特許第6183828号(P6183828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183828
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】圧縮機の防振支持構造
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   F04B39/00 102Q
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-60234(P2013-60234)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-185555(P2014-185555A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】布目 好教
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 有二
(72)【発明者】
【氏名】桑山 裕宣
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−154890(JP,U)
【文献】 特開平03−286193(JP,A)
【文献】 特開平07−317171(JP,A)
【文献】 特開2002−323239(JP,A)
【文献】 米国特許第05306121(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機が固定プレート上に防振部材を介して防振支持され、その固定プレートが固定ベース上にシート状防振材を介して設置されている圧縮機の防振支持構造において、
前記シート状防振材上に前記固定プレートが積層または一体に結合されて設置され、
その固定プレートおよびシート状防振材の双方が、前記固定ベース上に前記固定プレートから前記固定ベースへの振動伝播を絶縁して固定する固定手段を介して固定設置されており、
前記固定プレートには、左右両端部に上方に曲げ成形されたフランジ部が設けられ、該フランジ部が前記固定ベースの左右両側部に設けられた立ち上げ壁間に嵌合されることにより、前記固定ベース上に前記固定プレートおよび前記シート状防振材が設置され、前記固定手段が、前記固定プレートの前記フランジ部と係合し、前記固定プレートおよび前記シート状防振材の上方への浮き上がりを阻止する爪部とされていることを特徴とする圧縮機の防振支持構造。
【請求項2】
前記固定プレートおよび前記シート状防振材には、ドレン水を前記固定ベース上に排水する排水穴が設けられ、前記固定ベースの表面には、そのドレンを集めて特定位置に排水する排水溝が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機の防振支持構造。
【請求項3】
前記シート状防振材には、左右両端部に上方への折り曲げ部が形成され、該折り曲げ部が前記固定ベースの前記立ち上げ壁と前記固定プレートの前記フランジ部との間に挟み込まれていることを特徴とする請求項2に記載の圧縮機の防振支持構造。
【請求項4】
圧縮機が固定プレート上に防振部材を介して防振支持され、その固定プレートが固定ベース上にシート状防振材を介して設置されている圧縮機の防振支持構造において、
前記シート状防振材上に前記固定プレートが積層または一体に結合されて設置され、
その固定プレートおよびシート状防振材の双方が、前記固定ベース上に前記固定プレートから前記固定ベースへの振動伝播を絶縁して固定する固定手段を介して固定設置されており、
前記固定プレートと前記シート状防振材とは、接着剤により一体に接着され、前記固定手段は、前記固定プレートの穴部を貫通し、前記シート状防振材のみを前記固定ベース側に固定する固定ネジとされていることを特徴とする圧縮機の防振支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機、冷凍機等のユニット本体の固定ベースに圧縮機を防振支持する防振支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
圧縮機は、ハウジングの外周に複数の脚部を備えており、その脚部をユニット本体の固定ベース上に防振ゴム、バネ等を介して防振支持することにより据え付けられるのが通常である。このような圧縮機の防振支持構造において、一系統の防振ゴムやバネのみでは十分に振動を吸収し切れない場合があり、その吸収し切れなかった振動がユニット本体側に伝播し、ユニット振動の一因となったり、圧縮機に接続される冷媒配管に繰り返し応力を加えたりすることがある。
【0003】
そこで、特許文献1に示されるように、圧縮機を板金製の固定プレート上にゴム、バネ等からなる防振部材を介して支持し、固定プレートをゴムシート等の緩衝材を介してユニットの固定ベース上に設置したものや、特許文献2に示されるように、圧縮機、アキュームレータ、オイルセパレータ等を共通の固定板上に固定し、その固定板をシート状の防振ゴムを介して固定ベースにボルトで固定したもの等が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−286193号公報
