【実施例1】
【0023】
図1乃至
図3を参照しながら本発明の実施例1を説明する。最初に、
図1を参照しながら、本発明の実施例1に係る型締装置を有する、射出成形機の基本構成について説明する。
【0024】
本発明の実施例1に係る型締装置10は、
図1に示すように、ベース11に固定され、固定型12aが取り付けられる固定盤12と、可動型13aが取り付けられ、固定盤12に対してベース11上を進退可能に配置される可動盤13と、可動盤13を貫通し、その一端が固定盤12に固定される複数の図示しないタイバーと、可動盤13を固定盤12に対して進退動作させ、型締力を付与させた状態で固定型12aと可動型13aとを密着させる型締力発生装置14と、から構成される。尚、本実施例1においては、この型締装置が射出成形機1の型締装置であり、型締力発生装置14が、特許文献1と同様の、固定盤に対する可動盤の進退動作を、サーボモータとボールねじ機構とで行う形態のものとする。射出成形機1の固定盤12の固定型12aと対向する側のベース11上には射出装置9が配置され、固定盤12を貫通して、そのノズル部分を固定型12aに接離可能である。尚、可動盤への型締力付与動作を行う構成については、本願発明とは直接関係ないため、説明を割愛する。
【0025】
射出成形機1の操作側には、オペレータ30が、各種操作を行うための操作盤21が配置されている。また、固定型12aと可動型13aとの金型分割面(パーティングライン)及び型開閉動作における可動盤12及び可動型12aの型開閉ストローク範囲には、可動式の安全扉22が配置され、安全扉22が閉じられた状態においても、その窓部22aから、オペレータ30が型締装置10の内部を確認することができる。
【0026】
射出成形機1の反操作側には、可動型13aの金型キャビティ面にインサート部品16を保持させるインサート装置15が配置されている。インサート装置15は、インサート部品16を把持する把持部15aと、把持部15aがその先端に配置され、伸縮可能なアーム部15bと、アーム部15bを旋回(必要あれば昇降)させる旋回部15cと、から構成されている装置である。同様に、インサート部品供給装置17が反操作側に配置され、インサート部品供給装置17の定位置に、インサート部品16が成形サイクル毎に供給される。インサート装置15は、供給されるインサート部品16を、その把持部15aで把持させた後、アームを旋回、伸長(必要あれば昇降)させて、把持させたインサート部品16を、型開き状態の固定型12aと可動型13aの間の所定位置(型開閉方向の位置以外は、インサート位置に調整済み)に供給させる。
【0027】
先に説明したように、このインサート装置15は、多軸の産業用ロボット等を利用した装置ではないため、通常の型開き位置において、取り付けられる様々な金型毎に対応して、インサート装置15側でインサート位置の位置決め設定を行うことは困難である。そのため、インサート部品16を、把持部15aで把持した状態で、可動型13aの金型キャビティ面の所定位置にインサートできるように、可動型13a(可動盤13)の位置を固定型12a側に移動させて、すなわち、型締装置10側で、取り付けられた可動型13aのインサート成形用の型開き位置を設定する必要がある。
【0028】
次に、
図2及び
図3も参照しながら、本発明の実施例1に係る型締装置10の、パルス発生手段40及び、パルス発生手段40を使用する、可動盤の位置調整方法について説明する。
【0029】
図2は、本発明の実施例1に係る型締装置を有する、射出成形機1の概略側面図である。
図2に示すように、操作盤21には、オペレータ30が、安全扉22の窓部22aから、型締装置10の内部を確認することができる状態において操作可能な位置に、パルス発生手段40の、ハンドル状の回転操作部40aと、移動量モード切替スイッチ40bとが配置されている。パルス発生手段40の制御手段40cは、射出成形機1の制御手段とは別に、操作盤内に配置されても、射出成形機1の制御手段が配置される制御盤内に配置されても良いし、射出成形機1の制御手段に組み込まれても良い。本実施例1においては、射出成形機1の制御手段とは別に、操作盤21内に配置されているものとする。
【0030】
パルス発生手段40の回転操作部40aと、移動量モード切替スイッチ40bとを
