(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載のポンプにおいて、前記径方向圧力振動が、前記アクチュエータに送られる駆動信号に応答して少なくとも1つの環状波節を有することを特徴とするポンプ。
請求項8に記載のポンプにおいて、前記アイソレータが、前記第1の圧電ディスクと前記鋼製ディスクまたは前記第2の圧電ディスクとの間に結合されていることを特徴とするポンプ。
請求項1に記載のポンプにおいて、前記アクチュエータが、前記第1のキャビティおよび前記第2のキャビティの直径よりも小さい直径を有することを特徴とするポンプ。
請求項1に記載のポンプにおいて、前記アイソレータをスライド可能に受容する前記側壁の凹部をさらに備え、これにより、前記アクチュエータが振動するときに前記アイソレータが前記凹部内で自由に運動することを特徴とするポンプ。
請求項1に記載のポンプにおいて、前記振動運動の前記周波数が、使用中の前記第1のキャビティおよび前記第2のキャビティ内の径方向圧力振動の最低共振周波数に等しいことを特徴とするポンプ。
請求項1に記載のポンプにおいて、使用中の前記第1のキャビティおよび前記第2のキャビティ内の径方向流体圧力振動の最低共振周波数が、約500Hzよりも高いことを特徴とするポンプ。
請求項1に記載のポンプにおいて、前記端壁の運動が、前記第1のキャビティおよび前記第2のキャビティ内の圧力振動に一致したモード形であることを特徴とするポンプ。
請求項1に記載のポンプにおいて、前記第1の弁を備えていない前記第1の開口および前記第2の開口の一方が、前記第1のキャビティに関連した前記端壁の中心に0.63r加えた距離または前記中心から0.2r減じた距離に位置することを特徴とするポンプ。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
画定された入口および出口から流体をポンピングするために音響共振が使用されていることが知られている。これは、長手方向の音響定常波を発生させる音響ドライバを一端に備えた長い円柱キャビティを用いて達成することができる。このような円柱キャビティでは、音響圧力波は、振幅が制限される。断面が変化しているキャビティ、例えば、円錐型、角状円錐型、およびバルブ型のキャビティを使用してより高い振幅の圧力振動が達成され、これにより、ポンピング効果が著しく高められる。このような高振幅波では、エネルギーが散逸する非線形機構が、慎重なキャビティの設計によって抑制される。しかしながら、高振幅音響共振は、近年まで、径方向圧力振動が励振されるディスク形キャビティでは利用されていなかった。国際公開第2006/111775号パンフレット(‘487出願)として公開された国際特許出願PCT/GB2006/001487号明細書に、アスペクト比、即ち、キャビティの半径と高さの比が高い実質的にディスク形のキャビティを備えたポンプが開示されている。
【0004】
‘487出願に記載されているポンプは、関連する国際特許出願PCT/GB2009/050245号明細書、同PCT/GB2009/050613号明細書、同PCT/GB2009/050614号明細書、同PCT/GB2009/050615号明細書、および同PCT/GB2011/050141号明細書でさらに発展している。これらの出願および‘487出願は、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0005】
'487出願および上記の関連出願に記載されているポンプは、従来技術で説明される大多数のポンプとは異なる物理的原理に基づいて動作することに留意することが重要である。特に、当分野で公知の多くのポンプは、容量型ポンプ、即ち、ポンピングチャンバの容積が、流体を圧縮して出口弁から排出するために小さくされ、かつ入口弁を介して流体を吸入するために大きくされるポンプである。このようなポンプの例は、ドイツ特許第4422743号(「Gerlach」)に記載され、容量型ポンプのさらなる例は、米国特許出願公開第2004000843号号明細書、国際公開第2005001287号パンフレット、ドイツ特許第19539020号明細書、および米国特許第6203291号明細書で確認することができる。
【0006】
対照的に、‘487出願は、音響共振の原理を利用して、ポンプのキャビティを介して流体を移動させるポンプについて記載している。このようなポンプの動作では、ポンプキャビティ内の圧力振動が、キャビティの一部分の中の流体を圧縮する一方、キャビティの別の部分の中の流体を膨張させる。より従来型の容量型ポンプとは対照的に、音響共振ポンプは、ポンピング動作を達成するためにポンプキャビティの容積を変化させない。代わりに、音響共振ポンプの設計は、キャビティ内の音響圧力振動を効率的に発生させ、維持し、調整するように構成されている。
【0007】
