特許第6183624号(P6183624)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183624
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01P 7/10 20060101AFI20170814BHJP
   H01P 1/20 20060101ALI20170814BHJP
   H01P 3/16 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H01P7/10
   H01P1/20 A
   H01P3/16
【請求項の数】6
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-89299(P2015-89299)
(22)【出願日】2015年4月24日
(62)【分割の表示】特願2013-160916(P2013-160916)の分割
【原出願日】2013年8月2日
(65)【公開番号】特開2015-156713(P2015-156713A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2016年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107559
【弁理士】
【氏名又は名称】星宮 勝美
(74)【代理人】
【識別番号】100115118
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 和浩
(74)【代理人】
【識別番号】100166257
【弁理士】
【氏名又は名称】城澤 達哉
(72)【発明者】
【氏名】戸蒔 重光
(72)【発明者】
【氏名】河田 智明
(72)【発明者】
【氏名】畑中 潔
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】匂坂 康則
【審査官】 佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−173368(JP,A)
【文献】 特開2005−175941(JP,A)
【文献】 特開2007−235630(JP,A)
【文献】 特開2013−045859(JP,A)
【文献】 特開平04−043703(JP,A)
【文献】 特開平10−013112(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0080830(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0027155(US,A1)
【文献】 米国特許第06091310(US,A)
【文献】 米国特許第08081050(US,B2)
【文献】 特開2008−099235(JP,A)
【文献】 特開平08−078218(JP,A)
【文献】 特開2002−076717(JP,A)
【文献】 特開平04−347902(JP,A)
【文献】 特開昭58−166804(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/024349(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1745497(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/20
H01P 3/16
H01P 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に接続されたインダクタとキャパシタとを有すると共に1GHz〜10GHzの範囲内の共振周波数を有する共振器を備えた電子部品であって、
誘電体線路を含み、
前記誘電体線路は、第1の比誘電率を有する第1の誘電体よりなる線路部と、第2の比誘電率を有する第2の誘電体よりなる周囲誘電体部とを備え、
前記線路部は、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を伝搬させ、
前記周囲誘電体部は、前記線路部における電磁波の伝搬方向に直交する断面において、前記線路部の周囲に存在し、
前記第1の比誘電率は、1000以上であり、
前記第2の比誘電率は、前記第1の比誘電率よりも小さく、
前記インダクタは、前記誘電体線路の前記線路部によって構成されていることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記第1の比誘電率は、50万以下であることを特徴とする請求項1記載の電子部品。
【請求項3】
前記第2の比誘電率は、前記第1の比誘電率の1/10以下であることを特徴とする請求項1または2記載の電子部品。
【請求項4】
前記周囲誘電体部の少なくとも一部は、1.02以上の比透磁率を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電子部品。
【請求項5】
前記周囲誘電体部の少なくとも一部の前記比透磁率は、30以下であることを特徴とする請求項4記載の電子部品。
【請求項6】
前記電子部品は、更に、第1の導体層と、前記第1の導体層に対して所定の間隔をあけて対向する第2の導体層を含み、
前記第1の導体層と前記第2の導体層の間には、前記周囲誘電体部の一部が介在し、
前記線路部における電磁波の伝搬方向の前記線路部の一端は、前記第2の導体層に接続され、
前記キャパシタは、前記第1および第2の導体層と、その間の前記周囲誘電体部の一部によって構成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1GHz〜10GHzの範囲内の周波数の電磁波を伝搬させる誘電体線路を含む電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、近距離無線通信や移動体通信に、マイクロ波帯、特に1GHz〜10GHzの周波数帯が多く利用されている。これらの通信に用いられる通信装置には、小型化、薄型化が強く求められ、その通信装置に用いられる電子部品にも小型化、薄型化が強く求められている。
【0003】
一般的に、1GHz〜10GHzの周波数帯の高周波信号の伝送には、同軸線路、ストリップ線路、マイクロストリップ線路、コプレーナ線路等、導体と誘電体を組み合わせた構造の伝送線路が用いられている。
【0004】
通信装置に用いられる電子部品には、バンドパスフィルタのように、共振器を含むものがある。この共振器には、分布定数線路を用いたものや、インダクタとキャパシタを用いたもの等があるが、いずれも伝送線路を含んでいる。共振器には、無負荷Q値が大きいことが求められる。共振器の無負荷Q値は、共振器における損失を小さくすることによって大きくすることができる。
【0005】
伝送線路の損失には、誘電体損、導体損および放射損がある。信号の周波数が高くなるほど、表皮効果が顕著になって、導体損は顕著に増大する。共振器における損失は、ほとんど導体損に起因する。そのため、共振器の無負荷Q値を大きくするためには、導体損を小さくすることが効果的である。導体損を小さくして共振器の無負荷Q値を大きくする技術としては、特許文献1,2に記載された技術が知られている。
【0006】
特許文献1には、対称型ストリップライン共振器において、一対の接地導体間に、互いに誘電体を介して隔てられた複数枚のストリップ導体を接地導体に平行に配置することによって、ストリップ導体の導体損を低減して、共振器の無負荷Q値を大きくする技術が記載されている。
【0007】
特許文献2には、ストリップライン電極を有する共振器において、ストリップライン電極を、誘電体層と導体層が交互に積層された多層部と導体とを有する多層電極とし、多層部を構成する各層の面が接地電極の面に対して垂直になるように配置することによって、ストリップライン電極の導体損を低減して、共振器の無負荷Q値を大きくする技術が記載されている。
【0008】
一方、50GHz程度のミリ波帯の電磁波を伝搬させる伝送線路としては、誘電体線路が知られている。例えば、特許文献3には、平行に配置された2つの平行導体板の間に高誘電率テープを配置し、2つの平行導体板と高誘電率テープの間に、低誘電率材料よりなる充填誘電体を配置して構成された伝送線路が記載されている。この伝送線路では、電磁波の電界は充填誘電体内に分布する。特許文献3には、実際に作製された伝送線路が、30GHz〜60GHzの周波数帯で低分散な特性であることが記載されている。
【0009】
なお、特許文献4には、GHz周波数帯でも優れた磁気特性を有する磁性誘電体材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平4−43703号公報
【特許文献2】特開平10−13112号公報
【特許文献3】特開2007−235630号公報
【特許文献4】特開2013−45859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のように、従来の1GHz〜10GHzの周波数帯用の伝送線路は、導体と誘電体を組み合わせた構造のものである。この伝送線路では、特許文献1,2に記載された技術のように導体の表面積を大きくする等の対策を行っても、導体損を大幅に小さくすることは困難である。そのため、この伝送線路を用いた共振器では、無負荷Q値を大きくすることには限界がある。
