特許第6183677号(P6183677)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6183677
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】着色紫外線防御剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20170814BHJP
   C09C 1/24 20060101ALI20170814BHJP
   C09C 3/06 20060101ALI20170814BHJP
   C01G 49/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   C09K3/00 104Z
   C09C1/24
   C09C3/06
   C01G49/00 A
   C01G49/00 H
【請求項の数】10
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2017-521594(P2017-521594)
(86)(22)【出願日】2017年4月4日
(86)【国際出願番号】JP2017014157
【審査請求日】2017年6月2日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2016/066542
(32)【優先日】2016年6月3日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-111346(P2016-111346)
(32)【優先日】2016年6月2日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-231897(P2016-231897)
(32)【優先日】2016年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595111804
【氏名又は名称】エム・テクニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100204755
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】榎村 眞一
(72)【発明者】
【氏名】本田 大介
(72)【発明者】
【氏名】荒木 加永子
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−250860(JP,A)
【文献】 特開2010−100467(JP,A)
【文献】 特開平09−188517(JP,A)
【文献】 特開2011−068628(JP,A)
【文献】 特開2005−281435(JP,A)
【文献】 国際公開第03/022954(WO,A1)
【文献】 国際公開第03/083008(WO,A1)
【文献】 特開2017−043505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C09C 1/00−3/12
C09D 1/00−201/10
G02B 5/22
C01G 1/00−23/08
C01G 49/00−08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を遮蔽し、且つ着色する目的に使用される着色紫外線防御剤であり、
上記着色紫外線防御剤が、金属元素又は半金属元素であるM1を少なくとも含む酸化物粒子(M1Ox)に、M1とは異なる金属元素又は半金属元素から選ばれる少なくとも一種のM2がドープされたM2ドープ酸化物粒子を含むものであり、
上記M1が鉄(Fe)であり
上記xは任意の正数であり、
上記M2ドープ酸化物粒子を分散媒に分散させた分散液の波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数が、酸化物粒子(M1Ox)を分散媒に分散させた分散液に比べて向上されており、
且つ上記M2ドープ酸化物粒子は、可視領域における色特性である色相又は彩度が制御されていることを特徴とする着色紫外線防御剤。
【請求項2】
上記M2ドープ酸化物粒子の上記色特性がL,a,b表色系において、40≦L≦95、−35≦a≦35、又は−35≦b≦35の範囲で制御されていることを特徴とする請求項1に記載の着色紫外線防御剤。
【請求項3】
上記M2ドープ酸化物粒子が、上記M2ドープ酸化物粒子中のM1とM2とのモル比(M2/M1)が制御された酸化物粒子であって、
上記酸化物粒子(M1Ox)を分散媒に分散させた分散液の波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数に対して、上記M2ドープ酸化物粒子の上記波長の範囲における平均モル吸光係数の上昇率が制御されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の着色紫外線防御剤。
【請求項4】
上記M2ドープ酸化物粒子が、上記M2ドープ酸化物粒子のM1とM2とのモル比(M2/M1)が0.01以上1.00以下の範囲であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の着色紫外線防御剤。
【請求項5】
上記M2ドープ酸化物粒子は、上記酸化物粒子(M1Ox)を分散媒に分散させた分散液の波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数に対する、上記M2ドープ酸化物粒子の上記波長の範囲における平均モル吸光係数の上昇率である平均モル吸光係数上昇率が110%以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の着色紫外線防御剤。
【請求項6】
上記M2ドープ酸化物粒子は、STEMマッピングにおいて、上記M2ドープ酸化物粒子の全体にわたってM1及びM2が検出される固溶体酸化物粒子であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の着色紫外線防御剤。
【請求項7】
金属元素又は半金属元素であるM1及びM2を少なくとも含むM2ドープ酸化物粒子を含む着色紫外線防御剤であり、
上記M1が鉄(Fe)であり、
上記(M2/M1)が0.01以上1.00以下であり、
上記M2ドープ酸化物粒子を分散媒に分散させた分散液において、波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数が1000(L/(mol・cm))以上であり、
上記M2ドープ酸化物粒子の色特性が、L,a,b表色系において、38≦L≦44、4≦a≦14、又は4≦b≦12の範囲であることを特徴とする着色紫外線防御剤。
【請求項8】
上記M2ドープ酸化物粒子の一次粒子径が1nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の着色紫外線防御剤。
【請求項9】
上記M2ドープ酸化物粒子の表面の少なくとも一部がケイ素化合物で被覆されたケイ素化合物被覆M2ドープ酸化物粒子であり、
上記ケイ素化合物被覆M2ドープ酸化物粒子を分散媒に分散させた分散液において、波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数が、ケイ素化合物を被覆していない上記M2ドープ酸化物粒子に比べて向上していることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の着色紫外線防御剤。
【請求項10】
請求項1からのいずれかに記載の着色紫外線防御剤を含むことを特徴とする着色紫外線防御剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色紫外線防御剤に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化物粒子は、当該酸化物粒子に含まれる金属元素の種類を選択することによって紫外線吸収特性や色相等の色特性が変化するため、その特性を利用することによって建築材の外壁や看板、乗り物やガラス等に使用される塗料やフィルム、又は化粧品分野におけるサンスクリーン剤や口紅、ファンデーション等、広範囲の分野において用いられている。近年は、ビルや住宅等の建築物や、自動車等の乗り物等に用いられるガラス、又は建築物や乗り物等の塗装体又は外壁や看板、機器等に用いられる塗料やクリアー塗膜等に用いる場合においては、上記紫外線吸収能に加えて、色味の鮮やかさや優れた意匠性に対する要求が高まっており、化粧料等のように人体に塗布することを目的とする場合においても上記紫外線吸収能に加えて、美観や質感、安全性に対する要求も高まっている。
【0003】
酸化亜鉛や酸化鉄等の酸化物に各種の特性を与えるために、酸化物を微粒子化する方法や(特許文献1及び特許文献2参照)、異なる複数の金属元素を酸化物に固溶させた固溶体酸化物粒子が提案されている(特許文献3、特許文献4、及び特許文献5を参照)。
【0004】
ところで、一般的に紫外線吸収能は、波長200nmから380nmの範囲における単位物質量当たりの吸収性が高いほど、すなわち、「モル吸光係数」が大きい程、少量で多くの紫外線を吸収することができると言える。よって、モル吸光係数が大きければ少量で現状と同様又はそれ以上の紫外線吸収能を発揮することができるために、ヘーズ値を小さくして、塗膜等の塗布物、及び透明樹脂やフィルム又はガラス等の透明材の透明性を高め、美観や意匠性を高める着色を可能とすることができる。
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された酸化物粒子やシリカ被覆酸化物粒子は、反射率や色差に関する粉末の特性に関する記載がされており、また特許文献3や特許文献4に記載された固溶体酸化物粒子は、異なる金属元素を固溶させる事によって、L、a、b表色系で示される色特性や、波長780nmから2500nmの範囲における近赤外線に対する反射率については記載されているが、酸化物粒子の分散体としての特性については一切記載されておらず、仮に微粒子化によって微粒子分散体の透明性を向上させることはできても、紫外線を吸収する能力が低いために、380nm以下の紫外線を完全に吸収又は遮蔽することが難しく、吸収又は遮蔽しようとすると単位面積あたりに多量の超微粒子を用いなければならず、膜厚が厚くなりすぎたり、使用量が多くなったりするために、透明性の問題から実用性に欠ける等の問題点があった。また特許文献5に記載のコバルト固溶酸化亜鉛粒子は、実施例に記載されているように、800℃での熱処理によって得られたコバルト固溶酸化亜鉛を粉砕することで固溶体酸化物粒子を得たとしており、非常に高温の熱処理によって粗大化した固溶体酸化物を粉砕して粒子を作製しているため、それぞれの粒子に異なる元素が均一に分布されていない。このため、厳密な色特性の制御を目的としておらず、粉砕によって得られた粒子においては、当該固溶体酸化物粒子を分散媒に分散させた際の波長200nmから380nmの範囲におけるモル吸光係数を向上させることが困難であった。
