特許第6183631号(P6183631)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183631
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】階層的多孔性を備えるゼオライト
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/20 20060101AFI20170814BHJP
   C01B 39/22 20060101ALI20170814BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20170814BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20170814BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20170814BHJP
   B01J 39/14 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   C01B39/20
   C01B39/22
   B01J20/18 A
   B01J20/28 Z
   B01J20/30
   B01J39/14
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-520731(P2016-520731)
(86)(22)【出願日】2014年8月4日
(65)【公表番号】特表2016-522156(P2016-522156A)
(43)【公表日】2016年7月28日
(86)【国際出願番号】FR2014052028
(87)【国際公開番号】WO2015019013
(87)【国際公開日】20150212
【審査請求日】2015年12月18日
(31)【優先権主張番号】1357762
(32)【優先日】2013年8月5日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ,セルジュ
(72)【発明者】
【氏名】ロペス,カリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】リュッツ,セシル
(72)【発明者】
【氏名】ブービエ,リュディビンヌ
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0264992(US,A1)
【文献】 ALEXANDRA INAYAT; ISABEL KNOKE; ERDMANN SPIECKER; WILHELM SCHWIEGER,ASSEMBLIES OF MESOPOROUS FAU-TYPE ZEOLITE NANOSHEETS,ANGEWANDTE CHEMIE INTERNATIONAL EDITION,2012年 2月20日,VOL:51 NR:8,PAGE(S):1962 - 1965,URL,http://dx.doi.org/10.1002/anie.201105738
【文献】 BAOYU LIU; FEI CHEN; LIMING ZHENG; JINGHUI GE; HONGXIA XI; YU QIAN,SYNTHESIS AND STRUCTURAL PROPERTIES OF HIERARCHICALLY STRUCTURED ALUMINOSILICATES 以下備考,RSC ADVANCES,2013年 6月14日,VOL:3 NR:35,PAGE(S):15075,WITH ZEOLITE Y (FAU) FRAMEWORKS,URL,http://dx.doi.org/10.1039/c3ra41862f
【文献】 XU ZHANG; DINGXING TANG; MIN ZHANG; RENCHUN YANG,SYNTHESIS OF NAX ZEOLITE: INFLUENCE OF CRYSTALLIZATION TIME, TEMPERATURE AND BATCH 以下備考,POWDER TECHNOLOGY,ELSEVIER,2013年 2月 1日,VOL:235,PAGE(S):322 - 328,MOLAR RATIO SIO2/AL2O3 ON THE PARTICULATE PROPERTIES OF ZEOLITE CRYSTALS,URL,http://dx.doi.org/10.1016/j.powtec.2012.10.046
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 − 39/54
B01J 20/18
B01J 20/28
B01J 20/30
B01J 39/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の特徴:
Si/Alモル比が境界を含めて1から1.4の間、
結晶の数平均径が境界を含めて0.1μmと20μmの間、
純粋なゼオライト相、およびミクロ孔容積Vμpであって、式Vμp=Vμp±15%、ここでVμpは、同一の化学的性質および同一の結晶構造であるが非メソ多孔性である、即ちその外表面積が厳密に40m・g−1未満のゼオライトについて同一条件で測定したミクロ孔の容積を表す、を満たすミクロ孔容積Vμp、ならびに
メソ孔の外表面積が40m−1と400m−1の間であるようなメソ多孔性
を備える階層的で多孔性のゼオライト。
【請求項2】
ゼオライトがFAU型またはゼオライトEMTまたはゼオライトLTAである、請求項1に記載のゼオライト。
【請求項3】
少なくとも以下のステップを含む、請求項1または2に記載のゼオライトの調製方法であって、該ステップは、
a)0℃から60℃の間の温度で、シリカ源をアルミナ源と混合することによる、「成長」ゲルの調製、
b)0℃から60℃の間の温度で、ステップa)の成長ゲルへの造核剤の添加、
c)前記反応媒体への1以上の構造化剤の添加、
d)前記温度を上げることによる結晶化反応、
e)得られたゼオライト結晶の濾過および洗浄、ならびに
f)乾燥および焼成
を含む、方法。
【請求項4】
造核剤が造核ゲルである、請求項に記載の方法。
【請求項5】
造核ゲルの添加量が、成長ゲルの重量に対して、境界を含めて0.1%から20%の間である、請求項またはに記載の方法。
【請求項6】
造核剤が結晶である、請求項に記載の方法。
【請求項7】
結晶の添加量が、成長ゲルの総重量に対して、0.1重量%から10重量%の間である、請求項またはに記載の方法。
【請求項8】
シリカ源がケイ酸ナトリウムであり、アルミナ源がアルミナ三水和物である、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
構造化剤がオルガノシランである、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
構造化剤が、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロリド、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ドデシルジメチルアンモニウムクロリド、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクチルアンモニウムクロリド、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アニリン、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−N’−(4−ビニルベンジル)エチレンジアミン、トリエトキシ−3−(2−イミダゾリン−1−イル)プロピルシラン、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ウレア、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、[2−(シクロヘキセニル)エチル]トリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−クロロプロピル)トリメトキシシラン、およびさらにこれらの2種以上のあらゆる割合での混合物から選択される、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
構造化剤の量は、構造化剤/原料Alモル比が境界を含めて0.005と0.20の間になるような量である、請求項から10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゼオライトの分野に関し、より具体的には、階層的で多孔性のゼオライト、とりわけ低Si/Alモル比を備える階層的で多孔性のゼオライトに関し、最も具体的には、FAUおよびLTA構造の低Si/Alモル比を備える階層的で多孔性のゼオライトに関する。
【背景技術】
【0002】
合成(即ち、非天然)ゼオライトは、特に、経済的で実行が容易な、ますます簡素な合成工程で、これまで以上に有効なゼオライトの生産に関連した多数の最近の調査研究によって証明されているように、産業においてますます関心が高まっている。
【0003】