【0012】
一方、前述のように、50GHz程度のミリ波帯の電磁波を伝搬させる誘電体線路は知られているが、1GHz〜10GHzの周波数帯の電磁波を伝搬させる誘電体線路は知られていない。
【0013】
電磁波の波長は、周波数に反比例する。1GHz〜10GHzの周波数帯の電磁波の波長は、50GHz程度のミリ波帯の電磁波の波長の5倍から50倍程度になる。一般的に、従来の誘電体線路の大きさは、伝搬させる電磁波の波長が長くなるほど大きくなる。そのため、仮に、従来の誘電体線路を用いて、1GHz〜10GHzの周波数帯用の共振器等の電子部品を構成しようとしても、電子部品が大型化して、実用的な電子部品を実現することができない。
【0014】
なお、誘電体線路を伝搬する電磁波の波長は、誘電体の波長短縮効果により、真空中を伝搬する電磁波の波長よりも短くなる。しかし、従来の誘電体線路では、大幅な波長短縮効果は得られない。例えば、特許文献3には、充填誘電体の比誘電率は例えば4以下であることが記載されている。比誘電率を4とすると、波長短縮率は0.5である。そのため、従来の誘電体線路を用いても、誘電体の波長短縮効果による電子部品の大幅な小型化はできない。
【0015】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を伝搬させる誘電体線路を用いて構成された共振器を備えた電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の電子部品は、並列に接続されたインダクタとキャパシタとを有すると共に1GHz〜10GHzの範囲内の共振周波数を有する共振器を備えている。本発明の電子部品は、誘電体線路を含んでいる。誘電体線路は、第1の比誘電率を有する第1の誘電体よりなる線路部と、第2の比誘電率を有する第2の誘電体よりなる周囲誘電体部とを備えている。線路部は、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を伝搬させる。周囲誘電体部は、線路部における電磁波の伝搬方向に直交する断面において、線路部の周囲に存在する。第1の比誘電率は、1000以上である。第2の比誘電率は、第1の比誘電率よりも小さい。インダクタは、誘電体線路の線路部によって構成されている。なお、本出願において、比誘電率とは、複素比誘電率の実部を言う。また、本発明における線路部は、電磁波を一方向に伝搬させるものに限らず、例えば進行波と反射波のように、互いに反対方向に進む2つの電磁波を伝搬させるものであってもよい。
【0017】
本発明の電子部品において、第1の比誘電率は、50万以下であってもよい。また、第2の比誘電率は、第1の比誘電率の1/10以下であってもよい。
【0018】
また、本発明の電子部品において、周囲誘電体部の少なくとも一部は、1.02以上の比透磁率を有していてもよい。この場合、周囲誘電体部の少なくとも一部の比透磁率は、30以下であってもよい。なお、本出願において、比透磁率とは、複素比透磁率の実部を言う。
【0019】
本発明の電子部品は、更に、第1の導体層と、第1の導体層に対して所定の間隔をあけて対向する第2の導体層を含んでいてもよい。この場合、第1の導体層と第2の導体層の間には、周囲誘電体部の一部が介在し、線路部における電磁波の伝搬方向の線路部の一端は、第2の導体層に接続されていてもよい。また、キャパシタは、第1および第2の導体層と、その間の周囲誘電体部の一部によって構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の電子部品では、線路部を構成する第1の誘電体の第1の比誘電率は1000以上であり、周囲誘電体部を構成する第2の誘電体の第2の比誘電率は第1の比誘電率よりも小さい。これにより、線路部が、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を伝搬させることが可能になる。従って、本発明によれば、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を伝搬させる誘電体線路を用いて構成された共振器を備えた電子部品を実現することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る誘電体線路および電子部品を示す斜視図である。
図2図1におけるA方向から見た電子部品を示す側面図である。
図3図1に示した誘電体線路の断面を示す断面図である。
図4図1に示した電子部品の回路構成を示す回路図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係る誘電体線路および電子部品を示す斜視図である。
図6図5におけるA方向から見た電子部品を示す側面図である。
図7図5に示した誘電体線路の断面を示す断面図である。
図8】本発明の第3の実施の形態に係る誘電体線路および電子部品を示す斜視図である。
図9図8に示した電子部品の平面図である。
図10図8に示した誘電体線路の断面を示す断面図である。
図11】本発明の第4の実施の形態に係る誘電体線路および電子部品を示す斜視図である。
図12図11に示した電子部品の平面図である。
図13図11に示した誘電体線路の断面を示す断面図である。
図14】第1のシミュレーションで設計した第1の電子部品の斜視図である。
図15図14に示した第1の電子部品の平面図である。
図16】第1のシミュレーションで設計した第2の電子部品の斜視図である。
図17図16に示した第2の電子部品の平面図である。
図18図14に示した第1の電子部品の反射減衰特性を示す特性図である。
図19図16に示した第2の電子部品の反射減衰特性を示す特性図である。
図20】第2のシミュレーションの結果を示す特性図である。
図21】第3のシミュレーションの結果を示す特性図である。
図22】第4のシミュレーションの結果を示す説明図である。
図23】本発明の第5の実施の形態に係る電子部品の平面図である。
図24図23に示した電子部品の斜視図である。
図25図23に示した電子部品の回路構成を示す回路図である。
図26図23に示した電子部品の周波数特性を示す特性図である。
図27】本発明の第6の実施の形態に係る電子部品の斜視図である。
図28図27に示した電子部品の内部を示す斜視図である。
図29図28に示した電子部品のキャパシタ部を示す斜視図である。
図30図28に示した電子部品の1つの共振器部分の内部を示す斜視図である。
図31図30に示した共振器部分と2つの区画シールド層とを示す斜視図である。
図32図30に示した共振器部分の正面図である。
図33図30に示した共振器部分の側面図である。
図34図28に示した電子部品の回路構成を示す回路図である。
図35図27に示した電子部品の通過減衰特性の一例を示す特性図である。
図36図30に示した共振器部分の特性を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1ないし図3を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る誘電体線路および電子部品の構造について説明する。図1は、本実施の形態に係る誘電体線路および電子部品を示す斜視図である。図2は、図1におけるA方向から見た電子部品を示す側面図である。図3は、図1に示した誘電体線路の断面を示す断面図である。
【0023】
図1ないし図3に示したように、本実施の形態に係る電子部品1は、本実施の形態に係る誘電体線路2を含んでいる。誘電体線路2は、第1の比誘電率E1を有する第1の誘電体よりなる線路部10と、第2の比誘電率E2を有する第2の誘電体よりなる周囲誘電体部20とを備えている。線路部10は、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を伝搬させる。周囲誘電体部20は、線路部10における電磁波の伝搬方向に直交する断面において、線路部10の周囲に存在する。本実施の形態では、特に、上記断面において、周囲誘電体部20は、線路部10の外周全体に接している。第1の比誘電率E1は、1000以上である。第2の比誘電率E2は、第1の比誘電率E1よりも小さい。
【0024】
本実施の形態では、線路部10は円柱形状を有している。線路部10における電磁波の伝搬方向は、円柱の中心軸方向である。周囲誘電体部20は直方体形状を有している。線路部10における電磁波の伝搬方向に直交する断面において、線路部10の形状は円形であり、周囲誘電体部20の形状は長方形である。ここで、図1に示したように、上記断面における周囲誘電体部20の形状である長方形の長辺に平行な方向をX方向と定義し、この長方形の短辺に平行な方向をY方向と定義する。また、線路部10における電磁波の伝搬方向、すなわち線路部10の形状である円柱の中心軸方向をZ方向と定義する。X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する。図3は、線路部10における電磁波の伝搬方向すなわちZ方向に直交する断面を示している。
【0025】
周囲誘電体部20は、Z方向の両端に位置する上面20aおよび下面20bと、X方向の両端に位置する2つの側面20c,20dと、Y方向の両端に位置する2つの側面20e,20fとを有している。
