特許第6183641号(P6183641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183641
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】排ガス測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   G01N1/22 B
   G01N1/22 Q
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-113565(P2013-113565)
(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-232056(P2014-232056A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110685
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 方宜
(72)【発明者】
【氏名】北山 将人
【審査官】 土岐 和雅
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−145523(JP,A)
【文献】 特開平08−068734(JP,A)
【文献】 特開平07−229817(JP,A)
【文献】 特開平06−066691(JP,A)
【文献】 特開2005−055246(JP,A)
【文献】 特開2009−128221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00〜1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼機器からの排ガス路の壁に斜め上方へ延出して設けられ、前記排ガス路を通る排ガスの一部を、取出し路を介して取り出し、この取出し路の端部で折り返して、戻し路を介して前記排ガス路へ戻す抽出パイプと、
前記戻し路に設けられた上方への凹部に設置され、排ガス中の一酸化炭素、二酸化炭素、酸素または窒素酸化物の濃度を検出する排ガスセンサと、
この排ガスセンサまたはそれへの排ガスを加温するヒータとを備え
前記ヒータは、前記排ガスセンサのセンサシースがはめ込まれる前記凹部を構成する筒部の内、前記戻し路を流れる排ガス流の上流側となる略半周面に設けられる
ことを特徴とする排ガス測定装置。
【請求項2】
前記抽出パイプは、断面矩形の外パイプと、この外パイプの断面下半分にはめ込まれる断面矩形の内パイプとから構成され、
前記外パイプは、一端部が端壁で閉塞される一方、他端部が前記排ガス路に開口するよう設けられ、
前記内パイプは、一端部が前記端壁で閉塞されつつその一端部側の上壁に折返し開口が形成されるか、一端部が前記端壁と離隔して配置されることで折返し開口が形成される一方、他端部が前記外パイプよりも延出して前記排ガス路内に突入して開口するよう設けられ、
前記外パイプには、前記折返し開口より下流側における上壁に、センサ取付筒が設けられることで前記凹部が形成され、
前記センサ取付筒は、筒部の両端部に上フランジと下フランジとが設けられてなり、前記下フランジが前記外パイプの上壁に気密に取り付けられ、前記筒部に前記排ガスセンサのセンサシースが上方からはめ込まれて、前記上フランジに前記排ガスセンサのセンサフランジが気密に取り付けられ、
前記センサ取付筒の筒部の外周面に、前記ヒータが設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の排ガス測定装置。
【請求項3】
前記排ガスセンサと前記ヒータとが設けられた前記センサ取付筒は、カバーにて覆われる
ことを特徴とする請求項2に記載の排ガス測定装置。
【請求項4】
前記排ガスセンサ内の相対湿度が70%±10%になるように、前記ヒータによる加温を行う
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排ガス測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼機器からの排ガス中に含まれる一酸化炭素などの濃度を検出する排ガス測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は、先に、下記特許文献1に開示される排ガス測定装置を提案している。この排ガス測定装置は、排ガスの流速、温度および結露によるセンサの故障や測定誤差を除去しようとするものである(段落0021、0010)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−145523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、燃焼機器の設置環境温度が低い場合や、燃焼機器からの排ガス温度が低い場合にも、センサ部位において、排ガスが露点以下に冷却されることがないように、より確実な対策を施しておきたい。