(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183632
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
F21V 31/00 20060101AFI20170814BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20170814BHJP
H01L 33/64 20100101ALI20170814BHJP
F21V 29/15 20150101ALI20170814BHJP
F21V 29/503 20150101ALI20170814BHJP
F21V 29/51 20150101ALI20170814BHJP
F21V 29/70 20150101ALI20170814BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20170814BHJP
F21W 101/04 20060101ALN20170814BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20170814BHJP
【FI】
F21V31/00
H05K7/20 R
H05K7/20 B
H01L33/64
F21V29/15 100
F21V29/503 100
F21V29/51
F21V29/70
F21S2/00 642
F21W101:04
F21Y115:10
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-90531(P2012-90531)
(22)【出願日】2012年4月11日
(65)【公開番号】特開2013-218968(P2013-218968A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2015年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000180313
【氏名又は名称】四国計測工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100133592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(72)【発明者】
【氏名】水田 敬
【審査官】
松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−181252(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/030479(WO,A1)
【文献】
特表2011−501363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 31/00
F21S 2/00
F21V 29/15
F21V 29/503
F21V 29/51
F21V 29/70
H01L 33/64
H05K 7/20
F21W 101/04
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
漁業に使用される照明装置であって、
光線を外部に放出するレンズが開口に水密に取り付けられて水密構造を備える筐体と、前記筐体の内部に密封配置され光線を発する発光素子から成る発熱体と、前記発熱体から発生する熱を前記筐体に輸送する熱輸送部材を備えて、前記発熱体から発生する熱を前記筐体から水中環境に排出する放熱装置を備え、
前記熱輸送部材は受熱部と排熱部を有して、前記受熱部で前記発熱体と伝熱的に接触し、前記排熱部で前記筐体と伝熱的に接触するとともに、前記排熱部以外の部位が前記筐体から離隔するように構成されており、
前記筐体は円筒状に、前記発熱体及び前記熱輸送部材は円板状に、それぞれ形成され、同心に配置されて、
前記筐体は内面に突出する環状部材を有し、
前記熱輸送部材には円板の外縁の全周にわたって前記排熱部が設けられ、前記排熱部は、前記筐体の内面及び前記環状部材に伝熱的に接触しており、
前記排熱部の面積が前記受熱部の面積よりも大きい範囲内で、前記環状部材で囲まれる開口の直径を最大とする
ことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記筐体の内部の前記環状部材に取り囲まれた開口を、前記環状部材の前記熱輸送部材が取付けられた面の反対面において、閉塞する閉塞部材を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記閉塞部材は、前記筐体の素材に比べて、熱伝導率の小さい素材で構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記筐体と前記閉塞部材の熱伝導率の比率は5倍以上である
請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記筐体は、黄銅で構成され、前記閉塞部材は、ステンレス又は樹脂素材で構成される