ここで、音響共振ポンプの詳細な設計および動作について考えると、‘487出願は、実質的に円柱状のキャビティを有するポンプについて記載している。この円柱キャビティは、端壁によって各端部で閉じられた側壁を備え、これらの側壁の1つ以上が被駆動端壁である。このポンプは、端壁に対して実質的に垂直な方向または円柱キャビティの長手方向軸に対して実質的に平行な方向に被駆動端壁を共振運動(即ち、変位振動)させるアクチュエータも備えている。これらの変位振動は、本明細書では以降、被駆動端壁の軸方向振動と呼ばれることもある。被駆動端壁の軸方向振動は、キャビティ内の流体の実質的に比例する圧力振動を発生させる。この圧力振動は、‘487出願に記載されている第1種ベッセル関数の径方向圧力分布に近い径方向圧力分布をもたらす。このような振動は、本明細書では以降、キャビティ内の流体圧力の「径方向振動」と呼ばれる。
【0008】
‘487出願のポンプは、このポンプを通る流体の流れを制御するための1つ以上の弁を有する。このような弁は、人間の可聴周波数を超えた周波数でポンプを動作させるのが好ましいため、高周波数で動作することができる。このような弁は、国際特許出願PCT/GB2009/050614号明細書に記載されている。
【0009】
被駆動端壁は、接触面でポンプの側壁に取り付けられており、ポンプの効率は、一般にこの接触面に依存する。接触面が被駆動端壁の運動を減少または減衰させないように接触面を構築し、これにより、キャビティ内の流体の圧力振動の振幅の低下を軽減することによって、このようなポンプの効率を維持することが望ましい。特許出願PCT/GB2009/050613号明細書(参照により本明細書に組み入れられる‘613出願)は、アクチュエータが被駆動端壁の一部を形成し、アイソレータがアクチュエータと側壁との間の接触面として機能するポンプを開示している。このアイソレータは、被駆動端壁の運動の減衰を軽減する接触面となる。アイソレータの例示的な実施形態は、‘613出願の図面に示されている。
【0010】
‘613出願のポンプは、実質的に環状の端壁によって両端部で閉じられた側壁によって形成されたキャビティを画定する実質的に円柱状のポンプ本体を備えている。端壁の少なくとも1つは、中心部分および側壁に隣接した周辺部分を有する被駆動端壁である。キャビティは、使用中に流体を収容する。このポンプは、アクチュエータに対して実質的に垂直な方向に被駆動端壁を振動運動させるために被駆動端壁の中心部分に機能的に結合されたアクチュエータをさらに備えている。このポンプは、端壁のキャビティの側壁との連結によって引き起こされる変位振動の減衰を軽減するために、被駆動端壁の周辺部分に機能的に結合されたアイソレータをさらに備えている。このポンプは、1つの端壁の中心付近に配設された第1の開口、およびポンプ本体の別の位置に配設された第2の開口をさらに備え、変位振動が、ポンプ本体のキャビティ内で流体圧力の径方向振動を発生させ、これにより、流体が開口を通って流れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(例示的な実施形態の詳細な説明)
いくつかの例示的な実施形態の以下の詳細な説明では、この詳細な説明の一部を構成する添付の図面を参照し、この添付の図面には、本発明を実施することができる特定の実施形態が例示として示されている。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できるように十分に詳細に説明されており、他の実施形態を利用できること、ならびに本発明の概念または範囲から逸脱することなく論理構造の変更、機械的な変更、電気的な変更、および化学的な変更を行うことができることを理解されたい。当業者が本明細書に記載される実施形態を実施する上で必要ではない詳述を回避するために、本説明は、当業者に公知の特定の情報を除外することがある。従って、以下の詳細な説明は、限定の意味に解釈されるべきではなく、例示的な実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0017】
本開示は、音響共振ポンプの機能を改善するいくつかの可能性について説明する。動作中、‘613出願の
図1Aに示されている単一キャビティポンプの例示的な実施形態は、アクチュエータの前後に正味の圧力差を生じさせることができる。正味の圧力差は、アイソレータとポンプ本体との間の結合部に対して、およびアイソレータとアクチュエータの構成要素との間の結合部に対して応力を加える。このような応力が、1つ以上のこれらの結合部の損傷をもたらす可能性があり、ポンプの稼働寿命を延ばすためには結合部を強力にすることが望ましい。
【0018】
さらに、動作するために、‘613出願の
