特許第6183752号(P6183752)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183752
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ブリケットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/248 20060101AFI20170814BHJP
   C22B 7/02 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   C22B1/248
   C22B7/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-44310(P2014-44310)
(22)【出願日】2014年3月6日
(65)【公開番号】特開2015-168849(P2015-168849A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】593213342
【氏名又は名称】株式会社日向製錬所
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(72)【発明者】
【氏名】大高 聖
(72)【発明者】
【氏名】山口 允裕
(72)【発明者】
【氏名】工藤 万雄
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−023944(JP,A)
【文献】 特開平03−010026(JP,A)
【文献】 特開平03−010024(JP,A)
【文献】 特開2007−146223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/14−1/248,23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェロニッケル製錬において原料としての鉱石を乾燥及び焼成する工程で発生するダストからブリケットを製造する方法であって、前記ダストを前記鉱石の一部だけと予め混合する混合工程と、前記混合工程で得た混合物に水分が含水率17〜19質量%となるように水を添加して混練する混練工程と、前記混練工程で得た混練物を成形する成形工程と、前記成形工程で得た成形物を、フェロニッケル製錬におけるロータリーキルン及び電気炉のうちの少なくとも一方からの排ガスを熱源として乾燥する乾燥工程とを有し、前記混合工程においてブリケットに対して前記鉱石が10〜90質量%、残部が前記ダストとなるように混合することを特徴とするブリケットの製造方法。
【請求項2】
前記乾燥工程は、通気用開口部が設けられた金属部材に保持されたブリケットに前記排ガスを接触させることを特徴とする、請求項1に記載のブリケットの製造方法。
【請求項3】
前記乾燥工程は、前記排ガスの温度が100〜350℃であり、ブリケット1つの乾燥時間が5〜30分であることを特徴とする、請求項1または2に記載のブリケットの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェロニッケル製錬におけるニッケル酸化鉱石の乾燥工程及び焼成工程で発生するダストからブリケットを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄とニッケルとの合金であるフェロニッケルの製造方法としては、原料としてサポロライト鉱石等のニッケルを含有するラテライト鉱石に対して、乾燥工程、焼成工程、還元熔解工程、及び精製工程の順に処理を行う乾式製錬方法が一般的に採られている。この乾式製錬方法のうち、乾燥工程及び焼成工程ではそれぞれロータリーキルンが用いられており、鉱石を効率よく乾燥処理及び焼成処理して焼鉱を生成している。
【0003】
具体的には、乾燥工程のロータリーキルンで原料としての鉱石を予備乾燥して含水率が15〜25%程度になるまで付着水を減らした後、この予備乾燥された鉱石を還元剤としての無煙炭等の石炭と共に焼成工程のロータリーキルンに装入して800〜1000℃程度まで加熱し、残存している付着水の除去及び結晶水分の分解、更には鉱石の予備還元を行って焼鉱を生成している。得られた焼鉱は電気炉で還元熔解されてニッケル及び鉄を含有するメタルとスラグとに分けられ(還元熔解工程)、前者のメタルにはカルシウムカーバイトが添加されて不純物としての硫黄が除かれる(精製工程)。なお、以降の説明では上記した乾燥工程のロータリーキルンをロータリードライヤーと称し、焼成工程のロータリーキルンを単にロータリーキルンと称する。
【0004】
