(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183833
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】自転車用ハンドルロック装置
(51)【国際特許分類】
B62H 5/06 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
B62H5/06
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-135036(P2013-135036)
(22)【出願日】2013年6月27日
(65)【公開番号】特開2015-9617(P2015-9617A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年1月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】513032552
【氏名又は名称】エスアール サンツアー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 義久
【審査官】
山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−101953(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3165583(JP,U)
【文献】
特開2010−202176(JP,A)
【文献】
特開平02−225191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルをロックするロック装置と、前記ロック装置にインナーで接続され、ロック状態と非ロック状態を切り替える手元操作レバー装置を備えた自転車用ハンドルロック装置において、前記手元操作レバー装置は前記ロック装置をロック状態と非ロック状態に切り替えるための操作レバーを備え、前記手元操作レバー装置には前記ロック装置をロック状態と非ロック状態を切り替えるための前記操作レバーの操作方向の面に対し、略90°の方向に前記操作レバーを押圧することにより、安全装置が解除される機構が設けられており、前記安全装置が解除された時に、前記操作レバーの操作が可能にされる自転車用ハンドルロック装置。
【請求項2】
前記ロック装置にはロック力とインナーの伸びを吸収する機能を兼用したバネが備えられている請求項1に記載の自転車用ハンドルロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自転車用ハンドルロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自転車用ハンドルロック装置に関しては多くの考案がされている。多くのハンドルロック装置は前フォークのフォーク肩にロック装置を備えており、ロック装置に付随のレバーを操作する事によりハンドルをロックする機構のものや、ハンドルに手元操作レバー
装置を別途設け、手元操作によりハンドルをロックする機構のものが提案されている。
【0003】
前籠に荷物を載せている時や、ハンドル部に装着された子乗せシートに子供を乗せている時に駐輪する場合、ハンドルがロックされていないと、ハンドルが回転して荷物が脱落したり、また子供が転落したりする事がある。ハンドルロック
装置はこのような問題を防止することを目的としている。
【0004】
この目的からすると、ハンドルをロックする場合、前述のようにロック装置に付随のレバーを操作するものでは、片手をハンドルから離して操作する必要があるので不安定になりやすく、ハンドルがふらつく可能性があり危険である。したがって、ハンドルに且つ握り部近くに別途設けられた手元操作レバー
装置で操作するほうが、両手でハンドルの握り部を握ったまま操作できるので、より安全なのである。
【0005】
ハンドルを握ったまま、別途設けられた手元操作レバー
装置でハンドルをロックする機構は既に下記の特許文献1および特許文献2で紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−101953号公報
【特許文献2】特開2000−225973号公報
【特許文献3】特開2006−199113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1における手元操作レバーには、ロック用の操作レバー
