【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、盤面に意匠が表現されたレコードを文字盤とし、ムーブメントの出力部の回転力により時を刻むレコード時計において、前記レコードは、前記意匠を2分割するように、センターホールを中心として同心円状に円環カットした時針用部分レコードと分針用部分レコードとを有し、前記ムーブメントの出力部は、時針用出力軸と分針用出力軸とを有し、前記時針用部分レコードと前記時針用出力軸とは、時針用連結部材により連結され、前記分針用部分レコードと前記分針用出力軸とは、分針用連結部材により連結されたことを特徴とするレコード時計である。
【0009】
レコード時計とは、レコードを文字盤に採用した時計である。時計の種類は任意である。例えば、壁掛け時計や置時計を採用することができる。また、標準電波を受信して誤差を自動修正する機能を有した電波時計でもよい。
ここでいう“レコード”とは、音楽、音声、各種音(鳥の鳴き声、川のせせらぎ、波の音等)を盤面に記録した音盤(ディスク)をいう。すなわち、アナログレコードだけでなく、コンパクトディスク(Compact Disc:CD(シーディー))、DVD(ディー・ブイ・ディー)などを含む。このうち、アナログレコードとしては、LP(Long Play)レコード、シングルレコード、EP(Extended Play)レコード、12インチシングル、SP(Standard Play)レコード、ビニール盤(ヴァイナル盤)、ソノシート、ピクチャー盤、100%pureLPを採用することができる。
レコードは、新品(未使用品)でも、中古品(使用済み、破損品)でもよい。
【0010】
ここでいう“レコードを同心円状に円環カットする”とは、レコードのセンターホール(中心穴)を中心にして、その直径(半径)方向に離間した位置で、レコードをドーナツ状に切断することをいう。円環カットされる領域は、レコードレーベルが貼られたレコードの中央部を含んでも、含まなくてもよい。
レコードを同心円状に2分割すれば、時針用部分レコードと分針用部分レコードとが形成される。
時針用部分レコードとは、時計の時針を構成するドーナツ状(円環状)のレコード部分である。
分針用部分レコードとは、時計の分針を構成するドーナツ状のレコード部分である。
時針用および分針用部分レコードには、針先に該当する任意の目印(凸部、凹部、マーク部、貼着シール部等)を付けてもよい。
時針用および分針用部分レコードの配置(センターホールからの離間位置)は任意である。例えば、レコードの半径方向外側に向かって、順に時針用部分レコード、分針用部分レコードでも、その反対でもよい。
時針用および分針用部分レコードの幅(レコード半径方向の幅)は任意である。均等幅でもよいし、そうでなくてもよい。
【0011】
“意匠”の種類は限定されない。例えば、レコードの盤面に現出される立体的な意匠(例えば、レコードの一部をレーザーカットして表現した意匠、盤面に造形品を固定して表現した意匠等)を採用することができる。その他、レコードの盤面に現出される平面的な意匠(例えば、レーザー加工やサンドブラスト加工などの彫刻、ペイント、貼着シールによって現出した意匠等)でもよい。
“意匠を2分割する”とは、レコードの円環カット時、意匠の一部が各部分レコードに含まれるように、センターホールを中心として意匠を2つにカットすることをいう。すなわち、時針用部分レコードには時針用部分意匠、分針用部分レコードには分針用部分意匠が配される。
【0012】
ムーブメントとは、時計の動力機構部(歯車式動力伝達部を含む)である。例えば、電池を電源とした自動式のムーブメント(クォーツ時計用)でも、手巻き式のムーブメントでもよい。
出力部とは、動力機構により発生した回転力を外部へ取り出すための部分である。
このうち、時針用出力軸とは、時針用部分レコードに動力機構の回転力を出力する部材である。
分針用出力軸とは、分針用部分レコードに動力機構の回転力を出力する部材である。レコードが2分割される場合(秒針用部分レコードおよび秒針用出力軸は省略)、分針用出力軸は必ずしも筒軸でなく、中実の軸(シャフト)でもよい。