図1Aに示されている単一キャビティポンプは、ポンプのアクチュエータとの強固な電気接続部を備える。この強固な電気接続部は、例えば、ポンプキャビティの反対方向を向いたアクチュエータの側面に容易に取り付けることができるはんだ付け電線またはばね接点を備えることによって達成することができる。しかしながら、‘417出願に開示されているように、この種の共振音響ポンプは、2つのポンプキャビティが共通の被駆動端壁によって駆動されるように設計することもできる。2キャビティポンプは、単一キャビティ設計と比較すると高い流量および/または高い圧力を供給することができ、かつスペース、出力、またはコスト効率を向上させることができる。しかしながら、2キャビティポンプでは、2つのポンプキャビティの少なくとも1つにおける音響共振を妨げずに、かつ/またはアクチュエータの運動を機械的に減衰させずに、従来の手段を用いてアクチュエータに電気接点を形成するのは困難である。例えば、はんだ付け電線またはばね接点は、これらが存在するキャビティの音響共振を妨げることがある。
【0019】
従って、ポンプの寿命および性能のために、アクチュエータとアイソレータとの間の強い結合部を達成すると共に、2キャビティポンプのキャビティの何れかの共振に悪影響を与えずにアクチュエータとの強固な電気接続を容易にするポンプの構造が望ましい。
【0020】
図1および
図2を参照すると、例示的な一実施形態による2キャビティポンプ10が示されている。ポンプ10は、一端がベース12によって閉じられ他端が端部プレート41によって閉じられた円筒壁11を有する、実質的に円柱状の第1のポンプ本体を備えている。アイソレータ30は、環状アイソレータとすることができ、端部プレート41と反対側の第1のポンプ本体の円筒壁11との間に配設されている。円筒壁11およびベース12は、第1のポンプ本体を構成する単一部品としても良い。ポンプ10は、一端がベース19によって閉じられ他端が圧電ディスク42によって閉じられた円筒壁18を有する、実質的に円柱状の第2のポンプ本体も備えている。アイソレータ30は、端部プレート42と反対側の第2のポンプ本体の円筒壁18との間に配設されている。円筒壁18およびベース19は、第2のポンプ本体を構成する単一部品としても良い。第1のポンプ本体および第2のポンプ本体は、他の構成要素またはシステムに取り付けても良い。
【0021】
円筒壁11、ベース12、端部プレート41、およびアイソレータ30の内面が、ポンプ10内に第1のキャビティ16を形成し、この第1のキャビティ16は、端壁13および14によって両端部で閉じられた側壁15を備えている。端壁13は、ベース12の内面であり、側壁15は、円筒壁11の内面である。端壁14は、端部プレート41の表面に相当する中心部分、およびアイソレータ30の第1の表面に相当する周辺部分を有する。第1のキャビティ16は、実質的に円形の形状であるが、楕円形または他の形状であっても良い。円筒壁18、ベース19、圧電ディスク42、およびアイソレータ30の内面が、ポンプ10内に第2のキャビティ23を形成し、この第2のキャビティ23は、端壁20および21によって両端部で閉じられた側壁22を備えている。端壁20は、ベース19の内面であり、側壁22は、円筒壁18の内面である。端壁21は、圧電ディスク42の内面に相当する中心部分、およびアイソレータ30の第2の表面に相当する周辺部分を有する。第2のキャビティ23は、実質的に円形の形状であるが、楕円形または他の形状であっても良い。第1および第2のポンプ本体の円筒壁11、18およびベース12、19は、限定されるものではないが、金属、セラミック、ガラス、またはプラスチックを含む適切な硬質材料から形成することができる。
【0022】
圧電ディスク42は、端部プレート41に機能的に結合されてアクチュエータ40を形成している。アクチュエータ40は、端壁14および21の中心部分に機能的に結合されている。圧電ディスク42は、圧電材料または別の電気的に活性な材料、例えば、電歪材料または磁歪材料などから形成することができる。端部プレート41は、好ましくは、圧電ディスク42と同様の曲げ剛性を有し、電気的に不活性な材料、例えば、金属またはセラミックから形成することができる。圧電ディスク42は、振動電流によって励起されると、キャビティ16、23の長手方向軸に対して径方向に膨張および収縮して、アクチュエータ40を曲げようとする。アクチュエータ40が曲がると、端壁14、21は、この端壁14、21に対して実質的に垂直な方向に軸変形する。端部プレート41は、電気的に活性な材料、例えば、圧電材料、磁歪材料または電歪材料などから形成することもできる。
【0023】