近年、階層的で多孔性のゼオライト(HPZ)は、多数の科学出版物および特許出願の主題となっている。これ故、早くも2005年には、特許出願WO2007/043731において、オルガノシラン型の構造化剤を用いて、良好な結晶性(XRDで観察される純粋相)を備える階層的で多孔性のゼオライトを合成する工程が記載された。
【0004】
か焼後に得られたこの生成物は、直径数ナノメートルほどのメソ孔の網目構造に結合したゼオライトの網目構造を含む。この生成物の耐熱水性は、MCM−41型のメソ多孔性固体よりもはるかに良く、これは、熱再生が行われる用途を想定することを可能にする。
【0005】
階層的で多孔性のゼオライト、即ち、メソ孔の網目構造に結合したゼオライト型のミクロ多孔性網目構造を含む固体を調製する別の方法は、開発されており、以下のように分類され得る(D.P.Serranoによる総説,Chem.Soc.Rev.,(2013),42,4004−4035):
・ゼオライトの網目構造から原子を除去してメソ孔を作り出す、ゼオライト構造の後処理;これは、酸処理で固体を脱アルミニウム化し、続いて、生じたアルミニウム残渣を除去する水酸化ナトリウムでの洗浄(J.Perez−Ramirez et al.,Adv.Funct.Mater.,(2012),1−12)、または、酸の作用とメソ孔の形成を促進する構造化剤の作用を組み合わせた処理(WO2013/106816参照)のいずれかによって行われ得る。
・多孔質網目構造(有機または無機)を型として用いる、「硬質鋳型法」または「成形法」;この多孔質網目構造は、水熱変換によってゼオライトの網目構造を形成できる反応媒体と接触して配置され、ゼオライトの結晶化が行われ、前記型はこの後、か焼または溶解のどちらかによって除去されてメソ多孔性を生成する(C.J.H Jacobsen,J.Am.Chem.Soc.,(2000),122,7116−7117)。
・M.Matsukataらによって記載されたゾル−ゲル技術(Top.Catal.,(1999),9,77−92)に従って形成されたメソ多孔性シリカ等の非晶性メソ多孔性固体のゼオライト化。
・冒頭で言及した、オルガノシラン型の構造化剤を用いた直接合成であるとともに、この型の構造化剤は、一方では、このシラン官能基のおかげでゼオライトの網目構造を形成するシリコアルミナ種と親和性を有し、他方では、空間を占め、除去された際にメソ多孔性を作り出す、長鎖有機官能基で空間を占めることができるという特定の特徴を有している(特許出願WO2007/043731)。
【0006】
しかしながら、この直接合成工程に従って得られた固体は、窒素吸着等温線および透過型顕微鏡写真によって示されるように、確かに階層的多孔性を備える(A.Inayat et al.,Angew.Chem.Int.Ed.,(2012),51,1962−1965)ものの:
・これら階層的で多孔性のゼオライトのミクロ孔の容積は、非メソ多孔性ゼオライトのものより著しく低く、
・この構造化剤は、結晶面の成長速度を変更し、結晶のサイズを正確に制御させず、
・このメソ孔の容積を増加させるための構造化剤の含量の増加は、所定のゼオライトの結晶化の選択性の損失につながり、これはゼオライト構造の望まない混合物の生成をもたらす(Y.Meng et al.,Asian Journal of Chemistry,25(8),(2013),4423−4426)ということに気付く。
【0007】
本発明の目的の一つは、オルガノシラン型の構造化剤を用いた直接合成で知られる少なくともこれら3つの主な欠点を解決することである。
【0008】
ゼオライトXおよびLTAを含む、様々な階層的で多孔性のゼオライト構造を合成する目的で、オルガノシラン型の構造化剤およびオルガノシラン誘導体の使用が記載された以下の文献に関しても言及することができる。
【0009】
上に述べたように、R.Ryoo(Nature Materials,(2006),vol.5,p.718以下)は、メソ多孔性を備えるLTAの合成を、のちに(K.Cho et al.,Chem.Mater.,21,(2009),5664−5673)は、LTA型のメソ多孔性ゼオライトの合成と触媒へのこれらの応用を記載している。K.Choの論文(上記参照)の図2に示されたディフラクトグラムは、夾雑結晶性相がないことを示している。他方では、構造化剤の添加があった場合と、もっと強い理由から、この量が増加した場合の、これらピークの強度の減少は、結晶性骨格の分解(低ミクロ多孔性)を示す。
【0010】
特許出願EP2592049は、まさに実質的でよく組織化されたメソ多孔性を備えるが、結晶性骨格の著しい分解を伴う(極低ミクロ多孔性)、ゼオライトの合成を提案している。この工程は、3つのアンモニウム官能基を含む特定の構造化剤を用いる。
【0011】
W.Schwiegerの研究(Angew.Chem.,Int.Ed.,(2012),51,1962−1965)は、構造化剤を用いたFAU(X)型のメソ多孔性ゼオライトの合成に関する。一例で、構造化剤として、TPHAC([3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロリド)の、TPHAC/Alモル比0.06での使用を示している。この例で得られたゼオライトは、ミクロ孔の容積が0.26cm.g−1および外表面積が130m.g−1である。記載された構造化剤の量(0.06)は、実のところ最大の上限である。特に、この値より高い含量は、この結晶化が低温で行われた場合でも、P型ゼオライトの外観につながる。これ故、メソ孔の表面積を130m.g−1を超えて増やすと同時にP型ゼオライトの混入なく純粋なゼオライト構造を保つことが可能とは思われない。
【0012】
Y.Mengの論文(Asian Journal of Chemistry,25(8),(2013),4423−4426)は、構造化剤として[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(TPOAC)を用いたメソ多孔性ゼオライトLTAの合成を記載しており、使用した構造化剤の量、反応媒体のアルカリ度および結晶化温度を含む様々な合成パラメータの研究を示している。
【0013】
メソ孔容積の増加につながるべき構造化剤の含量の増加は、ゼオライト網目構造の成長速度を変更する効果も持ち、これ故、他のゼオライト結晶相の外観をもたらし、これ故、望ましくないゼオライト構造の混合物の生成をもたらすことがわかってくる。さらに、前記論文の図1のディフラクトグラムは、結晶性の低下を示している。
【0014】
上述した従来技術は、さらに、このミクロ孔の容積が、同等の非メソ多孔性ゼオライト(即ち、以下に定義されるメソ孔の外表面積が40m.g−1より真に小さいゼオライト)のミクロ孔の容積より著しく低いことを示しており、これは高含量の活性部位が必要とされる用途にはとても有害である。さらに、この結晶のサイズが主部であり、修正できない。
【0015】
最後に、従来技術に記載されたこれら調製方法は、特にこれらが発生させ得る高コストと、比例的に長いほど求められるメソ多孔性が高い合成時間の理由で、にわかには工業化できるとは思われない。
【0016】
後処理についての主な参照は以下に述べる。文献US2013/0183229は、ゼオライトXの量と同桁の量のPluronic(R)を導入し、長時間、液体法による処理とこれに続く幾つかのか焼処理を行っており、一方、文献WO2013/106816は、セチルトリメチルアンモニウム(CTA)ハライドを酸とともに用いた処理を導入している。J.Perez−Ramirezら(同書)の出版物は、ゼオライトXおよびLTA用に最適化された、第一に、酸HEDTAとこれに続くNaOH塩基処理、および最後に酸性NaEDTAでさらに処理する後処理を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第2007/043731号
【特許文献2】国際公開第2013/106816号
【特許文献3】欧州特許出願公開第2592049号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2013/0183229号明細書
【特許文献5】国際公開第2013/106816号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】D.P.Serrano,Chem.Soc.Rev.,(2013),42,4004−4035)
【非特許文献2】J.Perez−Ramirez et al.,Adv.Funct.Mater.,(2012),1−12
【非特許文献3】C.J.H Jacobsen,J.Am.Chem.Soc.,(2000),122,7116−7117
【非特許文献4】M.Matsukata et al.,Top.Catal.,(1999),9,77−92
【非特許文献5】A.Inayat et al.,Angew.Chem.Int.Ed.,(2012),51,1962−1965
【非特許文献6】Y.Meng et al.,Asian Journal of Chemistry,25(8),(2013),4423−4426
【非特許文献7】R.Ryoo,Nature Materials,(2006),vol.5,p.718sqq.
