(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シフト改質用金属触媒が配置された支持体の下流側において、前記支持体を挟んで、前記燃料極と前記シフト改質用金属触媒が対面配置されるように構成されている、請求項1又は2に記載の固体酸化物型燃料電池装置。
前記シフト改質用金属触媒が、支持体の下流側でかつ最下流の燃料極が存在する位置に少なくとも配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体酸化物型燃料電池装置。
前記支持体が、多孔質な非電気導電性材料から構成され、該多孔質内においてシフト改質用金属触媒が露出するように成型されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体酸化物型燃料電池装置。
前記支持体の燃料極側にはシフト改質用金属触媒が露出せず、前記支持体の燃料ガス通路側にのみシフト改質用金属触媒が露出するように配置されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の固体酸化物型燃料電池装置。
前記燃料電池セルユニットの最下流部に、シフト改質反応に伴う熱を放熱する金属部材が設けられ、該部材で排気通路を構成している、請求項1〜8のいずれか1項に記載の固体酸化物型燃料電池装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
固体酸化物型燃料電池セルの開発において、固体電解質の改良が進み、低温活性の固体電解質、例えば、LSGM系固体電解質を採用したものの研究が行われている。
このような低温活性セルの開発成功に伴って、CO性能の悪化という問題が生じている。一酸化炭素は、700℃以下の温度で燃料として燃焼させることは困難であることから、発電燃料にすることができず、単純に排気されていることがこの問題の原因である。
そこで、特開2010−526402号公報に記載されるような燃料電池組立体により、COをシフト改質させて水素を発生させることが考えられる。しかしながら、このような場合、燃料ガス通路上流側から順に水素が使用されるため、下流では水素濃度が薄くなるという問題がある。この結果、燃料電池セルユニットが単一のセルから構成される固体酸化物型燃料電池セルにおいては、下流において燃料枯れを引き起こし、セル劣化の原因となっていた。
また、燃料電池セルユニットが直列に設置した複数のセルから構成される横縞型固体酸化物型燃料電池セルにおいては、燃料電池セルユニットが単一のセルから構成される固体酸化物型燃料電池セルと比べてセルの面積が小さいため、燃料枯れが起こった場合にセルの単位面積当たりにかかる発電の負荷が大きく、燃料枯れによるセルへの影響が大きい。特に燃料ガス通路の延在方向にセルが分割配置された横縞型の燃料電池セルでは、1本の燃料電池セルユニットから取り出される電流が燃料ガス通路の上流から下流にかけて配置された各セルを流れるため、上流で水素が豊富にある状態で発電を行うセルと、上流で発電に使われた分水素が減少した下流のセルとで同じ量の電流を流すよう発電しなければならず、下流のセルに偏って大きな負担がかかり、燃料枯れの影響が顕著に出てしまうという新たな知見を得た。
このような問題に対して、下流に充分な水素を供給できるよう、単純に水素を増量して下流の水素濃度を高めることが考えられるが、そうすると燃料利用効率が悪くなるばかりではなく、水素量が高まったことにより、COを水素に改質して水素濃度を増やすシフト反応が生じ難く、CO性能の悪化に関する問題解決を阻害する結果となる。
従って、本発明は、燃料枯れによるセル劣化を抑制しつつ、CO性能の悪化を改善し、燃料利用効率の向上をも図った固体酸化物型燃料電池装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題に対して、本発明者らは、燃料の無駄を少なくしつつ、かつ燃料枯れによるセル劣化を抑制しつつ、CO性能の悪化を改善できる固体酸化物型燃料電池について検討したところ、燃料ガス通路上流では極力COをシフト改質させず、下流でCOをシフト改質させて水素を発生させ、これを発電用の燃料とすることで、上述の課題を解決できることを見出した。
従って、本発明は、
電気導電性のない支持体表面に少なくともカソード電極、固体電解質及びアノード電極からなるセルを含む燃料電池セルユニットを、少なくとも2つ電気的に接続した燃料電池セルスタックを備えた固体酸化物型燃料電池装置であって、
上記燃料電池セルスタックを内部に収納した燃料電池モジュールと、
燃料と水蒸気を化学反応させる水蒸気改質反応によって水素を生成可能な改質器と、
供給された水蒸気改質用の水を蒸発させる蒸発器と、
上記改質器に燃料を供給することにより上記改質器で改質された燃料を、上記燃料電池セルスタックに送り込む燃料供給手段と、
上記蒸発器に改質用の水を供給する水供給手段と、
上記燃料電池セルスタックに発電用の酸化剤ガスを供給する発電用酸化剤ガス供給手段と、
上記燃料電池セルスタックを発電させるよう制御を行う制御手段と、
を有し、
上記燃料電池セルユニットの支持体には、燃料ガスが通過する燃料ガス通路が構成され、該燃料ガス通路には、水蒸気と一酸化炭素を反応させるシフト改質反応によって水素を生成可能なシフト改質用金属触媒が配置され、該シフト改質用金属触媒は、上記燃料ガス通路の改質器側に近い上流側に比して、下流側に多くなるように配置されていることを特徴とする、固体酸化物型燃料電池装置を提供する。
【0006】
本発明の一態様において、燃料電池セルスタックの発電中の温度は700℃以下で運転される。
運転温度を高くするとCOを燃焼させて発電燃料にできるが、発電温度が高いと熱自立温度が高いため無駄燃料も多くなる。燃料電池セルスタックの発電中の温度が700℃以下で運転することにより、燃料電池セルスタックの発電中の温度を下げて燃料効率を高めることができる。また、燃料電池セルスタックの発電中の温度を下げることでシフト反応の活性化を図ることができ、少ない燃料で有利に発電運転とセル劣化の抑制を図ることができる。
