特許第6183787号(P6183787)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6183787火格子式廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183787
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】火格子式廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/00 20060101AFI20170814BHJP
   F23G 5/44 20060101ALI20170814BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   F23G5/00 109
   F23G5/44 FZAB
   F23G5/50 C
   F23G5/50 H
   F23G5/50 K
   F23G5/50 M
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-64865(P2014-64865)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-187518(P2015-187518A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2016年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084180
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛
(72)【発明者】
【氏名】傳田 知広
(72)【発明者】
【氏名】植竹 規人
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 江梨
(72)【発明者】
【氏名】北川 尚男
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−213652(JP,A)
【文献】 特開2013−164225(JP,A)
【文献】 特開平05−248618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/00
F23G 5/44
F23G 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火格子式廃棄物焼却炉であって、
火格子を備え該火格子上の廃棄物を燃焼する燃焼室と、
燃焼用一次空気を上記火格子の下から上記燃焼室内に吹き込む一次空気吹込み手段と、
高温ガスを上記燃焼室の天井から下向きに吹き込む高温ガス吹込み手段とを有する火格子式廃棄物焼却炉において、
高温ガス吹込み手段は、火格子上の廃棄物の移動方向である炉長方向の複数位置で燃焼室の天井に設けられた高温ガス吹込口と、高温ガス吹込口へ高温ガスを供給する高温ガス供給手段と、燃焼室内の廃棄物が熱分解そして部分酸化され可燃性ガスが発生し可燃性ガスと廃棄物の固形分が燃焼する主燃焼領域の温度を計測する燃焼室内温度計測手段と、燃焼室内温度計測手段により計測する計測値に基づき燃焼室内の主燃焼領域の温度を所定範囲とするように高温ガスにより供給する酸素量を制御する高温ガス吹込制御手段とを備え、
高温ガス供給手段は、炉長方向の複数位置に設けられたそれぞれの高温ガス吹込口から吹き込む高温ガス流量が異なるようにしており、
高温ガス吹込制御手段は、主燃焼領域の温度計測値が所定範囲より低いとき、燃焼が不活性となっていてCOを含む可燃性ガスの燃焼が十分に行われていないと判定し、高温ガスにより供給される酸素量を増加させ主燃焼領域での燃焼を活性化させて、可燃性ガスの燃焼を十分に行わせ、COの残存により排ガス中のCO濃度が上昇することを抑制し、燃焼室内の主燃焼領域の温度を所定範囲とするように高温ガス供給手段を制御し、主燃焼領域の温度計測値が所定範囲より高いとき、燃焼が過活性となっていて高温場が発生していると判定し、高温ガスにより供給される酸素量を減少させ主燃焼領域での燃焼を緩慢化させて、高温場の発生を抑制しNOx発生量の増加により排ガス中のNOx濃度が上昇することを抑制し、燃焼室内の主燃焼領域の温度を所定範囲とするように高温ガス供給手段を制御することを特徴とする火格子式廃棄物焼却炉。
【請求項2】
高温ガス供給手段が、焼却炉から排出された排ガスの一部が返送された返送排ガスと高温空気との混合ガスを高温ガスとして供給するように設けられており、
高温ガス吹込制御手段は、高温ガスにより供給する酸素量の制御、燃焼室へ供給する高温ガス流量、混合する高温空気量、混合する返送排ガス量のうち少なくとも一つを制御することにより行い
該高温ガス吹込制御手段は、高温ガスにより供給する酸素量を増加させるときには、高温ガス供給手段で返送排ガスと高温空気を混合して高温ガスを調製する際に、返送排ガス量を減少させることと高温空気量を増加することのうち少なくとも一つを行い両者の量比を変えて高温ガスの酸素濃度を増加させることと、高温ガスの供給量を増大させることのうち少なくとも一つにより、燃焼室内へ高温ガスにより供給する酸素量を増大させ、高温ガスにより供給する酸素量を減少させるときには、高温ガス供給手段で返送排ガスと高温空気を混合して高温ガスを調製する際に、返送排ガス量を増加させることと高温空気量を減少させることのうち少なくとも一つを行い両者の量比を変えて高温ガスの酸素濃度を減少させることと、高温ガスの供給量を減少させることのうち少なくとも一つにより、燃焼室内へ高温ガスにより供給する酸素量を減少させる請求項1に記載の火格子式廃棄物焼却炉。
【請求項3】
火格子を備え該火格子上の廃棄物を燃焼する燃焼室と、燃焼用一次空気を上記火格子の下から上記燃焼室内に吹き込む一次空気吹込み手段と、高温ガスを上記燃焼室の天井から下向きに吹き込む高温ガス吹込み手段とを有する火格子式廃棄物焼却炉による廃棄物焼却方法において、
火格子上の廃棄物の移動方向である炉長方向の複数位置で燃焼室の天井に設けられた高温ガス吹込口から高温ガスを燃焼室へ供給する高温ガス供給工程と
燃焼室内温度計測手段により計測された燃焼室内の廃棄物が熱分解そして部分酸化され可燃性ガスが発生し可燃性ガスと廃棄物の固形分が燃焼する主燃焼領域の温度の計測値に基づき燃焼室内の主燃焼領域の温度を所定範囲とするように高温ガスにより供給する酸素量を制御する高温ガス吹込制御工程とを有し、
高温ガス供給工程は、炉長方向の複数位置に設けられたそれぞれの高温ガス吹込口から吹き込む高温ガス流量が異なるようにしており、
