたシートベルトと、
前記操作機構部と前記シートベルトとの間を遮るように設けられたベルト保護部材と
を有する車両のインサイドドアハンドル装置。
【請求項2】
前記ベルト保護部材は、前記シートベルトと当接し、当該シートベルトを前記ベルト保護部材から遠ざけた位置に配置する突起部を有して構成される請求項1に記載の車両のインサイドドアハンドル装置。
【請求項3】
前記突起部は、前記シートベルトの幅方向に沿って線状に延びる突条部から構成される請求項1に記載の車両のインサイドドアハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアに、インサイドドアハンドルや同ハンドルの変位を受ける操作機構部やシートベルトが配設される車両のインサイドドアハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のドア、特に観音式のリヤドアには、特許文献1にも開示されているようにシートベルト装置を内蔵することが行われている。
こうしたシートベルト装置は、ドア内面にリトラクタやリトラクタから引き出されたシートベルトをドア内面に沿って配置するが、ドアの内面には、インサイドドアハンドル装置を構成するインサイドハンドルや、同ハンドル変位でドアの上下部に有るロック部を施開錠操作する操作機構部が組み付けられている。
【0003】
ところで、リトラクタから引き出されたシートベルトは、ベルトガイドを通じて、着座した乗員の上方から引き出せるようにすることが求められる。シートベルトの操作性のためには、リヤドアの前部側の上部から容易に引き出されるよう、できるだけドアの端側で上下方向にシートベルトを配置することが望ましい。
しかし、リヤドアの前部側には、インサイドドアハンドル装置の操作機構部が配置されるため、シートベルトが通るスペースを確保するのは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011− 16531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、操作機構部がリヤドアの前部側に配置される部品であることに着目して、ドア内面と、同ドア内面に組み付く操作機構部との間にシートベルトを通すことが考えられる。
しかし、同構造は、リヤドア側から衝突を受け(側突時)、衝撃力によりドアが変形すると、シートベルトが操作機構部と干渉しやすい。特に操作機構部は、板金製のレバー部品などを有しているので、シートベルトと干渉すると、レバー部品の角部分などでベルト部分に損傷を与えてしまう。このため、シートベルトをドア内面と操作機構部との間に通す構造の実現が難しいとされていた。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ドア内面と操作機構部との間を、損傷なくシートベルトが通せる車両のインサイドドアハンドル装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明に係る態様は、車両のドアの内面に設けられたインサイドドアハンドルと、車両のドアの内面に設けられ、インサイドドアハンドルの変位を受けドアの施開錠操作をする操作機構部と、ドアの内面と操作機構部との間を通して、ドアの内面沿いに配置されたシートベルトと、操作機構部とシートベルトとの間を遮るように設けられたベルト保護部材と有するものとした。
【0008】
請求項2に記載の発明に係る態様は、ベルト保護部材は、シートベルトと当接して、当該シートベルトをベルト保護部材から遠ざけた位置に配置する突起部を有して構成されるものとした。
請求項3に記載の発明に係る態様は、突起部は、シートベルトの幅方向に沿って線状に延びる突条部から構成されるものとした。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、シートベルトと操作機構部との間に介在されたベルト保護部材により、車両が側突を受けてドアが変形しても、シートベルトは、ベルト保護部材と接触し、シートベルトの損傷を招きやすい操作機構部との干渉は回避される。
それ故、車両の側突時、ドア内面と操作機構部との間を通るシートベルトの損傷を未然に防げ、ドア内面と操作機構部との間を、損傷なくシートベルトを通すことができる。つまり、ドア内面と操作機構部との間にシートベルトを通す構造の実現化が図れる。
【0010】
請求項2の発明によれば、ドア内面とベルト保護部材との間を通るシートベルトは、突起部との当接により、ベルト保護部材の側面から離れるので、シートベルトの利用時における摺動抵抗は小さく抑えられ、シートベルトの引出し力が軽減される。
請求項3の発明によれば、格段に摺動抵抗が減少され、シートベルトの引出し力が大幅に軽減される。そのため、一層、シートベルトの操作性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る態様となる観音開き式ドアを有した車両を示す斜視図。
図2】同リヤドアの内面に組み付いているシートベルト装置およびインサイドドアハンドル装置を示す正面図。
図3】同インサイドドアハンドル装置の操作機構部付近を拡大して示す正面図。
図4図3中のA−A線に沿う断面図。
図5】ベルト保護部材の外観を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を図1から図5に示す一実施形態にもとづいて説明する。
