特許第6183831号(P6183831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183831
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ハイドロゲル形成材
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/04 20060101AFI20170814BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20170814BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20170814BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20170814BHJP
   A61L 15/42 20060101ALI20170814BHJP
   A61L 15/60 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   A61L31/04 110
   A61L31/12
   A61L31/14 400
   A61L15/24 100
   A61L15/42 310
   A61L15/60 100
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-109515(P2013-109515)
(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公開番号】特開2014-100462(P2014-100462A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2016年5月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-233453(P2012-233453)
(32)【優先日】2012年10月23日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年11月26日 「日本バイオマテリアル学会シンポジウム2012」にて発表 平成24年11月26日 「日本バイオマテリアル学会シンポジウム2012 予稿集」にて発表
(73)【特許権者】
【識別番号】591079395
【氏名又は名称】小山 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100113398
【弁理士】
【氏名又は名称】寺崎 直
(74)【代理人】
【識別番号】230118865
【弁護士】
【氏名又は名称】熊谷 貴之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智子
(72)【発明者】
【氏名】小山 義之
【審査官】 小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−526294(JP,A)
【文献】 特開2010−254688(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0003012(US,A1)
【文献】 特開平05−155759(JP,A)
【文献】 特開平04−054107(JP,A)
【文献】 特表2004−501956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 31/04
A61L 15/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含む乾燥フィルムであって、
ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方の乾燥状態のフィルム状固形物に対して残りの一方の溶液が接触したものが乾燥して形成される状態を有し
該乾燥フィルムは、水分を吸収した際に、ハイドロゲルを形成し、且つ、形成したハイドロゲルが生体組織に対する接着性を有する、フィルム。
【請求項2】
ポリアクリル酸の乾燥状態のフィルム状固形物にポリビニルピロリドンの溶液が接触したものが乾燥して形成される状態を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのフィルム状固形物、または残りの一方の溶液がポリビニルアルコールを含む請求項1又は2に記載のフィルム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載された乾燥フィルムの製造方法であって、ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方の溶液から乾燥状態のフィルム状固形物を調製する工程、及び得られた該フィルム状固形物に残りの一方の溶液を接触させた後に乾燥する工程を含む方法。
【請求項5】
ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含む凍結乾燥シートであって、
ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方の乾燥状態のフィルム状固形物に対して残りの一方と水溶性高分子とを含む溶液が接触したものが凍結乾燥して形成される状態を有し、
該凍結乾燥シートは、水分を吸収した際に、ハイドロゲルを形成し、且つ、形成したハイドロゲルが生体組織に対する接着性を有する、シート。
【請求項6】
ポリアクリル酸の乾燥状態のフィルム状固形物にポリビニルピロリドンとヒアルロン酸とを含む溶液が接触したものが凍結乾燥して形成される状態を有する、請求項5に記載のシート。
【請求項7】
請求項5または6に記載の凍結乾燥シートの製造方法であって、ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方の溶液から乾燥状態のフィルム状固形物を調製し、得られた該フィルム状固形物に対して残りの一方と水溶性高分子とを含む溶液を接触させた後に凍結し、該凍結物を凍結乾燥する工程を含む方法。
【請求項8】
請求項1ないし3のいずれかに記載のフィルム、又は請求項5若しくは6に記載のシートを含む医療用処置材。
【請求項9】
癒着防止材、止血材、又は創傷被覆材である請求項8に記載の医療用処置材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は癒着防止材や止血材などに利用可能なハイドロゲル形成用フィルム又はスポンジなどに関する。
より具体的には、本発明は、乾燥状態の柔軟なフィルム又はスポンジとして提供され、水分や血液などを吸収してハイドロゲルを形成することができるフィルム又はスポンジなどに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体組織に接着するハイドロゲルは、癒着防止材、止血材、創傷被覆材、又は薬物放出デバイスなどへの応用が広く研究され、一部実用化されている。粘膜や漿膜などの湿性組織に付着し、周囲の水分を吸収して接着性ゲルを形成するフィルムやスポンジは、手術後の癒着防止材や止血材として有用である。
【0003】
ハイドロゲルとしては動物性タンパク由来のものが知られているが、ウイルスや狂牛病等の感染や、異種タンパクに対する免疫応答などの危険性がある。それらの危険性を回避する手段として天然多糖を架橋したハイドロゲルも開発されているが、天然多糖を架橋したハイドロゲルは乾燥状態での柔軟性に乏しく、使用部位が複雑な形状の場合にはその部位に十分にフィットさせることができず、癒着防止材としての使用が困難であるという問題があり、化学的に架橋したゲルは生体吸収性が低いという問題もある。近年、合成高分子からなるハイドロゲルを用いた報告も増えているが、合成高分子は感染のリスクなどは低いものの、生体適合性が低く、一般に調製が煩雑であるという問題を有している。
【0004】