高温ガス吹込制御工程は、主燃焼領域の温度計測値が所定範囲より低いとき、燃焼が不活性となっていてCOを含む可燃性ガスの燃焼が十分に行われていないと判定し、高温ガスにより供給される酸素量を増加させ主燃焼領域での燃焼を活性化させて、可燃性ガスの燃焼を十分に行わせ、COの残存により排ガス中のCO濃度が上昇することを抑制し、燃焼室内の主燃焼領域の温度を所定範囲とし、主燃焼領域の温度計測値が所定範囲より高いとき、燃焼が過活性となっていて高温場が発生していると判定し、高温ガスにより供給される酸素量を減少させ主燃焼領域での燃焼を緩慢化させて、高温場の発生を抑制しNOx発生量の増加により排ガス中のNOx濃度が上昇することを抑制し、燃焼室内の主燃焼領域の温度を所定範囲とすることを特徴とする火格子式廃棄物焼却炉による廃棄物燃焼方法。
【請求項4】
高温ガス供給工程は、焼却炉から排出された排ガスの一部が返送された返送排ガスと高温空気との混合ガスを高温ガスとして燃焼室へ供給し、
高温ガス吹込制御工程は、高温ガスにより供給する酸素量、燃焼室へ供給する高温ガス流量、混合する高温空気量、混合する返送排ガス量のうち少なくとも一つにより制御し、高温ガスにより供給する酸素量を増加させるときには、高温ガス供給工程で返送排ガスと高温空気を混合して高温ガスを調製する際に、返送排ガス量を減少させることと高温空気量を増加することのうち少なくとも一つを行い両者の量比を変えて高温ガスの酸素濃度を増加させることと、高温ガスの供給量を増大させることのうち少なくとも一つにより、燃焼室内へ高温ガスにより供給する酸素量を増大させ、高温ガスにより供給する酸素量を減少させるときには、高温ガス供給工程で返送排ガスと高温空気を混合して高温ガスを調製する際に、返送排ガス量を増加させることと高温空気量を減少させることのうち少なくとも一つを行い両者の量比を変えて高温ガスの酸素濃度を減少させることと、高温ガスの供給量を減少させることのうち少なくとも一つにより、燃焼室内へ高温ガスにより供給する酸素量を減少させることとする請求項3に記載の火格子式廃棄物焼却炉による廃棄物燃焼方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ等の廃棄物を焼却する火格子式廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
都市ごみ等の廃棄物を焼却処理する焼却炉として、火格子式廃棄物焼却炉が広く用いられている。その代表的なものの構成の概要を以下に説明する。
【0003】
火格子式廃棄物焼却炉は、廃棄物を燃焼する燃焼室の下部に廃棄物の移動方向に配置され三段から成る火格子(乾燥火格子、燃焼火格子そして後燃焼火格子)を有し、後燃焼火格子の上方に位置する燃焼室の出口に二次燃焼室が連設されている。上記燃焼室には乾燥火格子の上方に位置して廃棄物投入口が設けられている。そして後燃焼火格子の廃棄物の移動方向下流側下方には灰落下口が設けられている。通常、上記二次燃焼室は廃熱回収用の廃熱ボイラの一部でもあり、その入口近傍部分である。また、乾燥火格子、燃焼火格子そして後燃焼火格子それぞれの火格子下から燃焼用一次空気を吹き込む燃焼用一次空気吹込み機構が設けられている。
【0004】
このような火格子式廃棄物焼却炉において、廃棄物投入口から燃焼室内に投入された廃棄物は、乾燥火格子上に堆積され、乾燥火格子の下からの空気と炉内の輻射熱により乾燥されると共に、昇温されて着火する。すなわち、上記乾燥火格子の直上方では、廃棄物の移動方向の上流側空間で乾燥領域が形成され、乾燥火格子の直上方の下流側空間から燃焼火格子の直上方の上流側空間にかけて燃焼開始領域が形成される。燃焼開始領域で着火して燃焼を開始した廃棄物は、乾燥火格子から燃焼火格子上に送られ、廃棄物が熱分解されて可燃性ガスが発生し、燃焼火格子の下から送られる燃焼用一次空気により可燃性ガスと固形分が燃焼し、燃焼火格子の直上方空間で主燃焼領域が形成される。そして、更に後燃焼火格子上で、固定炭素など未燃分が完全に燃焼し、該後燃焼火格子の直上方空間で後燃焼領域が形成される。しかる後、燃焼後に残った灰は、灰落下口より外部に排出される。
【0005】
かくして、火格子式廃棄物焼却炉では、廃棄物は燃焼室にて三段の火格子の下から吹き込まれる燃焼用一次空気により燃焼する。さらに、燃焼室からの燃焼ガスに含まれている可燃性ガスの未燃分(未燃ガスという)は、廃熱ボイラの一部である二次燃焼室で二次燃焼用空気を受けて燃焼(二次燃焼という)する。二次燃焼の後に燃焼排ガスは廃熱ボイラで熱回収される。
【0006】
従来の火格子式廃棄物焼却炉では、実際に焼却炉内に供給する空気量を廃棄物の燃焼に必要な理論空気量で除した比(空気比)は、通常、1.6程度である。これは、一般燃料の燃焼に必要な空気比である1.05〜1.2に比べて大きくなっている。その理由は、廃棄物には、一般燃料としての液体燃料や気体燃料に比べて不燃分が多く、かつ不均質なため、空気の利用効率が低く、燃焼を行うには多量の空気が必要となるためである。しかし、単に供給空気を多くすると、空気比が大きくなるにしたがって排ガス量も多くなるので、これに伴ってより大きな排ガス処理設備が必要となる。
【0007】
廃棄物焼却炉において空気比を小さくした状態で、支障なく廃棄物を燃焼することができれば、排ガス量は低減し、排ガス処理設備がコンパクトになり、その結果、廃棄物焼却施設全体が小型化して設備費を低減できる。これに加えて、排ガス処理のための薬剤使用量も低減するので、運転費を低減できる。さらには、排ガス量の低減により廃熱ボイラの熱回収率を向上できるので、熱回収できずに大気に捨てられる熱量を低減させ、これに伴って廃棄物焼却廃熱を利用する発電の効率を上げることができる。
【0008】
このように、低空気比燃焼を行う利点は大きいが、一方で、空気比が1.5以下の低空気比燃焼では燃焼が不安定になるという問題が生じる。すなわち、低空気比で廃棄物を燃焼させると、燃焼が不安定となり、COの発生が増加したり、火炎温度が局所的に上昇してNOxが急増したり、煤が大量に発生したりして排ガス中の有害物が増加するという問題が生じ、また、局所的な高温により廃棄物や灰が溶融して炉壁に付着してクリンカが発生したり、炉壁の耐火物の寿命が短くなるという問題点がある。
【0009】
このような状況のもとで、空気比が1.5以下の低空気比で安定して燃焼することができる廃棄物焼却炉が検討されており、特許文献1に開示されている。この特許文献1では、廃棄物焼却炉の燃焼室の天井から高温ガスを燃焼室内に吹き込むことにより、以下の効果が得られるとしている。
【0010】
即ち、高温ガスの顕熱と輻射により廃棄物の熱分解を促進すること、酸素を含んだ高温ガスの吹込みにより廃棄物の熱分解により発生した可燃性ガスの燃焼を促進すること、さらに高温ガスを燃焼室の天井に設けたノズルから燃焼室内に吹き込み、この高温ガスの流れと、廃棄物から発生した可燃性ガスと燃焼ガスとの上昇流とを衝突させ、廃棄物層直上に流れの遅いよどみ領域を形成することにより、可燃性ガスの流れが緩やかになり、可燃性ガスが酸化剤成分と十分に混合されるため安定した燃焼が行われ、平面状火炎を形成し定在させることなどの効果があり、高温ガスを燃焼室内に吹き込むことにより、低空気比燃焼操業下で廃棄物の燃焼を安定して行わせることができるとしている。