【0007】
本発明の一態様において、シフト改質用金属触媒が配置された支持体の下流側において、該支持体を挟んで、燃料極とシフト改質用金属触媒が対面配置されるように構成されている。
これにより、シフト反応で発生した水素を確実に燃料として発電することが可能になり、また、運転温度を下げると発電熱が発生し難い下流部をシフト反応の発熱で昇温でき、発電効率を安定化できる。
【0008】
本発明の一態様において、シフト改質用金属触媒は、支持体の下流側でかつ最下流の燃料極が存在する位置に少なくとも配置されている。
これにより、燃料枯れリスクの一番高い最下流のセルに対してシフト反応による水素供給を行うことで、セル劣化リスクを大幅に低減できる。
【0009】
本発明の一態様において、シフト改質用金属触媒は、支持体の上流側にはなく、下流側に存在するように配置されている。
これにより、シフト反応を下流において集中させ、上流ではシフト反応を行わないようにし、セル劣化をより低減できる。
【0010】
本発明の一態様において、シフト改質用金属触媒は、支持体の中間域にもなく、下流側にのみ配置されている。
水素濃度の希釈化及び濃度ムラが最も大きいのは最下流部分である。このリスクをなくすために、シフト改質用金属触媒は中間域にもなく、確実に下流に集中させることが望ましい。
【0011】
本発明の一態様において、支持体は、多孔質な非電気導電性材料から構成され、該多孔質内においてシフト改質用金属触媒が露出するように成型されている。
多孔質内に露出するようにシフト改質用金属触媒を配置すると、表面積が増えるだけでなく、多孔質内で発生した水素を確実に燃料極に伝達でき、無駄にCOが排出されるリスクを抑制して、より確実にセル劣化を抑制できる。
【0012】
本発明の一態様において、支持体の燃料極側にはシフト改質用金属触媒が露出せず、前記支持体の燃料ガス通路側にのみシフト改質用金属触媒が露出するように配置されている。多孔質内に触媒を入れると非導電性部材であるべき支持体に導電性パスが触媒を介して形成されるリスクが発生するが、このような態様とすることで前記リスクを防止できる。
【0013】
本発明の一態様において、燃料電池セルユニットの最下流部に、シフト改質反応に伴う熱を放熱する金属部材が設けられ、該部材で排気通路を構成している。
シフト改質は発熱反応であるため、金属部材を介して放熱をすることでシフト反応を促進することができる。またシフト改質で水素を発生させたいが余分な熱が下流部にのみ多く発生してセルに熱ムラが生じるのは好ましくない。通路を構成する部材として金属部材を設け、これを放熱材として利用することが望ましい。
【0014】
本発明の一態様において、シフト改質用金属触媒がNiであり、下流側の支持体の多孔質内にのみNiが露出するよう成型されている。安価なNiを多孔質内に露出するように成型するだけでいいためより安価に製造できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の固体酸化物型燃料電池によれば、燃料ガス通路上流では極力COをシフト改質させず、下流でCOをシフト改質させて水素を発生させて発電用の燃料とすることで、下流のセル部分での燃料枯れを抑制できる。また、本発明の固体酸化物型燃料電池によれば、COの排出量を抑制することが可能になる。更に、本発明の固体酸化物型燃料電池によれば、上流で水素が用いられることで発生したCOも、下流側で水素にシフト改質することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の固体酸化物型燃料電池は、電気導電性のない支持体表面に少なくともカソード電極、固体電解質及びアノード電極からなるセルを含む燃料電池セルユニットを、少なくとも2つ電気的に直列又は並列に接続した燃料電池セルスタックを備える。本発明において、燃料電池セルユニットは、1つ又は複数の、例えば、2〜40個、のセルを含み得るが、その上限はセルの強度等に鑑みて許容される範囲内であれば特に限定されるものではない。燃料電池セルユニットが複数のセルを含む場合は、一般に、横縞型固体酸化物型燃料電池セルと称される。
本発明の固体酸化物型燃料電池において、燃料電池セルユニットの支持体の燃料ガス流路側には、シフト改質用金属触媒が配置されるが、改質器側に近い上流側の支持体に比して、下流側の支持体に多く配置されている。
例えば、上流側と下流側とを区別する際には、それぞれ燃料電池セルユニット全体の長さの半分を占める部分を意味し得る。また、上流側と中間域と下流側とを区別する際には、それぞれ燃料電池セルユニット全体の長さの1/3を占める部分を意味し得るが、これらの部分が上記した通りの長さを占める部分であると厳密に解釈する必要はなく、技術常識の範囲内で柔軟に理解されるべきものである。
勿論、上流側から下流側にかけて徐々に配置されるシフト改質用金属触媒の量が増していくような濃度勾配を有するものであってもよいし、上流側にはシフト改質用金属触媒は配置されず、中間域から下流側にかけて徐々に配置されるシフト改質用金属触媒の量が増していくような濃度勾配を有するものであってもよい。
なお、燃料電池セルスタックは、複数個、例えば、2〜160本の燃料電池セルユニットが電気的に直列又は並列に接続されて構成されるが、燃料電池セルユニットの個数は特に限定されるものではない。
【0018】
シフト改質用金属触媒としては、ニッケル、銅、白金等が挙げられるが、これに限定されるものではない。好適には、ニッケルが用いられる。
シフト反応は、以下の式(1)により示される。
CO+H
2O → CO
2+H
2 (1)