【特許文献2】特開2004−293856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1には、圧縮機を防振支持した板金製の固定プレートにゴム材からなる緩衝材を接着剤により接着して一体化し、それを固定ベース上に設置したものが開示されているが、固定プレートおよび緩衝材を如何に固定ベース上に固定設置しているかが明確にされていない。圧縮機を設置した固定プレートをシート状の防振ゴムを介して固定ベースに固定設置する場合、特許文献2に示されるように、ボルトを介して固定ベースに締め付け固定するのが一般的であった。
【0006】
しかしながら、上記の如く、圧縮機を設置した固定プレートをシート状の防振ゴムと共に固定ベース上にボルト等の固定手段を介して固定設置する構成とした場合、せっかく防振ゴムを介装したとしても固定手段経由で固定ベース側に振動が伝播してしまい、十分な防振効果が得られない場合があった。このため、圧縮機が防振支持された固定プレートをシート状の防振部材を介して固定ベース上に設置する構成とした場合に、固定プレートから固定ベース側への振動の伝播を防振部材により確実に遮断できる構成の防振支持構造が求められていた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、圧縮機から固定ベースへの振動の伝播を確実に遮断してユニット振動を低減することができる圧縮機の防振支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明の圧縮機の防振支持構造は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる圧縮機の防振支持構造は、圧縮機が固定プレート上に防振部材を介して防振支持され、その固定プレートが固定ベース上にシート状防振材を介して設置されている圧縮機の防振支持構造において、前記シート状防振材上に前記固定プレートが積層または一体に結合されて設置され、その固定プレートおよびシート状防振材の双方が、前記固定ベース上に前記固定プレートから前記固定ベースへの振動伝播を絶縁して固定する固定手段を介して固定設置されており、前記固定プレートには、左右両端部に上方に曲げ成形されたフランジ部が設けられ、該フランジ部が前記固定ベースの左右両側部に設けられた立ち上げ壁間に嵌合されることにより、前記固定ベース上に前記固定プレートおよび前記シート状防振材が設置され、前記固定手段が、前記固定プレートの前記フランジ部と係合し、前記固定プレートおよび前記シート状防振材の上方への浮き上がりを阻止する爪部とされていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、圧縮機を防振部材により防振支持している固定プレートが固定ベース上にシート状防振材を介して設置されている圧縮機の防振支持構造にあって、シート状防振材上に固定プレートが積層または一体に結合されて設置され、その固定プレートおよびシート状防振材の双方が固定ベースの表面上に固定プレートから固定ベースへの振動伝播を絶縁して固定する固定手段を介して固定設置されているため、防振部材により吸収しきれずに固定プレートに伝播した圧縮機の振動を、固定プレートと固定ベースとの間に介装されているシート状防振材により吸収し、固定ベースを介してユニット本体側に伝播するのを遮断することができる。この際、固定プレートおよびシート状防振材の双方を、固定手段を介して固定ベース上に固定プレートから固定ベースへの振動伝播を絶縁した状態で固定設置しているため、固定手段を経由しての固定プレートから固定ベースへの振動伝播を低減することができる。従って、ユニット振動を低減することができるとともに、運搬時やユニット落下時における固定プレートの浮き上がり等をも防止することができる。
また、本発明によれば、固定プレートの左右両端部にフランジ部が設けられ、そのフランジ部が固定ベースの左右両側部の立ち上げ壁間に嵌合されることにより、固定ベース上に固定プレートおよびシート状防振材が設置され、その固定手段が、固定プレートのフランジ部と係合し、固定プレートおよびシート状防振材の上方への浮き上がりを阻止する爪部とされているため、圧縮機を防振支持している固定プレートおよび該固定プレートと固定ベースとの間に介装されるシート状防振材を、固定ベース上にネジ等の締結手段を用いずに固定設置することができる。従って、固定プレートおよびシート状防振材を、固定ベース上に振動を絶縁する防振ゴム付きボルト等の高価な固定手段を用いることなく、確実に固定することができる。
【0010】
さらに、本発明の圧縮機の防振支持構造は、上記の圧縮機の防振支持構造において、前記固定プレートおよび前記シート状防振材には、ドレン水を前記固定ベース上に排水する排水穴が設けられ、前記固定ベースの表面には、そのドレンを集めて特定位置に排水する排水溝が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、固定プレートおよびシート状防振材に、ドレン水を固定ベース上に排水する排水穴が設けられ、固定ベースの表面にそのドレンを集めて特定位置に排水する排水溝が設けられているため、圧縮機の上部空間等に配設されている冷媒配管や機器類の表面で結露が発生し、それが固定プレート上に滴下したとしても、そのドレン水を固定プレートおよびシート状防振材に設けられている排水穴を通して固定ベース上に排水し、固定ベースの表面に設けられている排水溝を介して特定の排水位置に導き、処理することができる。従って、圧縮機を固定プレート上に防振支持し、その固定プレートを、シート状防振材を介して固定ベースに固定設置する構成としても、ドレン水を確実に特定位置に排水処理することができる。