ポンプ10は、第1のキャビティ16からポンプ10の外部まで延びた少なくとも2つの開口をさらに備え、これらの開口の少なくとも一方の開口が、開口を通る流体を制御する弁を備えている。弁を備える開口は、キャビティ16内の所定の位置に配設することができ、アクチュエータ40が、以下に詳細に説明されるように差圧を生じさせる。ポンプ10の一実施形態は、端壁13のほぼ中心に位置する弁を有する開口を備えている。ポンプ10は、端壁13のほぼ中心でキャビティ16からポンプ本体のベース12を貫通した、弁35を有する一次開口25を備えている。弁35は、一次開口25内に取り付けられ、矢印によって示されているように一方向の流体の流れを可能にし、ポンプ10の流体の入口として機能する。流体の入口という語は、減圧の出口と呼ばれることもある。二次開口27を、弁35を有する開口25の位置以外のキャビティ11内の所定の位置に配設することができる。ポンプ10の一実施形態では、二次開口27は、端壁13の中心と側壁15との間に配設されている。ポンプ10の実施形態は、端壁13の中心と側壁15との間に配設された、キャビティ11からベース12を貫通した2つの二次開口27を備えている。
【0024】
ポンプ10は、キャビティ23からポンプ10の外部まで延びた少なくとも2つの開口をさらに備え、これらの開口の少なくとも第1の開口が、この開口を通る流体の流れを制御する弁を備え得る。弁を備える開口は、アクチュエータ40が、以下により詳細に説明されるように差圧を生じさせるキャビティ23の所定の位置に配設することができる。ポンプ10の一実施形態は、端壁20のほぼ中心に位置する弁を有する開口を備えている。ポンプ10は、端壁20のほぼ中心でキャビティ23からポンプ本体のベース19を貫通した、弁を有する一次開口26を備えている。弁36は、一次開口26内に取り付けられ、矢印によって示されているように一方向の流体の流れを可能にし、ポンプ10の流体の入口として機能する。流体の入口という語は、減圧の出口と呼ばれることもある。二次開口28を、弁36を有する開口26の位置以外のキャビティ23内の所定の位置に配設することができる。ポンプ10の一実施形態では、二次開口28は、端壁20の中心と側壁22との間に配設されている。ポンプ10の実施形態は、端壁20の中心と側壁22との間に配設された、キャビティ23からベース19を貫通した2つの二次開口28を備えている。
【0025】
弁は、
図1に示されているポンプ10の実施形態の二次開口27、28内には示されていないが、二次開口27、28は、必要に応じて、性能を改善するために弁を備えることができる。
図1のポンプ10の一実施形態では、一次開口25、26は、矢印によって示されているように、これらの一次開口25、26を介してポンプ10のキャビティ16、23内に流体を吸入し、二次開口27、28を介して流体をキャビティ16、23から排出するように弁を備えている。結果として生じる流れは、一次開口25、26に負圧を生じさせる。本明細書で使用される減圧という語は、一般に、ポンプ10が配置されている周囲の圧力よりも低い圧力を指す。真空および負圧という語は、減圧を表すために使用しても良いが、実際の減圧は、完全な真空に通常関連する減圧よりも大幅に弱くても良い。圧力は、ゲージ圧という意味では負である、即ち、圧力は、周囲の大気圧よりも低く減圧される。特段の記載がない限り、本明細書で述べられる圧力の値はゲージ圧である。減圧の増大とは、典型的には絶対圧の低下を指し、一方、減圧の低下は、典型的には絶対圧の上昇を指す。
【0026】
弁35および36は、上記のように実質的に一方向に流体を流すことができる。弁35および36は、ボール弁、ダイヤフラム弁、スイング弁、ダックビル弁、クラッパー弁、持ち上げ弁、別のタイプの逆止め弁、または実質的に一方向のみに流体を流すことができる弁とすることができる。一部の弁のタイプは、開位置と閉位置との間で切り替えることによって流体の流れを制御することができる。このような弁が、アクチュエータ40によって生じる高周波数で動作するために、弁35および36は、圧力変動の時間スケールよりも大幅に短い時間スケールで開閉することができるように、極端に速い応答時間を有する必要がある。弁35および36の一実施形態は、例示的な軽量フラップ弁を利用することによってこれを達成し、このような計量フラップ弁は、慣性が小さく、結果として、弁の構造の前後の相対圧力の変動に応答して迅速に移動することができる。
【0027】
図3および
図4をより詳細に参照すると、フラップ弁50の一実施形態は、開口25内に取り付けられて示されている。フラップ弁50は、保持プレート52と密封プレート53との間に配設されたフラップ51を備えている。フラップ51は、使用されていないとき、即ち、フラップ弁50が通常に閉じているときは、密封プレート53に対して付勢されて、フラップ弁50を密封する閉位置にある。弁50は、保持プレート52の上面が、好ましくは、端壁13と同一平面であってキャビティ16の共振の質が維持されるように、開口25内に取り付けられる。保持プレート52および密封プレート53はそれぞれ、