【0006】
さらに異なる複数の元素からなる固溶体酸化物の製造方法として、バッチ式に代表される従来の方法では、前提条件である異なる元素の酸化物を同時に析出させることが困難であったため、粒子の全体にわたって異なる複数の元素が固溶されている固溶体酸化物を製造することは困難を極めるものであった。このため、厳密な色特性の制御については実質的に不可能であった。
【0007】
また、本願出願人による発明を開示する、特許文献6及び特許文献7には、接近離反可能な相対的に回転する処理用面間において酸化物等の各種ナノ粒子を析出させる方法を用いて均一な酸化物ナノ粒子を製造する方法が記載されている。しかし、特許文献6においては、酸化物と水酸化物の作り分けに関して記載されており、特許文献7においては均一な酸化物の製造に関して記載されているが、色特性の制御に関する酸化物の製造方法については記載されていなかった。
【0008】
さらに、実際に紫外線遮蔽を目的とする組成物として使用するために必要となる酸化物粒子の紫外線吸収能について、本来は波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数として評価すべきことを、これら従来の技術においては、紫外領域の光線に対して透過率で評価したり、単一の光線で評価したりしたものであるために、目的の紫外線防御用組成物等の組成物を得るために必要となる酸化物の適正量や配合を的確に設計することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−263547号公報
【特許文献2】国際公開第1998/26011号公報
【特許文献3】特開2013−249393号公報
【特許文献4】特表2013−520532号公報
【特許文献5】特開2001−58821号公報
【特許文献6】特許第4868558号公報
【特許文献7】国際公開第2009/008393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明では、このような事情に照らし、波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数が高められ、且つ可視領域における色特性が制御された、金属元素又は半金属元素であるM1を少なくとも含む酸化物粒子(M1Ox)に、M1とは異なる金属元素又は半金属元素であるM2がドープされたM2ドープ酸化物粒子を含む着色紫外線防御剤を提供することを課題とする。すなわち本来から酸化物がもっている特性を最大限向上させることや、そのような特性を補うことを目的としてM2ドープ酸化物粒子を作製し、波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数及び可視領域における色特性を制御することを課題とする。さらに本発明では、上記の事情に照らし、波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数が高められ、可視領域における色特性を厳密に制御されたM2ドープ酸化物粒子を含む着色紫外線防御剤を提供することを課題とするものであり、特に着色紫外線防御剤組成物として好適なM2ドープ酸化物粒子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明者は、金属元素又は半金属元素であるM1を少なくとも含む酸化物粒子(M1Ox)に、M1とは異なる金属元素又は半金属元素から選ばれる少なくとも一種のM2をドープさせたM2ドープ酸化物粒子によれば、当該M2ドープ酸化物粒子を分散媒に分散させた分散液における波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数を大幅に向上できること、及び可視領域における色特性を厳密に制御できることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0012】
すなわち本発明は、紫外線を遮蔽し、且つ着色する目的に使用される着色紫外線防御剤であり、
上記着色紫外線防御剤が、金属元素又は半金属元素であるM1を少なくとも含む酸化物粒子(M1Ox)に、M1とは異なる金属元素又は半金属元素から選ばれる少なくとも一種のM2がドープされたM2ドープ酸化物粒子を含むものであり、
上記xは任意の正数であり、
上記M2ドープ酸化物粒子を分散媒に分散させた分散液の波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数が、酸化物粒子(M1Ox)を分散媒に分散させた分散液に比べて向上されており、
且つ上記M2ドープ酸化物粒子は、可視領域における色特性である色相又は彩度が制御されている着色紫外線防御剤である。
【0013】
また本発明は、上記M2ドープ酸化物粒子の上記色特性がL,a,b表色系において、40≦L≦95、−35≦a≦35、又は−35≦b≦35の範囲で制御されていることが好ましい。
【0014】
また本発明は、上記M2ドープ酸化物粒子が、上記M2ドープ酸化物粒子中のM1とM2とのモル比(M2/M1)が制御された酸化物粒子であって、
上記酸化物粒子(M1Ox)を分散媒に分散させた分散液の波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数に対して、上記M2ドープ酸化物粒子の上記波長の範囲における平均モル吸光係数の上昇率が制御されていることが好ましい。
【0015】
また本発明は、上記M2ドープ酸化物粒子が、上記M2ドープ酸化物粒子のM1とM2とのモル比(M2/M1)が0.01以上1.00以下の範囲であることが好ましい。
【0016】
また本発明は、上記M2ドープ酸化物粒子は、上記酸化物粒子(M1Ox)を分散媒に分散させた分散液の波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数に対する、上記M2ドープ酸化物粒子の上記波長の範囲における平均モル吸光係数の上昇率である平均モル吸光係数上昇率が110%以上であることが好ましい。
【0017】
また本発明は、上記M2ドープ酸化物粒子が、STEMマッピングにおいて、上記M2ドープ酸化物粒子の全体にわたってM1及びM2が検出される固溶体酸化物粒子であることが好ましい。
【0018】
また本発明は、金属元素又は半金属元素であるM1及びM2を少なくとも含むM2ドープ酸化物粒子を含む着色紫外線防御剤であり、
上記M1が亜鉛(Zn)であり、
上記(M2/M1)が0.01以上1.00以下であり、
上記M2ドープ酸化物粒子を分散媒に分散させた分散液において、波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数が650(L/(mol・cm))以上であり、
上記M2ドープ酸化物粒子の色特性が、L,a,b表色系において、40≦L≦95、−35≦a≦35、又は−35≦b≦35の範囲である着色紫外線防御剤である。また本発明は、上記M2が、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0019】
また本発明は、金属元素又は半金属元素であるM1及びM2を少なくとも含むM2ドープ酸化物粒子を含む着色紫外線防御剤であり、
上記M1が鉄(Fe)であり、
上記(M2/M1)が0.01以上1.00以下であり、
上記M2ドープ酸化物粒子を分散媒に分散させた分散液において、波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数が1000(L/(mol・cm))以上であり、
上記M2ドープ酸化物粒子の色特性が、L,a,b表色系において、38≦L≦44、4≦a≦14、又は4≦b≦12の範囲である着色紫外線防御剤である。
【0020】
また本発明は、金属元素又は半金属元素であるM1及びM2を少なくとも含むM2ドープ酸化物粒子を含む着色紫外線防御剤であり、
上記M1がチタン(Ti)であり、
上記(M2/M1)が0.01以上1.00以下であり、
上記M2ドープ酸化物粒子を分散媒に分散させた分散液において、波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数が3500(L/(mol・cm))以上であり、
上記M2ドープ酸化物粒子の色特性が、L,a,b表色系において、40≦L≦95、−35≦a≦35、又は−35≦b≦35の範囲である着色紫外線防御剤である。
【0021】
また本発明は、上記M2ドープ酸化物粒子の一次粒子径が1nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0022】
また本発明は、上記M2ドープ酸化物粒子の表面の少なくとも一部がケイ素化合物で被覆されたケイ素化合物被覆M2ドープ酸化物粒子であり、
上記ケイ素化合物被覆M2ドープ酸化物粒子を分散媒に分散させた分散液において、波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数が、ケイ素化合物を被覆していない上記M2ドープ酸化物粒子に比べて向上しており、より好ましくは、平均モル吸光係数上昇率が120%以上である着色紫外線防御剤であることが好ましい。
【0023】
また本発明は、上記着色紫外線防御剤を含む着色紫外線防御剤組成物として実施できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、金属元素又は半金属元素であるM1を少なくとも含む酸化物粒子(M1Ox)に、M1とは異なる金属元素又は半金属元素から選ばれる少なくとも一種のM2をドープさせたM2ドープ酸化物粒子であることによって、酸化物粒子(M1Ox)に比して、波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数を高められたM2ドープ酸化物粒子を提供できたものである。特に、波長200nmから380nmの紫外領域における平均モル吸光係数を高めることができるため、M2ドープ酸化物粒子の多様化する用途、及び目的の特性に対して従来に比してより的確な組成物の設計を容易とすることができたものである。特に本発明のM2ドープ酸化物粒子を紫外線防御を目的とする塗布用又は透明材用組成物に適応することによって、透明性が高く、素材の質感や美観、製品の意匠性を損なわない、被塗布物又は透明材等に対して効果的に用いることができるだけでなく、効果的な着色をも実現できる塗布用又は透明材用組成物を提供することができたものである。このレベルにまでモル吸光係数を上げた状態で厳密に色特性を制御されると、塗布用又は透明材用組成物の設計が容易になる。すなわち非常に少量のM2ドープ酸化物粒子を配合するだけで、紫外線の防御及び的確な着色が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例1−11で得られたコバルトアルミニウムドープ酸化亜鉛粒子のSTEM写真及びマッピング結果である。
