特許第6183651号(P6183651)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6183651-蓄電素子監視システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183651
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】蓄電素子監視システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20170814BHJP
【FI】
   H02J7/02 H
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-221346(P2013-221346)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-82957(P2015-82957A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉本 健太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 広和
(72)【発明者】
【氏名】時井 敦志
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 康貴
【審査官】 田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/120745(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/117503(WO,A1)
【文献】 特開平10−132633(JP,A)
【文献】 特開2000−124387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の監視ユニットと、
コントロールユニットと、
前記コントロールユニットに対して、前記複数の監視ユニットを直列に接続する通信ラインと、を備え、
前記コントロールユニットは、前記通信ラインを介して、前記複数の監視ユニットの少なくとも1つに指令を送信する指令送信処理を実行する構成を有し、
前記各監視ユニットは、蓄電素子に電気的に接続され、当該蓄電素子を監視し、前記指令に応じたデータを、前記通信ラインを介して、前記コントロールユニットに送信する結果送信処理を実行する構成を有し、前記監視ユニットは、前記通信ラインに接続され、前記蓄電素子とは電気的に絶縁された状態で通信を行う絶縁型インタフェースと、前記絶縁型インタフェースが設けられ、前記絶縁型インタフェースの入力側と出力側との間にスリットが形成された基板とを有し、
前記通信ラインは、前記蓄電素子とは電気的に絶縁されており、
前記通信ラインに電力を供給する電力供給部が、前記コントロールユニットに備えられており、
前記コントロールユニットは、外部電源から供給される電力を降圧させる変換回路を備え、
前記コントロールユニットは、前記変換回路を介して電力が供給され、前記電力供給部は、前記変換回路を介さずに前記外部電源から直接電力が供給される、蓄電素子監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
蓄電素子の状態を監視するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、直列接続された複数の電池セルを一組として複数組が直列結合されてなるバッテリパックの充放電監視装置がある。この充電状態制御装置は、各組の電池セルの電圧変動を監視する複数の半導体集積回路ユニットと、制御部とを備える。上記複数の半導体集積回路ユニットは、通信ラインによって、制御部に対して直列に接続されている。制御部から制御データが一の半導体集積回路ユニットに送信されると、一の半導体集積回路ユニットから他の半導体集積回路ユニットへと順次、各監視データが受け渡されて、制御部に送信される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−153596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記充放電監視装置のような構成では、半導体集積回路ユニット側は、監視対象の蓄電素子の電圧に依存する一方、制御部側は、蓄電素子の電圧に依存しないように半導体集積回路ユニット側とは電気的に絶縁するのが一般的である。しかし、従来の構成では、半導体集積回路ユニット間のデータの受け渡しは、制御部側とは絶縁され、かつ、蓄電素子に電気的に接続された通信ラインを介して行うようになっている。このため、半導体集積回路ユニット間の通信ラインまで蓄電素子の電圧に依存してしまい、例えば、蓄電素子の電圧を受けて、高電圧となることで、安全性、信頼性が問題になる。また、例えば、1か所でも蓄電素子等の外部電源と接続すると、ノイズが乗ってしまうといった問題があった。