【非特許文献8】K.Cho et al.,Chem.Mater.,21,(2009),5664−5673
【非特許文献9】W.Schwieger,Angew.Chem.,Int.Ed.,(2012),51,1962−1965
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
これらの方法は、階層的で多孔性のゼオライトの調製を可能にするものの、得られた固体の窒素吸着等温線の形が示すように、これらの方法は、ゼオライトの最初の質量と同桁の量の錯化剤を用い、多数の長時間の操作を伴うことに留意することが重要である。さらに、これらの方法の質量収率は60%未満であり、これはさらにこれらの生産効率を不利にする。これらの方法は、これ故、長時間、高価で、比較的非生産的である。加えて、このミクロ孔の容積は、様々な処理によって大きく減少される。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、従来技術が直面する前記課題が、本発明に従う階層的で多孔性のゼオライトによって完全に、もしくは少なくとも部分的に解決できることを見出した。
【0021】
具体的には、本発明の一つの目的は、ミクロ孔の容積が大きく、最適の純度と調節可能な結晶サイズを兼ね備える階層的で多孔性のゼオライトを提供することにある。本発明の別の目的は、前記ゼオライトの調製用の、経済的で、簡素であり容易に工業化の可能な方法を提供することにある。
【0022】
上に述べたように、および第一の態様に従えば、本発明は、少なくとも以下の特徴を備える階層的で多孔性のゼオライトに関する:
・Si/Alモル比が境界を含めて1から1.4の間、
・結晶の数平均径が境界を含めて0.1μmから20μmの間、好ましくは0.1μmから10μmの間、より好ましくは0.5μmから10μmの間、およびより優先的には0.5μmから5μmの間、
・制御され、かつ、最適な結晶性、および
・メソ孔の外表面積が40m.g−1から400m.g−1の間、好ましくは60m.g−1から200m.g−1の間であるようなメソ多孔性。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1a】参照ゼオライトのTEM像である。
図1b】ゼオライトのTEM像である。
図2】ゼオライトの細孔容積(ミクロ孔の容積とメソ孔の容積)を細孔径の関数として示す。
図3】X線回折スペクトル(ディフラクトグラム)の重ね合わせを示す。(a)は参照ゼオライト、(b)は実施例1のゼオライトを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
好ましい実施形態によれば、本発明に従うゼオライトは、FAU型のゼオライトであり、特にゼオライトX、MSX、LSXまたはEMT型のゼオライト、またはLTA型のゼオライト、即ちゼオライトAである。「ゼオライトMSX」(中シリカX)という用語は、Si/Al原子比率が、境界を含めて約1.05から約1.15の間のFAU型のゼオライトを意味する。「ゼオライトLSX」(低シリカX)という用語は、Si/Al原子比率が約1に相当するFAU型のゼオライトを意味する。
【0025】
上述した特徴は、本発明に従うゼオライトに、単にミクロ多孔性のゼオライトまたは従来技術で周知のミクロ多孔性とメソ多孔性の両方であるゼオライトと比較して、改良された、全く意外で有利な特性を与える。
【0026】
本発明に従うゼオライトの結晶サイズは、以下に示すように、走査型電子顕微鏡(SEM)での観察による結晶の数平均径で表示される。本発明は、特に以下に詳述する合成条件の機能として、この結晶サイズを調節し制御することを可能にする長所も有する。
【0027】
「制御されかつ最適な結晶性のゼオライト」という用語は、一方では、純粋なゼオライト相を含むゼオライト、およびより具体的には、単一のゼオライト相からなるゼオライト、もしくは、好ましくは、境界を含めて2重量%までの、夾雑相として知られる1種だけの、または数種の他のゼオライトまたは非晶相からなるゼオライト(結晶化度はXRDにより測定、技法は下記)、および、他方では、式Vμp=Vμp±15%、好ましくは式Vμp=Vμp±10%、およびより優先的には式Vμp=Vμp±5%、ここでVμpは、同一の化学的性質および同一の結晶構造であり、完全に結晶性(ベースICDD PDF−2、リリース2011による)であるが本発明の意義の範囲内では非メソ多孔性である、即ち、外表面積が厳密に40m.g−1未満のゼオライトについて同一条件で測定したミクロ孔の容積を表すものである式を満たすミクロ孔の容積Vμpを意味する。
【0028】
例えば、Zeolite Molecular Sieves by D.W.Breck,John Wiley & Sons,New York,(1973),表4.26,p.348によれば、完全に結晶性の非メソ多孔性ゼオライトLTAのミクロ孔の容積Vμpは、0.30cm.g−1に相当し、同じ出版物の同じ表4.26,p.351では、非メソ多孔性で完全に結晶性の、Si/Al比が1から1.5の間であるゼオライトFAU NaXのミクロ孔の容積Vμpは、0.36cm.g−1に相当する。
【0029】
このミクロ孔の容積の計算は、後述するように、Dubinin−Raduskevitchの式を適用して窒素またはアルゴン吸着等温線から、当業者に周知の方法を利用して行われる。注意として、メソ孔の外表面積の計算は、Harkins−Juraの式を用いて評価される。
【0030】
本発明に従う階層的で多孔性のゼオライトは、メソ孔の網目構造に結合したミクロ多孔性網目構造を含む固体であり、これ故、従来技術で周知のメソ多孔性ゼオライトの活性部位への接近可能性の特性と、「標準」ゼオライト(メソ多孔性を備えない。)の最大限の結晶性とミクロ多孔性の特性を調和させることを可能にする。このようにして、本発明の階層的で多孔性のゼオライトは、予期しない特性を持ち、これらの工業用途の分野に関して新しい見解を広げる。
【0031】
加えて、本発明のゼオライトは、当業者で周知のように、また、従来のゼオライトで通常行われているように、1以上の陽イオン交換(例えば、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩で)にかけられてもよい。
【0032】
別の態様によれば、本発明は、今述べたような階層的で多孔性のゼオライトの調製方法に関する。本発明の方法は、特に合成原料の歩留まりが高く、方法のロバスト性および速さの理由で、容易に実行され、工業的規模に容易に置き換え可能であるという長所を備える。
【0033】
より正確には、本発明に従う階層的で多孔性のゼオライトの調製方法は、少なくとも以下のステップを含む:
a)0℃から60℃の間の温度で、シリカ源をアルミナ源と混合することによる、「成長」ゲルの調製、