請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記閉塞部材及び前記筐体は同じ材料で構成され、前記閉塞部材の厚さを、前記環状部材に比べて小さくする
請求項2に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
照明装置、特に
、筐体の内部に配置された光源から発生する熱を筐体に輸送して、該筐体から環境に排出する照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
筐体の内部に、例えばLEDのような発光素子を配置した照明装置が知られている。LEDは、例えば白熱電球のような、伝統的な光源に比べて発光効率が高いが、つまり発光量に比べて発熱量が小さいが、なお無視できない熱量が発生する。そのため、LEDを光源として使用する照明装置であっても、発光素子から発生する熱を環境に排出する放熱装置が必要とされる。
【0003】
また、屋外あるいは水中で使用する照明装置の場合、風雨密あるいは水密に構成された筐体の中に光源を配置する必要があるが、このような照明装置にあっては、光源で発生した熱を速やかに筐体に輸送して、筐体の表面から環境に排出する放熱装置が必要とされる。
【0004】
例えば、特許文献1には、光学部材と放熱ケース部材を合わせて筐体を構成して、該筐体の内部に発光素子(LED)を配置して、発光素子が発する光線を、光学部材を通して外部に投射する照明ユニットが開示されている。この照明ユニットにおいては、発光素子は基板上に配設され、基板は放熱ケース部材の前面に設けられた基板実装面に接着部材を介して接着されている。このように構成されているので、発光素子で発生した熱は基板と接着部材を通って放熱ケース部材に伝達され、放熱ケースから環境へ放出される。また、特許文献1には、放熱ケース部材を、熱伝導性に優れた材料、例えば、アルミニウム合金等の金属材料で形成されることが記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、椀形の筐体の底部にLED発光素子を配置したLED照明装置が開示されていて、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂、酸化アルミニウム等の無機系フィラー、及びガラス繊維等を含有する熱可塑性樹脂成形体を筐体とすることが記載されている。この熱可塑性樹脂成形体は軽量である上に、熱伝導性に優れているので、LEDで発生した熱を効率良く環境へ放出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−33757号公報
【特許文献2】特開2011−216437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2に開示された照明装置は、照明装置の筐体自体をヒートシンクとして利用して放熱装置を構成しているので、別途ヒートシンクを備える必要がない。そのため照明装置(放熱装置)をコンパクトに纏めることができる。しかしながら、発熱体(LED発光素子)を筐体の内部において筐体と接触させる必要があるので、筐体の形状設計の自由度が低下するという問題がある。また、筐体の内部から筐体の外郭に熱を輸送する熱輸送部材の役割を筐体自身が担うので、結果として筐体が重くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、以上のような背景に鑑みてなされたものであり、筐体の内部に配置された発熱体から発生する熱を筐体に輸送して、該筐体から環境に排出する
照明装置であって、筐体の形状設計の自由度が大きく、筐体を軽量化できる
照明装置を提供することを目的とする。また、光源で発生する熱を速やかに排出できる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る
照明装置は、
漁業に使用される照明装置であって、光線を外部に放出するレンズが開口に水密に取り付けられて水密構造を備える筐体と、前記筐体の内部に
密封配置され
光線を発する発光素子から成る発熱体と、前記発熱体から発生する熱を前記筐体に輸送する熱輸送部材を備えて、前記発熱体から発生する熱を
前記筐体から水中環境に排出する放熱装置
を備え、前記熱輸送部材は受熱部と排熱部を有して、前記受熱部で前記発熱体と伝熱的に接触し、前記排熱部で前記筐体と伝熱的に接触するとともに、前記排熱部以外の部位が前記筐体から離隔するように構成されており、
前記筐体は円筒状に、前記発熱体及び前記熱輸送部材は円板状に、それぞれ形成され、同心に配置されて、前記筐体は内面に突出する環状部材を有し、前記熱輸送部材には円板の外縁の全周にわたって前記排熱部が設けられ、前記排熱部は、前記筐体の内面及び前記環状部材に伝熱的に接触しており、前記排熱部の面積が前記受熱部の面積よりも大きい
範囲内で、前記環状部材で囲まれる開口の直径を最大とする。
【0012】
さらに、前記筐体の内部の前記環状部材に取り囲まれた開口を、前記環状部材の前記熱輸送部材が取付けられた面の反対面において、閉塞する閉塞部材を備えるようにしてもよい。
