(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、雌雄のねじ部が締め込み位置から緩み方向に所定量緩んだ状態で、挿入ピンが回り止め部の周方向端部と係合し、緩み止めが達成されるので、ボルトナット構造を被締結部材に取り付けた状態で、ボルトナット構造が被締結部材に対してガタつくおそれがある。このようなガタ付きを防止するためには、ボルトおよびナットの緩み止めを締め込み位置で実現することが望ましい。
【0005】
そこで、この発明の目的は、締め込み位置でボルトおよびナットの緩み止めを実現できるボルトナット構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するための請求項1に記載の発明は、外周(22a)に雄ねじ部(221)を有するボルト(2;2A;2B;2D)と、内周(31a、31Ba)に雌ねじ部(311)を有し、前記ボルトに螺合されるナット(3;3B)とを含むボルトナット構造(1;1A;1B;1C;1D)であって、前記ボルトの前記雄ねじ部および前記ナットの前記雌ねじ部の一方には、軸方向(X)に沿って延びる第1の縦溝(222;222A;312B)が複数設けられ、当該一方には、前記第1の縦溝が密集して並べられた縦溝密集部(225;313)が周方向(Y)に偏在配置されており、
当該縦溝密集部は、周方向の一の領域にのみ形成されており、周方向の他の領域には形成されておらず、隣り合う前記第1の縦溝の間は、当該第1の縦溝の幅未満とされており、前記ボルトの前記雄ねじ部および前記ナットの前記雌ねじ部の他方には、軸方向に沿って延びる第2の縦溝(312;222B)が設けられており、
前記第2の縦溝は、周方向に間隔を空けて複数設けられており、前記ボルトナット構造は、前記ボルトに前記ナットを螺合した状態で、複数の前記第1の縦溝のうちの一つと前記第2の縦溝とによって区画される筒状空間に挿入される挿入ピンをさらに含
み、前記縦溝密集部の周方向角度幅(W1)は、互いに隣り合う前記第2の縦溝同士の周方向角度間隔(W2)と同じか、あるいは当該周方向角度間隔よりも長く設けられている、ボルトナット構造を提供する。
【0007】
この構成によれば、ボルトにナットを螺合した状態で、第2の縦溝と複数の第1の縦溝のうちの一つとによって筒状空間が形成される。筒状空間に挿入ピンを挿入することにより、第1および第2の縦溝が挿入ピンを介して噛み合うので、これにより、ナットのボルトに対する回転を阻止でき、その結果、ボルトおよびナットの緩み止めを図ることができる。
【0008】
また、第1の縦溝が周方向に密集して並べられているので、ボルトにナットを螺合した状態では、いずれかの第1の縦溝が第2の縦溝に対向していることが多い。したがって、ボルトとナットとの相対回転姿勢によらずに筒状空間を設けることが可能であり、これにより、ボルトおよびナットの緩み止めを、ボルトおよびナットの締め込み位置で行うことが可能である。これにより、締め込み位置でボルトおよびナットの緩み止めを実現できるボルトナット構造を提供できる。
【0009】
また、縦溝密集部の周方向角度幅は、互いに隣り合う第2の縦溝同士の周方向角度間隔よりも長く設けられている。そのため、ボルトにナットを螺合した状態では、いずれかの第1の縦溝が第2の縦溝に確実に対向している。したがって、ボルトとナットとの相対回転姿勢によらずに筒状空間を設けることができ、ボルトおよびナットの締め込み位置においても筒状空間を設けることができる。そのため、ボルトおよびナットの緩み止めを、ボルトおよびナットの締め込み位置で行うことができる。これにより、締め込み位置でボルトおよびナットの緩み止めを確実に実現できるボルトナット構造を提供できる。
【0012】
請求項
2に記載の発明は、前記周方向に隣り合う前記第1の縦溝(222A)は、その間に隙間を空けずに配置されており、各第1の縦溝は、断面半円よりも狭い角度幅を有する断面円弧状をなしている、請求項
2に記載のボルトナット構造(1A)である。
この構成によれば、各第1の縦溝が、断面半円よりも狭い角度幅を有する断面円弧状をなしているので、第1の縦溝を断面半円形とする場合と比較して、第1の縦溝一つ当りの周方向角度幅が短い。しかも、請求項