このシフト反応により一酸化炭素及び水蒸気から二酸化炭素及び水素が生成される。よって、本実施形態において、燃料枯れによるセル劣化を抑制しつつ、CO性能の悪化を改善し、燃料利用効率の向上を図ることが可能となる。
ここで、シフト反応は、約450℃〜約700℃の温度帯域で発生することが知られている。従って、燃料電池セルスタックの発電中の温度が700℃以下で運転される態様において、シフト反応の活性化をより図ることができ、少ない燃料で有利に発電運転とセル劣化の抑制を図ることができる。
【0019】
支持体の燃料ガス流路側に、シフト改質用金属触媒としてニッケルが配置される場合には、燃料ガス流路内にて水蒸気改質反応が起こり得る。
この水蒸気改質反応は、例えば、以下の式(2)により示される。
CH
4+H
2O → CO+3H
2 (2)
ここで発生するCOは、上述の通り、シフト反応に利用され、H
2へと変換される。また、水蒸気改質反応は吸熱反応であり、シフト反応により発生する熱に対する徐熱効果も期待できる。更に、H
2O消費による拡散抵抗減少も期待できる。
ここで、
図12を参照して、本発明の一実施形態による燃料電池装置の燃料電池セルユニット内における支持体の構成、及びその内側に形成される燃料ガス通路での反応について説明する。
図12に示すように、燃料電池セルユニット内における燃料ガス通路は、支持体の内側に形成されている。
図12に記載の本発明の一実施形態においては、上流側に、シフト改質用金属触媒を配置していない支持体202を有し、下流側に、シフト改質用金属触媒を配置した支持体201を有する。従って、支持体の上流側ではCOをシフト改質させず、支持体の下流側でのみCOをシフト改質させることができる。上述した通り、支持体の燃料ガス流路側に、シフト改質用金属触媒としてニッケルが配置される場合には、燃料ガス流路内にて水蒸気改質反応が起こり得る。
【0020】
次に、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)を示す全体構成図である。この
図1に示すように、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)1は、燃料電池モジュール2と、補機ユニット4を備えている。
【0021】
燃料電池モジュール2は、ハウジング6を備え、このハウジング6内部には、外側断熱材である断熱材7によって囲まれた密封空間を構成するケース8が収納されている。このケース8内部の下方部分である発電室10には、燃料と酸化剤(空気)とにより発電反応を行う燃料電池セル集合体12が配置されている。
本発明の第一実施形態において、この燃料電池セル集合体12は、10個の燃料電池セルスタック14(
図5参照)を備え、この燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16(
図4参照)から構成されている。このように、燃料電池セル集合体12は、160本の燃料電池セルユニット16を有し、これらの燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されている。本実施形態において、燃料電池セルユニット16は、1本のユニットに1つのセルを含むよう構成されている。
【0022】
燃料電池モジュール2のケース8内部の上述した発電室10の上方には、燃焼室18が形成され、この燃焼室18で、発電反応に使用されなかった残余の燃料と残余の酸化剤(空気)とが燃焼し、排気ガスを生成するようになっている。
また、この燃焼室18の上方には、燃料を改質する改質器20が配置され、前記残余ガスの燃焼熱によって改質器20を改質反応が可能な温度となるように加熱している。さらに、この改質器20の上方には、改質器20の熱を受けて空気を加熱し、改質器20の温度低下を抑制するための空気用熱交換器22が配置されている。
【0023】
次に、補機ユニット4は、水道等の水供給源24からの水を貯水してフィルターにより純水とする純水タンク26と、この貯水タンクから供給される水の流量を調整する水流量調整ユニット28(モータで駆動される「水ポンプ」等)を備えている。また、補機ユニット4は、都市ガス等の燃料供給源30から供給された燃料を遮断するガス遮断弁32と、燃料ガスから硫黄を除去するための脱硫器36と、燃料ガスの流量を調整する燃料流量調整ユニット38(モータで駆動される「燃料ポンプ」等)を備えている。さらに、補機ユニット4は、空気供給源40から供給される酸化剤である空気を遮断する電磁弁42と、空気の流量を調整する改質用空気流量調整ユニット44及び発電用空気流量調整ユニット45(モータで駆動される「空気ブロア」等)と、改質器20に供給される改質用空気を加熱する第1ヒータ46と、発電室に供給される発電用空気を加熱する第2ヒータ48とを備えている。これらの第1ヒータ46と第2ヒータ48は、起動時の昇温を効率よく行うために設けられているが、省略しても良い。
【0024】
次に、燃料電池モジュール2には、排気ガスが供給される温水製造装置50が接続されている。この温水製造装置50には、水供給源24から水道水が供給され、この水道水が排気ガスの熱により温水となり、図示しない外部の給湯器の貯湯タンクへ供給されるようになっている。
また、燃料電池モジュール2には、燃料ガスの供給量等を制御するための制御ボックス52が取り付けられている。
さらに、燃料電池モジュール2には、燃料電池モジュールにより発電された電力を外部に供給するための電力取出部(電力変換部)であるインバータ54が接続されている。
【0025】
次に、
図2及び
図3により、本発明の実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールの内部構造を説明する。
図2は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池モジュールを示す側面断面図であり、
図3は、
図2のIII-III線に沿った断面図である。
図2及び
