特許第6183665号(P6183665)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183665
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/11 20060101AFI20170814BHJP
   H01R 13/115 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H01R13/11 A
   H01R13/115
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-154812(P2015-154812)
(22)【出願日】2015年8月5日
(65)【公開番号】特開2017-33853(P2017-33853A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2016年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 圭史
(72)【発明者】
【氏名】水谷 嘉宏
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−002077(JP,A)
【文献】 特開平8−321343(JP,A)
【文献】 実開平5−053146(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/11
H01R 13/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁、前記底壁の両側縁から立ち上げられた形状をなす一対の側壁、および前記底壁に対向する位置に配された天井壁によって構成された角筒部と、
前記角筒部の内部に設けられ、前記底壁の前縁または後縁から折り返された形状をなす接触部と、
前記角筒部の前端部に設けられ、前記接触部の折り返し部を前方から覆う位置に配された前方覆い壁と、
前記前方覆い壁の下縁に設けられ、前後方向において前記底壁と重複する位置まで突出する形態をなす突出部と、
前記側壁と面一をなし、前記前方覆い壁と前記側壁を連結する位置に設けられ、前記突出部の下端よりも上方に位置する連結壁とを備えた端子。
【請求項2】
前記連結壁の周囲に、スリットが形成されている請求項1に記載の端子。
【請求項3】
前記前方覆い壁の下縁と連結壁の下縁とは、上下方向において同じ高さに位置している請求項1または請求項2に記載の端子。
【請求項4】
前記突出部は、前記前方覆い壁の下縁から斜め後方に延びる形態をなしている請求項1に記載の端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、端子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、底壁と、底壁の両側にそれぞれ直立する第一と第二の側壁と、底壁の第一延長部と第二延長部とをそれぞれ内方にU字形に折り曲げ、第二の延長部の先端を第一の延長部の上方に重なるばね接触部としたソケット・コンタクトとして実開平5−53146号公報(下記特許文献1)に記載のものが知られている。第一の側壁と第二の側壁の前端には、一対のタブが各側壁に対して直角をなし、先端同士を突き合わせた状態で設けられている。これらのタブによってばね接触部が前方から囲まれており、ばね接触部が外力によって損傷するおそれがないものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−53146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のソケット・コンタクトでは、タブから後方に連なる部分(ソケット・コンタクトのコネクタキャビティに対する挿入方向に延びる壁部)の下端が、底壁の下面とほぼ同じ高さに位置するため、ソケット・コンタクトをコネクタキャビティに挿入する際に、コネクタキャビティを構成する壁面を傷付けるおそれがある。特に防水コネクタにおいては、コネクタキャビティの壁面のうちシール面を傷付けてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書によって開示される端子は、底壁、前記底壁の両側縁から立ち上げられた形状をなす一対の側壁、および前記底壁に対向する位置に配された天井壁によって構成された角筒部と、前記角筒部の内部に設けられ、前記底壁の前縁または後縁から折り返された形状をなす接触部と、前記角筒部の前端部に設けられ、前記接触部の折り返し部を前方から覆う位置に配された前方覆い壁と、前記前方覆い壁の下縁に設けられ、前後方向において前記底壁と重複する位置まで突出する形態をなす突出部と、前記側壁と面一をなし、前記前方覆い壁と前記側壁を連結する位置に設けられ、前記突出部の下端よりも上方に位置する連結壁とを備えた構成とした。