時針用連結部材の素材および形状は、他の部分レコードの回転に支障がなく、時針用出力軸と時針用部分レコードとを連結できれば任意である。時針用連結部材の形状としては、例えば、線状部材、板状部材、環状部材などでもよい。
分針用連結部材の素材および形状は、他の部分レコードの回転に支障がなく、分針用出力軸と分針用部分レコードとを連結できれば任意である。分針用連結部材の形状としては、例えば、線状部材、板状部材、環状部材などでもよい。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記レコードは、前記意匠を3分割するように、前記センターホールを中心として同心円状に円環カットした前記時針用部分レコードと前記分針用部分レコードと秒針用部分レコードとを有し、前記ムーブメントの出力部は秒針用出力軸を有し、前記秒針用部分レコードと前記秒針用出力軸とは、秒針用連結部材により連結されたことを特徴とする請求項1に記載のレコード時計である。
【0014】
レコードを、センターホールを中心にして同心円状に3分割すれば、時針用部分レコード、分針用部分レコードおよび秒針用部分レコードが形成される。
秒針用部分レコードとは、時計の秒針を構成するドーナツ状のレコード部分である。
秒針部分レコードには、針先に該当する任意の目印(凸部、凹部、マーク部、シール部等)を付けてもよい。
3つの部分レコードの配置は任意である。例えば、レコードの半径方向外側に向かって、順次、秒針用部分レコード、時針用部分レコード、分針用部分レコードとすることができる。その他、時針用部分レコード、分針用部分レコード、秒針用部分レコードとしても、その反対でもよい。
3つの部分レコードの幅(レコード半径方向の幅)は任意である。均等幅でもよいし、そうでなくてもよい。
【0015】
“意匠を3分割する”とは、レコードの円環カット時、意匠の一部が各部分レコードに含まれるように、センターホールを中心として意匠を3つにカットすることをいう。すなわち、時針用部分レコードの時針用部分意匠、分針用部分レコードの分針用部分意匠とは外に、秒針用部分レコードに秒針用部分意匠が配される。
秒針用出力軸とは、秒針用部分レコードに動力機構の回転力を出力する部材である。
秒針用連結部材の素材、形状などは、他の部分レコードの回転に支障がなく、秒針用出力軸と秒針用部分レコードとを連結できれば任意である。秒針用連結部材の形状としては、例えば、線状部材、板状部材、環状部材などでもよい。
【0016】
請求項3に記載の発明は、音データを記憶する記憶部と、前記レコードの盤面上で前記意匠が再現される時刻に、前記記憶部に記憶された音データを再生する音再生回路と、該音再生回路により再生された音を出力するスピーカーとを有するオーディオ手段を具備した請求項1または請求項2に記載のレコード時計である。
【0017】
ここでいう“レコードの盤面上で意匠が再現される時刻”とは、カット前の意匠と完全一致の意匠が再現される時刻だけでなく、カット前の意匠と略同一意匠が再現される時刻を含むものとする。例えば、意匠が時針用部分レコードと分針用部分レコードとに2分割されている場合、時計の針における時針と分針とが重なる、午前と午後とにそれぞれ約32.7°ピッチで11回ずつ、時針用部分意匠と分針用部分意匠とのズレ角が0°となって、分割前の意匠が再現(現出)される。具体的な時刻は、0時0分(12時0分)、1時5分、2時10分、3時16分、4時21分、5時27分、6時32分、7時38分、8時43分、9時49分、10時54分である。
【0018】
また、この意匠が、時針用部分レコードと分針用部分レコードと秒針用部分レコードとに3分割されている場合にも、同じように時針と分針とが重なる午前と午後とに11回ずつ、カット前の時針用部分意匠と分針用部分意匠と秒針用部分意匠とが再現される(略再現される状態を含む)。それらの時刻とは、0時0分0秒(12時0分0秒)、1時5分27秒、2時10分54秒、3時16分21秒、4時21分49秒、5時27分16秒、6時32分43秒、7時38分10秒、8時43分38秒、9時49分5秒、10時54分32秒である。