【0005】
本明細書では、半導体集積回路ユニット等の監視ユニット間の通信ラインまで蓄電素子の電圧に依存してしまうことを抑制することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される蓄電素子監視システムは、複数の監視ユニットと、コントロールユニットと、前記コントロールユニットに対して、前記複数の監視ユニットを直列に接続する通信ラインと、を備え、前記コントロールユニットは、前記通信ラインを介して、前記複数の監視ユニットの少なくとも1つに指令を送信する指令送信処理を実行する構成を有し、前記各監視ユニットは、蓄電素子に電気的に接続され、当該蓄電素子を監視し、前記指令に応じたデータを、前記通信ラインを介して、前記コントロールユニットに送信する結果送信処理を実行する構成を有し、前記通信ラインは、前記蓄電素子とは電気的に絶縁されている。
【発明の効果】
【0007】
本明細書によって開示される発明によれば、監視ユニット間の通信ラインまで蓄電素子の電圧に依存してしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係るバッテリのブロック図
図2】データの受け渡しのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態の概要)
本明細書によって開示される蓄電素子監視システムは、複数の監視ユニットと、コントロールユニットと、前記コントロールユニットに対して、前記複数の監視ユニットを直列に接続する通信ラインと、を備え、前記コントロールユニットは、前記通信ラインを介して、前記複数の監視ユニットの少なくとも1つに指令を送信する指令送信処理を実行する構成を有し、前記各監視ユニットは、蓄電素子に電気的に接続され、当該蓄電素子を監視し、前記指令に応じたデータを、前記通信ラインを介して、前記コントロールユニットに送信する結果送信処理を実行する構成を有し、前記通信ラインは、前記蓄電素子とは電気的に絶縁されている。
【0010】
この蓄電素子監視システムによれば、通信ラインは蓄電素子とは電気的に絶縁されているため、監視ユニット間の通信ラインまで蓄電素子の電圧に依存してしまうことを抑制することができる。
【0011】
上記蓄電素子監視システムでは、前記通信ラインに電力を供給する電力供給部が、前記コントロールユニットに備えられていてもよい。
【0012】
各監視ユニットの全ての中に通信ライン用の電力供給部を設けると、コストの問題や、素子が過剰に増えることでのシステムの信頼性が低下するおそれがある。監視ユニットのどれか一つに電力供給部を設ける構成であると、通信に関する構成の共通化を阻害し得る。この蓄電素子監視システムによれば、監視ユニットに電力供給部が備えられている構成に比べて、システムの信頼性を向上させることができる。
【0013】
上記蓄電素子監視システムでは、前記監視ユニットは、前記通信ラインに接続され、前記蓄電素子とは電気的に絶縁された状態で通信を行う絶縁型インタフェースと、前記絶縁型インタフェースが設けられ、前記絶縁型インタフェースの入力側と出力側との間にスリットが形成された基板とを有していてもよい。
【0014】
この蓄電素子監視システムによれば、スリットが設けられていない構成に比べて、絶縁型インタフェースの入力側と出力側との間の沿面距離が長くなり、絶縁型インタフェースの絶縁性が向上する。
【0015】
上記蓄電素子監視システムでは、前記コントロールユニットは、外部電源から供給される電力を降圧させる変換回路を備え、前記コントロールユニットは、前記変換回路を介して電力が供給され、前記電力供給部は、前記変換回路を介さずに前記外部電源から直接電力が供給されてもよい。
【0016】
この蓄電素子の監視システムによれば、電力供給部は、変換回路を介さずに外部電源から直接電力が供給されるため、変換エネルギーのロスを抑制しつつ、通信ラインに電力を供給することができる。
