(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の下肢筋力評価装置は、下肢筋力の評価しかできない。
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、被検者の運動機能を、総合的且つ容易に評価可能な運動機能評価装置及び運動機能評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のような解決手段により、課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。また、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【0008】
第1の発明は、測定台(11)と、前記測定台(11)に加わる被験者の荷重の経時的変化を測定する荷重測定部(14)と、前記荷重測定部(14)により測定された前記荷重の経時的変化より求められる被検者のバランス能力指標を求める演算部(24)と、を備え、前記演算部(24)は、前記被検者が立ち上がって前記荷重測定部(14)に加わる荷重が最大になった時間と前記荷重の変動が安定する時間の時間間隔から前記バランス能力指標を求めること、を特徴とする運動機能評価装置(1)である。
第2の発明は、第1の発明の運動機能評価装置(1)において、前記荷重の安定する時間を、前記荷重測定部(14)に加わる荷重が最大になった時間から、2周期経過した時間、または、2周期経過した後の体重値と一致した時間、とすること、を特徴とする運動機能評価装置(1)である。
第3の発明は、測定台(11)と、前記測定台(11)に加わる被検者の荷重の経時的変化を測定する荷重測定部(14)と、前記荷重測定部(14)により測定された前記荷重の経時的変化より求められる被検者の筋力指標または前記被検者のバランス能力指標のうちの少なくとも1つを含む、2以上の運動機能指標を求める演算部(24)と、前記演算部(24)により求められた前記2以上の前記運動機能指標を用いて、前記被検者の運動機能を評価する評価部(24)と、を備える運動機能評価装置(1)である。
第4の発明は、第3の発明の運動機能評価装置(1)において、前記測定台(11)上の被検体の生体インピーダンスを求めるインピーダンス測定部(15)をさらに備え、前記演算部(24)は、前記筋力指標、前記バランス能力指標、及び前記インピーダンス測定部(15)により求められた生体インピーダンスを基に演算される筋量指標のうちの2以上の運動機能指標を求めること、を特徴とする運動機能評価装置(1)である。
第5の発明は、第3または4の発明の運動機能評価装置(1)において、前記演算部(24)は、前記被検者が立ち上がって前記荷重測定部(14)に加わる荷重が最大になった時間から前記荷重の変動が安定するまでの時間から前記バランス能力指標を求めること、を特徴とする運動機能評価装置(1)である。
第6の発明は、第5の発明の運動機能評価装置(1)において、前記荷重の変動が安定する時間を、前記荷重測定部(14)に加わる荷重が最大になる時間から、2周期経過した時間、または、2周期経過した後の体重値と一致した時間、とすること、を特徴とする運動機能評価装置(1)である。
第7の発明は、第3から6のいずれかの発明の運動機能評価装置(1)において、前記演算部(24)は、前記被検者が前記測定台(11)上に立ち上がったときに前記荷重測定部(14)により測定される前記荷重の経時的変動より、前記筋力指標及び前記バランス能力指標を求めること、を特徴とする運動機能評価装置(1)である。
第8の発明は、第3から7のいずれかの発明の運動機能評価装置(1)において、前記演算部(24)は、前記被検者が椅子から前記測定台(11)上に立ち上がったときに前記荷重測定部(14)により測定される前記荷重の経時的変動より、前記筋力指標及び前記バランス能力指標を求めること、を特徴とする運動機能評価装置(1)である。
第9の発明は、第3から8のいずれかの発明の運動機能評価装置(1)において、前記演算部(24)は、前記荷重測定部(14)により測定された前記荷重の最大値を前記被検者の体重で割った値から前記筋力指標を求めること、を特徴とする運動機能評価装置(1)である。