装置と安全装置解除用の解除レバーが別体で開示されている。ハンドルロックを手元操作レバー
装置で行う場合、走行中に不用意に操作レバーを操作してしまうと、ハンドルがロックされ、ハンドル操作が困難になり、転倒する恐れがある。そのような危険を避けるため、特許文献1に記載の機構では簡単に操作レバーを操作出来ないように、操作レバーとは別に安全装置を解除するための解除レバーを設けている。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の機構は安全装置としては有効であるが、ロック操作時には問題がある。特許文献1に記載の機構では、ロックする場合、まず最初に解除レバーを操作して安全装置を解除し、その後操作レバーを操作しなければならない。すなわち、人差し指で解除レバーを操作しつつ、親指で操作レバーを操作しなければならないので、非常にわずらわしいのである。また、操作レバーと解除レバーの二つのレバーを備えるため、構造が複雑になり、コストアップにもなる。
【0009】
特許文献3に記載の機構では安全装置としてスライド部材が設けられているが、スライドさせた部材を保持しながら、操作レバーを回転させなければならず、指の動きからすると操作が困難な構造となっているし、特許文献1に記載の機構と同様、構造が複雑になり、コストアップにもなるのである。
【0010】
手元操作レバーでハンドルをロックする構成の場合、手元操作レバー
装置とロック装置はアウターおよびインナーで接続されているため、インナーが伸びると必要な保持力が得られなくなる場合がある。
【0011】
例えば、特許文献3に記載の機構では保持力を調整・確保するためにバネが設けられている。しかし、この場合、インナーが伸びるとロック用部材と上ワン係合部の係合する量が少なくなることになり、結果、所定の保持力が確保できなくなるのである。さらにインナーが伸びるとロック力を調整・確保するためのバネが全く圧縮されなくなり、ロック力がなくなってしまうのである。
【0012】
本発明は上記課題を一挙に解決するもので、構造が簡単なため安価で、操作性が良く、且つ安全装置の付いた手元操作レバー
装置を備えたハンドルロック装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する為、本発明では
手元操作レバー装置の操作レバーをロック状態と非ロック状態に切り替える操作方向の面に対し、略90°の方向に
前記操作レバーを押圧することにより、安全装置が解除される機構を設け
、前記安全装置が解除された時に前記操作レバーの操作が可能になっている。また、ロック装置にはロック力とインナーの伸びを吸収する機能を兼用したバネが備えられている
【0014】
より具体的には、インナー巻き取り部材と操作レバーを別体で設け、
前記インナー巻き取り部材をレバー台に設けられたレバー軸に対し回転自由に保持し、且つ、ピンを介して
前記インナー巻き取り部材の回転方向の面に対し略90°の方向にも回転するように
前記操作レバーを
前記インナー巻き取り部材と一体的に設けるのである。また、ロック装置にはロック力を調整・確保するためのバネを設け、最低限必要なロック力が得られるバネの圧縮量から更にインナーの伸び量を想定した分を更に圧縮させてセットすることにより、インナーが伸びてもロック力を確保するようにしている。
【発明の効果】
【0015】
従来の手元操作レバー
装置を備えたハンドルロック装置には、自転車走行中、不用意にハンドルをロックしないよう安全装置が装備されているが、操作レバーとは別に解除レバーあるいはスライドボタンを操作しなければならず、停車時にハンドルをロックする場合、操作が煩わしいし、また、構造も複雑でコストアップにもなっている。また、インナーが伸びてくるとロック力が低減するという問題もある。
【0016】
本発明は上記課題を一挙に解決するもので、ワイヤーリールと操作レバーを別体で設け、ワイヤーリールの回転面に対し略90度の方向に操作レバーが回転するように構成することにより、親指1本で安全装置の解除とロック位置までの操作が出来るのであり、不用意な操作によるロックを防ぎつつ、必要な時には簡単にロック出来、且つ構造簡単で安価なハンドルロック装置を提供するものである。
【0017】
また、あらかじめ予想されるインナーの伸び量の分、ロックバネをあらかじめ圧縮する事により、インナーが伸びてもロック力を保持できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】手元操作レバー
装置が非ロック状態の図である。