上記した鉱石の乾燥処理や焼成処理を行うロータリードライヤー及びロータリーキルンは、横向きの筒状体を回転させることでその内部に装入された鉱石を撹拌しながら加熱する方式であるため、鉱石及び石炭からダストが発生する。発生したダストは、ロータリードライヤー及びロータリーキルンから排出される排ガスの処理設備において回収される。回収されたダストは鉱石と同程度の品位のニッケルを含むため、ロータリードライヤー又はロータリーキルンに繰り返して原料として再利用することが一般に行われている。
【0005】
その際、鉱石が粘土質で自己造粒性を有していれば、回収したダストをそのまま繰り返しても当該粘土質の鉱石と共にロータリードライヤー内で造粒されるため、再度ダストとなって飛散する割合は少なくなる。しかしながら、近年用いられる鉱石は、自己造粒性を有しているものが少なくなる傾向にあり、繰り返したダストがそのままダストとして再度飛散することがあった。
【0006】
この対策として、回収したダストをペレタイザー等でペレット状に造粒してから繰り返し装入することが行われている。例えば特許文献1には、酸化ニッケル鉱石の焼成を行なうロータリーキルンからの排ガスの処理設備で回収したダストを、ペレタイザーを用いて調湿しながら造粒することで付着水を全量に対し20〜26重量%含有する造粒ペレットを作製した後、この造粒ペレットを乾燥することで付着水を全量に対し15〜18重量%含有する乾燥ペレットを得る方法が開示されている。そして、この方法によれば、ペレットの強度を20%増加させることができるので、ペレットの搬送時に発塵せず且つロータリーキルンへ繰り返して鉱石とともに焼成を行なう際にロータリーキルン内部で容易に再粉化しないと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−144229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フェロニッケル製錬で使用するロータリーキルンから排出される排ガス中に含まれるダストには、鉱石由来のもののほか、前述したように還元剤として装入した石炭由来のものが含まれているため良好な濡れ性が得られにくく、ペレットに成形したときに十分な強度が得られないという問題を抱えていた。本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、フェロニッケル製錬においてニッケル酸化鉱石の乾燥や焼成が主に行われるロータリードライヤーやロータリーキルンの排ガスから回収されるダストから搬送時に発塵せず且つロータリーキルン内部で容易に再粉化しない高い強度を有するブリケットを製造する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明に係るブリケットの製造方法は、フェロニッケル製錬において原料としての鉱石を乾燥及び焼成する工程で発生するダストからブリケットを製造する方法であって、前記ダストを前記鉱石の一部だけと予め混合する混合工程と、前記混合工程で得た混合物に水分が含水率17〜19質量%となるように水を添加して混練する混練工程と、前記混練工程で得た混練物を成形する成形工程と、前記成形工程で得た成形物を、フェロニッケル製錬におけるロータリーキルン及び電気炉のうちの少なくとも一方からの排ガスを熱源として乾燥する乾燥工程とを有し、前記混合工程においてブリケットに対して前記鉱石が10〜90質量%、残部が前記ダストとなるように混合することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ニッケル酸化鉱石の乾燥や焼成を行うロータリードライヤーやロータリーキルンの排ガスから回収されるダストから高い強度を有するブリケットを製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のブリケットの製造方法を示すブロックフロー図である。
図2】本発明のブリケットの製造方法の一具体例における成形工程で使用するブリケットマシンの正面図である
図3】実施例におけるブリケットの製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のブリケットの製造方法の一具体例について説明する。この一具体例のブリケットの製造方法は、図1に示すように、フェロニッケル製錬におけるロータリーキルンから発生したダストと原料の鉱石の一部とを予め混合する混合工程S1と、混合工程S1で得た混合物に含水率17〜19%となるように水を添加して混練する混練工程S2と、混練工程S2で得た混練物を成形する成形工程S3と、成形工程S3で得た成形物をフェロニッケル製錬におけるロータリーキルン及び電気炉のうちの少なくとも一方の排ガスを熱源として乾燥する乾燥工程S4とを有することを特徴としている。このブリケットの製造方法によれば、ニッケル酸化鉱石の乾燥を行うロータリードライヤーや焼成を行うロータリーキルンの排ガスから回収されるダストから高い強度を有するブリケットを製造することができる。以下、上述の混合工程S1、混練工程S2、成形工程S3、及び乾燥工程S4の各々について詳しく説明する。