【0017】
<一実施形態>
一実施形態について図1図2を参照しつつ説明する。図1に示すように、本実施形態のバッテリ1は、例えば鉄道車両等に搭載され、電気エネルギーで作動する動力源に電力を供給するものである。
【0018】
(バッテリの構成)
バッテリ1は、複数の組電池12と、複数の組電池12を監視する監視システム4とを備える。各組電池12は、蓄電素子の一例であり、複数のセルCNが直列接続された構成である。各セルCNは、繰り返し充電可能な二次電池であり、具体的にはリチウムイオン電池である。なお、図1および以下の説明では、各組電池12は、10個のセルC1〜C10を有するものとする。
【0019】
各組電池12は、直列に接続されており、鉄道車両等に搭載された充電器18または、鉄道車両等の内部に設けられた動力源等の負荷18に接続される。
【0020】
(監視システムの構成)
監視システム4は、各組電池12を監視する複数のセルセンサ(以下、CS)200と、各CS200を管理するバッテリーマネージャー(以下、BM)100とを有する。BM100は、コントロールユニットの一例であり、CS200は、監視ユニットの一例である。また、監視システム4は、蓄電素子監視システムの一例である。
【0021】
(BMの構成)
BM100は、制御部110、電源部120、絶縁用DCDCコンバータ130、通信部140を備える。図1に示すように、制御部110は、中央処理装置(以下、CPU)110A、メモリ110Bを有する。メモリ110Bには、制御部110の動作を制御するための各種のプログラムが記憶されており、CPU110Aは、メモリ110Bから読み出したプログラムに従って、通信部140を制御する。メモリ110Bは、RAMやROMを有する。なお、上記各種のプログラムが記憶される媒体は、RAM等以外に、CD−ROM、ハードディスク装置、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリでもよい。
【0022】
電源部120は、外部電源Eの電圧(例えば24V)を、CPU110Aや通信部140が駆動可能な電圧(例えば5V)に降圧し、CPU110Aや通信部140に電力を供給する。電源部120は、リニア型のボルテージレギュレータでもDCDCコンバータでもよい。なお、電源部は、変換回路の一例である。
【0023】
絶縁用DCDCコンバータ130は、外部電源Eの電圧(例えば24V)を、一定の電圧(例えば5V)に降圧する。絶縁用DCDCコンバータ130は、高電位(例えば5V)側が、高電位ポート130Aと接続されており、低電位(例えばGND)側が、低電位ポート130Bと接続されている。降圧された電圧は、高電位ポート130Aや、後述するBM側送信用フォトカプラ140Aに電力として供給される。なお、絶縁用DCDCコンバータ130は、電力供給部の一例である。
【0024】
絶縁用DCDCコンバータ130は、1組のトランスによって完全に絶縁されている。これにより、絶縁用DCDCコンバータ130は、外部電源Eと、高電位ポート130Aおよび低電位ポート130Bと、を電気的に絶縁させ、外部電源Eの影響を受けずに安定的に高電位ポート130Aおよび低電位ポート130Bに電力を供給する。
【0025】
通信部140は、BM側送信用フォトカプラ140A、およびBM側受信用フォトカプラ140Bを備える。
【0026】
BM側送信用フォトカプラ140Aは、ダイオード151とドランジスタ152とを有する。ダイオード151はCPU110Aに接続され、CPU110Aからの信号をトランジスタ152に受け渡す。ドランジスタ152は、送信ポート152Aと送信ポート152Bとに接続されている。ドランジスタ152は、ダイオード151から受け渡されたCPU110Aからの信号を、送信ポート152Aと送信ポート152Bとに受け渡す。なお、トランジスタ152は、絶縁用DCDCコンバータ130によってプルアップされている。
【0027】
BM側受信用フォトカプラ140Bは、トランジスタ161とダイオード162とを有する。トランジスタ161はCPU110Aに接続され、ダイオード162からの信号をCPU110Aに受け渡す。ダイオード162は、受信ポート162Aと受信ポート162Bとに接続されている。ダイオード162は、受信ポート162Aと受信ポート162Bとから受け渡された信号を、トランジスタ161に受け渡す。
【0028】
(CSの構成)