【0019】
なお、時針用部分意匠と分針用部分意匠との間でカット前の意匠が再現された時、残った秒針用部分意匠は、0時0分0秒の時刻を除き、2つの部分意匠とは異なる角度位置に在る。そのため、この場合、3つの部分意匠にカットされる前の意匠の完全な再現ではない。しかしながら、時針用部分意匠と分針用部分意匠とのズレ角が0°となる時刻の1分前または1分後には、秒針用部分意匠と、隣り合う時針用部分意匠または分針用部分意匠とのズレ角が0°となる時刻が存在する。これらの時刻において、カット前の意匠と、3つの部分意匠からなる意匠(略同一意匠)との違いは、凝視しなければ判別できない程度である。
この点を踏まえて、本発明では、0時0分0秒だけでなく、残った10の時刻(1時5分前後、2時10分前後等)を含めて、3分割した場合であっても、午前および午後に11回ずつ、約32.7°ピッチで円環カット前の意匠が現出されるということとする。
【0020】
ここで、意匠が時針用部分意匠と分針用部分意匠と秒針用部分意匠とに3分割されている場合において、時計の針における時針と分針とが重なる時刻との計算式は、以下の通りである。
すなわち、分針(分針用部分レコード)が30分を刻むとき、時針(時針用部分レコード)が0.5時間を刻む場合、つまり1秒で、時針が(360/12)/3600=(1/120)°傾き、分針が360/3600=(1/10)°傾く。この場合、時針と分針が重なるのは、時針がk時の時、k時間+α秒経った時とすると
30°k+(1/120)°α=(1/10)°α
α=3600k/11(秒)
α秒経ったときの秒針の角度βは
6°×α
=6°×3600k/11
=(360×M)+βである。
ここで、Mはα秒間に秒針がM回転(M分間)した数値である。
【0021】
なお、意匠を3分割する場合、“レコードの盤面上で円環カット前の意匠(略同一意匠を含む)が再現される”のは、1秒〜数秒である。そのため、スピーカーから音が発せられた後、レコード時計を見ても、秒針用部分意匠がいくらか角度ズレしているおそれがある。そこで、例えば、円環カット前の意匠(略同一意匠を含む)が再現された後、秒針用部分レコードが1回転する時間(1分間)だけ、時針用出力軸および分針用出力軸への回転力の伝達には支障なく、秒針用部分レコードの回転を停止するように構成してもよい。また、この停止している1分間だけ、音(例えば音楽等)を継続して出力するようにしてもよい。1分経過直後、秒針用部分レコードの回転を再開しても、時針用出力軸および分針用出力軸が通常通りに回転していれば、時間の遅れは生じない。
秒針用部分レコードの回転を停止する構成(秒針レコード回転停止手段)としては、例えば、秒針用出力軸の途中部にクラッチ、トルクリミッタ、歯車歯合・脱合機構を設け、1分間だけ秒針用出力軸の空回りを許容するものが考えられる。このうち、クラッチまたはトルクリミッタを使用する際には、例えばソレノイドのシャフト等をストッパとして採用し、これを秒針用連結部材や秒針用部分レコードに当接して、秒針用出力軸を1分間または歌唱曲約1曲分の3分間だけ空回りさせるようにしてもよい。
【0022】
ここでいう音データとは、音全般のデジタルデータである。例えば、ブザー音データ、ベル音データ、チャイム音データ、オルゴール音データ、各種の楽器演奏データ、各種の歌唱データ、これらの複合データを含む。なお、鳥の鳴き声、川のせせらぎ、波の音といったデジタル形式の他の音データでもよい。
ここでいうオーディオ手段とは、記憶部に記憶された音データ(デジタルデータ)を音再生回路により再生し、再生された音信号を物理振動に変換して、スピーカーから音を出力するものであれば、その種類は限定されない。なお、就寝中など、音を出力したくない場合には、消音するように構成してもよい。
記憶部としては、例えば、読み出し専用のROM(Read Only Memory)や、読み書きが自在なRAM(Random Access Memory)などを採用することができる。