図3に示すように、燃料電池モジュール2のハウジング6内の密閉されたケース8には、上述したように、下方から順に、燃料電池セル集合体12、改質器20、空気用熱交換器22が配置されている。
【0026】
改質器20は、その上流端側に純水を導入するための純水導入管60と改質される燃料ガスと改質用空気を導入するための被改質ガス導入管62が取り付けられ、また、改質器20の内部には、上流側から順に、蒸発部20aと改質部20bを形成され、これらの蒸発部20aと改質部20bには改質触媒が充填されている。この改質器20に導入された水蒸気(純水)が混合された燃料ガス及び空気は、改質器20内に充填された改質触媒により改質される。改質触媒としては、アルミナの球体表面にニッケルを付与したものや、アルミナの球体表面にルテニウムを付与したものが適宜用いられる。
【0027】
この改質器20の下流端側には、燃料ガス供給管64が接続され、この燃料ガス供給管64は、下方に延び、さらに、燃料電池セル集合体12の下方に形成されたマニホールド66内で水平に延びている。燃料ガス供給管64の水平部64aの下方面には、複数の燃料供給孔64bが形成されており、この燃料供給孔64bから、改質された燃料ガスがマニホールド66内に供給される。
【0028】
このマニホールド66の上方には、上述した燃料電池セルスタック14を支持するための貫通孔を備えた下支持板68が取り付けられており、マニホールド66内の燃料ガスが、燃料電池セルユニット16内に供給される。
【0029】
次に、改質器20の上方には、空気用熱交換器22が設けられている。
また、
図2に示すように、燃料ガスと空気との燃焼を開始するための点火装置83が、燃焼室18に設けられている。
【0030】
次に
図4により燃料電池セルユニット16について説明する。
図4(a)は、本発明の第一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルユニットを示す部分断面図である。
図4(b)は、燃料電池セルユニットの横断面図である。
図4(a)に示すように、燃料電池セルユニット16は、燃料電池セル84と、この燃料電池セル84の上下方向端部にそれぞれ接続された内側電極端子86とを備えている。
燃料電池セル84は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部に内部通路である燃料ガス流路88を形成する円筒形の支持体89と、円筒形の内側電極層90と、円筒形の外側電極層92と、内側電極層90と外側電極層92との間にある電解質層94とを備えている。この内側電極層90は、燃料ガスが通過する燃料極であり、(−)極(アノード)となり、一方、外側電極層92は、空気と接触する空気極であり、(+)極(カソード)となっている。上述の通り、支持体89の燃料ガス流路側には、シフト改質用金属触媒が配置される。本実施形態において、支持体89は、シフト改質用金属触媒が配置されていない上流側の支持体89c、シフト改質用金属触媒が少量配置されている中間域の支持体89b、及びシフト改質用金属触媒が中間域よりも多く配置されている下流側の支持体89aから構成される。
【0031】
燃料電池セルユニット16の上端側と下端側に取り付けられた内側電極端子86は、同一構造であるため、ここでは、上端側に取り付けられた内側電極端子86について具体的に説明する。内側電極層90の上部90aは、電解質層94と外側電極層92に対して露出された外周面90bと上端面90cとを備えている。内側電極端子86は、導電性のシール材96を介して内側電極層90の外周面90bと接続され、さらに、内側電極層90の上端面90cとは直接接触することにより、内側電極層90と電気的に接続されている。内側電極端子86の中心部には、支持体89内側の燃料ガス流路88と連通する燃料ガス流路98が形成されている。
また、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)においては、燃料電池セルスタック14内の燃料電池セルユニット最下流部に、シフト改質反応に伴う熱を放熱する金属部材が設けられ排気通路を構成してもよい。
【0032】
内側電極層90は、例えば、NiOと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、NiOと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、NiOと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレードとの混合体、の少なくとも一種から形成することができるが、これに限定されるものではない。内側電極層90は、単層であっても、又は複層であっても良い。内側電極が複層の燃料極である場合の例としては、例えば支持体側にNi/YSZ(イットリア安定化ジルコニア)を用い、電解質側にNi/GDC(Gd
2O
3−CeO
2)(=燃料極触媒層)を用い得る。
【0033】
電解質層94は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成することができるが、これに限定されるものではない。好適には、一般式La
1-aSr
aGa
1-b-cMg
bCo
cO
3(但し、0.05≦a≦0.3、0<b<0.3、0≦c≦0.15)で表されるランタンガレート系酸化物(LSGM)である。ここで、燃料極側には、反応抑制層として、Laを固溶させたセリア(Ce
1-xLa
xO
2(但し、0.3<x<0.5))を設けてもよい。反応抑制層は、好適にはCe
0.6La
0.4O
2である。固体電解質は、単層であっても、又は複層であっても良い。固体電解質が複層である場合の例としては、例えば燃料極とLSGMからなる電解質層の間にCe
0.6La
0.4O
2などの反応抑制層を用い得る。
【0034】