CS200は、電源回路210、処理実行部220、センサユニット230、および送受信部240を有する。
【0029】
電源回路210は、各組電池12の電圧(例えば40V)を、処理実行部220、センサユニット230、および送受信部240が駆動可能な電圧(例えば5V)に降圧し、電力として供給する。電源回路210は、リニア型のボルテージレギュレータでもDCDCコンバータでもよい。
【0030】
処理実行部220は、中央処理装置(以下、CPU)220A、メモリ220Bを有する。メモリ220Bには、処理実行部220の動作を制御するための各種のプログラムが記憶されており、CPU220Aは、メモリ220Bから読み出したプログラムに従って、センサユニット230の各センサ、および送受信部240を制御する。メモリ220Bは、RAMやROMを有する。なお、上記各種のプログラムが記憶される媒体は、RAM等以外に、CD−ROM、ハードディスク装置、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリでもよい。
【0031】
センサユニット230は、図示しない電圧測定回路と温度測定回路とを有する。電圧測定回路は、各組電池12に含まれる各セルC1〜C10の両端に接続され、各セルC1〜C10の両端間の電圧V[V]を、処理実行部220からの指示に基づいて測定する。温度測定回路は、接触式あるいは非接触式で組電池12に含まれる各セルC1〜C10の温度TD[℃]を、処理実行部220からの指示に基づいて測定する。
【0032】
送受信部240は、絶縁型インタフェースの一例であり、起動回路240A、受信回路240B、および送信回路240Cを備える。起動回路240Aは、起動用フォトカプラ250を有し、起動用フォトカプラ250は、トランジスタ251とダイオード252とを有する。トランジスタ251は、後述するスイッチSWに接続される。ダイオード252は、起動ポート252Aと起動ポート252Bとに接続されている。ダイオード252は、起動ポート252Aと起動ポート252Bとから受け渡された信号を、トランジスタ251に受け渡す。
【0033】
スイッチSWは、例えばPchのMOSFETである。トランジスタ251のコレクタは、スイッチSWのゲートに接続されている。また、スイッチSWのソース側に各組電池12が接続され、スイッチSWのドレイン側に電源回路210が接続されている。
【0034】
このため、スイッチSWが導通すれば、各組電池12と電源回路210とが導通し、電源回路210は、処理実行部220、センサユニット230、および送受信部240に電力を供給することができる。一方、スイッチSWの導通が停止すれば、各組電池12と電源回路210の導通が停止し、電源回路210は、処理実行部220、センサユニット230、および送受信部240に電力を供給できなくなる。
【0035】
受信回路240Bは、CS側受信用フォトカプラ260を有する。CS側受信用フォトカプラ260は、トランジスタ261とダイオード262とを有する。トランジスタ261は、CPU220Aに接続され、ダイオード262からの信号をCPU220Aに受け渡す。ダイオード262は、受信ポート262Aと受信ポート262Bとに接続されている。ダイオード262は、受信ポート262Aと受信ポート262Bとから受け渡された信号を、トランジスタ261に受け渡す。
【0036】
送信回路240Cは、CS側送信用フォトカプラ270を有する。CS側送信用フォトカプラ270は、ダイオード271とドランジスタ272とを有する。ダイオード271は、スイッチSTを介してCPU220Aに接続され、CPU220Aからの信号をトランジスタ272に受け渡す。
【0037】
ドランジスタ272は、送信ポート272A、送信ポート272B、信号ポート273A、および信号ポート273Bに接続されている。ドランジスタ272は、ダイオード271から受け渡されたCPU220Aからの信号を、送信ポート272Aと送信ポート272Bとに受け渡す。
【0038】
信号ポート273Aは、CS200内で、起動ポート252Aと接続されている。また、信号ポート273Bは、CS200内で、起動ポート252Bと接続されている。このため、信号ポート273Aと起動ポート252A、および信号ポート273Bと起動ポート252Bとは同電位となる。
【0039】
(BMと最上位のCSとの接続)