第10の発明は、測定台(11)に加わる被検者の荷重の経時的変化を測定し、測定された前記荷重の経時的変化を示す情報より求められる被検者の筋力を表す筋力指標または前記被検者のバランス能力を表すバランス能力指標のうちの少なくとも1つを含む、2以上の運動機能指標を求め、前記2以上の前記運動機能指標を用いて、前記被検者の運動機能を評価する、運動機能評価方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
第1の発明によれば、被検者の運動機能をバランス能力指標を用いて評価可能である。そのバランス能力指標は、立ち上がるという容易な動作によって運動機能を測定可能であるので、特に高齢者等において転倒等による怪我等の心配が少ない。
また、立ち上がるという動作によって運動機能の評価が可能であるため、手軽且つ容易に行うことができる。
そして、その運動機能指標は、荷重測定部により測定された被検者の荷重の経時的変化から求められるので、質問紙によるアンケートや体力テスト等による運動機能の評価と比べて、客観的である。さらに、運動機能評価を、種々の機材、時間及び場所などを使用することなく行うことができる。
第2の発明によれば、被検者が立ち上がって荷重測定部上に立ち上がった場合、被検者のふらつきは、ほとんどの場合、荷重測定部に加わる荷重が最大になった時間から2周期であるので、荷重の変動が安定するまでの時間として最適な時間を採用することができ、バランス能力指標を的確に求めることができる。
第3の発明によれば、被検者の運動機能を2以上の運動機能指標を用いて総合的に評価可能である。また、その運動機能指標は、荷重測定部により測定された被検者の荷重の経時的変化から求められるので、質問紙によるアンケートや体力テスト等による運動機能の評価と比べて、客観的である。さらに、総合的な運動機能評価を、種々の機材、時間及び場所などを使用することなく、1つの運動機能評価装置で行うことができる。
第4の発明によれば、生体インピーダンスによる筋量指標も総合的運動機能評価に加えることができる。
第5の発明によれば、第3の発明の効果に加え、さらに椅子から立ち上がるのでより負担が軽減される。
第6の発明によれば、被検者が立ち上がって荷重測定部上に立ち上がった場合、被検者のふらつきは、ほとんどの場合、荷重測定部に加わる荷重が最大になった時間から2周期であるので、荷重の変動が安定するまでの時間として最適な時間を採用することができ、バランス能力指標を的確に求めることができる。
第7の発明によれば、測定台から立ち上がるという容易な動作によって運動機能を測定可能であるので、特に高齢者等において転倒等による怪我等の心配が少ない。また、測定台から立ち上がるという動作によって運動機能の総合評価が可能であるため、手軽且つ容易に行うことができる。
第8の発明によれば、荷重測定部により測定された荷重の最大値を前記被検者の体重で割った値から前記筋力指標を求めるが、この最大値体重比F/Wtから筋力指標を求める場合、最大値と最小値との差ΔFを体重で割ったF/Wtにより筋力指標を求める場合と比べて精度が良い。
第9の発明によれば、被検者が立ち上がって荷重測定部に加わる荷重が最大になった時間から荷重の変動が安定するまでの時間からバランス能力指標を求めるので、立ち上がり動作中(負荷中)のバランスを、自然な動作の中で評価できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態にかかる運動機能評価装置1を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る運動機能評価装置1の外観を示す図である。
図2は、運動機能評価装置1の装置内部のブロック図である。
【0012】
図1に示すように、運動機能評価装置1は、測定部10と表示部20とを備える。
測定部10は、被検者が載る水平な測定台11を有する。
図2に示すように測定部10は、その内部に、荷重測定を行う荷重センサ12と、生体インピーダンス測定を行う電極13(13a,13b)と、荷重測定回路14と、インピーダンス測定回路15とを備えている。
【0013】
荷重センサ12は、ロードセル等であり、矩形の測定台11の4角に配置されている。
詳細な図示は省略するが、各荷重センサ12は、入力された荷重に応じて変形する起歪体と、起歪体に貼り付けられて当該起歪体の変形に応じた値の電気信号(検出信号)を出力する歪ゲージとを含んいる。荷重センサ12は、重力動揺測定も可能なように、3以上が好ましく、本実施形態では、4つ内蔵されている。