【0013】
さらにまた、前記閉塞部材は、前記筐体の素材に比べて、熱伝導率の小さい素材で構成されているようにしてもよい。
また、前記筐体と前記閉塞部材の熱伝導率の比率は5倍以上であるようにしてもよい。
また、前記筐体は、黄銅で構成され、前記閉塞部材は、ステンレス又は樹脂素材で構成されるようにしてもよい。
また、前記閉塞部材及び前記筐体は同じ材料で構成され、前記閉塞部材の厚さを、前記環状部材に比べて小さくするようにしてもよい。
【0015】
なお、本発明に係る放熱装置は、本体装置(例えば、照明装置)に装着されて、本体装置から発生する熱を環境に排出する装置には限定されない。本体装置自体が放熱装置として機能するように構成された装置も本発明に係る放熱装置に含まれる。例えば、光源で発生した熱を筐体の表面から環境に排出して光源を冷却するように構成された照明装置は本発明に係る放熱装置に該当する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、発熱体から発生する熱を筐体に輸送する熱輸送部材を備えるので、筐体の形状を設計する上での制約が小さくなる。
【0017】
また、熱輸送部材の排熱部以外の部位が前記筐体から離隔されるように構成されているので、熱輸送部材の受熱部と排熱部の間の温度差を大きく保つことができる。また、熱輸送部材以外の部材、熱伝導率が悪い部材に熱が流入しないので熱抵抗が低減する。そのため、放熱装置の性能を向上させることができる。また、放熱装置を軽量化できる。
【0018】
また、筐体を筒状に、熱輸送部材を平板状に、それぞれ形成して、熱輸送部材が平板の外縁において筐体の内面に伝熱的に接触するように構成すれば、筐体の高さ(厚さ)を小さくできるので、放熱装置をさらに軽量化できる。
【0019】
また、筐体の内面に突出する環状部材を備えて、輸送部材が平板の外縁の全周において、環状部材に接触するようにすれば、輸送部材の排熱部と筐体が接触する面積を最大化できるので、放熱装置の性能が向上する。その結果、放熱装置をさらに小型化できる。
【0020】
また、筐体の内部の環状部材に取り囲まれた開口を、環状部材の熱輸送部材が取付けられた面の反対面において、閉塞する閉塞部材を備えれば、発熱体が配置された空間と他の空間を分離できる。そのため、例えば、熱に弱い部品等を筐体内部に配置する場合に、該部品等を保護することができる。
【0021】
また、前記閉塞部材を筐体の素材に比べて熱伝導率の小さい素材で構成すれば、熱輸送部材の受熱部と排熱部の間の温度差を大きく保てるので、放熱装置の性能が向上する。
【0022】
また、本発明に係る放熱装置を備えて照明装置を構成すれば、照明装置の外形の設計の自由度を大きくするとともに、照明装置を軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明に係る放熱装置の概念図であり、(a)は平面図、(b)は正断面図、(c)は底面図である。
【
図2】本発明に係る照明装置の概念的な正断面図である。
【
図5】放熱装置の変形例を示す概念的な正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0025】
本発明に係る放熱装置1の概念的な構成を
図1に示す。なお、
図1は概念図であって、放熱装置1の具体的な形状や寸法を正確に表現したものではない。したがって、
図1から放熱装置1及び放熱装置1を構成する部品の寸法や寸法比率を読み取ることはできない。
【0026】
放熱装置1の筐体2は、全体として円筒形をなしていて、円筒の高さ方向の中央部には、リブ3が形成されている。リブ3は筐体2の内面に突出する環状部材であって、筐体2の内面の全周(平面図において、全円周)に形成されている。また、筐体2は放熱装置1の外郭を形成して、放熱装置1の内部空間と外部空間(環境)を区画するとともに、放熱装置1の他の部品(面状ヒートパイプ4と発熱体5)を前記内部空間に保持する部品である。
【0027】
後述するように、筐体2は発熱体5から発生する熱を環境に放出する一種のヒートシンクとして機能するから、筐体2の素材には熱伝導性のよい材料が選ばれる。例えば、黄銅は熱伝導性と耐食性に優れているから、筐体2を黄銅で構成すれば、放熱装置1を屋外で使用する場合に都合がよい。また、筐体2をアルミニウムあるいはアルミニウム合金で構成すれば、放熱装置1を軽量化することができる。
【0028】
面状ヒートパイプ4は、平面図において円形をなす円板状のヒートパイプである。面状ヒートパイプ4の内部に冷媒が充填されるとともに、吸熱して気化した冷媒蒸気が拡散する蒸気拡散流路(図示せず)と、放熱して凝縮した冷媒液が帰還する毛細管(図示せず)を備える。面状ヒートパイプ4は、このように構成されているので、冷媒の状態変化によって吸熱と放熱を行い、吸熱部位と放熱部位の間を冷媒が循環して熱を輸送する熱輸送部材として機能する。本実施形態では、円板の中心部が吸熱部位となり円周部分が放熱部位になるように面状ヒートパイプ4を構成している。面状ヒートパイプ4の吸熱部位(円板の中心部)には、発熱体5が装着固定され面状ヒートパイプ4と伝熱的に接触している。また、面状ヒートパイプ4は放熱部位(円板の円周部分)において筐体2に装着固定されリブ3に伝熱的に接触している。