図4にそれぞれ破線および実線の円で示されているように、プレートの一側から他側まで延びた通気孔54および55を備えている。フラップ51も、通気孔56を備え、この通気孔は、一般的には保持プレート52の通気孔54に整合して、
図3Aおよび
図3Bの破線の矢印によって示されているように流体が通過できる通路を画定している。しかしながら、
図3Aおよび
図3Bから分かるように、保持プレート52の通気孔54およびフラップ51の通気孔56は、密封プレート53の通気孔55に整合していない。フラップ51が
図3に示されている閉位置にあるときには、密封プレート53の通気孔55がフラップ51によって塞がれるため、流体は、フラップ弁50を通過することができない。
【0028】
フラップ弁50の動作は、このフラップ弁50の前後の流体の差圧(ΔP)の方向の変化に依存する。
図3では、差圧は、下向きの矢印によって示されている負の値(−ΔP)となっている。この負の差圧(−ΔP)により、弁フラップ51が上記のように完全に閉じた位置に移動し、フラップ51が密封プレート53に密封されて通気孔55が塞がれ、これにより弁50を通る流体の流れが防止される。フラップ弁50の前後の差圧が、
図3Aの上向きの矢印によって示されているように正の差圧(+ΔP)に逆転すると、付勢されたフラップ51が、密封プレート53から保持プレート52に向かって開位置に移動する。開位置では、フラップ51の移動により、密封プレート53の通気孔55が塞がれていないため、破線の矢印によって示されているように、流体が通気孔55を通ることができ、フラップ51の通気孔56と保持プレート52の通気孔54とが整合している。差圧が、
図3Bの下向きの矢印によって示されているように負の差圧(−ΔP)に戻ると、流体は、破線の矢印によって示されているようにフラップ弁50を通って反対方向に流れ始め、これにより、フラップ51が、
図3に示されている閉位置に向かって戻される。従って、差圧の変化により、フラップ弁50が、閉位置と開位置との間で循環し、差圧が正の値から負の値に変化するときにフラップ51が閉じることによって流体の流れが遮断される。フラップ弁50の適用例によっては、フラップ弁50が使用されていないときにフラップ51を保持プレート52に対して付勢して開位置にすることができる、即ち、フラップ弁50が通常は開いていることを理解されたい。
【0029】
ここで、組み合わせられたアクチュエータとアイソレータの詳細な構造に目を向けると、
図5Aおよび
図5Bは、本発明による組み合わせられたアクチュエータ40とアイソレータ30の断面図を示している。アイソレータ30が圧電ディスク42と端部プレート41との間に挟まれてサブアセンブリが形成されている。アイソレータ30と端部プレート41と圧電ディスク42との間の結合は、限定されるものではないが、接着を含む適切な方法によって形成することができる。アイソレータ30が圧電ディスク42と端部プレート41との間に保持されていることから、アイソレータとこれらの2つの部品との間の連結が非常に強力となり、これは、本明細書で既に記載されたようにアセンブリの前後に圧力差が存在し得る場合に必要なことである。
【0030】
図6は、アイソレータ30およびアクチュエータ40の中に電極を組み入れることによってアクチュエータ40に対する電気接続が確立されるポンプ10の組み合わせられたアクチュエータ40とアイソレータ30の縁部の拡大図を示している。例示されている実施形態では、アイソレータ30は、アイソレータ300を含み得る。アクチュエータ40は、上面の第1のアクチュエータ電極421および下面のアクチュエータ電極422を有する圧電ディスク42を備えている。第1のアクチュエータ電極421および第2のアクチュエータ電極422は共に金属である。第1のアクチュエータ電極421は、アクチュエータ40の周囲の少なくとも1つの位置でアクチュエータ40の縁部の周りに巻き付けられて、第1のアクチュエータ電極421の一部が圧電ディスク42の下面まで延びている。第1のアクチュエータ電極421のこの巻き付け部分が、巻き付け電極(wrap electrode)423である。動作中、電圧が、第1のアクチュエータ電極421および第2のアクチュエータ電極422にかかり、電場が、実質的に軸方向における電極間に発生する。圧電ディスク42は、軸方向の電場により、圧電ディスク42が、発生する電場の極性によって径方向に膨張または収縮するように極性が与えられる。動作中は、第1のアクチュエータ電極421と、第1のアクチュエータ電極421の反対側の圧電ディスク42の表面の一部に延在する巻き付け電極423との間には電場が発生しない。従って、軸方向の電場が生じる領域は、巻き付け電極423を含まない圧電ディスク42の領域に限定される。このため、巻き付け電極423は、圧電ディスク42の下面のほんの一部に延在すれば良い。加えて、