【0026】
周囲誘電体部20の少なくとも一部は、磁性を有する誘電体すなわち磁性誘電体によって構成されていてもよい。言い換えると、周囲誘電体部20の少なくとも一部は、1より大きい比透磁率を有していてもよい。この場合、周囲誘電体部20の少なくとも一部(磁性誘電体)の比透磁率は、1.02以上であることが好ましい。なお、周囲誘電体部20の少なくとも一部を構成する磁性誘電体は、第2の誘電体の少なくとも一部である。従って、磁性誘電体は、前述の第2の比誘電率E2を有している。
【0027】
本実施の形態では、特に、周囲誘電体部20の全体が、1種類の第2の誘電体によって構成されている。従って、周囲誘電体部20の全体が、同じ比誘電率と同じ比透磁率を有している。上記の1種類の第2の誘電体は、磁性を有さない誘電体すなわち比透磁率が1の誘電体でもよいし、磁性誘電体でもよい。
【0028】
電子部品1は、更に、それぞれ周囲誘電体部20の上面20a、下面20b、側面20e,20fに配置された導体層3,4,5,6を備えている。導体層3のX方向の長さは、上面20aのX方向の長さよりも小さい。導体層3のY方向の長さは、上面20aのY方向の長さと等しい。導体層3は、上面20aの一部のみを覆っている。導体層4のX方向の長さは、下面20bのX方向の長さよりも小さい。導体層4のY方向の長さは、下面20bのY方向の長さと等しい。導体層4は、下面20bの一部のみを覆っている。導体層5は、側面20eの全体を覆い、導体層3,4に電気的に接続されている。導体層6は、側面20fの全体を覆い、導体層3,4に電気的に接続されている。導体層3,4,5,6は、グランドに接続される。
【0029】
電子部品1は、更に、導体層4に対して所定の間隔をあけて対向するように周囲誘電体部20の内部に配置された導体層7を備えている。導体層4と導体層7の間には、周囲誘電体部20の一部が介在している。
【0030】
線路部10のZ方向の一端は、導体層7に接続されている。導体層7は、周囲誘電体部20の側面20cに露出した端部7aを有している。線路部10のZ方向の他端は、導体層3に接続されている。
【0031】
導体層3,4,5,6,7は、Ag,Cu等の金属によって構成されている。なお、電子部品1は、導体層3の代わりに、第1の比誘電率E1を有する誘電体よりなる誘電体層を備えていてもよい。
【0032】
次に、図4の回路図を参照して、本実施の形態に係る電子部品1の回路構成について説明する。本実施の形態に係る電子部品1は、並列に接続されたインダクタ31とキャパシタ32とを有する共振器30と、入出力端子33とを備えている。インダクタ31の一端とキャパシタ32の一端は、入出力端子33に電気的に接続されている。インダクタ31の他端とキャパシタ32の他端は、グランドに電気的に接続されている。インダクタ31とキャパシタ32は、並列共振回路を構成している。共振器30は、1GHz〜10GHzの範囲内の共振周波数を有している。
【0033】
共振器30は、誘電体線路2を用いて構成されている。より具体的に説明すると、共振器30を構成するインダクタ31が、誘電体線路2の線路部10によって構成されている。キャパシタ32は、図1に示した導体層4,7と、その間の周囲誘電体部20の一部によって構成されている。入出力端子33は、図1に示した導体層7の端部7aによって構成されている。なお、周囲誘電体部20の側面20cに、導体層7の端部7aに接続された導体層を設け、この導体層を入出力端子33としてもよい。
【0034】
次に、本実施の形態に係る誘電体線路2および電子部品1の作用について説明する。導体層7の端部7aによって構成された入出力端子33には、1GHz〜10GHzの範囲内の周波数を含む任意の周波数の電力が供給される。この電力に起因して、導体層7に接続された線路部10に電磁波が励起される。線路部10は、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を伝搬させる。線路部10が伝搬させる電磁波の1つ以上の周波数は、共振器30の共振周波数を含む。共振器30は、1GHz〜10GHzの範囲内の共振周波数で共振する。入出力端子33の電位は、入出力端子33に供給される電力の周波数が共振周波数と一致するときに最大値になり、入出力端子33に供給される電力の周波数が共振周波数から離れるに従って減少する。
【0035】
本実施の形態では、線路部10を構成する第1の誘電体の第1の比誘電率E1は1000以上であり、周囲誘電体部20を構成する第2の誘電体の第2の比誘電率E2は第1の比誘電率E1よりも小さい。1000以上という第1の比誘電率E1の値は、50GHz程度のミリ波帯の電磁波を伝搬させる従来の誘電体線路に用いられる誘電体の比誘電率に比べて、非常に大きい。第1の比誘電率E1の値を、このような大きな値にすることにより、線路部10は、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を伝搬させることが可能になる。
【0036】
第1の比誘電率E1が大きくなるほど、電磁波が線路部10の内部を伝搬しやすくなると共に、線路部10の波長短縮効果が大きくなって共振器30の共振周波数を低下させやすくなる。そのため、理論上は、第1の比誘電率E1に上限はない。ただし、第1の比誘電率E1が50万以上になると、上記の効果はほぼ一定になる。この観点から、第1の比誘電率E1は、50万以下であることが好ましい。
【0037】
第1の比誘電率E1よりも小さい第2の比誘電率E2を有する第2の誘電体よりなる周囲誘電体部20は、電磁波を線路部10に集中させる機能を有する。この機能が効果的に発揮されるように、第2の比誘電率E2は、第1の比誘電率E1の1/10以下であることが好ましい。
【0038】
第2の誘電体が磁性誘電体である場合には、第2の誘電体が磁性を有さない場合に比べて、誘電体線路2のインダクタンスを大きくすることが可能になり、これにより、共振器30の共振周波数を低くすることが可能になる。また、磁性誘電体の比透磁率が大きくなるほど、誘電体線路2のインダクタンスをより大きくすることが可能になり、これにより、共振器30の共振周波数をより低くすることが可能になる。ただし、磁性誘電体の比透磁率が大きくなるほど、周囲誘電体部20における磁性体の損失が大きくなる。そのため、周囲誘電体部20を構成する磁性誘電体の比透磁率は、30以下であることが好ましい。
【0039】
第1の誘電体を構成する誘電体材料の例としては、チタン酸バリウム、またはチタン酸バリウムを含む金属酸化物材料、例えばチタン酸バリウムストロンチウムやチタン酸バリウムカルシウムを挙げることができる。これらの誘電体材料によれば、1000以上の第1の比誘電率E1を有する第1の誘電体を実現することができる。
【0040】
第2の誘電体が磁性を有さない場合における第2の誘電体を構成する誘電体材料の例としては、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂や、アルミナ等のセラミックや、ガラスや、これらの複合材料を挙げることができる。これらの誘電体材料によれば、第1の比誘電率E1の1/10以下の第2の比誘電率E2を有する第2の誘電体を実現することができる。
【0041】
第2の誘電体が磁性誘電体である場合における第2の誘電体を構成する誘電体材料としては、上述のような磁性を有さない誘電体材料中に磁性体粒子を分散させたものを用いることができる。この場合、1GHz〜10GHzの周波数帯における磁性体粒子の磁気損失を小さくするために、磁性体粒子の粒径を、1GHz〜10GHzの周波数帯における表皮深さ以下、具体的には、100nm以下に小さくすることが好ましい。また、磁性体粒子を扁平形状にし、誘電体材料中に配向分散させることにより、磁性誘電体の比透磁率を大きくすることが可能である。更に、特許文献4に記載されているように、磁性体粒子が凝集した異方形状を有する集合体を、誘電体材料中に配向分散させることによっても、磁性誘電体の比透磁率を大きくすることが可能である。
【0042】
以上説明したように、本実施の形態によれば、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を伝搬させる誘電体線路2を実現することができる。また、本実施の形態によれば、誘電体線路2を含む電子部品1を実現することができる。この電子部品1は、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を伝搬させる部分を有している。本実施の形態に係る電子部品1は、特に、誘電体線路2を用いて構成された共振器30を備えている。この共振器30は、1GHz〜10GHzの範囲内の共振周波数を有している。
【0043】
[第2の実施の形態]
次に、図5ないし図7を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る誘電体線路および電子部品について説明する。図5は、本実施の形態に係る誘電体線路および電子部品を示す斜視図である。図6は、図5におけるA方向から見た電子部品を示す側面図である。図7は、図5に示した誘電体線路の断面を示す断面図である。
【0044】