合成高分子により形成されるハイドロゲルとして、ポリアクリル酸とポリビニルピロリドンとの水素結合により形成されるハイドロゲルが知られている(Eur. Polym. J., 15, 223, 1979; Eur. Polym. J., 19, 923, 1983)。このハイドロゲルは生体適合性があり、調製が容易であることから上記の問題を回避したハイドロゲルとして応用が期待されている。しかしながら、ポリアクリル酸とポリビニルピロリドンのハイドロゲルは、両者の水溶液を混合することにより速やかに形成されるものの、すぐに疎水結合して繊維状の凝集塊となって沈殿する性質を有していることから、単にそれらの水溶液を混合するだけではフィルム状又はスポンジ状のハイドロゲルを調製することができないという問題がある。また、この凝集塊を単離して乾燥した場合には硬い固形塊が得られるが、この固形塊に水分を供給しても水分を吸収せずに固形塊の状態が維持されてしまい、柔軟なフィルム状やスポンジ状のハイドロゲルを再生できないという問題もある。
【0005】
なお、ポリアクリル酸とポリビニルピロリドンとの混合物を徐放性製剤の基質として利用する手段が提案されている(特開昭60-215622号公報の実施例1など)。さらにポリアクリル酸とポリビニルピロリドンとの混合物にシクロデキストリンを配合することによりこの薬剤の徐放性を改良し、吸水時にソフトなゲルを与える徐放性製剤(特開平6-40890号公報)が提案されており、油性座薬基剤にポリアクリル酸とポリビニルピロリドンの混合物を配合した座薬製剤(特開平6-40889号公報)も提案されている。しかしながら、これらの技術は、ポリアクリル酸とポリビニルピロリドンとから形成されるハイドロゲルを医療用の材料や処置材として直接利用するための技術ではない。従って、上記刊行物には単離及び乾燥させたゲルを水和してハイドロゲルを再生する技術に関して何ら示唆ないし教示がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60-215622号公報
【特許文献2】特開平6-40890号公報
【特許文献3】特開平6-40889号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Eur. Polym. J., 15, 223, 1979
【非特許文献2】Eur. Polym. J., 19, 923, 1983
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は癒着防止材や止血材などに利用可能な柔軟なフィルム又はスポンジなどを提供することにある。
より具体的には、本発明の課題は、水分を吸収してハイドロゲルを形成することができ、癒着防止材や止血材などに利用可能な柔軟な乾燥状態のフィルム又はスポンジなどを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のように、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンの水溶液を混合するとポリアクリル酸とポリビニルピロリドンとの水素結合により速やかにハイドロゲルが形成されるが、すぐに疎水結合して繊維状の凝集塊となって沈殿してしまうという問題があり、この凝集塊を単離して乾燥させた固形塊に水分を供給しても水分を吸収せず、ハイドロゲルを効率的に再生できないという問題がある。
【0010】
本発明者らはポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンから得られる生体適合性のハイドロゲルを癒着防止材や止血材などに簡便に利用できるようにすることを目的として研究を行い、特に、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンから得られるハイドロゲルを乾燥させて柔軟な乾燥ゲルを調製する手段、及び乾燥状態のゲルに水分を吸収させて水和させることにより十分に水和したハイドロゲルを形成させる手段を提供すべく鋭意研究を行った。
【0011】
その結果、本発明者らは、ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれかの水溶液をフィルム状に乾燥させておき、このフィルムに対して他方の水溶液を接触させた後に乾燥すると柔軟なフィルムを得ることができること、及びこのフィルムが水分を容易に吸収してハイドロゲルを生成することを見出した。また、本発明者らは、この乾燥状態のフィルムを臓器表面や出血部位に貼付すると水分や血液などを急速に吸収してゲル化しながら貼付部位に強く接着して、臓器の癒着防止や止血に極めて有効であることを見出した。さらに、この貼付したフィルムから生成したハイドロゲルが貼付後に生理条件下でゆっくりと分解して可溶化することも確認した。
【0012】
また、本発明者はヒアルロン酸又はその塩などの水溶性高分子の存在下においてポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンの溶液を混合し、得られた溶液を凍結乾燥することにより得られる柔軟で弾力性のあるスポンジ状の固体が、上記のフィルムと同様に使用することができることを見出した。さらに、ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれかの水溶液をフィルム状に乾燥させておき、このフィルムに対して他方の水溶液を接触させた後に凍結乾燥することにより和紙のようなシートが得られ、上記のフィルムやスポンジと同様に使用することができることを見出した。さらに、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンの混合溶液に水溶性高分子を加えて凍結乾燥することで得られるもろい固体を粉砕することにより得られる粉末、及びポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンの溶液を混合と同時に噴霧乾燥する方法により得られる粉末が上記のフィルムやスポンジなどと同様にヒドロゲル形成剤として使用できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0013】
すなわち、本発明により、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するためのフィルムであって、ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方の溶液から乾燥状態のフィルム状固形物を調製し、得られた該フィルム状固形物に対して残りの一方の溶液を接触させた後に乾燥して得ることができるフィルムが提供される。
【0014】
上記発明の好ましい態様によれば、ポリアクリル酸の溶液から乾燥状態のフィルム状固形物を調製し、得られた該フィルム状固形物にポリビニルピロリドンの溶液を接触させた後に乾燥して得ることができる上記フィルム;ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方を含む該フィルム状固形物に対して残りの一方の溶液を滴下又は噴霧により接触させた後に乾燥して得ることができる上記フィルム;及びポリアクリル酸の溶液及び/又はポリビニルピロリドンの溶液がポリビニルアルコールを含む上記フィルム;溶液が水溶液、有機溶媒の溶液、又は水及び有機溶媒の混合物の溶液である上記フィルムが提供される。
【0015】
また、本発明により、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するためのフィルムの製造方法であって、ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方の溶液から乾燥状態のフィルム状固形物を調製する工程、及び得られた該フィルム状固形物に残りの一方の溶液を接触させた後に乾燥する工程を含む方法が提供される。
【0016】
