特許第6183767号(P6183767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183767
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】携帯用グリップ
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/02 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   B60N3/02 B
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-50877(P2017-50877)
(22)【出願日】2017年3月16日
(62)【分割の表示】特願2016-546535(P2016-546535)の分割
【原出願日】2015年10月9日
(65)【公開番号】特開2017-137050(P2017-137050A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2017年3月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-210321(P2014-210321)
(32)【優先日】2014年10月14日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313003532
【氏名又は名称】株式会社創考テクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100151367
【弁理士】
【氏名又は名称】柴 大介
(72)【発明者】
【氏名】照山 廣之
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−227130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/02
A45C 13/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に沿って手のひらと指が接触して握持できる外部表面を有し、
前記外部表面の内側に嵌合スペースを有し、
前記嵌合スペースが、対象グリップの把持部を着脱自在に嵌合し、
前記対象グリップの把持部が、把持部aと、前記把持部aと形態の異なる把持部bとを有し、
前記嵌合スペースが、前記嵌合スペースの底部を含む嵌合スペースAと、前記嵌合スペースAに連通する嵌合スペースBとを有し、
前記嵌合スペースAは、前記把持部aを着脱自在に嵌合するが、前記把持部bを嵌合せず、
前記嵌合スペースBは、前記把持部bを着脱自在に嵌合するが、前記把持部aを嵌合しないように構成されており、
前記外部表面に連結され、指の一部と係合する指係合部とを備えた形態が除かれる携帯用グリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用グリップに関する。
【背景技術】
【0002】
電車、バス、船等の乗客輸送体の乗車空間には、多くの場合、乗客の体を支えるための吊り輪が備えられている。
これらの吊り輪は、非特定多数の乗客が素手で接触するため。必ずしも衛生的とはいえない。そのため、乗客の中には、吊り輪を素手で接触することを躊躇う人も多く、特に女性においてその傾向が大きい。
【0003】
特許文献1には、吊り輪洗浄具が開示されている。この吊り輪洗浄具は、筒状のホルダーと、ホルダー内に嵌入され、洗浄殺菌剤や抗菌剤等の薬液が含浸せられた海綿状の洗浄部材とを含み、吊り輪は洗浄部材で圧接状態で抱持されているホルダーに取り付けられ、ホルダーは吊り革に止着されて垂設される。吊り輪を握る者は、吊り輪を廻すことにより吊り輪が圧接している薬液含浸の洗浄部材によって洗浄され、いつも清潔な吊り輪を握ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−126673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている吊り輪洗浄具は、吊り輪毎に連結するホルダーに取り付けられているため、乗客にとっては、この吊り輪洗浄具が設置されているホルダーに連結した吊り輪でしか発明の効果を享受できず、この吊り輪洗浄具を全ての吊り輪に設置すると、乗客輸送体の運行業者にとって、設置費用とメンテナンス費用の負担が大きくなるため、普及しているとはいえない。