図6は、端部プレート41の上に位置する圧電ディスク42を示しているが、これらの要素の位置は、別の実施形態では変更しても良いことに留意されたい。このような実施形態では、圧電ディスク42は、端部プレート41の下に組み付けることができ、第2のアクチュエータ電極422は、圧電ディスク42の上面に存在しても良い。これに応じて、第1のアクチュエータ電極421は、圧電ディスク42の下面に存在しても良く、巻き付け電極423は、圧電ディスク42の縁部の周りに延在して、圧電ディスク42の上面の一部を覆っても良い。
【0031】
アイソレータ300は、上面および下面に導電性電極を備えた可撓性の非導電性コア303からなる。アイソレータ300の上面は、第1のアイソレータ電極301を備え、アイソレータ300の下面は、第2のアイソレータ電極302を備えている。第1のアイソレータ電極301は、巻き付け電極423に接続される、従って、圧電ディスク42の第1のアクチュエータ電極421に接続される。第2のアイソレータ電極302は、端部プレート41に接続される、従って、圧電ディスク42の第2のアクチュエータ電極422に接続される。この場合、端部プレート41は、導電性材料から形成するべきである。例示的な一実施形態では、アクチュエータ40は、同様の寸法の圧電セラミック製圧電ディスク42に結合された、約5mm〜約20mmの半径および約0.1mm〜約3mmの厚さの鋼製端部プレート41を備えている。アイソレータコア303は、約5ミクロン〜約200ミクロンの厚さのポリイミドから形成されている。第1および第2のアイソレータ電極301、302は、約3ミクロン〜約50ミクロンの厚さを有する銅層から形成されている。例示的な実施形態では、アクチュエータ40は、同様の寸法の圧電ディスク42に結合された、約10mmの半径および約0.5mmの厚さの鋼製端部プレート41を備えている。アイソレータコア303は、約25ミクロンの厚さのポリイミドから形成されている。第1および第2のアイソレータ電極301、302は、約9ミクロンの厚さの銅から形成されている。ポリイミドのさらなるキャッピング層(不図示)をアイソレータ300に選択的に設けて第1および第2のアイソレータ電極301、302を絶縁し、ロバスト性を付与することができる。
【0032】
図7は、電極層としての第1のアイソレータ電極301の可能な構造として
図6に含められるアイソレータ300の平面図を示している。第1のアイソレータ電極301は、スポーク部材312によって連結された内側環状部分313と外側環状部分314を備えた環状部分を有する。アイソレータ電極301は、環状部分の外側環状部分314から延びたタブ部分または尾部310も備えている。環状部分は、弧状の窓311で円周方向にパターン形成され、この窓311は、環状部分の周辺部に延在して、内側環状部分313および外側環状部分314を形成している。窓311は、内側環状部分313と外側環状部分314との間に軸方向に延在するスポーク部材312によって互いに離間している。
【0033】
一実施形態では、第1のアイソレータ電極301を形成する電極層は、上記のように、ポリイミド層に隣接して形成された銅層である。第2のアイソレータ電極302は、第1の電極層の反対側のポリイミド層に隣接した第2の電極層から形成することができる。この実施形態では、第1のアイソレータ電極301は、この第1のアイソレータ電極301を形成する電極層に窓311が残るようにパターン形成されている。窓311は、アイソレータ300が、アクチュエータ40の外縁とポンプベース11および18の内縁との間でより自由に曲がる領域を実現する。これらの窓311は、アイソレータ300の剛性を局所的に低下させ、これにより、アイソレータ300がより容易に曲がることができ、従って、アクチュエータ40の運動で通常は電極層が受け得る減衰作用が減少する。第1のアイソレータ電極301の内側環状部分313は、圧電ディスク42の巻き付け電極423への接続を可能にする。内側環状部分313は、4つのスポーク部材312によって外側環状部分314に接続されている。電極301の追加部分315は、ポンプ10の駆動回路との接続を容易にするために尾部310に沿って延びている。第2のアイソレータ電極302は、同様に構成することができる。
【0034】
図7Aおよび
図7Bは、円筒壁11と円筒壁18との間のアイソレータ300の取り付けを含む、
図7に示されている組み合わせられたアクチュエータ40とアイソレータ300のアセンブリを通る断面図を示している。
図7Aは、窓311を含む領域を通る断面を示している。
図7Bは、スポーク部材312を含む領域を通る断面を示している。アイソレータ300は、円筒壁11および円筒壁18に、はんだ付け、溶接、締め付け、または他の方法で取り付けることができる。コア303、第1および第2のアイソレータ電極301および302、ならびに追加キャッピング層(不図示)を備えるアイソレータ300は、銅(または他の導電材料)トラックがカプトン(または他の可撓性非導電材料)ポリイミド基板に形成される可撓性プリント回路基板製造技術を用いて好都合に形成することができる。このようなプロセスは、上記の寸法の部品を製造することができる。