4では、周方向に隣り合う第1の縦溝が、その間に隙間を空けずに配置されている。したがって、縦溝密集部に多数個の第1の縦溝を設けることができる。
【0013】
第1の縦溝同士の間隔を短く設けることができるので、雌雄のねじ部のより厳密に締め込み位置に近い位置で、ボルトおよびナットの緩み止めを実現できる
。
【0014】
この構成によれば、挿入ピンの反対側の端部が座金に接続されているので、挿入ピンが筒状空間から離脱したとしても、挿入ピンが座金によって保持される。つまり、万が一挿入ピンが筒状空間から離脱した場合であっても、下方に向けて落下するのを防止できる。
請求項
3に記載の発明は、前記ボルトには、当該ボルトの内部を軸方向に交差する方向に沿って貫通し、前記挿入ピンが挿通する貫通穴(223)が形成されている、請求項1
または2に記載のボルトナット構造(1D)である。
【0015】
この構成によれば、挿入ピンの挿入側と反対側の端部を、ボルトの内部に形成された貫通穴を挿通させることにより、挿入ピンの当該反対側の端部をボルトに係止しておくことが可能である。この場合、挿入ピンが筒状空間から離脱したとしても、挿入ピンがボルトによって保持される。つまり、万が一挿入ピンが筒状空間から離脱した場合であっても、下方に向けて落下するのを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るボルトナット構造1の構成を示す分解斜視図である。
図2Aは、ボルト2の軸部22の断面図である。
図2Bは、
図2Aを矢視IIBから見た図である。
図3は、ナット3の平面図である。
図4は、座金付きピン4を説明するための斜視図である。
【0021】
以下の説明において、ボルト2の軸方向をXとする。ナット3の軸方向は軸方向Xに一致する。また、ボルト2の周方向をYとする。ナット3の周方向は周方向Yに一致する。
図1に示すように、ボルトナット構造1は、ボルト2と、ボルト2に螺合されるナット3と、ボルト2とナット3との間に介装される座金付きピン4とを含む。
ボルト2は、頭部21と軸部22とを有する一体物である。軸部22の外周22aには、雄ねじ部221が形成されている。雄ねじ部221は、軸部22の外周22aの全域に設けられている。ボルト2の材質は、鋼材等の金属材料であってもよいし、樹脂材料であってもよい。
【0022】
図2Aに示すように、ボルト2の雄ねじ部221には、軸方向Xに沿って延びる第1の縦溝222が複数設けられている。複数の第1の縦溝222は、密集して設けられている。隣り合う第1の縦溝222は、互いに周方向Yに連続している。換言すると、ボルト2の雄ねじ部221には、第1の縦溝222が周方向Yに密集して並べられた縦溝密集部225が、周方向Yの一箇所に偏って配置されている。
図2Aおよび
図2Bに示すように、周方向Yに隣り合う第1の縦溝222は、その間に微小隙間を空けて配置されている。各第1の縦溝222は断面略半円形をなしている。
【0023】
図3に示すように、ナット3はナット本体31を有し、ナット本体31の内周31aには、雌ねじ部311が形成されている。雌ねじ部311は、ナット本体31の内周31aの全域に形成されている。ナット3の雌ねじ部311には、軸方向Xに沿って延びる第2の縦溝312が複数(たとえば6つ)設けられている。複数の第2の縦溝312は、周方向Yに等間隔に配置されている。各第2の縦溝312は、第1の縦溝222と略同径の断面略半円形をなしている。また、ナット3の材質は、鋼材等の金属材料であってもよいし、樹脂材料であってもよい。
【0024】
図4に示すように、座金付きピン4は、ボルト2とナット3との間に介装される、平座金からなる座金部(座金)41と、一端部(挿入側と反対側の端部)42bが座金部41に接続された挿入ピン部(挿入ピン)42とを含む。挿入ピン部42は、鋼材等の金属材料を用いて形成されており、可撓性を有している。挿入ピン部42の少なくとも他端部(挿入側の端部)42aは、その外周が断面円形をなしている。一例として、挿入ピン部42は、針金を用いて形成されていてもよい。
【0025】
挿入ピン部42の少なくとも他端部(挿入側の端部)42aの外径は、第1の縦溝222と第2の縦溝312とによって区画される円筒状の筒状空間SP(