図1に示すように、BM100と最上位のCS200とは、通信ラインTLおよび電源ラインDLによって接続されている。具体的には、第1通信ラインTL1、第2通信ラインTL2、第1電源ラインDL1、第2電源ラインDL2の4本によって接続されている。なお、通信ラインTL、電源ラインDLは、通信ラインの一例である。
【0040】
より詳細には、第1通信ラインTL1によって、送信ポート152Aと受信ポート262Aとが接続され、第2通信ラインTL2によって、送信ポート152Bと受信ポート262Bとが接続される。上述したように、送信ポート152A、送信ポート152Bには、BM側送信用フォトカプラ140Aが接続されており、受信ポート262A、受信ポート262Bには、CS側受信用フォトカプラ260が接続されている。このため、通信ラインTLによって、BM側送信用フォトカプラ140AとCS側受信用フォトカプラ260とが接続される。
【0041】
したがって、制御部110からの指令が、通信ラインTLを介して、処理実行部220に受け渡される。
【0042】
また、第1電源ラインDL1によって、高電位ポート130Aと起動ポート252Aとが接続され、第2電源ラインDL2によって、低電位ポート130Bと起動ポート252Bとが接続される。上述したように、高電位ポート130A、低電位ポート130Bには、絶縁用DCDCコンバータ130が接続されており、起動ポート252A、起動ポート252Bには、起動回路240Aが接続されている。このため、電源ラインDLによって、絶縁用DCDCコンバータ130と起動回路240Aとが接続される。
【0043】
したがって、絶縁用DCDCコンバータ130からの信号が、電源ラインDLを介して、起動回路240Aに受け渡され、当該信号によって、各組電池12と電源回路210が導通したり、導通が停止したりする。
【0044】
上述したように、BM100側は、BM側送信用フォトカプラ140Aによって、外部電源Eと、送信ポート152Aおよび送信ポート152Bと、を電気的に絶縁させている。かつ、トランジスタ152は、絶縁用DCDCコンバータ130によってプルアップされているため、送信ポート152Aおよび送信ポート152Bは、外部電源Eの影響を受けない。
【0045】
また、BM100側は、絶縁用DCDCコンバータ130によって、外部電源Eと、高電位ポート130Aおよび低電位ポート130Bと、を電気的に絶縁させている。このため、高電位ポート130Aおよび低電位ポート130Bは、外部電源Eの影響を受けない。
【0046】
一方、CS200側は、CS側受信用フォトカプラ260によって、各組電池12と、受信ポート262Aおよび受信ポート262Bと、を電気的に絶縁させている。また、起動用フォトカプラ250によって、各組電池12と、起動ポート252Aおよび起動ポート252Bと、を電気的に絶縁させている。このため、受信ポート262Aおよび受信ポート262B、起動ポート252Aおよび起動ポート252Bは、各組電池12の影響を受けない。
【0047】
したがって、通信ラインTLおよび電源ラインDLが、外部電源Eおよび各組電池12の電圧に依存することなく、BM100からCS200へ指令や信号の受け渡しができる。
【0048】
(BMと最下位のCSとの接続)
図1に示すように、BM100と最下位のCS200とは、通信ラインTLおよび電源ラインDLによって接続されている。具体的には、第1通信ラインTL1、第2通信ラインTL2、第1電源ラインDL1、第2電源ラインDL2の4本によって接続されている。
【0049】
より詳細には、第1通信ラインTL1によって、送信ポート272Aと受信ポート162Aとが接続され、第2通信ラインTL2によって、送信ポート272Bと受信ポート162Bとが接続される。上述したように、送信ポート272A、送信ポート272Bには、CS側送信用フォトカプラ270が接続されており、受信ポート162A、受信ポート162Bには、BM側受信用フォトカプラ140Bが接続されている。このため、通信ラインTLによって、CS側送信用フォトカプラ270とBM側受信用フォトカプラ140Bとが接続される。
【0050】
また、第1電源ラインDL1によって、高電位ポート130Aと信号ポート273Aとが接続され、第2電源ラインDL2によって、低電位ポート130Bと信号ポート273Bとが接続される。上述したように、高電位ポート130A、低電位ポート130Bには、絶縁用DCDCコンバータ130が接続されており、信号ポート273A、信号ポート273Bには、CS側送信用フォトカプラ270が接続されている。このため、電源ラインDLによって、絶縁用DCDCコンバータ130とCS側送信用フォトカプラ270とが接続される。