【0035】
非限定の一例では、圧電ディスク42および端部プレート41の直径は、アイソレータ30が端壁14および21の周辺部分に架かるようにキャビティ16および23の直径よりも1〜2mm小さくすることができる。この周辺部分は、アクチュエータ40の縁部とキャビティ16の側壁15およびキャビティ23の側壁22との間の約0.5mm〜約1.0mmの環状の間隙とすることができる。一般に、アクチュエータ40の直径がキャビティ16、23の直径に近く、これにより、環状変位節47(不図示)の直径が環状波節57(不図示)の直径にほぼ等しく、アクチュエータ40の振動を容易にするがこの振動を制限しない十分な大きさであるように、この間隙の環状幅は、キャビティの半径(r)に対して比較的小さくするべきである。環状変位節47および環状波節57は、
図8、
図8A、および
図8Bを参照してより詳細に説明される。
【0036】
ここで、
図8、
図8A、および
図8Bを参照すると、ポンプ10の動作中に、圧電ディスク42が励起されて、端部プレート41に対して径方向に膨張および収縮してアクチュエータ40が曲がり、これにより、被駆動端壁14、21に対して実質的に垂直な方向に被駆動端壁14、21の軸方向変位が生じる。アクチュエータ40は、上記のように端壁14、21の中心部分に機能的に結合し、このため、アクチュエータ40の軸方向変位振動により、端壁14、21の中心付近において、端壁14、21の表面に沿った最大振幅の振動の軸方向変位振動、即ち、波腹変位振動が生じる。ポンプ10の変位振動および結果として生じる圧力振動はそれぞれ、
図8Aおよび
図8Bにより詳細に示されている。変位振動と圧力振動との間の位相関係は、変化し得るため、特定の位相関係を、図面から示すべきではない。
【0037】
図8Aは、キャビティ16、23の被駆動端壁14、21の軸方向振動を例示する、1つの起こり得る変位プロファイルを示している。実線の曲線および矢印は、一時点での被駆動端壁14、21の変位を示し、破線の曲線は、半周期遅い被駆動端壁14、21の変位を示している。
図8Aおよび
図8Bに示されている変位は誇張されている。アクチュエータ40は、その周辺部で固着されずにアイソレータ30に懸架されているため、その基本モードでその質量中心を中心に自由に振動する。この基本モードでは、アクチュエータ40の変位振動の振幅は、被駆動端壁14、21の中心と対応する側壁15、22との間に位置する環状の変位節47で実質的にゼロである。端壁14、21の他の点での変位振動の振幅は、垂直の矢印で示されているようにゼロよりも大きい。中心変位波腹48がアクチュエータ40のほぼ中心に存在し、周辺変位波腹48’がアクチュエータ40の周辺部に存在する。
【0038】
図8Bは、
図8Aに示されている軸方向変位振動から生じるキャビティ16、23内の圧力振動を例示する、1つの起こり得る圧力振動プロファイルを示している。実線の曲線および矢印は、一時点での圧力を示し、破線の曲線は、半周期後の圧力を示している。このモードおよびより高次のモードでは、圧力振動の振幅は、キャビティ16、23の中心付近の中心波腹58、およびキャビティ16、23の側壁15、22の近傍の周辺波腹58’を有する。圧力振動の振幅は、波腹58と波腹58’との間の環状波節57で実質的にゼロである。円柱キャビティでは、キャビティ16、23内の圧力振動の振幅の径方向依存性は、第1種ベッセル関数によって近似することができる。上記の圧力振動は、キャビティ16、23内での流体の径方向運動によって生じるため、アクチュエータ40の軸方向変位振動と区別されるように、キャビティ16、23内の流体の径方向圧力振動と呼ぶことにする。
【0039】
図8Aおよび
図8Bを参照すると、アクチュエータ40の軸方向変位振動の振幅の径方向依存性(アクチュエータ40の「モード形」)は、第1種ベッセル関数を近似して、キャビティ16、23内の所望の圧力振動の振幅の径方向依存性(圧力振動の「モード形」)により厳密に一致させるべきであることが分かる。アクチュエータ40をその周辺部で固着しないで、このアクチュエータ40がその質量中心を中心により自由に振動できるようにすることにより、変位振動のモード形が、キャビティ16、23内の圧力振動のモード形に実質的に一致し、モード形の一致またはより単純にモードの一致が達成される。モードの一致は、これに関して常に完全でなくても良いが、アクチュエータ40の軸方向変位振動およびキャビティ16、23内の対応する圧力振動は、アクチュエータ40の全表面に亘って実質的に同じ相対位相を有し、キャビティ16、23内の圧力振動の環状波節57の径方向位置とアクチュエータ40の軸方向変位振動の環状変位節47の径方向位置は実質的に一致する。