【0006】
このような構成によると、端子をコネクタハウジング内に挿入する際に、コネクタハウジングの内面に突出部が接触しても、連結壁の下縁が内面に接触することはない。ここで、突出部が内面に接触しながら端子の挿入が行われる状態は、カッターナイフの刃を切断方向と直交する方向に動かすのと同じ状態であり、内面が傷付くことはない。一方、連結壁の下縁が内面に接触しながら端子の挿入が行われる状態は、カッターナイフの刃を切断方向に動かすのと同じ状態であるため、内面が傷付きやすい。したがって、上記のように連結壁の下縁が内面に接触しないようにすることによって内面が傷付くことを防止できる。
【0007】
本明細書によって開示される端子は、以下の構成としてもよい。
前記連結壁の周囲に、スリットが形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、連結壁と側壁の間で互いに応力が伝わることを抑制できる。
【0008】
前記前方覆い壁の下縁と連結壁の下縁とは、上下方向において同じ高さに位置している構成としてもよい。
このような構成によると、突出部がコネクタハウジングの内面に接触した状態では連結壁の下縁とコネクタハウジングの内面との間に突出部の高さ寸法に相当する隙間を確保できる。
【0009】
前記突出部は、前記前方覆い壁の下縁から斜め後方に延びる形態をなしている構成としてもよい。
このような構成によると、突出部がコネクタハウジングの内面に接触しながら端子の挿入が行われた場合に、内面がより傷付きにくくなる。
【発明の効果】
【0010】
本明細書によって開示される端子によれば、連結壁の下縁がコネクタハウジングの内面に接触しないようにすることによって内面が傷付くことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1における端子の斜視図
図2】端子の正面図
図3】端子の背面図
図4】端子の側面図
図5図2におけるA−A線断面図
図6】コネクタハウジング内に端子が挿入され、かつ、相手端子が端子に接続された状態を示した断面図
図7】端子の展開状態を一部示した図
図8】実施形態2における端子の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
実施形態1を図1から図7の図面を参照しながら説明する。本実施形態の端子10は、図1および図6に示すように、雄端子50と接続可能な雌端子とされている。端子10は、雄端子50と接続可能な端子接続部20と、図示しない電線と接続可能な電線接続部40とを備えて構成され、このうち電線接続部40は、電線の芯線に圧着されるワイヤバレル41と、電線の絶縁被覆に圧着されるインシュレーションバレル42とから構成されている。端子接続部20の後方にワイヤバレル41が配され、ワイヤバレル41の後方にインシュレーションバレル42が配されている。
【0013】
ワイヤバレル41の内面には、全体として綾目状をなす複数の凹部41Aが形成されている。一方、インシュレーションバレル42の内面には、凹部41Aよりも大きく、かつ、単一の凹部42Aが形成されている。これらの凹部41A、42Aによって電線と電線接続部40との接続信頼性を向上させることができる。
【0014】
端子接続部20は、図2に示すように、底壁21A、底壁21Aの両側縁から立ち上げられた形状をなす一対の側壁21B、および底壁21Aに対向する位置に配された天井壁21Cによって角筒状に構成された角筒部21と、角筒部21の内部に設けられ、底壁21Aの前縁から折り返された形状をなす接触部22とを備えて構成されている。
【0015】
図1に示すように、角筒部21の天井壁21Cの上面には、前後一対の突起部21Dが設けられている。前側の突起部21Dには図示しないランスが後方から係止するようになっており、これによって端子10がコネクタハウジング60内に固定され、端子10が後方へ移動することが抑制される。また、後側の突起部21Dは、端子10をコネクタハウジング60内に挿入する際の案内を行う機能を有している。
【0016】
