特許第6183804号(P6183804)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6183804-吸収性物品 図000003
  • 特許6183804-吸収性物品 図000004
  • 特許6183804-吸収性物品 図000005
  • 特許6183804-吸収性物品 図000006
  • 特許6183804-吸収性物品 図000007
  • 特許6183804-吸収性物品 図000008
  • 特許6183804-吸収性物品 図000009
  • 特許6183804-吸収性物品 図000010
  • 特許6183804-吸収性物品 図000011
  • 特許6183804-吸収性物品 図000012
  • 特許6183804-吸収性物品 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183804
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20170814BHJP
   A61F 13/47 20060101ALI20170814BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   A61F13/49 100
   A61F13/47 300
   A61F13/533
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-249742(P2013-249742)
(22)【出願日】2013年12月3日
(65)【公開番号】特開2015-104645(P2015-104645A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101292
【弁理士】
【氏名又は名称】松嶋 善之
(72)【発明者】
【氏名】相良 早苗
【審査官】 北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−521481(JP,A)
【文献】 特開2003−265511(JP,A)
【文献】 特開2005−021394(JP,A)
【文献】 特開2012−152482(JP,A)
【文献】 特許第5171643(JP,B2)
【文献】 特開2012−157504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌対向面を形成する表面シート、非肌対向面を形成する裏面シート及びこれら両シート間に位置する吸収体を具備し、着用者の腹側に配される腹側部及び背側に配される背側部とそれらの間に位置する股下部とを有すると共に、該腹側部から該股下部を介して該背側部に延びる縦方向とこれに直交する横方向とを有する吸収性物品であって、
前記吸収体の肌対向面又は非肌対向面に、該吸収体を厚み方向に圧縮することにより形成された複数の凹部が平面視線状に配列されてなる、凹部列が形成されており、該凹部列は、該吸収体の排泄ポイント域を縦方向に二分する排泄ポイント域縦中心線よりも該吸収体の前記腹側部側の縦方向前端側に位置する、前側凹部列と、該排泄ポイント域縦中心線よりも該吸収体の前記背側部側の縦方向後端側に位置する、後側凹部列とを有し、
前記前側凹部列は、複数の前記凹部が前記排泄ポイント域縦中心線の近傍から前記吸収体の縦方向前端側且つ横方向外方に向かって延びる平面視線状に配列されてなる、一対の前側斜行凹部列を有し、一対の該前側斜行凹部列の一方と他方とは直接繋がっておらず横方向に所定の間隔を置いて配され、その間隔は、該排泄ポイント域縦中心線側の端部間において最小であり、
前記後側凹部列は、複数の前記凹部が前記排泄ポイント域縦中心線の近傍から前記吸収体の縦方向後端側且つ横方向外方に向かって延びる平面視線状に配列されてなる、一対の後側斜行凹部列を有し、一対の該後側斜行凹部列の一方と他方とは直接繋がっておらず横方向に所定の間隔を置いて配され、その間隔は、該排泄ポイント域縦中心線側の端部間において最小であり、
前記前側斜行凹部列の横方向に対する傾斜角度は、前記後側斜行凹部列の横方向に対する傾斜角度に比して小さい吸収性物品。
【請求項2】
前記前側凹部列は、複数の前記凹部が前記排泄ポイント域縦中心線の近傍にて横方向に延びる平面視線状に配列されてなる、前側横方向凹部列を有し、該前側横方向凹部列と一対の前記前側斜行凹部列とが繋がっており、
前記後側凹部列は、複数の前記凹部が前記排泄ポイント域縦中心線の近傍にて横方向に延びる平面視線状に配列されてなる、後側横方向凹部列を有し、該後側横方向凹部列と一対の前記後側斜行凹部列とが繋がっている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記凹部列は、複数の前記凹部が前記排泄ポイント域縦中心線に一致して配列されてなる、排泄ポイント域縦中心凹部列を有し、該排泄ポイント域縦中心凹部列と一対の前記前側斜行凹部列及び一対の前記後側斜行凹部列とが繋がっている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記前側斜行凹部列の縦方向長さは、前記後側斜行凹部列の縦方向長さに比して短い請求項1〜3の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
一対の前記前側斜行凹部列の一方と他方との前記排泄ポイント域縦中心線側の端部での間隔は、一対の前記後側斜行凹部列の一方と他方との該排泄ポイント域縦中心線側の端部での間隔に比して短い請求項1〜4の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記前側凹部列は前記前側斜行凹部列を二対以上有しているか、又は前記後側凹部列は前記後側斜行凹部列を二対以上有している請求項1〜5の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
一対の前記前側斜行凹部列及び一対の前記後側斜行凹部列は、それぞれ、前記吸収体を横方向に二分する吸収体横中心線を挟んで左右対称に形成されている請求項1〜6の何れか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記凹部列を構成する複数の凹部は、それぞれ、平面視において一方向に長い形状を有し且つ該凹部の長手方向と該凹部列の延びる方向とが交差するように配され、且つ
複数の前記凹部は、それぞれ、該凹部をその幅方向に二分する凹部幅中心線の延長線が前記排泄ポイント域縦中心線の横方向中央部と交わるように配され、且つ複数の前記凹部は、前記吸収体を横方向に二分する吸収体横中心線を挟んで左右対称に形成されている請求項1〜7の何れか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨ておむつ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品として、肌対向面を形成する表面シート、非肌対向面を形成する裏面シート及びこれら両シート間に位置する吸収体を具備し、着用者の腹側に配される腹側部及び背側に配される背側部とそれらの間に位置する股下部とを有すると共に、該腹側部から該股下部を介して該背側部に延びる縦方向とこれに直交する横方向とを有するものが知られている。また、尿等の体液の誘導・拡散あるいは剛性の向上等の目的で、吸収体あるいは表面シート及び吸収体の両方に対し、それらの肌対向面側からエンボス加工を施して凹部を形成する技術が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、吸収体の肌対向面(表面シートとの対向面)側に、表面シートの肌対向面側からエンボス加工を施してエンボス凹部を形成することが記載されている。特許文献1記載のエンボス凹部は、股下部の両側に、縦方向に沿って延在すると共に縦方向中央部が横方向中央側に膨出する弧状部分を有している。この弧状部分の頂部(エンボス凹部の縦方向中央部)は、吸収性物品の縦方向中央部に略一致し、排泄ポイント域(着用者の排泄部と対向する設計上の領域)とは一致していない。特許文献1記載の吸収性物品によれば、斯かるエンボス凹部の作用により、吸収性物品の横方向中央の肌対向面を両脇よりも隆起させ、着用者の股間や臀裂に対するフィット性を高めることができるとされている。