図3(a)に示す。まず、可動型13aの金型キャビティ面の、インサート部品16のインサート位置と、インサート装置に把持させたインサート部品16とのおおよその距離を目視で確認し、可動型13aをそれよりも確実に少ない距離を移動させるように、移動量モード切替スイッチ40bを操作して、適切な移動量モードを選択する。移動量モードは、回転操作部40aの一回転により、可動盤13をどのくらい移動させるかを設定するものであり、言い換えれば、回転操作部40aの回転操作の回転角度に連動する可動盤13の移動の移動量の比率を、任意で変化させるものである。例えば、一回転で50mm移動するモードや、一回転で10mm移動するモード等、型締装置10の型開閉ストロークに応じて、適切な選択肢が選択可能であれば良い。目測した移動距離が約100mmであって、一回転で50mm移動するモードを選択するものとする。
【0031】
次に、回転操作部40aをゆっくり回転させる。この回転操作部40aの回転量(回転角度)に応じて、型締力発生装置14の図示しないボールねじ機構のボールねじナットを移動させる量から、ボールねじ軸の必要回転量が、制御手段40cにおいて算出され、この必要回転量を満足する回転量分、図示しないサーボモータを回転させるパルスが、制御手段40cから、図示しない射出成形機1の制御手段を経由してサーボモータに発信され、可動盤13が移動する。例えば、選択した移動量モードにおいて、回転操作部40aを1/4回転(90°)回転させると、回転操作に応じて可動盤13が50mm×1/4=12.5mm移動する。
【0032】
次に、可動型13a(可動盤13)の移動後の、インサート部品16との距離を目視で確認し、必要あれば、移動量モードをより小さいモードに切り替えて、可動盤13の、インサート成形用の型開き位置の位置決めを行う。例えば、一回転で10mm移動する移動量モードを選択すると、回転操作部40aの1/4回転(90°)回転により、可動盤13を10mm×1/4=2.5mm移動させることができる。
【0033】
このような、回転操作部40aの回転操作による可動盤13の移動量制御において、先に説明したように、回転操作部40aの回転操作における回転角速度や回転角加速度も、可動盤13の移動速度や移動加速度に忠実に反映されることは言うまでもない。よって、回転操作部40aを慎重にゆっくりと回転させることにより、可動盤13もその回転に応じてゆっくりと移動させたり、回転操作の最後に回転速度を減速させて、可動盤13も移動の最後に減速させたりすることができる。
【0034】
このように、本発明に係る型締装置10は、最適な移動量モードを適宜選択した状態で、可動盤13の移動がパルス発生手段40の回転操作部40aの回転操作に連動するように制御されるので、押し釦を操作して行う位置決めに対して、可動盤の位置調整が非常に容易であり、可動盤の位置を効率良く調整することができる。
【0035】
一方、回転操作部40aの回転操作の回転角度に連動する可動盤13の移動の移動量の比率を1対1で固定した場合、ある回転角度に対して非常に少ない移動量で固定すると、可動盤13を長い距離移動させたい場合、回転操作部を何周も回転させる必要があり、可動盤13の位置調整効率が悪化する。一方、同じある回転角度に対して非常に長い移動量で固定すると、可動盤を微小距離移動させたい場合、回転操作部40aを微小角度回転させる必要があり、可動盤13の位置調整効率が悪化するだけでなく、可動盤13を移動させすぎて、インサート装置等、他の装置を破損させる虞がある。上記のように、可動盤13を移動させたい距離に応じて、回転操作部40aの回転操作の回転角度に連動する可動盤13の移動の移動量の比率を、任意で変化させることが可能な移動量モード切替スイッチ40bのような構成により、最適な移動量モードを適宜選択しながら可動盤13の位置調整を行うことにより、可動盤の位置を更に効率良く調整することができる。
【0036】
このような、移動量モード切替スイッチ40bを採用する場合も、そうでない場合も、可動盤13の誤動作を防止するために、回転操作部40aの操作時の回転角速度に上限等の制約を設け、意図せずに回転操作部40aに触れて同操作部を回転させた場合や、必要以上に早く同操作部を回転させてしまった場合に、可動盤13が移動しないようにする制御や、固定型12a及び可動型13a間の型開き距離をモニタリングして、同距離に対して過剰と思われる移動量モードを選択した場合に、警報が発せられ、作動しないようにする制御等と合わせて採用されることが、安全上好ましい。また、本発明は、手動操作による可動盤13の位置調整操作モードでのみ実施可能であり、本発明が、ダイカストマシンや射出成形機のそれ以外での手動操作モードや、自動運転モードには何ら影響を与えないようにすることは言うまでもない。
【0037】
本実施例1では、回転操作部40a及び移動量モード切替スイッチ40bを、操作盤21に配置させるものとしたが、