本実施の形態に係る誘電体線路2および電子部品1では、周囲誘電体部20の構成が第1の実施の形態と異なっている。すなわち、本実施の形態では、周囲誘電体部20は、磁性誘電体によって構成された磁性誘電体部21と、磁性を有さない誘電体によって構成された非磁性誘電体部22とを含んでいる。磁性誘電体部21は、線路部10における電磁波の伝搬方向すなわちZ方向に直交する断面において、線路部10の周囲に存在する。本実施の形態では、特に、上記断面において、磁性誘電体部21は、線路部10の外周全体に接している。磁性誘電体部21の形状は、例えば円筒形状である。非磁性誘電体部22は、上記断面において、磁性誘電体部21の周囲に存在している。
【0045】
磁性誘電体部21と非磁性誘電体部22は、第1の実施の形態で説明した第2の比誘電率E2を有している。磁性誘電体部21は、1より大きい比透磁率を有している。磁性誘電体部21の比透磁率は、1.02以上であることが好ましい。周囲誘電体部20が磁性誘電体部21を含むことにより、周囲誘電体部20の全体が磁性を有さない場合に比べて、誘電体線路2のインダクタンスを大きくすることが可能になり、これにより、共振器30の共振周波数を低くすることが可能になる。また、磁性誘電体部21の比透磁率が大きくなるほど、誘電体線路2のインダクタンスをより大きくすることが可能になり、これにより、共振器30の共振周波数をより低くすることが可能になる。ただし、磁性誘電体部21の比透磁率が大きくなるほど、磁性誘電体部21における磁性体の損失が大きくなる。そのため、磁性誘電体部21の比透磁率は、30以下であることが好ましい。
【0046】
磁性誘電体部21を構成する磁性誘電体の材料の例は、第1の実施の形態で説明した通りである。非磁性誘電体部22を構成する誘電体の材料の例は、第1の実施の形態において説明した、第2の誘電体が磁性を有さない場合における第2の誘電体を構成する誘電体材料の例と同じである。
【0047】
本実施の形態に係る誘電体線路2および電子部品1のその他の構成は、第1の実施の形態と同様である。また、本実施の形態に係る誘電体線路2および電子部品1の作用および効果は、第1の実施の形態において、周囲誘電体部20を構成する第2の誘電体が磁性誘電体である場合と同様である。
【0048】
[第3の実施の形態]
次に、図8ないし図10を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る誘電体線路および電子部品について説明する。図8は、本実施の形態に係る誘電体線路および電子部品を示す斜視図である。図9は、図8に示した電子部品の平面図である。図10は、図8に示した誘電体線路の断面を示す断面図である。
【0049】
図8ないし図10に示したように、本実施の形態に係る電子部品51は、本実施の形態に係る誘電体線路52を含んでいる。誘電体線路52は、第1の比誘電率E1を有する第1の誘電体よりなる線路部60と、第2の比誘電率E2を有する第2の誘電体よりなる周囲誘電体部70と、接地導体80とを備えている。線路部60は、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を伝搬させる。周囲誘電体部70は、線路部60における電磁波の伝搬方向に直交する断面において、線路部60の周囲に存在する。本実施の形態では、特に、上記断面において、周囲誘電体部70は、線路部60の外周全体に接している。第1の実施の形態と同様に、第1の比誘電率E1は、1000以上である。第2の比誘電率E2は、第1の比誘電率E1よりも小さい。
【0050】
周囲誘電体部70は直方体形状を有している。ここで、図8に示したように、X方向、Y方向およびZ方向を定義する。X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する。周囲誘電体部70は、Z方向の両端に位置する上面70aおよび下面70bと、X方向の両端に位置する2つの側面70c,70dと、Y方向の両端に位置する2つの側面70e,70fとを有している。
【0051】
本実施の形態では、線路部60は、X方向に長い板状であり、周囲誘電体部70の内部に埋め込まれている。線路部60は、周囲誘電体部70の上面70aに向いた上面と、周囲誘電体部70の下面70bに向いた下面とを有している。線路部60における電磁波の伝搬方向は、X方向である。図10は、線路部60における電磁波の伝搬方向すなわちX方向に直交する断面を示している。この断面において、線路部60の形状は四角形、特に長方形であり、周囲誘電体部70の形状も長方形である。
【0052】
接地導体80は、周囲誘電体部70の下面70bに配置されている。接地導体80は、側面70cと下面70bとの間の稜線から離れた位置から、側面70dと下面70bとの間の稜線の位置まで延びている。
【0053】
周囲誘電体部70の少なくとも一部は、第1の実施の形態で説明した磁性誘電体によって構成されていてもよい。言い換えると、周囲誘電体部70の少なくとも一部は、1より大きい比透磁率を有していてもよい。この場合、周囲誘電体部70の少なくとも一部(磁性誘電体)の比透磁率は、1.02以上であることが好ましい。なお、周囲誘電体部70の少なくとも一部を構成する磁性誘電体は、第2の誘電体の少なくとも一部である。従って、磁性誘電体は、前述の第2の比誘電率E2を有している。
【0054】
本実施の形態では、特に、周囲誘電体部70の全体が、1種類の第2の誘電体によって構成されている。従って、周囲誘電体部70の全体が、同じ比誘電率と同じ比透磁率を有している。上記の1種類の第2の誘電体は、磁性を有さない誘電体すなわち比透磁率が1の誘電体でもよいし、磁性誘電体でもよい。
【0055】
電子部品51は、更に、周囲誘電体部70の側面70dに配置された導体層53を備えている。導体層53は、側面70dの全体を覆い、接地導体80に電気的に接続されている。接地導体80と導体層53は、グランドに接続される。接地導体80と導体層53は、Ag,Cu等の金属によって構成されている。
【0056】
線路部60は、X方向の一方の端に位置して周囲誘電体部70の側面70cに露出した端部60aを有している。端部60aとは反対側の線路部60の端部は、導体層53に接続されている。
【0057】
本実施の形態に係る誘電体線路52の構造は、マイクロストリップ線路の構造に類似している。本実施の形態に係る誘電体線路52がマイクロストリップ線路と異なる点は、マイクロストリップ線路における導体線路の代わりに第1の誘電体よりなる線路部60を備えている点である。
【0058】
本実施の形態に係る電子部品51は、1GHz〜10GHzの範囲内の共振周波数を有する共振器を備えている。この共振器は、誘電体線路52を用いて構成されている。より具体的に説明すると、本実施の形態に係る誘電体線路52は、マイクロストリップ線路と同様に分布定数線路として機能する。そして、この誘電体線路52によって、先端短絡1/4波長共振器が構成されている。この先端短絡1/4波長共振器は、並列共振回路と等価である。従って、本実施の形態における共振器である先端短絡1/4波長共振器の等価回路は、図4に示したようになる。以下、本実施の形態における共振器を、第1の実施の形態と同様に符号30を付して表す。本実施の形態では、線路部60の端部60aが、先端短絡1/4波長共振器の開放端および図4における入出力端子33を構成している。なお、周囲誘電体部70の側面70cに、線路部60の端部60aに接続された導体層を設け、この導体層を入出力端子33としてもよい。あるいは、周囲誘電体部70の内部に、下端が線路部60における端部60aの近傍の部分に接続され、上端が周囲誘電体部70の上面70aに露出するスルーホールを設け、このスルーホールの上端を入出力端子33としてもよい。端部60aとは反対側の線路部60の端部は、導体層53に接続されて、先端短絡1/4波長共振器の短絡端を構成している。
【0059】
本実施の形態における第1の比誘電率E1、第2の比誘電率E2および磁性誘電体の比透磁率のそれぞれの好ましい範囲と、第1の誘電体、第2の誘電体および磁性誘電体のそれぞれの材料の例は、第1の実施の形態と同じである。
【0060】
次に、本実施の形態に係る誘電体線路52および電子部品51の作用について説明する。線路部60の端部60aによって構成された入出力端子33には、1GHz〜10GHzの範囲内の周波数を含む任意の周波数の電力が供給される。この電力に起因して、線路部60に電磁波が励起される。線路部60は、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を伝搬させる。線路部60が伝搬させる電磁波の1つ以上の周波数は、共振器30の共振周波数を含む。この共振器30は、1GHz〜10GHzの範囲内の共振周波数で共振する。入出力端子33の電位は、入出力端子33に供給される電力の周波数が共振周波数と一致するときに最大値になり、入出力端子33に供給される電力の周波数が共振周波数から離れるに従って減少する。
【0061】
第2の誘電体が磁性誘電体である場合には、第2の誘電体が磁性を有さない場合に比べて、誘電体線路52のインダクタンスを大きくすることが可能になり、これにより、共振器30の共振周波数を低下させることが可能になる。本実施の形態に係る誘電体線路52および電子部品51のその他の作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0062】
[第4の実施の形態]
