【実施例】
【0026】
以下、実施例によって本発明の内容をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制約されるものではない。
【0027】
実施例1(マイクロアレイ解析)
ケールとして、ケールの搾汁の粉末(ケール由来の固形分40%、以下ケール粉末という)を用いた。
【0028】
(動物)
雄のSAMP8マウス(日本エスエルシー社製)を使用した。
全てのマウスは温度20−23℃、湿度40−70%、明暗サイクルが12h/12hで個別に飼育されている。
【0029】
(実験計画)
16週齢のマウスを8匹ずつ2つの群に分けた。
コントロール群はMF飼料(オリエンタル酵母工業社製)で飼育し、ケール摂取群は、ケール粉末2%(w/w)(ケール由来固形分に換算すると0.8%)含有するMF飼料で飼育した。
飼料と水は自由摂取とした。飼料摂取量はコントロール群とケール摂取群で有意差はなかった。
16週後、解剖し、脳と肝臓を摘出した。これらの組織は無毒性組織保存薬(Sigma社製)、RIPA lysis buffer(Santa Cruz Biotechnology社製)、5mMのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に浸漬し、−80℃で保存した。
【0030】
(マイクロアレイ解析)
マイクロアレイ解析のサンプルは肝臓を用いた。
マイクロアレイ解析は、CodeLink Mouse Whole Genome Bioarray(Applied Microarrays社製)を用いた。検出は、GenePix4000B Array Scanner(Molecular Devices社製)を用いた。データ解析は、microArray Data Analysis Tool version 3.2(Filgen社製)を用いた。
【0031】
(結果)
mRNAが高発現している遺伝子を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
ケール摂取群の肝臓組織では、Hsp70とHsp40のmRNAが高発現していることがDNAマイクロアレイ解析により示された。
【0034】
実施例2(定量リアルタイムPCR)
(サンプル)
実施例1と同じ脳と肝臓の組織サンプルを用いた。
(定量リアルタイムPCR)
遺伝子発現量の定量は、定量リアルタイムPCR(StepOne Real-time PCR System、Applied BioSystems社製)を用いて行った。
リアルタイムPCRは、KAPA SYBR FAST Universal qPCR kit(Kapa Biosystems社製)を用いた。
サーマルサイクルプログラムは、初期変性:95℃3分を1サイクル、変性:95℃3秒、アニーリング/伸長反応:60℃20秒をセットで40サイクル、最終解離:95℃15秒を1サイクルとした。
それぞれのサンプルの全RNA量を同一にするために、β−アクチンを内部標準として用いた。プライマー配列は以下の通りである。
【0035】
β-actin:5'-CACTATTGGCAACGAGCGGTTC-3'(forward)(配列番号1)
5'-ACTTGCGGTGCACGATGGAG-3' (reverse)(配列番号2)
Hsp70:5'-TGGTGCTGACGAAGATGAAG-3'(forward)(配列番号3)
5'-AGGTCGAAGATGAGCACGTT-3'(reverse)(配列番号4)
Hsp40:5'-CTCCAGTCACCCATGACCTT-3'(forward)(配列番号5)
5'-TGCTCTTTCCATCAGGGTTC-3'(reverse)(配列番号6)
Hsp90β:5'-GCGGCAAAGACAAGAAAAAG-3'(forward)(配列番号7)
5'-GAAGTGGTCCTCCCAGTCAT-3'(reverse)(配列番号8)
Hsp90α: 5'-AAAGGCAGAGGCTGACAAGA-3'(forward)(配列番号9)
5'-AGGGGAGGCATTTCTTCAGT-3'(reverse)(配列番号10)
【0036】
発現解析には、比較Ct法(ΔΔCt法)を用い、測定したい目的の遺伝子とハウスキーピング遺伝子であるβ−アクチンのCt値の差(ΔCt)を比較して、相対定量した。
【0037】
(結果)脳組織の結果を表2に示し、肝臓組織の結果を表3に示した。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
ケール摂取群の脳および肝臓組織ではHsp70、Hsp40、Hsp90β、Hsp90αのmRNAが高発現していることが定量的リアルタイムPCRによって示された。
【0041】
実施例3(ウエスタンブロッティング)
(サンプル)
実施例1と同じ脳の組織サンプルを用いた。
(ウエスタンブロッティング)
脳組織のサンプル(コントロール群、ケール摂取群、共にn=6)にRIPA lysis buffer(Santa Cruz Biotechnology社製)を加え、ホモジネート後、遠心分離(12,000rpm,10min,4℃)し、得られた上清をタンパク質画分として回収した。15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動後、PVDFメンブレン(Clear Blot Membrane-P,ATTO社製)にタンパク質を転写した。一次抗体に抗Hsp70抗体(1:1,000,Enzo Life Sciences社製)、抗HSF1抗体(1:1,000,Enzo Life Sciences社製)、およびβ−actin抗体(1:1,000,Enzo Life Sciences社製)を用い、二次抗体にはHRP標識抗ウサギIgG抗体(1:5,000,Anaspec社製)を用いた。β−アクチンは内部標準として用いた。検出はWestern Blotting Substrate(Thermo scientific社製)を用いた化学発光法にて化学発光撮影装置(AE-9300 Ez-Capture)により行なった。結果を
図1に示す。
図1のAは、各群のサンプル(n=6)の中から、代表例として選択した3サンプルのウエスタンブロッティングの結果を示す図であり、
図1のBおよびCは、n=6の平均値に基づいた各群のタンパク質発現量を示すグラフであり、ケール摂取群のタンパク質発現量は、コントロール群のタンパク質発現量を1とした相対値で示されている。なお、
図1のBおよびCにおいては、各サンプルのHspおよびHSF1のタンパク質発現量の実測値をβ−アクチンタンパク質の発現量の実測値で除した値を補正値とし、当該補正値を用いて各群のタンパク質発現量の平均値を算出した。
【0042】
(結果)
図1に示すように、ケール又はその加工物を摂取することにより、Hspタンパク質及びHSF1タンパク質の両者の発現が促進することがわかる。