図2】本発明の実施例1−11で得られたコバルトアルミニウムドープ酸化亜鉛粒子の線分析結果である。
図3】本発明の実施例1−11で得られたコバルトアルミニウムドープ酸化亜鉛粒子と比較例1で得られた酸化亜鉛粒子のXRD測定結果である。
図4】本発明の実施例1−1から実施例1−5で得られたコバルトドープ酸化亜鉛粒子及び比較例1で得られた酸化亜鉛粒子をプロピレングリコールに分散させた分散液のモル吸光係数のグラフである。
図5】本発明の実施例1−1から実施例1−19で得られたM2ドープ酸化亜鉛粒子及び比較例1で得られた酸化亜鉛粒子のL値、a値、b値を、L表色系色度図にプロットした図である。
図6】本発明の実施例2−1から実施例2−11で得られたM2ドープ酸化鉄粒子及び比較例2で得られた酸化鉄粒子のL値、a値、b値を、L表色系色度図にプロットした図にプロットした図である。
図7】本発明の実施例3−1から実施例3−17で得られたM2ドープ酸化チタン粒子及び比較例3で得られた酸化チタン粒子のL値、a値、b値をL表色系色度図にプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態の一例を取り上げて説明する。なお、本発明の態様は以下に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。
【0027】
(着色紫外線防御剤:M2ドープ酸化物粒子)
本発明に係るM2ドープ酸化物粒子は、金属元素又は半金属元素であるM1を少なくとも含む酸化物粒子(M1Ox)に、M1とは異なる金属元素又は半金属元素から選ばれる少なくとも一種のM2がドープされたM2ドープ酸化物粒子であり、M1とM2とのモル比(M2/M1)を制御することで波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数及び可視領域における色特性が制御されたM2ドープ酸化物粒子である。本発明に係るM2ドープ酸化物粒子を着色紫外線防御剤として、塗膜や塗装体若しくは人体の皮膚等に塗布する目的の塗布用組成物、又は透明樹脂やガラス、クリアー塗膜等の透明材用組成物に用いた場合には、波長200nmから380nmの紫外領域の光線に対する遮蔽能が高い組成物とでき、また意匠性や美観又は質感を損なわないだけでなく効果的に着色させることも可能であるため、被塗布物又は透明材に対して効果的に用いることができる塗布用又は透明材用組成物を提供できる。本発明においては、上記M1とM2とのモル比(M2/M1)が0.01以上1.00以下の範囲であることが好ましい。
【0028】
(M2ドープ酸化物粒子の形態−1)
上記金属元素又は半金属元素(M1)及び(M2)としては、化学周期表上における金属元素又は半金属元素から選ばれる単数又は複数の元素が挙げられる。すなわち、本発明においては、上記M1及びM2のみからなる酸化物に限定されるものでは無く、M1ともM2とも異なる別の元素M3、M4・・Mnを含む酸化物としても実施できる。Mに付随する数字はあくまで識別のための数字に過ぎない。本発明における半金属元素は、特に限定されないが、好ましくは、Ge、As、Sb、Te、Se、Si等の半金属元素を挙げることができる。なお、本発明において、上記M1、M2又はMnは、後述するM2ドープ酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する被覆層に含まれていてもよい。
【0029】
(M2ドープ酸化物粒子の形態−2)
本発明に係るM2ドープ酸化物粒子は、酸化物によってのみ構成されるものであってもよいが、酸化物によってのみ構成されるものに限定されるものではない。本発明のM2ドープ酸化物粒子は、本発明に影響を与えない程度に酸化物以外の化合物を含むものとしても実施できる。例えば、酸化物以外の化合物を含む酸化物粒子(M1Ox)に金属元素又は半金属元素がドープされたM2ドープ酸化物粒子としても実施できる。上記酸化物以外の化合物としては、水酸化物や窒化物、炭化物、硝酸塩や硫酸塩等の各種塩類、及び水和物や有機溶媒和物を挙げることができる。
【0030】
(酸化物粒子M2ドープ酸化物粒子の形態―3)
本発明のM2ドープ酸化物粒子は、M1OxにM2がドープされた酸化物粒子であるが、M1とM2とが一つの酸化物粒子に均一に存在する固溶体を形成していることが、本発明の波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数の向上及び可視領域における色特性に制御を厳密に行える点で好ましい。ただし、上記M1又はM2が粒子の内部や表層近傍、又は局所的な一部分に存在する固溶体酸化物粒子であっても構わない。均一又は固溶体であることの評価方法としては、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)を用いて複数の粒子を観察し、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)によって、それぞれの粒子におけるM1とM2との存在比及び存在位置を確認する方法が好ましい。一例として、一個の酸化物粒子に含まれるM1とM2との存在比(モル比)を特定し、複数個の酸化物粒子におけるM1とM2とのモル比の平均値及び変動係数を算出することで、均一性を評価する方法や、マッピングによって、酸化物粒子に含まれるM1又はM2の存在位置を特定する方法が挙げられる。本発明においては、STEMマッピングにおいて、上記M2ドープ酸化物粒子の全体にわたってM1及びM2が検出される固溶体酸化物粒子であることが好ましい。
【0031】
(平均モル吸光係数)
モル吸光係数は、紫外可視吸収スペクトル測定における、吸光度と測定試料中の測定対象となる物質のモル濃度より、以下の(式1)にて算出可能である。
ε=A/(c・l) (式1)
ここで、εは物質固有の定数で、モル吸光係数と言い、1cmの厚みをもつ1mol/Lの分散液の吸光度であるため、単位はL/(mol・cm)である。Aは紫外可視吸収スペクトル測定における吸光度であり、cは試料のモル濃度(mol/L)である。lは光が透過する長さ(光路長)(cm)であり、通常は紫外可視吸収スペクトルを測定する際のセルの厚みである。本発明においては、波長200nmから380nmの紫外領域の光線を吸収する能力を示すために、波長200nmから380nmの測定波長領域における複数の波長に対するモル吸光係数の単純平均を算出し、「平均モル吸光係数」として評価した。
【0032】
(平均モル吸光係数上昇率)
また本発明のM2ドープ酸化物粒子は、上記M2ドープ酸化物粒子の波長200nmから380nmの領域における平均モル吸光係数について、上記酸化物粒子(M1Ox)の同波長領域における平均モル吸光係数に対する上昇率である「平均モル吸光係数上昇率」が制御されたM2ドープ酸化物粒子であることが好ましく、上記酸化物粒子(M1Ox)を分散媒に分散させた分散液の波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数に対する、上記M2ドープ酸化物粒子の上記波長の範囲における平均モル吸光係数の上昇率である平均モル吸光係数上昇率が110%以上、又は120%以上であることがより好ましい。
【0033】
(モル吸光係数以外の色特性)
本発明においては、紫外領域である上記波長200nmから380nmの範囲におけるモル吸光係数や平均モル吸光係数と同様にモル比(M2/M1)を制御することによって、可視領域である波長380nmから780nmにおける特定領域の反射率や平均反射率、透過率や平均透過率、L表色系における色相H(=b/a)又は彩度C(=√((a+(b))等の色特性についても的確かつ厳密に制御できるものであり、特に紫外線防御目的の、塗布用又は透明材用組成物に用いた場合に好適なM2ドープ酸化物粒子を提供できるものである。本発明においては、上記M2ドープ酸化物粒子のモル比(M2/M1)を制御することで波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数が制御されていることに加えて、これらの色特性をも制御されたM2ドープ酸化物粒子であり、紫外領域の光線を効率良く防御する能力によって、美観や質感、又は意匠性を損なわない塗布用組成物又は透明材用組成物に用いた場合に好適であるだけでなく、目的によっては積極的に着色することができるため、着色用組成物として用いた場合にも好適である。
【0034】
(色特性:色相又は彩度)
本発明における色相又は彩度は、L表色系における色相H(=b/a、b>0、a>0)、彩度C=√((a+(b)で示すことができる。ここで、L表色系は、均等色空間の一つであり、Lは明るさを表す値であり、数値が大きい程明るいことを示す。また、a、bは色度を表す。本発明においては、上記表色系をL表色系に限定するものではない。XYZ系等他の表色系を用いて色特性を評価してもよい。また本発明においては、色特性がL,a,b表色系において、40≦L≦95の範囲で制御することで、暗い色から明るい色までを効果的に発色でき、−35≦a≦35、又は−35≦b値≦35の範囲、好ましくは−30≦a≦30、又は−30≦b値≦30の範囲で制御することで、着色力が強すぎず、人の目に優しい色に近づけることが可能となるため、特に着色紫外線防御目的の塗布用又は透明材用組成物に用いた場合に好適である。
【0035】
(金属元素ドープとモル吸光係数上昇の要因)
本発明の酸化物粒子(M1Ox)にM2をドープすることによるM2ドープ酸化物粒子のモル吸光係数の上昇の要因は定かではないが、本来、物質の光の吸収は物質固有のエネルギー順位に従う電子遷移に基づいて、特定の波長の光線(光エネルギー)を吸収するものとされているが、酸化物粒子(M1Ox)にM2がドープされることによって、結晶格子の歪の発生や、−M1−酸素−M2−のランダムな組み合わせによる新たな結合の発生、又は酸素の欠損部位やM1又はM2もしくは他の金属元素又は半金属元素の欠損部位等が発生し、それによって酸化物粒子が本来から持つエネルギー順位とは似て非なるエネルギー順位が生じることによる光吸収能の増大(エネルギー順位数の増大)や、粒子の表層近傍でしか吸収されていなかった光が粒子の内部にまで入る込むことを可能にしたことによる光吸収能の増大(素材の光吸収効率の増大)が、酸化物粒子(M1Ox)にM2をドープすることによってM2ドープ酸化物粒子のモル吸光係数が上昇したこと、即ち同光線量に対する光吸収効率の増大の要因であると本願出願人は考えている。