別の観点からは、本発明により、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するためのスポンジであって、水溶性高分子の存在下においてポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを混合した溶液を凍結乾燥して得ることができるスポンジが提供される。
【0017】
上記発明の好ましい態様によれば、水溶性高分子が多糖類又は水溶性合成高分子類から選ばれる上記のスポンジ;水溶性高分子がムコ多糖類である上記のスポンジ;及び水溶性高分子がヒアルロン酸又はその塩である上記のスポンジが提供される。また、ヒアルロン酸ナトリウムの存在下においてポリアクリル酸の溶液にポリビニルピロリドンの溶液を混合して得られる溶液を凍結乾燥して得ることができるスポンジが提供される。溶液としては水溶液が好ましい。
【0018】
また、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するためのスポンジの製造方法であって、水溶性高分子の存在下においてポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを混合した溶液を凍結乾燥する工程を含む方法が提供される。
【0019】
さらに別の観点からは、本発明により、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するための紙状シートであって、ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方の溶液から乾燥状態のフィルム状固形物を調製し、得られた該フィルム状固形物に対して残りの一方と水溶性高分子とを含む溶液を接触させた後に凍結し、該凍結物を凍結乾燥して得ることができる紙状シートが提供される。
【0020】
上記発明の好ましい態様によれば、ポリアクリル酸の溶液から乾燥状態のフィルム状固形物を調製し、得られた該フィルム状固形物にポリビニルピロリドンとヒアルロン酸とを含む溶液を接触させた後に凍結し、該凍結物を凍結乾燥して得ることができる上記紙状シートが提供される。
【0021】
また、本発明により、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するための紙状シートの製造方法であって、ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方の溶液から乾燥状態のフィルム状固形物を調製する工程、及び得られた該フィルム状固形物に残りの一方と水溶性高分子とを含む溶液を接触させた後に凍結し、該凍結物を凍結乾燥する工程を含む方法が提供される。
【0022】
さらに本発明により、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するための粉末であって、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンの溶液の液滴を乾燥する方法により得られる粉末が提供される。好ましくは上記溶液を噴霧乾燥することにより上記粉末を得ることができる。また、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するための粉末であって、水溶性高分子の存在下においてポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを混合した溶液を凍結乾燥して得ることができるもろい固体を粉砕することにより得られる粉末が提供される。
【0023】
別の観点からは、上記のフィルム、スポンジ、紙状シート、及び粉末を含む医療用処置材が提供される。該医療用処置材としては、例えば、癒着防止材、止血材、又は創傷被覆材などを挙げることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によればポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するためのフィルム、スポンジ、紙状シート、及び粉末が提供される。このフィルム、スポンジ、及び紙状シートは十分な柔軟性を有しており、臓器表面や出血部位に対して密着状態で適用することができる。また、適用後に水分や血液などを吸収してハイドロゲルを生成し、適用部位にハイドロゲルとして強固に接着して臓器の癒着を防止し、あるいは止血などの処置を達成することができる。また、上記粉末も同様に水分や血液を吸収してハイドロゲルを生成し、適用部位にハイドロゲルとして強固に接着して止血などの処置を達成することができる。ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンはそれぞれ医薬品添加物として認可されている安全な合成高分子であり、それぞれ生体適合性も高く安全な物質であることから、本発明のフィルム、スポンジ、紙状シート、及び粉末は医療用の処置材として安全に使用することができる。また、適用後に生理条件下で徐々に分解して可溶化するので、手術において内臓の癒着防止材として体内に留置しても安全である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明により提供されるフィルムは、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するためのフィルムであって、ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方の溶液から乾燥状態のフィルム状固形物を調製し、得られた該フィルム状固形物にポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンの残りの一方の溶液を接触させた後に乾燥して得ることができることを特徴としている。
【0026】
ポリアクリル酸の分子量は特に限定されないが、数平均分子量で1,000〜10,000,000程度のもの、あるいは架橋された高分子ゲル状態のものを使用することができる。ポリビニルピロリドンの分子量も特に限定されず、数平均分子量で1,000〜10,000,000程度のものを使用することができる。ポリアクリル酸としてポリアクリル酸ナトリウムを使用できる場合もある。
【0027】
ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを溶解するための溶媒としては、水のほか、メタノール、エタノール、アセトンなどの水と任意の割合で交じり合う水性有機溶媒と水の混合物、あるいは有機溶媒を使用することができる。好ましくは水又はエタノール、あるいは水及びエタノールの混合物を用いることができるが、これらに限定されることはない。
【0028】
本発明のフィルムを製造するためには、まず、ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方の溶液から乾燥状態のフィルム状固形物を調製する。ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンの溶液の濃度は特に限定されないが、0.01〜10%程度、好ましくは0.1〜1%程度の濃度の溶液を用いることができる。
【0029】
ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのどちらか一方の溶液から乾燥状態のフィルム状固形物を調製する方法は特に限定されないが、例えば、ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンの溶液を平板上の支持体に載せて均一の厚さとなるように溶液を均一に伸展し、送風下、あるいは加熱下に溶媒を除去すればよい。支持体上における乾燥前の溶液の厚さは特に限定されないが、例えば1μm〜50 mm程度から選択することができる。
【0030】
乾燥後のフィルム状固形物の厚さも特に限定されないが、一般的には0.1μm〜5 mm程度である。乾燥は、例えば50〜100℃程度の加温下で行うことができるが、送風下や減圧下においてより低い温度で行うことが望ましい場合もある。乾燥後のフィルム状固形物の水分含量も特に限定されないが、例えば0.1%〜10%程度である。