【0029】
発熱体5で発生した熱は面状ヒートパイプ4の吸熱部位(円板の中心部)において受熱され、放熱部位(円板の円周部分)で排熱され筐体2に伝熱され、筐体2の外表面が環境に放出される。つまり、面状ヒートパイプ4の吸熱部位(円板の中心部)が熱輸送部材の受熱部に相当し、放熱部位(円板の円周部分)が排熱部に相当する。
【0030】
なお、面状ヒートパイプ4の放熱部位の面積を吸熱部位の面積より大きくすれば、発熱体5から吸熱部位に流れる熱流束に比べて、放熱部位から筐体2へ流れる熱流束を小さくできる。これにより、放熱部位から筐体2への熱伝導によって生じる筐体2、特にリブ4の温度上昇が抑制され、その結果、発熱体5の温度上昇が抑制される。
【0031】
なお、面状ヒートパイプ4は既に周知の装置であるので、詳細な説明は省略する。必要ならば、例えば、特許第4112602号公報等を参照されたい。
【0032】
発熱体5は、放熱装置1によって放熱される冷却対象物である。発熱体5は、動作中に熱が発生する装置や素子であれば、何でもよい。つまり、放熱装置1の冷却対象物は特に限定されない。
【0033】
もっとも、本発明は筐体の内部に光源を密封配置した照明装置において、光源を冷却する装置として特に有用である。そこで、本発明の別の実施形態として、照明装置11の構成を説明する。
【0034】
図2は照明装置11の概念的な構成を示す正断面図である。照明装置11の基本的な構成は放熱装置1と共通するので、共通する構成要素には、同一の符号を付して、放熱装置1と相違する部分を中心に説明する。なお、
図2も概念図であって、照明装置11の具体的な形状や寸法を正確に表現したものではない。したがって、
図2から照明装置11及び照明装置11を構成する部品の寸法や寸法比率を読み取ることはできない。
【0035】
照明装置11は、例えば漁業に使用される照明器具であって、水密構造を備えている。すなわち、照明装置11の筐体2は、上方が閉じられた円筒状の(つまり、コップを逆さにしたような)容器であって、筐体2の下方の開口にはレンズ12が水密に取り付けられている。筐体2の内部には照明装置11の光源であるLED発光素子13が配置され、LED発光素子13で発生する光線は、レンズ12を通して筐体2の外部に投射される。LED発光素子13で発生する熱は、面状ヒートパイプ4を通って筐体2に伝熱され、筐体2の外部(環境)に放出される。つまり、照明装置11におけるLED発光素子13は放熱装置1における発熱体5に相当する。照明装置11自体が一種の放熱装置であるとも言える。
【0036】
また、照明装置11は熱遮蔽材14を備える。熱遮蔽材14はリブ3に囲まれた開口15を閉塞するカバーであって、リブ3の上面(つまり、面状ヒートパイプ4が装着される面の反対面)に装着固定されて、筐体2の内部を上部区画16と下部区画17に分割している。そのため、LED発光素子13で発生する熱で昇温した下部区画17内の空気が上部区画16に移動しないので、上部区画16内の空気の昇温が抑制されて、上部区画16内の装置(例えば、LED発光素子13の点灯回路18)が保護される。
【0037】
また、熱遮蔽材14は筐体2に比べて熱伝導率が小さい材料で構成される。筐体2と熱遮蔽部材14の熱伝導率の比率は5倍程度以上であることが望ましい。例えば、筐体2の素材が黄銅である場合に、熱遮蔽部材14の素材にステンレスを選べば、これを実現できる。また、一般的な樹脂素材であれば、熱伝導率は概略1W(m/K)以下なので、熱遮蔽材14を樹脂素材で構成すれば、熱遮蔽材14の熱伝導率を筐体2の熱伝導率に比べて充分小さくできる。熱遮蔽材14の材料をこのように選べば、熱遮蔽材14の面方向熱抵抗は筐体2のリブ3に比べて大きくなるので、熱遮蔽材14は、面状ヒートパイプ4の受熱部と排熱部の間の熱勾配に殆ど影響を与えない。そのため、熱遮蔽材14を備えても、面状ヒートパイプ4による熱輸送の能率は低下しない。
【0038】
また、熱遮蔽材14を筐体2と同じ材料で構成する場合には、リブ3に比べて厚さを小さく(例えば、リブ3の厚さの5分の1以下に)する。このようにしても、熱遮蔽材14の面方向熱抵抗は筐体2のリブ3に比べて大きくなる。そのため、熱遮蔽材14を備えても、面状ヒートパイプ4による熱輸送の能率は低下しない。
【0039】
最後に本発明の効果を確認するために行った計算結果について説明する。
図3に計算に用いた放熱装置1の断面図を示す。図中に示した寸法の単位はmmである。なお、
図3においては、寸法を表す数字と区別するために、構成要素を示す符号を、いわゆる丸付き数字にしている。また、
図3においてDは、リブ3で囲まれる開口(
図2の開口15に相当)の直径であり、Dの大きさを、0mmから60mmまで、10mmで変えて計算を行なった。
図3は、D=60mmとした場合の形状を示している。また、D=0mmとは開口が存在しない状態、つまり面状ヒートパイプ4の裏面全体がリブ3と接触している状態に相当する。