外側電極層92は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成することができるが、これに限定されるものではない。外側電極層92は、単層であっても、又は複層であっても良い。外側電極が複層の空気極である場合の例としては、例えば電解質側にL
0.6Sr
0.4Co
0.2Fe
0.8O
3(=空気極触媒層)を用い、最表層にL
0.6Sr
0.4Co
0.8Fe
0.2O
3(=空気極)を用い得る。
【0035】
支持体89は、非導電性材料から構成され、例えば、アルミナ、ジルコニア、スピネル、フォルステライト、マグネシア、チタニア等やこれらの複合材から形成することができるが、これに限定されるものではない。また、支持体89は、多孔質材料から形成され得、該多孔質内においてシフト改質用金属触媒が露出するように配置され得る。好適には、支持体としてフォルステライトが用いられる。
【0036】
次に、
図4(b)を参照して、燃料電池セル84の構造を詳細に説明する。
図4(b)に示すように、本発明の第一実施形態において、内側電極層90は、第1燃料極90dと第2燃料極90eから構成されている。また、電解質層94は、第1電解質94aと第2電解質94bから構成され、外側電極層92は、空気極92aと集電層92bから構成されている。
【0037】
本実施形態においては、第1燃料極90dは、NiOと、YをドープしたジルコニアであるYSZとの混合物を円筒状に焼成することにより形成されている。第2燃料極90eは、NiOと、GdをドープしたセリアであるGDCとの混合物を、第1燃料極90dの外側に成膜することにより形成されている。
【0038】
また、本実施形態においては、第1電解質94aは、ランタンをドープしたセリアであるLDC40を第2燃料極90eの外側に積層することにより形成されている。さらに、第2電解質94bは、Sr及びMgをドープしたランタンガレートであるLSGMを第1電解質94aの外側に積層することにより形成されている。このように形成された成形体を焼成することにより焼成体を構成した。
【0039】
また、本実施形態においては、空気極92aは、この焼成体の外側に、Sr及びFeをドープしたランタンコバルタイトであるLSCFを成膜することにより形成されている。集電層92bは、空気極92aの外側に、Ag層を形成することにより構成されている。
【0040】
また、本実施形態においては、支持体89は、フォルステライトで構成されている。
なお、本実施形態においては、
図4に示される通り、支持体89の燃料ガス流路側に、ニッケルからなるシフト改質用金属触媒が配置されるが、改質器側に近い上流側の支持体には配置されず、中間域の支持体にNiが少量配置され、下流側の支持体に中間域よりも多く配置されている。
これにより、燃料ガス通路上流では極力シフト反応を起こさず、下流でシフト反応をさせて水素を発生させ、発電用の燃料としている。
ここで、シフト反応は、約450℃〜約700℃の温度帯域で発生することが知られている。本実施形態においては、燃料電池セルスタックの発電中の温度は700℃以下で運転される。これにより、シフト反応の活性化をより図ることができ、少ない燃料で有利に発電運転とセル劣化の抑制を図ることができる。
【0041】
次に
図5により燃料電池セルスタック14について説明する。
図5は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)の燃料電池セルスタックを示す斜視図である。
図5に示すように、燃料電池セルスタック14は、16本の燃料電池セルユニット16を備え、これらの燃料電池セルユニット16の下端側及び上端側が、それぞれ、セラミック製の下支持板68及び上支持板100により支持されている。これらの下支持板68及び上支持板100には、内側電極端子86が貫通可能な貫通穴68a及び100aがそれぞれ形成されている。
【0042】
さらに、燃料電池セルユニット16には、集電体102及び外部端子104が取り付けられている。この集電体102は、燃料極である内側電極層90に取り付けられた内側電極端子86と電気的に接続される燃料極用接続部102aと、空気極である外側電極層92の外周面全体と電気的に接続される空気極用接続部102bとにより一体的に形成されている。空気極用接続部102bは、外側電極層92の表面を上下方向に延びる鉛直部102cと、この鉛直部102cから外側電極層92の表面に沿って水平方向に延びる多数の水平部102dとから形成されている。また、燃料極用接続部102aは、空気極用接続部102bの鉛直部102cから燃料電池セルユニット16の上下方向に位置する内側電極端子86に向って斜め上方又は斜め下方に向って直線的に延びている。
【0043】
さらに、燃料電池セルスタック14の端(
図5では左端の奥側及び手前側)に位置する2個の燃料電池セルユニット16の上側端及び下側端の内側電極端子86には、それぞれ外部端子104が接続されている。これらの外部端子104は、隣接する燃料電池セルスタック14の端にある燃料電池セルユニット16の外部端子104(図示せず)に接続され、上述したように、160本の燃料電池セルユニット16の全てが直列接続されるようになっている。
【0044】
次に
図6により本実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)に取り付けられたセンサ類等について説明する。
図6は、本発明の一実施形態による固体酸化物型燃料電池(SOFC)を示すブロック図である。
図6に示すように、固体酸化物型燃料電池1は、制御部110を備え、この制御部110には、使用者が操作するための「ON」や「OFF」等の操作ボタンを備えた操作装置112、発電出力値(ワット数)等の種々のデータを表示するための表示装置114、及び、異常状態のとき等に警報(ワーニング)を発する報知装置116が接続されている。なお、この報知装置116は、遠隔地にある管理センタに接続され、この管理センタに異常状態を通知するようなものであっても良い。