音再生回路とは、記憶部に記憶された音データを音信号に再生する回路である。
スピーカーとは、音信号を物理振動に変えて、音楽や音声などの音を生み出す音発生器である。スピーカーの種類は任意である。
【0023】
請求項4に記載の発明は、前記レコードは、前記レコード時計の使用者から提供されたもので、前記意匠は、前記使用者から提供されたレコードまたはこの使用者に纏わるもので、前記レコードを音源とした音楽データを記憶する記憶部と、前記レコードの盤面上で前記意匠が再現される時刻に、前記記憶部に記憶された音楽データを再生する音楽再生回路と、該音楽再生回路により再生された音楽を出力するスピーカーとを有するオーディオ手段を具備した請求項1または請求項2に記載のレコード時計である。
【0024】
“使用者から提供されたレコード”とは、レコード時計の使用者が文字盤用として提供したレコードで、長年愛聴したものを含む。
ここでいう“使用者”とは、レコード時計の購入者、それを譲り受けた者、レコード時計を実際に使用する者などである。
ここでいう“レコードに纏わる意匠”とは、文字盤に採用されたレコードに記録された音楽等に関連した平面的または立体的意匠などが挙げられる。例えば、レコードが映画のサウンドトラック盤の場合、その映画の一場面などを表現した意匠を採用することができる。その他、そのレコードが歌手の楽曲の場合、その歌手やその曲が流行った時代を表現した意匠などが挙げられる。
ここでいう“使用者に纏わる意匠”とは、例えば、使用者自身(使用者の写真、使用者の想い出の一場面等)、家族(家族の写真、家族との想い出の一場面等)、友人または知人(友人または知人の写真、友人または知人との想い出の一場面等)、使用者が印象深い時代等を平面的に表現した意匠、またはそれらを立体的に表現した意匠などが挙げられる。
ここでいう“レコードの盤面上で意匠が再現される時刻に音楽データを再生する”とは、上述した午前と午後の各11回の時刻に、各部分意匠の位置ズレが0°となって、分割前の意匠を再現することをいう。
【0025】
ここでいう音楽データとは、音楽全般のデジタルデータである。例えば、各種の演奏データ、各種の歌唱データ、これらの複合データを含む。
ここでいう“レコードを音源とした音楽データ”とは、使用者が提供した(音溝の傷も愛着がある)レコードをレコードプレーヤーにより再生したデジタル音楽データをいう。なお、使用者からの提供レコードではないレコードを音源としてもよい。
【0026】
ここでいうオーディオ手段とは、記憶部に記憶された音楽データ(デジタルデータ)を音楽再生回路により再生し、再生された音楽信号を物理振動に変換して、スピーカーから音楽を出力するものであれば、その種類は限定されない。
音楽再生回路とは、記憶部に記憶された音楽データを音楽信号に再生する回路である。音楽再生回路は音再生回路の一種である。
【0027】
請求項5に記載の発明は、盤面に意匠が表現されたレコードを文字盤とし、ムーブメントの出力部の回転力により時を刻むレコード時計の製造方法において、前記レコードは使用者から提供されたもので、前記レコードをレコードプレーヤーにより再生し、該レコードプレーヤーから得られた音楽データを、前記レコード時計が具備するオーディオ手段の記憶部に記憶し、前記音楽データの記憶後、前記レコードを加工して、その盤面に使用者またはこのレコードに纏わる意匠を表現し、該意匠を2分割するように、センターホールを中心とした同心円状に前記レコードを円環カットして、時針用部分レコードと分針用部分レコードとを形成し、前記レコードの中央部の裏側に、時針用出力軸と分針用出力軸とを出力部に有した前記ムーブメントを配置し、前記時針用部分レコードと前記時針用出力軸とを、時針用連結部材により連結し、前記分針用部分レコードと前記分針用出力軸とを、分針用連結部材により連結し、前記オーディオ手段は、前記レコードの盤面上で前記意匠が再現される時刻に、前記記憶部に記憶された音楽データを再生する音楽再生回路と、該音楽再生回路により再生された音楽を出力するスピーカーとを有したものであることを特徴とするレコード時計の製造方法である。
【0028】