【0011】
このような火格子式廃棄物焼却炉において、炉内は、廃棄物の移動方向で上流側から、乾燥領域、燃焼開始領域、主燃焼領域と後燃焼領域が順に形成される。主燃焼領域において燃焼火格子上の廃棄物は熱分解そして部分酸化が行われ、可燃性ガスが発生し、その可燃性ガスと廃棄物の固形分が燃焼する。可燃性ガスが燃焼する際に火炎を形成して燃焼する。しかる後、後燃焼領域において、残った廃棄物中の固定炭素などの固形分の未燃分が後燃焼火格子上で完全に燃焼される。固形分が燃焼する際には火炎は発生せず熾燃焼する。
【0012】
主燃焼領域とは、廃棄物の熱分解、部分酸化が行われ可燃性ガスが発生し、その可燃性ガスが火炎を伴って燃焼しているとともに廃棄物の固形分が燃焼する燃焼領域である。火炎を伴う燃焼が実質的に完了する点を燃切点と言い、主燃焼領域と後燃焼領域との境界となる。燃切点より後の領域では、廃棄物中の固形分の未燃分が燃焼する熾燃焼領域(後燃焼領域)となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2013−213652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
廃棄物焼却炉による廃棄物の燃焼においては、廃棄物が熱分解されて発生する可燃性ガスの燃焼を安定して行うことが、燃焼によって発生するCO,NOxなどの有害物質の発生量を抑制することに大きく寄与する。そこで、特許文献1に記載の廃棄物焼却炉では、燃焼室天井に設けたノズルから高温ガスを燃焼室内に吹き込むようにして燃焼の安定を図っている。
【0015】
このような特許文献1の廃棄物焼却炉によれば、焼却炉天井から吹込んだ高温ガスが、廃棄物の熱分解または燃焼により発生した熱分解ガス(可燃性ガス)と燃焼ガスとの上昇流と衝突して効果的に対向流場を形成し、淀み領域または上下方向の循環領域が広域にわたって生成されるようになる。これにより、該淀み領域または該循環領域において可燃性ガスの流れが緩やかになり安定した燃焼が行われ、火炎が平面状に定在し極めて安定した燃焼状態が保たれる。
【0016】
また、特許文献1の廃棄物焼却炉は、二次燃焼用空気を二次燃焼室に吹込む二次燃焼用空気吹込み手段を備え、燃焼室から排出されるガスに含まれる可燃性ガスの未燃分(未燃ガス)を二次燃焼している。このように、燃焼室への高温ガスの吹込みにより燃焼を安定化し、さらに、二次燃焼室で未燃ガスを二次燃焼することにより、焼却炉から排出される排ガスの酸素、NOx、COの濃度を適正な範囲に制御し、CO,NOxなどの有害物質の排出を規制値以下とするようにしている。
【0017】
廃棄物焼却炉の実際の操業では標準的な操業基準で操業していても、焼却炉内の燃焼状況が変化し、排出される排ガス中の有害物質量が変動することがある。そこで、特許文献1の廃棄物焼却炉では、予め定めた一次燃焼用空気と高温ガスの供給量は維持したまま、廃棄物焼却炉内の状況を監視する因子に基づいて二次燃焼用空気供給量を増減するように調節することで排ガス中の有害物質量を所定範囲内とするように制御している。このような燃焼制御方法をとることにより、焼却炉内の燃焼状況が変化して有害物質の発生量が増大しても、最終的に廃棄物焼却炉から排出される排ガス中の有害物質量を所定範囲内とするように制御しやすくなり、さらに、焼却炉の燃焼制御系を簡単にすることができるとしている。ここで、廃棄物焼却炉内の状況を監視する因子としては、特許文献1では、例えば、燃焼室から排出される未燃ガスの二次燃焼を行う二次燃焼領域出口近傍又はボイラ出口における排ガス中の酸素濃度、CO濃度、NOx濃度のガス成分濃度とすることが好ましいとしている。
【0018】
しかしながら、特許文献1に記載のような燃焼制御方法では、以下のような問題がある。すなわち、排ガス中のガス成分濃度をガス濃度計により計測するが、ガス濃度計の応答時間を要するため、焼却炉内の燃焼状況が変化した時刻と計測値を得る時刻との間に時間遅れが生じ、実際の焼却炉内の燃焼状況の変動に対して、タイムリーな二次燃焼用空気供給量の増減制御ができないことがある。
【0019】
本発明は、かかる事情に鑑み、炉天井から高温ガスを吹き込む廃棄物焼却炉において、廃棄物の燃焼を安定して行うことができ、CO、NOx等の有害物質の発生量を抑制でき、低空気比燃焼操業を問題なく行うことが可能であり、さらに、実際の焼却炉内の燃焼状況の変動に対して、タイムリーな燃焼制御を実現できる火格子式廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、上述の課題は、火格子式廃棄物燃焼炉そしてその廃棄物焼却方法に関して、次のように構成されることにより解決される。
【0021】
<火格子式廃棄物焼却炉>
火格子式廃棄物焼却炉であって、火格子を備え該火格子上の廃棄物を燃焼する燃焼室と、燃焼用一次空気を上記火格子の下から上記燃焼室内に吹き込む一次空気吹込み手段と、高温ガスを上記燃焼室の天井から下向きに吹き込む高温ガス吹込み手段とを有する火格子式廃棄物焼却炉において、高温ガス吹込み手段は、火格子上の廃棄物の移動方向である炉長方向の複数位置で燃焼室の天井に設けられた高温ガス吹込口と、高温ガス吹込口へ高温ガスを供給する高温ガス供給手段と、燃焼室内の温度を計測する燃焼室内温度計測手段と、 燃焼室内温度計測手段により計測する計測値に基づき燃焼室内の温度を所定範囲とするように高温ガスにより供給する酸素量を制御する高温ガス吹込制御手段とを備えることを特徴とする火格子式廃棄物焼却炉。
【0022】
本発明において、高温ガス供給手段が、焼却炉から排出された排ガスの一部が返送された返送排ガスと高温空気との混合ガスを高温ガスとして供給するように設けられており、
高温ガスにより供給する酸素量の制御が、燃焼室へ供給する高温ガス流量、混合する高温空気量、混合する返送排ガス量のうち少なくとも一つを制御するようにすることができる。
【0023】
<廃棄物焼却方法>
火格子を備え該火格子上の廃棄物を燃焼する燃焼室と、燃焼用一次空気を上記火格子の下から上記燃焼室内に吹き込む一次空気吹込み手段と、高温ガスを上記燃焼室の天井から下向きに吹き込む高温ガス吹込み手段とを有する火格子式廃棄物焼却炉による廃棄物焼却方法において、火格子上の廃棄物の移動方向である炉長方向の複数位置で燃焼室の天井に設けられた高温ガス吹込口から高温ガスを燃焼室へ供給し、燃焼室内温度計測手段により計測された燃焼室内の温度の計測値に基づき燃焼室内温度を所定範囲とするように高温ガスにより供給する酸素量を制御することを特徴とする火格子式廃棄物焼却炉による廃棄物燃焼方法。
【0024】