そして、荷重センサ12は、それぞれ、荷重センサ12が設置された部位に垂直に作用する荷重に応じた検出信号を生成および出力する。
【0014】
各荷重センサ12は、荷重測定回路14に接続されている。被検者が測定部10の測定台11に載ると、その測定台11に加わる荷重は各荷重センサ12に検出される。各荷重センサ12は、荷重に応じた検出信号を荷重測定回路14へ出力する。荷重測定回路14は、各荷重センサ12から出力された検出信号に基づいて、各荷重センサ12にて検出された荷重値を把握する。
【0015】
電極13は、薄板状であって、測定台11上に4つ、互いに離間して配置されている。本実施形態においては、4つの電極13のうち、2つの電極13aは通電電極であり、他の2つの電極13bは測定電極である。
【0016】
インピーダンス測定回路15は、通電電極13aに所定の微弱な電流を供給するとともに、測定電極13b間の電圧を測定することができるようになっている。そして、インピーダンス測定回路15は、通電電極13aから印加された電流値と、測定電極13b間で測定された電圧値と、に基づいて、被測定者の生体インピーダンスを算出することができるようになっている。この被検者の生体インピーダンスの測定結果に基づいて体脂肪などの生体情報が導き出される。
【0017】
表示部20は、図示するように、測定部10に対して、ケーブルで接続されている。ただし、これに限定されず、測定部10に支柱を取り付け、この支柱の上部に表示部20を取り付けてもよいし、無線で接続されてもよく、また、表示部と測定部とが一体した態様でもよい。
表示部20は、測定結果を表示する表示画面21、複数の操作用スイッチ23、出力ポート22及びCPU24を備え、外部電源26から電力が供給される。
【0018】
CPU24は、運動機能評価装置1を統括的に制御する制御装置である。CPU24には、操作用スイッチ23と表示画面21とが接続される。また、CPU24は、ケーブル25を介して測定部10内の荷重測定回路14およびインピーダンス測定回路15と接続される。
CPU24は、後述するが、荷重測定回路14の出力、インピーダンス測定回路15の出力、及びその他操作用スイッチ23を介して入力される被検者情報等に基づいて、運動機能評価を行う。
【0019】
操作用スイッチ23は、運動機能評価装置1のオンオフや、被検者情報の入力や、測定開始等を入力するスイッチである。
表示画面21には、被検者の操作に応じて入力された指令やデータ、また総合運動機能評価が表示される。
出力ポート22は、
図1に示すように、外部PCへデータ等を送信することが可能となっている。
【0020】
(運動機能評価の全体的流れ)
次に、運動機能評価装置1における運動機能評価について説明する。
図3は、運動機能評価を行う際の被検者Aの動作を示す図である。
図4は、
図3に示す被検者Aの動作に伴う運動機能評価装置1での荷重変動を時系列に示したグラフである。
図4においてグラフの下に、理解容易のために、
図3で示した測定時の被検者Aの動作を示す。
【0021】
図3に示すように、運動機能評価装置1において運動機能評価を行う場合、まず、運動機能評価装置1に隣接して椅子30を配置する。被検者Aは、
図3(a)に示すように、運動機能評価装置1の測定部10の測定台11に足を乗せた状態で椅子30に座る。次いで、被検者Aは、
図3(b)に示すように、椅子30に座った状態から、運動機能評価装置1上に立ち上がる。そして、被検者Aは、
図3(c)に示すように、体のふらつきがなくなり、安定するまで待つ。
【0022】
このように、被検者Aが立ち上がり動作を行っている間、荷重測定回路14は、荷重センサ12からの検出信号に基づいて、被検者Aの立ち上がり動作に伴う荷重変動を求め、CPU24に出力する。
さらに、電極13は被検者Aに微弱電流を流し、インピーダンス測定回路15は電極13aと13bとの間の電圧を測定して生体の生体インピーダンスを求め、CPU24に出力する。
【0023】
図4に示すように、被検者Aが椅子30に座って、測定台11に足を乗せた状態から立ち上がると、動作開始初期に位置Pで荷重が軽くなり、その後、位置Maxで最大荷重を記録する。これは、被検者Aが椅子から立ち上がろうとすると、初めに椅子・臀部に荷重が移行するためである。
そして、最大荷重Fを示した位置Maxの後、被検者Aの実際の体重Wtよりも荷重が減少し、実際の体重Wtを越えて位置Minで最小荷重を記録し、その後、荷重は上下しつつ、振幅が減衰し、実際の体重Wtに収束していく。