【0031】
ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方を含む乾燥後のフィルム状固形物に対して、残りのもう一方の溶液を接触させた後に乾燥することにより本発明のフィルムを製造することができる。接触に用いるポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンの溶液の濃度は特に限定されないが、0.01〜10%程度、好ましくは0.1〜1%程度の濃度の溶液を用いることができる。
【0032】
乾燥後のフィルム状固形物に対してポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方を含む溶液を接触させる方法は特に限定されない。例えば、フィルム状固形物の表面に対して溶液を滴下、塗布、又は噴霧する手段などを挙げることができるが、これらの手段に限定されることはない。乾燥後のフィルム状固形物に対して接触させるべきポリアクリル酸又はポリビニルピロリドン溶液の量も特に限定されないが、乾燥後のフィルム状固形物に含まれるポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンと、接触させるべき溶液中のポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンとの繰り返し単位モル比率が0.1〜10程度の範囲、好ましくは繰り返し単位モル比率が0.5〜2程度の範囲となるように接触させるべき溶液の濃度及び量を調整することが好ましい場合がある。
【0033】
上記溶液を接触させたフィルム状固形物の乾燥は、例えば50〜100℃程度の加温下で行うことができるが、送風下や減圧下においてより低い温度で行うことが望ましい場合もある。本明細書において「乾燥」の用語は、完全に水分が除かれた状態のほか、乾燥過程において水分が残留している状態を含めて最も広義に解釈しなければならず、いかなる意味にもいて限定的に解釈してはならない。乾燥後に得られる本発明のフィルムの水分含量も特に限定されないが、例えば0.1%〜10%程度である。また、乾燥後における本発明のフィルムの厚さも特に限定されないが、例えば0.1μm〜1 mm程度である。
【0034】
フィルム状固形物を調製するための溶液、及び/又は乾燥後のフィルム状固形物に接触させるための溶液にはポリビニルアルコールを添加しておくことができるが、この態様は本発明において強度に優れたフィルムを形成するために好ましい態様である。ポリビニルアルコールの添加量は特に限定されないが、例えば、ポリアクリル酸繰り返し単位1モルに対してポリビニルアルコール繰り返し単位0.01〜50モル程度、好ましくは0.1〜10モル程度になるように選択することができる。
【0035】
乾燥後のフィルム状固形物に接触させるための溶液にポリビニルアルコールを添加しておくことが好ましい場合がある。例えば、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを約1:1の繰り返し単位モル比とし、ポリビニルアルコールを繰り返し単位モル比で5〜20程度の割合で用いてフィルムを調製することが好ましい場合がある。また、上記溶液にポリエチレングリコールを添加しておいてもよい。ポリエチレングリコールを添加することにより、フィルムの柔軟性が高くなり、吸水及び膨潤速度が改善する場合がある。ポリエチレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール400やポリエチレングリコール4000などを用いることができるが、これらに限定されることはない。
【0036】
本発明のスポンジは、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するためのスポンジであって、水溶性高分子の存在下においてポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを混合した溶液を凍結乾燥して得ることができることを特徴としている。本発明のスポンジは柔軟性を有しており、固形物の組織中に空気を含むことから弾力性も有している。
【0037】
ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを溶解するための溶媒としては、水のほか、メタノール、エタノール、アセトンなどの水と任意の割合で交じり合う水性有機溶媒と水の混合物、あるいは有機溶媒を使用することができるが、凍結乾燥の際の凍結処理を効率的に行うために水を単独で使用することが好ましい。
【0038】
水溶性高分子としては、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドン以外の水溶性高分子、例えば多糖類や水溶性合成高分子類などを用いることができ、増粘剤として利用可能な水溶性高分子を好ましく用いることができる。例えば、多糖類としてヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸などのムコ多糖類、カラギナン、ペクチン、ローカストビーンガム、グァーガム、キサンタンガム、ウェランガムなどの水溶性天然高分子多糖類などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。水溶性合成高分子としてはポリビニルアルコールなどを用いることができる。水溶性高分子としてはヒアルロン酸又はその塩を用いることが好ましい。ヒアルロン酸又はその塩としては、例えばヒアルロン酸ナトリウムなどを用いることが好ましい。ヒアルロン酸の分子量は特に限定されないが、例えば数平均分子量で200,000以上のものを用いることが好ましい場合がある。ヒアルロン酸の含有量を増やすとスポンジの強度が増加し、丈夫なスポンジを調製できるようになる場合がある。
【0039】
水溶性高分子、好ましくはヒアルロン酸又はその塩の存在下においてポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを混合することにより溶液を調製し、この溶液を凍結乾燥することにより本発明のスポンジを製造することができる。一般的には、ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方を含む水溶液を調製して水溶性高分子、好ましくはヒアルロン酸又はその塩を添加し、さらに残りの一方の水溶液を添加することにより水溶液を調製することができるが、凍結乾燥に付するための溶液の調製方法はこの手法に限定されるわけではない。溶液の混合は0℃から室温程度の温度で行うことができる。凍結乾燥は常法に従って行うことができるが、凍結乾燥に際して溶液をモールドに入れて凍結し、成型された凍結品を凍結乾燥に付することにより所望の立体形状のスポンジを調製することができる。乾燥後のスポンジの水分量は特に限定されないが、例えば0.1%〜10%程度である。また、乾燥後における本発明のスポンジの密度も特に限定されないが、例えば0.01 g〜0.9 g/cm3程度である。
【0040】
凍結乾燥に付する溶液中のポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンの濃度は特に限定されないが、それぞれ例えば0.01〜1%程度の濃度とすることができ、溶液中のポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンとの繰り返し単位モル比率が0.1〜10程度の範囲、好ましくは繰り返し単位モル比率が0.5〜2程度の範囲となるようにすればよい。水溶性高分子、好ましくはヒアルロン酸又はその塩は、ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドン繰り返し単位1モルに対して繰り返し単位0.01〜50モル程度、好ましくは0.1〜10モル程度になるように添加することができ、例えば水溶液として添加することが望ましい。例えば、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを約1:1の繰り返し単位モル比とし、水溶性高分子、好ましくはヒアルロン酸ナトリウムを繰り返し単位モル比で0.1〜0.2程度の割合で用いてスポンジを調製することが好ましい場合がある。