本発明において、焼却炉から排出された排ガスの一部が返送された返送排ガスと高温空気との混合ガスを高温ガスとして燃焼室へ供給し、高温ガスにより供給する酸素量が、燃焼室へ供給する高温ガス流量、混合する高温空気量、混合する返送排ガス量のうち少なくとも一つにより制御することができる。
【0025】
燃焼室内温度が所定範囲内に収まっていれば、燃焼室内で廃棄物の燃焼は好ましい状態で安定して行われ、有害物質の発生量も少なく排ガス中の有害物質の濃度は許容値範囲内となっていることを示しているが、焼却炉に供給される廃棄物の種類や供給量等が変動すると、廃棄物の燃焼が好ましい状態から外れることがあり、その結果燃焼室内温度が上記所定範囲から外れることもある。本発明によると、燃焼室内温度が上記所定範囲から外れると、燃焼を好ましい状態とするため、以下の対応処置を行う。すなわち、燃焼室内温度が所定範囲より低下しているときには、燃焼が不活性となっていて廃棄物が熱分解して発生した可燃性ガスの燃焼が十分に行われていないことを示しており、COが多く残存し排ガス中のCO濃度が上昇してしまうので、高温ガスにより供給される酸素量を増加させ燃焼を活性化するように制御し、燃焼室内温度が上記所定範囲より高くなっているときには、燃焼が過活性となっていて高温場が発生していることを示しており、NOx発生量が増加して排ガス中のNOx濃度が上昇してしまうので、高温ガスにより供給される酸素量を減少させ燃焼を緩慢化するように制御する。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明では、炉天井から高温ガスを燃焼室内へ吹き込む火格子式廃棄物焼却炉及びその廃棄物焼却方法において、燃焼室内温度を、適正燃焼となっていることを示す所定範囲とするように、高温ガスの吹込みにより燃焼室へ供給する酸素量を制御することとしたので、燃焼室では、適正な燃焼が行われるように維持され、燃焼による有害物質の発生量が少なく排ガス中の有害物質濃度は許容範囲に収まる。また、燃焼状況を監視するための計測対象を燃焼室内温度とし、温度制御のための操作対象を燃焼室へ供給する酸素量としたので、計測から制御までの遅れがなく、きわめて円滑な制御がなされる。
【0027】
本発明では、さらに、燃焼室の天井から高温ガスを吹き込むこととしたので、次のような効果を得る。
【0028】
[高温ガス吹込みによる燃焼安定化効果]
廃棄物焼却炉燃焼室の天井に設けた吹込口から高温ガスを下向きに吹き込み、高温ガスの顕熱と輻射により廃棄物の熱分解を促進することができ、廃棄物の熱分解により発生した可燃性ガスの燃焼を促進することができ、さらに、高温ガスの下向きの流れと、廃棄物層から発生する可燃性ガスと燃焼ガスとの上向きの流れとを衝突させ、廃棄物層直上でガス流れが緩やかなよどみ領域又は上下方向に循環する循環領域を燃焼室の幅方向と長さ方向の広い範囲に亘って形成することができるので、安定した燃焼が行われ、平面状燃焼領域(火炎)を定在させることができる。また、定在する平面状火炎の輻射などにより廃棄物の熱分解をさらに促進することができる。このように高温ガス吹き込みにより、焼却炉の大きさに関わらず、空気比が1.5以下の低空気比燃焼においても廃棄物と、発生する可燃性ガスを安定して燃焼することができる。そして、燃焼が安定するため、廃棄物焼却炉から排出される排ガス中のCO、NOxなど有害物の発生量を抑制することができる。
【0029】
以上、高温ガス吹込みにより、例えば、空気比が1.5以下の低空気比燃焼においても、廃棄物と、発生する可燃性ガスを安定して燃焼することができ、廃棄物焼却炉から排出される排ガス中のCO、NOxなど有害物の発生量を抑制することができる。また、廃棄物の熱分解、燃焼を促進することができるため、廃棄物焼却処理量に対して燃焼室内容積を小さくすることができ、焼却炉の炉高を低くすることができ、廃棄物焼却炉をコンパクトにすることにより設備費用と運転費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る廃棄物焼却炉の概要構成を示し、(A)は炉長方向での縦断面図である。
図2図1に示す廃棄物焼却炉内の燃焼状態を説明する、炉幅方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を添付図面にもとづき説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0032】
以下、本発明の一実施形態の火格子式焼却炉の基本構成、各構成装置そして作用について説明する。
【0033】
<火格子式焼却炉の基本構成>
図1は本発明の一実施形態に係る廃棄物焼却炉の概要構成を示している。まず、本発明の一実施形態に係る廃棄物焼却炉の基本構成と焼却方法の概要を説明し、次いで各構成装置の詳細を説明する。この実施形態において、燃焼室内での廃棄物の移動方向(炉長方向)における燃焼室の上流側を前部、下流側を後部という。
【0034】
本実施形態に係る廃棄物焼却炉1は、燃焼室2と、この燃焼室2の廃棄物の流れ方向の上流側(図1の左側)上方に配置され、廃棄物を燃焼室2内に投入するための廃棄物投入口3と、燃焼室2の廃棄物の流れ方向の下流側(図1の右側)の上方に連設される廃熱ボイラ4とを備える火格子式の焼却炉である。
【0035】
燃焼室2の底部には、廃棄物を移動させながら燃焼させる火格子(ストーカ)5が設けられている。この火格子5は、廃棄物投入口3に近い方から、すなわち、上流側から乾燥火格子5a、燃焼火格子5b、後燃焼火格子5cの順に設けられていて、乾燥火格子5aと燃焼火格子5bの上に廃棄物層Wが形成されている。
【0036】
乾燥火格子5aでは主として廃棄物の乾燥と着火が行われる。燃焼火格子5bでは主として廃棄物の熱分解、部分酸化が行われ、熱分解により発生した可燃性ガスと固形分の燃焼が行われ、可燃性ガスが燃焼する際に火炎を形成する。後燃焼火格子5c上では、残った廃棄物中の固形分の未燃分を完全に燃焼させる。廃棄物中の固形分が燃焼する際には火炎は発生せず熾燃焼する。完全に燃焼した後の燃焼灰は、灰落下口6より排出される。
【0037】
このような本実施形態の焼却炉では、燃焼室2内の空間に、廃棄物層の直上の空間に、下記のような諸領域が形成される。
【0038】
乾燥火格子5aの直上方で廃棄物投入口3の下方に対応して位置する、該乾燥火格子5aの廃棄物の流れ方向の上流側範囲(前部)の上方には乾燥領域A1が形成される。
【0039】
乾燥火格子5aの下流側範囲(後部)から燃焼火格子5bの上流側範囲(前部)の上方には燃焼開始領域A2が形成される。すなわち、乾燥火格子5aの廃棄物は、上流側範囲で乾燥され、下流側範囲で着火して、燃焼火格子5bの上流側範囲(前部)までの範囲で燃焼が開始する。
【0040】
燃焼火格子5b上の廃棄物はここで熱分解そして部分酸化が行われ、可燃性ガスが発生し、その可燃性ガスと廃棄物の固形分が燃焼する。廃棄物はこの燃焼火格子5b上で実質的に殆んど燃焼される。こうして、上記燃焼火格子5bの上方に主燃焼領域A3が形成される。