【0004】
また特許文献2には、吸収体を圧縮して該吸収体に平面視線状の折曲部を設けることが記載されている。この折曲部は、吸収体を縦方向に二分する縦中心線と一致する部分(第3折曲部)と、該吸収体を横方向に二分する横中心線と該縦中心線とが交わる該吸収体の中央部から縦方向前側及び後側それぞれに向かって延びる、平面視略V字状の2つの部分(第1折曲部及び第2折曲部)とを有している。
【0005】
また特許文献3には、吸収体に、互いに離間対向して縦方向へ連続的に延びる条溝を形成することが記載されている。この条溝は、吸収体を厚み方向へ圧縮することにより形成されたもので、股下部に位置する該吸収体の縦方向中央部にて縦方向へ所与寸法分断され、該条溝の縦方向両端部が該吸収体の縦方向に沿う両側縁近傍に位置している。特許文献3記載の条溝における縦方向の分断位置は、吸収性物品の縦方向中央部に略一致し、排泄ポイント域とは一致していない。特許文献3記載の吸収性物品によれば、斯かる条溝の作用により、吸収体の形態保持性に優れ、排泄物を該条溝において吸収体の縦方向へ素早く拡散させることができ、吸収体の排泄物吸収速度を向上させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−20195号公報
【特許文献2】特開2004−141634号公報
【特許文献3】特開2001−340383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
吸収性物品の股下部における吸収体に、エンボス加工により平面視線状の凹部の凹部を形成することにより、該吸収性物品の着用時において該吸収体が該凹部で屈曲しやすくなり、該吸収性物品のフィット性が向上する。斯かる技術は、特許文献1〜3記載の吸収性物品に利用されており、これにより、特許文献1〜3記載の吸収性物品は従来品に比してフィット性が改善されているが、凹部の形成位置等に問題があり、まだ改善の余地がある。
【0008】
従って、本発明は、着用時に足繰りに沿って変形しやすく、着用者の股間部に対して柔軟にフィットし得る吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、肌対向面を形成する表面シート、非肌対向面を形成する裏面シート及びこれら両シート間に位置する吸収体を具備し、着用者の腹側に配される腹側部及び背側に配される背側部とそれらの間に位置する股下部とを有すると共に、該腹側部から該股下部を介して該背側部に延びる縦方向とこれに直交する横方向とを有する吸収性物品であって、前記吸収体の肌対向面又は非肌対向面に、該吸収体を厚み方向に圧縮することにより形成された複数の凹部が平面視線状に配列されてなる、凹部列が形成されており、該凹部列は、該吸収体の排泄ポイント域を縦方向に二分する排泄ポイント域縦中心線よりも該吸収体の前記腹側部側の縦方向前端側に位置する、前側凹部列と、該排泄ポイント域縦中心線よりも該吸収体の前記背側部側の縦方向後端側に位置する、後側凹部列とを有し、前記前側凹部列は、複数の前記凹部が前記排泄ポイント域縦中心線の近傍から前記吸収体の縦方向前端側且つ横方向外方に向かって延びる平面視線状に配列されてなる、一対の前側斜行凹部列を有し、一対の該前側斜行凹部列の一方と他方とは直接繋がっておらず横方向に所定の間隔を置いて配され、その間隔は、該排泄ポイント域縦中心線側の端部間において最小であり、前記後側凹部列は、複数の前記凹部が前記排泄ポイント域縦中心線の近傍から前記吸収体の縦方向後端側且つ横方向外方に向かって延びる平面視線状に配列されてなる、一対の後側斜行凹部列を有し、一対の該後側斜行凹部列の一方と他方とは直接繋がっておらず横方向に所定の間隔を置いて配され、その間隔は、該排泄ポイント域縦中心線側の端部間において最小であり、前記前側斜行凹部列の横方向に対する傾斜角度は、前記後側斜行凹部列の横方向に対する傾斜角度に比して小さい吸収性物品を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、着用時に足繰りに沿って変形しやすく、着用者の股間部に対して柔軟にフィットし得る吸収性物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の吸収性物品の一実施形態としての使い捨ておむつを各部の弾性部材を伸張させて平面状に拡げた展開状態を模式的に示す表面シート側(肌対向面側)の一部破断平面図である。
図2図2は、図1のI−I線(物品縦中心線)断面の模式的な断面図である。
図3図3は、図1に示すおむつにおける吸収体の肌対向面側を模式的に示す平面図である。
図4図4は、本発明に係る吸収体の他の実施形態の肌対向面の模式的な平面図(図3相当図)である。
図5図5は、本発明に係る吸収体の更に他の実施形態の肌対向面の模式的な平面図(図3相当図)である。
図6図6は、本発明に係る吸収体の更に他の実施形態の肌対向面の模式的な平面図(図3相当図)である。
図7図7は、本発明に係る吸収体の更に他の実施形態の肌対向面の模式的な平面図(図3相当図)である。
図8図8は、本発明に係る吸収体の更に他の実施形態の肌対向面の模式的な平面図(図3相当図)である。
図9図9は、本発明に係る吸収体の更に他の実施形態の肌対向面の模式的な平面図(図3相当図)である。
図10図10(a)は、本発明に係る吸収体の更に他の実施形態の肌対向面の模式的な平面図(図3相当図)、図10(b)は、図10(a)に示す凹部列の模式的な拡大平面図である。
図11図11は、比較例3で用いた吸収体(本発明の範囲外の吸収体)の肌対向面の模式的な平面図(図3相当図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の吸収性物品について、その好ましい一実施形態である使い捨ておむつに基づき図面を参照しながら説明する。本実施形態のおむつ1は、いわゆる展開型の使い捨ておむつであり、図1及び図2に示すように、肌対向面を形成する液透過性の表面シート2、非肌対向面を形成する液不透過性若しくは液難透過性又は撥水性の裏面シート3、及び両シート2,3間に配置された液保持性の吸収体4を具備している。肌対向面は、おむつ1及びその構成部材(例えば吸収体4)における、着用状態において着用者の肌側に向けられる面(相対的に着用者の肌に近い側)であり、非肌対向面は、おむつ1及びその構成部材における、着用状態において着用者の肌側とは反対側に向けられる面(相対的に着用者の肌から遠い側)である。
【0013】
おむつ1は、図1に示すように、着用状態において着用者の腹側に配される腹側部F、背側に配される背側部R、及びそれらの間に位置して着用者股間部に配される股下部Mを有していると共に、縦方向Xとこれに直交する横方向Yとを有している。おむつ1の縦方向Xは、腹側部Fと背側部Rとの間を股下部Mを介して延びる方向である。腹側部F、股下部M及び背側部Rは、おむつ1を縦方向Xに3等分した場合の各領域に相当する。おむつ1は、股下部Mの縦方向Xに沿う両側縁が内向きの円弧状に湾曲しており、図1に示す如き平面視において、縦方向Xの中央部が内方に括れた砂時計状を有している。
【0014】