b)0℃から60℃の間の温度で、ステップa)の成長ゲルへの造核剤の添加、
c)この反応媒体への1以上の構造化剤の添加、
d)温度を上げることによる結晶化反応、
e)得られたゼオライト結晶の濾過および洗浄、および
f)乾燥およびか焼。
【0034】
ステップc)の(1または複数の)構造化剤の添加は、ステップa)および/またはb)と同時に、もしくはステップa)および/またはb)の前および/または後に行われてもよいことを理解されたい。すべての場合において、構造化剤は、結晶化ステップd)の前に反応媒体に存在するべきである。しかしながら、ステップb)の後に構造化剤を添加することが好ましい。さらに、経過時間(休憩時間、撹拌下または非撹拌下)がステップa)、b)、c)およびd)の間に想定されてもよい。
【0035】
好ましい態様によれば、この成長ゲルは、シリカ源(例えばケイ酸ナトリウム)、アルミナ源(例えばアルミナ三水和物)、強無機塩基、例えば、主なものと通常使われるものを挙げると、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化カルシウム、および水の均質な混合物を含む。
【0036】
本発明の方法は、当業者に周知の造核剤であり、例えば、造核ゲル、結晶、例えばゼオライト結晶、任意の性質の鉱物粒子、例えば、カオリン、meta−カオリン、または他の粘土、および同類のもの、およびこれらの混合物から選択される1以上の造核剤でのシーディング技術を用いることを特徴とする。
【0037】
理論に縛られることを望むものではないが、この造核剤は、この合成の所望のゼオライトへの配向を促進すると考えられる。さらにまた、造核剤の存在のおかげで、ゼオライトの網目構造の結晶化を攪乱または減速することなく、従来技術で記載されたものより多い量の構造化剤の使用を可能にする。
【0038】
好ましい態様によれば、前記造核剤は、造核ゲルであり、より好ましくは、前記造核ゲルは、シリカ源(例えばケイ酸ナトリウム)、アルミナ源(例えばアルミナ三水和物)、強無機塩基、例えば、主なものと通常使われるものを挙げると、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化カルシウム、および水の均質な混合物を含む。
【0039】
この混合物の均質性は、当業者に周知の任意の方法に従って、および、例えば、および限定されない形で、パドル攪拌機、混合機、または代わりに特許EP0818418に記載のアルキメデスポンプ型の混合機を用いて得られ得る。
【0040】
限定されない例として、回転が300rpmに設定されたアルキメデスポンプを備えた3リットルの反応器で、十分な均質性が数分から数十分の間、通常20分から30分の間で得られる。
【0041】
前記混合物は、通常0℃から60℃の間、好ましくは10℃から40℃の間の温度で調製され、また、実際的および経済的理由で、この混合物は、より好ましくは室温、例えば25℃で調製される。この均質化時間は、ひいては通常2時間未満である。
【0042】
本発明の方法は、このようにして得られた前記成長ゲルへの造核剤の添加、好ましくは特許US3947482で明示された概念に従う造核ゲルの添加もまた特徴とする。造核剤の添加量は、広い割合の範囲内で変化してもよく、また、造核ゲルの添加量は、成長ゲルの重量に対して、境界を含めて通常0.1%から20%の間、好ましくは0.5重量%から15重量%の間、およびより好ましくは1重量%から10重量%の間でよい。
【0043】
造核剤がゼオライト結晶の場合、合成したいゼオライトと同質のゼオライト結晶が好ましい。この結晶のサイズは、広い割合の範囲内で変化してもよく、また、例えば、典型的には0.1μmから10μmの間である。好ましい実施形態によれば、このゼオライト結晶は、水性懸濁液の形で導入される。結晶の導入量もまた、広い割合の範囲内で変化してもよく、通常、典型的には、成長ゲルの総重量に対して、0.1重量%から10重量%の間である。
【0044】
既に示したように、本発明の方法は、階層的で多孔性のゼオライトの直接合成法であり、階層的多孔性が既に合成されたゼオライトの後処理から生じる方法ではない。しかしながら、合成されたままのゼオライトの後続ステップの後処理を行うことは、本発明の観点から逸脱しないであろう。
【0045】
上に述べたように、本発明の方法は、ステップb)で得られた混合物[成長ゲル/造核剤]に1以上の構造化剤を添加するステップを含む。
【0046】
使用され得る構造化剤は、当業者に周知の任意の種類のものであり、特に、特許出願WO2007/043731に記載のものである。好ましい実施形態によれば、構造化剤は有利にオルガノシラン類から選択され、より優先的には、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ヘキサデシルジメチルアンモニウムクロリド、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ドデシルジメチルアンモニウムクロリド、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクチルアンモニウムクロリド、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アニリン、3−[2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミノ]プロピルトリメトキシシラン、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−N’−(4−ビニルベンジル)エチレンジアミン、トリエトキシ−3−(2−イミダゾリン−1−イル)プロピルシラン、1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ウレア、N−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、[2−(シクロヘキセニル)エチル]トリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、(3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシラン、(3−クロロプロピル)トリメトキシシラン、およびさらにこれらの2種以上のあらゆる割合での混合物から選択される。
【0047】
上に挙げた構造化剤の中で、[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、即ちTPOACが、何よりも特別に好ましい。
【0048】
より高いモル質量の構造化剤、例えば、PPDAs(ポリジアリルジメチルアンモニウムポリマー)、PVB(ポリビニルブチラール)およびメソ孔の径を増加させる分野で知られる、他のオリゴマー化合物の使用もまた行われ得る。