図5に示すように、突起部21Dには、台座21Eが一体に設けられており、この台座21Eには、下方に凹んだ形状をなす当接部21Fが設けられている。この当接部21Fが天井壁21Cの上面に当接している。一方、天井壁21Cの上面における前後一対の当接部21Fの間には、下方に凹んだ形状をなす受け部21Gが設けられている。これにより、天井壁21Cの剛性が高くなっており、相手端子50と端子10が接続した際に、相手端子50を受け部21Gによって受けることが可能になる。
【0017】
接触部22は、底壁21Aの前縁から後方に向かって片持ち状に延びる形態をなしている。接触部22は、接点部22Aを有しており、底壁21Aの前縁から接点部22Aにかけての部分22Bは斜め後方に延びる形態をなし、接点部22Aから後方の部分22Cは底壁21Aと平行をなして後方に延びる形態をなしている。接点部22Aから後方の部分22Cは、補助ばね23によって支持されるようになっている。この補助ばね23は、底壁21Aに開口して形成された開口21Hの後縁から前方に向かって片持ち状に延びる形態をなしている。また、接点部22Aの下方には、過度撓み防止部24が設けられている。この過度撓み防止部24は、開口21Hの前縁から上方に立ち上げられた形状とされている。
【0018】
このため、接触部22が下方に押されて、後方の部分22Cが補助ばね23に接触するまでは小さな荷重で接触部22が撓むようになっており、後方の部分22Cが補助ばね23に接触した後は大きな荷重でなければ接触部22が撓わないことになる。図6に示すように、相手端子50と端子10が接続した状態では、相手端子50が受け部21Gと接触部22の接点部22Aとの間に挟持された状態となる。このときの接触荷重は、接触部22と補助ばね23の双方によって生じているため、相手端子50と端子10の接触抵抗を低く抑えることができる。また、相手端子50が斜めに傾いた姿勢で挿入された場合、接点部22Aが過度撓み防止部24に当接することで接触部22の過度な撓みが防止されるようになっている。
【0019】
さて、図5に示すように、角筒部21の前端部には、接触部22の折り返し部22Dを前方から覆う位置に配された前方覆い壁30が設けられている。この前方覆い壁30は、図2に示すように、左右対称をなす配置で一対設けられている。前方覆い壁30の先端側の下縁には、前後方向において底壁21Aと重複する位置まで下方に突出する形態をなす突出部31が設けられている。図5に示すように、前方覆い壁30と側壁21Bを連結する位置には連結壁32が設けられている。この連結壁32は、側壁21Bと面一をなし、突出部31の下端よりも上方に位置している。すなわち、一対の前方覆い壁30は、連結壁32の前縁32Aからそれぞれ内側に突出する形態をなしており、各前方覆い壁30の突き合わせ端部の間に形成される隙間は、相手端子50よりも十分に小さいものとされている。また、接触部22の折り返し部22Dは、角筒部21の前端部よりも連結壁32の長さ分だけ後方に位置している。連結壁32の長さは、前側の突起部21Dの台座21Eの長さとほぼ等しいものとされている。
【0020】
このように突出部31を設けた理由は、端子10をコネクタハウジング60内に挿入するに際して、端子10の前端が下方に傾いたとしても、突出部31がコネクタハウジング60の内面61に接触することになるものの、連結壁32がコネクタハウジング60の内面61に接触することはないようにするためである。特に防水コネクタにおいてはコネクタハウジング60の内面61をシール面とする必要があるため、シール面が傷付かないように細心の注意を払いながら端子10をコネクタハウジング60に対して真っ直ぐ挿入する必要がある。その点、本実施形態では端子10が傾いたとしても突出部31がコネクタハウジング60の内面61に接触するだけであり、連結壁32がコネクタハウジング60の内面61に接触することはない。なお、突出部31は左右方向に長い形状とされているため、コネクタハウジング60の内面61を傷付けるおそれはない。
【0021】
また、図7に示す端子10の展開状態においては、接触部22における突出部31と対向する位置に切欠部22Eが設けられている。この切欠部22Eは、突出部31との干渉を避けるべく、接触部22の一部を切り欠いたものであり、接触部22の折り返し部22Dを避けた位置に設けられている。
【0022】
連結壁32の後端には後側スリット33が設けられている。この後側スリット33は、前後方向における連結壁32と側壁21Bの境界に位置している。後側スリット33によると、例えば接触部22の折り返し部22Dで発生した応力が連結壁32に伝わることを抑制できる。また、前方覆い壁30に相手端子50が接触する等して前方覆い壁30から連結壁32に応力が伝わったとしても、連結壁32から側壁21Bと底壁21Aを介して接触部22に応力が伝わることを抑制できる。