レコードプレーヤーは、対応するレコード(アナログレコード、CD、DVD等)を再生することができるものであれば任意である。
円環カットの前処理として、意匠が表現されたレコードの裏面に、レコードと略同一直径の裏当て板を分離不能に固着(貼着)してもよい。固着後、裏当て板と一体的にレコードをカットすれば、仮にレコードカット時に、対応する部分レコードから島状に離間した片部分が現出しても、その片部分が、対応するドーナツ状の裏当て部分板に止まり、離散しない。すなわち、裏当て板を使用することで、レーザーカットによるレコードの意匠表現が拡大する。
また、ムーブメントの出力部により回転するレコードの軽量化を図るとともに、レコードと裏当て板との接着性を高めるため、裏当て板を接着する前に、レコードの裏面をポリッシングして肉薄としてもよい。
【0029】
請求項6に記載の発明は、前記レコードの円環カット時には、前記意匠を3分割するように、前記センターホールを中心とした同心円状に前記レコードを円環カットして、前記時針用部分レコードと前記分針用部分レコードと秒針用部分レコードとを形成し、前記ムーブメントは、出力部に秒針用出力軸を有するもので、前記秒針用部分レコードと前記秒針用出力軸とを、秒針用連結部材により連結したことを特徴とする請求項5に記載のレコード時計の製造方法である。
【発明の効果】
【0030】
請求項1に記載のレコード時計によれば、意匠を2分割するように、盤面に意匠が表現されたレコードを、センターホールを中心にして同心円状に時針用部分レコードと分針用部分レコードとに円環カットし、これらを時計の時針、分針として利用する。そのため、ムーブメントの時針用出力軸が半日毎(12時間毎)に1回転することで、時針用連結部材を介して時針用部分レコードが同じ速度で回転する。また、分針用出力軸が毎時1回転することで、分針用連結部材を介して分針用部分レコードが同じ速度で回転する。これにより、約1時間毎、時計回りに所定ピッチ(約32.7°ピッチ)で角度位置を変えながら、カット前の意匠が現出する。その結果、レコードを文字盤としたお洒落なインテリア時計としての高いデザイン性を有するだけでなく、動的な鑑賞性にも優れたレコード時計を提供することができる。
【0031】
特に、請求項2に記載のレコード時計によれば、レコードを円環カットする際には、意匠を3分割するように、センターホールを中心にした同心円状に、レコードを時針用部分レコードと分針用部分レコードと秒針用部分レコードとにカットし、これらを時計の時針、分針、秒針として利用する。また、ムーブメントの出力部と各部分レコードとの連結に際しては、秒針用連結部材を介して、秒針用出力軸と秒針用部分レコードとの連結も行う。これにより、時針用出力軸が半日毎に1回転することで、時針用連結部材を介して時針用部分レコードが同じ速度で回転する一方、分針用出力軸が毎時1回転することで、分針用連結部材を介して分針用部分レコードが同じ速度で回転する。また、ムーブメントの秒針用出力軸が毎分1回転することで、秒針用連結部材を介して、秒針用部分レコードが同じ速度で回転する。
【0032】
そのため、時針用部分意匠と分針用部分意匠との間でカット前の意匠が再現された時、残った秒針用部分意匠は、0時0分0秒の時刻を除き、2つの部分意匠とは異なる角度位置に在るが、時針用部分意匠と分針用部分意匠とのズレ角が0°となる時刻の1分前または1分後には、秒針用部分意匠と、隣り合う時針用部分意匠または分針用部分意匠とのズレ角が0°となる時刻が存在する。これにより、これらの時刻において、カット前の意匠と、3つの部分意匠からなる意匠とは、凝視しなければ判別できない程度の形状変形しか発生しない。
その結果、3分割された意匠であっても、約1時間毎、時計回りに所定ピッチで角度位置を変えながら、カット前の意匠(略同一意匠を含む)を現出することができる。
【0033】
また、請求項3に記載のレコード時計によれば、レコードの盤面上で円環カット前の意匠(略同一意匠を含む)が再現された時刻に、オーディオ手段の記憶部に記憶された音データを音再生回路により再生し、スピーカーにより出力する。これにより、毎正時ではなく、時計の針が重なる時刻毎に、円環カット前のレコードに表現された意匠を再現するとともに、その意匠が再現されたことを音により報知することができる。