図6参照)の径と、同じかやや大きく設定されている。なお、挿入ピン部42の他端部42aの先端は、他端部42a他の部分よりやや小径(より具体的には、筒状空間SPよりも小径)に設けられていてもよい。この場合、挿入ピン部42の他端部42aの先端を収容空間SP内に容易に差し込むことができ、これにより、他端部42aの収容空間SP内への挿入をスムーズに行うことができる。
【0026】
次に、被締結部材5に対するボルトナット構造1の締結および緩み止めについて説明する。
図5は、被締結部材5を挿通したボルト2にナット3を螺合している第1の状態を示す断面図である。
図6は、第1の状態における、第1の縦溝222と第2の縦溝312との間の位置関係を示す断面図である。
【0027】
ボルトナット構造1は、たとえば板状の被締結部材5(
図5等参照)を締結対象とする。被締結部材5には、ねじ挿通穴51が形成されている。作業者は、手作業で、ねじ挿通穴51にボルト2を挿通させ、かつ挿通後のボルト2の軸部22に、まず座金付きピン4の座金部41を嵌め、次いでナット3を嵌めてナット3とボルト2とを螺合させ、雌ねじ部311を雄ねじ部221に限度までねじ込む。このときのボルト2およびナット3の位置が締め込み位置である。ボルト2およびナット3の位置が締め込み位置にあるとき、ボルトナット構造1が被締結部材5に対してガタつかない。この螺合状態を、第1の状態でとする。
【0028】
図6に示すように、縦溝密集部225の周方向角度幅W1は、互いに隣り合う第2の縦溝312同士の周方向角度間隔W2よりも長く設けられている。周方向角度幅W1および周方向角度間隔W2は、それぞれ角度幅(角度の幅)および角度間隔(角度の間隔)であり、実際の縦溝密集部225の幅および第2の縦溝312の周方向間隔で、前述の大小関係を規定しているわけではない。
【0029】
周方向角度幅W1が周方向角度間隔W2よりも長いので、この第1の状態において、いずれかの第1の縦溝222が第2の縦溝312に確実に対向している。ボルト2およびナット3の締め込み位置でも筒状空間を設けることができる。つまり、前述の第1の状態において、第2の縦溝312と第1の縦溝222とによって円筒状の筒状空間SPが形成される。
【0030】
次いで、作業者は、挿入ピン部42を手で曲げて、挿入ピン部42の他端部42aを
図5に示す下方側から、筒状空間SPに挿入する。作業者は、筒状空間SP全体に挿入ピン部42が挿入されるまで、当該挿入ピン部42を押し入れる。筒状空間SPに挿入ピン部42が圧入状態で挿入されることにより、第1および第2の縦溝222,312が挿入ピン部42を介して噛み合う。これにより、ナット3のボルト2に対する回転を阻止できる。この挿入ピン部42を挿入した状態が第2の状態である。
図7および
図8は、挿入ピン部42の挿入直前の状態を示す斜視図である。
図9は、緩み止めが図られた第2の状態を示す断面図である。
【0031】
以上により、第1の実施形態によれば、ボルト2にナット3を螺合した状態で、第2の縦溝312と複数の第1の縦溝222のうちの一つとによって筒状空間SPが形成される。筒状空間SPに挿入ピン部42を挿入することにより、第1および第2の縦溝222,312が挿入ピン部42を介して噛み合うので、これにより、ナット3のボルト2に対する回転を阻止でき、ゆえに、ボルト2とナット3との緩み止めボルトおよびナットの緩み止めを図ることができる。
【0032】
また、縦溝密集部225の周方向角度幅W1が、互いに隣り合う第2の縦溝312同士の周方向角度間隔W2よりも長く設けられている。そのため、ボルト2にナット3を螺合した状態では、いずれかの第1の縦溝222が第2の縦溝312に確実に対向している。
したがって、ボルト2とナット3との相対回転姿勢によらずに筒状空間SPを設けることができ、ボルト2およびナット3の締め込み位置においても筒状空間SPを設けることができる。これにより、ボルト2およびナット3の締め込み位置でボルト2およびナット3の緩み止めを達成することができる。以上により、締め込み位置でボルト2およびナット3の緩み止めを確実に実現できるボルトナット構造1を提供できる。ゆえに、ボルトナット構造1を被締結部材5に取り付けた状態で、ボルトナット構造1が被締結部材5に対してガタつくことを防止できる。