【0036】
(M2ドープ酸化物粒子の色特性の制御方法:官能基又は酸化数の変更処理)
また本発明においては、上記モル比(M2/M1)を制御されたM2ドープ酸化物粒子に含まれる官能基に対する官能基の変更処理若しくは金属元素又は半金属元素(M1、M2、Mn)に対する酸化数の変更処理を行うことによって、可視領域における色特性を制御することも可能である。上記官能基の変更処理は、M2ドープ酸化物粒子に含まれる官能基に対して、置換反応や付加反応、脱離反応や脱水反応、縮合反応を用いた反応等を行う方法によって上記M2ドープ酸化物粒子に含まれる水酸基等の官能基の比率を制御することが可能である。水酸基等の官能基の比率を制御するにあたり、同官能基の比率を増やしてもよいし、減らしてもよいし、新たな官能基を付与してもよい。官能基の変更処理の一例としては、例えば、酸化還元反応や、カルボキシル基(−COOH)からOHが、ヒドロキシル基(−OH)からHが脱離する脱水・縮合反応により達成されるエステル化や、その他にも、過酸化水素やオゾンをケイ素化合物被覆ケイ素ドープ酸化亜鉛粒子に作用させる方法を挙げることができ、これらによってM2ドープ酸化物粒子に含まれる水酸基等の官能基の比率を制御することができる。また同方法によってM2ドープ酸化物粒子に含まれる金属元素又は半金属元素(M1、M2、Mn)に対して酸化数の変更処理を行うこともできる。例えばCoドープ酸化物粒子(M2=Co)中におけるCoについて、Co(+II)からCo(+III)又はその逆のような酸化数の変更処理を行うことができる。また、M2ドープ酸化物粒子を液中において析出させる際に、当該M2ドープ酸化物粒子を析出させる際の処方や、pHを制御する等の方法によって上記M2ドープ酸化物粒子に含まれる水酸基等の官能基の比率を制御や、金属元素又は半金属元素(M1、M2、Mn)に対する酸化数を制御することも可能である。また、官能基変更処理における脱水反応、及び酸化数の変更処理の一例として、M2ドープ酸化物粒子を熱処理する方法によって上記M2ドープ酸化物粒子に含まれる水酸基等の官能基の比率を制御することや(M1、M2、Mn)に対する酸化数を制御することもできる。
【0037】
(M2ドープ酸化物粒子の好ましい形態−1)
本発明においては、M2ドープ酸化物粒子の一次粒子径が1nm以上100nm以下であることが好ましく、1nm以上50nm以下であることがより好ましい。上述したように、M2ドープ酸化物粒子に含まれるM1とM2とが複合的に酸化物を構成することによって、当該M2ドープ酸化物粒子のモル吸光係数や色特性を制御できることや、粒子の表面がそれらの特性に与える影響が大きいこと等が想定できるため、一次粒子径が100nm以下のM2ドープ酸化物粒子は、一次粒子径が100nmを超えるM2ドープ酸化物粒子に比べて表面積が増大されており、M2ドープ酸化物粒子におけるM1に対するM2のモル比(M2/M1)を制御することによる当該M2ドープ酸化物粒子の平均モル吸光係数や色特性に与える影響が大きいことが考えられる。そのため一次粒子径が100nm以下のM2ドープ酸化物粒子にあっては、M2ドープ酸化物粒子の上記モル比(M2/M1)を制御することで、所定の特性(特に着色紫外線防御目的の塗布用又は透明材用組成物に好適な特性)を好適に発揮させることができる利点がある。
【0038】
(M2ドープ酸化物粒子の好ましい形態−2)
本発明においては、M2ドープ酸化物粒子の表面の少なくとも一部を各種化合物によって被覆してもよい。一例として、酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物、リン酸カルシウム、アパタイト等のリン又はカルシウム化合物、酸化チタン等のチタン化合物や、酸化ケイ素等のケイ素化合物等が挙げられる。それらの被覆によって、本発明の平均モル吸光係数の制御に加えて、反射特性や透過特性、色相等の色特性の制御を行うことも可能であるし、本発明の制御方法だけでは不可能な範囲にまで平均モル吸光係数を制御することも可能である。また必要に応じて粒子の表面への被覆を行うことによって、波長200nmから380nmの範囲におけるモル吸光係数が上昇することよって増大された光触媒能を抑制し、塗装体に含まれる樹脂や人体の皮膚等の光触媒能による劣化等を低減することも可能である。また、M2ドープ酸化物粒子の表面を化合物で被覆することによって、M2ドープ酸化物粒子に対して、耐水性や耐酸・耐アルカリ性等の化学安定性を付与できる利点がある。なお、被覆されたM2ドープ酸化物粒子においても、M2ドープ酸化物粒子自体の一次粒子径が100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。表面の少なくとも一部を被覆されたM2ドープ酸化物粒子が複数個のM2ドープ酸化物粒子が凝集した凝集体から構成される場合、その凝集体の大きさが100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。本発明においては、粒子の表面の少なくとも一部を被覆されたM2ドープ酸化物粒子にあっては、上記被覆前の上記M2ドープ酸化物粒子の平均一次粒子径に対する化合物による被覆後のM2ドープ酸化物粒子の平均一次粒子径の割合が100.5%以上190%以下であることが好ましい。M2ドープ酸化物粒子に対する化合物の被覆が薄すぎると、化合物によって被覆されたM2ドープ酸化物粒子が有する特性に関する効果等を発揮し得なくなるおそれがあることから、化合物による被覆後のM2ドープ酸化物粒子の平均一次粒子径が、M2ドープ酸化物粒子の平均一次粒子径の100.5%以上であることが好ましい。被覆が厚すぎる場合や、粗大な凝集体を被覆した場合には特性の制御が困難となることから、化合物による被覆後のM2ドープ酸化物粒子の平均一次粒子径が、被覆前のM2ドープ酸化物粒子の190%以下であることが好ましい。本発明に係る化合物によって被覆されたM2ドープ酸化物粒子は、コアとなるM2ドープ酸化物粒子の表面全体を化合物で均一に被覆したコアシェル型のM2ドープ酸化物粒子であってもよい。また、上記M2ドープ酸化物粒子は、複数個のM2ドープ酸化物粒子が凝集していない、単一のM2ドープ酸化物粒子の表面の少なくとも一部を化合物で被覆した化合物被覆M2ドープ酸化物粒子であることが好ましいが、複数個のM2ドープ酸化物粒子が凝集した凝集体の表面の少なくとも一部を化合物で被覆したM2ドープ酸化物粒子であってもかまわない。本発明においては、M2ドープ酸化物粒子が粒子の表面の少なくとも一部をケイ素化合物で被覆されたM2ドープ酸化物粒子の場合にあっては、平均モル吸光係数の上昇率である平均モル吸光係数上昇率が120%以上とできる利点がある。
【0039】
(M2ドープ酸化物粒子の好ましい形態−3)
本発明におけるM2ドープ酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する化合物は、ケイ素化合物を含むものであることが好ましく、非晶質のケイ素酸化物を含むものであることが更に好ましい。ケイ素化合物が非晶質のケイ素酸化物を含むことによって、M2ドープ酸化物粒子のモル吸光係数をさらに向上させ、反射率、透過率、色相、彩度等の色特性をより厳密に制御することが可能である。
【0040】
(M2ドープ酸化物粒子の製造方法:好ましい方法−1)
本発明に係るM2ドープ酸化物粒子の製造方法の一例として、M2ドープ酸化物粒子の原料を少なくとも含む酸化物原料液と、M2ドープ酸化物粒子を析出させるための酸化物析出物質を少なくとも含む酸化物析出溶媒とを用意し、酸化物原料液と酸化物析出溶媒とを混合させた混合流体中で、反応、晶析、析出、共沈等の方法でM2ドープ酸化物粒子を析出させて製造する方法を用いることが好ましい。M2ドープ酸化物粒子の表面の少なくとも一部を被覆する場合にあっては、上記析出させたM2ドープ酸化物粒子を含む上記混合流体と、被覆する化合物の一例として、ケイ素化合物の原料を少なくとも含むケイ素化合物原料液とを混合させて、M2ドープ酸化物粒子の表面の少なくとも一部をケイ素化合物で被覆することによってM2ドープ酸化物粒子を製造する方法を用いることが好ましい。また、M2ドープ酸化物粒子に含まれるM1とM2とは、上記酸化物原料液に一緒に含まれていてもよく、酸化物原料液と酸化物析出溶媒にそれぞれ含まれていてもよく、酸化物原料液と酸化物析出溶媒の両者又はケイ素化合物原料液に含まれていてもよい。
【0041】
本発明におけるM2ドープ酸化物粒子の原料としては、特に限定されない。反応、晶析、析出、共沈等の方法でM2ドープ酸化物粒子となるものであれば実施できる。また、本発明において、M1又はM2の化合物を化合物と総称する。化合物としては特に限定されないが、一例を挙げると、M1又はM2を含む金属若しくは半金属の塩や酸化物、水酸化物、水酸化酸化物、窒化物、炭化物、錯体、有機塩、有機錯体、有機化合物又はそれらの水和物、有機溶媒和物等が挙げられる。なお、M1又はM2の単体を用いることも可能である。金属又は半金属の塩としては、特に限定されないが、金属若しくは半金属の硝酸塩や亜硝酸塩、硫酸塩や亜硫酸塩、蟻酸塩や酢酸塩、リン酸塩や亜リン酸塩、次亜リン酸塩や塩化物、オキシ塩やアセチルアセトナート塩又はそれらの水和物、有機溶媒和物等が挙げられ、有機化合物としては金属又は半金属のアルコキシド等が挙げられる。以上、これらの金属又は半金属の化合物は単独で使用してもよく、複数以上の混合物として使用してもよい。本発明においては、M2ドープ酸化物粒子を構成するM1に対するM2のモル比(M2/M1)が0.01以上1.00以下であることが好ましい。
【0042】
また、本発明に係るM2ドープ酸化物粒子をケイ素化合物で被覆する場合のケイ素化合物の原料としては、ケイ素の酸化物や水酸化物、その他ケイ素の塩やアルコキシド等の化合物やそれらの水和物が挙げられる。特に限定されないが、ケイ酸ナトリウム等のケイ酸塩や、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−トリフルオロプロピル−トリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、及びTEOSのオリゴマ縮合物、例えば、エチルシリケート40、テトライソプロピルシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラブトキシシラン、及び同様の物質が挙げられる。さらにケイ素化合物の原料として、その他のシロキサン化合物、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1、9−ビス(トリエトキシシリル)ノナン、ジエトキシジクロロシラン、トリエトキシクロロシラン等を用いてもかまわない。これらは、粒子の表面を被覆するためだけに用いるものでは無く、上記M1又はM2を含む化合物としても用いることができる。