【
図2】手元操作レバー
装置がロック状態の図(カバーは省略)である。
【
図5】手元操作レバー
装置の安全装置が掛っている状態の図である。
【
図6】手元操作レバー
装置の安全装置が解除された状態の図である。
【
図7】ロック時、ハンドルを無理やり回転させた時の図である。
【
図11】インナーの伸びを吸収するため、アウター受け内のバネをあらかじめ余分に圧縮させた図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は手元操作レバー
装置が非ロック状態の図(カバーは省略)、
図2は手元操作レバー
装置がロック状態の図(カバーは省略)、
図3はロック装置が非ロック状態の図、
図4はロック装置がロック状態の図、
図5は手元操作レバー
装置の安全装置が掛っている状態図、
図6は手元操作レバー
装置の安全装置が解除された状態図、
図7はロック時ハンドルを無理やり回転させた時の図、
図8は手元操作レバー
装置の分解図、
図9はロック装置の分解図、
図10はアウター受けの断面図、
図11はインナーの伸びを吸収するため、アウター受け内のバネをあらかじめ余分に圧縮させた図である。
【0020】
本発明においてロック装置は
図3に示されるようにフロントフォークAにロック装置固定ボルト41によって固定されている。手元操作レバー
装置Cはハンドルにバンド取り付けボルト6(
図8)によって操作しやすい位置に取り付けられる。また、フレームヘッドパイプB下側には外周に斜面を備えた凹凸部43aを備えたロック用下ワン43が圧入固定されている。手元操作レバー
装置Cとロック装置
Dはアウター18およびインナー19により接続されている。
【0021】
まずロック装置
Dの構造について説明する(
図9)。ベースプレート25に揺動プレート26がピン37を介して、回転可能に枢着され、且つバネ30により
図3の矢印Z方向に常時付勢されている。また、揺動プレート26には斜面を備えた凹凸部27aを備える勘合プレート27がピン28により一体的に固定されている。
【0022】
ベースプレート25の一辺25aにはブッシュ32が一体的に固定され、アウター受け33がロックバネ34を圧縮した状態で該ブッシュ32に挿入され、先端に止め輪36を装着することによりアウター受け33が常に
図3の矢印P方向に付勢されるように構成されている。また、揺動プレート26の一辺26aにはインナー19を固定するための部材、ボルト38、ナット39、ザガネ40が装着されている。
【0023】
上述の構成のロック装置
DはフロントフォークAのフォーク肩46にロック装置固定ボルト41により、フレームヘッドパイプBと同心円状に回転するよう固定されており、ロックカバー44はビス45によりベースプレート25に固定されている。なお、フロントフォークAはフレームヘッドパイプBに、下玉押し42、鋼球(図示していない)、ロック用下ワン43、上ワン、鋼球、上玉押し(いずれも図示していない)を介して回転可能に組み込まれ、フォークステム47の上部にハンドルステム(図示していない)を介してハンドルが固定されている。
【0024】
次に手元操作レバー
装置Cの構造について説明する(
図8)。本実施形態では手元操作レバー
装置Cはハンドル左グリップの近辺に装着されている。ベース部材1に一体的に成形されたボス部1dにブッシュ9を介してワイヤーリール3が回転可能にボルト8により組み込まれている。ワイヤーリール3はバネ10により矢印Q方向に常時付勢されている。
【0025】
ワイヤーリール3には操作レバー4がピン5によりワイヤーリール
3の回転方向の面に対し略直角方向に回転可能に枢着され、且つ解除バネ13により
図5の矢印R方向に常時付勢されおり、ワイヤーリール3とレバー4が一体的にベース部材1のボス部1dに対し、回転可能な構造となっている。
【0026】
ベース部材1には操作レバー
4の解放時とロック時の位置決めの為、ストッパーピン2が一体的に固定されており、またインナー長さ調整の為、アウター受けボルト7が取り付けられている。レバーカバー15はビス16,17によりベース部材1に固定されている。
【0027】
上記構成の実施形態に関して、作動を説明する。ハンドルをロックするためには、
図2に示される位置まで操作レバー4を矢印Y方向に操作しなければならないが、
操作レバー4の延出部4a部がストッパーピン2の2a部に当接しているため、矢印Y方向には
操作レバー4は回動出来ない。
【0028】
操作レバー4を矢印Y方向に回動するためには、まず、操作レバー4を