【0024】
後に詳細に説明するが、この荷重変動や測定された生体インピーダンスより、運動機能評価装置1は、被検者Aの(1)筋力、(2)バランス力、(3)筋量といった運動機能を評価することが出来る。
【0025】
なお、本実施形態では、被検者Aの椅子30に座って立ち上がる動作による荷重変動によって運動機能を評価するが、これに限定されず、被検者Aは、椅子30に座らずに、しゃがんだ状態から立ち上がっても良い。
ただし、しゃがんだ状態から立ち上がる場合、被検者Aが高齢者や筋力の弱い者の場合、身体的な負担が大きすぎる場合があるが、本実施形態のように椅子30からの立ち上がる場合、負担が軽くすむ。
また、本実施形態では、椅子30を測定部10の横に配置したが、これに限定されず、十分なスペースがある場合、測定部10の上に椅子30を配置してもよい。
以下、上述の(1)筋力、(2)バランス力、(3)筋量のそれぞれについて詳述する。
【0026】
(1)筋力
(1−1)筋力評価の一例
CPU24は、荷重測定回路14から送られた荷重値を基にした、
図4に示す荷重の測定データより、荷重の最大値Fを求め、荷重の最大値Fを被検者の実際の体重Wtで割った、最大値体重比F/Wtを演算する。このF/Wtは筋力の指標となる。
【0027】
本実施形態でCPU24は、このように最大値体重比F/Wtから筋力指標を求めるが、これに限定されず、荷重の最大値Fと荷重の最小値との差ΔFを体重Wtで割ったΔF/Wtを筋力指標としてもよい。
【0028】
しかし、本実施形態のように、最大値体重比F/Wtから筋力指標を求める場合、ΔF/Wtにより筋力指標を求める場合と比べて精度が良い。
それは、
図4では、最小値を示すポイントMinが明確に現れている例を示しているが、実際の測定においては、例えば被検者Aの筋力が弱い場合、最小値ポイントMinが特定しにくい場合がある。このような場合、荷重の最大値Fと荷重の最小値との差ΔFの信頼性が低く、ΔF/Wtの信頼性も低くなるからである。
【0029】
ここで、荷重値が最大値を示すポイントMaxは、椅子30から被検者Aの臀部が離れたときに相当する。この最大ポイントMaxも、実際の測定において特定しにくい場合もあるので、本実施形態では、荷重が体重に対して20%以下になったポイントPが検出された後、荷重が体重に対して105%以上を記録したポイントのうち最大値を最大ポイントMaxとする。
【0030】
椅子30に腰掛けた状態からの立ち上がり動作では、動作開始初期に荷重が軽くなり、その後、最大値を記録する。これは、被検者Aが椅子30から立ち上がろうとすると、はじめに椅子30、臀部に体重が移行するためで、これをトリガーにして最大荷重ポイントを検出する。
なお、荷重が体重に対して20%以下になったポイントPについては、体重に対して、30%減少(数値は任意)したポイントとしてもよい。
このように被検者Aの立ち上がり動作の特徴を利用する方法で最大値を特定することで、最大値ポイントを確実に検出することができる。
【0031】
(1−2)筋力評価の変形例
筋力指標としては、上述のように最大値体重比F/Wtに限定されず、最大増加率体重比(荷重変化量)RFD/Wtを用いても良い。
図5(a)は、荷重の最大増加率を時系列で示したグラフである。
図5(b)は、
図5(a)に対する比較用として、
図4と同じグラフを理解容易のために示したものである。最大増加率RFDは、
図5(a)における傾きが最も急な部分の傾きに相当する。
このように最大増加率体重比RFD/Wtも、筋力指標として用いることができる。
【0032】
(2)バランス能力
(2−1)バランス能力評価の一例
図6は、
図4と同じグラフであるが、バランス能力評価の説明のため、荷重の最大値と、安定値と、荷重が安定するまでの時間STと、を記す。
バランス能力評価においては、荷重が最大値を示したポイントMaxから、荷重が安定するポイントSまでの時間STを測定し、この時間STをバランス能力指標とする。
被検者Aが速やかに椅子から立ち上がることができた場合は、STは小さくなる。これに対して、被検者Aの左右バランスが悪い場合などはSTが大きくなる。
このようにSTを用いることで、立ち上がり動作中(負荷中)のバランスを、自然な動作の中で評価できる。
【0033】