次に、図11ないし図13を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る誘電体線路および電子部品について説明する。図11は、本実施の形態に係る誘電体線路および電子部品を示す斜視図である。図12は、図11に示した電子部品の平面図である。図13は、図11に示した誘電体線路の断面を示す断面図である。
【0063】
本実施の形態に係る誘電体線路52および電子部品51では、周囲誘電体部70の構成が第3の実施の形態と異なっている。すなわち、本実施の形態では、周囲誘電体部70は、磁性誘電体によって構成された磁性誘電体部71と、磁性を有さない誘電体によって構成された非磁性誘電体部72とを含んでいる。磁性誘電体部71は、線路部60における電磁波の伝搬方向すなわちX方向に直交する断面において、線路部60の周囲に存在する。本実施の形態では、特に、上記断面において、磁性誘電体部71は、線路部60の外周全体に接している。上記断面において、磁性誘電体部71の外縁の形状は、例えば長方形である。非磁性誘電体部72は、上記断面において、磁性誘電体部71の周囲に存在している。
【0064】
磁性誘電体部71と非磁性誘電体部72は、第1の実施の形態で説明した第2の比誘電率E2を有している。磁性誘電体部71は、1より大きい比透磁率を有している。磁性誘電体部71の比透磁率は、1.02以上であることが好ましい。また、磁性誘電体部71の比透磁率は、30以下であることが好ましい。磁性誘電体部71を構成する磁性誘電体の材料の例は、第1の実施の形態で説明した通りである。非磁性誘電体部72を構成する誘電体の材料の例は、第1の実施の形態において説明した、第2の誘電体が磁性を有さない場合における第2の誘電体を構成する誘電体材料の例と同じである。
【0065】
本実施の形態に係る誘電体線路52および電子部品51のその他の構成は、第3の実施の形態と同様である。また、本実施の形態に係る誘電体線路52および電子部品51の作用および効果は、第3の実施の形態において、周囲誘電体部70を構成する第2の誘電体が磁性誘電体である場合と同様である。
【0066】
以下、本発明の誘電体線路に関して行った第1ないし第4のシミュレーションの結果について説明する。
【0067】
[第1のシミュレーション]
始めに、第1のシミュレーションについて説明する。第1のシミュレーションでは、それぞれ本発明の誘電体線路を用いて構成された第1および第2の電子部品を設計した。第1の電子部品は、1GHzの共振周波数を有する第1の共振器を備えている。第2の電子部品は、10GHzの共振周波数を有する第2の共振器を備えている。
【0068】
初めに、図14および図15を参照して、第1の電子部品101について説明する。図14は、第1の電子部品101の斜視図である。図15は、第1の電子部品101の平面図である。第1の電子部品101の構成は、基本的には、図1に示した第1の実施の形態に係る電子部品1と同じである。なお、図15では、導体層3を省略している。
【0069】
第1の電子部品101における各部の寸法は、以下の通りである。図14に示したように、線路部10のZ方向の長さは3mmである。周囲誘電体部20のX方向の長さとY方向の長さは、それぞれ4.5mmと3.2mmである。図15に示したように、Z方向に直交する断面における線路部10の直径は1mmである。Z方向から見て、導体層4と導体層7が重なる領域は長方形である。この領域のX方向の長さとY方向の長さは、それぞれ0.85mmと2.2mmである。導体層4と導体層7の間隔は0.03mmである。線路部10のZ方向の長さに比べて、導体層7の厚みと、導体層4と導体層7の間隔は、十分に小さいため、周囲誘電体部20のZ方向の長さは約3mmである。
【0070】
第1の電子部品101において、線路部10を構成する第1の誘電体の第1の比誘電率E1は1000である。第1の誘電体の誘電正接は0.001である。周囲誘電体部20を構成する第2の誘電体の第2の比誘電率E2は10である。第2の誘電体の比透磁率は20である。導体層4,7とその間の周囲誘電体部20の一部によって構成されたキャパシタ32(図4参照)のキャパシタンスは、5.792pFである。第1の共振器は、インダクタ31とキャパシタ32によって構成されている。インダクタ31は、線路部10によって構成されている。
【0071】
次に、図16および図17を参照して、第2の電子部品102について説明する。図16は、第2の電子部品102の斜視図である。図17は、第2の電子部品102の平面図である。第2の電子部品102の構成は、基本的には、図1に示した第1の実施の形態に係る電子部品1と同じである。なお、図17では、導体層3を省略している。
【0072】
第2の電子部品102における各部の寸法は、以下の通りである。図16に示したように、線路部10のZ方向の長さは1.5mmである。周囲誘電体部20のX方向の長さとY方向の長さは、それぞれ4.5mmと3.2mmである。図17に示したように、Z方向に直交する断面における線路部10の直径は0.6mmである。Z方向から見て、導体層4と導体層7が重なる領域は長方形である。この領域のX方向の長さとY方向の長さは、それぞれ0.25mmと1mmである。導体層4と導体層7の間隔は0.03mmである。線路部10のZ方向の長さに比べて、導体層7の厚みと、導体層4と導体層7の間隔は、十分に小さいため、周囲誘電体部20のZ方向の長さは約1.5mmである。
【0073】
第2の電子部品102において、線路部10を構成する第1の誘電体の第1の比誘電率E1は1000である。第1の誘電体の誘電正接は0.001である。周囲誘電体部20を構成する第2の誘電体の第2の比誘電率E2は10である。第2の誘電体の比透磁率は1である。導体層4,7とその間の周囲誘電体部20の一部によって構成されたキャパシタ32(図4参照)のキャパシタンスは、0.851pFである。第2の共振器は、インダクタ31とキャパシタ32によって構成されている。インダクタ31は、線路部10によって構成されている。
【0074】
図18は第1の電子部品101の反射減衰特性を示している。図18において、横軸は周波数、縦軸は反射減衰量である。図18に示したように、第1の電子部品101の反射減衰特性では、1GHzにおいて反射減衰量が極大値をとっている。このことから、第1の電子部品101の第1の共振器は、1GHzの共振周波数を有することが分かる。また、このことから、第1の電子部品101の線路部10が、少なくとも1GHzの周波数の電磁波を伝搬させることが可能であることが分かる。
【0075】
図19は第2の電子部品102の反射減衰特性を示している。図19において、横軸は周波数、縦軸は反射減衰量である。図19に示したように、第2の電子部品102の反射減衰特性では、10GHzにおいて反射減衰量が極大値をとっている。このことから、第2の電子部品102の第2の共振器は、10GHzの共振周波数を有することが分かる。また、このことから、第2の電子部品102の線路部10が、少なくとも10GHzの周波数の電磁波を伝搬させることが可能であることが分かる。
【0076】
また、第1のシミュレーションの結果から、電子部品における各部の寸法や、第1の比誘電率E1や、第2の比誘電率E2や、第2の誘電体の比透磁率を調整することによって、1GHzと10GHzの間の1つ以上の周波数の電磁波を伝搬させる線路部10と、この線路部10を含み、1GHzと10GHzの間の共振周波数を有する共振器を備えた電子部品を実現できることは明らかである。
【0077】
第1の電子部品101と第2の電子部品102では、線路部10を構成する第1の誘電体の第1の比誘電率E1は1000である。第1の比誘電率E1が大きくなるほど、電磁波が線路部10の内部を伝搬しやすくなる。そのため、第1の比誘電率E1が1000以上であれば、1GHz〜10GHzの範囲内の1つ以上の周波数の電磁波を伝搬させる線路部10と、この線路部10を含み、1GHz〜10GHzの範囲内の共振周波数を有する共振器を備えた電子部品を実現できることは明らかである。
【0078】
[第2のシミュレーション]
次に、第2のシミュレーションについて説明する。第2のシミュレーションでは、第1の実施の形態に係る電子部品1における線路部10の形状、第1の比誘電率E1、第2の比誘電率E2、および共振器30の共振周波数の関係を調べた。第2のシミュレーションでは、第2の比誘電率E2と線路部10の形状が異なる5つの電子部品1のモデルA〜Eを用いた。モデルA〜Eにおける第2の比誘電率E2とZ方向に直交する断面における線路部10の直径Dと線路部10のZ方向の長さLを、下記の表1に示す。第1の誘電体と第2の誘電体の比透磁率は、いずれも1である。
【0079】
【表1】
【0080】
第2のシミュレーションでは、モデルA〜Eについて、第1の誘電率E1と共振器30の共振周波数との関係を調べた。なお、キャパシタ32のキャパシタンスは3pFとした。第2のシミュレーションの結果を、図20に示す。図20において、横軸は第1の比誘電率E1であり、縦軸は共振器30の共振周波数である。
【0081】
図20に示した結果から、線路部10が大きくなるほど、また、第1の誘電率E1が大きくなるほど、共振周波数が低くなることが分かる。ただし、第1の比誘電率E1が50万以上になると、線路部10の大きさに関わらず、共振周波数はほぼ一定になる。そのため、第1の比誘電率E1は、50万以下であることが好ましい。