図1および
図6の矢印X方向に解除バネ13に抗して押し、
図6に示されるように操作レバー4の延出部4a部をストッパーピン2の2a部から外さなければならない。その後、操作レバー4を矢印Y方向に回動させ、操作レバー4の延出部4b部がストッパーピン2の2b部を超えたところで操作レバー4が解除バネ13の反力により、自動的に
図5の矢印R方向に戻り、延出部4b部が2b部に当接し、操作レバー4はロック位置で保持される。
【0029】
ロックを解除する場合は、操作レバー4を矢印X方向へ押すと、操作レバー4の延出部4b部がストッパー2の2b部から外れ、バネ10の反力により自動的にロック解除位置に戻る。(
図1の位置に戻る)このように手元操作レバー
装置Cには不意にロックしないように2段階の操作が必要な安全装置が設けられている。
【0030】
ロック装置
Dは
図3のように、フレームヘッドパーツBに対し同心円状に回転するよう
フロントフォークAに一体的に固定されており、手元操作レバー
装置Cにセットされたインナー19がアウター18を介して、ボルト38、ナット39、ザガネ40により揺動プレート26の一辺26aに固定されている。
【0031】
ロック解放時は
図3のようにロック用下ワン43の凹凸部43aと勘合プレート27の凹凸部27aは離れており、
フロントフォークAは回転可能な状態になっている。
【0032】
操作レバー4をロック位置まで操作すると
図4のようにロック用下ワン43の凹凸部43aと勘合プレート27の凹凸部27aが係合しロックされた状態となる。ロックされた状態でハンドルを無理やり回転させると、揺動プレート26に固定された勘合プレート27は凹凸部27aに供えられた斜面27aaにより、ロック用下ワン43から矢印Z方向に離開させられ、
図7のように凹凸部の凸部を乗り越え、更にハンドルを回転させると、次の凹凸部に勘合する。
【0033】
操作レバー
4がロック位置であるにもかかわらず、揺動プレート26に固定された勘合プレート27がロック用下ワンから離開出来るのは、アウター受け33に供えられたロックバネ34が凹凸部を乗り越えようとする時、
図7に示されるように凹凸部の段差分L1だけ圧縮される事による。このときのロックバネの強さにより、ロック時にハンドルを無理やり回転させようとするときの力が決まるのである。通常はハンドルが簡単には回転せず、女性が少し強く力を入れて回転できる程度に設定する。
【0034】
上述のように本発明では、走行中に誤って手元操作レバー
装置Cを操作し、ハンドルが完全に固定されてしまうと、ハンドル操作が出来なくなり転倒などの危険があるので、ハンドルを完全にロックするのではなく、ある一定の力以上でハンドルが回転するよう設定している。
【0035】
アウター受け33に供えられたロックバネ34には別の効果もある。上記説明は操作レバー4を操作してロックさせた時、アウター受け33とバネ34の関係が
図10のようになっている場合である。すなわち、ロックバネ34はロック時、非ロック時ともセットされた状態と同じ状態である。これを
図11のようにロックした時、ロックバネ34が更に圧縮されるように設定しておくと別の効果が得られる。
【0036】
図10のように設定した場合、インナー19が少し伸びるとロック力が減少し、更に伸びるとロックすることが出来ない状態になるが、
図11のように設定しておくと、ロック時およびロック時にハンドルを回転させた時の効果は上述と何ら変わることはないが、インナー19が時間経過とともに伸びてきた場合でも、あらかじめロックバネ34を余分に圧縮させたL2分だけインナーの伸びを自動的に吸収するためロック力は確保できるのである。
【符号の説明】
【0037】
A…フロントフォーク、B…フレームヘッドパイプ、C…手元操作レバー装置、D…ロック装置、1…ベース部材、2…ストッパーピン、3…ワイヤーリール、4…操作レバー、5…ピン、6…ボルト、7…アウター受けボルト、8…ボルト、9…ブッシュ、10…バネ、13…解除バネ、15…レバーカバー、16、17…ビス、18…アウター、19…インナー、25…ベースプレート、26…揺動プレート、27…勘合プレート、27a…勘合プレート凹凸部、27aa…勘合プレート凹凸部斜面、28…ピン、30…バネ、32…ブッシュ、33…アウター受け、34…ロックバネ、36…止め輪、37…ピン、38…ボルト、39…ナット、40…ザガネ、41…ロック装置固定ボルト、42…下玉押し、43…ロック用下ワン、43a…ロック用下ワン凹凸部、44…ロックカバー、45…ビス、46…フォーク肩、47…フォークステム