【0033】
また、第1の縦溝が周方向Yに密集する態様でなく、仮に周方向Yに分散して設けられているとすると、筒状空間SPに対する挿入ピン部42の挿入に先立って、第1の縦溝と第2のとの周方向Yの位置合わせを行う必要がある。
これに対し、この実施形態では、ボルト2にナット3を螺合した状態でいずれかの第1の縦溝222が第2の縦溝312に確実に対向するために、第2の縦溝312を目印として、当該第2の縦溝312に挿入ピン部42を挿入できる。そのため、第1および第2の縦溝222,312同士の周方向Yの位置合わせを行う等の煩雑な作業を行う必要がない。これにより、ボルト2およびナット3の緩み止めを簡単な作業で実現できる。
【0034】
また、挿入ピン部42が筒状空間SPに圧入状態で挿入されるので、挿入後に、挿入ピン部42の他端部42aが筒状空間SPに係止される。他端部42aの離脱を防止するための部材を別途設ける必要がない。
また、第1および第2の縦溝222,312が断面略半円形をなしているので、互いに対向する第1および第2の縦溝222,312によって、略円筒形の筒状空間SPが形成される。この略円筒形の筒状空間SPに、円形の外周を有する挿入ピン部42が挿入されることにより緩み止めが達成される。挿入ピン部42の外周が円形であるので、挿入ピン部42を挿入する際に、その回転姿勢を合わせる必要がない。これにより、ボルト2およびナット3の緩み止めを、より簡単に行うことができる。
【0035】
また、各第1の縦溝222が断面略半円形をなしているので、各第1の縦溝222の溝深さが深い。そのため、挿入ピン部42と第1の縦溝222とを確実に係合させることができる。これにより、ボルト2およびナット3の緩み止めをより強固に実現できる。
また、金属材料からなる挿入ピン部42が可撓性を有しかつ剛性を有しているので、挿入ピン部42は塑性変形可能である。また、挿入ピン部42が座金部41に一体的に設けられており、かつ座金部41はボルト2の頭部21とナット3との間に固定されている。したがって、挿入ピン部42の収容空間SPへの挿入状態においては、挿入ピン部42が当該挿入に適した挿入姿勢に塑性変形する。換言すると、この挿入状態においては、挿入ピン部42が前記の挿入姿勢に塑性変形し、かつ、挿入ピン部42が座金部41によって静止状態で保持されている。
【0036】
たとえば、第1の縦溝222や第2の縦溝312などの加工精度が悪い場合には、挿入ピン部42が収容空間SP内に圧入状態で挿入されない事態、つまり、挿入ピン部42が収容空間SP内に圧入状態でなく挿入されるような事態が発生することも考えられる。しかしながら、挿入ピン部42が前記の挿入姿勢に塑性変形し、かつ、挿入ピン部42が静止状態で保持されているので、このような場合であっても、挿入ピン部42が収容空間SPから脱落することを防止できる。
【0037】
また、挿入ピン部42の一端部42bが座金部41に接続されているので、挿入ピン部42が筒状空間SPから離脱したとしても、挿入ピン部42が座金部41によって保持される。つまり、万が一、振動等によって挿入ピン部42が脱落した場合であっても、下方に向けて落下するのを防止できる。
図10は、本発明の第2の実施形態に係るボルト2Aの軸部22の断面図である。
【0038】
第2の実施形態において、前述の第1の実施形態に示された各部に対応する部分には、
図1〜
図9の場合と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
本発明の第2の実施形態に係るボルトナット構造1Aが、第1の実施形態に係るボルトナット構造1と相違する点は、第1の縦溝の形状である。
図10に示すように、ボルト2Aの軸部22には、縦溝密集部225が形成されている。縦溝密集部225は、複数の第1の縦溝222Aを含む。周方向Yに隣り合う前記第1の縦溝222Aは、その間に隙間を空けずに配置されており、各第1の縦溝222Aは、断面半円よりも狭い角度幅を有する断面円弧状をなしている。より具体的には、第1の縦溝222Aの断面形状は、
図10に破線で示すように、同径を有する円を周方向Yに、互いに重なり合うように並べ(当該円の直径よりも狭い間隔で当該複数の円を並べ)、その重複部分を切り取ったような形状を有している。