おむつ1は、図1に示すように、排泄ポイント域Pを有している。排泄ポイント域Pは、おむつ1の着用時に着用者の排泄部(排尿部)に対向配置される設計上の領域であり、おむつ1を縦方向Xに二分する仮想的な物品縦中心線1Lxよりも腹側部F側に偏倚した位置にある。排泄ポイント域Pは、おむつ1の縦方向前端1fからおむつ1の縦方向Xの全長の35%に相当する距離離間した位置(図1中符号P1で示す位置)と、縦方向前端1fからおむつ1の縦方向Xの全長の45%に相当する距離離間した位置(図1中符号P2で示す位置)とに挟まれた領域である。本実施形態においては、排泄ポイント域Pは、前方部Fと股下部Mとに跨って存している。
【0015】
表面シート2及び裏面シート3は、それぞれ、吸収体4よりも大きな寸法を有し、吸収体4の周縁から外方に延出している。吸収体4は、おむつ1の縦方向Xと同方向に長い略矩形形状を有し、その長手方向を、展開且つ伸長状態におけるおむつ1の縦方向Xに一致させて、両シート2,3間の中央部に接着剤により接合されている。表面シート2及び裏面シート3としては、当該技術分野において従来公知のものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート2としては各種の不織布や開孔フィルム等を用いることができ、裏面シート3としては樹脂フィルムや、樹脂フィルムと不織布等とのラミネート等を用いることができる。
【0016】
吸収体4は、液保持性の吸収性コア40と、該吸収性コア40の肌対向面及び非肌対向面を被覆する透水性のコアラップシート41とを含んで構成されている。吸収性コア40は、図1に示すように、排泄ポイント域Pの縦方向Xに沿う両側縁が内向きの円弧状に湾曲している。コアラップシート41は、吸収性コア40の横方向Yの長さの2倍以上3倍以下の幅を有する1枚の連続したシートである。吸収性コア40の肌対向面(表面シート2との対向面)の全域を被覆し、且つ吸収性コア40の縦方向Xに沿う両側縁から横方向Yの外方に延出し、その延出部が、吸収性コア40の下方に巻き下げられて、吸収性コア40の非肌対向面の全域を被覆している。吸収性コア40とコアラップシート41との間は、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により接合されていても良い。吸収性コア40としては、例えば、木材パルプ、親水化剤により処理された合繊繊維等の親水性繊維からなる繊維集合体、又は該繊維集合体に粒子状の吸水性ポリマーを保持させたもの等を用いることができる。コアラップシート41としては、紙、親水化処理が施された繊維からなる親水性不織布等を用いることができる。
【0017】
着用者の脚周りに配される左右のレッグ部における表面シート2と裏面シート3との間には、糸状の弾性部材31が縦方向Xに沿って伸長状態で固定されており、これにより、おむつ1の着用時におけるレッグ部には、弾性部材31の収縮により一対のレッグギャザーが形成される。また、おむつ1の表面シート2側における縦方向Xに沿う左右両側には、それぞれサイドシート33が配されている。サイドシート33の内側縁部には、糸状の弾性部材32が縦方向Xに沿って伸長状態で固定されており、これにより、おむつ1の着用時には弾性部材32の収縮により少なくとも股下部Mに立体ギャザーが形成される。表面シート2、裏面シート3、吸収体4、各弾性部材31,32及びサイドシート33は、ホットメルト型接着剤等の公知の接合手段により互いに接合されている。
【0018】
図1に示すように、おむつ1の背側部Rの縦方向Xに沿う両側縁部には、一対のファスニングテープ35,35が設けられている。ファスニングテープ35には、機械的面ファスナーのオス部材からなる図示しない止着部が取り付けられている。また、おむつ1の腹側部Fの非肌対向面(裏面シート3の非肌対向面)には、機械的面ファスナーのメス部材からなる被止着領域36が形成されている。被止着領域36は、裏面シート3の非肌対向面に、機械的面ファスナーのメス部材を公知の接合手段(例えば、接着剤やヒートシール等)で接合固定して形成されており、ファスニングテープ35の前記止着部を着脱自在に止着可能になされている。
【0019】
本実施形態のおむつ1の主たる特徴の1つとして、図1に示すように、吸収体4の肌対向面又は非肌対向面に、該吸収体4を厚み方向に圧縮することにより形成された複数の凹部が平面視線状に配列されてなる、凹部列45が形成されている点が挙げられる。ここで、「線状」とは、凹部列の形状が平面視において直線に限られず、曲線を含み、各線は、連続線でも破線でも良い。ここでいう「連続線」は、複数の凹部が間隔を置かずに連なって配置されて、全体として溝状に形成されたものであり、「破線」は、複数の凹部が間欠的に配置されて、全体として平面視破線状に形成されたものである。吸収体4の柔軟な変形の点から、凹部列45は平面視において破線が好ましい。破線の凹部列は、図10に示す凹部列45sの如き比較的小さいエンボス凹部が、該凹部の延びる方向に複数連なって形成される。凹部列45は、吸収体4の排泄ポイント域Pを縦方向Xに二分する排泄ポイント域縦中心線PLよりも吸収体4の腹側部F側の縦方向前端4f側に位置する、前側凹部列5と、排泄ポイント域縦中心線PLよりも吸収体4の背側部R側の縦方向後端4r側に位置する、後側凹部列6とを有している。
【0020】
凹部列45(前側凹部列5、後側凹部列6)は、吸収体4(吸収性コア40及びコアラップシート41)のみに形成されており、表面シート2及び裏面シート3には形成されていない。凹部列45(凹部列45を構成する凹部)は、熱を伴うか又は伴わないエンボス、あるいは超音波エンボス等のエンボス加工により常法に従って形成することができる。凹部列45が熱を伴うエンボス加工により形成された場合、該凹部列45においては、コアラップシート41及び吸収性コア40が熱融着等により一体化する。
【0021】
本実施形態における凹部列45は、図1に示すように、複数のエンボス凹部が間欠的に配列されて平面視線状(破線状)に形成されているところ、該凹部列45を構成する凹部の数は、好ましくは3個以上、更に好ましくは5個以上、そして、好ましくは30個以下、更に好ましくは10個以下、より具体的には、好ましくは3個以上30個以下、更に好ましくは5個以上10個以下である。
【0022】
平面視破線状の凹部列45における隣り合う凹部間は、エンボス加工が施されていない非エンボスの平坦部か、又は、該凹部(深凹陥部)よりも深さ(凹陥深さ)の浅い凹部(浅凹陥部)からなる。後者の場合における凹部列45の具体例として、吸収体における凹陥していない表面(肌対向面又は非肌対向面)からの凹陥深さが相対的に深い深凹陥部と、該凹陥深さが相対的に浅い浅凹陥部とが一方向に連なって形成されている形態が挙げられる。深凹陥部は、その形成時におけるエンボス加工において、浅凹陥部の形成時よりも高圧で圧搾された部分であり、浅凹陥部よりも高密度である。斯かる形態において、吸収体4の柔軟性や折り曲げ性の点から、浅凹陥部の凹陥深さは、深凹陥部の凹陥深さの20%以下が好ましい。また、同様の観点から、平面視破線状の凹部列45において、該凹部列45の長さ方向(延びる方向)に隣り合う凹部間の間隔(平坦部又は浅凹陥部の長さ)X2は、該凹部列45を構成する各凹部(深凹陥部)の該長さ方向の長さX1よりも短いことが好ましく、より具体的には、凹部長さX1に対する凹部間隔X2の割合〔=(X2/X1)×100〕が80%以下、特に50%以下が好ましい。
【0023】
図3には吸収体4の肌対向面(表面シート2との対向面)が拡大して示されている。前側凹部列5は、複数の凹部(深凹陥部)が排泄ポイント域縦中心線PLの近傍から吸収体4の縦方向前端4f側且つ横方向Yの外方に向かって延びる平面視線状に配列されてなる、一対の前側斜行凹部列51,51を有している。一対の前側斜行凹部列51,51の一方と他方とは直接繋がっておらず横方向Yに所定の間隔L1を置いて配され、その間隔L1は、排泄ポイント域縦中心線PL側の端部間において最小となっている。本実施形態においては、一対の前側斜行凹部列51,51は、それぞれ、図3に示す如き平面視において直線状(破線状)であり、且つ吸収体4を横方向Yに二分する吸収体横中心線4Lyを挟んで左右対称に形成されている。前側凹部列5における間隔L1は、縦方向Xの外方に向かうに従って(排泄ポイント域縦中心線PL側から吸収体4の縦方向前端4fに向かうに従って)漸次増加している。