【0014】
さらに、本発明の圧縮機の防振支持構造は、上記の圧縮機の防振支持構造において、前記シート状防振材には、左右両端部に上方への折り曲げ部が形成され、該折り曲げ部が前記固定ベースの前記立ち上げ壁と前記固定プレートの前記フランジ部との間に挟み込まれていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、シート状防振材の左右両端部に上方への折り曲げ部が形成され、該折り曲げ部が固定ベースの立ち上げ壁と固定プレートのフランジ部との間に挟み込まれているため、シート状防振材に設けられた折り曲げ部により固定プレートのフランジ部と固定ベースの立ち上げ壁との直接接触による振動の伝播を遮断することができる。従って、固定プレートから固定ベースへの振動の伝播を一段と低減し、ユニット本体の振動低減効果をより高めることができる。
【0016】
さらに、本発明の圧縮機の防振支持構造は、圧縮機が固定プレート上に防振部材を介して防振支持され、その固定プレートが固定ベース上にシート状防振材を介して設置されている圧縮機の防振支持構造において、前記シート状防振材上に前記固定プレートが積層または一体に結合されて設置され、その固定プレートおよびシート状防振材の双方が、前記固定ベース上に前記固定プレートから前記固定ベースへの振動伝播を絶縁して固定する固定手段を介して固定設置されており、前記固定プレートと前記シート状防振材とは、接着剤により一体に接着され、前記固定手段は、前記固定プレートの穴部を貫通し、前記シート状防振材のみを前記固定ベース側に固定する固定ネジとされていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、固定プレートとシート状防振材とが、接着剤により一体に接着され、固定手段が、固定プレートの穴部を貫通し、シート状防振材のみを固定ベース側に固定する固定ネジとされているため、固定プレートと一体に接着剤により接着されているシート状防振材を、固定プレートの穴部を貫通する固定ネジを介して固定ベース側に締め付け固定することにより、固定プレートおよびシート状防振材の双方を、固定ベース上に固定ネジを介して固定プレートから固定ベースへの振動伝播を絶縁した状態で固定設置することができる。従って、通常のネジによりシート状防振材を固定ベースに固定する構造でありながら、固定手段を経由しての固定プレートから固定ベースへの振動伝播を遮断することによって、ユニット本体の振動を確実に低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、防振部材によって吸収しきれずに固定プレートに伝播した圧縮機の振動を、固定プレートと固定ベースとの間に介装されているシート状防振材で吸収し、固定ベースを介してユニット本体側に伝播するのを遮断することができ、この際、固定プレートおよびシート状防振材の双方を、固定手段を介して固定ベース上に固定プレートから固定ベースへの振動伝播を絶縁した状態で固定設置していることから、固定手段を経由しての固定プレートから固定ベースへの振動の伝播を低減することができるため、ユニット振動を低減することができるとともに、運搬時やユニット落下時における固定プレートの浮き上がり等をも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る圧縮機の防振支持構造を示すユニット本体の圧縮機設置部位の縦方向断面の斜視図である。
図2図1に示す防振支持構造部分のみの斜視図である。
図3】上記防振支持構造の圧縮機を除外した部分の斜視図である。
図4】上記防振支持構造の固定ベース部分のみの斜視図である。
図5】上記防振支持構造の正面図である。
図6】上記防振支持構造の変形例の図5相当の正面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る防振支持構造の要部のみの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図1ないし図5を用いて説明する。
図1には、第1実施形態に係る圧縮機の防振支持構造を示すユニット本体の圧縮機設置部位の縦方向断面の斜視図が示され、図2には、その防振支持構造部分のみの斜視図、図3には、圧縮機を除外した部分の斜視図、図4には、固定ベース部分のみの斜視図、図5には、防振支持構造の正面図が示されている。
空調機、冷凍機、各種ヒートポンプ等のユニット本体1には、その底面部に圧縮機2が防振支持されている。圧縮機2は、密閉容器3の外周の下方部位に複数の脚部4を備えた構成とされている。
【0021】
この圧縮機2は、脚部4を防振ゴム(防振部材)5の外周に嵌め込み、その防振ゴム5の中心に設けられている貫通穴6を固定プレート10上に固定設置されているボルト7に挿入し、ナット8で締め付け固定する構成の防振支持装置9を介して外周上の複数箇所で固定プレート10上に防振支持されている。なお、上記防振ゴム5については、バネ等に代替してもよい。