【0051】
上述したように、BM100側は、BM側受信用フォトカプラ140Bによって、外部電源Eと、受信ポート162Aおよび受信ポート162Bと、を電気的に絶縁させている。
【0052】
また、BM100側は、絶縁用DCDCコンバータ130によって、外部電源Eと、高電位ポート130Aおよび低電位ポート130Bと、を電気的に絶縁させている。このため、高電位ポート130Aおよび低電位ポート130Bは、外部電源Eの影響を受けない。
【0053】
一方、CS200側は、CS側送信用フォトカプラ270によって、各組電池12と、送信ポート272Aおよび送信ポート272Bと、を電気的に絶縁させている。また、同様にCS側送信用フォトカプラ270によって、各組電池12と、信号ポート273Aおよび信号ポート273Bと、を電気的に絶縁させている。このため、送信ポート272Aおよび送信ポート272B、信号ポート273Aおよび信号ポート273Bは、各組電池12の影響を受けない。
【0054】
したがって、通信ラインTLおよび電源ラインDLが、外部電源Eおよび各組電池12の電圧に依存することなく、CS200からBM100へ指令や信号の受け渡しができる。
【0055】
(CSとCSとの接続)
図1に示すように、各CS200同士は、通信ラインTLおよび電源ラインDLによって接続されている。具体的には、第1通信ラインTL1、第2通信ラインTL2、第1電源ラインDL1、第2電源ラインDL2の4本によって接続されている。
【0056】
より詳細には、第1通信ラインTL1によって、送信ポート272Aと受信ポート262Aとが接続され、第2通信ラインTL2によって、送信ポート272Bと受信ポート262Bとが接続される。上述したように、送信ポート272A、送信ポート272Bには、CS側送信用フォトカプラ270が接続されており、受信ポート262A、受信ポート262Bには、CS側受信用フォトカプラ260が接続されている。このため、通信ラインTLによって、CS側送信用フォトカプラ270とCS側受信用フォトカプラ260とが接続される。
【0057】
また、第1電源ラインDL1によって、信号ポート273Aと起動ポート252Aとが接続され、第2電源ラインDL2によって、信号ポート273Bと起動ポート252Bとが接続される。上述したように、信号ポート273A、信号ポート273Bには、CS側送信用フォトカプラ270が接続されており、起動ポート252A、起動ポート252Bには、起動用フォトカプラ250が接続されている。このため、電源ラインDLによって、CS側送信用フォトカプラ270と起動用フォトカプラ250とが接続される。
【0058】
上述したように、CS200側は、CS側送信用フォトカプラ270によって、各組電池12と、送信ポート272Aおよび送信ポート272Bと、を電気的に絶縁させている。また、CS側受信用フォトカプラ260によって、各組電池12と、受信ポート262Aおよび受信ポート262Bと、を電気的に絶縁させている。このため、送信ポート272Aおよび送信ポート272B、受信ポート262Aおよび受信ポート262Bは、各組電池12の影響を受けない。
【0059】
一方、CS側送信用フォトカプラ270によって、各組電池12と、信号ポート273Aおよび信号ポート273Bと、を電気的に絶縁させている。また、起動用フォトカプラ250によって、各組電池12と、起動ポート252Aおよび起動ポート252Bと、を電気的に絶縁させている。このため、信号ポート273Aおよび信号ポート273B、起動ポート252Aおよび起動ポート252Bは、各組電池12の影響を受けない。
【0060】
したがって、通信ラインTLおよび電源ラインDLが、各組電池12の電圧に依存することなく、各CS200同士で指令や信号の受け渡しができる。
【0061】
以上から、通信ラインTLおよび電源ラインDLが、外部電源Eおよび各組電池12の電圧に依存することなく、各CS200同士間やCS200とBM100との間で指令や信号の受け渡しができる。
【0062】
なお、CS側送信用フォトカプラ270、CS側受信用フォトカプラ260および起動用フォトカプラ250が、例えば基板上にそれぞれ備えられている場合、各フォトカプラの入力側と出力側との間の基板にスリットが設けられているほうが望ましい。大規模の蓄電システムになると、例えば、数百ボルト以上の高電圧が各フォトカプラにかかってしまう。この場合、通常のフォトカプラを用意するだけでは、高電圧に対抗できる基板上の沿面距離が稼げず、絶縁が取れない。そこで、スリットを設けることで、各フォトカプラの入力側と出力側との沿面距離が長くなり、各フォトカプラの絶縁性を増やすことができる。