【0041】
しかる後、僅かに残った廃棄物中の固定炭素など未燃分が後燃焼火格子5c上で完全に燃焼される。この後燃焼火格子5cの上方に後燃焼領域A4が形成される。
【0042】
廃棄物が焼却される場合、まず水分の蒸発が起こり、次いで熱分解と部分酸化反応が起こり、可燃性ガスが生成し始める。ここで燃焼開始領域A2とは、廃棄物の燃焼が始まり、廃棄物の熱分解、部分酸化により可燃性ガスが生成し始める領域である。また、主燃焼領域A3とは、廃棄物の熱分解、部分酸化が行われ可燃性ガスが発生し、その可燃性ガスが火炎を伴って燃焼しているとともに廃棄物の固形分が燃焼する燃焼領域であり、火炎を伴う燃焼が完了する点(燃切点)までの領域である。燃切点より後の領域では、廃棄物中の固形未燃分が燃焼する熾燃焼領域(後燃焼領域A4)となる。
【0043】
上記乾燥領域A1、燃焼開始領域A2、主燃焼領域A3そして後燃焼領域A4については、再度、後述する。
【0044】
上記燃焼室2内の乾燥火格子5a、燃焼火格子5b及び後燃焼火格子5cの下部には、それぞれ風箱7a,7b,7c,7dが設けられている。ブロワ8により供給される燃焼用一次空気Pは、燃焼用一次空気供給管9を通って前記各風箱7a,7b,7c,7dに供給され、各火格子5a,5b,5cを通って燃焼室2内に供給される。なお、火格子下から供給される燃焼用一次空気Pは、火格子5a,5b,5c上の廃棄物の乾燥及び燃焼に使われるほか、火格子5a,5b,5cの冷却作用、廃棄物の攪拌作用を有する。
【0045】
上記燃焼室2の下流側における出口には廃熱ボイラ4が連設され、廃熱ボイラ4の入口近傍が燃焼室2から排出されるガス中の可燃性ガスの未燃分(未燃ガス)を燃焼する二次燃焼領域10となっている。廃熱ボイラの一部である二次燃焼領域10内で二次燃焼用ガスを吹き込み、未燃ガスを二次燃焼し、この二次燃焼の後に燃焼排ガスは廃熱ボイラ4で熱回収される。熱回収された後、廃熱ボイラから排出された燃焼排ガスは、図示しない排ガス処理装置系で消石灰等による酸性ガスの中和と、活性炭によるダイオキシン類の吸着が行われ、さらに図示しない除塵装置に送られ、中和反応生成物、活性炭、ダストなどが回収される。前記除塵装置で除塵され、無害化された後の燃焼排ガスは、図示しない誘引ファンにより誘引され、煙突から大気中に放出される。また、除塵装置で除塵された後の燃焼排ガスの一部が、後述する返送排ガスとして用いられる。
【0046】
このような基本構成である火格子式焼却炉において、本実施形態に係る廃棄物焼却炉1は、以下のように燃焼用一次空気を上記火格子の下から上記燃焼室内に吹き込む一次空気吹込み手段と、燃焼室の天井に炉長方向で複数位置に高温ガス吹込口を備え、高温ガスをこの高温ガス吹込み口から下向きに吹き込む高温ガス吹込み手段と、さらには廃熱ボイラの入口部に設けられた二次燃焼室へ二次燃焼用ガスを供給する二次燃焼用ガス供給手段とを具備している。
【0047】
<一次空気吹込み手段>
本実施形態では、廃棄物焼却炉1は、燃焼用空気となる一次空気の一次空気供給系を備えている。一次空気供給系は、空気供給源からの一次空気Pを燃焼用一次空気供給管9を経て、乾燥火格子5a、燃焼火格子5b及び後燃焼火格子5cのそれぞれの風箱7a,7b,7c,7dに分岐供給管から送り込むようになっており、上記燃焼用一次空気供給管9には、ブロワ8そして流量調整機構としてのダンパ11が設けられている。
【0048】
<高温ガス吹込み手段>
本実施形態では、廃棄物焼却炉1は、高温ガスを上記燃焼室2の天井2Aから下向きに吹き込む高温ガス吹込み手段を備えている。高温ガス吹込み手段は、火格子5上の廃棄物の移動方向である炉長方向の複数位置で燃焼室の天井2Aに高温ガス吹込口13(13a,13b,13c,13d,13e)を備え、また、高温ガス吹込口13は炉長方向で乾燥火格子5aの後部から後燃焼火格子5cの前部までの天井2Aに設けられている。高温ガス吹込み手段は、さらに、高温ガス吹込口13へ高温ガスを供給する高温ガス供給装置24と、高温ガスを上記高温ガス吹込口13へ導く管路と、高温ガス供給装置24を制御する高温ガス吹込制御装置22を有し、高温ガス供給装置24は流量調整機構としてのダンパ14を有している。
【0049】
高温ガスが下方に吹き込まれるように、高温ガス吹込口13の向きが定められている。かくして、高温ガス吹込口13から、高温ガスを乾燥領域A1から後燃焼領域A4の前部の領域に向かって吹き込むように設けられている。また、最も下流側に位置する高温ガス吹込口13eからの高温ガスは、燃切点の直後の領域に向かって吹き込まれることとしてもよい。
【0050】
上記高温ガス吹込口13は、炉幅方向(図1にて紙面に対して直角な方向、図2にて左右方向)にも複数箇所に設けられている。
【0051】
高温ガス供給装置24は、返送排ガスと高温空気とを混合して高温ガスを調製し、該高温ガスを高温ガス吹込口13へ供給する。ここで、「返送排ガス」とは、焼却炉から排出された排ガスを排ガス処理系で中和処理し除塵装置で除塵した後の排ガスの一部である。また、上記高温空気は、空気を加熱器により加熱して生成される。高温ガス供給装置24は、返送排ガスと高温空気のそれぞれの流量を調整することにより混合割合を調整して高温ガスの温度、酸素濃度を調整する。また、高温ガス供給装置24は、高温空気のみ又は返送排ガスのみを高温ガスとして供給してもよい。
【0052】
本実施形態では、上記高温ガス供給装置24で返送排ガスと高温空気を混合して高温ガスを調製する際に、返送排ガスと高温空気のそれぞれの流量を調整することにより混合割合を調整して高温ガス中の酸素濃度を調整すること、上記ダンパ14で高温ガスの流量を調整することのうち少なくとも一つにより、燃焼室2内へ高温ガスにより供給される酸素量を調整できる。
【0053】
高温ガス供給手段から供給される高温ガスはその酸素濃度が5〜21dry体積%であることが好ましく、12〜21dry体積%であることがより好ましい。
【0054】
<高温ガス吹込み制御装置>
本実施形態では、燃焼室内温度を計測する燃焼室内温度計測手段16と、この燃焼室内温度計測手段16からの信号を受けて高温ガス供給装置24を制御する高温ガス吹込制御装置22とを有している。燃焼室2内では、炉長方向にて、炉内における乾燥領域A1から後燃焼領域A4に至る範囲で炉内温度は変化し、燃焼が最もさかんな燃焼領域A3に燃焼室内温度を計測する燃焼室内温度計測手段16を有している。燃焼室内温度計測手段16は、例えば熱電対で形成され、燃焼領域A3で炉幅方向の両端に位置する側壁に対して取り付けられている。
【0055】