【0043】
また、M2ドープ酸化物粒子又は被覆するための化合物の原料が固体の場合には、各原料を溶融させた状態、又は後述する溶媒に混合又は溶解された状態(分子分散させた状態も含む)で用いることが好ましい。各原料が液体や気体の場合であっても、後述する溶媒に混合又は溶解された状態(分子分散させた状態も含む)で用いることが好ましい。
【0044】
酸化物析出物質としては、酸化物原料液に含まれるM2ドープ酸化物粒子の原料をM2ドープ酸化物粒子として析出させることができる物質であれば、特に限定されず、例えば、酸性物質又は塩基性物質を用いることができる。少なくとも酸化物析出物質を後述する溶媒に混合・溶解・分子分散させた状態で用いることが好ましい。
【0045】
塩基性物質としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の金属水酸化物、ナトリウムメトキシドやナトリウムイソプロポキシドのような金属アルコキシド、トリエチルアミン、ジエチルアミノエタノールやジエチルアミン等のアミン系化合物やアンモニア等が挙げられる。
【0046】
酸性物質としては、王水、塩酸、硝酸、発煙硝酸、硫酸、発煙硫酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、クエン酸等の有機酸が挙げられる。なお、上記塩基性物質及び酸性物質は、M2ドープ酸化物粒子又は被覆するための化合物を析出させるために使用することもできる。
【0047】
(溶媒)
酸化物原料液、酸化物析出溶媒に用いる溶媒としては、例えば水や有機溶媒、又はそれらの複数からなる混合溶媒が挙げられる。上記水としては、水道水、イオン交換水、純水、超純水、RO水(逆浸透水)等が挙げられ、有機溶媒としては、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物等が挙げられる。上記の溶媒はそれぞれ単独で使用してもよく、又は複数を混合して使用してもよい。アルコール化合物溶媒としては、メタノールやエタノール等の1価アルコールや、エチレングリコールやプロピレングリコール等のポリオール等が挙げられる。
【0048】
(分散剤等)
本発明においては、M2ドープ酸化物粒子の作製に悪影響を及ぼさない範囲において、目的や必要に応じて各種の分散剤や界面活性剤を用いてもよい。特に限定されないが、分散剤や界面活性剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品又は新規に合成したもの等を使用できる。一例として、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマー等の分散剤等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記の界面活性剤及び分散剤は、酸化物原料液、酸化物析出溶媒の少なくともいずれか1つの流体に含まれていてもよい。また、上記の界面活性剤及び分散剤は、酸化物原料液、酸化物析出溶媒とも異なる、別の流体に含まれていてもよい。
【0049】
(M2ドープ酸化物粒子の作製方法:方法概要−1)
本発明においては、まず、上述したとおり上記M2ドープ酸化物粒子に含まれる少なくともM1とM2とは、少なくとも共に粒子の内部に存在することが好ましく、析出等によってM2ドープ酸化物粒子を製造するに際して、異なる複数の元素(M1とM2)から構成される酸化物を実質的に同時に析出させることによって、M2ドープ酸化物粒子を作製することが好ましい。例えば、酸化亜鉛の原料として硝酸亜鉛六水和物などの亜鉛化合物(M1=Zn)とドープするための金属元素又は半金属元素(M2)を含む化合物とを酸性水溶液中に溶解した酸化物原料液と、水酸化ナトリウムのようなアルカリ金属水酸化物(酸化物析出物質)の水溶液である酸化物析出溶媒とを混合してM2ドープ酸化物粒子を析出させる場合においては、pHが1から2付近又は1未満である酸化物原料液に、pHが14以上のような酸化物析出溶媒を混合してM2ドープ酸化物粒子を析出させる必要がある。酸化物原料液に含まれるM1又はM2から構成される酸化物は、それぞれに析出し易いpHや温度等が異なるため、例えば酸性である酸化物原料液に塩基性である酸化物析出溶媒を徐々に滴下した場合には、上記酸化物原料液と酸化物析出溶媒の混合液のpHも徐々に酸性から塩基性に変化することとなり、まずM1とM2とのいずれか一方が析出し易いpH付近となった時点でM1又はM2の酸化物が析出し(析出し始め)、その後さらに酸化物析出溶媒を加えることで混合液のpHが塩基性側に変化した段階で上記先に析出した酸化物とは異なる他方の酸化物が析出するというような、M1から構成される酸化物粒子とM2から構成される酸化物粒子が段階的に析出することが考えられる。そして、その場合にあっては粒子の内部にM1とM2との両方を含むM2ドープ酸化物粒子を作製することが困難となる。上記混合液をM1の酸化物とM2の酸化物との何れもが析出するpHに瞬間的に調整することによって、見かけ上の析出を同時とできるために、少なくとも粒子の内部にM1とM2との両方を含むM2ドープ酸化物粒子を作製するための前提条件を整えることが可能となる。
【0050】
(M2ドープ酸化物粒子の作製方法:方法概要−2)
さらに、上記M2ドープ酸化物粒子の表面の少なくとも一部にケイ素化合物を被覆する場合にあっては、上記M2ドープ酸化物粒子が凝集する前に被覆することが好ましい。上記M2ドープ酸化物粒子を含む流体に、被覆する化合物の一例として、ケイ素化合物原料液を混合する際には、上記M2ドープ酸化物粒子が析出し、その後如何に凝集するよりも早い速度でケイ素化合物原料液を投入してケイ素化合物を上記M2ドープ酸化物粒子の表面に析出させるかが重要である。さらに、上記ケイ素化合物原料液を上記M2ドープ酸化物粒子を含む流体に投入することによって、上記M2ドープ酸化物粒子を含む流体のpH及びケイ素化合物原料の濃度が徐々に変化することとなり、粒子が分散しやすい状況から凝集しやすい状況となった後に粒子の表面を被覆するためのケイ素化合物が析出すると、上記本発明の特性を発揮できない程に凝集する前に被覆することが困難となる可能性がある。上記M2ドープ酸化物粒子が析出した直後に、ケイ素化合物原料液に含まれるケイ素化合物原料を作用させることが好ましい。
【0051】
(M2ドープ酸化物粒子の製造方法:装置)
本発明に係るM2ドープ酸化物粒子の製造方法の一例としては、例えば、マイクロリアクターを用いたり、バッチ容器内で希薄系での反応を行う等によってM2ドープ酸化物粒子を作製する等の方法が挙げられる。またM2ドープ酸化物粒子を作製するために、本願出願人によって提案された特開2009−112892号公報にて記載されたような装置及び方法を用いてもよい。特開2009−112892号公報に記載の装置は、断面形状が円形である内周面を有する攪拌槽と、該攪拌槽の内周面と僅かな間隙を在して付設される攪拌具とを有し、攪拌槽には、少なくとも二箇所の流体入口と、少なくとも一箇所の流体出口とを備え、流体入口のうち一箇所からは、被処理流体のうち、反応物の一つを含む第一の被処理流体を攪拌槽内に導入し、流体入口のうちで上記以外の一箇所からは、上記反応物とは異なる反応物の一つを含む第二の被処理流体を、上記第一の被処理流体とは異なる流路より攪拌槽内に導入するものであり、攪拌槽と攪拌具の少なくとも一方が他方に対し高速回転することにより被処理流体を薄膜状態とし、この薄膜中で少なくとも上記第一の被処理流体と第二の被処理流体とに含まれる反応物同士を反応させるものであり、三つ以上の被処理流体を攪拌槽に導入するために、同公報の図4及び5に示すように導入管を三つ以上設けてもよいことが記載されている。また上記マイクロリアクターの一例としては、特許文献6,7に記載の流体処理装置と同様の原理の装置が挙げられる。その他、ビーズミル等の粉砕法を用いる等してM2ドープ酸化物粒子を作製し、作製した後に反応容器内や上記マイクロリアクター等を用いてM2ドープ酸化物粒子被覆する処理を行ってもよい。
【0052】
(塗布用組成物又は透明材用組成物−1)
本発明の着色紫外線防御剤は紫外線の防御及び着色を目的とするものであり、一例として、塗布用組成物又は透明材用組成物に用いることが挙げられる。塗布用組成物としては、特に限定されるものではなく、例えば溶剤系塗料、水性塗料等種々の塗装に用いるための塗布用組成物や、口紅やファンデーション、サンスクリーン剤等の化粧料や皮膚に塗布することを目的とした塗布用組成物に適用することができる。透明材用組成物としては、透明性を求められる塗装体や建築用や乗り物用又はメガネに用いるガラス、透明樹脂やフィルム状組成物に用いるための組成物であり、例えばガラスや透明樹脂又はクリアー塗膜そのものに含まれる組成物や、あわせガラスの中間膜に含まれる組成物、ガラスや透明樹脂に貼付する等、ガラスと組み合わせるフィルム等に用いられるフィルム状組成物、ガラスに塗布するための塗料などが挙げられる。なお上記透明樹脂としては、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)等が挙げられる。
【0053】
(塗布用組成物又は透明材用組成物−2)
塗布用組成物又は透明材用組成物である、塗料や塗膜、化粧料等、若しくはガラスや透明樹脂の材料として用いる場合には本発明に係る着色紫外線防御剤であるM2ドープ酸化物粒子を、塗料や塗装体を形成する塗膜又は化粧料等の組成物に混合させる等の方法や、ガラスや硬化前のガラス、又は透明樹脂に直接練り込むことや、各種ガラス用の膜やフィルム、又はクリアー塗膜を形成するための組成物に混合させる等の方法で用いることで、紫外線を目的に応じて効果的に遮蔽し、且つ着色するために好適な着色紫外線防御目的塗布用組成物又は着色紫外線防御目的透明材用組成物とできる。上記着色紫外線防御目的塗布用組成物又は着色紫外線防御目的透明材用組成物は、必要に応じて、顔料、染料の他、湿潤剤、分散剤、色分れ防止剤、レベリング剤、粘度調整剤、皮張り防止剤、ゲル化防止剤、消泡剤増粘剤、タレ防止剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、近赤外反射剤、成膜助剤、界面活性剤、樹脂成分等の添加剤を、適宜、目的に応じてさらに含むことができる。塗装又はガラス同士の接着用の中間膜はフィルム状とすることを目的とする場合の樹脂成分としては、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂等を例示し得る。本発明の着色紫外線防御剤が含まれる塗料が適用される塗布物としては、単一の塗料組成物から構成される単層の塗布物であってもよく、特開2014−042891号公報や特開2014−042892号公報に記載のような積層塗膜用途のように、複数の塗料組成物から構成される複数層の塗布物であってもよく、また、顔料が含まれる塗料に含めて実施することもできるし、クリアー塗料等の塗料に含めて実施することもできる。上記フィルム状組成物を目的とする場合には、必要に応じてバインダー樹脂や硬化剤、硬化触媒やレベリング剤、界面活性剤やシランカップリング剤、消泡剤や顔料又は染料のような着色剤、酸化防止剤等を含有することができる。