図1は、本発明を適用した車両、例えばピックアップトラックを示している。
同トラックの概略を説明すると、図1中1は車体である。車体1は、前部にキャビン3を有し、後部に荷台5を有している。キャビン3のフロア3aには、フロントシート7、リヤシート9が据え付けられている。ちなみにフロントシート7,リヤシート9は、いずれもシートクッション8aとシートバック8bと有して構成される。
【0013】
キャビン3の車幅方向側部には、フロントシート7からリヤシート9の有る地点までを開口した乗降口11が形成されている。ちなみに乗降口11には、センタピラーは無い。乗降口11には、フロントシート7に着座する乗員用となるフロントドア13、リヤシート9に着座する乗員用となるリヤドア15が設けられている。このうちフロントドア13の前部は、ヒンジ(図示しない)を介して、乗降口11の前部に回動自在に支持される。これにより、フロントドア13は、後側から開閉される。リヤドア15の後部は、ヒンジ(図示しない)を介して、乗降口11の後部に回動自在に支持される。これにより、リヤドア15は、前側から開閉される。つまり、二枚のドア13,15は、中央から開閉する観音ドアとなる。
【0014】
フロントドア13、リヤドア15は、いずれもドアアウタパネル13a,15aとドアインナパネル13b,15bとを組み合わせて構成されるドア本体13c、15cと、ドア本体13c、15cの上部に設けたドアウインド13d、15dと、ドアインナパネル13b,15bを覆い隠すように設けたドアトリム13e,15eを有している。
リヤドア15には、フロントシート7に着座される乗員用シートベルト装置、例えば三点式のシートベルト装置21とインサイドドアハンドル装置27とが設けられている。ちなみにリヤシート9に着座される乗員用のシートベルト装置は、図示はしないがリヤピラー1aに設けられる。
【0015】
図2には、このフロントシート用のシートベルト装置21やインサイドドアハンドル装置27が示されている。図2は、リヤドア15の正面となる、ドアトリム15eを取り外して、ドアインナパネル15bのパネル側面を露出させた状態が示されている。図3は、図2のインサイドドアハンドル装置27を拡大した図で、図4は同インサイドドアハンドル装置27の断面図(図3中のA−A線)が示されている。
【0016】
インサイドドアハンドル装置27を説明すると、インサイドドアハンドル装置27は、図2に示されように車室内や車室外からでも操作しやすいよう、操作性を考慮してドアインナパネル15bのパネル側面の前部中段に配置される。このため、リヤドア15には、アウタ側のドアハンドル装置は無い。ちなみに、リヤドア15は、フロントドア13の開操作から行わないと、リヤドア15の開操作が行えない。
【0017】
このインサイドドアハンドル装置27には、リヤドア15の前後方向に引出し可能なインサイドドアハンドル27aと、このインサイドドアハンドル27aの前後方向変位を受ける操作機構部27bとが一体に組み付けられた構造が用いられている。
例えばインサイドドアハンドル27aは、図3に拡大して示されるように例えばC形などドア前方へ引き操作可能なハンドル部材から構成される。このインサイドドアハンドル27aが、ドアトリム15eの前部中段に設けたハンドル開口部16内に配置される。これにより、ハンドル開口部16から露出したハンドル部分をリヤドア15の前方側へ引くと、リヤドア15を開錠する操作、戻ると施錠する操作が行える。
【0018】
操作機構部27bは、図3に拡大して示されるように板金製のレバー部品28aをインサイドドアハンドル27aの動きに連動させる構造が用いられる。さらに述べると、操作機構部27bは、インサイドドアハンドル27aと共に1つのユニットに構成されている。この操作機構部27bが、図4に示されるようにドアインナパネル15bのパネル側面の前部中段に据付けられる。特に操作機構部27bは、ドアインナパネル15bの内面から離れた位置に据付けられている。ちなみに、据付けに用いる脚部は、図示されていない。レバー部品28aは、中継部材28x(中継ワイヤーなど)を介して、リヤドア15の前部上下部に設けた上下一対のリヤドアロック部29に接続され、インサイドドアハンドル27aが解除方向(前方)へ変位されると、リヤドアロック部29が開錠側に操作され、インサイドドアハンドル27aが戻ると、施錠側に操作される。つまり、操作機構部27bは、インサイドドアハンドル27aの変位を受けて、リヤドア15の施開錠操作を行う。
【0019】
シートベルト装置21は、図2に示されるようにシートベルト33を引出し可能に収めたリトラクタ25を有している。ちなみに、リトラクタ25には、シートベルト33を引出し可能に巻回したスプール35が内蔵されている。このリトラクタ25が、操作機構部27bの直下のドアインナパネル15bのパネル側面部分に据付けられている。このリトラクタ25から引き出されるシートベルト33の先端部は、図2図4のようにドアインナパネル15bのパネル側面(内面)と操作機構部27bとの間を通り、さらにドアインナパネル15bの前部上段からアジャスタ機構部30aを介して吊り下げたベルトガイド30を通り、ラッププリテンショナ39を介して、リヤドア15の下部に設けてあるアンカ部32に連結されている。つまり、ドアインナパネル15bと操作機構部27bとの間のデッドスペースとなる部分を利用して、シートベルト33をドアインナパネル15bの内面に沿って上下引き回している。これにより、シートベルト33は、リヤドア15の端側の位置に上下方向に向き姿勢で配置される。