【0040】
なお、計算においては、筐体2の材質を黄銅とし、面状ヒートパイプ4単体の熱伝導率を1800W/(m・K)と仮定した。また、発熱体5は銅製基板に実装されていると仮定した。なお、周囲流体は水であり、環境温度は25℃とした。発熱量は154.1Wとした。浮力の影響については、ブジネスク近似を仮定した。
【0041】
図4は計算結果を纏めたグラフであり、開口の直径Dと放熱装置1の全熱抵抗の関係を示している。横軸は開口の直径D(mm)であり、縦軸は放熱装置1の全熱抵抗、つまり発熱体5と筐体2の間の熱抵抗(K/W)である。
図4から容易に理解できるように、開口の直径Dを大きくすれば放熱装置1の全熱抵抗は小さくなる。開口の直径Dが小さい(リブ3が大きい)と面状ヒートパイプ4がリブ3と接触する面積が大きくなり、面状ヒートパイプ4からリブ3に流れる熱量が多くなり、面状ヒートパイプ4の温度が低下し、その結果、発熱体5と筐体2の間の温度勾配が小さくなるから、このような現象が発生すると考えられる。
【0042】
このように、放熱装置1において開口の直径Dを大きくすれば筐体2を軽量化(つまり、放熱装置1を軽量化)することができる。一般に放熱装置の軽量化と高放熱量化はトレードオフの関係にあるが、本発明によれば、両者を同時に実現できる。
【0043】
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲はこれに限定されない。特許請求の範囲に記載した技術的思想の限りにおいて、自由に応用変形あるいは改良して実施することができる。
【0044】
例えば、上記実施形態では筐体2にリブ3を備えて、面状ヒートパイプ4の排熱部がリブ3と伝熱的に接触する例を示したが、本発明に係る放熱装置あるいは照明装置はリブ3を備えるものには限定されない。例えば
図5(a)に示すように、筐体2の内側に凹溝を形成して、該凹溝に面状ヒートパイプ4の排熱部が嵌合して、面状ヒートパイプ4が筐体と伝熱的に接触するようにしてもよい。
【0045】
また、面状ヒートパイプ4と筐体2を結合する手段は特に限定されない。接着材による結合であってもよいし、ねじやばねを利用した機械的な締結であってもよい。もし可能ならば、溶接やロウ付けを選択することもできる。つまり、伝熱的な接触を実現できるならば、どんな手段を選択してもよい。発熱体5と面状ヒートパイプ4を結合する手段についても同様である。
【0046】
また、熱輸送部材の具体例として面状ヒートパイプ4を示したが、熱輸送部材は面状ヒートパイプ4に限られない、固体熱輸送部材(例えば、銅板)であってもよいし、各種(面状ヒートパイプ以外の)ヒートパイプであってもよい。
【0047】
また、閉塞部材の具体例として熱遮蔽材14を示し、熱遮蔽材14がリブ3の上面に装着固定される例を示したが、閉塞部材はこのようなものには限定されない。例えば
図5(b)に示すように、リブ3に囲まれた開口に断熱材6を嵌めこんで、断熱材6が面状ヒートパイプ4の上面と当接するようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施形態において筐体3を円筒状に形成した例を示したが、本発明において「筒状の筐体」と言う場合に「筒」は「円筒」には限定されない。「筒」の横断面はどんな形状であってもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては筐体2を黄銅、アルミニウムあるいはアルミニウム合金とする例を示したが、筐体2の素材はこれらには限定されない。その他の金属材料あるいは非金属材料が選択されてもよい。
【0050】
また、上記実施形態においてLED発光素子13を光源として備える照明装置11を示したが、本発明の適用対象はLEDを光源とする照明装置、LEDを冷却対象の発熱体として備える放熱装置には限定されない。各種の光源を備える照明装置、各種の発熱体を冷却対象とする放熱装置に本発明を適用できる。
【0051】
また、上記実施形態においてLED発光素子13で発生する熱を水中に放出する照明装置11の例を示したが、本発明に係る放熱装置及び照明装置は水中に放熱する装置には限定されない。空中(大気)に放熱する装置であってもよい。
【0052】
なお、本発明は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の平成23年度先導的産業技術創出事業に係る「低エネルギー消費型高輝度・小型LED水中照明による低環境負荷型灯火漁業の実証研究」の成果物である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、筐体の内部に配置された発熱体から発生する熱を環境に排出する放熱装置として有用である。また筐体の内部に配置された光源から発生する環境に排出する照明装置として有用である。
【符号の説明】
【0054】
1:放熱装置
2:筐体
3:リブ
4:面状ヒートパイプ
5:発熱体
6:断熱材
11:照明装置
12:レンズ
13:LED発光素子
14:熱遮蔽材
15:開口、
16:上部区画
17:下部区画
18:点灯回路