【0082】
[第3のシミュレーション]
次に、第3のシミュレーションについて説明する。第3のシミュレーションでは、第2の実施の形態に係る電子部品1に関して、第1の比誘電率E1、磁性誘電体部21の比透磁率、共振器30の共振周波数、および共振器30の無負荷Q値の関係を調べた。第3のシミュレーションで用いた電子部品1のモデルでは、Z方向に直交する断面における線路部10の直径を150μmとし、Z方向に直交する断面における磁性誘電体部21の厚みを25μmとし、Z方向に直交する断面における磁性誘電体部21の外周の直径を200μmとし、線路部10のZ方向の長さを460μmとし、キャパシタ32のキャパシタンスを3pFとした。また、第2の比誘電率E2を75とし、第1の誘電体の誘電正接と磁性誘電体部21の誘電正接をいずれも0.001とした。第3のシミュレーションの結果を、下記の表2に示す。なお、ここでは、磁性誘電体部21の比透磁率を記号μで表す。また、周囲誘電体部20の全体が磁性を有さない場合を、便宜上、磁性誘電体部21の比透磁率μが1.0である場合として表している。
【0083】
【表2】
【0084】
第3のシミュレーションでは、第3のシミュレーションで用いた電子部品1のモデルにおける線路部10の代わりに、線路部10と同じ形状でAgよりなる導体線路部を設け、磁性誘電体部21の比透磁率を1.0とした比較例のモデルについても、共振器の共振周波数と共振器の無負荷Q値を求めた。比較例のモデルでは、共振器の共振周波数は4.52GHzであり、共振器の無負荷Q値は130.9であった。
【0085】
表2に示した第1の比誘電率E1と磁性誘電体部21の比透磁率μの条件のときに、第3のシミュレーションで用いた電子部品1のモデルでは、1GHz〜10GHzの範囲内の共振周波数と、比較例のモデルにおける無負荷Q値よりも大きい無負荷Q値が得られている。
【0086】
図21は、第3のシミュレーションの結果の一部、具体的には、第1の比誘電率E1が5,000である場合についての磁性誘電体部21の比透磁率μと共振器30の共振周波数との関係を示している。図21において、横軸は磁性誘電体部21の比透磁率μであり、縦軸は共振器30の共振周波数である。図21では、第1の比誘電率E1が5,000である場合についての磁性誘電体部21の比透磁率μと共振周波数との関係を、複数の三角の点とそれらを結ぶ曲線で表している。また、図21では、比較例のモデルにおける共振器の共振周波数を一点鎖線で示している。
【0087】
表2および図21から、第3のシミュレーションで用いた電子部品1のモデルでは、第1の比誘電率E1が5,000であるとき、磁性誘電体部21の比透磁率μが1.02以上であれば、10GHz以下の共振周波数が得られることが分かる。また、表2および図21から、磁性誘電体部21の比透磁率μが大きくなるほど、共振周波数が低くなることが分かる。従って、磁性誘電体部21の比透磁率μが大きいほど、1GHz〜10GHzの範囲内の共振周波数を有する共振器30を備えた電子部品1を実現しやすくなる。ただし、磁性誘電体部21の比透磁率μが大きくなるほど、磁性誘電体部21における磁性体の損失が大きくなる。磁性誘電体部21の比透磁率μは、最大で30程度あれば十分である。
【0088】
[第4のシミュレーション]
次に、第4のシミュレーションについて説明する。第4のシミュレーションでは、第1および第2の実施の形態に係る誘電体線路2における線路部10の近傍の磁界強度を調べた。図22の(a)〜(e)は、異なる条件の5つの誘電体線路2のモデルを示している。(a)〜(d)に示した4つのモデルは、第1の実施の形態に係る誘電体線路2のモデルである。(a)〜(d)に示した4つのモデルでは、Z方向に直交する断面における線路部10の直径を150μmとし、第2の比誘電率E2を7とし、周囲誘電体部20の透磁率を1とした。また、(a)〜(d)に示した4つのモデルでは、第1の比誘電率E1を、それぞれ、1,000、2,000、5,000、10,000とした。また、(a)〜(d)に示した4つのモデルでは、いずれも、第1の誘電体の誘電正接を0.001とした。
【0089】
図22の(e)に示したモデルは、第2の実施の形態に係る誘電体線路2のモデルである。図22の(e)に示したモデルでは、Z方向に直交する断面における線路部10の直径を150μmとし、Z方向に直交する断面における磁性誘電体部21の厚みを25μmとし、Z方向に直交する断面における磁性誘電体部21の外周の直径を200μmとした。また、図22の(e)に示したモデルでは、第1の比誘電率E1を10,000とし、第1の誘電体の誘電正接を0.001とし、第2の比誘電率E2を7とし、磁性誘電体部21の比透磁率μを5とした。
【0090】
図22の(a)〜(e)には、線路部10の近傍の12点の位置における磁界強度を矢印で示している。矢印の大きさは、磁界強度が大きいほど大きい。図22の(a)〜(d)に示したように、第1の比誘電率E1が大きくなるほど、線路部10の近傍の磁界強度が大きくなっている。このことから、第1の比誘電率E1が大きくなるほど、誘電体線路2のインダクタンスを大きくすることが可能になり、これにより、共振器30の共振周波数を低くすることが可能になることが分かる。
【0091】
また、図22の(d)と(e)から、周囲誘電体部20が磁性誘電体部21を含むことにより、周囲誘電体部20の全体が磁性を有さない場合に比べて、線路部10の近傍の磁界強度が大きくなることが分かる。このことから、周囲誘電体部20の少なくとも一部が磁性を有することにより、誘電体線路2のインダクタンスを大きくすることが可能になり、これにより、共振器30の共振周波数を低くすることが可能になることが分かる。
【0092】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態に係る誘電体線路および電子部品について説明する。図23は、本実施の形態に係る電子部品の平面図である。図24は、図23に示した電子部品の斜視図である。
【0093】
本実施の形態に係る電子部品200は、2つの共振器を含むバンドパスフィルタを実現している。電子部品200は、上面を有する誘電体基板201と、この誘電体基板201の上面上に配置された4つの導体層211,212,213,214を備えている。誘電体基板201の比誘電率は、2.6である。
【0094】
導体層211,212は、いずれも一方向に長く、この一方向に並ぶように配置されている。導体層211,212の間には、所定の大きさの間隙210が形成されている。ここで、導体層211,212が並ぶ方向をX方向と定義し、誘電体基板201の上面に平行でX方向に直交する方向をY方向と定義する。導体層213,214は、導体層211,212を挟むように、導体層211,212のY方向の両側に配置されている。
【0095】
導体層213は、導体層211,212に対して一定の間隔をあけて配置されている。導体層214は、導体層211,212に向いた側部214aを有している。この側部214aは、側部214aに向いた導体層211の側部に対して第1の間隔をあけて対向する第1の部分214a1と、側部214aに向いた導体層212の側部に対して第2の間隔をあけて対向する第2の部分214a2と、第1の部分214a1と第2の部分214a2の間に位置する第3の部分214a3とを有している。第3の部分214a3は、側部214aに向いた導体層211,212の側部に対して第3の間隔をあけて対向している。第1の間隔と第2の間隔の大きさは等しい。第3の間隔の大きさは、第1および第2の間隔の大きさよりも大きい。
【0096】
誘電体基板201および導体層211,212,213,214は、コプレーナ線路を構成している。導体層213,214は、グランドに接続される。導体層211,212は、高周波信号を伝送する。
【0097】
電子部品200は、更に、2つの誘電体ブロック221,231と、2つのチップ状のキャパシタ222,232を備えている。誘電体ブロック221,231は、いずれもY方向に長い直方体形状を有している。誘電体ブロック221のY方向の一端の近傍の部分は、導体層214の上面のうち、側部214aの第3の部分214a3の近傍の部分に接し、誘電体ブロック221のY方向の他端の近傍の部分は、導体層211の上面に接している。誘電体ブロック231のY方向の一端の近傍の部分は、導体層214の上面のうち、側部214aの第3の部分214a3の近傍の部分に接し、誘電体ブロック231のY方向の他端の近傍の部分は、導体層212の上面に接している。キャパシタ222は、導体層211と導体層213とを接続している。キャパシタ232は、導体層212と導体層213とを接続している。キャパシタ222,232のキャパシタンスは、いずれも0.6pFである。
【0098】
誘電体ブロック221,231のY方向の長さは、いずれも1.6mmである。Y方向に直交する誘電体ブロック221,231の断面の形状は、いずれも、一辺の長さが0.5mmの正方形である。誘電体ブロック221,231は、いずれも、チタン酸バリウムストロンチウムによって形成されている。誘電体ブロック221,231は、本実施の形態に係る誘電体線路における線路部を構成する。誘電体ブロック221,231の比誘電率、すなわち第1の比誘電率E1は、いずれも1000である。誘電体ブロック221,231における電磁波の伝搬方向はY方向である。誘電体ブロック221,231における電磁波の伝搬方向すなわちY方向に直交する断面において、誘電体ブロック221,231の形状は四角形である。