【0022】
固定プレート10は、板金製の矩形状をなす板材であり、左右両端部に上方に折り曲げられたフランジ部11が設けられている。また、この固定プレート10には、上記した防振支持装置9用のボルト7が複数箇所(通常は、3〜4箇所)に固定設置される他、図3に示されるように、固定プレート10上に滴下したドレン水を下方に排出する複数の排水兼位置決め用穴(排水穴)12が設けられている。
【0023】
固定プレート10の下面には、シート状防振材13が接着剤、カシメ、ボルト等により一体に接合されている。このシート状防振材13は、所定の厚さ、硬さを有する矩形状のゴムシート材等により構成されており、上記防振支持装置9で吸収し切れずに固定プレート10に伝播した振動を吸収するためのものである。シート状防振材13には、固定プレート10の複数の排水兼位置決め用穴(排水穴)12と対応する位置に同様の穴が設けられているものとする。なお、固定プレート10とシート状防振材13とは、必ずしも一体に接合されている必要はなく、単に積層されている構成であってもよい。
【0024】
また、シート状防振材13の左右両端部には、固定プレート10のフランジ部11の外側面に沿って上方に折り曲げられた折り曲げ部14が形成されており、その折り曲げ部14が後述する固定ベース15の立ち上げ壁19と固定プレート10のフランジ部11との間に挟み込まれる構成とされている。シート状防振材13は、ユニット本体1の底面を構成している台座21上に固定設置されている固定ベース15の上面に載置されるように構成されている。
【0025】
固定ベース15の上面には、多数のリブ16が設けられており、そのリブ16間に複数のドレン排水溝17が形成され、特定の位置にドレン水を導いて排水可能とされているとともに、シート状防振材13および固定プレート10に設けられている排水兼位置決め用穴12が嵌合する上方に突出された突起部18が複数箇所に設けられている。
【0026】
また、固定ベース15の左右両側部には、固定プレート10のフランジ部11およびシート状防振材13の折り曲げ部14が嵌合される鉛直方向への立ち上げ壁19が設けられており、更に、この左右両側部の立ち上げ壁19には、それぞれ固定プレート10のフランジ部11およびシート状防振材14の上方への折り曲げ部14Aと係合し、固定プレート10およびシート状防振材14の上方への浮き上がりを阻止するように固定する手段としての爪部(固定手段)20が幅方向に延長されて所定範囲に設けられている。
【0027】
以上に説明の構成により、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
圧縮機2の運転により様々な振動が発生されるが、その振動は、一次的には圧縮機2を防振支持している防振支持装置9で吸収されることにより、固定プレート10側への伝播は遮断される。しかし、一系統の防振ゴム5による防振支持だけでは吸収し切れない面があるため、固定プレート10を固定ベース15上にゴムシート材等で構成されるシート状防振材13を介して設置し、防振支持装置9で吸収し切れなかった振動をシート状防振材13で吸収することによって、固定ベース15を介してユニット本体1側へと伝播するのを遮断し、ユニット振動を低減している。
【0028】
この際、本実施形態では、固定プレート10およびシート状防振材13の双方を、直接ボルト等の固定手段を介して締め付け固定せず、固定ベース15上に固定プレート10から固定ベース15への振動伝播を絶縁した状態で固定する手段を介して固定設置するようにしている。このため、固定手段を経由しての固定プレート10から固定ベース15への振動伝播を低減することができ、これによって、ユニット振動を確実に低減することができるとともに、運搬時やユニット落下時における固定プレート10の浮き上がり等をも防止することができる。
【0029】
また、本実施形態においては、固定プレート10の左右両端部にフランジ部11が設けられ、そのフランジ部11が固定ベース15の左右両側部の立ち上げ壁19間に嵌合されることによって、固定ベース15上に固定プレート10およびシート状防振材13が設置され、その固定手段が、固定プレート10のフランジ部11と係合し、固定プレート10およびシート状防振材13の上方への浮き上がりを阻止する爪部(固定手段)20とされている。
【0030】
このため、圧縮機2を防振支持している固定プレート10および該固定プレート10と固定ベース15との間に介装されるシート状防振材13を、固定ベース15上にネジ等の締結手段を用いずに固定設置することができる。これによって、固定プレート10およびシート状防振材13を、固定ベース15上に振動を絶縁する防振ゴム付きボルト等の高価な固定手段を用いることなく、確実に固定することができる。
【0031】
特に、シート状防振材13の左右両端部に上方への折り曲げ部14を形成し、その折り曲げ部14を固定ベース15の立ち上げ壁19と固定プレート10のフランジ部11との間に挟み込む構成としているため、シート状防振材13に設けられた折り曲げ部14により固定プレート10のフランジ部11と固定ベース15の立ち上げ壁19との直接接触による振動の伝播を遮断することができる。これによって、固定プレート10から固定ベース15への振動の伝播を一段と低減し、ユニット本体1の振動低減効果をより向上することができる。