【0041】
ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンの溶液のいずれか又は両者に水溶性合成高分子、好ましくはポリビニルアルコールを添加しておくことができる。あるいは水溶性高分子として多糖類を用いる場合には、多糖類の溶液に水溶性合成高分子、好ましくはポリビニルアルコールを添加しておいてもよい。この態様において、水溶性合成高分子、好ましくはポリビニルアルコールの添加量は特に限定されないが、例えば、ポリアクリル酸繰り返し単位1モルに対してポリビニルアルコールの繰り返し単位0.01〜50モル程度、好ましくは0.1〜10モル程度になるように選択することができる。
【0042】
本発明により提供される紙状シートは、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するための紙状シートであって、ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方の溶液から乾燥状態のフィルム状固形物を調製し、得られた該フィルム状固形物に対してポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンの残りの一方と水溶性高分子とを含む溶液を接触させた後に凍結し、該凍結物を凍結乾燥して得ることができることを特徴としている。本明細書において「紙状」の用語は紙のように繊維状になった高分子が集束して多数の空隙を含み、好ましくは弾力性のある含気状態の固体となった状態を意味しており、好ましくは日本国で生産される和紙の状態を意味するが、この用語をいかなる意味においても限定的に解釈してはならず、最も広義に解釈しなければならない。
【0043】
上記の態様において、ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方の溶液から乾燥状態のフィルム状固形物を調製する手段としては、上記に説明した手段を適宜採用すればよい。一般的にはポリアクリル酸のフィルム状固形物を調製することが好ましい。該フィルム状固形物に対してポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンの残りの一方と水溶性高分子とを含む溶液を接触させる手段としては、塗布、噴霧、又は滴下などの汎用の手段を適宜採用することができる。水溶性高分子としては上記に説明したものを使用することができるが、好ましくはヒアルロン酸を用いることができる。フィルム状固形物に対して、その表面に均一な薄膜が形成されるように溶液を接触させることが好ましい。
【0044】
該溶液を接触させたフィルム状固形物を凍結した後に凍結乾燥に付することにより本発明の紙状シートを調製することができる。効率的に凍結操作及び凍結乾燥を行う観点から、上記溶液は水溶液であることが好ましい。凍結は、例えば-20℃程度の温度で行うことができるが、上記の温度に特に限定されるわけではない。ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、及び水溶性高分子の比率は上記に説明した比率を参考にして適宜選択することが可能である。
【0045】
本発明により提供される粉末は、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するための粉末であって、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンの溶液を混合直後に液滴として乾燥させることにより得られることを特徴としている。この態様の粉末は、例えば、上記溶液を適宜のノズルを装着したスプレードライヤーなどを用いて噴霧乾燥することにより得ることができる。必要に応じて、上記溶液には水溶性高分子を添加することもできる。
【0046】
また、別の態様の粉末として、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するための粉末であって、水溶性高分子の存在下においてポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを混合した溶液を凍結乾燥して得ることができるもろい固体を粉砕することにより得られる粉末も提供される。この粉末の製造にあたり、もろい固体は上記に説明した方法により調製することができる。粉砕は適宜の物理的な衝撃を加えることにより容易に行うことができる。上記の各態様における粉末の粒径は特に限定されないが、数μm〜数mm程度の範囲で使用目的に応じて適宜選択することができる。
【0047】
本発明のフィルム、スポンジ、紙状シート、及び粉末の使用目的は特に限定されないが、典型的には、例えば医療用の処置材として使用することができる。例えば、外科手術における臓器の癒着防止材、外科手術や受傷時における出血に対しての止血材、又は創傷に対して保護や治癒促進の目的での創傷被覆材として好適に使用することができる。
【0048】
創傷とは一般的には皮膚の破綻を伴う損傷のことであり、切創、裂創、割創、擦過傷、挫滅傷、挫創、挫傷、銃創、爆傷、刺創、杙創、咬創などのほか、熱傷、褥瘡などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。皮膚の破綻を伴わない軽度の傷にも適用することができる。本発明のフィルム、スポンジ、紙状シート、及び粉末はこれらの創傷の被覆材として使用することができ、同時に創傷部位からの出血に対しての止血材、あるいは創傷部位からのリンパ液漏出に対しての体液吸収材などとして使用することも可能である。
【0049】
癒着は、医学的に本来分離している組織や臓器が結合して、両者間に瘢痕組織を形成する生体現象であり、例えば、消化器科、循環器科、整形外科、婦人科、又は眼科など各科領域の外科手術後に生じたり、あるいは炎症性腸疾患発症時に腸管壁同士の接着、又は腸管壁と腹壁との接着など形態で生じることがある。内臓癒着としては、外科手術後に発症する癒着のほか、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、十二指腸潰瘍、急性腸炎、蛋白漏出性腸症、大腸癌、虫垂炎、出血性大腸炎、腸結核、腸ベーチェット、又は大腸憩室症により発症する癒着性イレウス(腸閉塞)、あるいは腹膜透析による腹腔内癒着又はアッシャーマン症候による子宮癒着等が挙げられるがこれらに限定されることはない。癒着防止フィルムとして多糖(ヒアルロン酸など)を主成分とする癒着防止フィルム(商品名:セプラフィルム)が実用化されているが、本発明のフィルム及びスポンジは上記製品と同様に癒着防止材として使用することが可能である。
【0050】
本発明のフィルム、スポンジ、紙状シート、及び粉末には、使用目的に応じて、例えば抗菌剤、抗炎症剤、血液凝固剤、抗凝固剤、局所麻酔剤、血管収縮剤、又は血管拡張剤などの薬剤の1種又は2種以上を配合することができる。例えば、本発明のフィルム、スポンジ、紙状シート、及び粉末を開腹手術などにおいて内臓癒着防止材として用いる場合には、抗菌剤、抗凝固剤、及び/又は抗炎症剤などの薬剤を配合しておくことができ、例えば本発明のフィルム、スポンジ、紙状シート、及び粉末を外用の止血材として用いる場合には、抗菌剤などに加えて局所麻酔剤などを必要に応じて添加することもできる。
【0051】
本発明のフィルム、スポンジ、紙状シート、及び粉末は乾燥状態で提供されるが、必要に応じて支持体上に保持された状態で、あるいはフィルム内に支持体を包含した形で提供されてもよい。特に、本発明のフィルム、スポンジ、及び紙状シートは、例えば、綿やスフなどの織布や不織布のほか、軟質塩化ビニル、ポリエチレン、又はポリウレタンなどのフィルムや発泡体シート、あるいはガーゼなどの支持体上に保持された状態、あるいはフィルム内に支持体を包含した形で提供されることも好ましい。また、本発明の粉末をガーゼなどに接着させることもできる。本発明のフィルム、スポンジ、紙状シート、及び粉末は無菌状態で提供されることが望ましいが、ガス滅菌などの通常の手段により滅菌した後に包装容器に密閉状態で保存されていることが好ましい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1