【0039】
この第2の実施形態によれば、各第1の縦溝222Aが、断面半円よりも狭い角度幅を有する断面円弧状をなしているので、第1の実施形態のように第1の縦溝を断面略半円形とする場合と比較して、第1の縦溝222A一つ当りの周方向角度幅が短い。しかも、この実施形態では周方向Yに隣り合う第1の縦溝222Aが、その間に隙間を空けずに配置されている。したがって、同じ長さの縦溝密集部225に、より多数個の第1の縦溝222Aを設けることができる。
【0040】
第1の縦溝と第2の縦溝231と挿入ピン部42との係合によって行う緩み止めでは、縦溝密集部225に含まれる複数の第1の縦溝同士の間隔単位でしか、緩み止めの位置決めを行うことはできない。
この第2の実施形態によれば、第1の縦溝222A同士の間隔を短く設けることができるので、雌雄のねじ部221,311のより厳密に締め込み位置に近い層位置で、ボルト2およびナット3の緩み止めを実現できる。
【0041】
図11は、本発明の第3の実施形態に係るボルトナット構造1Bの構成を示す分解斜視図である。
第3の実施形態において、前述の第1の実施形態に示された各部に対応する部分には、
図1〜
図9の場合と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。なお、
図11では、座金付きピン4の図示を省略している。
【0042】
本発明の第3の実施形態に係るボルトナット構造1Bが、第1の実施形態に係るボルトナット構造1と相違する点は、第1の縦溝をナットの雌ねじ部311に形成し、かつ第2の縦溝をボルトの雄ねじ部221に形成した点である。
ボルト2Bの軸部22Bの外周の全域には、雄ねじ部221が形成されている。ボルト2の雄ねじ部221には、軸方向Xに沿って延びる第2の縦溝222Bが複数(たとえば6つ)設けられている。複数の第2の縦溝222Bは、周方向Yに等間隔に配置されている。各第2の縦溝222Bは断面略半円形をなしている。第2の縦溝222Bは、第1の実施形態の第2の縦溝312と同様の機能を有する。
【0043】
ナット3Bのナット本体31Bの内周31Baには、雌ねじ部311が形成されている。雌ねじ部311は、ナット本体31Bの内周31Baの全域に形成されている。ナット3Bの雌ねじ部311には、軸方向Xに沿って延びる第1の縦溝312が複数設けられている。
複数の第1の縦溝312は、密集して設けられている。隣り合う第1の縦溝312は、互いに周方向Yに連続している。換言すると、ナット3の雌ねじ部311には、第1の縦溝312が周方向Yに密集して並べられた縦溝密集部313が、周方向Yの一箇所に偏って配置されている。周方向Yに隣り合う第1の縦溝312は、その間に微小隙間を空けて配置されている。各第1の縦溝312は、第2の縦溝222Bと略同径の断面略半円形をなしている。第1の縦溝312Bは、第1の実施形態の第1の縦溝222と同様の機能を有し、縦溝密集部313は、縦溝密集部225と同様の機能を有する。
【0044】
ナット3Bがボルト2に螺合した第1の状態では、第1の縦溝312Bと第2の縦溝222Bとによって円筒状の筒状空間(筒状空間SPと同様)が形成される。
筒状空間に挿入される、挿入ピン部42(
図4等参照。少なくとも他端部42a)の外径は、円筒状の当該筒状空間の径と、同じかやや大きく設定されている。そのため、挿入ピン部42の他端部42aが当該筒状空間に圧入状態で挿入され、当該筒状空間内に係止される。
【0045】
図12は、本発明の第4の実施形態に係るボルトナット構造1Cの構成を示す分解斜視図である。
第4の実施形態において、前述の第1の実施形態に示された各部に対応する部分には、
図1〜
図9の場合と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
本発明の第4の実施形態に係るボルトナット構造1Cが、第1の実施形態に係るボルトナット構造1と相違する点は、座金付きピン4に代えて、座金付きピン4Cを設けた点である。座金付きピン4Cは、座金部としてスプリングワッシャ部43を備える点で座金付きピン4と相違している。
【0046】