【0054】
(塗布用組成物又は透明材用組成物−3)
本発明に係る着色紫外線防御目的塗布用組成物又は着色紫外線防御目的透明材用組成物は、M2ドープ酸化物粒子の粉末、液状の分散媒にM2ドープ酸化物粒子を分散させた分散体、及びガラスや樹脂等の固体(又は固化する前の液体等)にM2ドープ酸化物粒子を分散させた分散体等を含むものである。上記透明材用組成物に含まれるM2ドープ酸化物粒子は、1個のM2ドープ酸化物粒子から構成されていてもよく、複数個のM2ドープ酸化物粒子が凝集した凝集体から構成されていてもよく、両者の混合物であってもよい。複数個のM2ドープ酸化物粒子が凝集した凝集体から構成される場合、その凝集体の大きさが100nm以下であることが好ましい。また、上記着色紫外線防御目的塗布用組成物又は着色紫外線防御目的透明材用組成物は、各種の色材とともに使用してもよいし、塗膜としてガラスにオーバーコートするための組成物であってもよい。さらに上記着色紫外線防御目的塗布用組成物又は着色紫外線防御目的透明材用組成物が分散体の場合、分散媒としては、水道水、蒸留水、RO水(逆浸透水)、純水、超純水等の水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒;プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールやグリセリン等の多価アルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;シリコーンオイルや植物オイル、ワックス等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、複数を混合して使用してもよい。
【0055】
(塗布用組成物又は透明材用組成物の色)
本発明に係る着色紫外線防御目的塗布用組成物又は着色紫外線防御目的透明材用組成物に用いられる塗布物、又は紫外線防御目的透明材用組成物に用いるフィルムやガラス等の透明材の色としては、特に限定されず、目的の色相に対して本発明の着色紫外線防御目的塗布用組成物又は着色紫外線防御目的透明材用組成物を用いることができる。また本発明のM2ドープ酸化物粒子は、上記モル比(M2/M1)を制御することによって、厳密かつ正確な色特性が制御できるため、着色紫外線防御目的着色用組成物として用いた場合においても好適である。本発明に係る塗布用、透明材用又は着色用組成物は上記M2ドープ酸化物粒子を含むことによって、建物や乗り物等に用いられる塗料や塗装体などの塗布物に用いた場合や、クリアー塗膜やガラス、若しくはディスプレイやコンタクトレンズ等のフィルム状組成物等の透明材に用いた場合の紫外線防御能を高め、建物や乗り物等の塗装体に含まれる有機物等の分解や人体においては皮膚の損傷等を抑制し、また建築物や乗り物に用いられるガラスを透過した紫外線が室内の有機物や機器類を損傷すること等を抑制でき、尚かつ使用量の低減やそれによって可視光線に対して高い透過特性を示すためにガラスやクリアー塗膜等の透明感の向上にも寄与できるだけでなく、色相等の色特性を厳密に制御できるために、美観や質感、意匠性を高めることができる。
【0056】
(塗布用組成物、透明材用組成物又は着色用組成物の色)
塗布物や透明材の色としては、白色系やグレー系、又は黒色系、例えばマンセル表色系における明度10の白色から明度0の黒色を備えた色や、赤色系、例えばマンセル色相環でRPからYRの色相を備えた色や、黄色から緑色系、例えばマンセル色相環でYからBGの色相を備えた色や、青色から紫色系、例えばマンセル色相環でBからPの色素を備えた色(それぞれ、メタルカラーを含む)の塗布物に用いられる塗布用組成物に好適に配合することができる。しかしこれに限るものではなく、他の色相の色であってもかまわない。また、特にそれらの色を呈する塗膜や塗装体のトップコートに、本発明のM2ドープ酸化物粒子を含む塗布用組成物又は透明材用組成物を用いることによって、各色の発色を損なうことを著しく低減できるだけでなく効果的に着色できるため、塗装体の意匠性を高めるための着色用組成物としても好適である。塗布用、透明材用又は着色用組成物に必要に応じて含まれる顔料や染料は、種々の顔料や染料を用いることができ、例えばカラーインデックスに登録される全ての顔料や染料を用いることができる。その中でも例えば、緑色を構成する顔料にあってはC.I.Pigment Greenに分類される顔料並びに染料、青色を構成する顔料にあっては、C.I.Pigment Blueに分類される顔料並びに染料、白色を構成する顔料にあってはC.I.Pigment Whiteに分類される顔料並びに染料、黄色を構成する顔料にあってはC.I.Pigment Yellowに分類される顔料並びに染料、赤色を構成する顔料や染料にあっては、カラーインデックスにおいてC.I.Pigment Redに分類される顔料並びに染料、C.I.Pigment VioletやC.I.Pigment Orangeに分類される顔料並びに染料等が挙げられる。より具体的にはC.I.Pigment Red 122やC.I.Pigment Violet 19のようなキナリドン系顔料やC.I.Pigment Red 254やC.I.Pigment Orange 73のようなジケトピロロピロール系顔料、C.I.Pigment Red 150やC.I.Pigment Red 170のようなナフトール系顔料やC.I.Pigment Red 123やC.I.Pigment Red 179のようなペリレン系顔料やC.I.Pigment Red 144のようなアゾ系顔料等が挙げられる。これらの顔料並びに染料は、単独で用いてもよいし、複数を混合して使用してもよい。なお、本発明のM2ドープ酸化物粒子を含む組成物は、上記顔料及び染料等と混合せずに単独で塗布用、透明材用又は着色用組成物に配合することも可能である。
【実施例】
【0057】
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例における純水は、特に記載のないものについては導電率が0.80μS/cm(測定温度:20℃)の純水を用いた。
【0058】
(TEM観察用試料作製とSTEM観察用試料作製)
実施例で得られたM2ドープ酸化物粒子のウェットケーキサンプルの一部をプロピレングリコールに分散させ、更にイソプロピルアルコール(IPA)で100倍に希釈した。得られた希釈液をコロジオン膜又はマイクログリッドに滴下して乾燥させて、TEM観察用試料又はSTEM観察用試料とした。
【0059】
(透過型電子顕微鏡及びエネルギー分散型X線分析装置:TEM−EDS分析)
TEM−EDS分析によるM2ドープ酸化物粒子の観察及び定量分析には、エネルギー分散型X線分析装置、JED−2300(日本電子株式会社製)を備えた透過型電子顕微鏡、JEM2100(日本電子株式会社製)を用いた。観察条件としては、加速電圧を80kV、観察倍率を2万5千倍以上とした。TEMによって観察されたM2ドープ酸化物粒子の最大外周間の距離より粒子径を算出し、100個の粒子について粒子径を測定した結果の平均値(平均一次粒子径)を算出した。TEM−EDSによって、ケイ素化合物被覆金属元素ドープ金属酸化物を構成する元素成分のモル比を算出し、10個以上の粒子についてモル比を算出した結果の平均値を算出した。
【0060】
(走査透過型電子顕微鏡及びエネルギー分散型X線分析装置:STEM−EDS分析)
STEM−EDS分析による、M2ドープ酸化物粒子中に含まれる元素のマッピング及び定量には、エネルギー分散型X線分析装置、Centurio(日本電子株式会社製)を備えた、原子分解能分析電子顕微鏡、JEM−ARM200F(日本電子株式会社製)を用いた。観察条件としては、加速電圧を80kV、観察倍率を5万倍以上とし、直径0.2nmのビーム径を用いて分析した。
【0061】
(X線回折測定)
X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置 EMPYREAN(スペクトリス株式会社PANalytical事業部製)を使用した。測定条件は、測定範囲:10から100[°2Theta] Cu対陰極、管電圧45kV、管電流40mA、走査速度0.3°/minとした。各実施例で得られたM2ドープ酸化物粒子の乾燥粉体を用いてXRD測定を行った。
【0062】
(吸収スペクトル、反射スペクトル測定を用いた色相及び彩度)
吸収スペクトル、L値、a値、b値、色相、及び彩度は、紫外可視近赤外分光光度計(製品名:V−770、日本分光株式会社製)を使用して測定した。吸収スペクトルの測定範囲は200nmから800nmとし、サンプリングレートを0.2nm、測定速度を低速として測定した。モル吸光係数は、吸収スペクトルを測定後、測定結果から得られた吸光度と分散液中のM2ドープ酸化物粒子の濃度より、各測定波長におけるモル吸光係数を算出し、横軸に測定波長、縦軸にモル吸光係数を記載したグラフとした。測定には、厚み1cmの液体用セルを用いた。また、波長200nmから380nmの複数の測定波長におけるモル吸光係数を単純平均し、平均モル吸光係数を算出した。
【0063】
反射スペクトルは、測定範囲を200nmから2500nmとし、サンプリングレートを2.0nm、測定速度を中速、測定方式はダブルビーム測光方式として測定し、正反射と拡散反射とを測定する全反射測定を行った。また粉末を測定する際のバックグラウンド測定(ベースライン設定)には、標準白板(製品名:Spectralon(商標)、Labsphere製)を使用した。各実施例で得られたM2ドープ酸化物粒子の乾燥粉体を用いて反射スペクトルを測定した。色相及び彩度は反射スペクトル測定結果より、表色系をL表色系、視野を2(deg)、光源をD65−2、等色関数をJIS Z 8701:1999、データ間隔を5nmとして測定し、取得されたL、a、bそれぞれの値より、色相H=b/a、彩度C=√((a+(b*))の式を用いて算出した。
【0064】
(実施例1)
