【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、コンクリート表面の目視観察によることなく、締固めの終了タイミングを客観的に判断することが可能なコンクリートの締固め判定方法及びシステムを提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係るコンクリートの締固め判定方法は請求項1に記載したように、コンクリート打設領域にコンクリートを投入し、
外力を受けて振動するように構成されてなる受振部材を前記投入工程と同時に又は相前後して該受振部材の少なくとも一部が前記コンクリートに埋め込まれるように前記コンクリート打設領域に配置し、
前記コンクリートに埋入された加振部材を作動させることで該コンクリートに対する締固め操作を行い、
前記締固め操作の間、前記加振部材の作動によって前記受振部材に発生する振動を
振動計測手段で計測するとともに該振動の時刻変化を分析し、
該分析結果を用いて前記加振部材による締固め操作の終了タイミングを判定するものである。
【0010】
また、本発明に係るコンクリートの締固め判定方法は、前記振動を加速度で評価するとともに、該加速度の卓越振動数が前記加振部材の加振振動数にほぼ一致したとき、前記加振部材による締固め操作を終了すべきと判定するものである。
【0011】
また、本発明に係るコンクリートの締固め判定方法は、前記振動を速度で評価するとともに、該速度の二乗累積値の増加割合が減少に転じたとき、前記加振部材による締固め操作を終了すべきと判定するものである。
【0012】
また、本発明に係るコンクリート締固めシステムは請求項4に記載したように、コンクリートを締め固めることができるように構成された加振部材の作動によって振動するように構成された受振部材と、
前記受振部材に発生する振動を計測するようになっている振動計測手段と、
該振動計測手段で得られた前記振動の時刻変化を分析するとともに該分析結果を用いて前記加振部材による締固め操作の終了タイミングを判定する演算処理手段と、
前記加振部材による締固め操作の終了タイミングを通知する通知手段とを備え、
前記演算処理手段は、前記振動計測手段から出力された加速度の卓越振動数が前記加振部材の加振振動数にほぼ一致したとき、又は前記振動計測手段による計測値から速度の二乗累積値を演算するとともに該速度の二乗累積値の増加割合が減少に転じたとき、前記加振部材による締固め操作が終了されるべきと判定するようになっているとともに、該判定に応答して前記通知手段を作動させる作動信号を該通知手段に送出するようになっているものである。
【0013】
また、本発明に係るコンクリート締固めシステムは、前記加振部材を自走式のコンクリート締固め機に搭載された加振部材で構成するとともに、該加振部材から離間した位置であって前記コンクリート締固め機を構成するベースマシンに設置されたブーム若しくはアーム又はそれらに取り付けられた取付け治具に前記受振部材を取り付けたものである。
【0014】
第1の発明に係るコンクリートの締固め判定方法においては、まず、コンクリート打設領域にコンクリートを投入する。
【0015】
次に、上述した投入工程と同時に又は相前後して、少なくとも一部がコンクリートに埋め込まれるようにコンクリート打設領域に受振部材を配置する。
【0016】
受振部材は、外力を受けて振動するように構成しておく。
【0017】
次に、コンクリートに埋入された加振部材を作動させることにより、該コンクリートに対する締固め操作を行う。
【0018】
このようにすると、加振部材で生じた振動は、弾性波の形で周囲のコンクリートに伝播して受振部材に到達し、その際、受振部材は、外力を受けて振動するように構成してあるため、到達した弾性波に応答する形で振動するが、コンクリートの締固めが未だ進行していない段階では、コンクリート内に気泡や空隙が混じっている状態であって密度も小さいため、周囲に拡がるコンクリートからの影響は比較的小さく、受振部材の振動性状は、該受振部材の構造特性に基づく要因が支配的となる。
【0019】
一方、コンクリートの締固めが進行すると、コンクリート内の気泡や空隙が排除されて密度も大きくなるため、受振部材は、周囲に拡がるコンクリートからの影響が大きくなり、その振動性状は、コンクリートを介して弾性波として伝播してきた加振部材の振動特性に基づく要因が支配的となる。
【0020】
すなわち、締固め操作の間、加振部材の作動によって受振部材に発生する振動を計測するとともに該振動の時刻変化を分析すれば、コンクリートにおける締固めの進行状況を推定することができるので、その分析結果を用いて加振部材による締固め操作の終了タイミングを判定する。
【0021】