【0024】
また、後側凹部列6は、図3に示すように、複数の凹部(深凹陥部)が排泄ポイント域縦中心線PLの近傍から吸収体4の縦方向後端4r側且つ横方向Yの外方に向かって延びる平面視線状に配列されてなる、一対の後側斜行凹部列61,61を有している。一対の後側斜行凹部列61,61の一方と他方とは直接繋がっておらず横方向Yに所定の間隔L2を置いて配され、その間隔L2は、排泄ポイント域縦中心線PL側の端部間において最小となっている。本実施形態においては、一対の後側斜行凹部列61,61は、それぞれ、図3に示す如き平面視において直線状(破線状)であり、且つ吸収体横中心線4Lyを挟んで左右対称に形成されている。後側凹部列6における間隔L2は、縦方向Xの外方に向かうに従って(排泄ポイント域縦中心線PL側から吸収体4の縦方向後端4rに向かうに従って)漸次増加している。
【0025】
このように、吸収体4を厚み方向に圧縮することにより形成された複数のエンボス凹部からなる、凹部列45が、排泄ポイント域縦中心線PLを基準として、縦方向Xの前側に位置する前側凹部列5と縦方向Xの後側に位置する後側凹部列6とを有し、且つ前側凹部列5を構成する一対の前側斜行凹部列51,51の間隔L1及び後側凹部列6を構成する一対の後側斜行凹部列61,61の間隔L2が、それぞれ、排泄ポイント域縦中心線PLに近い側が遠い側に比して短い部分を有していることにより、おむつ1の着用時において、吸収体4が着用者の動きに対応して足繰りに沿って変形しやすく、おむつ1が着用者の股間部に対して柔軟にフィットするようになる。
【0026】
凹部列45(前側凹部列5、後側凹部列6)が形成されるのは吸収体4の肌対向面でも非肌対向面でも良いが、凹部列45が吸収体4の非肌対向面に形成されている、即ち、凹部列45が吸収体4の非肌対向面側からのエンボス加工により形成されたものであると、おむつ1の着用時において、吸収体4が、該吸収体4を肌対向面側から見たときに該凹部列45で谷折りとなるように屈曲変形しやすくなるので、おむつ1が着用者の股間部に対してより柔軟にフィットするようになる。
【0027】
凹部列45を構成する複数の凹部(深凹陥部)それぞれの幅(該凹部の、凹部列45の長さ方向と直交する方向の長さ)は、好ましくは30mm以上、更に好ましくは50mm以上、そして、好ましくは130mm以下、更に好ましくは100mm以下、より具体的には、好ましくは30mm以上130mm以下、更に好ましくは50mm以上100mm以下である。
凹部列45を構成する複数の凹部(深凹陥部)それぞれの深さは、吸収体4の無荷重下における厚みに対して、好ましくは10%以上、更に好ましくは15%以上、そして、好ましくは50%以下、更に好ましくは40%以下、より具体的には、好ましくは 10%以上50%以下、更に好ましくは15%以上40%以下である。
【0028】
凹部列45を構成する個々の凹部の幅及び深さは、肉眼で定規等を使って測定しても良いが、凹部の深さに関しては、次の方法により測定することが好ましい。即ち、吸収体における凹陥していない部分(非凹陥部)及び測定対象の凹部を全て含むように、且つ深さ方向の断面が観察できるように、鋭利なカッター等で該吸収体から試験片を切断し、サンプリングする。そして、その試験片について、光学顕微鏡VHX−1000(キーエンス社製)を用いて、吸収体における非凹陥部の厚みに対して、凹部深さを測定することにより、非凹陥部分に対する凹部の深さの割合を算出することができる。尚、凹部の幅及び深さは、任意の10箇所についての測定値の平均値とする。
【0029】
そして、本実施形態においては、前側斜行凹部列51の横方向Yに対する傾斜角度α(図3参照)は、後側斜行凹部列61の横方向Yに対する傾斜角度β(図3参照)に比して小さくなっている。通常、おむつ着用者は、腹側(前側)の方が背側(後側)に比して股間幅が狭く、足の動きが大きい(足の稼働範囲が広い)ところ、このように、前側斜行凹部列51の傾斜角度α<後側斜行凹部列61の傾斜角度β、という関係が成立していることにより、前側の足繰りのフィット性(屈曲性)が向上し、結果として、おむつ1が着用者の股間部に対して柔軟にフィットするようになる。
【0030】
前述した作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、傾斜角度αと傾斜角度βとの差(β−α)は、好ましくは5°以上、更に好ましくは10°以上、そして、好ましくは60°以下、更に好ましくは50°以下、より具体的には、好ましくは5°以上60°以下、更に好ましくは10°以上50°以下である。
前側斜行凹部列51の傾斜角度αは、好ましくは20°以上、更に好ましくは30°以上、そして、好ましくは80°以下、更に好ましくは70°以下、より具体的には、好ましくは20°以上80°以下、更に好ましくは30°以上70°以下である。
後側斜行凹部列61の傾斜角度βは、好ましくは30°以上、更に好ましくは45°以上、そして、好ましくは85°以下、更に好ましくは80°以下、より具体的には、好ましくは30°以上85°以下、更に好ましくは45°以上80°以下である。
【0031】
本実施形態においては、図3に示すように、前側凹部列5は、複数の凹部(深凹陥部)が排泄ポイント域P内において排泄ポイント域縦中心線PLの近傍にて横方向Yに延びる平面視線状に配列されてなる、前側横方向凹部列50を有し、該前側横方向凹部列50と一対の前側斜行凹部列51,51とが繋がっている。前側横方向凹部列50は平面視直線状(破線状)であり、その長さ方向を横方向Yに一致させて、吸収体4の横方向Yの中央部に配されている。前側横方向凹部列50と一対の前側斜行凹部列51,51とは、それらの長さ方向の両端部で繋がっている。一対の前側斜行凹部列51,51どうしは、直接は繋がっていないが、前側横方向凹部列50を介して間接的に繋がっている。
【0032】
また、後側凹部列6は、複数の凹部(深凹陥部)が排泄ポイント域P内において排泄ポイント域縦中心線PLの近傍にて横方向Yに延びる平面視線状に配列されてなる、後側横方向凹部列60を有し、該後側横方向凹部列60と一対の後側斜行凹部列61,61とが繋がっている。後側横方向凹部列60は平面視直線状(破線状)であり、その長さ方向を横方向Yに一致させて、吸収体4の横方向Yの中央部に配されている。後側横方向凹部列60と一対の後側斜行凹部列61,61とは、それらの長さ方向の両端部で繋がっている。一対の後側斜行凹部列61,61どうしは、直接は繋がっていないが、後側横方向凹部列60を介して間接的に繋がっている。前側横方向凹部列50と後側横方向凹部列60とは、横方向Yにおいて同位置にある。
【0033】
本実施形態においては、前側横方向凹部列50と後側横方向凹部列60とは横方向長さが同じである。前側横方向凹部列50の横方向長さは、一対の前側斜行凹部列51,51の一方と他方との排泄ポイント域縦中心線PL側の端部での間隔L1に一致し、後側横方向凹部列60の横方向長さは、一対の後側斜行凹部列61,61の一方と他方との排泄ポイント域縦中心線PL側の端部での間隔L2に一致するので、本実施形態においては、凹部列51,51の中心線PL側の端部での間隔L1と凹部列61,61の中心線PL側の端部での間隔L2とが同じである。前側横方向凹部列50及び後側横方向凹部列60それぞれの横方向長さ(前記間隔L1及び間隔L2)は、前述した作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、好ましくは10mm以上、更に好ましくは20mm以上、そして、好ましくは60mm以下、更に好ましくは50mm以下、より具体的には、好ましくは10mm以上60mm以下、更に好ましくは20mm以上50mm以下である。