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、設置環境温度や排ガス温度に拘わらず、センサ部位において、排ガスが露点温度を下回ることなく、結露の発生を確実に防止し、それにより、排ガスセンサの出力特性を安定させ、また一酸化炭素などの濃度を正確に検出することができる排ガス測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、燃焼機器からの排ガス路の壁に斜め上方へ延出して設けられ、前記排ガス路を通る排ガスの一部を、取出し路を介して取り出し、この取出し路の端部で折り返して、戻し路を介して前記排ガス路へ戻す抽出パイプと、前記戻し路に設けられた上方への凹部に設置され、排ガス中の一酸化炭素、二酸化炭素、酸素または窒素酸化物の濃度を検出する排ガスセンサと、この排ガスセンサまたはそれへの排ガスを加温するヒータとを備え、前記ヒータは、前記排ガスセンサのセンサシースがはめ込まれる前記凹部を構成する筒部の内、前記戻し路を流れる排ガス流の上流側となる略半周面に設けられることを特徴とする排ガス測定装置である。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、排ガスセンサまたはそれへの排ガスをヒータで加温することで、設置環境温度や排ガス温度に拘わらず、センサ部位において、排ガスが露点温度を下回ることなく、結露の発生を確実に防止することができる。それにより、排ガスセンサの出力特性を安定させ、また一酸化炭素などの濃度を正確に検出することができる。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、排ガスセンサのセンサシースがはめ込まれる前記凹部に、ヒータを設けるので、ヒータの設置が容易である。また、仮にセンサシース内の検知素子を直接に加温した場合、素子構成部材を均一に加温しなければ出力に影響を与え、誤った検出をするおそれがあるが、本請求項に記載の発明のように、センサシースよりも外側の空間から間接的に加温することで、測定誤差を防止することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記抽出パイプは、断面矩形の外パイプと、この外パイプの断面下半分にはめ込まれる断面矩形の内パイプとから構成され、前記外パイプは、一端部が端壁で閉塞される一方、他端部が前記排ガス路に開口するよう設けられ、前記内パイプは、一端部が前記端壁で閉塞されつつその一端部側の上壁に折返し開口が形成されるか、一端部が前記端壁と離隔して配置されることで折返し開口が形成される一方、他端部が前記外パイプよりも延出して前記排ガス路内に突入して開口するよう設けられ、前記外パイプには、前記折返し開口より下流側における上壁に、センサ取付筒が設けられることで前記凹部が形成され、前記センサ取付筒は、筒部の両端部に上フランジと下フランジとが設けられてなり、前記下フランジが前記外パイプの上壁に気密に取り付けられ、前記筒部に前記排ガスセンサのセンサシースが上方からはめ込まれて、前記上フランジに前記排ガスセンサのセンサフランジが気密に取り付けられ、前記センサ取付筒の筒部の外周面に、前記ヒータが設けられることを特徴とする請求項1に記載の排ガス測定装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、抽出パイプを外パイプと内パイプとの二重管構造とすることで、簡易で安価にしかも安定した品質で、抽出パイプを製作することができる。また、内パイプの先端部を排ガス路内に突入して設けることで、排ガス路の壁面に生じる境界層の影響を防止して、安定して排ガスを排ガス測定装置に通すことができる。さらに、外パイプの上壁に設けたセンサ取付筒に排ガスセンサのセンサシースをはめ込む一方、センサ取付筒の外周面にヒータを設けるので、排ガスセンサを周囲から間接的に加温して、排ガスセンサやその近辺における結露の発生や、排ガスセンサの測定誤差を防止することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記排ガスセンサと前記ヒータとが設けられた前記センサ取付筒は、カバーにて覆われることを特徴とする請求項2に記載の排ガス測定装置である。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、カバーを設けることで、外気を遮断して、ヒータによる加温を安定して行うことができる。
【0014】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記排ガスセンサ内の相対湿度が70%±10%になるように、前記ヒータによる加温を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排ガス測定装置である。
【0015】