【0013】
(混合工程S1)
混合工程S1は、ロータリードライヤー及び/又はロータリーキルンから排出される排ガスの処理設備で回収されたダストとロータリードライヤーで予備乾燥された鉱石の一部とを予め混合して混合物を作製する工程である。ダストは前述したようにロータリードライヤー及び/又はロータリーキルンで発生するため、主に原料の鉱石から付着水が除去された乾燥鉱石由来のもの、部分的に結晶水が除去された焼鉱由来のもの、及び還元剤の石炭由来のもの等から構成されるが、ロータリーキルンで発生したものが大部分を占めているため、造粒性が悪いという特徴を有している。これは、ダスト中に石炭が含まれていることや焼成された鉱石を多く含むことが濡れ性を悪化させている原因であると考えられる。
【0014】
一般的に、ダストから成形されるブリケット等の成形物の強度は、造粒直後の湿潤状態では粒子間の付着水の毛管力に依存すると考えられている。すなわち、湿潤状態の成形物においては、毛細管現象による水分移動によって周囲よりも気圧の低い真空空間が発現することによって鉱石粒子同士が吸引されるため、成形物の強度が上昇すると考えられる。
【0015】
このことから、本発明の実施形態に係るブリケットの製造方法においては、回収したダストに該ダストよりも粒子径の大きい鉱石を混ぜ合わせている。このように互いに粒子径の異なるダストと鉱石とを混ぜ合わせて造粒することで、隣接する粒同士が離間する際に必要となるエネルギーを増大させることができる。すなわち、成形物を構成する各粒子の自由な動きを制限することで、成形物の強度を高めている。このようにダストに鉱石を混ぜることで、その鉱石を所謂バインダーとして作用させることができる。
【0016】
このように、ダストと鉱石とを混ぜ合わせて造粒するにあたって重要となるのは、粒径の大きい鉱石と粒径の小さいダストとの偏在をなくし、且つ空隙率を下げることであり、そのため、本発明の実施形態に係るブリケットの製造方法では、予めダストと鉱石とを混合する混合工程S1を設けてダストと鉱石とを十分に良く混ぜ合わせている。このように、ダストと鉱石との混練物を作製する工程の前にダストと鉱石とを混合させる混合工程S1とを設けることによって、十分に混合することができ、粒径の大きな鉱石と粒径の小さなダストの偏在をなくすことができるとともに、空隙率を下げることができる。その結果、最終的に得られるブリケットの強度を効果的に高めることができる。なお、ダストと鉱石との混合比率については特に限定はないが、ブリケットに対して鉱石が10〜90質量%程度であるのが好ましい。この比率が10質量%未満ではブリケットの強度が維持できなくなるおそれがあり、一方、90質量%を超えると繰り返す鉱石の量が多くなりすぎて不経済になる。
【0017】
ダストは、上述したようにロータリードライヤーやロータリーキルンの排ガスから回収したものをそのまま用いてもよいが、上記した混合工程S1前にその含水率を所定の値に調整するのがより好ましい。例えば含水率17〜19質量%となるように調整したダストを用いることが好ましい。なお、回収したダストの水分調整方法としては、限定するものではないが、例えば乾燥機を用いて乾燥したり自然乾燥で乾燥させたりする方法を挙げることができる。
【0018】
上記したダストに混ぜる鉱石としては、前述したようにロータリードライヤーでの予備乾燥により付着水分が20質量%以下程度(例えば、17〜19質量%程度)まで低減された乾燥鉱石を用いるのが好ましい。更に、ダストに混ぜる鉱石は、粒径が10mm以下程度の鉱石(粉鉱石)を用いることが好ましい。このように、粒径10mm以下程度の粉鉱石を用いてダストと混合させることによって、後述する混練工程においてダストと鉱石の空隙率を低下させることができ、より一層に強度の高いブリケットを製造することができる。
【0019】
上記したように混合に用いる鉱石の粒径を所定の値にする方法としては、限定するものではないが、例えばロータリードライヤーから排出される予備乾燥された鉱石を目開き10mmの篩に導入して篩分けし、その篩下の鉱石を回収して用いることで可能となる。
【0020】
(混練工程S2)
混練工程S2は、上述の混合工程S1で得たダストと鉱石との混合物に所定量の水を添加すると共に混練することで混練物を得る工程である。この混練工程S2では、混合物に対して、例えば調水装置等を用いて最終的な水分調整を行って混練することによって、ブリケットに成形するための原料(混練物)を作製する。
【0021】