高温ガス吹込制御装置22は、上記燃焼室内温度計測手段16からの信号を受け、高温ガス供給装置24を制御して、燃焼室内温度が所定範囲に収まるように、上記高温ガス供給装置24により燃焼室に吹き込まれる高温ガスによって供給される酸素量を制御する。燃焼室内温度が所定範囲より低下しているときには、燃焼が不活性となっていて可燃性ガスの燃焼が十分に行われていないことを示しており、COが多く残存し排ガス中のCO濃度が上昇してしまうので、高温ガスにより供給される酸素量を増加させ燃焼を活性化するように制御し、燃焼室内温度が上記所定範囲より高くなっているときには、燃焼が過活性となっていて高温場が発生していることを示しており、NOx発生量が増加して排ガス中のNOx濃度が上昇してしまうので、高温ガスにより供給される酸素量を減少させ燃焼を緩慢化するように制御する。
【0056】
本実施形態では、高温ガス供給装置24で返送排ガスと高温空気を混合して高温ガスを調製する際に、返送排ガスと高温空気のそれぞれの流量を調整することにより混合割合を調整して高温ガス中の酸素濃度を調整することで、又は高温ガスを流送する配管に設けたダンパ14の開度を調整して高温ガスの流量を調整することで、燃焼室2内へ供給される高温ガスの酸素量を調整する。
【0057】
<二次燃焼用ガス供給手段>
また、本実施形態の廃棄物焼却炉1は、二次燃焼用ガスを廃熱ボイラ4の入口近傍に相当する二次燃焼領域10に吹き込む二次燃焼用ガス供給系を備えている。二次燃焼用ガス供給系は、二次燃焼用ガス供給源からの二次燃焼用ガスQを管路12を経て、二次燃焼領域10に設けられた二次燃焼用ガス吹込口17に送り込むようになっており、上記管路12には、ブロワ18そして流量調整機構としてのダンパ19が設けられている。二次燃焼用ガス吹込口17は、廃熱ボイラ4の入口近傍にある二次燃焼領域10に二次燃焼用ガス(燃焼用二次空気)Qを吹き込むように、廃熱ボイラ4の周壁に設けられている。燃焼室2内で発生した可燃性ガスはそのほとんどが燃焼室2内で燃焼され、残存する未燃ガスは、後燃焼火格子5cの上方に連接される廃熱ボイラ4の入口近傍に相当する二次燃焼領域10に流入して、ここで二次燃焼用ガスが供給され、二次燃焼される。
【0058】
なお、本発明において、上記燃焼用一次空気、高温ガスそして二次燃焼用ガスを供給するための管路等の構成は図示したものに限定されず、焼却炉の規模、形状、用途等により適宜選択され得る。また、本発明では、二次燃焼用ガス供給系は必須ではない。
【0059】
次に、このように構成される本実施形態の装置での焼却状況の概要、燃焼用一次空気、高温ガス、二次燃焼用ガスとしての燃焼用二次空気の吹込みによる作用について順次説明する。
【0060】
<焼却状況の概要>
先ず、廃棄物投入口3へ廃棄物を投入すると、落下した廃棄物は図示しない廃棄物供給装置により燃焼室2内に供給され、乾燥火格子5a上に堆積され、各火格子5a〜5cの動作により、燃焼火格子5b上そして後燃焼火格子5c上へと移動し、各火格子上に廃棄物Wの層を形成する。各火格子は、風箱7a,7b,7c,7dを経て、燃焼用の一次空気を受けており、これにより各火格子の廃棄物は乾燥そして燃焼される。
【0061】
乾燥火格子5a上では主として廃棄物の乾燥と着火が行われる。すなわち、乾燥火格子5aの廃棄物は、乾燥火格子5aの上流側範囲で乾燥され、乾燥火格子5aの下流側範囲で着火して、燃焼火格子5bの上流側範囲(前部)までの範囲で燃焼が開始する。乾燥火格子5aの廃棄物の流れ方向の上流側範囲(前部)の上方には乾燥領域A1が形成される。乾燥火格子5aの下流側範囲(後部)から燃焼火格子5bの上流側範囲(前部)の上方には燃焼開始領域A2が形成される。燃焼火格子5b上では主として廃棄物の熱分解、部分酸化が行われ可燃性ガスが発生し、その可燃性ガスが火炎を伴って燃焼するとともに、廃棄物中の固形分の燃焼が行われる。燃焼火格子5bの上方に主燃焼領域A3が形成される。この燃焼領域は火炎を伴う燃焼が完了する点(燃切点)までの領域である。燃焼火格子5b上において廃棄物の燃焼は実質的に完了する。後燃焼火格子5c上では、僅かに残った廃棄物中の固定炭素など未燃分を完全燃焼させる。燃切点より後の領域では、廃棄物中の固形未燃分(チャー)が燃焼し、後燃焼火格子5cの上方に後燃焼領域A4が形成される。完全燃焼した後の燃焼灰は、灰落下口6より排出される。このように廃棄物が燃焼している状態で、図1に見られるように、各火格子5a,5b,5cの直上空間には、乾燥領域A1、燃焼開始領域A2、主燃焼領域A3そして後燃焼領域A4がそれぞれ形成される。
【0062】
既述のごとく、燃焼室2の出口に、廃熱ボイラ4が連設されていて、廃熱ボイラ4の入口近傍が二次燃焼領域10となっている。したがって、燃焼室2内で発生した未燃ガスは、二次燃焼領域10に導かれ、そこで二次燃焼用ガスQと混合・攪拌され、二次燃焼する。二次燃焼の後に排ガスは廃熱ボイラ4で熱回収される。熱回収された後、廃熱ボイラ4から排出された排ガスは、消石灰等による酸性ガスの中和と、活性炭によるダイオキシン類の吸着が行われ、さらに除塵装置(図示せず)に送られ、中和反応生成物、活性炭、ダストなどが回収される。上記除塵装置で除塵され、無害化された後の排ガスは、誘引ファン(図示せず)により誘引され、煙突から大気中に放出される。なお、上記除塵装置としては、例えば、バグフィルタ方式、電気集塵方式等の除塵装置を用いることができる。また、除塵装置で除塵された後の排ガスの一部が、返送排ガスとして用いられる。
【0063】
<高温ガス吹込制御>
焼却炉の燃焼室内温度を計測する燃焼室内温度計測手段16により計測する燃焼室内温度計測値に基づき、燃焼室内温度を所定範囲内とするように、次の要領のもとで、高温ガスにより供給する酸素量を制御する。
【0064】
既述したように、燃焼室内温度が所定範囲内に収まっていれば、燃焼室内で廃棄物の燃焼は好ましい状態で安定して行われ、有害物質の発生量も少なく排ガス中の有害物質の濃度は許容値範囲内となっていることを示しているが、焼却炉に供給される廃棄物の種類や供給量等が変動すると、廃棄物の燃焼が好ましい状態から外れることがあり、その結果燃焼室内温度が上記所定範囲から外れることもある。つまり、燃焼室内の燃焼の良否は、燃焼室内温度が所定範囲内にあるかどうかで判定できる。
【0065】
そこで、本実施形態では、焼却炉への廃棄物の供給量や質の変動により燃焼室内での燃焼状況が変動した場合、燃焼室内温度も変わってくるので、これを計測して、燃焼室内温度が上記所定範囲から外れると、燃焼を好ましい状態とするように制御する。
【0066】
すなわち、燃焼室内温度が所定範囲より低下しているときには、燃焼が不活性となっていて廃棄物が熱分解して発生した可燃性ガスの燃焼が十分に行われていないことを示しており、COが多く残存し排ガス中のCO濃度が上昇してしまうので、高温ガスにより供給される酸素量を増加させ燃焼を活性化するように制御する。酸素量の増加のためには、高温ガス供給装置24で返送排ガスと高温空気を混合して高温ガスを調製する際に、返送排ガス量を減少すること、高温空気量を増加することのうち少なくとも一つを行い、両者の量比を変えて、高温ガスの酸素濃度を増加させ、あるいは、ダンパ14の開度を大きくして高温ガスの供給量を増大させることにより、燃焼室内へ高温ガスにより供給する酸素量を増大させる。さらには、高温ガス供給装置24とダンパ14の両方を調整して酸素供給量を増大させることとしてもよい。