【0006】
吊り輪を素手で接触することを躊躇う人は、簡易な手段として、ウェットティッシュで吊り輪を拭いたり、手袋をしたりすることがあるが、使用したウェットティッシュの処分が煩雑であり、手袋の着用は季節によっては手が蒸れることがあり快適とはいえない。
【0007】
本発明は、吊り輪のような対象となるグリップ(以下、対象グリップという)の把持部への着脱が容易で、どの対象グリップの把持部に対しても、対象グリップの把持部を素手で接触しないように把持することができる携帯用グリップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、表面に沿って手のひらと指が接触して握持できる外部表面を有し、前記外部表面の内側に嵌合スペースを有し、前記嵌合スペースが、対象グリップの把持部を着脱自在に嵌合する携帯用グリップである、
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、対象グリップの把持部への着脱が容易で、どの対象グリップの把持部に対しても、対象グリップの把持部を素手で接触しないように握持することができる携帯用グリップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】開放型嵌合スペースを備える携帯用グリップ1を示し、(a)は指先接触面側斜視図、(b)は手のひら接触面側斜視図である。
図2】開放型嵌合スペースを備える複合型携帯用グリップ2を示し、(a)は指先接触面側斜視図、(b)は手のひら接触面側斜視図である。
図3】開放型嵌合スペースとホールド部を備える携帯用グリップ3を示し、(a)は指先接触面側斜視図、(b)は手のひら接触面側斜視図である。
図4図1の携帯用グリップ1の、(a)正面図、(b)背面図、(c)平面図、(d)底面図、(e)左側面図及び(f)右側面図である。
図5】開放型嵌合スペースを備える複合型携帯用グリップの右側面図である。
図6図2の携帯用グリップ2の、(a)正面図、(b)背面図、(c)平面図、(d)底面図、(e)左側面図及び(f)右側面図である。
図7】非開放型嵌合スペースを備える携帯用グリップ4の、(a)正面図、(b)背面図、(c)平面図、(d)底面図、(e)左側面図、(f)右側面図及び(g)外殻パーツS1及びS2が開いている場合の右側面図である。
図8】非開放型嵌合スペースを備える携帯用グリップ5の、(f)右側面図及び(g)外殻パーツS1及びS2が開いている場合の右側面図である。
図9】携帯用グリップ6の(a)正面図及び(e)左側面図である。
図10】(a)は図1の携帯用グリップ1の嵌合スペースが、円形のリングである対象グリップの把持部aを嵌合している状態の斜視図、と、(b)は図2の携帯用グリップ2の嵌合スペースが、三角形のリングである対象グリップの把持部bを嵌合している状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態を、図1図10を適宜参照して説明する。
〔対象グリップ〕
本発明における対象グリップ6、7の把持部(図10)は、複数の、好ましくは不特定の複数の、より好ましくは不特定多数の人が素手で握ることが想定されており、例えば、以下が挙げられる。
(例1)電車、バス、船等の乗客輸送体に備えられる吊り輪又は棒状のバー;
(例2)営業用またはレンタル用乗用車のハンドル;
(例3)営業用またはレンタル用バッグ等のレンタル用ケースの把持部;
(例4)エスカレーター用手摺ベルト。
【0012】
対象グリップ6、7は、例えば、電車内に設置される吊り輪の場合、対象グリップ6、7の把持部a,bであるリングと、電車内の天井等の車体の構成部分と連結用ベルト8で連結して設置される(図10)。
【0013】
吊り輪は、通常、中空のリング状であり、例えば、外形及び中空部分が円形のリング状又は三角形等の多角形のリング状が挙げられる。リング状とは、連続したリングでもよいし、トライアングルのように、全体としてリング状を形成しているが一部途切れていてもよい。以下、リング状の対象グリップの把持部をリングという。
【0014】