【0063】
(データの受け渡しについて)
監視システム4では、CPU110Aからの指令に基づき、一のCS200から隣接する他のCS200へ、順次指令を受け渡していく。
【0064】
具体的には、図2に示す通り、CPU110Aは、各組電池12の監視指令等の各種の指令をCS200へ送信するか否かを判断する(S1)。CPU110Aは、各組電池12の監視指令等の各種の指令をCS200へ送信すると判断した場合(S1:YES)、通信ラインTLを介して一のCS200に送信する送信処理(指令送信処理の一例)を実行する。この場合、その一のCS200が当該指令を受信し、処理実行部220は、例えば各セルC1〜C10の電圧Vや温度TDを測定する等、受信した指令に基づく処理を実行する(S2)。その後、一のCS200の処理実行部220は、次の順位のCS200に監視指令等の各種の指令と、上記指令に応じたデータである、組電池12の状態の結果データとを送信する送信処理(結果送信処理の一例)を実行する(S3)。
【0065】
CPU110Aは、送信処理で各組電池12へ送信した監視指令等の各種の指令を受信したか否かを判断する(S4)。CPU110Aは、各種の指令を受信していないと判断した場合(S4:NO)、各種の指令が次の順位のCS200で実行されるため、S2、S3の処理が繰り返される。一方、CPU110Aは、各種の指令を受信したと判断した場合(S4:YES)、全てのCS200へ各種の指令の受け渡しが完了したと判断して、指令の受け渡しを終了する。
【0066】
このように、処理実行部220は、受け取った指令に基づいて処理を実行し、処理を実行した後、下位のCS200へ指令を受け渡す。そしてこのような指令の受け渡しが各CS200間で繰り返されることで、全てのCS200にBM100からの指令の受け渡しが完了する。CS200は、受信した指令を、受信した指令に基づく処理を実行した後で、次の順位のCS200に指令を送信するため、最下位のCS200に指令の受け渡しが完了するまでに時間が掛かる。
【0067】
一方、監視システム4では、例えばCS200の起動指令や停止指令など、緊急を要する指令をBM100からCS200へ受け渡す場合、上述した指令の受け渡しとは別の方式で指令を受け渡す。
【0068】
具体的には、図2に示す通り、CPU110Aは、各組電池12の監視指令等の各種の指令をCS200へ送信すると判断した場合、即ち、組電池12の起動指令等の緊急の指令をCS200へ送信すると判断した場合(S1:NO)、電源ラインDLを介して一のCS200に送信する送信処理を実行する。
【0069】
この場合、その一のCS200の起動回路240Aが当該指令を受信し、処理実行部220を起動状態とする処理を実行する(S5)。そして、処理実行部220は、受け取った指令に基づいて処理の実行を完了したか否かに関わらず、次の順位のCS200に指令を送信する。このため、処理実行部220が、受信した指令に基づく処理を実行した後で、次の順位のCS200に指令を送信する方式に比べて、全てのCS200に指令の受け渡しが完了するまでに時間が掛かることを抑制することができる。
【0070】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、BM100は、絶縁用DCDCコンバータ130と通信部140とを備える。絶縁用DCDCコンバータ130は、外部電源Eと電源ラインDLとを電気的に絶縁させ、外部電源Eの影響を受けずに安定的に電源ラインDLに電力を供給させる。通信部140は、BM側送信用フォトカプラ140A、およびBM側受信用フォトカプラ140Bを備え、外部電源Eと通信ラインTLとを電気的に絶縁させる。一方、CS200は、送受信部240を備える。送受信部240は、CS側送信用フォトカプラ270と、CS側受信用フォトカプラ260とを有し、通信ラインTLおよび電源ラインDLを介してBM100と接続されている。このため、通信ラインTLおよび電源ラインDLは、各組電池12とは電気的に絶縁された状態で、BM100とCS200とを接続している。したがって、通信ラインTLおよび電源ラインDLが、外部電源Eおよび各組電池12の電圧に依存することなく、各CS200同士間やCS200とBM100との間で指令や信号の受け渡しができる。