【0099】
電子部品200は、更に、第2の比誘電率E2を有する第2の誘電体よりなる図示しない周囲誘電体部を備えている。この周囲誘電体部は、誘電体ブロック221,231における電磁波の伝搬方向に直交する断面において、誘電体ブロック221,231の周囲に存在する。周囲誘電体部を構成する第2の誘電体は、誘電体材料であってもよいし、空気であってもよい。電子部品200は、誘電体ブロック221と周囲誘電体部とによって構成された誘電体線路と、誘電体ブロック231と周囲誘電体部とによって構成された誘電体線路とを備えている。
【0100】
図25は、図23に示した電子部品200の回路構成を示す回路図である。電子部品200は、入力端241と、出力端242と、共振器220,230と、キャパシタ240とを備えている。共振器220は、並列に接続された誘電体ブロック221とキャパシタ222によって構成されている。共振器230は、並列に接続された誘電体ブロック231とキャパシタ232によって構成されている。誘電体ブロック221,231は、それぞれインダクタとして機能する。
【0101】
入力端241は、導体層211によって構成されている。誘電体ブロック221の一端とキャパシタ222の一端は、入力端241(導体層211)に接続されている。誘電体ブロック221の他端は、グランド(導体層214)に接続されている。キャパシタ222の他端は、グランド(導体層213)に接続されている。
【0102】
出力端242は、導体層212によって構成されている。誘電体ブロック231の一端とキャパシタ232の一端は、出力端242(導体層212)に接続されている。誘電体ブロック231の他端は、グランド(導体層214)に接続されている。キャパシタ232の他端は、グランド(導体層213)に接続されている。
【0103】
キャパシタ240は、導体層211,212と、これらの間の間隙210とによって構成されている。キャパシタ240の一端は入力端241(導体層211)に接続され、キャパシタ240の他端は出力端242(導体層212)に接続されている。
【0104】
共振器220と共振器230は、電磁界結合している。この電磁界結合は、誘電体ブロック221,231間の誘導結合と、キャパシタ240による容量結合とを含む。
【0105】
実際に共振器220,230を作製したところ、共振器220,230の共振周波数は7.04GHz、無負荷Q値は98.6であった。共振器220,230と比較するために、誘電体ブロック221の代わりにAgよりなる導体層によって構成されたインダクタを設け、このインダクタとキャパシタ222とによって構成された比較例の共振器も作製した。この比較例の共振器の共振周波数は5.86GHz、無負荷Q値は60.4であった。このように、本実施の形態によれば、比較例の共振器に比べて無負荷Q値が大きい共振器を実現できることが確認された。
【0106】
図26は、図23に示した電子部品200の周波数特性を示す特性図である。図26において、横軸は周波数、縦軸は減衰量である。図26において、記号S1を付した曲線は、電子部品200の通過減衰特性を示し、記号S2を付した曲線は、電子部品200の反射減衰特性を示している。図26から、電子部品200がバンドパスフィルタを実現していることが分かる。このバンドパスフィルタの通過帯域の中心周波数は7.8GHzであり、通過帯域幅は0.6GHzである。なお、バンドパスフィルタの通過帯域は、通過減衰特性S1における減衰量が3dB以下となる周波数範囲である。
【0107】
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態に係る誘電体線路および電子部品について説明する。図27は、本実施の形態に係る電子部品の斜視図である。図28は、図27に示した電子部品の内部を示す斜視図である。図27に示したように、本実施の形態に係る電子部品300は、直方体形状を有している。ここで、図27に示したように、X方向、Y方向およびZ方向を定義する。X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する。電子部品300は、Z方向の両端に位置する上面300aおよび下面300bと、X方向の両端に位置する2つの側面300c,300dと、Y方向の両端に位置する2つの側面300e,300fとを有している。図27に示したように、電子部品300のX方向、Y方向およびZ方向の寸法は、それぞれ例えば、1.0mm、0.5mm、0.35mmである。
【0108】
図28に示したように、電子部品300は、インダクタ部310とキャパシタ部350とを備えている。図29は、キャパシタ部350を示す斜視図である。インダクタ部310は、キャパシタ部350の上に配置されている。図27に示したように、電子部品300は、更に、インダクタ部310とキャパシタ部350を覆う絶縁材料よりなる被覆層309を備えている。
【0109】
電子部品300は、側面300cに露出した入力端子301(図28および図29参照)と、側面300dに露出した出力端子302と、側面300e,300fに露出したグランド端子303,304(図29参照)と、上面300aに露出した外部シールド層305と、下面300bに露出したグランド層306とを備えている。入力端子301、出力端子302、グランド端子303,304、外部シールド層305およびグランド層306は、導体によって構成されている。グランド端子303,304は、グランド層306に電気的に接続されている。インダクタ部310は、X方向に並べて配置された6つの誘電体線路を含んでいる。この6つの誘電体線路については、後で詳しく説明する。
【0110】
図29に示したように、キャパシタ部350は、グランド層306の上方に配置された6つのキャパシタ用導体層351を有している。6つのキャパシタ用導体層351は、X方向に並べて配置されている。入力端子301に最も近いキャパシタ用導体層351は、入力端子301に電気的に接続されている。出力端子302に最も近いキャパシタ用導体層351は、出力端子302に電気的に接続されている。
【0111】
キャパシタ部350は、更に、グランド層306と6つのキャパシタ用導体層351の間に配置された5つのキャパシタ用導体層352を有している。Z方向から見たときに、1つのキャパシタ用導体層352は、隣接する2つのキャパシタ用導体層351に重なるように配置されている。
【0112】
キャパシタ部350は、更に、グランド層306と6つのキャパシタ用導体層351と5つのキャパシタ用導体層352を保持する誘電体基板353を有している。誘電体基板353の比誘電率は、例えば100である。誘電体基板353の比透磁率は1である。
【0113】
インダクタ部310における1つの誘電体線路と、その下に位置するキャパシタ部350の一部とを合わせた部分を、共振器部分360と呼ぶ。電子部品300は、X方向に並べて配置された6つの共振器部分360を備えている。
【0114】
図30は、1つの共振器部分360の内部を示す斜視図である。図30は、特に、出力端子302に最も近い共振器部分360を示している。図30に示したように、誘電体線路311は、線路部312と、この線路部312の周囲に存在する周囲誘電体部313とを有している。線路部312は、周囲誘電体部313に埋め込まれている。周囲誘電体部313は、直方体形状を有している。X方向から見た線路部312の全体の形状は、ミアンダ形状である。線路部312における電磁波の伝搬方向は、線路部312が延びる方向である。周囲誘電体部313は、線路部312における電磁波の伝搬方向に直交する断面において、線路部312の周囲に存在する。本実施の形態では、特に、上記断面において、周囲誘電体部313は、線路部312の外周全体に接している。また、上記断面において、線路部312の形状は四角形、特に長方形である。
【0115】
線路部312は、第1の比誘電率E1を有する第1の誘電体によって構成されている。本実施の形態において、第1の比誘電率E1は例えば500,000であり、第1の誘電体の誘電正接は例えば0.001である。周囲誘電体部313は、第2の比誘電率E2を有する第2の誘電体によって構成されている。本実施の形態において、第2の比誘電率E2は例えば20であり、第2の誘電体の誘電正接は例えば0.001である。また、第2の誘電体の比透磁率は、例えば1〜23の範囲内である。
【0116】
1つの共振器部分360は、1つのキャパシタ用導体層351を含んでいる。線路部312の一端はキャパシタ用導体層351に接続されている。また、1つの共振器部分360は、線路部312の他端とグランド層306とを接続する導体部354を含んでいる。導体部354は、誘電体基板353内に埋め込まれている。
【0117】
図30に示したように、共振器部分360のX方向、Y方向およびZ方向の寸法は、それぞれ例えば、0.15mm、0.5mm、0.35mmである。
【0118】
電子部品300は、隣接する2つの共振器部分360の間と、X方向の両端に位置する2つの共振器部分360のそれぞれの外側の面に配置された複数の区画シールド層361を備えている。図31は、1つの共振器部分360と、その両側に位置する2つの区画シールド層361とを示している。