縦溝密集部225に含まれる第1の縦溝222と第2の縦溝312と挿入ピン部42との係合によって緩み止めが行われるので、複数の第1の縦溝222同士の間隔単位でしか、緩み止めの位置決めを行うことはできない。したがって、第1の縦溝222の径や間隔等によっては、厳密な意味において、雌雄のねじ部221,311の緩み止め位置が、その締め込み位置から緩み方向に微小量ずれることも考えられる。
【0047】
この第4の実施形態によれば、スプリングワッシャ部43によってボルト2およびナット3を軸方向に押し付ける。そのため、雌雄のねじ部221,311の緩み止め位置が、所期の締め込み位置から緩み方向に微小量ずれる場合であっても、ボルト2とナット3との間の締め付け力を強く確保できる。
図13は、本発明の第5の実施形態に係る挿入ピン42Dの構成を示す図である。
図14は、本発明の第5の実施形態に係るボルトナット構造4Dの構成を示す斜視図である。
図15は、本発明の第5の実施形態に係るボルト2Dの軸部22Dの要部の断面図である。
【0048】
第5の実施形態において、前述の第1の実施形態に示された各部に対応する部分には、
図1〜
図9の場合と同一の参照符号を付して示し、説明を省略する。
本発明の第5の実施形態に係るボルトナット構造1Dが、第1の実施形態に係るボルトナット構造1と相違する一の点は、挿入ピン42Dが座金に接続されていない点である。この点を除き、挿入ピン42Dは、挿入ピン部42と同様の構成を有している。なお、図示は省略しているが、ボルトナット構造1Dは、ボルト2Dとナット3との間に介装される座金を含んでいる。
【0049】
また、ボルトナット構造1Dが、ボルトナット構造1と相違する他の点は、ボルト2Dの軸部22Dの内部を軸方向Xに交差する方向に沿って貫通する貫通穴223を設け、貫通穴223に挿入ピン42Dを挿通可能とした点である。具体的には、貫通穴223は、ボルト2Dの径方向に沿っている。貫通穴223は、軸部22Dの外周に2箇所で開口し、出入口224を形成する。
【0050】
挿入ピン42Dの一端部(挿入側と反対側の端部)42Dbを一方の出入口224から差し込み、貫通穴223を貫通させて、他方の出入口224から引き出した後、当該一端部42Dbを手で曲げることにより、挿入ピン42Dの一端部42Dbをボルト2Dに係止する。一方、挿入ピン42Dの他端部(挿入側の端部)42Daは、筒状空間SPに圧入される。この場合、挿入ピン42Dの他端部42Daが筒状空間SPから離脱したとしても、挿入ピン42Dがボルト2Dによって保持される。つまり、万が一、振動等によって挿入ピン42Dが筒状空間SPから離脱した場合であっても、挿入ピン42Dが下方に向けて落下するのを防止できる。
【0051】
以上この発明の5つの実施形態について説明したが、この発明は他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の第1および第3〜第5の実施形態において、周方向Yに隣り合う第1の縦溝222,312Bが、その間に隙間を空けて配置されているとして説明したが、隣り合う第1の縦溝222,312Bが、その間に隙間を空けずに配置されていてもよい。
【0052】
また、縦溝密集部225,313の周方向角度幅W1は、互いに隣り合う第2の縦溝312,222B同士の周方向角度間隔W2よりも長く設けられているとして説明したが、周方向角度間隔W2と同程度であってもよい。
また、前述の各実施形態では、挿入ピン42,42Dが筒状空間SPに圧入状態で挿入されるとして説明したが、圧入されずに単に挿入されるものであってもよい。
【0053】
また、前述の各実施形態では、縦溝密集部225,313を周方向Yに1つだけに含まれるものとして説明したが、縦溝密集部225,313が周方向Yに複数設けられていてもよい。
また、前述の各実施形態では、第1の縦溝222,222A,312Bは断面円弧状をなし、第2の縦溝312,222Bは断面略半円形をなしているとして説明したが、これらが、矩形等の他の断面形状を有していてもよい。
【0054】
また、前述の全ての実施形態のうちの二つ以上が組み合わされてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。