【0049】
構造化剤の量は、広い割合の範囲内で変化してもよく、通常は、構造化剤/原料Alモル比が境界を含めて0.005から0.20の間、好ましくは0.01から0.15の間、およびより好ましくは0.02から0.08の間になるような量である。
【0050】
(1または複数の)構造化剤の添加は、撹拌下に、例えば、ステップa)に既に示したように行われ、混合物はこの後、選択的に撹拌下、なお同じ温度、例えば25℃で、数分から数十分にわたる時間、典型的には1時間、300rpmで撹拌下、熟成ステップにかけられる。
【0051】
この熟成ステップの後、反応混合物は、撹拌をより遅くして、典型的には20rpmから100rpmの間、例えば50rpmで続けながら、また、60℃から100℃の間の温度まで、例えば75℃まで、温度を上げながら、結晶化ステップd)に入る。結晶化に必要な時間は、通常、数時間から数十時間の間であり、有利には8時間から48時間の間である。
【0052】
結晶化ステップの後、ゼオライト結晶は、当業者に周知の通常の技術に従い、濾過によって反応媒体から取り出され、この後1以上の適切な、好ましくは水性であるが、水性および/または有機溶剤で洗浄され、最後に50℃から150℃の間で乾燥される。
【0053】
結晶の平均サイズは、特に造核剤(造核ゲル、または結晶、例えばゼオライトや同類のもの)のステップb)における成長ゲルに対する含量を調節することによって制御され得る。
【0054】
乾燥された結晶はこの後か焼にかけられるが、このステップは、ミクロ多孔性(水の除去)およびメソ多孔性(構造化剤の除去)の両方を開放するのに必要である。構造化剤の除去のために行われるか焼は、当業者に周知の任意のか焼法に従って行われ得る。例えば、および限定されない形で、構造化剤を含むゼオライト結晶のか焼は、酸化性および/または不活性ガス流下、特に酸素、窒素、空気、乾燥および/または脱炭酸空気、乾燥および/または脱炭酸されていてもよい酸素欠乏空気等のガスを用いて、150℃を超える1以上の温度で、典型的には180℃から800℃、優先的には200℃から650℃で、数時間、例えば2から6時間行われ得る。ガスの特質、昇温の傾斜および連続的温度定常段階とこの継続時間は、構造化剤の特質に応じて適応される。
【0055】
標準的な陽イオン交換技術に従って、乾燥および/またはか焼ステップ(ステップf))の前または後に、1以上の陽イオン交換(例えば、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩で)を行うことは、本発明の観点から逸脱しないであろう。
【0056】
既に示したように、本発明の合成方法は、容易に行われ、また、比較的短時間で行われ、特に、例えば、オルガノシラン構造化剤の、造核とミクロ多孔性ゼオライト網目構造の成長に対する阻害効果のためとても長い時間がかかる、従来知られているHPZ合成方法に比べて、かかる時間の少なくとも4分の1を減らして行われる。全く意外にも、構造化剤(例えばTPOAC)の阻害効果は、造核剤の存在のおかげで相殺されることが発見されている。
【0057】
この容易さと合成の速さは、しかしながら、このようにして得られたゼオライトの品質や特性を害さない。具体的には、本発明の方法のおかげで、純粋なゼオライト構造(2重量%未満のこの他の(1または複数の)夾雑結晶相を備える。)に向かった合成の選択性を増加することが可能になり、また、所定の外表面積に対して、[ミクロ孔の容積/メソ孔外表面積]比を最大にできるようになるが、これは、従来既知の方法に当てはまらない(例えば、メソ孔容積の増加につながるべき構造化剤の含量の増加は、ゼオライトの網目構造の成長速度を変更する効果も持っており、これ故、他のゼオライト結晶相の外観をもたらし、これ故、望ましくないゼオライト構造の混合物の生成をもたらしたことが明らかにされているY.Meng(同書)の研究参照)。
【0058】
特に、従来の方法では、ゼオライトのミクロ孔の容積を増加させることおよび相純度を高く維持することは、極めて長い結晶化時間と比較的低温(<80℃)によって得られるのみである。しかしながら、これらの方法は、本発明のものに匹敵するミクロ孔の容積を達成できない。
【0059】
従って、他のHPZ調製方法、例えば後処理によるものと比べて、本発明の方法は、単一のステップで、比較的短時間(1日未満)で少量の構造化剤を用いて行われ、これ故、全体的に比較的低コストであり、もしくは非メソ多孔性ゼオライトの合成と比較して少なくとも限られた超過コストで、および後処理を介したHPZ合成方法によって誘導されるコストよりはるかに低いため、より生産性が高く安価である。
【0060】
これら階層的で多孔性のゼオライトの使用は、吸着、イオン交換、分離等の工業方法で特に有利であり、非メソ多孔性ゼオライトが通常使われるいかなる技術分野にも想定され得る。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これら実施例は本発明の多様な実施形態をなんら限定するものではない。
【0062】
以下の実施例において、ゼオライト結晶の物性は、当業者に周知の方法によって評価され、主なものを以下に示す。
【0063】
ゼオライト結晶の強熱減量
強熱減量は、NF EN規格196−2(2006年4月)に記載の通り、酸化雰囲気下で、試料を温度950℃±25℃の空気中でか焼することによって測定する。この測定の標準偏差は0.1%未満である。
【0064】
Dubinin−Raduskevitch容積
Dubinin−Raduskevitch容積は、ゼオライト構造の細孔の開口に応じて、窒素またはアルゴン等のガスの、この液化温度での吸着等温線の測定から決定される:アルゴンまたは窒素はLTA(Breckの同書、428頁の表5.7に記載の通りあらかじめカルシウムで交換)用に、および窒素はFAU用に選択される。吸着に先だって、ゼオライト吸着剤は、真空下(P<6.7×10−4Pa)、300℃から450℃の間で9時間から16時間の間脱気する。吸着等温線の測定は、この後Micromeritics製ASAP2020型の機械で、P/P0相対比圧力が0.002から1の間で少なくとも35の測定点を取って行われる。ミクロ孔の容積は、Dubinin−Raduskevitchに従って、得られた等温線から、ISO規格15901−3(2007)を適用して決定される。Dubinin−Raduskevitchの式に従って評価されたミクロ孔の容積は、ゼオライトのグラム当たりのcmの液体吸着剤で表される。この測定の不確実性は±0.003cm.g−1である。
【0065】
結晶のサイズとモルフォロジー(SEM)
ゼオライト結晶の数平均径の概算は、既に示したように、走査型電子顕微鏡観察によって行われる。