【0071】
また、送受信部240は、各組電池12の電圧に依存することなく指令の受け渡しが可能となるため、高電圧である各組電池12から電力を供給する構成に比べて、耐圧の高い部品を使用したり、高電圧でない回路との接触を避けるため、配線の引き回しに制限が加えられたりという不都合を解消することができる。
【0072】
また、送受信部240は、各組電池12の電圧に依存することなく指令の受け渡しが可能となるため、組電池12の電圧が異常となった場合であっても、データの受け渡しには影響が及ばず、組電池12が異常であることを正しくBM100に伝えることができる。
【0073】
また、図1に示すように、絶縁用DCDCコンバータ130と最上位のCS200とを接続する電源ラインDL、各CS200同士を接続する電源ラインDL、および最下位のCS200と絶縁用DCDCコンバータ130とを接続する電源ラインDLによって、絶縁用DCDCコンバータ130と各CS200とは、全体としてリング状に接続されている。このため、各CS200で指令の受け渡しによる電圧低下を抑制することができる。
【0074】
また、絶縁用DCDCコンバータ130は、外部電源の電圧(例えば24V)を、一定の電圧(例えば5V)に降圧する。高電位(例えば5V)側が、高電位ポート130Aと接続されており、低電位(例えばGND)側が、低電位ポート130Bと接続されている。降圧された電圧は、高電位ポート130Aや、BM側送信用フォトカプラ140Aに電力として供給される。このため、外部電源Eから供給される電力を、電源部120によって変換された後の電圧を、更に変換する構成に比べて、変換エネルギーのロスを抑制することができる。また、変換エネルギーのロスを抑制することができるため、1つの絶縁用DCDCコンバータ130で、BM側送信用フォトカプラ140Aのみならず、高電位ポート130Aおよび低電位ポート130Bに繋がる電源ラインDLに十分な電力を供給することができ、電源ラインDLを共通化することができる。
【0075】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
【0076】
上記実施形態では、BM100は、1つのCPUとメモリを有する構成であった。しかし、BM100は、これに限らず、複数のCPUを備える構成や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハード回路を備える構成や、ハード回路及びCPUの両方を備える構成でもよい。
【0077】
上記実施形態では、スイッチSWは、PchのMOSFETである例を挙げた。しかしこれに限らず、例えばバイポーラトランジスタや、MOSFETなどの半導体素子であってもよく、また、通常はクローズ状態であり、オープン指令信号を与えた場合に限りオープン状態になるノーマルクローズタイプでもよい。
【0078】
上記実施形態では、蓄電素子として、複数のセルが直列接続された組電池12を例に挙げた。しかしこれに限らず、蓄電素子は、1つのセルからなる単電池でもよく、複数のセルが並列接続されたものでもよい。また、蓄電素子が複数のセルを有する場合、セル数は、2つ、3つ、4つ以上でもよく、セル数は適宜変更可能である。また、蓄電素子は、鉛電池、マンガン系リチウムイオン電池など他の二次電池でもよい。更に、蓄電素子は、二次電池に限らず、キャパシタでも電気二重層コンデンサでもよい。
【0079】
上記実施形態では、送受信部240は、CS側送信用フォトカプラ270と、CS側受信用フォトカプラ260とを備える例を挙げた。しかしこれに限らず、送受信部240は、2組の極板の間に絶縁体を挟み、極板の電圧を変化させることで指令の受け渡しを実現してもよい。要するに、絶縁性が保たれたまま、指令の受け渡しが実現できればよい。
【0080】
上記実施形態では、CS側受信用フォトカプラ260は、1つで構成されている例を挙げた。しかしこれに限らず、CS側受信用フォトカプラ260は2つ以上の複数でもよい。
【0081】
上記実施形態では、CS200は2つまたは3つである構成を例に挙げた。しかしこれに限らず、CS200は、4つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
1:バッテリ 12:組電池 100:BM 130:絶縁型DCDCコンバータ 200:CS 220:処理実行部 DL:電源ライン TL:通信ライン
図1
図2