実施例1のM2ドープ酸化物粒子として、酸化亜鉛にM2としてコバルト、マンガン、鉄、マグネシウム又はコバルト及びアルミニウムをドープしたM1が亜鉛であるM2ドープ酸化亜鉛粒子について記載する(Co−ZnO、Mn−ZnO、Fe−ZnO、Mg−ZnO、(Co+Al)−ZnO)。高速回転式分散乳化装置であるクレアミックス(製品名:CLM2.2S、エム・テクニック株式会社製)を用いて、酸化物原料液(A液)、酸化物析出溶媒(B液)、及び粒子の表面の少なくとも一部をケイ素化合物で被覆する場合にあってはケイ素化合物原料液(C液)を調製した。具体的には表1の実施例1に示す酸化物原料液の処方に基づいて、酸化物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度40℃、ローター回転数を20000rpmにて30分間攪拌することにより均質に混合し、酸化物原料液を調製した。また、表1の実施例1に示す酸化物析出溶媒の処方に基づいて、酸化物析出溶媒の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度45℃、ローターの回転数15000rpmにて30分間攪拌することにより均質に混合し、酸化物析出溶媒を調製した。表1の実施例1に示すケイ素化合物原料液の処方に基づいて、ケイ素化合物原料液の各成分を、クレアミックスを用いて、調製温度20℃、ローターの回転数6000rpmにて10分間攪拌することにより均質に混合し、ケイ素化合物原料液を調製した。なお、表1に記載の化学式や略記号で示された物質については、Zn(NO・6HOは硝酸亜鉛六水和物(関東化学株式会社製)、Co(NO・6HOは硝酸コバルト六水和物(関東化学株式会社製)、Mn(NO・6HOは硝酸マンガン六水和物(関東化学株式会社製)、Al(NO・9HOは硝酸アルミニウム九水和物(関東化学株式会社製)、Fe(NO・9HOは硝酸鉄九水和物(関東化学株式会社製)、Mg(NO・6HOについては硝酸マグネシウム六水和物(関東化学株式会社製)、TEOSについてはテトラエチルオルトシリケート(和光純薬工業株式会社製)、EGはエチレングリコール(キシダ化学株式会社製)、MeOHはメタノール(株式会社ゴードー製)、NaOHは水酸化ナトリウム(関東化学株式会社製)を使用した。
【0065】
表2に、流体処理装置の運転条件、並びに得られたM2ドープ酸化亜鉛粒子のTEM観察結果より算出した平均一次粒子径及びTEM−EDS分析より算出したモル比(M2/M1)をA液、B液及びC液の処方及び導入流量より計算した計算値とともに示す。ここで、表2に示したモル比(M2/M1)の内、M2ドープ酸化物粒子[計算値]については、A液中に含まれるM1とM2とのモル濃度より算出した結果である。[EDS]においては、上述通りTEM−EDSによって、粒子を構成する元素成分のモル比(M2/M1)を算出した結果の平均値である。表2に示したA液、B液及びC液の導入温度(送液温度)と導入圧力(送液圧力)は、処理用面1、2間に通じる密封された導入路(第1導入部d1、第2導入部d2及び第3導入部d3)内に設けられた温度計と圧力計とを用いて測定したものであり、表2に示したA液の導入温度は、第1導入部d1内の導入圧力下における実際のA液の温度であり、同じくB液の導入温度は、第2導入部d2内の導入圧力下における実際のB液の温度であり、C液の導入温度は、第3導入部d3内の導入圧力下における実際のC液の温度である。
【0066】
pH測定には、株式会社堀場製作所製の型番D−51のpHメーターを用いた。A液及びB液を流体処理装置に導入する前に、そのpHを室温にて測定した。また、酸化物原料液と酸化物析出溶媒との混合直後の混合流体のpH、並びに上記酸化物原料液と酸化物析出溶媒との混合後の液と、ケイ素化合物原料液との混合直後の液のpHを測定することは困難なため、同装置から吐出させ、ビーカーbに回収したM2ドープ酸化物粒子分散液のpHを室温にて測定した。
【0067】
流体処理装置から吐出させ、ビーカーbに回収したM2ドープ酸化物粒子分散液から、乾燥粉体とウェットケーキサンプルを作製した。作製方法は、この種の処理の常法に従い行ったもので、吐出されたM2ドープ酸化物粒子分散液を回収し、M2ドープ酸化物粒子を沈降させて上澄み液を除去し、その後、純水100重量部での洗浄と沈降とを繰り返し3回行い、その後に純水での洗浄と沈降とを繰り返し3回行うことでM2ドープ酸化物粒子を洗浄し、最終的に得られたM2ドープ酸化物粒子のウェットケーキの一部を−0.10MPaGにて25℃、20時間乾燥させて乾燥粉体とした。残りをウェットケーキサンプルとした。また実施例1−1、実施例1−9及び実施例1−10で得られたM2ドープ酸化亜鉛粒子粉末を、電気炉を用いて熱処理することによって、色特性変化させた。実施例1−1の粉末を200℃(実施例1−18)、300℃(実施例1−19)、実施例1−9の粉末を300℃(実施例1−16)、実施例1−10の粉末を300℃(実施例1−17)で熱処理した。熱処理時間は全て30分間である。
【0068】
また表1、2に示したように、比較例1においては、M2をドープしていない酸化亜鉛粒子を作製した。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
図1に、実施例1−11で得られたコバルトアルミニウムドープ酸化亜鉛粒子のSTEMマッピング結果を示す。(a)は暗視野像(HAADF)であり、(b)は酸素(O)、(c)は亜鉛(Zn)、(d)はアルミニウム(Al)、(e)はコバルト(Co)のマッピング結果である。HAADF像及びマッピング結果に見られるように、全ての元素が粒子全体にわたって検出されていることがわかる。亜鉛、アルミニウム及びコバルトは略同一の粒子径の範囲においてランダムに検出されており、亜鉛とアルミニウムとコバルトとの固溶体酸化物を形成しているものと考えられる。図2は、図1のHAADF像において、破線を施した位置での線分析の結果であり、粒子の端から端までの線部分において検出された元素の原子%(モル%)を示した結果である。図2に見られるように、全ての元素について、線分析における分析範囲の両端まで検出された。コバルトにおいては、粒子全体に含まれる原子%が他の元素に比べて低いため、検出されていない部分(原子%=0)も見られるが、粒子全体にわたってCoについても検出されていると考えられる。また、実施例1−1から実施例1−15の全ての実施例において、実施例1−11と同様のSTEMマッピング及び線分析結果が得られた。さらに実施例1−15においては、ケイ素化合物によって、粒子の表面を被覆しているため、亜鉛とコバルトの固溶体酸化物の一層外側にも、ケイ素及び酸素が検出され、コバルトドープ酸化亜鉛粒子表面をケイ素化合物で被覆されている粒子であることがわかった。なお、比較例1の酸化亜鉛粒子については、M2をドープしていないため、STEMのマッピング及び線分析において、M2が検出されないこと以外は実施例1−1から実施例1−15と同様の粒子が観察された。
【0072】
図3に実施例1−11で得られたコバルトアルミニウムドープ酸化亜鉛粒子のXRD測定結果及び比較例1で得られた酸化亜鉛粒子のXRD測定結果を示す。図3に見られるように、実施例1−11で得られたコバルトアルミニウムドープ酸化亜鉛粒子及び比較例1で得られた酸化亜鉛粒子のXRD測定結果より、いずれも酸化亜鉛(ZnO)に同定できるピークが検出されているが、実施例1−11では比較例1に比べてブロードなピークとして検出されており、粒子の内部にコバルトとアルミニウムとが取り込まれたために、酸化亜鉛の結晶に歪が生じた可能性が考えられる。さらに、実施例1−1から実施例1−15で得られた粒子についても実施例1−11と同様のXRD測定結果が得られた。
【0073】
図4に、実施例1−1から実施例1−5で得られたコバルトドープ酸化亜鉛粒子、及び比較例1で得られた酸化亜鉛粒子をプロピレングリコールに分散させた分散液の吸収スペクトルと測定に用いた分散液中のコバルトドープ酸化亜鉛粒子(ZnO+CoO(M2)として換算)又は酸化亜鉛粒子(ZnOとして換算)のモル濃度より算出したモル吸光係数を測定波長に対するグラフとした図を示す。図4に見られるように、コバルトドープ酸化亜鉛粒子の波長200nmから380nmの範囲におけるモル吸光係数が、比較例1の酸化亜鉛粒子の同モル吸光係数に比べて向上していることがわかる。また、表3に、実施例1−1から実施例1−15で得られたM2ドープ酸化亜鉛粒子のM2/M1(モル比)と波長200nmから380nmにおける平均モル吸光係数を比較例1で得られた酸化亜鉛粒子の波長200nmから380nmにおける平均モル吸光係数とともに示す。平均一次粒子径が同等であるため、比表面積が同等としての評価と考えることができる。さらに表3には、比較例1の波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数に対する、各実施例で得られたM2ドープ酸化亜鉛粒子の同波長領域における平均モル吸光係数の上昇率(平均モル吸光係数上昇率)を記載した。なお、上記M2におけるCo以外の元素におけるモル吸光係数換算時の分散液中の濃度について、SiはSiO、FeはFe、MnはMnO、MgはMgO、AlはAlとしてモル吸光係数に換算した。
【0074】
また、表3には、実施例1−1から実施例1−19で得られたM2ドープ酸化亜鉛粒子、及び比較例1で得られた酸化亜鉛粒子のL,a、b測定値及びその結果より算出した色相H及び彩度Cを示した。
【0075】
【表3】
【0076】
表3に見られるように、波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数が、M2をドープしていない酸化亜鉛粒子に比して向上されていることがわかる。また、M2をドープしていない酸化亜鉛粒子を分散媒に分散させた分散液の波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数に対して、上記M2ドープ酸化亜鉛粒子の上記波長の範囲における平均モル吸光係数の上昇率が向上していることがわかる。また、ケイ素化合物で粒子の表面の少なくとも一部を被覆した場合(実施例1−15)においては、ケイ素化合物で粒子の表面を被覆していない同酸化物粒子(実施例1−3)に比べて、波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数が向上していることがわかった。いずれの場合においても塗布用、透明材用組成物に用いた場合には、塗布物や透明材に含まれる紫外線によって劣化する物質に対する防御や、塗布物や透明材を通過した紫外線が対象物を劣化又は分解するなどから効率的に防御できる利点がある。上記対象物とは、例えば塗布物にあっては、人体における皮膚や、塗装体の下地等、また透明材としてガラスを有する室内の機器類や装飾品等である。
【0077】
図5に、表3に示したL、a、bよりL表色系色度図にプロットした図を示す。図5に見られるように、M2の種及び濃度を変更することで、L,a,b表色系における、40≦L≦95、−35≦a≦35、又は−35≦b≦35の範囲、好ましくは40≦L≦95、−30≦a≦30、又は−30≦b≦30の範囲において厳密に色特性を制御できることがわかった。官能基の変更処理又は酸化数の変更処理として行った熱処理によっても、上記範囲内において厳密な色特性の制御ができることがわかった。