この混練工程S2では、最終調整する水分値が成形物であるブリケットの強度や生産性の面から重要となるため、混練物の含水率が17〜19質量%となるように水を添加してから混練を行う。具体的な成形方法については後述するが、ブリケットマシン等のローラーのカップに混合物を充填させる方法の場合、上記した含水率が19質量%より高くなると成形物の強度が極端に落ち、成形物の形状が維持できなくなる。更にはカップ内の付着物が多くなり、適切な操業が維持できなくなる可能性がある。一方、含水率が17質量%より低くなると毛管力が発現されないため、成形物であるブリケットの強度が極端に悪くなる。
【0022】
また、混練工程S2においては、十分にしっかりと練り上げることによって空隙率を下げるようにすることが好ましい。具体的な混練方法としては、特に限定されないが、例えば50kg/min程度の量を処理する場合には、80L程度の有効容積を有するミキサーを用いて混練させる。また、使用するミキサーについても、特に限定されず、例えばパグミルミキサー等を用いることができる。なお、ここでいうミキサーの有効容積とは、そのミキサーによって有効に混練され得る混合物の収容容積をいう。
【0023】
(成形工程S3)
成形工程S3は、上述した混練工程S2で得た混練物を例えば圧縮型の連続式成形機(ブリケットマシン)を用いて成形することで成形物であるブリケットを得る工程である。具体的な成形条件等については、特に限定されず、一般的な条件にて成形することができる。ブリケットの形状や大きさについても特に限定はないが、円柱状、球状、ラグビーボール状、直方体形状等の形状を有し、最も長い部分の長さが20〜100mm程度のものが取扱い等の観点から好ましい。
【0024】
この成形工程S3にブリケットマシンを用いる場合は、成形される成形物の強度を図2に示すブリケットマシンのモデルで説明することができる。すなわち、粉体がロール間隙に装入されると、食い込み点Aから下では粉体の流れはロール回転と関連的な流れになる。つまり、ロール回転に伴って粉体が圧縮され、空隙は次第に減少して個々の粒子が密着して成形される。したがって、食い込み点Aより下のロール間隙の減少割合が、その成形圧を決め、成形物の比重と強度を決めることになる。この関係を簡単な式で表すと、次式のようになる。
【0025】
【数1】
ここで、「θn」は食い込み角、「Vf」は原料粉の空隙率、「Vp」は成形物の空隙率、「S」はロール間隙、及び「d」はロール直径を表している。
【0026】
この式1において、「d」、「S」、「Vf」が決まれば、成形物の空隙率が決まることになる。つまり、成形物の比重は、食い込み角によって決まることになる。食い込み角は、ロールが一定であるならば、原料粉状によって決まる。つまり、ロール直径が変わっても食い込み角は同じであることから、ロール直径が大きいほど比重の大きな成形物を得ることができる。また、原料粉の空隙率が高いほど、成形物の空隙率が低くなり、その結果として成形物(ブリケット)の強度が高くなる。
【0027】
なお、この成形工程S3におけるブリケットマシン等を用いた成形処理では、一般的に含水率が1〜2%程度低減する。このことから、上述した混練工程S2では、この成形処理での含水率の低下を考慮して、水分の添加量を決定することが好ましい。
【0028】
(乾燥工程S4)
造粒物は自己造粒と圧縮造粒に大別され、造粒後の強度は、圧縮造粒による造粒物の方が、自己造粒による造粒物よりも高い。この圧縮造粒の代表的な方法として、上述したブリケットマシンを使用する方法がある。このブリケットマシンを使用して得られた成型物を乾燥させると、更なる強度を発現することができる。即ち、この乾燥工程S4は、ブリケット中の水分を熱風乾燥によって除去することで、毛管力のみで発現される以上の真空度を有する空間を生み出すことができるので、極めて高い強度を有する成形物を形成することができる。
【0029】
ところで、成形物を乾燥させる方法には天日による自然乾燥と、乾燥炉や焼成炉等を用いた強制乾燥がある。これらの乾燥機構は、未反応核モデルで説明出来る。即ち、ガスにより乾燥されて生成する乾燥物層(ガスと成型物の接触により出来る乾燥物生成界面)が、成形物の中心部に向かって徐々に進行していくことで成形物の乾燥が進行する。天日乾燥などの自然乾燥の場合、乾燥させるためのガス温度が低く、かつ乾燥させるためのガス流量が低い条件では、乾燥物層が成型物中心まで進みにくく、上記乾燥による真空空間の発生による強度が発現するまでには非常に多くの時間がかかる。
【0030】
これに対して乾燥炉や焼成炉等を利用した強制乾燥では、最大強度を示す絶乾状態のブリケットを短時間で得ることができ、特に強制乾燥の熱源としてフェロニッケル製錬におけるロータリーキルンや電気炉の排ガスを利用することで効果的に成形物を乾燥できることを発明者は見出した。