【0045】
次に、制御部110には、以下に説明する種々のセンサからの信号が入力されるようになっている。
先ず、可燃ガス検出センサ120は、ガス漏れを検知するためのもので、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4に取り付けられている。
CO検出センサ122は、本来排気ガス通路80等を経て外部に排出される排気ガス中のCOが、燃料電池モジュール2及び補機ユニット4を覆う外部ハウジング(図示せず)へ漏れたかどうかを検知するためのものである。
貯湯状態検出センサ124は、図示しない給湯器におけるお湯の温度や水量を検知するためのものである。
【0046】
電力状態検出センサ126は、インバータ54及び分電盤(図示せず)の電流及び電圧等を検知するためのものである。
発電用空気流量検出センサ128は、発電室10に供給される発電用空気の流量を検出するためのものである。
改質用空気流量センサ130は、改質器20に供給される改質用空気の流量を検出するためのものである。
燃料流量センサ132は、改質器20に供給される燃料ガスの流量を検出するためのものである。
【0047】
水流量センサ134は、改質器20に供給される純水の流量を検出するためのものである。
水位センサ136は、純水タンク26の水位を検出するためのものである。
圧力センサ138は、改質器20の外部の上流側の圧力を検出するためのものである。
排気温度センサ140は、温水製造装置50に流入する排気ガスの温度を検出するためのものである。
【0048】
発電室温度センサ142は、
図3に示すように、燃料電池セル集合体12の近傍の前面側と背面側に設けられ、燃料電池セルスタック14の近傍の温度を検出して、燃料電池セルスタック14(即ち燃料電池セル84自体)の温度を推定するためのものである。
燃焼室温度センサ144は、燃焼室18の温度を検出するためのものである。
排気ガス室温度センサ146は、排気ガス室78の排気ガスの温度を検出するためのものである。
改質器温度センサ148は、改質器20の温度を検出するためのものであり、改質器20の入口温度と出口温度から改質器20の温度を算出する。
外気温度センサ150は、固体酸化物型燃料電池(SOFC)が屋外に配置された場合、外気の温度を検出するためのものである。また、外気の湿度等を測定するセンサを設けるようにしても良い。
【0049】
これらのセンサ類からの信号は、制御部110に送られ、制御部110は、これらの信号によるデータに基づき、水流量調整ユニット28、燃料流量調整ユニット38、改質用空気流量調整ユニット44、発電用空気流量調整ユニット45に、制御信号を送り、これらのユニットにおける各流量を制御するようになっている。
【0050】
次に、
図7乃至
図9を参照して、改質器20の詳細な構成を説明する。
図7は改質器20の斜視図であり、
図8は、天板を取り除いて改質器20の内部を示した斜視図である。
図9は、改質器20内部の燃料の流れを示す平面断面図である。
【0051】
図7に示すように、改質器20は、直方体状の金属製の箱であり、内部には燃料を改質するための改質触媒が充填されている。また、改質器20の上流側には水を導入するための純水導入管60、及び燃料及び改質用空気を導入するための被改質ガス導入管62が接続されている。さらに、改質器20の下流側には、内部で改質された燃料を流出させる燃料ガス供給管64が接続されている。また、改質器20には、長手方向に沿って8つの通気口20cが設けられている。これらの通気口20cは、改質器20の下方の燃焼室18(
図2)において燃焼された燃焼ガスが円滑に改質器20の上方に抜けるように、改質器20の底面から上面に貫通するように設けられており、各通気口20cは、改質器20の内部には連通されていない。
【0052】
図8に示すように、改質器20の内部には、その上流側に蒸発室である蒸発部20aが設けられ、この蒸発部20aに隣接して、下流側には改質部20bが設けられている。蒸発部20aの内部には、複数の仕切り板が配置されることにより、曲がりくねった通路が形成されている。改質器20に導入された水は、温度が上昇した状態では蒸発部20a内で蒸発され、水蒸気となる。また、改質器20に導入された燃料ガス、改質用空気は、蒸発部20aの曲がりくねった通路を通りながら水蒸気と混合される。
【0053】
一方、改質部20bの内部にも、複数の仕切り板が配置されることにより曲がりくねった通路が形成され、この通路に触媒が充填されている。蒸発部20aにおいて混合された燃料ガス及び改質用空気は、改質部20bの通路を通りながら、部分酸化改質反応される。また、蒸発部20aから燃料ガス、水蒸気及び改質用空気の混合物が導入されると、改質部20bでは、部分酸化改質反応及び水蒸気改質反応が発生する。さらに、蒸発部20aから燃料ガス、及び水蒸気の混合物が導入されると、改質部20bでは、水蒸気改質反応のみが発生する。
なお、本実施形態においては、蒸発部と改質部が一体に構成され、1つの改質器を形成しているが、変形例として、改質部のみを備えた改質器を設け、この上流側に隣接して蒸発室を設けることもできる。
【0054】
図9に示すように、改質器20の蒸発部20aに導入された燃料ガス、水及び改質用空気は、最初に改質器20の横断方向に蛇行して流れ、次に2つの通路に分岐されて、改質器20の長手方向に蛇行される。さらに、通路は再び合流され、改質器20の中央部分で改質部20bに接続される。改質部20bに導入された燃料等は、改質部20bの中央を長手方向に流れた後、2つに分岐して折返し、2つの通路は再び折り返して改質部20bの下流端に向かい、そこで合流されて燃料ガス供給管64に流入する。燃料は、このように蛇行した通路を通過しながら、通路に充填された触媒により改質される。