【0034】
前側横方向凹部列50は、前述したように排泄ポイント域縦中心線PLの近傍に位置する線状凹部列であり、両者の間隔T1(図3参照)は、前述した作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、好ましく3mm以上、更に好ましくは5mm以上、そして、好ましくは20mm以下、更に好ましくは15mm以下、より具体的には、好ましくは3mm以上20mm以下、更に好ましくは5mm以上15mm以下である。後側横方向凹部列60と排泄ポイント域縦中心線PLとの間隔T2(図3参照)も、間隔T1と同様の範囲に設定することができる。また、間隔T1と間隔T2とは同じでも良く、異なっていても良い。本実施形態においては、間隔T1と間隔T2とは同じである。
【0035】
また、本実施形態においては、前側斜行凹部列51の縦方向長さH1(図3参照)は、後側斜行凹部列61の縦方向長さH2に比して短くなっている。このように、前側斜行凹部列51の縦方向長さH1<後側斜行凹部列61の縦方向長さH2、という関係が成立していることにより、前側の足繰りのフィット性(屈曲性)が向上し、結果として、おむつ1が着用者の股間部に対して柔軟にフィットするようになる。
【0036】
前述した作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、縦方向長さH1と縦方向長さH2との差(H2−H1)は、好ましくは10mm以上、更に好ましくは40mm以上、そして、好ましくは80mm以下、更に好ましくは60mm以下、より具体的には、好ましくは30mm以上80mm以下、更に好ましくは40mm以上60mm以下である。
前側斜行凹部列51の縦方向長さH1は、好ましくは20mm以上、更に好ましくは40mm以上、そして、好ましくは100mm以下、更に好ましくは70mm以下、より具体的には、好ましくは20mm以上100mm以下、更に好ましくは40mm以上70mm以下である。
後側斜行凹部列61の縦方向長さH2は、好ましくは50mm以上、更に好ましくは70mm以上、そして、好ましくは150mm以下、更に好ましくは120mm以下、より具体的には、好ましくは50mm以上150mm以下、更に好ましくは70mm以上120mm以下である。
【0037】
以下、本発明に係る吸収体の他の実施形態について図4図10を参照して説明する。後述する他の実施形態については、前記実施形態(吸収体4)と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、前記実施形態(吸収体4)の説明が適宜適用される。
【0038】
図4に示す吸収体4Aにおいては、前側凹部列5は、一対の前側斜行凹部列51a,51aと一対の前側斜行凹部列51b,51bとの計二対の前側斜行凹部列を有し、後側凹部列6は、一対の後側斜行凹部列61a,61aと一対の後側斜行凹部列61b,61bとの計二対の後側斜行凹部列を有している。前側凹部列5において、4本の前側斜行凹部列51a,51a,51b,51bは、何れも1本の前側横方向凹部列50と繋がっており、一対の凹部列51a,51aは、凹部列50の長さ方向の両端部を起点として、吸収体4Aの縦方向前端4f側且つ横方向Yの外方に向かって延びており、一対の凹部列51b,51bは、凹部列50におけるその長さ方向の両端部よりも内方に位置する部分を起点として、凹部列51a,51aと同方向に向かって延びている。凹部列51aと凹部列51bとは、横方向Yに対する傾斜角度α及び縦方向長さH1(図3参照)は互いに同じである。また、後側凹部列6において、4本の後側斜行凹部列61a,61a,61b,61bは、何れも1本の後側横方向凹部列60と繋がっており、一対の凹部列61a,61aは、凹部列60の長さ方向の両端部を起点として、吸収体4Aの縦方向後端4r側且つ横方向Yの外方に向かって延びており、一対の凹部列61b,61bは、凹部列60におけるその長さ方向の両端部よりも内方に位置する部分を起点として、凹部列61a,61aと同方向に向かって延びている。凹部列61aと凹部列61bとは、横方向Yに対する傾斜角度β及び縦方向長さH2(図3参照)は互いに同じである。吸収体4Aにおいては、吸収体4(図3参照)と同様に、凹部列45(前側凹部列5、後側凹部列6)は、吸収体横中心線4Lyを挟んで左右対称に形成されている。吸収体4Aを用いた場合でも吸収体4を用いた場合と同様の効果が奏される。
【0039】
図5に示す吸収体4Bにおいては、凹部列45(前側凹部列5、後側凹部列6)は、排泄ポイント域縦中心線PLの近傍に位置して横方向Yに延びる前側横方向凹部列50及び後側横方向凹部列60(図3参照)を有していない代わりに、排泄ポイント域縦中心線PLに一致する排泄ポイント域縦中心凹部列7を有し、該凹部列7と一対の前側斜行凹部列51,51及び一対の後側斜行凹部列61,61とが繋がっている。凹部列7と一対の凹部列51,51及び一対の凹部列61,61とは、それらの長さ方向の両端部で繋がっている。吸収体4Bを用いた場合でも吸収体4を用いた場合と同様の効果が奏される。
【0040】
図6に示す吸収体4Cにおいては、一対の前側斜行凹部列51,51の一方と他方との排泄ポイント域縦中心線PL側の端部での間隔L1が、一対の後側斜行凹部列61,61の一方と他方との該中心線PL側の端部での間隔L2に比して短くなっている。より具体的には、吸収体4Cにおいては、前記間隔L1に相当する前側横方向凹部列50の横方向長さが、前記間隔L2に相当する後側横方向凹部列60の横方向長さに比して短くなっている。このように、間隔L1(凹部列51,51の中心線PL側の端部での間隔)<間隔L2(凹部列61,61の中心線PL側の端部での間隔)という関係が成立している場合において、間隔L1と間隔L2との比(L1/L2)は、好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.3以上、そして、好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.8以下、より具体的には、好ましくは0.1以上0.9以下、更に好ましくは0.3以上0.8以下である。吸収体4Cを用いた場合でも吸収体4を用いた場合と同様の効果が奏される。
【0041】
図7に示す吸収体4Dにおいては、凹部列45(前側凹部列5、後側凹部列6)は、排泄ポイント域縦中心線PLの近傍に位置して横方向Yに延びる前側横方向凹部列50及び後側横方向凹部列60(図3参照)を有していない。吸収体4Dを用いた場合でも吸収体4を用いた場合と同様の効果が奏される。
【0042】
図8に示す吸収体4Eにおいては、一対の前側斜行凹部列51,51は、それぞれ、平面視において内側(吸収体横中心線4Ly側)に凸の湾曲部を排泄ポイント域Pに有しており、また、一対の後側斜行凹部列61,61も、それぞれ、平面視において内側(吸収体横中心線4Ly側)に凸の湾曲部を排泄ポイント域Pに有している。このように湾曲している凹部列51,61の横方向Yに対する傾斜角度α,βは、該凹部列51,61の長さ方向の両端部を結ぶ直線と横方向Yに平行な直線とのなす角度として求められる。吸収体4Eを用いた場合でも吸収体4を用いた場合と同様の効果が奏される。
【0043】