【0031】
すなわち、ロータリーキルンや電気炉から排出される高温の排ガスはダストやヒュームを含むため、通常は電気集塵機やバグフィルター等の乾式集塵設備で排ガスの処理が行われている。この乾式集塵設備の耐熱温度を考慮して排ガスはロータリーキルンや電気炉からの排出した直後に100〜350℃程度まで冷却されている。そのため、この排ガスは排熱の有効利用先に制約がある。一方、成形物であるブリケットの乾燥は100〜350℃程度の熱風であれば良好に乾燥を行うことができる。そこで、上記した冷却後の排ガスを利用して成形工程S3で得られたブリケットの乾燥を行っている。ブリケットを乾燥した後の排ガスは、電気集塵機やバグフィルターなどの乾式集塵設備で排ガス中に含まれるダストが回収される。これにより、冷却により利用先に制約のあった排ガスを有効利用出来るので、排熱利用の点からも非常に有益な方法である。
【0032】
ロータリーキルンや電気炉の排ガスの熱源を利用してブリケットを乾燥させる具体的な方法としては、例えばガスが通気できるように金属製の網やパンチングメタル等の全体に亘って開口部を有する金属製部材で形成された容器内にブリケットを収納し、これを排ガスが流通するダクトやチャンバー内に一定時間設置するかあるいは金属製の網などで形成されたコンベアー等の搬送手段にブリケットを保持させて連続的に送り込むことで排ガスと接触させればよい。
【0033】
金属製の網を使用する場合は、その目開きを5〜50mm程度にするのが好ましい。この目開きが5mm未満の場合、金属製の網を構成する金属線に排ガスに含まれているダストが付着して成長し、金属製の網の目が閉塞しやすくなるので好ましくない。一方、この目開きが50mmを超えると、目開きに合わせてブリケットのサイズを大きくする必要があるが、ブリケットのサイズが50mmを超えて大きくなると、完全に乾燥することが難しくなるうえ、完全に乾燥した場合でも壊れ易くなるため好ましくない。
【0034】
乾燥工程S4において熱源として使用する排ガスの温度は、前述したように100〜350℃が好ましい。この温度が350℃を超えると、乾燥工程S4の前段の排ガス処理設備の集塵装置の性能を高温において集塵特性が劣化しないように改善したり耐熱温度を高温仕様にしたりする必要が生じ、大幅な設備増強を行う必要がある。一方、排ガス温度が100℃未満の場合、乾燥設備内で結露が生じ、前記乾燥設備などの腐食を招く可能性が出てくる。さらにブリケットを乾燥させる効率も悪化する。
【0035】
乾燥工程S4におけるブリケットの乾燥時間は5〜30分が好ましい。この乾燥時間が5分未満の場合、ブリケットを完全に乾燥させることが難しくなる。一方、乾燥時間を30分を超えて乾燥させても乾燥後に得られるブリケットはほとんど変わらない。すなわち、乾燥時間が30分を超えると単位時間当たりに処理できるブリケットの量が減少する。
【0036】
以上詳述したように、本実施の形態に係るブリケットの製造方法では、従来のようにバインダーとしての溶剤等を用いることなく強度の高いブリケットを製造することができる。例えば、圧壊強度5〜10(kgf/個(p))程度の非常に高い強度を有するブリケットが得られる。よって強度の高いブリケットを低コストで製造することができる。
【0037】
なお、成形物の強度としての指標は、一般的に、上述した圧壊強度の他に、歩留、ドラム強度、落下強度等があるが、何れの場合においても、根本的には搬送系統及びロータリーキルンの転動に耐えうる強度であることが必要となる。例えば、このブリケットの製造方法により得られるブリケットは、+10mmの歩留が80%以上となる。
【実施例】
【0038】
[実施例1]
図3に示すような装置を用いてブリケットを作製した。先ず、原料としてのニッケル酸化鉱石の予備乾燥を行うロータリードライヤーからの排ガスと乾燥及び焼成を行うロータリーキルンからの排ガスとの処理設備1からダストを回収した。このダストは鉱石から付着水が除去された乾燥鉱石由来のものと、部分的に結晶水が除去された焼鉱由来のものと、還元剤の石炭由来のものから構成される。
【0039】
次に、ロータリードライヤー2において原料としてのニッケル酸化鉱石を予備乾燥して得た乾燥鉱石を目開き10mmの篩3で篩分けし、篩下の粉鉱石を回収した。この粉鉱石の原料であるニッケル酸化鉱は、Ni品位が2%程度、Fe品位が22%程度、MgO品位が16%程度、SiO品位が35%程度であるラテライト鉱石を数種類ブレンドして調合したものを使用した。これらダストと粉鉱石とをパグミルミキサー4を用いて3分間に亘って混合させた。
【0040】