図3(b)に示すように、回転操作部40a及び移動量モード切替スイッチ40bを、操作盤21等と電気的に接続された別ユニット41に配置させ、操作盤21から離れた状態で、可動盤13の位置調整が可能な構成であっても良い。
【0038】
この場合、製品取出装置や離型剤塗布装置(スプレー装置)に多軸の産業用ロボットを採用する場合のロボット教示(ティーチング)時のように、安全プラグ等の安全策を講じた上で、安全扉22を開いた状態で、可動盤13の位置調整が可能な位置調整モードを設定することにより、可動盤13の位置調整が更に容易になる。別ユニット41には、可動盤13の移動量を表示する液晶部41aや非常停止釦等、ロボット教示盤のように、インサート成形時の可動盤13の位置調整時に必要と思われる機能部を設けても良い。
【実施例2】
【0039】
次に、本発明の実施例2を説明する。本実施例2においては、型締装置10の型締力発生装置14が、特許文献2と同様の、固定盤に対する可動盤の進退動作と、可動盤への型締力付与動作とを、トグルリンク機構を採用し1つのサーボモータとボールねじ機構とで行う形態のものとする。それ以外の構成については、基本的に実施例1の型締装置10と同じため、実施例1との相違点のみ説明する。
【0040】
トグルリンク機構を採用する型締力発生装置14における、可動盤13の移動上の特徴は、図示しないボールねじ機構のボールねじナットによって進退動作が行われる図示しないクロスヘッドの移動速度に対して、クロスヘッドの進退動作により、トグルリンク構造を介して移動される可動盤13の移動速度が比例せず、トグル曲線と呼ばれるそれぞれのトグルリンク機構が有する特性曲線に応じて可動盤13の移動速度が変化する点である。
【0041】
具体的には、トグルリンク機構は、型開き状態で、リンク構造が最も折りたたまれた状態から、クロスヘッドを型閉じ方向に一定速度で移動(前進)させる場合、クロスヘッドの移動開始直後は、可動盤13の移動速度が漸次増大し、型開閉ストロークの中間近辺で最高速に到達する。その後、リンク構造が徐々に伸長し、最終的にリンク機構がロックアップする型締め状態の直前まで、可動盤13の移動速度が漸次減少する。このように、トグルリンク機構は、クロスヘッドの一定速度での移動に対して、可動盤13の移動速度が、型開閉ストロークの中間近辺で最も早く、その前後では比較的遅くなるという特性を有する。これを
図4に示す。
図4は、トグルリンク機構を採用する型締装置において、クロスヘッドを一定速度で移動させる場合の、可動盤位置に対する可動盤の移動速度を示す特性曲線である。
【0042】
この特性をクロスヘッドの移動量と可動盤13の移動量との関係に置き換えれば、クロスヘッドを一定量移動させる場合、これに対応する可動盤13の移動量が、可動盤13の型開き位置によって一定ではなく、移動速度と同様に、型開閉ストロークの中間近辺で最も多く、その前後では比較的少ないという特性となる。トグルリンク機構の仕様にもよるが、型締め状態直前においては、クロスヘッドの移動量に対して、可動盤13の移動量が1/10程度になると言われている。トグルリンク機構を型締力発生装置として採用する型締装置においては、この型締め状態の直前の特性曲線を活用して、型締力や可動盤の位置を高い精度で制御可能であることを特徴としている。
【0043】
このような、トグルリンク機構を型締力発生装置として採用する型締装置においては、実施例1と異なり、ボールねじ機構のボールねじナットの移動量と可動盤の移動量とを、採用されるトグルリンク機構の特性曲線に応じて補正すれば良い。具体的には、回転操作部40aの回転操作の回転量角度と、可動盤13の移動の移動量とが、選択された移動量モードに応じた比例関係になるように、トグルリンク機構の特性曲線に応じて補正されたパルスがサーボモータに発信されれば良い。簡単に言えば、型開き状態からの型閉じ時におけるサーボモータへのパルスを、特性曲線に基づき、型開閉ストロークの中間近辺で減少させ、型開き限位置近辺及び型締め状態の直前において増加させれば良い。
【0044】
このような補正が行われることにより、実施例1と同様の効果を奏することができる。すなわち、サーボモータの回転数と可動盤の移動量とが比例せず、トグルリンク機構の特性曲線に基づいて、可動盤13の移動量が変化するトグルリンク式型締装置であっても、可動盤の位置を効率よく調整することができる。このような、トグルリンク機構を型締力発生装置として採用する型締装置における、回転操作部40aの回転操作による可動盤13の移動量制御においても、回転操作部40aの回転操作における回転角度だけでなく回転角速度や回転角加速度も、トグルリンク機構の特性曲線に応じて補正され、可動盤13の移動速度や移動加速度に忠実に反映されることは言うまでもない。