【0067】
次に、燃焼室内温度が上記所定範囲より高くなっているときには、燃焼が過活性となっていて高温場が発生していることを示しており、NOx発生量が増加して排ガス中のNOx濃度が上昇してしまうので、高温ガスにより供給される酸素量を減少させ燃焼を緩慢化するように制御する。酸素量の減少のためには、高温ガス供給装置24で返送排ガスと高温空気を混合して高温ガスを調製する際に、返送排ガス量を増加すること、高温空気量を減少することのうち少なくとも一つを行い、両者の量比を変えて、高温ガスの酸素濃度を減少させ、あるいは、ダンパ14の開度を小さくして高温ガスの供給量を減少させることにより、燃焼室内へ高温ガスにより供給する酸素量を減少させる。さらには、高温ガス供給装置24とダンパ14の両方を調整して酸素供給量を減少させることとしてもよい。
【0068】
さらに、燃焼室内温度が所定範囲内にある場合には、燃焼室内の燃焼が良好に行われていることなので、高温ガス供給装置24そしてダンパ14は調整されることなく、そのまま現状維持される。
【0069】
<燃焼用一次空気の吹込み>
燃焼用一次空気Pは、ブロワ8から燃焼用一次空気供給管9を通って乾燥火格子5a、燃焼火格子5b及び後燃焼火格子5cのそれぞれの下部に設けられた風箱7a,7b,7c,7dに供給された後、各火格子5a,5b,5cを通って燃焼室2内に供給される。燃焼室2内に供給される燃焼用一次空気Pの流量は、燃焼用一次空気供給管9に設けられた流量調整用のダンパ11により調整され、さらに、上記燃切点位置制御手段からの指令にもとづき、各風箱7a,7b,7c,7dに供給される流量は、各風箱に分岐して設けられたそれぞれの供給管に備える上記ダンパ7a−1〜7d−1により調整される。また、風箱7a,7b,7c,7d及び燃焼用一次空気Pを供給するための燃焼用一次空気供給管9等の構成は図示したものに限定されず、焼却炉の規模、形状、用途等により適宜選択され得る。
【0070】
燃焼用一次空気Pとしては、温度が常温〜200℃の範囲であり、酸素濃度が15〜21dry体積%の範囲のガスを用いることが好ましい。燃焼用一次空気Pとして、空気、酸素を含有するガス及び返送排ガスのいずれかを用いてもよいし、これらの混合ガスを用いてもよい。
【0071】
<高温ガス吹込みによる燃焼安定化>
図1に見られるように、高温ガスが、高温ガス吹込口13(13a、13b、13c、13d、13e)から、乾燥領域A1から後燃焼領域A4の前部の領域に向かって吹き込まれ、廃棄物層Wに向かって下向きに吹き込まれる。
【0072】
高温ガス吹込口13から、高温ガスを燃焼室2内の乾燥領域A1から後燃焼領域A4の前部までの領域に、かつ廃棄物層W直上に向かって下向きに吹き込むことにより、下向きに吹き込まれる高温ガスは、廃棄物の熱分解・部分酸化により生じた可燃性ガスと燃焼ガスとの上昇流と対向し、双方のガス流れが衝突し、廃棄物層W直上に平面状の流れの遅いよどみ領域または上下方向に循環する循環領域が生じる。これらの領域はガス流れの速度が遅いため、可燃性ガスが燃焼する火炎が定在することになり、すなわち廃棄物層W直上に平面状燃焼領域(平面火炎)が定在し、可燃性ガスが安定して燃焼される。
【0073】
また、高温ガスの熱輻射と顕熱によって廃棄物が加熱され、熱分解・部分酸化が促進されることに加えて、廃棄物層の直上に平面状燃焼領域(平面火炎)が定在するので、この平面火炎からの熱輻射と顕熱によって廃棄物が加熱され、熱分解・部分酸化がさらに促進される。また、酸素を含んだ高温ガスの吹き込みにより廃棄物の熱分解により発生した可燃性ガスの燃焼が促進される。
【0074】
かくして、低空気比燃焼操業下でも廃棄物Wの燃焼を安定して行わせることができる。その結果、低空気比燃焼においてもCO,NOx、ダイオキシン類等の有害物質の発生を抑制することができる。このため、低空気比燃焼を支障なく行うことができる。
【0075】
次に、高温ガスについてその調製、吹込口、吹込み流速、さらには、二次燃焼用ガスの吹込みについて、順次説明する。
【0076】
<高温ガスの調製>
高温ガス吹込口13から吹き込まれる高温ガスの温度は、100〜400℃の範囲とすることが好ましく、150〜200℃程度とすることがより好ましい。100℃未満の温度のガスを吹き込むと炉内温度が低下し、燃焼が不安定となりCO発生量が増加する。400℃を超えるガスを吹き込むと燃焼室内における火炎温度が著しく高温になり、クリンカの生成が助長されるなど問題が生じる。高温ガスの温度を150〜200℃程度とすることにより、前記の問題の発生を抑制するとともに空気を加熱するエネルギーを適切な範囲とすることができるので、より好ましい。
【0077】
また、高温ガス吹込口13から吹き込まれる高温ガスの酸素濃度は5〜21dry体積%に、より好ましくは12〜21dry体積%に調整されていることが好ましい。これにより、上述の効果がより効果的に発揮され、排ガスの低NOx化、低CO化がより促進される。
【0078】
高温ガスの酸素濃度を上述の範囲とする根拠は次の通りである。高温ガスの酸素濃度が下限より低いと、高温ガスの吹き込みにより乾燥領域A1から主燃焼領域A3までの領域が過剰に低酸素雰囲気となり、廃棄物の熱分解により発生する可燃性ガスの発生量が過剰になり、燃焼室内で燃焼されずに二次燃焼領域に流入する可燃性ガスの未燃分(未燃ガス)の量が過剰となるので不適であり、酸素濃度が上限より高いと、可燃性ガスの燃焼が過剰となり高温場が生じNOx発生量が多くなり不適であり、したがって、高温ガスの酸素濃度は5〜21dry体積%が好ましく、酸素濃度を12〜21dry体積%とすると上記の問題を確実に回避できるのでより好ましい。
【0079】
高温ガスが上述したガス温度及び酸素濃度となるように、本実施形態では、高温ガスとして、焼却炉から排出された排ガスの一部を返送する返送排ガスと高温空気の混合ガス又は高温空気が用いられる。上記返送排ガスとしては、焼却炉から排出された排ガスに対して前述の排ガス処理系と除塵装置により酸性ガスの中和処理、ダイオキシン類の処理、除塵処理が行われた排ガスの一部が用いられる。また、上記高温空気は、空気を廃熱ボイラで発生させた蒸気との熱交換により加熱して生成される。そして、本実施形態では、返送排ガス、返送排ガスと高温空気の混合ガス、高温空気が、必要に応じて廃熱ボイラで発生させた蒸気との熱交換により加熱され、温度と酸素濃度が上記所定の条件を満たすような高温ガスとして燃焼室内に吹き込まれる。
【0080】
<高温ガス吹込口>
高温ガス吹込口13は、燃焼室2の天井の、乾燥火格子5aから後燃焼火格子5cの移動方向上流側(前部)までの範囲内での火格子直上の位置に設けられている。
【0081】