【0055】
次に、
図10及び
図11を新たに参照すると共に、
図2及び
図3を再び参照して、発電酸化剤ガス用熱交換器である空気用熱交換器22の構造を詳細に説明する。
図10は、ハウジング6内に収納された金属製のケース8及び空気用熱交換器22を示す斜視図である。
図11は、熱交換器用断熱材と、蒸発部の位置関係を示す断面図である。
【0056】
図10に示すように、空気用熱交換器22は、燃料電池モジュール2内のケース8の上方に配置された熱交換器である。また、
図2及び
図3に示すように、ケース8の内部には燃焼室18が形成され、複数の燃料電池セルユニット16、改質器20等が収納されているので、空気用熱交換器22は、これらの上方に位置する。空気用熱交換器22は、燃焼室18内で燃焼され、排気として排出される燃焼ガスの熱を回収、利用して、燃料電池モジュール2内に導入された発電用の空気を予熱するように構成されている。また、
図10に示すように、ケース8の上面と空気用熱交換器22の底面との間には、蒸発室昇温用断熱層である蒸発室用断熱材23が、これらの間に挟まれるように配置されている。さらに、
図10に示されている空気用熱交換器22及びケース8の外側を、外側断熱材である断熱材7が覆っている(
図2)。
【0057】
図2及び
図3に示すように、空気用熱交換器22は、複数の燃焼ガス配管70と発電用空気流路72と、を有する。また、
図2に示すように、複数の燃焼ガス配管70の一方の端部には、排気ガス集約室78が設けられており、この排気ガス集約室78は、各燃焼ガス配管70に連通されている。また、排気ガス集約室78には、排気ガス排出管82が接続されている。さらに、各燃焼ガス配管70の他方の端部は開放されており、この開放された端部は、ケース8の上面に形成された連通開口8aを介して、ケース8内の燃焼室18に連通されている。
【0058】
燃焼ガス配管70は、水平方向に向けられた複数の金属製の円管であり、各円管は夫々平行に配置されている。一方、発電用空気流路72は、各燃焼ガス配管70の外側の空間によって構成されている。また、発電用空気流路72の一方の端部上方には、発電用空気導入管74が接続されており、燃料電池モジュール2の外部の空気は、発電用空気導入管74を通って発電用空気流路72に導入される。さらに、発電用空気流路72の他方の端部の両側面には、一対の連絡流路76(
図3、
図10)が接続されており、発電用空気流路72と各連絡流路76は、夫々、出口ポート76aを介して連通されている。
【0059】
図3に示すように、ケース8の両側面には、発電用空気供給路77が夫々設けられている。空気用熱交換器22の両側面に設けられた各連絡流路76は、ケース8の両側面に設けられた発電用空気供給路77の上部に夫々連通されている。また、各発電用空気供給路77の下部には、多数の吹出口77aが水平方向に並べて設けられている。各発電用空気供給路77を通って供給された発電用の空気は、多数の吹出口77aから、燃料電池モジュール2内の燃料電池セルスタック14の下部側面に向けて噴射される。
【0060】
また、ケース8内部の天井面には、隔壁である整流板21が取り付けられており、この整流板21には開口部21aが設けられている。
整流板21は、ケース8の天井面と改質器20の間に、水平に配置された板材である。この整流板21は、燃焼室18から上方に流れる気体の流れを整え、空気用熱交換器22の入り口(連通開口8a)に導くように構成されている。燃焼室18から上方へ向かう発電用空気及び燃焼ガスは、整流板21の中央に設けられた開口部21aを通って整流板21の上側に流入し、整流板21の上面とケース8の天井面の間の排気通路21bを
図2における左方向に流れ、空気用熱交換器22の入り口に導かれる。また、
図11に示すように、開口部21aは、改質器20の改質部20bの上方に設けられており、開口部21aを通って上昇した気体は、蒸発部20aとは反対側の、
図2、
図11における左側の排気通路21bに流れる。このため、蒸発部20aの上方の空間(
図2、
図11における右側)は、改質部20bの上方の空間よりも排気の流れが遅い気体滞留空間21cとして作用する。
【0061】
蒸発室用断熱材23は、空気用熱交換器22の底面に、概ねその全体を覆うように取り付けられた断熱材である。従って、蒸発室用断熱材23は、蒸発部20a全体の上方に亘って配置されている。この蒸発室用断熱材23は、整流板21の上面とケース8の天井面の間に形成された排気通路21b及び気体滞留空間21c内の高温の気体が、空気用熱交換器22の底面を直接加熱するのを抑制するように配置されている。このため、蒸発部20aの上方の排気通路に滞留している排気から、空気用熱交換器22の底面に直接伝わる熱が少なくなり、蒸発部20a周囲の温度は上昇しやすくなる。
【0062】
なお、蒸発室用断熱材23は、外気への熱の散逸を抑制するために、燃料電池モジュール2のケース8及び空気用熱交換器22全体を覆っている外側断熱材である断熱材7とは別に、断熱材7の内部に配置された断熱材である。また、断熱材7は、蒸発室用断熱材23よりも断熱性が高く構成されている。即ち、断熱材7の内面と外面の間の熱抵抗は、蒸発室用断熱材23の上面と下面の間の熱抵抗よりも大きくなっている。即ち、断熱材7と蒸発室用断熱材23を同一の材料で構成する場合には、断熱材7を蒸発室用断熱材23よりも厚く構成する。
【0063】
次に、固体酸化物型燃料電池1の発電運転時における燃料、発電用空気、及び排気ガスの流れを説明する。
まず、燃料は被改質ガス導入管62を介して改質器20の蒸発部20aに導入されると共に、純水が純水導入管60を介して蒸発部20aに導入される。発電運転中においては、蒸発部20aは高温に加熱されているため、蒸発部20aに導入された純水は、比較的速やかに蒸発され水蒸気となる。蒸発された水蒸気及び燃料は、蒸発部20a内で混合され、改質器20の改質部20bに流入する。水蒸気と共に改質部20bに導入された燃料は、ここで水蒸気改質され、水素を豊富に含む燃料ガスに改質される。改質部20bにおいて改質された燃料は、燃料ガス供給管64を通って下方に下り、分散室であるマニホールド66に流入する。