結露を防止するためには、ヒータにより加温して相対湿度を下げるのがよいが、その反面、相対湿度を下げるのに伴い、ヒータ容量が増し、電源の確保や構成部品の耐熱性などに制約を生じる。ところが、請求項4に記載の発明によれば、相対湿度を70%±10%とするようにヒータで加温することで、そのような不都合を回避しつつ結露を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、設置環境温度や排ガス温度に拘わらず、センサ部位において、排ガスが露点温度を下回ることなく、結露の発生を確実に防止することができる。それにより、排ガスセンサの出力特性を安定させ、また一酸化炭素などの濃度を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の排ガス測定装置の一実施例を示す概略分解斜視図である。
図2図1の排ガス測定装置の組立状態の縦断面図である。
図3図1の排ガス測定装置のセンサ取付筒を示す概略図であり、ヒータが取り付けられた状態を示している。
図4図3のIV−IV面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の排ガス測定装置1の一実施例を示す概略図であり、図1は分解斜視図、図2は組立状態の縦断面図である。
【0019】
本実施例の排ガス測定装置1は、図2に示すように、燃焼機器からの排ガス路2の壁に、傾斜した状態で取り付けられる。燃焼機器は、油やガスなどの燃料を燃焼させる機器であり、その種類を特に問わないが、たとえばボイラまたは給湯器である。燃焼機器からの排ガスは、煙道や煙突などの排ガス路2を介して外部へ排出される。排ガス中の一酸化炭素、二酸化炭素、酸素または窒素酸化物の濃度を検出するために、排ガス路2には排ガス測定装置1が取り付けられる。
【0020】
排ガス測定装置1は、排ガス路2に設けられる抽出パイプ3と、この抽出パイプ3に設けられる排ガスセンサ4と、この排ガスセンサ4またはそれへの排ガスを加温するヒータ5(図2図4)とを備える。
【0021】
抽出パイプ3は、先端部を排ガス路2内に開口させた状態で排ガス路2の壁に取り付けられ、基端側へ行くに従って(つまり排ガス路2の壁から離隔するに従って)上方へ傾斜して設けられる。
【0022】
抽出パイプ3は、排ガス路2を通る排ガスの一部を、取出し路6を介して取り出し、この取出し路6の端部で折り返して、戻し路7を介して排ガス路2へ戻す構成とされる。より具体的には、本実施例の抽出パイプ3は、断面矩形の外パイプ8と、この外パイプ8の断面下半分にはめ込まれる断面矩形の内パイプ9とから構成される。本実施例では、外パイプ8および内パイプ9は、金属製である。
【0023】
外パイプ8は、基端部が端壁10で閉塞される一方、先端部は開口されている。一方、内パイプ9は、基端部が端壁10で閉塞されつつその基端側の上壁に折返し開口11が形成されるか、基端部が端壁10と離隔して配置されることで折返し開口11が形成される。そして、内パイプ9は、外パイプ8よりも先端側へ延出して設けられ、先端部は開口されている。内パイプ9の先端部には、排ガスを内パイプ9へ導くための切替口12が設けられている。
【0024】
このような構成であるから、外パイプ8および内パイプ9の各先端部を排ガス路2内に開口させれば、内パイプ9内が取出し路6、外パイプ8内で且つ内パイプ9外が戻し路7として機能する。つまり、排ガス路2の排ガスは、内パイプ9の先端部から導入され、内パイプ9の先端部から基端部へ移動し、折返し開口11から内パイプ9外で外パイプ8内に導出され、外パイプ8の基端部から先端部へ移動し、外パイプ8の先端部から排ガス路2内へ戻される。
【0025】
外パイプ8の基端側の上壁には、折返し開口11より先端側(排ガス流の下流側)に、上方への凹部13が設けられており、この凹部13内に排ガスセンサ4が設けられる。本実施例では、外パイプ8の上壁にセンサ取付筒14が設けられ、そのセンサ取付筒14の中空穴15が前記凹部13とされ、その凹部13に排ガスセンサ4の本体部(センサシース24)が収容される。なお、本実施例のセンサ取付筒14は、金属製である。
【0026】
図3および図4は、本実施例のセンサ取付筒14を示す概略図であり、図3は正面図、図4はIV−IV面図であり、ヒータ5を取り付けた状態を示している。
【0027】
センサ取付筒14は、円筒状の筒部16の上下両端部に、上フランジ17と下フランジ18とが設けられている。上フランジ17と下フランジ18とは、本実施例ではそれぞれ矩形状とされ、その長手方向を90度ずらして配置される。つまり、図1において、上フランジ17は前後方向(抽出パイプ3の幅方向)へ延出して配置される一方、下フランジ18は左右方向(抽出パイプ3の長手方向)へ沿って配置される。また、筒部16の外周面には、前後両方へ延出して板状のリブ19が一体形成されている。さらに、筒部16は、図3に示すように、下フランジ18の下面から、下方へ僅かに突出して形成されている。なお、筒部16には、周側壁を貫通して検査口20が設けられているが、この検査口20は閉塞されて使用される。
【0028】