図9に示す吸収体4Fにおいては、一対の前側斜行凹部列51,51は、それぞれ、排泄ポイント域縦中心線PLの近傍から吸収体4の縦方向前端4f側且つ横方向Yの外方に向かって延びる斜行部分51sと、該斜行部分51sの縦方向前端4f寄り(中心線PLから相対的に遠い側)の長さ方向端部から縦方向Xに延びる直線部分51tとを有している。また、一対の後側斜行凹部列61,61も、それぞれ、排泄ポイント域縦中心線PLの近傍から吸収体4の縦方向後端4r側且つ横方向Yの外方に向かって延びる斜行部分61sと、該斜行部分61sの縦方向後端4r寄り(中心線PLから相対的に遠い側)の長さ方向端部から縦方向Xに延びる直線部分61tとを有している。即ち、吸収体4Fにおける凹部列45は、少なくとも排泄ポイント域P内の中心線PL近傍では、内側(吸収体横中心線4Ly側)に膨出する部分を有し、それ以外の部分(排泄ポイント域Pよりも縦方向Xの外方部分又は排泄ポイント域Pにおける縦方向Xの外方寄り部分)では、縦方向Xに沿って延在している。また、吸収体4Fにおいては、凹部列45(前側凹部列5、後側凹部列6)は、排泄ポイント域縦中心線PLの近傍に位置して横方向Yに延びる前側横方向凹部列50及び後側横方向凹部列60(図3参照)を有していない。吸収体4Fを用いた場合でも吸収体4を用いた場合と同様の効果が奏される。
【0044】
図10に示す吸収体4Gにおいては、凹部列45(前側凹部列5、後側凹部列6)を構成する複数の凹部45sは、それぞれ、図10に示す如き平面視において一方向に長い形状(矩形形状)を有し、且つ凹部45sの長手方向と凹部列45の延びる方向とが交差するように配されている。複数の凹部45sの形状及び大きさは互いに同一である。凹部45sの長手方向は、複数の凹部45sによって構成される凹部列45の延びる方向に対して直交せずに交差している。凹部列45の延びる方向は、複数の凹部45sが線状に配列された方向であるところ、ここでいう「線状に」とは、個々の凹部45sの長手方向及び短手方向(該長手方向と直交する方向)それぞれの2等分線の交点を該凹部45sの中心点として、凹部列45を構成する複数の凹部45sの該中心点を結んだ線が直線状であることを意味し、この「直線」には、複数の該中心点を結んだ線が直線である場合のみならず、該直線から2mm以内の領域を通る曲線等の「略直線」である場合も含まれる。
【0045】
そして、吸収体4Gにおいては、複数の凹部45sは、それぞれ、該凹部45sをその幅方向Y1に二分する凹部幅中心線45syの延長線(凹部45sの長手方向X1に沿って延びる直線)が排泄ポイント域縦中心線PLの横方向Yの中央部(中心線PLの横方向Yの中心及びその近傍)と交わるように配されている。複数の凹部45sは、吸収体横中心線4Lyを挟んで左右対称に形成されている。凹部列45がこのように構成されていると、吸収体4Gの足繰りに沿った変形が一層起こり易くなり、おむつが着用者の股間部に対してより柔軟にフィットするようになる。
【0046】
以上、本発明について説明したが、本発明は、前述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。例えば、凹部列45(前側凹部列5、後側凹部列6)を構成する凹部(エンボス凹部)の平面視形状は特に制限されず、円形状の如き、平面視で方向性のない形状でも良く、矩形形状の如き、平面視で方向性のある形状でも良い。後者の場合は、前述した吸収体4Gの凹部列45sのように配置することが好ましい。また、前記実施形態では、コアラップシートは1枚であったが、吸収性コアの肌対向面を被覆する1枚と非肌対向面を被覆する他の1枚との計2枚であっても良い。また、本発明の吸収性物品は、展開型の使い捨ておむつに制限されず、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含し、パンツ型の使い捨ておむつ、生理用ナプキン、生理用ショーツ等も包含される。前述した一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0047】
<1>
肌対向面を形成する表面シート、非肌対向面を形成する裏面シート及びこれら両シート間に位置する吸収体を具備し、着用者の腹側に配される腹側部及び背側に配される背側部とそれらの間に位置する股下部とを有すると共に、該腹側部から該股下部を介して該背側部に延びる縦方向とこれに直交する横方向とを有する吸収性物品であって、
前記吸収体の肌対向面又は非肌対向面に、該吸収体を厚み方向に圧縮することにより形成された複数の凹部が平面視線状に配列されてなる、凹部列が形成されており、該凹部列は、該吸収体の排泄ポイント域を縦方向に二分する排泄ポイント域縦中心線よりも該吸収体の前記腹側部側の縦方向前端側に位置する、前側凹部列と、該排泄ポイント域縦中心線よりも該吸収体の前記背側部側の縦方向後端側に位置する、後側凹部列とを有し、
前記前側凹部列は、複数の前記凹部が前記排泄ポイント域縦中心線の近傍から前記吸収体の縦方向前端側且つ横方向外方に向かって延びる平面視線状に配列されてなる、一対の前側斜行凹部列を有し、一対の該前側斜行凹部列の一方と他方とは直接繋がっておらず横方向に所定の間隔を置いて配され、その間隔は、該排泄ポイント域縦中心線側の端部間において最小であり、
前記後側凹部列は、複数の前記凹部が前記排泄ポイント域縦中心線の近傍から前記吸収体の縦方向後端側且つ横方向外方に向かって延びる平面視線状に配列されてなる、一対の後側斜行凹部列を有し、一対の該後側斜行凹部列の一方と他方とは直接繋がっておらず横方向に所定の間隔を置いて配され、その間隔は、該排泄ポイント域縦中心線側の端部間において最小であり、
前記前側斜行凹部列の横方向に対する傾斜角度は、前記後側斜行凹部列の横方向に対する傾斜角度に比して小さい吸収性物品。
【0048】
<2>
前記前側凹部列は、複数の前記凹部が前記排泄ポイント域縦中心線の近傍にて横方向に延びる平面視線状に配列されてなる、前側横方向凹部列を有し、該前側横方向凹部列と一対の前記前側斜行凹部列とが繋がっており、
前記後側凹部列は、複数の前記凹部が前記排泄ポイント域縦中心線の近傍にて横方向に延びる平面視線状に配列されてなる、後側横方向凹部列を有し、該後側横方向凹部列と一対の前記後側斜行凹部列とが繋がっている前記<1>記載の吸収性物品。
<3>
前記前側横方向凹部列の横方向長さは、一対の前記前側斜行凹部列の一方と他方との前記排泄ポイント域縦中心線側の端部での間隔L1に一致し、また、前記後側横方向凹部列の横方向長さは、一対の前記後側斜行凹部列の一方と他方との該排泄ポイント域縦中心線側の端部での間隔L2に一致し、
前記間隔L1と前記間隔L2とは同じであり、且つそれぞれ好ましくは10mm以上、更に好ましくは20mm以上、そして、好ましくは60mm以下、更に好ましくは50mm以下、より具体的には、好ましくは10mm以上60mm以下、更に好ましくは20mm以上50mm以下である前記<2>記載の吸収性物品。
<4>
前記前側横方向凹部列の横方向長さは、一対の前記前側斜行凹部列の一方と他方との前記排泄ポイント域縦中心線側の端部での間隔L1に一致し、また、前記後側横方向凹部列の横方向長さは、一対の前記後側斜行凹部列の一方と他方との該排泄ポイント域縦中心線側の端部での間隔L2に一致し、
前記間隔L1が前記間隔L2に比して短く、且つ該間隔L1と該間隔L2との比(L1/L2)は、好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.3以上、そして、好ましくは0.9以下、更に好ましくは0.8以下、より具体的には、好ましくは0.1以上0.9以下、更に好ましくは0.3以上0.8以下である前記<2>記載の吸収性物品。
<5>
前記前側凹部列は前記前側横方向凹部列を有しておらず、前記後側凹部列は前記後側横方向凹部列を有していない前記<2>記載の吸収性物品。
【0049】
<6>
前記凹部列は、複数の前記凹部が前記排泄ポイント域縦中心線に一致して配列されてなる、排泄ポイント域縦中心凹部列を有し、該排泄ポイント域縦中心凹部列と一対の前記前側斜行凹部列及び一対の前記後側斜行凹部列とが繋がっている前記<1>記載の吸収性物品。
