【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のインキ飛散防止カバーは、グラビア印刷版両端のR部と、そこから軸方向に伸びる版側面と一部版面とを覆うインキ飛散防止カバーであって、前記
インキ飛散防止カバーの中程に、前記グラビア印刷版の版面側から前記版側面側に向かって切込み部を設け、該切込み部をドクター刃の上に固定し
、該切込み部に連なる折り曲げ部をドクター刃の刃先を潜るように設け、前記インキ飛散防止カバーの一部領域を前記ドクター刃の下に配置してなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のインキ飛散防止カバーにおいて、前記切込み部を除く領域と前記ドクター刃を保持するドクターホルダーの間に
設けられた固定具により、前記切込み部を除く領域と前記ドクターホルダーとが連結固定されることを特徴とする。
【0013】
このように、本発明のインキ飛散防止カバーは、グラビア印刷版とドクター刃が接する両端の前記グラビア印刷版のR部及びグラビア印刷版側面よりのインキ飛散及びグラビア印刷版の版側面へのインキ付着面積を削減するためのインキ飛散防止カバーであり、ドクター刃がグラビア印刷版に接触する部分においてはインキ飛散防止カバーの中程に切込みを入れ、ドクター刃がグラビア印刷版に接触しない部分では、ドクター刃の前方向に設けるカバーとドクター刃の裏面に設けるカバーとが一体化しているシート状のインキ飛散防止カバーであり、該インキ飛散防止カバーをドクター刃、厚刃当て板、もしくはドクターホルダーに両面テープで固定、更にドクターホルダーとインキ飛散防止カバーを引っ掛け固定具で固定、または前記固定の方法を併用固定し使用する。
【0014】
従来使用されているインキ飛散カバーと本発明のインキ飛散カバーとの大きな違いは、ドクター刃の前後に、それぞれ1枚ずつ設けていたインキ飛散カバーを、本発明では1枚にして、版面に安定して添わせるようにしたことである。これにより、グラビア印刷版に塗布されたインキは、グラビア印刷版のR部及び版側面に於けるインキの状態が安定になることでインキ飛散を少なくすることができる。
【0015】
また、従来インキ飛散カバーの取り付けにおいて、ドクター刃と厚刃当て板に挟んだり、ドクター架台にホルダーをセットし粘着テープで貼り付けたりであったり、さまざまであり、安定してインキ飛散防止カバーの取り付けができないこともインキ飛散を多くしていた原因の一つでもある。
【0016】
本発明のインキ飛散防止カバー(1)の一例(ドクター側からみてグラビア印刷版の右のグラビア印刷版端部に付けるインキ飛散防止カバー)を
図1で説明する。
図1のインキ飛散防止カバーはインキ飛散防止カバーA部(1A)とインキ飛散防止カバーB部(1B)の前後の部分よりなり、中央部に切込み部(2)を有し、
図1のインキ飛散防止カバーB部(1B)はグラビア印刷版とドクターの間にセットされる部分となる。インキ飛散防止カバーA部(1A)は、ドクターでインキが掻き落とされた版面の上に乗る部分であり印刷中も状態を目視確認できる。中央に示す横方向の破線は、罫線(3)を示し、折り曲げやすくしている。また、中央部の裏面に耐溶剤性の両面テープ(4)をドクター刃や厚刃当て板と固定できるように貼ってある。インキ飛散防止カバーB部(1B)の左半分はグラビア印刷版に接しない部分であり中央部に固定治具の先端を差し込み固定する四角穴(5)が設けてある。四角穴(5)近傍の罫線(6)は、版面から離れたドクター刃が版面より1mm程度版の芯方向に低くなるためドクター刃に沿うよう罫線を設けている。インキ飛散防散カバー(1)の下部を斜めにカット(7)しているのは、インキ飛散防止カバーに付着したインキが鋭角部(8)よりインキパンの中に落ちるようにしている。縦中央部に示した1点破線はドクター刃(10)の揺動幅(9)を示し白抜き両矢印表示する。
【0017】
図2に、インキ飛散防止カバー(1)をドクター刃(10)にセットしグラビア印刷版(11)に沿わせた
図1のイ−イの断面図を、
図3に、インキ飛散防止カバー(1)をドクター刃(10)に引っ掛け固定具(16)を使用しセットした
図1のロ−ロの断面図を示す。
【0018】
図2は、グラビア印刷版(11)の版面上に沿ったインキ飛散防止カバー(1)を示したもので、インキ飛散防止カバー(1A)の罫線(3)からの一部が折り曲げられ耐溶剤の両面テープ(12)でドクター刃(10)及び厚刃当て板(13)に固定されている。ドクター刃を固定するドクターホルダー(14)及びドクターホルダー架台(15)については説明を省略する。