実験には以下の材料を用いた。
ポリアクリル酸(PAA、Carbopol(登録商標)940, 934、Lubrizol Advanced Materials Inc.、または、Carbopol 934P NF Polymer、小林香料株式会社)
ポリビニルピロリドン(PVP, polyvinylpyrrolidone K30、和光純薬工業株式会社、またはKollidon 30、Kollidon 90F、BASFジャパン株式会社)
ポリビニルアルコール(PVA, polyvinyl alcohol 2800, partially hydrolysed, 和光純薬工業株式会社、またはポリビニルアルコール(部分けん化物) PE-05JPS、日本酢ビ・ポバール株式会社)
ヒアルロン酸ナトリウム(HA, 微生物由来, ナカライテスク株式会社、または日本薬局方ヒアルロン酸ナトリウム、キユーピー株式会社、または株式会社資生堂)
ポリエチレングリコール400(PEG400、マクロゴール400、日興製薬株式会社)
ポリエチレングリコール4000(PEG4000、マクロゴール4000、日興製薬株式会社)
ポピドンヨード(PVP-I、イソジンうがい薬、Meiji Seika ファルマ株式会社)
キトサン(キトサン10、和光純薬工業株式会社)
水溶性キトサン(水溶性キトサン、京のくすり屋)
【0053】
(a)PAA/PVPフィルムの調製
0.5% PAA(940又は934)の水溶液又はエタノール溶液100μLをポリスチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンの基材上にキャストして75℃で乾燥させ、PAAフィルムを調製した。乾燥後のPAAフィルムの表面に0.77%のPVP(K30)水溶液100μLを滴下し、そのまま75℃で乾燥させた。混合比はPAA:PVP=1:1(繰り返し単位モル比)とした。
【0054】
(b)PAA/PVP/PVAフィルムの調製(1)
0.5% PAA(940または934)水溶液又はエタノール溶液100μLをポリスチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンの基材上にキャストして75℃で乾燥させた。0.77%のPVP(K30)水溶液100μLと3.06% PVA水溶液1〜100μLを混合して調製した溶液を乾燥後のPAAフィルム表面に滴下し、そのまま75℃で乾燥させた。混合比はPAA:PVP:PVA=1:1:0.1-10(繰り返し単位モル比)とした。
【0055】
(c)PAA/PVP/PVAフィルムの調製(2)
0.5% PAA(940又は934)水溶液100μLと3.06% PVA水溶液0.5〜50μLを混合した水溶液をポリスチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンの基材上にキャストして75℃で乾燥させた。乾燥後に得られたPAAフィルムの表面に0.77%のPVP(K30)水溶液100μLと3.06% PVA水溶液0.5〜50μLを混合して調製した溶液を滴下し、そのまま75℃で乾燥させた。混合比はPAA:PVP:PVA=1:1:0.1-10(繰り返し単位モル比)とした。
【0056】
(d)PAA/PVP/HAスポンジの調製(1)
0.05% PAA(934)水溶液1 mLと0.04% HA水溶液1 mLを混合し、得られた溶液に0.077%のPVP(K30)水溶液1 mLを加えて混合して-80℃で凍結した。凍結品を室温下で凍結乾燥することによりスポンジを得た。混合比はPAA:PVP:HA=1:1:0.14(繰り返し単位モル比)とした。
【0057】
(e)PAA/PVP/PVAフィルムの調製(3)
0.5% PAA(934P NF)エタノール溶液1 mLと3.06% PVA水溶液100μLを混合した溶液をポリスチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンの基材上にキャストして75℃で乾燥させた。乾燥後に得られたPAA/PVAフィルムの表面に7.7%のPVP (Kollidon 30または90F)エタノール溶液100μLと3.06% PVA水溶液100〜400μLを混合して調製した溶液を滴下し、そのまま75℃で乾燥させた。混合比はPAA:PVP:PVA=1:1:2-5(繰り返し単位モル比)とした。
【0058】
(f)PAA/PVP/HAスポンジの調製(2)
0.05% PAA(934P NF)水溶液1 mLと0.04% HA水溶液1〜5 mLを混合し、得られた溶液に0.077%のPVP(Kollidon 30または90F)水溶液1 mLを加えて混合して-20〜-80℃で凍結した。凍結品を室温下で凍結乾燥することによりスポンジを得た。混合比はPAA:PVP: HA=1:1:0.14〜0.7 (繰り返し単位モル比)とした。
【0059】
(g)PAA/PVP/PVA/PEGフィルムの調製
0.5% PAA(934P NF)エタノール溶液1 mLと3.06% PVA水溶液100μLを混合した溶液をポリスチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンの基材上にキャストして75℃で乾燥させ、PAA/PVAフィルムを調製した。乾燥後のPAA/PVAフィルムの表面に7.7%のPVP(Kollidon 30または90F)エタノール溶液100μLと3.06% PVA水溶液200μLと3.06% PEG400またはPEG4000エタノール溶液100〜500μLを混合した溶液を滴下し、そのまま75℃で乾燥させた。柔軟な透明フィルムを得た。
【0060】
(h)キトサン含有PAA/PVP/PVAフィルムの調製
0.5% PAA(934P NF)エタノール溶液1 mLと3.06% PVA水溶液100μLを混合した溶液をポリスチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンの基材上にキャストして75℃で乾燥させ、PAA/PVAフィルムを調製した。乾燥後のPAA/PVAフィルムの表面に7.7%のPVP(Kollidon 30または90F)エタノール溶液100μLと3.06% PVA水溶液300μLを混合した溶液を滴下し、そのまま75℃で乾燥させ、完全に乾ききる直前にキトサン10の粉末を表面に振りかけた後、完全に乾燥させた。
【0061】
(i) 水溶性キトサン含有PAA/PVP/PVAフィルムの調製
0.5% PAA(934P NF)エタノール溶液1 mLと3.06% PVA水溶液100μLを混合した溶液をポリスチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンの基材上にキャストして75℃で乾燥させ、PAA/PVAフィルムを調製した。乾燥後のPAA/PVAフィルムの表面に7.7%のPVP(Kollidon 30または90F)エタノール溶液100μL、3.06% PVA水溶液300μL、1%水溶性キトサン水溶液100μLを混合した溶液を滴下し、そのまま75℃で乾燥させ、水溶性キトサン含有PAA/PVP/PVAフィルムを得た。
【0062】
(j) 水溶性キトサン含有PAA/PVP/PVA/PEGフィルムの調製
0.5% PAA(934P NF)エタノール溶液1 mLと3.06% PVA水溶液100μLを混合した溶液をポリスチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンの基材上にキャストして75℃で乾燥させ、PAA/PVAフィルムを調製した。乾燥後のPAA/PVAフィルムの表面に7.7%のPVP(Kollidon 30または90F)エタノール溶液100μL、3.06% PVA水溶液200μL、3.06% PEG400または4000エタノール溶液100μL、1%水溶性キトサン水溶液100μLを混合した溶液を滴下し、そのまま75℃で乾燥させ、柔軟な水溶性キトサン含有PAA/PVP/PVA/PEGフィルムを得た。