センサ取付筒14は、外パイプ8の上壁にガスケット21を介して下フランジ18が気密に重ね合わされて取り付けられる。外パイプ8の上壁およびガスケット21には、センサ取付筒14の中空穴15と対応した位置に、それぞれ穴22,23が開けられている。このようにして、センサ取付筒14は、外パイプ8の上壁に対し垂直に設けられ、センサ取付筒14の中空穴15にて前記凹部13が形成される。
【0029】
センサ取付筒14の中空穴15には、排ガスセンサ4が設けられる。排ガスセンサ4は、排ガス中の一酸化炭素、二酸化炭素、酸素または窒素酸化物の濃度を検出する。但し、排ガスセンサ4は、一酸化炭素、二酸化炭素、酸素および窒素酸化物の内、複数のものを検出可能であってもよい。排ガスセンサ4は、たとえば、燃焼機器からの排ガス中の一酸化炭素濃度を監視して、燃焼機器の不完全燃焼を検知するために、接触燃焼式のCOセンサとされる。
【0030】
本実施例の排ガスセンサ4は、下方へのみ開口する円筒状のセンサシース24内に検知素子などが内蔵されており、下部開口からセンサシース24内に排ガスが出入りする。また、センサシース24の上端部には、センサフランジ25が設けられている。センサシース24およびセンサフランジ25は、金属製である。
【0031】
排ガスセンサ4は、センサシース24が、センサ取付筒14の中空穴15に上方からはめ込まれる。そして、センサ取付筒14の上フランジ17にガスケット26を介してセンサフランジ25が気密に重ね合わされて取り付けられる。センサシース24は、ガスケット26の穴27を貫通する。また、センサ取付筒14への排ガスセンサ4の取付状態において、排ガスセンサ4のセンサシース24は、外パイプ8内へ突出しない。
【0032】
抽出パイプ3の基端部には、図1に示すように、ケース取付板28を介して、基板ケース29が設けられ、この基板ケース29内には、検出回路(図示省略)が収容されている。検出回路は、排ガスセンサ4と電気的に接続され、一酸化炭素などの濃度を検出する。また、ヒータ5には、基板ケース29を介して電力が供給される。なお、ケース取付板28は、抽出パイプ3からの熱が検出回路へ伝わるのを防止する遮熱板としても機能する。
【0033】
ケース取付板28は、外パイプ8の幅寸法よりも大きい幅寸法の板材を「く」の字形に屈曲したもので、上片30と下片31とが所定角度で連接されて構成される。下片31に基板ケース29が取り付けられ、上片30は抽出パイプ3の基端部下面に重ね合わされて固定される。図2に示すように、排ガス測定装置1を排ガス路2の壁に取り付けた状態において、下片31は上下方向へ沿って配置される。
【0034】
一方、外パイプ8の基端部上面には、矩形状の平板32が重ね合わされる。この平板32は、外パイプ8の幅寸法よりも大きく、矩形穴33が形成されている。この矩形穴33の内側に、前記ガスケット21が配置される。
【0035】
上片30と平板32との間には、外パイプ8の幅方向両側において、パイプ状のスペーサ34が配置される。そして、ケース取付板28の下方からの通し雌ネジ35と、センサフランジ25の上方からの雄ネジ36との間に、ケース取付板28の上片30、スペーサ34、平板32、センサ取付筒14の上フランジ17、ガスケット26、および排ガスセンサ4のセンサフランジ25を通して、これら部材が互いに位置決めされる。言い換えれば、ケース取付板28の上片30と排ガスセンサ4のセンサフランジ25との間で、外パイプ8、平板32およびガスケット21、センサ取付筒14およびガスケット26が、互いに密着するよう挟み込まれる。
【0036】
ところで、図1では図示省略しているが、図2から図4に示すように、センサ取付筒14の筒部16の外周部には、ヒータ5が設けられている。本実施例では、ヒータ5は、合成樹脂でモールドされて取り付けられている。ヒータ5は、センサ取付筒14の筒部16の外周面全体に設けてもよいが、本実施例では、リブ19で仕切られた筒部16の略半周面に設けている。この際、図2に示すように、外パイプ8を流れる排ガス流の上流側(外パイプ8の基端側)にヒータ5を設けるのが好ましい。
【0037】
排ガスセンサ4やヒータ5が設けられたセンサ取付筒14は、カバー37で覆われる。このカバー37は、下方へ開口する箱状であり、前記平板32にネジ38で取り付けられる。カバー37を設けることで、外気を遮断して、ヒータ5による加温を安定して行うことができる。
【0038】
排ガス路2の壁面への排ガス測定装置1の設置について説明すると、排ガス測定装置1には予め取付板39が設けられている。取付板39は、外パイプ8の先端部が通された状態で、外パイプ8の先端部に固定されている。この際、図2に示すように、抽出パイプ3を水平から設定角度αだけ傾斜させた状態で、取付板39が垂直に配置されるよう設けられる。これにより、排ガス路2の壁に取付板39を重ね合わせて取り付けた状態では、抽出パイプ3は、水平から設定角度αだけ傾斜した状態に配置される。この傾斜角度αは、特に問わないが、好ましくは数十度であり、且つ30度以上に設定するのが好ましい。本実施例では、30度に設定されている。水平状態に対し30度以上の角度で排ガス路2の壁から離隔するに従って上方へ傾斜するよう設けることで、排ガス測定装置1の使用時、水滴が表面張力により各パイプ8,9内に残留するのを確実に防止することができる。なお、取付板39は、ガスケット40を介して、排ガス路2の外壁に取り付けられる。