対象グリップ6、7の把持部a,bの断面は、対象グリップ6、7を素手で握持したときに、少なくとも親指と他の指(好ましくは小指)を除く3本の指、好ましくは、親指を除く4本の指(以下、親指を除く前記3本又は4本の指をまとめて指ともいう)を揃えて、第1関節と第2関節を指の付け根又は手のひらに対抗するように曲げて、握ることができる程度の大きさと形状であることが好ましい。
【0015】
対象グリップ6、7の把持部a,bの断面は、円形、楕円形又は四角形等の多角形であることが好ましい。多角形の場合、角が丸く形成されていれもよい。
【0016】
対象グリップ6、7の把持部a,bの材質は、対象グリップ6、7の把持部a,bが手で把持された際に必要な強度と硬さを与えられるという観点から、布、ゴム、プラスチック、金属、ガラス、セラミックス等から目的に応じて選択すればよいが、適度の強度と硬さを設計でき、軽量であることからプラスチックであることが好ましい。
【0017】
プラスチックである場合、上述の強度と硬さ及び成形性の観点から、
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)等の熱可塑性樹脂が好ましく、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)がより好ましく、ポリプロピレン(PP)が更に好ましい。
【0018】
〔携帯用グリップ〕
本発明の携帯用グリップ(以下、携帯用グリップという)は、
その表面に沿って手のひらと指が接触して握持できる外部表面を有し、外部表面の内側に嵌合スペースを有し、嵌合スペースは、対象グリップの把持部を着脱自在に嵌合する。
【0019】
携帯用グリップの好適な態様を、図1図10に示される実施態様を例にして説明する。
携帯用グリップ1は、携帯性の観点から、携帯用グリップ1全体が、一辺の長さがそれぞれL、W、Dの直方体領域LWDに内包される程度の大きさであることが好ましく、この場合、
Lが3〜12cm、Wが2〜11cm、Dが0.5〜5cmであることが好ましく、
Lが5〜10cm、Wが3〜9cm、Dが1〜4cmであることがより好ましく、
Lが6〜8cm、Wが5〜7cm、Dが1〜3cmであることが更に好ましい。
【0020】
(A)外部表面
外部表面11は、その表面に沿って手のひらと指が接触して握持できるように構成される。外部表面11は、その表面に沿って手のひらと指を接触して握持したときに、手のひらが接触する手のひら接触面111、指が曲がった状態で接触する屈曲面112及び指先が接触する指先接触面113を備え、手のひら接触面111から屈曲面112を経由して指先接触面113に至るまでこれらの面は連続して形成される。
【0021】
なお、用途又は人の手の大きさによっては、指先接触面が設けられていないか十分に確保されておらず、指の先端又は指の第一関節から指の先端までが、外部表面に接触しない場合があってもよい。
【0022】
外部表面11は、別部材で形成された手のひら接触面111、屈曲面112及び指先接触面113を連続して形成されてもよいし、単一材料で、手のひら接触面111、屈曲面112及び指先接触面113を連続した面として形成されてもよい。
【0023】
外部表面11に沿って手のひらと指を接触して握持したときに、屈曲面112は、手のひら接触面111に接触する手のひらの部分と、指先接触面に接触する指先の部分とが、対向する程度に屈曲していることが好ましい。
【0024】
屈曲面112は、曲面を形成して湾曲していてもよいし、多面体を形成して屈曲していてもよいが、外部表面11を手のひらと指を接触して握持したときに、指に応力が集中しないように曲面を形成して湾曲していることが好ましい。
【0025】
対象グリップの把持部が円形リングの場合、屈曲面112は、例えば、形態用グリップ1(図1)及び3(図3)並びに携帯用グリップ2(図2)の下側の屈曲部に示すように、手のひら接触面に平行な方向の断面形状が凹状曲線で、手のひら接触面に垂直な方向の断面形状が凸状曲線である馬の鞍形に形成されていることが好ましい。
【0026】
対象グリップの把持部が三角形のリングの場合、対象グリップの把持部は棒状になるので、屈曲面112は、例えば、図2の携帯用グリップ2の上側の屈曲部に示すように、手のひら接触面111に平行な方向が直線で、手のひら接触面111に垂直な方向が凸状曲線の断面形状であるように形成されていることが好ましい。
【0027】