【0032】
さらに、本実施形態では、固定プレート10およびシート状防振材13に、ドレン水を固定ベース15上に排水する排水兼位置決め用穴(排水穴)12を設け、その排水穴12から固定ベース15の表面にドレン水を排水し、排水溝17を介して特定位置に排水処理する構成とされている。このため、圧縮機2の上部空間等に配設されている冷媒配管や機器類の表面で結露が発生し、それが固定プレート10上に滴下したとしても、そのドレン水を固定プレート10およびシート状防振材13に設けられている排水穴12を通して固定ベース15上に排水し、固定ベース15の表面に設けられている排水溝17を介して特定の排水位置に導いて、適宜処理することができる。
【0033】
従って、圧縮機2を固定プレート10上に防振支持し、その固定プレート10を、シート状防振材13を介して固定ベース15に固定設置する構成としても、ドレン水を確実に特定位置に排水処理することができる。
【0034】
なお、上記の実施形態においては、シート状防振材13の左右両端部に上方への折り曲げ部14を形成し、該折り曲げ部14を固定ベース15の立ち上げ壁19と固定プレート10のフランジ部11との間に挟み込む構成としているが、図6に示されるように、折り曲げ部14を省略した構成としてもよい。
【0035】
この構成によっても、固定プレート10およびシート状防振材13の双方を、直接ボルト等の固定手段を介して締め付け固定せずに、固定ベース15上に固定プレート10から固定ベース15への振動伝播を絶縁した状態で爪部20により固定設置することができるため、固定手段を経由しての固定プレート10から固定ベース15への振動伝播を低減することができ、ユニット本体1の振動を低減することができるとともに、運搬時やユニット落下時における固定プレート10の浮き上がり等をも防止することができる。
【0036】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、図7を用いて説明する。
本実施形態は、上記した第1実施形態に対して、固定プレート10およびシート状防振材14の固定構造が異なっている。その他に点については、第1実施形態と同様であるので説明は省略する。
本実施形態では、フランジ部11や折り曲げ部14および爪部20を省いた上で、図7に示されるように、固定ベース15に設置される固定プレート10とシート状防振材13とを接着剤によって一体に接着した構成とし、固定プレート10に設けられている穴部10Aを通して、シート状防振材13のみを固定ベース15側に設けられているネジボス部15Aに対して固定ネジ(固定手段)22により締め付け固定した構成としている。
【0037】
上記したように、固定プレート10とシート状防振材13とを接着剤によって一体に接着し、固定手段である固定ネジ22を固定プレート10の穴部10Aを貫通させ、シート状防振材13のみを固定ベース15側に締め付け固定する構成としているため、固定プレート10と一体に接着剤により接着されているシート状防振材13を、固定プレート10の穴部10Aを貫通する固定ネジ22を介して固定ベース15側に締め付け固定することにより、固定プレート10およびシート状防振材13の双方を、固定ベース15上に固定ネジ22を介して固定プレート10から固定ベース15への振動伝播を絶縁した状態で固定設置することができる。
【0038】
従って、本実施形態によっても、シート状防振材13を通常の固定ネジ22により固定ベース15に締め付け固定する構造でありながら、その固定手段を経由しての固定プレート10から固定ベース15への振動伝播を遮断することによって、ユニット本体1の振動を確実に低減することができる。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、圧縮機2を固定プレート10上に防振支持する防振支持装置9として、圧縮機2の脚部4を防振ゴム5の外周に嵌め込み、その防振ゴム5の中心に設けられている貫通穴6を固定プレート10上に固定設置されているボルト7に挿入し、ナット8で締め付け固定する構成のものを例に説明したが、防振支持装置9の構成は如何なるものであってもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、排水兼位置決め用穴(排水穴)12を排水穴と位置決め用の穴とに兼用した構成としているが、別々に穴を設けた構成としてもよいことはもちろんである。さらに、上記実施形態では、固定ベース15の上面にドレン水を排水する排水溝17を設けたものについて説明したが、この排水溝17については、適宜溝形状等を変更することができることは云うまでもない。また、本発明は、排水溝17を有するものに限定されるものではなく、排水溝17を有していないものにも、同様に適用することができることはもちろんである。
【符号の説明】
【0041】
1 ユニット本体
2 圧縮機
5 防振ゴム(防振部材)
9 防振支持装置
10 固定プレート
10A 穴部
11 フランジ部
12 排水兼位置決め用穴(排水穴)
13 シート状防振材
14 折り曲げ部
15 固定ベース
17 排水溝
19 立ち上げ壁
20 爪部(固定手段)
22 固定ネジ(固定手段)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7