【0019】
図3は、グラビア印刷版(11)の版面上に乗らないインキ飛散防止カバー(1)のロ−ロの断面図を示したもので、この部分では、インキ飛散防止カバーA部(1A)とインキ飛散防止カバーB部(1B)は切断されることはなく、引っ掛け固定具(16)を用い、片方を四角穴(5)に通し、もう一方をドクターホルダーの上板(14C)に蝶ネジ(17)で固定されている。
【0020】
図4は、引っ掛け固定具(16)の斜視図である。片方の先端は、2本の角(18)にしてインキ飛散防止カバー(1)の四角穴(5)に通し、もう片方の端部をドクターホルダー(14)の上板(14C)に蝶ネジ(17)で固定する。これにより、引っ掛け固定具(16)と先に記した耐溶剤性の両面テープ(4)によりインキ飛散防止カバー(1)は固定できる。白抜き矢印はネジの差し込みを表している。
【0021】
図1から
図4で、本発明の飛散カバーの1例を、また引っ掛け固定具の1例を示したが、これらのサイズや形状は、上記述べたように飛散カバーをしっかりと固定できればよく、ドクター刃、厚刃当て板、ドクターホルダーを使い固定すればよい。例えば、引っ掛け固定具を使わず、耐溶剤性の両面テープの面積を広く(幅を広く)してインキ飛散防止カバーを固定してもよい。更に、ガムテープで更に固定の補強をしてもよい。
【0022】
飛散カバーに使用する材質としては、厚み70ミクロンから300ミクロンのポリエステルフィルム、バージンパルプを使用した密度の高い100g/平方メートルから300g/平方メートルの厚紙等がよい。ただグラビア印刷版のR部の状態、インキ飛散の状態を見るには、透明なフィルムがよく、紙粉などの異物の混入の心配もない。
【0023】
グラビア印刷機に使用されるグラビア印刷版は版円周と版幅の違い、ドクターホルダーについては形状の違いである。従って本発明のインキ飛散防止カバーや引っ掛け固定具において、大きさ(長さと幅)や形状などを、それぞれのグラビア印刷機に合わせば、全てのグラビア印刷機に使用することができる。
【0024】
本発明のグラビア印刷装置は、グラビア印刷版とドクター刃が接する両端の前記グラビア印刷版のR部及び前記グラビア印刷版側面よりインキが飛散するのを防ぐインキ飛散防止カバーが、該
インキ飛散防止カバーの中ほどに、前記グラビア印刷版の版面側から前記版側面に向かって切込み部を設け、該切込み部をドクター刃の上に固定し、
該切込み部に連なる折り曲げ部をドクター刃の刃先を潜るように設け、前記切込み部を除く領域と前記ドクター刃を保持するドクターホルダーの間に
設けられた固定具により、前記切込み部を除く領域と前記ドクターホルダーとが連結固定されるインキ飛散防止カバーを備えることを特徴とする。
【0025】
このようにグラビア印刷装置においては、本発明のインキ飛散防止カバーを使用しドクターに2カ所以上で固定することにより、グラビア印刷版に安定した状態で固定することができる。これによりグラビア印刷版に、ドクターの前後に2枚設けるインキ飛散カバーが、1枚で前後一体であることにより安定して添わすことができ、版側面及びR部においてインキが一定の流れを保つためインキ飛散はすくなくなる。
【0026】
本発明の飛散カバーを使用することで、グラビア印刷において次のような改善が図れた。(1)品質面については、ドクター刃の前後に2枚のインキ飛散防止カバーを設け固定が不安定でグラビア印刷版とインキ飛散防止カバーの間からインキの微粒子が被印刷物に飛散しインキ汚れ発生したが、これを無くすことができた。(2)ドクター準備作業面においては、インキ飛散防止カバーは1枚になること、しっかりとした固定が出来ること、固定具を使えば取り付け位置の確認が不要になること、など作業の簡易化、時間短縮、個人差の解消が図れる。(3)環境面については、インキ飛びの激減により、グラビア印刷版のチャッキングコーン、機械フレームへの清掃頻度を大幅に減らすことができた。
【0027】
図5は、グラビア印刷を進行しているときのインキ飛散防止カバーをセットした概念斜視図である。インキ飛散防止カバーはドクターに安定した状態で固定されており、ドクターの揺動においても、ドクターの前後に設けたインキ飛散防止カバーに揺れや傾きは発生しない。
【0028】
このように、作業の平準化及び、3K職場からの一部開放は、グラビア印刷方法の大きな前進であり、本発明のインキ飛散防止カバーの効果は大きい。