<7>
前記前側斜行凹部列の縦方向長さは、前記後側斜行凹部列の縦方向長さに比して短い前記<1>〜<6>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<8>
一対の前記前側斜行凹部列の一方と他方との前記排泄ポイント域縦中心線側の端部での間隔は、一対の前記後側斜行凹部列の一方と他方との該排泄ポイント域縦中心線側の端部での間隔に比して短い前記<1>〜<7>の何れか一項に記載の吸収性物品。
【0050】
<9>
前記前側凹部列は前記前側斜行凹部列を二対以上有しているか、又は前記後側凹部列は前記後側斜行凹部列を二対以上有している前記<1>〜<8>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<10>
一対の前記前側斜行凹部列及び一対の前記後側斜行凹部列は、それぞれ、前記吸収体を横方向に二分する吸収体横中心線を挟んで左右対称に形成されている前記<1>〜<9>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<11>
前記凹部列を構成する複数の凹部は、それぞれ、平面視において一方向に長い形状を有し且つ該凹部の長手方向と該凹部列の延びる方向とが交差するように配され、且つ複数の前記凹部は、それぞれ、該凹部をその幅方向に二分する凹部幅中心線の延長線が前記排泄ポイント域縦中心線の横方向中央部と交わるように配され、且つ複数の前記凹部は、前記吸収体を横方向に二分する吸収体横中心線を挟んで左右対称に形成されている前記<1>〜<10>の何れか一項に記載の吸収性物品。
【0051】
<12>
前記吸収体は、液保持性の吸収性コアと、該吸収性コアの肌対向面及び非肌対向面を被覆する透水性のコアラップシートとを含んで構成され
前記吸収性コアは、縦方向に沿う両側縁が内向きの円弧状に湾曲し、
前記コアラップシートは、前記吸収性コアの横方向の長さの2倍以上3倍以下の幅を有し、該吸収性コアの肌対向面(前記表面シートとの対向面)の全域を被覆し、且つ該吸収性コアの縦方向に沿う両側縁から横方向外方に延出し、その延出部が、該吸収性コアの下方に巻き下げられて、該吸収性コアの非肌対向面の全域を被覆している前記<1>〜<11>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<13>
前記吸収性コアは、木材パルプ、親水化剤により処理された合繊繊維等の親水性繊維からなる繊維集合体、又は、該繊維集合体に粒子状の吸水性ポリマーを保持させたものであり、前記コアラップシートは、紙、又は、親水化処理が施された繊維からなる親水性不織布である前記<12>記載の吸収性物品。
<14>
前記凹部列は、前記吸収体のみに形成されており、前記表面シート及び前記裏面シートには形成されていない前記<1>〜<13>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<15>
前記凹部は、熱を伴うか又は伴わないエンボス、あるいは超音波エンボス等のエンボス加工により形成されたものである前記<1>〜<14>の何れか一項に記載の吸収性物品。
【0052】
<16>
前記凹部列は、複数のエンボス凹部が間欠的に配置されて平面視線状(破線状)に形成されており、該凹部列を構成する凹部の数は、好ましくは3個以上、更に好ましくは5個以上、そして、好ましくは30個以下、更に好ましくは10個以下、より具体的には、好ましくは3個以上30個以下、更に好ましくは5個以上10個以下である前記<1>〜<15>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<17>
前記凹部列における隣り合う凹部間は、エンボス加工が施されていない非エンボスの平坦部か、又は、該凹部よりも深さの浅い凹部からなり、
前記凹部列の長さ方向に隣り合う凹部間の間隔は、該凹部列を構成する各凹部の該長さ方向の長さよりも短い前記<1>〜<16>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<18>
前記凹部列における隣り合う凹部間は、該凹部よりも深さの浅い凹部からなり、該浅い凹部の凹陥深さは該凹部の凹陥深さの20%以下である前記<1>〜<17>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<19>
前記凹部列においてその長さ方向に隣り合う凹部間の間隔は、該凹部列を構成する各凹部の該長さ方向の長さよりも短く、該凹部の長さに対する該凹部の間隔の割合は80%以下、好ましくは50%以下である前記<1>〜<18>の何れか一項に記載の吸収性物品。
【0053】
<20>
前記凹部列は前記吸収体の非肌対向面に形成されている前記<1>〜<19>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<21>
前記凹部列を構成する複数の前記凹部それぞれの幅は、好ましくは30mm以上、更に好ましくは50mm以上、そして、好ましくは130mm以下、更に好ましくは100mm以下、より具体的には、好ましくは30mm以上130mm以下、更に好ましくは50mm以上100mm以下である前記<1>〜<20>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<22>
前記前側斜行凹部列の横方向に対する傾斜角度αと前記後側斜行凹部列の横方向に対する傾斜角度βとの差(β−α)は、好ましくは5°以上、更に好ましくは10°以上、そして、好ましくは60°以下、更に好ましくは50°以下、より具体的には、好ましくは5°以上60°以下、更に好ましくは10°以上50°以下である前記<1>〜<21>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<23>
前記前側斜行凹部列の縦方向長さH1は、前記後側斜行凹部列の縦方向長さH2に比して短くなっており、
前記縦方向長さH1と前記縦方向長さH2との差(H2−H1)は、好ましくは10mm以上、更に好ましくは40mm以上、そして、好ましくは80mm以下、更に好ましくは60mm以下、より具体的には、好ましくは30mm以上80mm以下、更に好ましくは40mm以上60mm以下であり、
前記縦方向長さH1は、好ましくは20mm以上、更に好ましくは40mm以上、そして、好ましくは100mm以下、更に好ましくは70mm以下、より具体的には、好ましくは20mm以上100mm以下、更に好ましくは40mm以上70mm以下であり、
前記縦方向長さH2は、好ましくは50mm以上、更に好ましくは70mm以上、そして、好ましくは150mm以下、更に好ましくは120mm以下、より具体的には、好ましくは50mm以上150mm以下、更に好ましくは70mm以上120mm以下である前記<1>〜<22>の何れか一項に記載の吸収性物品。
【0054】
<24>
一対の前記前側斜行凹部列及び一対の前記後側斜行凹部列は、それぞれ、平面視において内側に凸の湾曲部を前記排泄ポイント域に有している前記<1>〜<23>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<25>
一対の前記前側斜行凹部列は、それぞれ、前記排泄ポイント域縦中心線の近傍から前記吸収体の縦方向前端側且つ横方向外方に向かって延びる斜行部分と、該斜行部分の縦方向前端寄り(該排泄ポイント域縦中心線から相対的に遠い側)の長さ方向端部から縦方向に延びる直線部分とを有しており、
一対の前記後側斜行凹部列は、それぞれ、前記排泄ポイント域縦中心線の近傍から前記吸収体の縦方向後端側且つ横方向外方に向かって延びる斜行部分と、該斜行部分の縦方向後端寄り(該排泄ポイント域縦中心線から相対的に遠い側)の長さ方向端部から縦方向に延びる直線部分とを有している前記<1>〜<24>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<26>