本実施形態では、荷重が最大値を示したポイントMaxから荷重が安定するポイントSまでの時間STをバランス能力指標とする。これは、最大値を示すポイントMaxが、他のポイントと比較して見つけやすいからである。ただし、これに限定されず、荷重が立ち上りを開始した時間から荷重が安定するポイントSまでの時間をバランス能力指標としてもよい。
【0034】
また、荷重が安定したポイントSは、立位で安定したときに相当し、体重値付近になったときである。
なお、立ち上がり後の安定の条件を「荷重値の変動がある一定範囲内に入った場合」としても良いが、例えば高齢者等の場合、立位後ふらつきが大きくなると安定までに時間がかかってしまう。
そこで、本実施形態では、最大値検出後、体重値を4回通過したポイントを安定ポイントとする。
図7は、その安定ポイントSを説明する図である。
【0035】
立ち上がり後「立ち上がり動作によるふらつき(素早さ)」と「立位状態でのふらつき(重心動揺)」が連続する。このため、立ち上がり動作によるバランスを評価するにはこの2区間を分ける必要がある。
【0036】
立ち上がり動作において、最大値を検出(ポイントMax)した後、荷重センサ12の荷重値はその反動で、体重より小さい値となる。その後、荷重は、被検者の体重Wtを中心に増加、減少を数回繰り返し安定に至る。つまり、立ち上がり動作において、最大値を通過した後の荷重値は、減衰自由振動的な動きとなる。
【0037】
実際の立ち上がり動作によるふらつきは、ほとんどの場合、
図7(b)に示すように2周期となる。例外的な場合でも1周期以上、3周期までである。
そこで、「立ち上がり動作によるふらつき(素早さ)」の最大値を検出(ポイントMax)した後、2周期を荷重が安定するポイントSまでの時間を安定時間STとする。そして、その後の体重を中心とした荷重の増加及び減少は、「立位状態でのふらつき」とする。このようにして、「立ち上がり動作によるふらつき(素早さ)」と「立位状態でのふらつき(重心動揺)」とを切り分ける。
2周期を荷重が安定するポイントSは、最大値から数えて2周期経過したポイントSとして図示するが、これに限定されず、2周期経過した後の体重値と一致したポイントS’でもよい。
【0038】
(2−2)バランス能力評価の変形例
本実施形態では、上述のようにST値をバランス能力指標としたがこれに限定されず、重心動揺指標の一つである、単位軌跡長(L/T)を測定して、これをバランス能力指標としても良い。
この場合、筋力測定後、安定ポイントS以降(安定してから)に重心動揺測定を行い、単位軌跡長(L/T)を測定する。具体的には、立ち上がり動作後、荷重が安定した時点Sから一定時間重心動揺測定を行い、重心位置の軌跡を求める。その後、軌跡長を算出し、時間で除した値が単位軌跡長となる。単位時間軌跡長の測定や算出は、一般的な重心動揺側程度と同様である。また、単位時間軌跡長のほか、重心面積(外周、矩形、実行値)、左右バランスなどの他の重心動揺指標を用いても良い。
【0039】
(3)筋量
(3−1)筋量評価の一例
重心動揺測定後、運動機能評価装置1は電極13に電流を流し、インピーダンス測定回路15によって電極間の電圧値を検出し、CPU24によって生体インピーダンス値を演算して脚部筋肉量Lmを求める。
本実施形態でCPU24は、脚部筋肉量Lmを以下の式により求める。
Lm=a
1×脚部imp/Ht
2+b
1 式(1)
【0040】
ただし、脚部筋肉量Lmはこの式(1)に限定されず、以下の式(2)、(3)により求めてもよい。
Lm=全身筋肉量−腕部筋肉量−体幹部筋肉量 式(2)
Lm=c
1×全身imp/Ht
2−d
1×腕部imp/Ht
2−e
1×体幹部imp/Ht
2+f
1 式(3)
【0041】
上記式(1)から(3)において、
Lm:脚部筋肉量
imp:生体インピーダンス
Ht:身長(または各部位の長さを用いても良い)
a
1,b
1,c
1,d
1,e
1,f
1:係数
である。
【0042】
(筋量評価の変形例)
筋量は、さらに「脚部筋肉量/体重」、もしくは「脚部筋肉量/身長
2」を指標として用いても良い。また、全身及び四肢筋肉量を用いてもよく、身長や体重で標準化したものを用いても良い。
【0043】
(4)総合運動機能指標の算出
(4−1)総合運動機能指標の算出の一例
先に求めた3つの指標から、重回帰分析をして求めた重み付け係数a
2,b
2,c
2によってそれぞれの指標に重み付けをして、以下の式により総合運動機能指標MFを算出する。
MF=a
2×F/Wt+b
2×ST+c
2×Lm+d
2 式(4)
ここで、MF:運動機能指標
F/Wt:最大値体重比(筋力指標)