混合後の鉱石品位は、Ni品位が1.9〜2.4%程度、Fe品位が10〜16%程度、MgO品位が22〜27%程度、SiO品位が37〜41%程度、付着水分が25〜30%程度であった。なお、表1に、混合に用いた原料であるダストと鉱石の粒度分布を示す。表1に示されるように、ダストは比較的粒径が小さく、粉鉱石は比較的粒径が大きく、ダストと粉鉱石とでは互いに粒径が異なることが分かる。
【0041】
【表1】
【0042】
次に、調水装置を備え、処理量が50kg/min当たり0.08m程度の有効容積を持つパグミルミキサー5を用いて、上記したダストと粉鉱石とを混合して得られた混合物に対して所定量の水を添加しながら混練し、混練物を作製した。なお、調水用の水としては、工業用水を用いた。また、その調水の割合としては、成形物の含水率が18%となるように調水した。
【0043】
次に、得られた混練物をブリケットマシン6に装入して成形し、得られたブリケットをフェロニッケル製錬における電気炉からの排ガスを利用して乾燥させた。具体的には、目開き10mmのステンレス製の網で作られた容器7に成形物としてのブリケットを入れ、この成形物が入った容器7を、上述の排ガスの配管ダクト8内に点検孔から入れて300℃の排ガス中に5分間保持した。これにより、試料1の乾燥ブリケットを得た。また、比較のため、ダストと鉱石の混合工程を行わなかった以外は上記試料1と同様にして試料2の乾燥ブリケットを得た。
【0044】
ダストと鉱石の混練に先立ち、上述のように混合工程を行った試料1のブリケットと、混合工程を行わなかった試料2のブリケットの圧壊強度を測定した。その結果、混練の前にダストと鉱石とを混合させた試料1のブリケットの強度は、混合させなかった試料2のブリケットの強度に比べて2倍高くなった。これは、予備混合を行うことによって、粒径の大きな鉱石と粒径の小さなダストとが偏在することなく満遍なく混合され、これによって混練して得られた混練物の空隙率が非常に小さくなって強度が向上したためであると考えられる。
【0045】
[実施例2]
上記実施例1と同様のダストと粉鉱石との混合物を5種類用意し、それぞれ混練工程の際の含水率を、20%、19%、18%、17%、及び15%となるように水の添加量を調整した以外は実施例1と同様にして試料3〜7の乾燥ブリケットを作製した。これら試料3〜7の乾燥ブリケットに対して、歩留(+10mm)、生圧壊強度(kgf/個(p))、DI強度(ドラム強度、+10mm)を測定した。なお、含水率は、各試料を100℃24hで乾燥させたときの乾燥前後の質量変化に基づいて算出した。その結果を下記の表2に示す。また、表中の「−」は測定していないことを示す。
【0046】
【表2】
【0047】
上記表2から分かるように、成形物であるブリケットの含水率が17〜19%となるように混練工程にて水を添加することによって、そのブリケットの歩留が80%以上、圧壊強度が5kgf/個(p)以上となることが分かった。
【0048】
[実施例3]
上記実施例1と同様のダストと粉鉱石との混合物を5種類用意し、乾燥工程においてそれぞれ別々の条件で乾燥した以外は実施例1と同様にして試料8〜12の乾燥ブリケットを作製した。すなわち、試料8は乾燥工程を行わず、試料9は自然乾燥で1日乾燥し、試料10は自然乾燥で2日乾燥し、試料11は100℃のマッフル炉で乾燥し、試料12は300℃のマッフル炉で乾燥した。これら試料8〜12の乾燥ブリケットに対して、実施例1と同様にして強度を測定した。
【0049】
その結果、圧壊強度は試料8では6kgf/個(p)、試料9では18kgf/個(p)、試料10では17kgf/個(p)、試料11では21kgf/個(p)、試料12では28kgf/個(p)となった。この結果から、自然乾燥よりもマッフル炉での乾燥の方が強度上昇比が3.2〜4.3倍高くなった。また、マッフル炉での乾燥では乾燥温度を100℃よりも高い300℃にすることで、成形物の強度をより高くすることができた。
【0050】
[実施例4]
上記実施例1と同様のダストと粉鉱石との混合物を3種類用意し、乾燥工程において各々電気炉からの300℃の排ガスで乾燥時間を変えて乾燥した以外は実施例1と同様にして試料13〜15の乾燥ブリケットを作製した。具体的には、各試料において乾燥時間1〜30分の間で複数回サンプリングしてその強度を測定した。その結果を下記表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
上記表3から分かるように、乾燥時間1分では、残留水分が含水率で7%程度残っているが、乾燥時間が5分以上では成形物はほぼ絶乾となることが分かった。また、乾燥時間10分以上では強度が3倍以上に上昇しているが、乾燥時間をさらに延長しても強度の増加は緩やかとなることが分かった。すなわち、乾燥時間としては5〜30分が好ましく、10分〜20分程度がより好ましい。
【符号の説明】
【0053】
S1 混合工程
S2 混練工程
S3 成型工程
S4 乾燥工程
図1
図2
図3