【0064】
マニホールド66は、燃料電池セルスタック14の下側に配置された比較的体積の大きい直方体状の空間であり、その上面に設けられた多数の穴が燃料電池セルスタック14を構成する各燃料電池セルユニット16の内側に連通している。マニホールド66に導入された燃料は、その上面に設けられた多数の穴を通って、燃料電池セルユニット16の燃料極側、即ち、燃料電池セルユニット16の内部を通って、その上端から流出する。また、燃料である水素ガスが燃料電池セルユニット16の内部を通過する際、空気極(酸化剤ガス極)である燃料電池セルユニット16の外側を通る空気中の酸素と反応して電荷が生成される。この発電に使用されずに残った残余燃料は、各燃料電池セルユニット16の上端から流出し、燃料電池セルスタック14の上方に設けられた燃焼室18内で燃焼される。
【0065】
一方、酸化剤ガスである発電用の空気は、発電用酸化剤ガス供給手段である発電用空気流量調整ユニット45によって、発電用空気導入管74を介して燃料電池モジュール2内に送り込まれる。燃料電池モジュール2内に送り込まれた空気は、発電用空気導入管74を介して空気用熱交換器22の発電用空気流路72に導入され、予熱される。予熱された空気は、各出口ポート76a(
図3)を介して各連絡流路76に流出する。各連絡流路76に流入した発電用の空気は、燃料電池モジュール2の両側面に設けられた発電用空気供給路77を通って下方に流れ、多数の吹出口77aから、燃料電池セルスタック14に向けて発電室10内に噴射される。
【0066】
発電室10内に噴射された空気は、燃料電池セルスタック14の空気極側(酸化剤ガス極側)である各燃料電池セルユニット16の外側面に接触し、空気中の酸素の一部が発電に利用される。また、吹出口77aを介して発電室10の下部に噴射された空気は、発電に利用されながら発電室10内を上昇する。発電室10内を上昇した空気は、各燃料電池セルユニット16の上端から流出する燃料を燃焼させる。この燃焼による燃焼熱は、燃料電池セルスタック14の上方に配置された改質器20の蒸発部20a及び改質部20bを加熱する。燃料が燃焼され、生成された燃焼ガスは、上方の改質器20を加熱した後、改質器20上方の開口部21aを通って整流板21の上側に流入する。整流板21の上側に流入した燃焼ガスは、整流板21によって構成された排気通路21bを通って空気用熱交換器22の入り口である連通開口8aに導かれる。連通開口8aから空気用熱交換器22に流入した燃焼ガスは、開放された各燃焼ガス配管70の端部に流入し、各燃焼ガス配管70外側の発電用空気流路72を流れる発電用空気との間で熱交換を行い、排気ガス集約室78に集約される。排気ガス集約室78に集約された排気ガスは、排気ガス排出管82を介して燃料電池モジュール2の外部に排出される。これにより、蒸発部20aにおける水の蒸発、及び改質部20bにおける吸熱反応である水蒸気改質反応が促進されると共に、空気用熱交換器22内の発電用空気が予熱される。
【0067】
次に、
図13を参照して、本発明の第二実施形態を説明する。本実施形態において、燃料電池セルユニットは、1本のユニットに、直列に接続された10個のセルを含むよう構成されている。このように、本明細書において、横縞型固体酸化物型燃料電池セルの場合には、1つ1つの横縞に相当する単位をセルと称する。各セル間は、隣り合うセルを直列に接続するためのインターコネクター208により接続されている。
本実施形態においては、第一実施形態と同様配列された隣り合う燃料電池セルユニット同士を電気的に直列又は並列に接続し、全体として同程度の出力が取り出せるように構成されている。1本の燃料電池セルユニットからはセル10個分の直列電圧が取れるため、第一実施形態に用いられる燃料電池セルユニットの総数よりも少ない数の燃料電池セルユニットで同じ電力を取り出すことが可能となっている。
本実施形態においては、
図13に示される通り、内部に内部通路である燃料ガス流路88を形成する円筒形の支持体と、燃料極層203と、反応抑制層204と、電解質層205と、空気極触媒層206と、空気極層207と、隣り合うセルを直列に接続するためのインターコネクター208とを備えている。本実施形態における支持体は、上流側のシフト改質用金属触媒を配置していない支持体202及び下流側のシフト改質用金属触媒を配置した支持体201から構成されている。これにより、燃料ガス通路上流では極力シフト反応を起こさず、下流でシフト反応をさせて水素を発生させ、発電用の燃料としている。特に本実施形態のような横縞型の燃料電池セルにおいては、燃料ガス流路88の延在方向にセルが分割配置されており、1本の燃料電池セルユニットから取り出される電流が燃料ガス流路88の上流から下流にかけて配置された各セルを流れるため、上流側で水素が豊富にある状態で発電を行うセルと、発電に使われた分水素が減少した下流側のセルとで同じ電流を流すよう発電をしなければならず、水素の量が少ない環境で同じ発電をしたセルに偏って大きな負担がかかってしまう。本実施形態では、下流で水素を発生させて補填することによって、燃料枯れによる下流に配置されたセルへの影響を抑えることができる。
また、本実施形態においては、シフト改質用金属触媒はニッケルであり、ニッケルは、支持体の下流側でかつ最下流の燃料極が存在する位置に、該支持体を挟んで、燃料極とシフト改質用金属触媒が対面配置されるように構成されている。
【0068】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明の目的を達成し得る範囲内で上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。