このようにすれば、作業員の目視観察による判断に頼ることなく、客観的に締固め操作の終了タイミングを判定することができるとともに、マスコンクリートのように本来的に目視観察が不可能な場合であっても、コンクリートの締固め状況を客観的に判断することが可能となる。
【0022】
受振部材の振動性状は、コンクリートの締固めが進行するに伴い、上述したように、受振部材の構造特性に基づく要因が支配的な振動性状から、加振部材の振動特性に基づく要因が支配的な振動性状へと変化するが、振動の時刻変化をどのように把握するかは任意であり、加速度、速度、変位のいずれで振動の時刻変化を評価するかは適宜選択可能であるとともに、振動の時刻変化を振動数の変化として捉えるか、位相の変化として捉えるか、あるいは振幅の変化として捉えるかも任意である。
【0023】
具体的な構成としては例えば、上述の振動を加速度で評価するとともに、該加速度の卓越振動数が加振部材の加振振動数にほぼ一致したとき、加振部材による締固め操作を終了すべきと判定する手順や、上述の振動を速度で評価するとともに、該速度の二乗累積値の増加割合が減少に転じたとき、加振部材による締固め操作を終了すべきと判定する手順を採用することが可能である。
【0024】
受振部材は、外力を受けて振動するように構成される限り、その構成は任意であって、例えば円筒状、角筒状、山形状、H状などの断面を有する鋼製の長尺部材で構成することが可能である。
【0025】
また、受振部材は、コンクリートを投入する前にコンクリート打設領域に先行配置する構成のみならず、コンクリートの投入とともに又はその後に該コンクリートに埋入する形でコンクリート打設領域に配置する構成も包摂されるものであり、前者の具体的構成としては、先行打設リフトの上面に立設する構成や、鉄筋架台に固定する構成を採用することが可能である。
【0026】
第2の発明に係るコンクリート締固め判定システムは、コンクリートを締め固めることができるように構成された加振部材の作動によって振動するように構成された受振部材と、前記受振部材に発生する振動を計測するようになっている振動計測手段と、該振動計測手段で得られた前記振動の時刻変化を分析するとともに該分析結果を用いて前記加振部材による締固め操作の終了タイミングを判定する演算処理手段と、前記加振部材による締固め操作の終了タイミングを通知する通知手段とを備えてなる。
【0027】
第2の発明に係るコンクリート締固め判定システムを用いてコンクリートの締固めの程度を判定するには、コンクリート打設領域にコンクリートを投入するとともに、該投入と同時に又は相前後してコンクリートに埋め込まれるように受振部材を配置する。
【0028】
次に、コンクリートに埋入された加振部材を作動させることで該コンクリートに対する締固め操作を行うが、その際、加振部材の作動によって受振部材に発生する振動を振動計測手段で計測する。
【0029】
ここで、加振部材で生じた振動は第1の発明で説明したように、弾性波の形で周囲のコンクリートに伝播し、受振部材は、到達した弾性波に応答する形で振動するが、コンクリートの締固めが未だ進行していない段階では、コンクリート内に気泡や空隙が混じっている状態であって密度も小さいため、周囲に拡がるコンクリートからの影響は比較的小さく、受振部材の振動性状は、その構造特性に基づく要因が支配的となる一方、コンクリートの締固めが進行すると、コンクリート内の気泡や空隙が排除されて密度も大きくなるため、受振部材は、周囲に拡がるコンクリートからの影響が大きくなり、その振動性状は、コンクリートを介して弾性波として伝播してきた加振部材の振動特性に基づく要因が支配的となる。
【0030】
そのため、締固め操作の間、加振部材の作動によって受振部材に発生する振動の時刻変化を演算処理手段で分析することにより、コンクリートにおける締固めの状況を推定する。
【0031】
具体的には、振動計測手段から出力された加速度の卓越振動数が加振部材の加振振動数にほぼ一致したとき、又は振動計測手段による計測値から速度の二乗累積値を演算するとともに該速度の二乗累積値の増加割合が減少に転じたとき、演算処理手段において加振部材による締固め操作が終了されるべきと判定するとともに、該判定に応答して通知手段を作動させる作動信号を演算処理手段から通知手段に送出する。
【0032】
このようにすれば、作業員の目視観察による判断に頼ることなく、客観的に締固め操作の終了タイミングを判定することが可能となる。
【0033】
加振部材は、手持ちのバイブレータも包摂されるが、これを自走式のコンクリート締固め機に搭載された加振部材で構成するとともに、該加振部材から離間した位置であって前記コンクリート締固め機を構成するベースマシンに設置されたブーム若しくはアーム又はそれらに取り付けられた取付け治具に前記受振部材を取り付けたならば、受振部材をコンクリート打設領域に多数設置する必要がなくなるとともに、締固めを行う場所の変更に伴って受振部材の設置場所を変更する手間も不要となる。