【0039】
このようにして、排ガス路2の壁に排ガス測定装置1を設置した状態では、外パイプ8および内パイプ9の双方が、排ガス路2内に連通する。外パイプ8および内パイプ9は、その先端部が排ガス路2内に連通すれば足り、それぞれ単に排ガス路2の壁面付近で開口させてもよいが、少なくとも内パイプ9は、その先端部を排ガス路2内に突入して設けるのが好ましい。これは、排ガス路2内を流れる排ガスの境界層の影響を受けないようにするためである。
【0040】
排ガス測定装置1の使用時、排ガスは、内パイプ9(取出し路6)内に導かれる。そして、内パイプ9の端部における折返し開口11にて、外パイプ8(戻し路7)へ導かれ、外パイプ8の先端部から排ガス路2へ戻される。この間、戻し路7の凹部13に設けた排ガスセンサ4により、一酸化炭素などの濃度が検知される。
【0041】
本実施例の排ガス測定装置1によれば、排ガスが通される抽出パイプ3の流路(取出し路6,戻し路7)そのものではなく、排ガスの戻し路7に設けた上方への凹部13に排ガスセンサ4を下方へ向けて逆さに設置するので、排ガスセンサ4に排ガス流が直接に当たることを防止して、流速による故障や測定誤差を防止することができる。
【0042】
また、排ガスセンサ4が設けられる抽出パイプ3は、排ガス路2の壁から斜め上方へ延出して設けられると共に、抽出パイプ3の戻し路7に設けた上方への凹部13に排ガスセンサ4を逆さに設置するので、抽出パイプ3や凹部13内への結露水の滞留を塞ぎ、排ガスの流路の閉塞を防止すると共に、排ガスセンサ4への浸水を防止することができる。
【0043】
さらに、ヒータ5に通電することで、排ガスセンサ4またはそれへの排ガスを加温して、排ガスセンサ4の近辺において、排ガスが露点温度を下回るのが防止される。つまり、温度が下がれば相対湿度は上がって露点に近づくので、排ガスセンサ4付近をヒータ5で加温して、特にセンサ取付筒14やセンサシース24内での結露水の発生や付着を防止する。本実施例では、ヒータ5は、PTCサーミスタを用いて、センサ取付筒14が所定温度を保つように加温する。
【0044】
この際、排ガスセンサ4のセンサシース24内の相対湿度が70%±10%になるように、ヒータ5による加温を行うのが好ましい。言い換えれば、設置環境温度や排ガス温度に拘わらず、排ガスセンサ4付近の相対湿度が70%±10%になるように、ヒータ5による加温目標温度が設定される。結露を防止するためには、ヒータ5により加温して相対湿度を下げるのがよいが、その反面、相対湿度を下げるのに伴い、ヒータ容量が増し、電源の確保や構成部品の耐熱性などに制約を生じる。ところが、相対湿度を70%±10%とするようにヒータ5で加温することで、そのような不都合を回避しつつ結露を防止することができる。
【0045】
排ガスセンサ4またはそれへの排ガスをヒータ5で加温することで、設置環境温度や排ガス温度に拘わらず、センサ部位において、排ガスが露点温度を下回ることなく、結露の発生を確実に防止することができる。設置環境温度や排ガス温度に左右されないので、寒冷地や、排ガス温度が低い箇所においても、排ガス測定装置1を設置することが可能となる。
【0046】
さらに、排ガスセンサ4の出力特性を安定させ、また一酸化炭素などの濃度を正確に検出することができる。また、仮にセンサシース24内の検知素子を直接に加温した場合、素子構成部材を均一に加温しなければ出力に影響を与え、誤った検出をするおそれがあるが、センサシース24よりも外側の空間から間接的に加温することで、測定誤差を防止することができる。
【0047】
本発明の排ガス測定装置1は、前記実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。特に、ヒータ5は、排ガスセンサ4またはそれへの排ガスを加温するのであれば、その構成、取付位置および取付方法を問わない。たとえば、前記実施例では、ヒータ5は、センサシース24がはめ込まれるセンサ取付筒14の外周部に設けたが、センサ取付筒14の内周部に設けたり、センサシース24の外周部に設けたり、あるいは、凹部13の直前(たとえば外パイプ8の端壁10からセンサ取付筒14までの間)における抽出パイプ3に設けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 排ガス測定装置
2 排ガス路
3 抽出パイプ
4 排ガスセンサ
5 ヒータ
6 取出し路
7 戻し路
8 外パイプ
9 内パイプ
10 端壁
11 折返し開口
13 凹部
14 センサ取付筒
15 中空穴
16 筒部
17 上フランジ
18 下フランジ
24 センサシース
25 センサフランジ
37 カバー
図1
図2
図3
図4