前記吸収性物品は使い捨ておむつである前記<1>〜<25>の何れか一項に記載の吸収性物品。
<27>
前記使い捨ておむつは、レッグギャザー及び立体ギャザーを有する前記<26>記載の吸収性物品。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
【0056】
〔実施例1〕
常法に従い、図1及び図2に示すおむつ1と同様の基本構成を有する展開型使い捨ておむつを作製した。表面シートとして、坪量36g/m2のエアスルー不織布を用い、裏面シートとして、透湿性シートと外層不織布とを貼り合わせた坪量30g/m2の複合シートを用い、吸収性コアとして、坪量200g/m2のパルプ繊維の集合体に粒子状の吸水性ポリマーを保持させたもの(吸水性ポリマーの坪量186g/m2)を用い、コアラップシートとして、坪量13.5g/m2の親水性且つ透液性の紙を用いた。
【0057】
実施例1で用いた吸収体における凹部列(前側凹部列、後側凹部列)のパターンは、図3に示す吸収体4と同様のものを採用した。実施例1で用いた吸収体4において、凹部列45は、該吸収体4の非肌対向面側からのエンボス加工により形成されたものであり、前側斜行凹部列51の傾斜角度αは60°、後側斜行凹部列61の傾斜角度βは80°、凹部列51の縦方向長さH1は50mm、凹部列61の縦方向長さH2は100mm、一対の凹部列51,51の一方と他方との排泄ポイント域縦中心線PL側の端部での間隔L1(前側横方向凹部列50の横方向長さ)は30mm、一対の凹部列61,61の一方と他方との中心線PL側の端部での間隔L2(後側横方向凹部列60の横方向長さ)は30mmであった。
【0058】
〔比較例1〕
前側凹部列5と後側凹部列6との境界線として、排泄ポイント域縦中心線PLではなく、おむつを縦方向Xに二分する仮想的な物品縦中心線1Lx(図1参照)を用いた以外は、実施例1と同様にして展開型使い捨ておむつを作製した。
【0059】
〔比較例2〕
前側斜行凹部列51の傾斜角度α及び後側斜行凹部列61の傾斜角度βを共に80°とした以外は、実施例1と同様にして展開型使い捨ておむつを作製した。
【0060】
〔比較例3〕
吸収体として図11に示す吸収体4Hを用いた以外は、実施例1と同様にして展開型使い捨ておむつを作製した。吸収体4Hにおいては、一対の前側斜行凹部列51,51の一方及び他方が、排泄ポイント域縦中心線PLの横方向Yの中心にて直接繋がっており、また、一対の後側斜行凹部列61,61の一方及び他方も、中心線PLの横方向Yの中心にて直接繋がっており、凹部列45全体として平面視略X字状を有している。即ち、吸収体4Hにおいては、一対の凹部列51,51の一方と他方との中心線PL側の端部での間隔L1(図3参照)、及び一対の凹部列61,61の一方と他方との中心線PL側の端部での間隔L2(図3参照)が何れもゼロである。
【0061】
〔比較例4〕
吸収体にエンボス加工を施さず、吸収体の肌対向面及び非肌対向面に凹部列を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして展開型使い捨ておむつを作製した。
【0062】
〔評価〕
各実施例及び比較例のおむつのフィット性を評価した。具体的には、乳幼児の各サイズ別の体型より設計された簡易モデルに、評価対象のおむつを常法に従って装着し、該モデルの前側から股間部にかけてのおむつのフィット性(前側股間部フィット性)について、特に、着用時における足繰り及び股間部(排尿部)に対するおむつの沿いやすさ(柔軟性)を目視観察した。その観察結果は下記の通りであった。下記観察結果に基づき、各実施例及び比較例のおむつの前側股間部のフィット性を、A(優れる)、B(普通)、C(劣る)の3段階にランク分けした。そのランク分けの結果を下記表1に示す。
【0063】
実施例1:おむつがモデルに対して柔軟に沿いやすく、装着しやすい。おむつがモデルの足繰り及び股間部にフィットし、且つ排尿部付近ではおむつとモデルとの間に僅かな隙間が形成されて、おむつがモデルを圧迫することがない。おむつの垂れ下がりは見られない。
比較例1:おむつがモデルの足繰り及び股間部に沿いにくく、ややフィットし難く、装着しやすさにやや劣る。排尿部付近ではおむつとモデルとの間に僅かな隙間が形成されて、おむつがモデルを圧迫することがない。おむつの垂れ下がりは見られない。
比較例2:おむつがモデルの股間部に沿いやすい。しかし、股間部においておむつとモデルとの間に適度な隙間がなく、おむつが排尿部付近を塞いでおり、吸収体の腹側に大きな皺とヨレが生じている。おむつの垂れ下がりは見られない。
比較例3:特にモデルの腹側の足繰りに対しおむつがフィットしない。おむつが垂れ下がり、モデルの排尿部付近に液がたまるような窪みが形成される。
比較例4:おむつがモデルに対して柔軟に沿いにくく、装着し難い。おむつがモデルの足繰り及び股間部にフィットしない。おむつ装着直後は、モデルの排尿部付近がおむつによって圧迫されている。おむつ全体がずり落ちてしまう。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示す通り、吸収体の非肌対向面にエンボス加工による凹部が一切形成されていないと、フィット性に劣る(比較例4)。また、吸収体の非肌対向面に、複数の前記凹部が平面視線状に配列されてなる凹部列が形成されていても、その凹部列が図11に示す如き平面視略X字状であると、フィット性に劣る(比較例3)。また、吸収体の非肌対向面に、前記凹部列として、横方向に延びる横方向凹部列と該横方向凹部列の長さ方向の両端から斜め外方に延びる左右一対の斜行凹部列とからなる、前側凹部列及び後側凹部列が形成されていても、1)該前側凹部列と該後側凹部列との境界線が、排泄ポイント域縦中心線ではなく、おむつを縦方向Xに二分する仮想的な物品縦中心線である形態(比較例1)、及び2)該斜行凹部列の傾斜角度が前側と後側とで同じ形態(比較例2)は、フィット性においてまだ改善の余地がある。
【0066】
これに対して実施例1は、凹部列が図3に示す如きパターンで形成されているためフィット性の評価が高く、着用時に足繰りに沿って変形しやすく、着用者の股間部に対して柔軟にフィットし得る。以上のことから、おむつのフィット性(前側股間部フィット性)を高めるためには、前述したように、a)凹部列が排泄ポイント域(着用者の排泄部と対向する設計上の領域)に存在し、且つb)該凹部列が、排泄ポイント域縦中心線よりも縦方向前端側に位置する前側凹部列と、縦方向後端側に位置する後側凹部列とを有し、且つc)該前側凹部列及び該後側凹部列が、それぞれ、該排泄ポイント域縦中心線の近傍から縦方向後端側且つ横方向外方に向かって延びる、一対の斜行凹部列を有し、一対の該斜行凹部列の一方と他方とが横方向に所定の間隔を置いて配され、その間隔は、該排泄ポイント域縦中心線側の端部間において最小であり、且つd)前側斜行凹部列の横方向に対する傾斜角度は、後側斜行凹部列の横方向に対する傾斜角度に比して小さいことが有効であることがわかる。
【符号の説明】
【0067】
1 使い捨ておむつ(吸収性物品)
2 表面シート
3 裏面シート
4,4A〜4H 吸収体
4f 吸収体の縦方向前端
4r 吸収体の縦方向後端
40 吸収性コア
41 コアラップシート
45 凹部列
45s 凹部列
5 前側凹部列
50 前側横方向凹部列
51 前側斜行凹部列
6 後側凹部列
60 後側横方向凹部列
61 後側斜行凹部列
7 排泄ポイント域縦中心凹部列
F 腹側部
M 股下部
R 背側部
P 排泄ポイント域
PL 排泄ポイント域縦中心線
X 縦方向
Y 横方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11