【0119】
図32は、X方向から見た共振器部分360の正面図である。図33は、Y方向から見た共振器部分360の側面図である。図32に示したように、X方向から見た線路部312の幅は、例えば30μmである。また、図33に示したように、Y方向から見た線路部312の厚みは、例えば5μmである。
【0120】
図34は、電子部品300の回路構成を示す回路図である。電子部品300は、入力端子301と、出力端子302と、6つの共振器371〜376と、6つのキャパシタ381〜386と、2つのインダクタ388,389とを備えている。6つの共振器371〜376のうちの、隣接する任意の2つの共振器は、電磁界結合している。
【0121】
共振器371は、インダクタ371L1,371L2とキャパシタ371Cによって構成されている。インダクタ371L1,371L2の各一端は、入力端子301に接続されている。キャパシタ371Cの一端は、インダクタ371L2の他端に接続されている。インダクタ371L1は、入力端子301に最も近い線路部312によって構成されている。インダクタ371L2は、入力端子301に最も近いキャパシタ用導体層351によって構成されている。キャパシタ371Cは、入力端子301に最も近いキャパシタ用導体層351と、グランド層306と、それらの間の誘電体基板353の一部によって構成されている。
【0122】
共振器372は、インダクタ372Lとキャパシタ372Cによって構成されている。共振器373は、インダクタ373Lとキャパシタ373Cによって構成されている。共振器374は、インダクタ374Lとキャパシタ374Cによって構成されている。共振器375は、インダクタ375Lとキャパシタ375Cによって構成されている。
【0123】
インダクタ372L,373L,374L,375Lは、入力端子301に最も近い線路部312および出力端子302に最も近い線路部312を除く4つの線路部312によって構成されている。キャパシタ372C,373C,374C,375Cは、入力端子301に接続されたキャパシタ用導体層351および出力端子302に接続されたキャパシタ用導体層351を除く4つのキャパシタ用導体層351と、グランド層306と、それらの間の誘電体基板353の一部によって構成されている。
【0124】
共振器376は、インダクタ376L1,376L2とキャパシタ376Cによって構成されている。インダクタ376L1,376L2の各一端は、出力端子302に接続されている。キャパシタ376Cの一端は、インダクタ376L2の他端に接続されている。インダクタ376L1は、出力端子302に最も近い線路部312によって構成されている。インダクタ376L2は、出力端子302に最も近いキャパシタ用導体層351によって構成されている。キャパシタ376Cは、出力端子302に最も近いキャパシタ用導体層351と、グランド層306と、それらの間の誘電体基板353の一部によって構成されている。
【0125】
キャパシタ381の一端は、インダクタ371L1,371L2の各一端に接続されている。キャパシタ381の他端は、インダクタ372Lとキャパシタ372Cの各一端に接続されている。キャパシタ382の一端は、インダクタ372Lとキャパシタ372Cの各一端に接続されている。キャパシタ382の他端は、インダクタ373Lとキャパシタ373Cの各一端に接続されている。キャパシタ383の一端は、インダクタ373Lとキャパシタ373Cの各一端に接続されている。キャパシタ383の他端は、インダクタ374Lとキャパシタ374Cの各一端に接続されている。キャパシタ384の一端は、インダクタ374Lとキャパシタ374Cの各一端に接続されている。キャパシタ384の他端は、インダクタ375Lとキャパシタ375Cの各一端に接続されている。キャパシタ385の一端は、インダクタ375Lとキャパシタ375Cの各一端に接続されている。キャパシタ385の他端は、インダクタ376L1,376L2の各一端に接続されている。
【0126】
キャパシタ381〜385は、5つのキャパシタ用導体層352と、6つのキャパシタ用導体層351と、それらの間の誘電体基板353の一部によって構成されている。キャパシタ381〜385の各々は、1つのキャパシタ用導体層352と、その両側に位置する2つのキャパシタ用導体層351と、それらの間の誘電体基板353の一部によって構成されている。
【0127】
インダクタ388の一端は、インダクタ371L1,372L,373L,374L,375L,376L1の各他端に接続されている。インダクタ388の他端は、グランドに接続されている。インダクタ389の一端は、キャパシタ371C,372C,373C,374C,375C,376Cの各他端に接続されている。インダクタ389の他端は、グランドに接続されている。インダクタ388,389は、グランド層306によって構成されている。
【0128】
キャパシタ386の一端は入力端子301に接続され、キャパシタ386の他端は出力端子302に接続されている。キャパシタ386は、入力端子301に最も近い線路部312と出力端子302に最も近い線路部312との間に発生する分布容量によって構成されている。
【0129】
電子部品300は、6段擬似楕円関数型バンドパスフィルタを実現している。図35は、シミュレーションによって求めた電子部品300の通過減衰特性の一例を示す特性図である。図35において、横軸は周波数、縦軸は通過減衰量である。この例では、周囲誘電体部313を構成する第2の誘電体の比透磁率を23とし、キャパシタ371C〜376Cのキャパシタンスをそれぞれ1.4pFとしている。図35に示した例では、電子部品300は、通過帯域の中心周波数が2.43GHzのバンドパスフィルタを実現している。
【0130】
次に、本実施の形態における共振器部分360に関して行った第5のシミュレーションについて説明する。この第5のシミュレーションでは、周囲誘電体部313を構成する第2の誘電体の比透磁率および誘電正接と、共振器部分360によって構成された共振器の共振周波数および無負荷Q値との関係を調べた。第5のシミュレーションで用いた共振器部分360のモデルM1〜M4において、第2の誘電体の比透磁率および誘電正接以外の条件は、前述の例示の通りである。
【0131】
第5のシミュレーションの結果を下記の表3と図36に示す。図36において、横軸は共振器の共振周波数であり、縦軸は無負荷Q値である。第5のシミュレーションでは、第5のシミュレーションで用いた共振器部分360のモデルにおける線路部312の代わりに、線路部312と同じ形状でAgよりなる導体線路部を設け、周囲誘電体部313の比透磁率を1.0とした比較例のモデルについても、共振器の共振周波数と共振器の無負荷Q値を求めた。比較例のモデルでは、共振器の共振周波数は3.59GHzであり、共振器の無負荷Q値は22であった。図36では、比較例のモデルにおける共振周波数と無負荷Q値を白抜きの四角の点で表し、モデルM1〜M4における共振周波数と無負荷Q値を、塗りつぶした四角の点で表している。モデルM1〜M4における無負荷Q値は、いずれも、比較例のモデルにおける無負荷Q値よりも大きくなっている。図36中の矢印は、モデルM1,M2,M3,M4の順に無負荷Q値が大きくなっていくことを表している。
【0132】
【表3】
【0133】
表3および図36から、第5のシミュレーションで用いた共振器部分360のモデルでは、周囲誘電体部313の比透磁率が大きくなるほど、共振周波数が低くなると共に無負荷Q値が大きくなることが分かる。従って、周囲誘電体部313の比透磁率が大きいほど、1GHz〜10GHzの範囲内の共振周波数を有し、無負荷Q値が大きい共振器を実現しやすくなる。また、表3および図36から、第2の誘電体の誘電正接を小さくすることにより、共振器の無負荷Q値を大きくすることができることが分かる。
【0134】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、周囲誘電体部が磁性誘電体部と非磁性誘電体部とを含む場合、磁性誘電体部は、線路部における電磁波の伝搬方向に直交する断面において、線路部の外周全体のうちの一部にのみ接するように設けられていてもよい。また、本発明の電子部品は、本発明の誘電体線路を用いて構成された共振器を備えたものに限らず、本発明の誘電体線路を含むものであればよい。例えば、本発明の電子部品は、それぞれ本発明の誘電体線路を用いて構成されたアンテナ、方向性結合器、整合回路、変成器等の、共振器以外の回路を備えたものであってもよい。
【符号の説明】
【0135】
1…電子部品、2…誘電体線路、10…線路部、20…周囲誘電体部、21…磁性誘電体部、22…非磁性誘電体部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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図23
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図28
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図30
図31
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図35
図36