【0066】
試料のゼオライト結晶のサイズを概算するために、倍率5000以上の一連の画像を撮る。200以上の結晶の直径がこの後、専念したソフトウェア、例えば、出版元LoGraMiのSmile Viewソフトウェアを用いて測定される。この精度は3%のオーダーである。
【0067】
結晶のモルフォロジーは、結晶のサイズに適した倍率で撮ったSEM写真から定性化される。
【0068】
t−プロット法によるメソ孔の外表面積(m.g−1)の測定
t−プロット計算法は、吸着等温線のデータQads=f(P/P0)を活用してミクロ孔の表面積を計算できるようにする。メソ孔の外表面積は、細孔の表面積の合計をm.g−1で測定するBET表面積との違いを測定することによって、そこから推定され得る(BET S=microp.S+mesop.outer S)。
【0069】
t−プロット法でミクロ孔の表面積を計算するために、曲線Q ads(cm.g−1)は、t=分圧P/P0によって決まる層の厚さの関数としてプロットされ、これは参照の非多孔性固体に形成され(tはlogP/P0の関数:Harkins−Juraの式適用(ISO規格15901−3:2007)):[13.99/(0.034−log(P/P0))^0.5]、ここで、0.35nmから0.5nmの間の距離tにおいて、直線をプロットすることができ、これは切片Q adsorbedを規定し、これはミクロ孔の表面積を計算することを可能にする。固体がミクロ多孔性でないとき、この直線は0を通る。
【0070】
透過型電子顕微鏡法によるメソ孔構造の観察
粉体をエタノールに1分間超音波処理で分散する。この溶液1滴を顕微鏡の格子に入れる。この試料を環境条件下で放置して乾燥させる。透過型電子顕微鏡(FEI製CM200)を用い、電圧120kVで観察を行う。
【0071】
得られた倍率×220000(図1b参照)は、メソ孔の存在を視覚化し、これらの直径の見積もりを可能にする。
【0072】
蛍光X線によるゼオライトのSi/Al原子比率の分析
階層的で多孔性のゼオライトの元素化学分析は、当業者に周知の様々な分析技術に従って行われ得る。これらの技術の中で、NF EN ISO規格12677:2011に記載の通り、波長分散型分光器、例えばBruker社Tiger S8機での蛍光X線による化学分析技術(WDXRF)に関して言及することができる。
【0073】
蛍光X線は、試料の元素組成を確立するための、X線域での原子のフォトルミネッセンスを活用した非破壊分光技術である。通常X線ビームでの、または電子衝撃による原子の励起は、原子の基底状態に戻った後に特異的な放射を発生させる。蛍光X線スペクトルは、元素の化合にやや依存する利点を有し、これは、定量および定性の両方で、正確な決定をもたらす。各オキシドについて較正後、計測の不確実性0.4重量%未満が、慣例的に得られる。
【0074】
これら元素化学分析は、ゼオライトのSi/Al原子比率を確認することを可能にし、このSi/Al原子比率の計測の不確実性は±5%である。
【0075】
X線回折による定性および定量分析
各ゼオライト構造は、回折ピークの位置およびこれらの相対強度によって特徴づけられる固有のディフラクトグラム(即ち回折スペクトル)を有するため、この分析は、分析された固体に存在する結晶相の同定を可能にする。
【0076】
ゼオライト結晶は、試料容器に広げられ単純な機械的圧縮によって平坦にされる。D5000Bruker機で行われるディフラクトグラム用の取得条件は以下の通りである:
・40kV−30mAでCuチューブ使用;
・スリットサイズ(発散、散乱および分析)=0.6mm;
・フィルター:Ni;
・試料回転装置:15rpm;
・計測範囲:3°<2θ°<50;
・増分:0.02°
・増分ごとの計数時間:2秒。
【0077】
得られた回折スペクトル(即ちディフラクトグラム)の解釈は、完全結晶性相を証明することを可能にするベースICDD PDF−2、リリース2011を用いて、EVAソフトウェアで相の同定を伴って行われる。
【0078】
ゼオライトX画分の量は、XRD解析によって測定される。この解析は、Bruker機で行われ、ゼオライトX画分の量は、この後Bruker社のTOPASソフトウェアによって評価される。
【0079】
実施例1
TPOAC/Al比=0.04での造核ゲルと成長ゲルの添加によるHPX合成
(ここで、HPXは階層的で多孔性のX型ゼオライト(HP2)を表す。)
a)アルキメデスポンプで300rpmで撹拌された反応器での成長ゲルの調製
成長ゲルは、加熱ジャケット、温度プローブおよび攪拌機を備えた3リットルステンレス鋼反応器で、水酸化ナトリウム(NaOH)119g、アルミナ三水和物(Al.3HO、Al65.2重量%含有)128gおよび水195.5gを含むアルミネート溶液を25℃で25分間、撹拌速度300rpmで、ケイ酸ナトリウム565.3g、NaOH55.3gおよび水1997.5gを含む25℃のシリケート溶液中で混ぜ合わせることによって調製する。
【0080】
この成長ゲルの化学量論は、3.48NaO/Al/3.07SiO/180HOである。この成長ゲルの均質化は、300rpmで撹拌しながら25分間25℃で行う。
【0081】
b)造核ゲルの添加
成長ゲルと同一の方法で得られ、40℃で1時間熟成された、12NaO/Al/10SiO/180HOの組成の造核ゲル61.2g(即ち、2重量%)を前記成長ゲルに25℃、300rpmで撹拌しながら添加する。300rpmでの5分間の均質化後、撹拌速度を100rpmに下げ、撹拌を30分間継続する。
【0082】
c)反応媒体への構造化剤の導入
TPOACの60%メタノール(MeOH)溶液27.3gを撹拌速度300rpmでこの反応媒体に導入する(TPOAC/Alモル比=0.04)。結晶化を始める前に、熟成ステップを25℃で1時間、300rpmで行う。
【0083】
d)結晶化
撹拌速度を50rpmに落とし、反応器のジャケットの公称温度を80℃に設定して、反応媒体の温度を80分で75℃に上げる。75℃の定常段階で22時間後、ジャケットに冷水を循環させてこの反応媒体を冷却し、結晶化を止める。
【0084】
e)濾過/洗浄
この固体をシンター上で回収し、この後脱イオン水でpHが中性になるまで洗浄する。
【0085】
f)乾燥/か焼
この生成物を特徴づけるため、90℃の炉で8時間の乾燥を行い、この乾燥物の強熱減量23重量%を得る。
【0086】
ミクロ多孔性(水)および構造化剤の除去によるメソ多孔性の両方を開放するのに必要な乾燥物のか焼は、以下の温度プロファイルで行う:200℃への昇温30分、この後200℃の定常段階で1時間、この後550℃への昇温3時間、および最後に550℃の定常段階で1.5時間。
【0087】