図2では、携帯用グリップ2の上下の把持部が、同じ側に湾曲して図6(e)のように左側面がC字型であるが、上下の把持部が互いに逆の側に湾曲して左側面がS字型なっていてもよい。この場合、手のひら接触面が互いに背中合わせになる。
【0028】
外部表面11は、少なくとも、手のひら接触面111から指先接触面113までが最大長l、最大幅dの面積を有することが好ましく、携帯用グリップの携帯性の観点から、
lが9〜25cm、dが5〜12cmであることが好ましく、
lが11〜20cm、dが6〜10cmであることがより好ましく、
lが13〜15cm、dが6〜8cmであることが更に好ましい。
【0029】
外部表面11は、手のひら接触面111と指先接触面113の間に屈曲面112を備えるだけでなく、図3の携帯用グリップ3に示すように、手のひら接触面111側の端部に屈曲面112と対向するようにホールド部112hを備え、外部表面11を手のひらと指で握持したときに、親指の付け根近傍をホールド部112hでホールドできるようにしてもよい。
【0030】
ホールド部112hを備えていると、携帯用グリップの嵌合把持部を手のひらと指で握持したときに、外部表面11と手のひらの接触面積が大きくなるため、手のひらと指による把持が安定し、携帯用グリップを安定して操作でき、手のひらと指の握持負担を軽減することができる。
【0031】
(B)嵌合スペース
嵌合スペース12は、外部表面11の内側に構成される。
嵌合スペース12が、外部表面11の内側に構成されることで、携帯用グリップ1は、前述した直方体領域LWDに内包されるようなコンパクトな形態を設計できる。
【0032】
前記嵌合スペース12は、対象グリップの把持部を着脱自在に嵌合する。従って、携帯用グリップ1の使用者が、外部表面11を手のひらと指とで握持して、携帯用グリップ1を外部表面11の内側に構成される嵌合スペース12と共に対象グリップの把持部まで移動して、嵌合スペース12で対象グリップの把持部を嵌合して、対象グリップを素手で握ることなく、携帯用グリップ1を介して把持することができる。
【0033】
嵌合スペース12は、対象グリップの把持部を嵌合している場合にも、外部に開放されている携帯用グリップ1〜3におけるような開放型嵌合スペース12と、対象グリップの把持部を嵌合している場合には外部に対して開放されていない携帯用グリップ4におけるような非開放型嵌合スペース12が典型例として挙げられる。
【0034】
(B−1)開放型嵌合スペース
図1〜3の携帯用グリップ1〜3に示すように、携帯用グリップ1は、プレートが屈曲した形状であり外部に向いたプレート面が外部表面11を形成し、内部に向いたプレート面が開放型嵌合スペース12を形成している。
【0035】
開放型嵌合スペース12は指先接触面113の裏面と、手のひら接触面111の裏面とが対向している空間に形成され、この空間に対象グリップの把持部が挿入され、屈曲面112の裏面(以下、嵌合スペース12の底部12bという)に接触して嵌合することになる。
【0036】
外部表面の屈曲面112は凸状屈曲になり、嵌合スペースの底部12bの近傍は、屈曲面112の裏側であり、凹状屈曲になるので、開放型嵌合スペース12が対象グリップの把持部を嵌合しいているときは対象グリップの把持部は凹状屈曲した面に接触して嵌合されていることになる。
【0037】
開放型嵌合スペース12の対象グリップの把持部を挿入する空間は、開放型嵌合スペース12が対象グリップの把持部を嵌合している場合でも、外部に開放されており、携帯用グリップを対象グリップの把持部に対して上下するだけで、嵌合の着脱を行うことができる。
【0038】
開放型嵌合スペース12の凹状屈曲の面は、曲面を形成して屈曲していてもよいし、多面体を形成して屈曲していてもよいが、対象グリップの把持部が表面に接触したときに、応力が集中し難いように曲面を形成して屈曲していることが好ましい。
【0039】
屈曲して対向する開放型嵌合スペースの間隙の距離をxとすると、対象グリップの把持部の表面が凹状屈曲の面に接触するように嵌合するには距離xが、開放型嵌合スペース12の間隙を通過する対象グリップの把持部の断面の最大径と同程度であることが好ましい。
【0040】
距離xを対象グリップの把持部の断面の最大径よりも小さい距離にして、開放型嵌合スペース12の間隙の距離が弾性的に変位するように開放型嵌合スペース12を構成する材質、構造を設計し、対象グリップの把持部で開放型嵌合スペース12がスナップ式に嵌合を着脱できるように構成してもよい。