【0078】
以上より、酸化亜鉛粒子にM2をドープすることによって、紫外線遮蔽能が向上され、なお且つモル比(M2/M1)を制御することによって、色特性が制御された各種の組成物を提供できることがわかった。
【0079】
(実施例2)
実施例2のM2ドープ酸化物粒子として、M1に鉄を用いたM2ドープ酸化鉄粒子を作製した。表4及び表5に示した以外は実施例1と同様の方法で作製した。また実施例2−3で得られたM2ドープ酸化鉄粒子粉末を電気炉を用いて熱処理することによって、色特性を変化させた。実施例2−3の粉末を150℃(実施例2−9)、200℃(実施例2−10)、300℃(実施例2−11)で熱処理した。熱処理時間は全て30分間である。また比較例1と同様に、M2をドープしていない同粒子径の酸化鉄粒子を作製した(比較例2)。実施例1と同じ方法で行った分析結果を表6に示す。なお、STEM及びXRD測定結果は、実施例1と同様の結果が得られた。また、表4に記載の化学式や略記号で示された物質については、Fe(NO・9HOは硝酸鉄九水和物(関東化学株式会社製)、Al(NO・9HOは硝酸アルミニウム九水和物(関東化学株式会社製)、Mg(NO・6HOについては硝酸マグネシウム六水和物(関東化学株式会社製)、Mn(NO・6HOは硝酸マンガン六水和物(関東化学株式会社製)、24wt%TiSOは、硫酸チタン(IV)溶液(関東化学株式会社製、>24.0%:Ti(SOとして)、Zn(NO・6HOは硝酸亜鉛六水和物(関東化学株式会社製)、TEOSについてはテトラエチルオルトシリケート(和光純薬工業株式会社製)、EGはエチレングリコール(キシダ化学株式会社製)、MeOHはメタノール(株式会社ゴードー製)、NaOHは水酸化ナトリウム(関東化学株式会社製)を使用した。実施例2−1から実施例2−11で得られたM2ドープ酸化鉄粒子及び比較例2で得られた酸化鉄粒子のモル吸光係数換算時には、FeはFe、CoはCoO、MnはMnO、TiはTiO、MgはMgO、AlはAlとして、吸収スペクトル測定結果をモル吸光係数に換算した。
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
表6に見られるように、波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数が、M2をドープしていない酸化鉄粒子に比して向上されていることがわかる。また、M2をドープしていない酸化鉄粒子を分散媒に分散させた分散液の波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数に対して、上記M2ドープ酸化鉄粒子の上記波長の範囲における平均モル吸光係数の上昇率が向上していることがわかる。また、ケイ素化合物で粒子の表面の少なくとも一部を被覆した場合(実施例2−11)においては、ケイ素化合物で粒子の表面を被覆していない同酸化物粒子(実施例2−1)に比べて、波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数が向上していることがわかった。実施例1と同様に、いずれの場合においても塗布用、透明材用組成物に用いた場合には、塗布物や透明材に含まれる紫外線によって劣化する物質に対する防御や、塗布物や透明材を通過した紫外線が対象物を劣化又は分解するなどから効率的に防御できる利点がある。
【0084】
図6に、表6に示したL、a、bよりL表色系色度図にプロットした図を示す。なお、実施例2−7で得られたM2ドープ酸化鉄粒子のLについては、他のM2ドープ酸化鉄粒子とは大きく異なるため、プロットしていない。図6に見られるように、M2の種及び濃度を変更することで、L,a,b表色系における、38≦L≦44、4≦a≦14、又は4≦b≦12の範囲において厳密に色特性を制御できることがわかった。官能基の変更処理又は酸化数の変更処理として行った熱処理によっても、上記範囲内において厳密な色特性の制御ができることがわかった。また、実施例2−1から実施例2−3に見られるように、M2/M1が同じ場合であっても、M2ドープ酸化物粒子を析出させる際のpHを変更することによって、L値,a値,b値、色相又は彩度を変更できることがわかった。
【0085】
以上より、実施例1と同様に、酸化鉄粒子にM2をドープすることによって、紫外線遮蔽能が向上され、なお且つモル比(M2/M1)を制御することによって、色特性が制御された各種の組成物を提供できることがわかった。
【0086】
(実施例3)
実施例3のM2ドープ酸化物粒子として、M1にチタンを用いたM2ドープ酸化チタン粒子を作製した。表7及び表8に示した以外は実施例1と同様の方法で作製した。また比較例1と同様に、M2をドープしていない同粒子径の酸化チタン粒子を作製した(比較例3)。実施例1と同じ方法で行った分析結果を表9に示す。なお、STEM及びXRD測定結果は、実施例1と同様の結果が得られた。なお、表7に記載の化学式や略記号で示された物質については、TiOSO・nHOは硫酸チタニル(キシダ化学株式会社製)、TEOSについてはテトラエチルオルトシリケート(和光純薬工業株式会社製)、Fe(NO・9HOは硝酸鉄九水和物(関東化学株式会社製)、Co(NO・6HOは硝酸コバルト六水和物(関東化学株式会社製)、Mn(NO・6HOは硝酸マンガン六水和物(関東化学株式会社製)、97wt% HSOは濃硫酸(キシダ化学株式会社製)、EGはエチレングリコール(キシダ化学株式会社製)、MeOHはメタノール(株式会社ゴードー製)、NaOHは水酸化ナトリウム(関東化学株式会社製)を使用した。実施例3−1から実施例3−17で得られたM2ドープ酸化チタン粒子及び比較例3で得られた酸化チタン粒子のモル吸光係数換算時には、TiはTiO、FeはFe、CoはCoO、MnはMnO、SiはSiOとして、吸収スペクトル測定結果をモル吸光係数に換算した。
【0087】
【表7】
【0088】
【表8】
【0089】
【表9】
【0090】
表9に見られるように、波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数が、M2をドープしていない酸化チタン粒子に比して向上されていることがわかる。また、M2をドープしていない酸化チタン粒子を分散媒に分散させた分散液の波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数に対して、上記M2ドープ酸化鉄粒子の上記波長の範囲における平均モル吸光係数の上昇率が向上していることがわかる。また、ケイ素化合物で粒子の表面の少なくとも一部を被覆した場合(実施例3−14)においては、ケイ素化合物で粒子の表面を被覆していない同酸化物粒子(実施例3−2)に比べて、波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数が向上していることがわかった。実施例1と同様に、いずれの場合においても塗布用、透明材用組成物に用いた場合には、塗布物や透明材に含まれる紫外線によって劣化する物質に対する防御や、塗布物や透明材を通過した紫外線が対象物を劣化又は分解するなどから効率的に防御できる利点がある。
【0091】
図7に、表9に示したL、a、bよりL表色系色度図にプロットした図を示す。図7に見られるように、M2の種及び濃度を変更することで、L,a,b表色系における、40≦L≦95、−35≦a≦35、又は−35≦b≦35の範囲、好ましくは40≦L≦95、−30≦a≦30、又は−30≦b≦30の範囲において厳密に色特性を制御できることがわかった。
【0092】
以上より、実施例1と同様に、酸化チタン粒子にM2をドープすることによって、紫外線遮蔽能が向上され、なお且つモル比(M2/M1)を制御することによって、色特性が制御された各種の組成物を提供できることがわかった。
【0093】
(実施例4)
実施例4として、特開2009−112892号公報に記載の装置並びにA液(金属元素ドープ酸化鉄原料液)、B液(酸化物析出溶媒)及びC液(ケイ素化合物原料液)の混合・反応方法を用いた以外は、実施例1と同じ条件とすることでM2ドープ酸化亜鉛粒子を作製した。ここで、特開2009−112892号公報の装置とは、同公報の図1に記載の装置を用い、撹拌槽の内径が80mm、攪拌具の外端と攪拌槽の内周側面と間隙が0.5mm、攪拌羽根の回転数は7200rpmとした。また、撹拌槽にA液を導入し、攪拌槽の内周側面に圧着されたA液からなる薄膜中にB液を加えて混合し反応させた。TEM観察の結果、一次粒子径が20nmから30nm程度のM2ドープ酸化亜鉛粒子が観察された。また比較例1と同様に、M2をドープしていない同粒子径の酸化亜鉛粒子を作製した(比較例4)。
【0094】
実施例4−1から実施例4−8で得られたM2ドープ酸化亜鉛粒子のSTEMを用いたマッピング及び線分析の結果及びXRD測定結果は、実施例1と同様の結果が得られた
(図示無)。
【0095】
表10に、実施例4−1から実施例4−8で得られたM2ドープ酸化亜鉛粒子について実施例1と同じ評価を行った結果を示す。実施例4−1から実施例4−8で得られたM2ドープ酸化亜鉛粒子及び比較例4で得られた酸化亜鉛粒子のモル吸光係数換算時には、ZnはZnOとして、FeはFe、CoはCoO、MnはMnO、SiはSiO、MgはMgO、AlはAlとして、吸収スペクトル測定結果をモル吸光係数に換算した。
【0096】
【表10】
【0097】
表10に見られるように、実施例1とは異なり、特許文献6又は7に記載の装置とは異なる装置を用いてM2ドープ酸化亜鉛粒子を作製した場合に有っても、酸化亜鉛粒子に亜鉛とは異なる金属元素をドープすることによって、紫外線遮蔽能が向上され、なお且つモル比(M2/M1)を制御することによって、色特性が制御された各種の組成物を提供できることがわかった。

【要約】
本発明は、波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数が高められ、且つ可視領域における色特性が制御された、着色紫外線防御剤を提供することを目的とし、紫外線を遮蔽し、且つ着色する目的に使用される着色紫外線防御剤であり、上記着色紫外線防御剤が、金属元素又は半金属元素であるM1を少なくとも含む酸化物粒子(M1Ox)に、M1とは異なる金属元素又は半金属元素から選ばれる少なくとも一種のM2がドープされたM2ドープ酸化物粒子を含むものであり、上記xは任意の正数であり、上記M2ドープ酸化物粒子を分散媒に分散させた分散液の波長200nmから380nmの範囲における平均モル吸光係数が、酸化物粒子(M1Ox)を分散媒に分散させた分散液に比べて向上されており、且つ上記M2ドープ酸化物粒子は、可視領域における色特性である色相又は彩度が制御されていることを特徴とする着色紫外線防御剤を提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7