255gの無水ゼオライトHPXに相当する固体がこのようにして得られる;これは、関与したアルミニウムの量に対して収率99mol%に相当する。蛍光X線によって測定されたこのHPZのSi/Al比は1.24に等しい。
【0088】
実施例2
TPOAC/Al比=0.02での造核ゲルと成長ゲルの添加によるHPX合成
この方法は、TPOAC/Alモル比0.02で実施例1の通りに行う。255gの無水ゼオライトHPXに相当する固体が得られ、これは、関与したアルミニウムの量に対して収率99mol%に相当する。蛍光X線によって測定されたこのHPZのSi/Al比は1.24に等しい。
【0089】
実施例3
TPOAC/Al比=0.08での造核ゲルと成長ゲルの添加によるHPX合成
この方法は、TPOAC/Alモル比0.08で実施例1に記載の通りに行う。255gの無水ゼオライトHPXに相当する固体が得られ、これは、関与したアルミニウムの量に対して収率99mol%に相当する。蛍光X線によって測定されたこのHPZのSi/Al比は1.24に等しい。
【0090】
実施例4
TPOAC/Al比=0.04でのゼオライト結晶と成長ゲルの添加によるHPX合成
この方法は、TPOAC/Alモル比0.04で実施例1に記載の通りに行うが、ステップb)で、前記造核ゲルを1重量%(成長ゲルの総重量に対して)のゼオライトX結晶(体積平均径が約0.8μmの結晶、特許出願WO2014/090771の合成例b)に記載の通りに調製したもの)の導入で置き換える。実施例1の固体に対して得られた特徴と同じ特徴を備える固体254gが得られる。
【0091】
実施例1、2および3で合成された階層的で多孔性のゼオライトX粉末の特徴の比較
これら階層的で多孔性のゼオライトの特徴づけの結果を、CECA社から販売されており、結晶の平均径が1.5μmである参照ゼオライトX、Siliporite(R)G5APとの比較とともに表1に要約する。
【0092】
これら多孔性の特徴(ミクロ孔容積、メソ孔外表面積、メソ孔サイズ分布)は、あらかじめ300℃の真空中で脱気した粉体について、液体窒素温度での窒素吸着/脱着等温線から計算する。この測定は、Micromeritics製ASAP2020機で行う。
【0093】
ミクロ孔容積(cm.g−1)は、Dubinin−Raduskevich理論に従って計算する。メソ孔外表面積(m.g−1)は、t−プロットモデルを用いて計算する。メソ孔サイズ分布は、密度汎関数理論(DFT)法で、円筒孔モデルを用いて計算する。
【0094】
X線回折は、粉体に存在するこれら結晶相を、様々なゼオライト構造の参照スペクトル(即ちディフラクトグラム)から同定すること、および生成したこれら固体の結晶性の程度をピーク強度に応じて明らかにすることを可能にする。
【0095】
図1aおよび1bは、参照ゼオライト(図1a)および本発明に従うゼオライトの実施例1(図1b)のTEM像であり、図2は、これらの細孔容積(ミクロ孔の容積とメソ孔の容積)を細孔径の関数として示す。この細孔容積は、上で示した(上記「Dubinin−Raduskevitch容積」技術で記載した通り、窒素吸着等温線を用いた測定)ように測定する。
【0096】
比較例1
造核ゲルを添加しないTPOAC/Al比=0.04でのゼオライト結晶の合成
1)アルキメデスポンプで300rpmで撹拌された反応器での成長ゲルの調製
成長ゲルは、加熱ジャケット、温度プローブおよび攪拌機を備えた3リットルステンレス鋼反応器で、水酸化ナトリウム(NaOH)119g、アルミナ三水和物(Al.3HO、Al65.2重量%含有)128gおよび水195.5gを含むアルミネート溶液を25℃で25分間、撹拌速度300rpmで、ケイ酸ナトリウム565.3g、NaOH55.3gおよび水1997.5gを含む25℃のシリケート溶液中で混ぜ合わせることによって調製する。
【0097】
この成長ゲルの化学量論は、3.48NaO/Al/3.07SiO/180HOである。この成長ゲルの均質化は、300rpmで撹拌しながら25分間25℃で行う。
【0098】
2)反応媒体への構造化剤の導入
TPOACの60%MeOH溶液27.3gを撹拌速度300rpmでこの反応媒体に導入する(TPOAC/Alモル比=0.04)。5分間の均質化後、撹拌速度を50rpmに落とす。
【0099】
3)熟成段階
この反応媒体を50rpm、25℃で22時間撹拌を維持し、この後結晶化を開始する。
【0100】
4)結晶化
撹拌速度を50rpmに維持し、反応器のジャケットの公称温度を80℃に設定して、反応媒体の温度を80分で75℃に上げる。75℃の定常段階で72時間後、ジャケットに冷水を循環させてこの反応媒体を冷却し、結晶化を止める。
【0101】
5)濾過/洗浄
この固体をシンター上で回収し、この後脱イオン水でpHが中性になるまで洗浄する。
【0102】
6)乾燥/か焼
この生成物を特徴づけるため、90℃の炉で8時間の乾燥を行い、この乾燥物の強熱減量22重量%を得る。
【0103】
ミクロ多孔性(水)および構造化剤の除去によるメソ多孔性の両方を開放するのに必要な乾燥物のか焼は、以下の温度プロファイルで行う:200℃への昇温30分、この後200℃の定常段階で1時間、この後550℃への昇温3時間、および最後に550℃の定常段階で1.5時間。
【0104】
比較例2
造核剤を添加しないTPOAC/Al比=0.08でのゼオライト結晶の合成
この方法は、TPOAC/Alモル比を0.08に増やして、比較例1に記載した通りに行う。
【0105】
比較例1および2で合成された階層的で多孔性のゼオライト粉末の特徴の実施例1、2および3のゼオライトとの比較
これら階層的で多孔性のゼオライトの特徴づけの結果を、以下の表1に要約する。
【0106】
【表1】
【0107】
上記表1の結果は、結晶のモルフォロジーはTPOAC含量によって変化することを示している。一つの解釈は、この構造化剤の様々な結晶面の成長速度への影響である。
【0108】
図3は、回折スペクトル(ディフラクトグラム)の重ね合わせを示す。これらX線回折スペクトル(ディフラクトグラム)の重ね合わせは、本発明に従う固体を用いて得られたこれら回折ピーク強度(実施例1のゼオライト、図3の(b))は、導入した構造化剤の量とは関係なく、参照ゼオライトを用いて得られたもの(図3の(a))のものと同様であるということを示している。本発明に従う方法は、これ故、結晶性が最適で制御された固体を得ることを可能にする。
【0109】
構造化剤、シーディングゲルおよび/または造核ゲルを用いて行われたこの合成方法は、ミクロ孔容積/メソ孔外表面積分布を、低Si/Al比のゼオライト、典型的には1から1.4の間の場合には多様にすることを可能にし、同時に、いかなる他の結晶形も観察されない、特にゼオライトPの共結晶化のない純粋なFAU(フォージャサイト)型のゼオライトをもたらす。
【0110】
実施例5
TPOAC/Al比=0.04での造核ゲルと成長ゲルの添加によるHPX合成