【0041】
対象グリップの把持部がリングの場合、開放型嵌合スペース12をリングに嵌合させる場合、開放型嵌合スペース12は、リングの表面と接触する形状であることが好ましい。
【0042】
対象グリップの把持部がリングで、開放型嵌合スペース12をリングの中空部分側から嵌合する場合、例えば、図1に示すように、開放型嵌合スペース12は、手のひら接触面111の裏面に平行な方向が凹状曲線で、手のひら接触面111の裏面に垂直な方向が凸状曲線の断面形状である馬の鞍形に形成されていることが好ましく、開放型嵌合スペース12の底部がリングの中空部分側の表面と接触できるような凹状曲線の形状であることがより好ましい。
【0043】
対象グリップの把持部が三角形のリングで、開放型嵌合スペース12をリングの中空部分側から嵌合する場合、対象グリップの把持部は棒状になるので、例えば、図4に示すように、開放型嵌合スペース12は、手のひら接触面111の裏面に平行な方向が直線で、手のひら接触面111の裏面に垂直な方向が凹状曲線の断面形状であるように形成されていることが好ましい。
【0044】
(B−2)非開放型嵌合スペース
図7に示す携帯用グリップ4は、外殻Sを備え、外殻Sの表面に外部表面11が構成され、外殻Sの内部に非開放型嵌合スペース12が構成されている。従って、携帯用グリップ4は、外部表面11の内側に非開放型嵌合スペース12を有している。
【0045】
この場合も、外部表面11は、その表面に沿って手のひらと指を接触して握持したときに、手のひらが接触する手のひら接触面111、指が曲がった状態で接触する屈曲面112及び指先が接触する指先接触面113を備え、手のひら接触面111から屈曲面112を経緯して指先接触面113に至るまで、これらの面は連続して形成される。
【0046】
手のひら接触面111は外に向けて膨らみをもっていると、外部表面11と手のひらの接触面積が大きくなり、外部表面11の握持が安定して好ましい。
【0047】
外殻Sは、さらに、外部表面11の手のひら接触面111と対向する面(以下、対向手のひら接触面111fという)と、屈曲面112と対向する他の屈曲面(以下、対向屈曲面112fという)とを備え、外部表面11は対向手のひら接触面111fと対向屈曲面112fに接続する。
【0048】
対向手のひら接触面111fが指先接触面113に向けて凸状に膨らんで屈曲面112に接続していると、指先が凸状部に引っ掛けることができ、外部表面11握持が安定して好ましい。
【0049】
外殻Sは、さらに、外部表面11の両側部と対向手のひら接触面111fの両側部を接続する、対向する側面(以下、対向側面114fという)を備え、対向側面114fは、屈曲面112足部及び対向屈曲面112f足部と接続している。
【0050】
2つの対向側面114fは、2つの対向する孔H(以下、嵌合孔Hという)を有する。
【0051】
外殻Sは、2つの嵌合孔Hの間の空間によって嵌合スペース12を構成する。即ち、携帯用グリップは、外部表面の裏側に嵌合スペースを備える。
【0052】
外殻Sは、屈曲面112から対向側面114fを経由して対向屈曲面112fに沿って切断された分割部Cを有する。手のひら接触面111を含む外殻(以下、外殻パーツS1という)と対向手のひら111fを含む外殻(以下、外殻パーツS2という)の2つの外殻部材から構成される。
【0053】
外殻パーツS1と外殻パーツS2は、屈曲面112の分割部Cに備わるヒンジ112hで結合している。
携帯用グリップ4は、ヒンジ112hで結合された状態で、対向屈曲面112fの分割部分で、外殻パーツS1及びS2を自在に開閉することができる。
なお、外殻パーツS1及びS2を閉じている間は、電車の振動等で容易に開くことがないように、対向屈曲面上に、外殻パーツS1及びS2を係止する機構を有することが好ましい。
【0054】
非開放型嵌合スペース12は、外殻パーツS1及びS2を閉じているときに形成される、嵌合孔Hを含む外殻の内部の空間で形成される。
【0055】
対象グリップの把持部がリングである場合、外殻パーツS1及びS2を開き、開き口からリングを嵌合Hの開き口位置まで挿入し、外殻パーツS1及びS2を閉じると、通常、素手で握持されるリングの下側(対象グリップの把持部)は外殻内に収まり、リングの上側は嵌合から露出しており、例えば、つり革で車体と結合されている。
【0056】