ST:安定時間(バランス指標)
Lm:脚部筋肉量(筋量指標)
a
2,b
2,c
2,d
2:係数。
【0044】
(表示の一例)
図8は、上記のように求めた総合運動機能指標MFの表示例を示したもので、
図8(a)は50を中心とした偏差値で総合運動機能指標MFを表示した例、
図8(b)は運動機能年齢で総合運動機能指標MFを表現した例である。
【0045】
図9は、上記のように求めた総合運動機能指標MFの他の表示例を示したものであり、得られた総合運動機能指標MFから、他者との比較、すなわち順位を表示する例である。この順位は、同じ機器での過去測定データと比較した順位や同じ年代の測定者の中での順位などを表示する。
図9(a)は全体における順位を示したもので、
図9(b)は年代別の順位を示したものである。
このように、順位を付けて結果を表示することによって、より分かりやすく結果を伝えることができ、また運動機能改善や維持のモチベーションアップにつながるといった効果が期待できる。
【0046】
(表示の変形例)
求めた総合運動機能指標MFを、上述のように表示するほか、それぞれの指標を個別に表示することもできる。さらに測定結果から、どこが弱いか、どのように改善トレーニングを行えばよいか等のアドバイスを表示してもよい。
図10は、総合運動機能指標MFの変形表示例を示したものである。たとえば、
図10(a)に示すように、筋力、筋量及びバランスの全てが平均値より高い場合、
「筋力は高く、筋量も多め、バランスも良いです。転倒の可能性は低いです。適度な運動を心がけこの状態を維持してください。」
等のコメントを表示しても良い。
また、
図10(b)に示すように、筋量は平均以上であるが、筋力及びバランスが平均値より低い場合、
「筋量は多めですが、筋力は低く、バランスも少し悪いです。転倒の可能性があります。
筋力を高めるような運動を日々行っていくことをおすすめします。」
等のコメントを表示しても良い
【0047】
(4−2)総合運動機能指標の算出の変形例
上述の説明では、筋力、バランス及び筋量の3つの指標から、総合運動機能指標MFを算出した。ただし、これに限定されず、筋力、バランス及び筋量の3つの指標のうちから2つを用いてMFを算出してもよい。
【0048】
また、筋力、バランス及び筋量の3つの指標以外にも、身長、体重、性別、年齢等を変数に加えて総合運動機能指標MFを算出しても良い。
【0049】
さらに、
図10では、筋力、バランス及び筋量の3つの指標をグラフ化して表示する例を示したが、これに限定されない。さらに別途測定した持久力、敏捷性、柔軟性を
図2の操作用スイッチ23を介して入力しておき、本実施形態の運動機能評価装置1で測定した筋力、バランス及び筋量の3つの指標と同時にそれら持久力、敏捷性、柔軟性の評価値を表示し、さらに詳細なアドバイスを示すといったことも可能である。この場合、4〜6角形等のレーダチャートになる。また、既往歴や転倒経験、日々の活動状況を予め入力しておくことで、それらを加味し、より的確なアドバイスを行うことも出来る。
【0050】
本実施形態では、測定された時系列的な荷重変化及び生体インピーダンスより、筋力、バランス及び筋量をCPU24により求めたが、本発明はこれに限定されず、出力ポート22より、測定された時系列的な荷重変化及び生体インピーダンスを外部のPCに出力し、最終的な計算をPCで行っても良い。
【0051】
以上、本実施形態によると、定量的な運動機能評価が可能となる。
本発明で算出される総合運動機能指標MFは、測定器による測定結果であり、アンケートや各体力テストの結果を総合的に判断するといった定性的な要素はない。したがって客観的であり、再現性や信頼性が高い。
また、指標自体も、筋力、バランス能力及び筋量のうちの少なくとも2つを総合的に判断した指標となるため、一つの指標で評価するよりも信頼性が高い。
【0052】
さらに、本実施形態によると、総合的な運動機能の評価を、アンケートや各体力テスト等を行うことなく、簡便に評価が可能となる。さらに一つの測定器で評価することが出来るので、時間、場所、コスト等の節減になる。
また、本発明による測定は、椅子からの立ち上り動作後静止、立位を数十秒続けるという形態である。これらの動作は、生活活動動作の一つであって容易であり、短時間で行うことが出来る。そのため、様々な人に測定機会を与えることが出来るとともに、頻度よく測定でき、最も重要経時的な変化を捉えていくことが可能である。