【0023】
同じく、連結壁32の上端には上側スリット34が設けられている。この上側スリット34は、上下方向における連結壁32と側壁21Bの境界に位置している。上側スリット34によると、例えば突起部21Dがランスに係止することで発生した応力が連結壁32に伝わることを抑制できる。
【0024】
以上のように本実施形態では、端子10をコネクタハウジング60内に挿入する際に、コネクタハウジング60の内面61に突出部31が接触しても、連結壁32の下縁が内面61に接触することはない。ここで、突出部31が内面61に接触しながら端子10の挿入が行われる状態は、カッターナイフの刃を切断方向と直交する方向に動かすのと同じ状態であり、内面61が傷付くことはない。一方、連結壁32の下縁が内面61に接触しながら端子10の挿入が行われる状態は、カッターナイフの刃を切断方向に動かすのと同じ状態であるため、内面61が傷付きやすい。したがって、上記のように連結壁32の下縁が内面61に接触しないようにすることによって内面61が傷付くことを防止できる。
【0025】
連結壁32の周囲に、スリット(後側スリット33、上側スリット34)が形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、連結壁32と側壁21Bの間で互いに応力が伝わることを抑制できる。
【0026】
前方覆い壁30の下縁と連結壁32の下縁とは、上下方向において同じ高さに位置している構成としてもよい。
このような構成によると、突出部31がコネクタハウジング60の内面61に接触した状態では連結壁32の下縁とコネクタハウジング60の内面61との間に突出部31の高さ寸法に相当する隙間を確保できる。
【0027】
<実施形態2>
次に、実施形態2を図8の図面を参照しながら説明する。本実施形態の端子110は、実施形態1の端子10のうち前方覆い壁30と連結壁32と突出部31との構成を変更したものであって、その他の構成については同じであるため、共通する構成については実施形態1と同一の符号を付すものとし、説明を省略するものとする。
【0028】
本実施形態の突出部131は、前方覆い壁130の下縁から斜め後方に延びる形態をなしている。突出部131の先端は、連結壁132の前縁132Aよりも後方に位置している。また、突出部131の下端部(コネクタハウジング60の内面61との接触部)には丸みが付けられている。本実施形態の連結壁132は、実施形態1の連結壁32よりも上下寸法が小さめとされている。このため、本実施形態では、実施形態1の後側スリット33に対応するスリットが設けられていない。
【0029】
このような構成によると、突出部131がコネクタハウジング60の内面61に接触しながら端子110の挿入が行われた場合に、内面61がより傷付きにくくなる。
【0030】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)上記実施形態1と2では接触部22が底壁21Aの前縁から折り返された形状をなしているものの、底壁の後縁から折り返された形状をなす接触部としてもよい。
【0031】
(2)上記実施形態1と2では連結壁32、132の周囲に後側スリット33と上側スリット34、134を設けているものの、スリットを必ずしも設けなくてもよい。
【0032】
(3)上記実施形態1と2では前方覆い壁30、130の下縁と連結壁32、132の下縁とが上下方向において同じ高さに位置しているものの、同じ高さに揃えなくてもよい。
【0033】
(4)上記実施形態1では突出部31が前方覆い壁30の先端側の下縁に設けられているものの、突出部を前方覆い壁30の下縁における全幅に亘って設けてもよい。
【0034】
(5)上記実施形態2では突出部131の下端が底壁21Aの下面にほぼ揃う位置に配されているものの、突出部の下端を底壁21Aの下面よりもやや上方に位置させてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10、110…端子
21…角筒部
21A…底壁
21B…側壁
21C…天井壁
22…接触部
30、130…前方覆い壁
31、131…突出部
32、132…連結壁
33…後側スリット
34、134…上側スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8