【0063】
(k) 水溶性キトサン/PAA/PVP/PVAフィルムの調製(1)
0.5% PAA(934P NF)エタノール溶液1 mLと3.06% PVA水溶液100μLを混合した溶液をポリスチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンの基材上にキャストして75℃で乾燥させ、PAA/PVAフィルムを調製した。乾燥後のPAA/PVAフィルムの表面に7.7%のPVP(Kollidon 30または90F)エタノール溶液100μL、3.06% PVA水溶液300μLを滴下し、そのまま75℃で乾燥させた。乾燥後のPAA/PVP/PVAフィルムの表面に1%キトサン50%エタノール溶液500μLを滴下し、そのまま75℃で乾燥させ、水溶性キトサン/PAA/PVP/PVAフィルムを得た。
【0064】
(l)水溶性キトサン/PAA/PVP/PVAフィルムの調製(2)
0.5% PAA(934P NF)エタノール溶液1 mLと3.06% PVA水溶液100μLを混合した溶液をポリスチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンの基材上にキャストして75℃で乾燥させ、PAA/PVAフィルムを調製した。乾燥後のPAA/PVAフィルムの表面に7.7%のPVP(Kollidon 30または90F)エタノール溶液100μL、3.06% PVA水溶液300μLを滴下し、そのまま75℃で乾燥させた。別途、0.3%水溶性キトサン50%エタノール溶液を同様にキャスト・乾燥させ、キトサンフィルムを得た。両者を少量の水で張り合わせ、水溶性キトサン/PAA/PVP/PVAフィルムを得た。
【0065】
(m)ヨード含有PAA/PVP/PVAフィルムの調製(1)
0.5% PAA(934P NF)エタノール溶液1 mLと3.06% PVA水溶液100μLを混合した溶液をポリスチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンの基材上にキャストして75℃で乾燥させ、PAA/PVAフィルムを調製した。乾燥後のPAA/PVAフィルムの表面に市販のPVP-I水溶液100μL、3.06% PVA水溶液300μLを滴下し、そのまま75℃で乾燥させ、抗菌活性を持つフィルムを得た。
【0066】
(n)ヨード含有PAA/PVP/PVAフィルムの調製(2)
0.5% PAA(934P NF)エタノール溶液1 mLと3.06% PVA水溶液100μLを混合した溶液をポリスチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンの基材上にキャストして75℃で乾燥させ、PAA/PVAフィルムを調製した。乾燥後のPAA/PVAフィルムの表面に市販のPVP-I水溶液10μLと、7.7%のPVP(Kollidon 30または90F)エタノール溶液90μL、3.06% PVA水溶液300μLを滴下し、そのまま75℃で乾燥させ、抗菌活性を持つフィルムを得た。
【0067】
(o)キトサン含有PAA/PVP/HAスポンジの調製
0.05% PAA(934P NF)水溶液1 mLと0.04% HA水溶液1 mLを混合し、得られた溶液に5 mg のキトサン10の粉末を含む0.077%のPVP(Kollidon 30または90F)水溶液1 mLを加えて混合して-20℃で凍結した。凍結品を室温下で凍結乾燥することによりスポンジを得た。混合比はPAA:PVP:HA=1:1: 0.14 (繰り返し単位モル比)とした。
【0068】
(p)水溶性キトサン含有PAA/PVP/HAスポンジの調製
0.05% PAA(934P NF)水溶液1 mLと0.04% HA水溶液1〜3 mL、0.077%のPVP(Kollidon 30または90F)水溶液1 mLを混合し、得られた溶液に0.05% 水溶性キトサン水溶液1 mLを加えて混合して-20℃で凍結した。凍結品を室温下で凍結乾燥することによりスポンジを得た。混合比はPAA:PVP:HA=1:1:0.14〜0.42(繰り返し単位モル比)とした。
【0069】
(q)PAA/PVP/HA/PEG粉末の調製
0.05% PAA(934P NF)水溶液1 mLと0.04% HA水溶液1 mLを混合し、得られた溶液に0.077%のPVP(Kollidon 30または90F)水溶液1 mLと0.0306%〜0.153%のPEG400または4000水溶液1 mlを加えて混合して-80℃で凍結した。凍結品を室温下で凍結乾燥後、攪拌、粉砕してPAA/PVP/ HA/PEG粉末を得た。
【0070】
(r)PAA/PVP粉末の調製
0.05% PAA(934P NF)水溶液と0.077%のPVP(Kollidon 30)水溶液を四流体ノズルを搭載したスプレードライヤー(藤崎電気製)を用いて混合させながら噴霧乾燥し、PAA/PVP粉末を得た。
【0071】
(s)PAA/PVP/HA紙状シートの調製
0.5% PAA(934P NF)エタノール溶液1 mLをポリスチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンの基材上にキャストして75℃で乾燥させた。乾燥後に得られたPAAフィルムの表面に0.4% HA水溶液0〜1 mLと0.77%のPVP(Kollidon 30または90F)水溶液1 mLを混合して調製した溶液を滴下し-20℃で凍結した。凍結品を室温下で凍結乾燥することにより紙状シートを得た。混合比はPAA:PVP:HA=1:1:0〜0.14 (繰り返し単位モル比)とした。
【0072】
(t)ガーゼ接着PAA/PVP/HA紙状シートの調製
0.5% PAA(934P NF)エタノール溶液1 mLをポリスチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンの基材上にキャストして75℃で乾燥させた。乾燥後に得られたPAAフィルムの表面に0.4% HA水溶液0〜1 mLと0.77%のPVP(Kollidon 30または90F)水溶液1 mLを混合して調製した溶液を滴下し-20℃で凍結した。凍結品の上または下に水で湿らせたガーゼを置き、凍結品とガーゼを接着させた後室温下で凍結乾燥することにより、ガーゼに接着した紙状シートを得た。混合比はPAA:PVP:HA=1:1:0〜0.14 (繰り返し単位モル比)とした。
【0073】
(u)重ね合わせフィルムの調製
上述の各フィルム、または紙状シートを少量の水または水溶性高分子などの水溶液で湿らせながら2〜5枚貼り合わせて、乾燥させ、重層フィルムを得た。また、アルギン酸ナトリウムフィルム、アガロースフィルム、またはガーゼと張り合わせることで、片面のみ接着性のフィルムを得た。
【0074】
(v)ガーゼ接着PAA/PVP/HA圧縮スポンジの調製
0.05% PAA(934P NF)水溶液1 mLと0.04% HA水溶液0〜5 mLを混合し、得られた溶液に0.077%のPVP(Kollidon 30または90F)水溶液1 mLを加えて混合し、得られた混合溶液を、底にガーゼを敷いた容器に入れ、-20〜-80℃で凍結した。凍結品を室温下で凍結乾燥後、軽くプレスすることにより凍結乾燥物から得られた圧縮スポンジがガーゼに接着した状態のPAA/PVP/HA圧縮スポンジを得た。混合比はPAA:PVP: HA=1:1:0〜0.7 (繰り返し単位モル比)とした。
【0075】
例2:癒着モデルマウスにおける癒着防止の評価