この方法は、結晶のサイズを減少させるため、同じ造核ゲルを成長ゲルの重量に対して10重量%添加して、実施例1に記載した通りに行う。
【0111】
得られたゼオライトは、0.5から1.0μmの間の結晶サイズ、即ち実施例1で得られたゼオライト結晶のサイズを備える。
【0112】
実施例6
TPOAC/Al比=0.04での造核ゲルと成長ゲルの添加によるLSHPX合成
a)成長ゲルの調製:アルキメデスポンプで250rpmで撹拌された反応器
成長ゲルは、加熱ジャケット、温度プローブおよび攪拌機を備えた3リットルステンレス鋼反応器で、水酸化ナトリウム(NaOH)300g、85%水酸化カリウム264g、アルミナ三水和物(Al.3HO、Al65.2重量%含有)169gおよび水1200gを含むアルミネート溶液を25℃で5分間、撹拌速度250rpmで、ケイ酸ナトリウム490g、NaOH29.4gおよび水470gを含む25℃のシリケート溶液と混ぜ合わせることによって調製する。
【0113】
この成長ゲルの化学量論は、4.32NaO/1.85KO/Al/2.0SiO/114HOである。この成長ゲルの均質化は、250rpmで撹拌しながら15分間、25℃で行う。
【0114】
b)造核ゲルの添加
成長ゲルと同一の方法で得られ、40℃で1時間熟成された、12NaO/Al/10SiO/180HOの組成の造核ゲル5.8g(即ち、0.2重量%)を前記成長ゲルに25℃、300rpmで撹拌しながら添加する。250rpmでの5分間の均質化後、撹拌速度を50rpmに下げ、撹拌を30分間継続する。
【0115】
c)反応媒体への構造化剤の導入
TPOACの60%メタノール(MeOH)溶液35.7gを撹拌速度250rpmで5分間この反応媒体に入れる(TPOAC/Alモル比=0.04)。次に、結晶化を始める前に、熟成ステップを30℃で20時間、50rpmで行う。
【0116】
d)2段階の結晶化
撹拌速度を50rpmに維持し、反応器のジャケットの公称温度の上昇をこの後直線的に63℃にプログラムして、反応媒体の温度を5時間で60℃に上げ、60℃の定常段階を21時間続け;反応器のジャケットの公称温度をこの後102℃に設定して、反応媒体の温度を60分で95℃に上げる。95℃での3時間の定常段階の後、冷水をジャケットに循環させてこの反応媒体を冷却し、結晶化を止める。
【0117】
e)濾過/洗浄
この固体をシンター上で回収し、この後脱イオン水でpHが中性になるまで洗浄する。
【0118】
f)乾燥/か焼
この生成物を特徴づけるため、90℃の炉で8時間の乾燥を行う。
【0119】
ミクロ多孔性(水)および構造化剤の除去によるメソ多孔性の両方を開放するのに必要な乾燥物のか焼は、真空下(P<6.7×10−4Pa)、400℃まで9時間から16時間の間の時間をかけて増分50℃で漸増しながら真空脱気することによって行う。
【0120】
この階層的で多孔性のゼオライトの特徴づけの結果は:
・Dubinin−Raduskevitchのミクロ孔V=0.278cm.g−1
・mesop.outer S=97m.g−1
・メソ孔径DFT=5nmから10nm
・X線ディフラクトグラム:純粋フォージャサイト構造、ゼオライトLTA非検出
・結晶サイズ:8μm
・蛍光X線で測定されたLSHPXのSi/Alモル比は1.01である。
【0121】
実施例7
TPOAC/Al比=0.04での造核ゲルと成長ゲルの添加によるゼオライトHPA合成
a)成長ゲルの調製
成長ゲルは、3パドル翼で600rpmで撹拌された、加熱ジャケットおよび温度プローブを備えた1.5リットルガラス反応器で、水酸化ナトリウム(NaOH)151g、アルミナ三水和物(Al.3HO、Al65.2重量%含有)112.4gおよび水212gを含むアルミネート溶液を35℃で5分間、撹拌速度600rpmで、ケイ酸ナトリウム321.4gおよび水325gを含む35℃のシリケート溶液と混ぜ合わせることによって調製する。
【0122】
この成長ゲルの化学量論は、3.13NaO/Al/1.92SiO/68HOである。この成長ゲルの均質化は、600rpmで撹拌しながら、15分間35℃で行う。
【0123】
b)造核ゲルの添加
成長ゲルと同一の方法で得られ、25℃で2時間熟成された、2.05NaO/Al/1.92SiO/87HOの組成の造核ゲル11.2g(即ち、1重量%)を前記成長ゲルに35℃、300rpmで撹拌しながら添加する。300rpmでの5分間の均質化後、撹拌速度を190rpmに下げ、撹拌を30分間継続する。
【0124】
c)反応媒体への構造化剤の導入
TPOACの60%メタノール(MeOH)溶液35.7gを撹拌速度600rpmでこの反応媒体に導入する(TPOAC/Alモル比=0.04)。結晶化を始める前に、熟成ステップを35℃で10分間、300rpmで行う。
【0125】
d)結晶化
撹拌速度を190rpmに落とし、反応器のジャケットの公称温度を105℃に設定して、反応媒体の温度を40分で97℃に上げる。97℃の定常段階で3時間後、ジャケットに冷水を循環させてこの反応媒体を冷却し、結晶化を止める。
【0126】
e)濾過/洗浄
この固体をシンター上で回収し、この後脱イオン水でpHが中性になるまで洗浄する。
【0127】
f)乾燥
乾燥は90℃の炉で8時間行い、強熱減量が20%の固体を得る。
【0128】
g)カルシウム交換
このゼオライトHPAの多孔性を特徴づけるため、カルシウム交換を行い、約0.5nmのミクロ孔径を得る:乾燥粉体50gを0.5MCaCl溶液500cm、70℃で2時間接触させ、この後濾過し、水280mLで洗浄する。この操作を3回繰り返す(3倍交換)。
【0129】
h)乾燥
乾燥は90℃の炉で8時間行い、強熱減量が20%の固体を得る。
【0130】
i)か焼
ミクロ多孔性(水)および構造化剤の除去によるメソ多孔性の両方を開放するのに必要な乾燥物のか焼は、真空下(P<6.7×10−4Pa)、400℃まで9時間から16時間の間の時間をかけて増分50℃で漸増しながら真空脱気することによって行う。
【0131】
この階層的で多孔性のゼオライトCaHPAの特徴づけの結果は以下である:
・Dubinin−Raduskevitchのミクロ孔V=0.265cm.g−1
・mesop.outer S=102m.g−1
・メソ孔径DFT=5nmから10nm
・XRディフラクトグラム:純粋ゼオライトLTA構造
・結晶サイズ:0.8μm
・蛍光X線で測定されたHPAのSi/Alモル比は1.02である。
【0132】
本発明の方法は、経済的に実行可能であり、工業的に行いやすく、従来技術に記載の合成と比較して極めて大きな時間の節約を伴う。加えて、本発明の合成方法は、例えば、この合成ゲルで不足する元素である、アルミニウムの関与した量に対して最適収量99%の、全く申し分のない収量を達成することを可能にする。
図1a
図1b
図2
図3