上記のように、対象グリップの把持部は、外殻パーツS1及びS2が閉じたときに形成される嵌合孔Hと外殻の内部空間に嵌合され、外殻パーツS1及びS2が閉じている間は、対象グリップの把持部の嵌合を解除することができない。
【0057】
このように対象グリップの把持部の嵌合が、嵌合スペースの構成を解体しなければ解除できない嵌合スペースを非開放型嵌合スペース12といい、嵌合Hと外殻の内部空間で構成される嵌合スペースは非開放型嵌合スペース12の好適な一例である。
【0058】
非開放型嵌合スペース12が対象グリップの把持部をより安定に嵌合する観点から、外殻の内部にある対象グリップの把持部の足部を支持するように、外殻パーツS1及び/又はS2の内壁面にリブを設けることが好ましい。
【0059】
(C)複合型携帯用グリップ
(C−1)開放型嵌合スペースの場合(その1)
1個の携帯用グリップが、異なる形態の対象グリップの把持部に嵌合することができることが好ましく、
対象グリップの把持部が、把持部aと、把持部aと形態の異なる把持部bとを有し、
嵌合スペースが、嵌合スペースの底部12bを含む嵌合スペースAと、嵌合スペースAに連通する嵌合スペースBとを有し、
嵌合スペースAは、把持部aを着脱自在に嵌合するが、把持部bを嵌合せず、
嵌合スペースBは、把持部bを着脱自在に嵌合するが、把持部aを嵌合しないように構成されていることが好ましい。
【0060】
例えば、図1に示される円形のリングを把持部aとして有する対象グリップと、図4に示される三角形のリングを把持部bとして有する対象グリップとがあり、
把持部aを構成するリングの円の断面の直径がr
把持部bを構成するリングの逆三角形の断面の最長底辺(通常指で握持される部分)の長さがrであり、r>rであるとする。
【0061】
例えば、図1〜6において、距離xを、
把持部aに合わせて、x=rとした嵌合スペース12は、嵌合スペース12の挿入口を把持部bが通過できず、
把持部bに合わせて、x=rとした嵌合スペース12は、把持部aに、嵌合スペース12を嵌合したときに遊嵌状態になってしまい、嵌合スペース12と把持部aの表面とを安定して接触させることが難しい。
【0062】
このような場合、距離xが、図5のように、
嵌合スペースの底部12bから指先接触面112裏面側の端部に向けて、
把持部aの断面直径程度の距離までを構成する嵌合スペースA(12A)ではrであり、把持部aの断面直径程度の距離から指先接触面112裏面側の端部まで構成する嵌合スペースB(12B)ではrとなるように設定する。この場合、
嵌合スペースA(12A)は、その底部とx=rの内壁表面Sとで形成される嵌合スペースであり、
嵌合スペースB(12B)は、x=rの内壁表面Sが形成するスペースが嵌合スペースであり、
嵌合スペースA及びBは連通している。
【0063】
嵌合スペースA(12A)の内壁表面Sと嵌合スペースB(12B)の内壁表面Sとは、接続面で階段状に接続していてもよく、テーバー状に接続していてもよい。
【0064】
嵌合スペースが、嵌合スペースA(12A)及びB(12B)からなる場合、携帯用グリップの嵌合スペースA(12A)及びB(12B)を対象グリップの把持部に嵌合すると、
把持部aは、嵌合スペースA(12A)において、その底部近傍に把持部aの表面が接触して着脱自在に嵌合されるが、嵌合スペースB(12B)に嵌合されることはない。
把持部bは、嵌合スペースA(12A)に侵入できず、嵌合スペースB(12B)において、嵌合スペースA(12A)と嵌合スペースB(12B)の接続箇所近傍に接触して嵌合される。
【0065】
(C−2)開放型嵌合スペースの場合(その2)
携帯用グリップの嵌合スペースは、携帯用グリップの異なる複数個所(好ましくは2か所)に備えてあってよく、それぞれの嵌合スペースが、対象グリップの異なる形態の把持部に嵌合できるように構成されていると、1個の携帯用グリップで複数の対象グリップの把持部に対応することができる。
【0066】
例えば、図6(a)〜(f)に示すように、手のひら接触面111の両端に、屈曲面112及び指先接触面113が構成され、一方の端部には、図1の形態の開放型嵌合スペースA(12A)、他の端部には、図4の形態の開放型嵌合スペースBが設けてある。
【0067】