【0020】
引き出されたシートベルト33のうち、ラップベルト部分33aとショルダベルト部分33bとの境界には、タング41が組み付けられている。これにより、リトラクタ25からシートベルト33を引き出し、タング41を、フロントシート7のシートクッション8aの側部、具体的には乗降口11と反対側の側部に配置したバックル44(図1)へ差し込み接続すると、ラップベルト部分33aが、フロントシート7に着座した乗員の腰部を跨るように配置され、ショルダベルト部分33bが、同じく乗員の肩部を跨るように配置され、フロントシート7に着座した乗員が拘束される。
【0021】
一方、図3図5に示されるように操作機構部27bと同機構27bと対向するドアインナパネル15bのパネル側面部分との間には、ベルトカバー40(本願のベルト保護部材に相当)が設けられている。
ベルトカバー40は、シートベルト部分と向き合う操作機構部27bの外形(投影面)よりも大きな平板形、例えば上下方向に延びる長方形形状のカバー部材から構成される。このベルトカバー40は、操作機構部27bのフレーム(図示しない)に固定され、向き合うシートベルト部分と操作機構部27bとの間を遮るように配置される。これにより、シートベルト33と操作機構部27bとが当接するのを防げる構造にしている。
【0022】
またベルトカバー40は、ドアインナパネル15bへ上下方向中央が突き出る形状となるよう、上下両側が中央から上・下部へ向かうにしたがいドアインナパネル15bから次第に退避する方向に傾斜している。上下の傾斜面40a,40aの交わるドアインナパネル15b側の側面(凸側)には、ドアインナパネル15b側へ向かって突き出る突起部42が設けられている。突起部42は、例えばシートベルト33の幅方向に沿って線状に延びる突条部、ここでは先端が円弧形となった一条の突条部43から形成されている。この突条部43の先端部が、シートベルト33のベルト面と線接触(当接)し、操作機構部27bと向き合うシートベルト部分33xをドアインナパネル15b側へ押しやる。つまり、シートベルト部分33xをベルトカバー40から遠ざけている。特に突条部43は、シートベルト部分33xとベルトカバー40の側面との間に間隙δ(図4)が確保されるまで、すなわちシートベルト部分33xがベルトカバー40の側面と触れずにすむ位置まで突き出ている。
【0023】
こうしたドアインナパネル15bと操作機構部27bとの間にシートベルト33を通す構造は、操作機構部27bがリヤドア15の前部側に配置される部品であること、さらにドアインナパネル15bと操作機構部27b間はデッドスペースを含むことから、シートベルト33は、引き出しやすい位置に配置される。
ここで、シートベルト33と操作機構部27bとの間にはベルトカバー40が介在されているので、たとえリヤドア15が側突により変形して、図4中の二点鎖線で示されるようにドアインナパネル15bが操作機構部27b側へ進入し、シートベルト33を押え付けることがあっても、シートベルト33は、ベルトカバー40と接触するだけである。つまり、シートベルト33は、損傷を招きやすい操作機構部27bの各部(板金製のレバー部品28aの角部など)との干渉が回避される。
【0024】
それ故、車両の側突時におけるシートベルト33の損傷が未然に防げ、リヤドア15の内面と操作機構部27bとの間に、損傷なくシートベルト33を通すことができる。この結果、ドア内面と操作機構部27b間にシートベルト33を通す構造の実現化が図れる。
しかも、シートベルト33は、突起部42により、ベルトカバー40の側面から遠ざけてあるので、シートベルト33の利用時における摺動抵抗を小さく抑えることができ、シートベルト33の引出し力の軽減が図れる。特に突起部42により、シートベルト33を、ベルトカバー40の側面との間に間隙δが形成されるまで遠ざけると、格段に摺動抵抗は小さくなる。
【0025】
そのうえ、突起部42は、単なる突起でなく、シートベルト33の幅方向に細長く延びる一条の突条部43から形成したことにより、シートベルト33と接触する面積は最小に抑えられる。このため、格段に摺動抵抗は減少され、シートベルト33の引出し力が大幅に軽減され、一層、シートベルト33の操作性が向上する。
特に、ベルトカバー40の上下部をシートベルト33から退避する方向へ傾斜させる構造は、突起部42の機能を助けるので、容易にシートベルト33がベルトカバー40の側面から遠ざけやすくなる。
【0026】
なお、本発明は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。例えば一実施形態では、観音式ドアを一例に挙げたが、これに限らず、二枚のドアが同一方向に開く横開き式のドアにも適用してもよい。また一実施形態では、突起部として突条部を設けた例を挙げたが、これに限らず、他の構造で形成された突起部を用いても構わない。むろん、二点式シートベルト装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 車体
15 リヤドア(ドア)
27a インサイドドアハンドル
27b 操作機構部
33 シートベルト
40 ベルトカバー(ベルト保護部材)
43 突条部(突起部)
図1
図2
図3
図4
図5