雄ddYマウス(6-8週齢)をネンブタール麻酔下で開腹した。盲腸を体外に出し、その表面の一部を熱したスパチュラで焼灼後、本発明のフィルム(PAA:PVP:PVA=1:1:10 繰り返し単位モル比)を火傷部位に貼り、盲腸を腹腔内に戻して閉腹した。術後3日または7日後に麻酔下で開腹して癒着防止効果を評価した。その結果、フィルムを貼っていない未処理のマウスでは盲腸が腸管及び腹壁等に強く癒着していたが、フィルムの貼付処置を施したマウスでは貼付したフィルムが火傷部位表面で血液やリンパ液を吸収してゲル化しながら火傷部位に強く接着しており、火傷部位の臓器や腹壁への癒着が認められなかった。この結果から、本発明のフィルムが高い癒着防止効果を有することが確認できた。
【0076】
例3:マウスにおける止血の評価
雄ddYマウス(6-8週齢)をネンブタール麻酔下で開腹した。肝臓に切開創を加え、本発明のフィルム(PAA:PVP:PVA=1:1:10 繰り返し単位モル比)を切開部位に貼り、一時間観察して止血効果を評価したところ、貼付したフィルムが急速に血液を吸収してゲル化しながら切開創部位に強く接着し、効率よく十分な止血効果が達成される様子が確認できた。
【0077】
例4:マウスにおける止血の評価
雄ddYマウス(6-8週齢)の右下肢大腿部内側の皮膚をネンブタール麻酔下で切開した。下
肢静脈を切断して本発明のフィルム(PAA:PVP:PVA=1:1:10 繰り返し単位モル比)又はスポ
ンジ(PAA:PVP:HA=1:1:1.4 繰り返し単位モル比)を切開部位に貼付して一時間観察し、止
血効果を評価したところ、フィルム又はスポンジが急速に血液を吸収してゲル化しながら
切開創部位に強く接着し、その結果、効率よく十分な止血効果が達成された。
【0078】
例5:フィルムの止血効果の耐圧性評価
二本の円筒形プラスティックチューブの下部をゴム管でつないだ。内部を水または色水で満たした後に、一方のチューブの上部にトリ皮を接着し、トリ皮に21Gの注射針で穴を空けた。本発明のフィルム(PAA:PVP:PVA=1:1:10 繰り返し単位モル比)を穴の上にあて、接着させた後、チューブの位置を縦にずらして静水圧をかけ水の漏れを観察した。フィルムは水分を急速に吸収してトリ皮に強く接着し、静水圧30mmHgまで水の漏れを完全に抑制した。
【0079】
例6:ヘパリン処理したマウスにおける止血の評価
雄ddYマウス(6-8週齢)の右下肢大腿部内側の皮膚をネンブタール麻酔下で切開した。下肢静脈を切断して(a)〜(c)、(e)、(g)〜(n)、および(u)に記載の本発明のフィルム、又は(d)、(f)、(o)、(p)、(s)および(t)に記載の本発明のスポンジ、又は(q)、(r)に記載の本発明の粉末、又は(q)、(r)に記載の本発明の粉末にキトサン10の粉末を混合したものを切開部位にあてて一時間観察し、止血効果を評価したところ、フィルム又はスポンジ又は粉末が急速に血液を吸収してゲル化しながら切開創部位に強く接着し、その結果、効率よく十分な止血効果が達成された。特にキトサンを含有するフィルム、スポンジ、粉末においては、止血効果が大きく向上した。
【0080】
例7:臨床研究における止血の評価(1)
ワーファリンを服用している患者からの採血後、(c)に記載の本発明のフィルムを穿刺部に載せたところ、フィルムがゲル化しながら穿刺部に接着し、速やかな止血が達成された。
【0081】
例8:臨床研究における止血の評価(2)
ワーファリンを服用している患者に抜歯を施した後、抜歯窩に(d)に記載の本発明のス
ポンジに載せたところ、スポンジがゲル化しながら接着し、速やかな止血が達成された。
<付記事項>
[付記1]
ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するためのフィルムであって、ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方の溶液から乾燥状態のフィルム状固形物を調製し、得られた該フィルム状固形物に対して残りの一方の溶液を接触させた後に乾燥して得ることができるフィルム。
[付記2]
ポリアクリル酸の溶液から乾燥状態のフィルム状固形物を調製し、得られた該フィルム状固形物にポリビニルピロリドンの溶液を接触させた後に乾燥して得ることができる付記1に記載のフィルム。
[付記3]
ポリアクリル酸の溶液及び/又はポリビニルピロリドンの溶液がポリビニルアルコールを含む付記1又は2に記載のフィルム。
[付記4]
ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するためのフィルムの製造方法であって、ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方の溶液から乾燥状態のフィルム状固形物を調製する工程、及び得られた該フィルム状固形物に残りの一方の溶液を接触させた後に乾燥する工程を含む方法。
[付記5]
ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するためのスポンジであって、水溶性高分子の存在下においてポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを混合した溶液を凍結乾燥して得ることができるスポンジ。
[付記6]
水溶性高分子の存在下においてポリアクリル酸の水溶液にポリビニルピロリドンの水溶液を混合して得られる水溶液を凍結乾燥して得ることができる付記5に記載のスポンジ。
[付記7]
水溶性高分子がヒアルロン酸又はその塩である付記5又は6に記載のスポンジ。
[付記8]
ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するためのスポンジの製造方法であって、水溶性高分子の存在下においてポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを混合した溶液を凍結乾燥する工程を含む方法。
[付記9]
水溶性高分子がヒアルロン酸又はその塩である付記8に記載の方法。
[付記10]
ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するための紙状シートであって、ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方の溶液から乾燥状態のフィルム状固形物を調製し、得られた該フィルム状固形物に対して残りの一方と水溶性高分子とを含む溶液を接触させた後に凍結し、該凍結物を凍結乾燥して得ることができる紙状シート。
[付記11]
ポリアクリル酸の溶液から乾燥状態のフィルム状固形物を調製し、得られた該フィルム状固形物にポリビニルピロリドンとヒアルロン酸とを含む溶液を接触させた後に凍結し、該凍結物を凍結乾燥して得ることができる付記10に記載の紙状シート。
[付記12]
ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するための紙状シートの製造方法であって、ポリアクリル酸又はポリビニルピロリドンのいずれか一方の溶液から乾燥状態のフィルム状固形物を調製し、得られた該フィルム状固形物に対して残りの一方と水溶性高分子とを含む溶液を接触させた後に凍結し、該凍結物を凍結乾燥する工程を含む方法。
[付記13]
ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するための粉末であって、ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを混合した溶液の液滴を乾燥させることにより得られる粉末。
[付記14]
上記溶液を噴霧乾燥することにより得られる付記13に記載の粉末。
[付記15]
ポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを含むハイドロゲルを形成するための粉末であ
って、水溶性高分子の存在下においてポリアクリル酸及びポリビニルピロリドンを混合し
た溶液を凍結乾燥して得ることができる固体を粉砕することにより得られる粉末。
[付記16]
付記1ないし3のいずれかに記載のフィルム、付記5ないし7のいずれかに記載のスポンジ、又は付記10ないし11のいずれかに記載の紙状シート、又は付記13ないし15のいずれかに記載の粉末を含む医療用処置材。
[付記17]
癒着防止材、止血材、又は創傷被覆材である付記16に記載の医療用処置材。