開放型嵌合スペースA(12A)は、円形のリングである把持部aを嵌合することができるが、三角形のリングである把持部bを嵌合することができず、開放型嵌合スペースBは、三角形のリングである把持部bを嵌合することができるが、円形のリングである把持部aを嵌合することができない。
【0068】
(C−3)開放型嵌合スペースの場合(その3)
3種類の異なる形状の対象グリップに1個で対応できる携帯用グリップ6を図9に示す。
【0069】
(C−3−1)対象グリップA(図9(a)対象グリップ6の例である)
リングの中空部分が円、把持部の断面が直径rの円形である。
(C−3−2)対象グリップB(図9(b)対象グリップ7の例である)
リングの中空部分が正三角形、把持部の断面が直径rの円形である。
(C−3−4)対象グリップC(図9(b)対象グリップ7の例である)
リングの中空部分が(2辺が底辺より長い)二等辺三角形、把持部の断面が直径rの円形であり、
<r<r
である。
【0070】
嵌合スペース12は、
屈曲面112の背面に設けられている底部12bAと底部12bAに接続する距離xで対面する内壁で構成される対象グリップAのための第1の嵌合スペース、
第1の嵌合スペースの対面する内壁と、テーバー状の第1の段差を経由して接続する距離xで対面する内壁で構成される対象グリップBのための第2の嵌合スペース、
第2の嵌合スペースの対面する内壁と、テーバー状の第2の段差を経由して接続する距離xで対面する内壁で構成される対象グリップCのための第3の嵌合スペースからなり、
底部12bAは好ましくは対象グリップAの把持部の断面直径と同程度の曲率お凹曲面を形成して距離xで対面する内壁と接続し、
第1の段差は対象グリップBのための嵌合スペースの底部12bBを構成し、好ましくは対象グリップBの把持部の断面直径と同程度の曲率の凹曲面を構成し、
第1の段差は対象グリップCのための嵌合スペースの底部12bCを構成し、好ましくは対象グリップBの把持部の断面直径と同程度の曲率の凹曲面を構成し、
<x<r<x<r<x
である。
【0071】
第1の段差と第2の段差は、図9ではテーバー状の段差であるが、テーバーを有しない階段状の段差でもよい。
【0072】
対象グリップ6は、上記構造の下で、
対象グリップAの把持部は嵌合スペース12の底部12bAに接して嵌合し、他の底部12bB及び12bCには嵌合せず、
対象グリップBの把持部は嵌合スペース12の底部12bBに接して嵌合し、他の底部12Ab及び12Cbには嵌合せず、
対象グリップCの把持部は嵌合スペース12の底部12bCにして嵌合し、他の底部12bA及び12bBには嵌合しない。
【0073】
同様にして、把持部の断面系形状が対象グリップA〜Cと異なる対象グリップDに対して、対象グリップDの把持部は接触するが、他の対象グリップA〜Cの把持部は接触し内容は嵌合スペース12の底部を設けておけば、4種類の異なる形状の対象グリップに1個で対応できる携帯用グリップをえることができる。
【0074】
(C−4)非開放型嵌合スペースの場合
図7において、対向側面114fに構成されている1対の嵌合孔H1の下方に、もう1対の嵌合孔H2を設けて、図8に示す、非開放型慣嵌合スペースを備える複合型携帯用グリップ5を構成することができる。
嵌合孔H1の間の空間が非開放型嵌合スペースA(12A)を構成し、嵌合孔H2の間の空間が非開放型嵌合スペースB(12B)を構成し、非開放型嵌合スペースA(12A)及びB(12B)は連通する。
【0075】
嵌合孔H1の形状は、円形のリングである把持部aを嵌合するために、楕円形であるのに対して、嵌合孔H2の形状は、三角のリングである把持部bを嵌合するために、逆三角形である。従って、非開放型嵌合スペースA(12A)は、円形のリングである把持部aを嵌合することができるが、三角形のリングである把持部bを嵌合することができず、非開放型嵌合スペースB(12B)は、三角形のリングである把持部bを嵌合することができるが、円形のリングである把持部aを嵌合することができない。
【0076】
〔携帯用グリップの材質〕
携帯用グリップの材質は、対象グリップの把持部と嵌合を安定に着脱する操作と、嵌合後の携帯用グリップを介して対象グリップを安定に操作する観点から、適度な強度と硬さを備えればよく、布、ゴム、プラスチック、金属、ガラス、セラミックス等から目的に応じて選択すればよいが、適度な強度と硬さを設計でき、軽量で着色等の加工が容易であることからプラスチックであることが好ましい。
【0077】
プラスチックとしては、上述の観点から、