【0034】
さらに、請求項4に記載のレコード時計によれば、使用者から提供された(愛聴)レコードの盤面上で、円環カット前の“使用者またはレコードに纏わる意匠(略同一意匠を含む)”が再現された時刻に、オーディオ手段の記憶部に記憶された“使用者からのレコードを音源とした音楽データ”を音楽再生回路により再生し、スピーカーにより出力する。これにより、毎正時ではなく時計の針が重なる時刻毎に、視覚的な刺激と聴覚的な刺激との相乗効果によって、より強く使用者の想い出を呼び覚ますことができる。
【0035】
また、請求項5に記載のレコード時計の製造方法によれば、まず使用者から提供された(愛聴)レコードをレコードプレーヤーにより再生し、得られた音楽データをオーディオ手段の記憶部に記憶する。その後、このレコードを加工して、使用者またはこのレコードに纏わる意匠をレコードの盤面に表現する。次いで、意匠を2分割するように、このレコードをセンターホールを中心にして同心円状に円環カットし、時針用部分レコードと分針用部分レコードとを形成する。その後、レコードの中央部の裏側に、時針用出力軸と分針用出力軸とを出力部に有したムーブメントを配置する。
次いで、時針用部分レコードと時針用出力軸とを時針用連結部材により連結するとともに、分針用部分レコードと分針用出力軸とを、分針用連結部材により連結する。これにより、レコード時計が製造される。
【0036】
ムーブメントの作動により、時針用出力軸が半日毎に1回転することで、時針用連結部材を介して時針用部分レコードが同じ速度で回転する一方、分針用出力軸が毎時1回転することで、分針用連結部材を介して分針用部分レコードが同じ速度で回転する。これにより、約1時間毎、時計回りに約32.7°ピッチで角度位置を変えながら、カット前の意匠が現出する。その結果、レコードを文字盤としたお洒落なインテリア時計としての高いデザイン性を有するだけでなく、動的な鑑賞性にも優れたレコード時計を提供することができる。
また、使用者から提供された(愛聴)レコードの盤面上で、円環カット前の“使用者またはレコードに纏わる意匠”が再現された時刻に、オーディオ手段の記憶部に記憶された“使用者からのレコードを音源とした音楽データ”を音楽再生回路により再生し、再生した音楽をスピーカーにより出力する。これにより、毎正時ではなく時計の針が重なる時刻毎に、視覚的な刺激と聴覚的な刺激との相乗効果によって、より強く使用者の想い出を呼び覚ますことができる。
【0037】
さらに、請求項6に記載のレコード時計の製造方法によれば、盤面に所定の意匠が表現されたレコードの円環カット時には、意匠を3分割するように、センターホールを中心にしてレコードを時針用部分レコードと分針用部分レコードと秒針用部分レコードとにカットする。また、ムーブメントの各出力軸と各部分レコードとの連結時には、秒針用連結部材を介して、秒針用出力軸と秒針用部分レコードとの連結も行う。
これにより、ムーブメントの作動により、時針用出力軸が半日毎に1回転することで、時針用連結部材を介して時針用部分レコードが同じ速度で回転する一方、分針用出力軸が1時間毎に1回転することで、分針用連結部材を介して分針用部分レコードが同じ速度で回転するとともに、ムーブメントの秒針用出力軸が1分間毎に1回転することで、秒針用連結部材を介して、秒針用部分レコードが同じ速度で回転する。
【0038】
これにより、使用者から提供された(愛聴)レコードの盤面上で、円環カット前の“使用者またはレコードに纏わる意匠(略同一意匠を含む)”が再現された時刻に、オーディオ手段の記憶部に記憶された“使用者からのレコードを音源とした音楽データ”を音楽再生回路により再生し、スピーカーにより出力する。
その結果、3分割された意匠であっても、毎正時ではなく時計の針が重なる時刻毎に、視覚的な刺激と聴覚的な刺激との相乗効果によって、より強く使用者の想い出を呼び覚ますことができる。