高温ガス吹込口13は、それぞれ燃焼室2の幅方向に複数配置される。高温ガス吹込口13は、ノズル型でもスリット型でもよい。
【0082】
燃焼室内の廃棄物層直上で幅方向と炉長方向の広い範囲に亘って平面状燃焼領域が形成されるように、廃棄物からの上昇流と対向させる高温ガスの流れの状況を好ましい状態に制御するように、高温ガス吹込口の配置位置、配置数、配置間隔、吹込み方向、吹込口の形状のうち少なくとも一つを、設定又は調整する。
【0083】
図1においては、高温ガス吹込口13から廃棄物層に向かって下向きに高温ガスを吹き込んでいる。ここで、高温ガスの吹込み方向としては、廃棄物層に対する垂線から20°までの角度範囲の吹込み方向で吹き込まれることが望ましい。これは、吹き込んだ高温ガスと、廃棄物の熱分解・部分酸化によって生じる可燃性ガスと燃焼ガスの上昇流とが衝突して生じる流れ場を対向流場とするためであり、高温ガスの吹込み方向が廃棄物層に対する垂線から20°より大きい範囲となると、適切な対向流場が形成されなくなるためである。
【0084】
高温ガス吹込口13が複数ある場合,高温ガスはそれぞれの高温ガス吹込口13から必ずしも等流速で吹き込まれる必要はなく,焼却炉の規模、形状、用途或いは廃棄物性状、量、廃棄物層厚さ等により、各高温ガス吹込口13からの吹込み流速は異なるように適宜変更され得る。
【0085】
廃棄物焼却炉燃焼室の天井に設けた吹込口から高温ガスを下向きに吹き込むことにより、高温ガスの下向きの流れと、廃棄物層から発生する可燃性ガスと燃焼ガスとの上向きの流れとを衝突させ、廃棄物層直上でガス流れが緩やかなよどみ領域又は上下方向に循環する循環領域を燃焼室の幅方向と炉長方向の広い範囲に亘って形成することができるので、平面状燃焼領域を定在させることができ、焼却炉の大きさ、すなわち、燃焼室の幅や高さに関わらず、空気比が1.5以下の低空気比燃焼においても廃棄物と、発生する可燃性ガスを安定して燃焼することができる。そして、燃焼が安定するため、廃棄物焼却炉から排出される排ガス中のCO,NOxなど有害物の発生量を抑制することができる。さらには、定在する平面状火炎の輻射などにより廃棄物の熱分解を促進することができるため、火格子に供給する廃棄物量(火格子負荷)および燃焼室内に供給する廃棄物の熱量(火炉負荷)を大きくすることができる。このため廃棄物焼却処理量に対して燃焼室内容積を小さくすることができ、焼却炉の炉高を低くすることができ廃棄物焼却設備をコンパクトにすることにより設備費用と運転費用を低減することができる。
【0086】
高温ガス吹込口13が燃焼室の炉幅方向又は炉長方向に複数ある場合、高温ガスはそれぞれの高温ガス吹込口13から必ずしも等流量で吹き込まれる必要はなく、焼却炉1の規模、形状、用途或いは廃棄物性状、量、廃棄物層厚さ等により、各高温ガス吹込口13からの吹込み流量が異なるように適宜変更され得る。
【0087】
<二次燃焼用ガスの吹込み>
二次燃焼用ガスQが二次燃焼領域10に吹き込まれ、燃焼室2からの未燃ガスが二次燃焼される。二次燃焼用ガスとして、温度は常温〜200℃の範囲であり、酸素濃度は15〜21dry体積%の範囲のガスを用いることが好ましい。二次燃焼用ガスQとして、空気、酸素を含有するガス、返送排ガスを用いてよいし、これらの混合ガスを用いてもよい。
【0088】
上記二次燃焼用ガス吹込口17は、二次燃焼領域内に旋回流が生じる方向にガスを吹き込めるように1つ又は複数設置することが好ましい。二次燃焼用ガスQを二次燃焼領域10内に旋回流が生じる方向に吹き込むことにより、二次燃焼領域10内のガス温度及び酸素濃度分布を均一化、平均化でき、未燃ガスの二次燃焼が安定して行われ、局所高温領域の発生を抑制し、排ガスのさらなる低NOx化が可能となる。さらに、未燃ガスと酸化剤との混合が促進されるため燃焼安定性が向上し、完全燃焼が達成できるため、排ガスの低CO化も可能となる。
【0089】
二次燃焼用ガスQとしては、ブロワにより供給される燃焼用二次空気のみ、ブロワ供給後の燃焼用二次空気に希釈剤を混合し酸素濃度を調整したガス、除塵装置を通過した後の排ガスの一部を抜き出した返送排ガスのみ、又は上記燃焼用二次空気と返送排ガスを混合したガス等を用いることができる。
【0090】
希釈剤としては、窒素、二酸化炭素などが考えられる。
【0091】
上記二次燃焼領域10内のガス温度が、800〜1050℃の範囲となるように、上記二次燃焼用ガスの流量を調整することが好ましい。二次燃焼領域10内のガス温度が800℃未満となると未燃ガスの燃焼が不十分となり、排ガス中のCOが増加する。また、二次燃焼領域10内のガス温度が1050℃を超えると二次燃焼領域10内におけるクリンカの生成が助長され、さらに、NOxが増加する。
【0092】
以上説明したように本発明によれば、燃焼室内の燃焼状況の指標となる燃焼室内温度を、適正燃焼状態であることを示す所定範囲とするように、高温ガスの吹込みにより燃焼室へ供給される酸素量を制御することとしたので、燃焼室では、適正な燃焼が行われるように維持され、燃焼による有害物質の発生量が抑制され排ガス中の有害物質濃度が許容範囲に収まる。また、燃焼状況を監視するための計測対象を燃焼室内温度とし、温度制御のための操作対象を燃焼室へ供給する酸素量としたので、計測から制御までの遅れがなく、きわめて円滑な制御がなされる。
【0093】
さらに、本発明によれば、燃焼室への高温ガス吹き込みにより、燃焼室内の廃棄物層直上付近に安定なよどみ領域又は循環領域を形成させることができ、平面状燃焼領域を定在させ、廃棄物焼却炉の大きさにかかわらず、空気比が1.5以下の低空気比燃焼を行った場合においても、燃焼室内の幅方向と長さ方向の全域に亘って燃焼の安定性が維持され、COやNOx等の有害ガスの発生量が低減できる廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法が提供される。さらに、従来よりさらに低空気比で燃焼を行えるので焼却炉から排出される排ガス総量をさらに大幅に低減でき、また、廃熱の回収効率を向上できる廃棄物焼却炉及び廃棄物焼却方法が提供される。
【0094】
また、定在する平面火炎の輻射などにより廃棄物の熱分解を促進することができるため、火格子に供給する廃棄物の量(火格子負荷)および燃焼室内に供給する廃棄物の熱量(火炉負荷)を大きくすることができる。このため廃棄物焼却処理量に対して燃焼室内容積を小さくすることができ、焼却炉の炉高を低くすることができ、廃棄物焼却設備をコンパクトにすることにより設備費用及び運転費用を低減することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 廃棄物焼却炉
2 燃焼室
5 火格子
5a 乾燥火格子
5b 燃焼火格子
5c 後燃焼火格子
13(13a,13b,13c,13d,13e) 高温ガス吹込口
16 燃焼室内温度計測手段
22 高温ガス吹込制御装置
24 高温ガス供給装置
図1
図2