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、非結晶ポリエチレンテレフタレート(A−PET)、ポリ乳酸(PLA)等の熱可塑性樹脂が好ましく、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、がより好ましく、ポリプロピレン(PP)が更に好ましい。PPは屈曲性に優れるので、ヒンジ部分も一体で形成できる。
【0078】
プラスチックとしては、
嵌合スペースの底部等の嵌合スペースの内部表面が対象グリップの把持部と接触したときの摩擦が大きく、滑りにくい、言い換えれば、対象グリップの把持部が、嵌合スペースに安定して嵌合されるという観点から、天然ゴム、熱硬化性エラストマー及び熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のエラストマーが好ましく、
更に嵌合スペースの内部表面の耐久性及び射出成型性の観点から、熱可塑性エラストマーがより好ましく、スチレン系、オレフィン系、塩ビ系、ウレタン系及びアミド系からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性エラストマーが更に好ましい。
【0079】
衛生性を維持する観点から、少なくとも携帯用グリップの嵌合スペース及び/又は外部表面は抗菌加工しておくことが好ましい。抗菌加工は、
抗菌剤をスプレー等で嵌合スペース及び/又は外部表面に塗工する;
嵌合スペース及び/又は外部表面を化学的に改質する;
嵌合スペース及び/又は外部表面を構成する材料に抗菌剤を練り込む;
嵌合スペース及び/又は外部表面を、抗菌剤を含むハードコートで被覆する;等によってなすことができる。
【0080】
抗菌剤は、銀系抗菌剤、有機系抗菌剤、無機系抗菌剤が知られているが、効果と加工性の観点から銀系抗菌剤が好ましい。
【0081】
携帯用グリップを所持しているときのファッション性や快適性の観点から、少なくとも携帯用グリップの外部表面は、着色(好ましくはカラフルに着色)されたり、キャラクター、景色、花、動植物、建造物等の柄を付されたり、各種の写真が印刷されたりしていることが好ましい。
【0082】
携帯用グリップ嵌合スペースは、携帯用グリップが、対象グリップの把持部に滑らずに嵌合する観点から、アンチスリップ加工が施されていることが好ましい。
アンチスリップ加工としては、嵌合スペース及び/又は外部表面を物理的又は化学的処理を施して微細な凹凸を形成させたり、アンチスリップ剤を塗工したり、アンチスリップ塗膜を形成させたりすることが挙げられる。
【0083】
携帯用グリップは、携帯用グリップを使用する一時を快適に過ごす観点から、外部表面又は嵌合スペース以外に、小型ディスプレイ、音楽プレーヤー、ラジオ、ネット、GPS等を備えてよいが、携帯性の観点から、実質的に、外部表面又は嵌合スペースからなることが好ましい。
【符号の説明】
【0084】
1 携帯用グリップ(開放型嵌合スペース)
11 外部表面
111 手のひら接触面
112 屈曲面
112h ホールド部
113 指先接触面
12 嵌合スペース
12b 嵌合スペースの底部
12A 嵌合スペースA
12B 嵌合スペースB
2 携帯用グリップ(複合型携帯用グリップ/開放型嵌合スペース)
24 ホールド部
3 携帯用グリップ(開放型嵌合スペース)
4 携帯用グリップ(非開放型嵌合スペース)
5 携帯用グリップ(複合型携帯用グリップ/非開放型嵌合スペース)
x 開放型嵌合スペースの間隙の距離
111f 対向手のひら接触面
112f 対向屈曲面
114f 対向側面
C 分割部
S1 外装パーツS1
S2 外装パーツS2
6 把持部aが円形のリングである対象グリップ
7 把持部bが三角形のリングである対象グリップ
a 把持部
b 把持部
8 連結用ベルト
9 携帯用グリップ(複合型携帯用グリップ/開放型嵌合スペース)
12bA 対象グリップAの把持部が接触する嵌合スペースの底部
12bB 対象グリップBの把持部が接触する嵌合スペースの底部
12bB 対象グリップCの把持部が接触する嵌合スペースの底部
第1の嵌合スペースの対向する内壁の距離
第2の嵌合スペースの対向する内壁の距離
第3の嵌合スペースの対向する内壁の距離

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10