【0040】
上述のように、弁50の動作は、この弁50の前後の流体の差圧(ΔP)の方向の変化に依存する。差圧(ΔP)は、保持プレート52の全表面に亘って実質的に均一であると仮定する。このように仮定するのは、(i)保持プレート52の直径が、キャビティ16および23内の圧力振動の波長に対して小さく、かつ(ii)弁50が、キャビティのほぼ中心に位置し、正の中心波腹58の振幅が比較的一定であるためである。
図8Bを参照すると、正の中心波腹58の正の方形部分55は、比較的一定であることを示している。負の中心波腹68の負の方形部分65も、比較的一定であることを例示している。従って、弁50の中心部分の前後の圧力の空間的なばらつきは、実質的に存在しない。
【0041】
図9Aは、弁50に差圧がかかったときの弁50の動的な動作をさらに例示し、この差圧は、正の値(+ΔP)と負の値(−ΔP)との間で時間と共に変化する。実際には、弁50の前後の差圧の時間依存性は、ほぼ正弦波であり得るが、弁50の前後の差圧の時間依存性は、弁50の動作の説明を容易にするために、
図9Aに示されている方形波形での変動として近似される。正の差圧55は、正圧期間(t
p+)に亘って弁50の前後にかかり、負の差圧65は、方形波の負圧期間(t
p−)に亘って弁50の前後にかかる。
図9Bは、この時変圧力に応じた弁フラップ51の移動を例示している。差圧(ΔP)が、負65から正55に切り替わると、上記にも記載され、
図9Bのグラフに示されているように、弁50が開き始め、弁フラップ51が保持プレート52に接触するまで開時間遅延(T
O)の間、開き続ける。続いて、差圧(ΔP)が、正の差圧55から負の差圧65に切り替わると、上記にも記載され、
図9Bのグラフに示されているように、弁50が閉じ始め、閉時間遅延(T
C)の間、閉じ続ける。
【0042】
本明細書に記載されるポンプの寸法は、好ましくは、キャビティ16および23の高さ(h)とキャビティ16および23の半径(r)との間の関係についての特定の不等式を満たす必要がある。半径(r)は、キャビティの長手方向軸から、キャビティのそれぞれの側壁15、22までの距離である。これらの式は以下の通りである:
r/h>1.2;および
h
2/r>4×10
−10メートル。
【0043】
例示的な一実施形態では、キャビティの半径とキャビティの高さの比(r/h)は、キャビティ16、23内の流体が気体である場合は約10〜約50である。この例では、キャビティ16、23の容積は、約10ml未満とすることができる。加えて、h
2/rの比は、作動流体が液体ではなく気体である場合は、好ましくは、約10
−3〜約10
−6メートルの範囲内である。
【0044】
例示的な一実施形態では、第2の開口27、28(
図1)は、キャビティ16、23内の圧力振動の振幅がゼロに近い位置、即ち、
図8Bに示されているように圧力振動の節点47、57に位置する。キャビティ16、23が円柱である場合、圧力振動の径方向依存性は、第1種ベッセル関数によって近似することができる。キャビティ内の最低次の圧力振動の径方向節(radial node)が、端壁13、20の中心またはキャビティ16、23の長手方向軸から約0.63r±0.2rの距離に生じる。従って、二次開口27、28は、好ましくは、端壁13、20の中心から径方向距離(a)に位置し、(a)≒0.63r±0.2r、即ち、圧力振動の節点57に近い。
【0045】
加えて、本明細書に開示されるポンプは、好ましくは、キャビティの半径(r)および動作周波数(f)に関する以下の不等式を満たす必要があり、この動作周波数(f)は、アクチュエータ40が振動して端壁14、21に軸方向変位を生じさせる周波数である。不等式は以下の通りである:
キャビティ16、23内の作動流体中の音速(c)は、上記の式で表されるように約115m/秒の低速(c
s)〜約1,970m/秒に等しい高速(c
f)の範囲とすることができ、k
0は定数である(k
0=3.83)。アクチュエータ40の振動運動の周波数は、好ましくは、キャビティ16、23内の径方向圧力振動の最低共振周波数にほぼ等しいが、その値の±20%の範囲内であっても良い。キャビティ16、23内の径方向圧力振動の最低共振周波数は、好ましくは、約500Hzよりも高い。
【0046】
図10Aは、
図1のポンプ10を模式的に示し、2つのキャビティ16および23の入口開口25および26ならびに出口開口27、28の位置と、開口25および26のそれぞれに位置する弁35および36の位置を示している。
図10Bは、2キャビティポンプ60の代替の構成を示し、この構成では、ポンプ60の一次開口625および626の弁635および636が逆向きになっているため、流体は、矢印によって示されているように、一次開口625および626を介してキャビティ16および23から排出され、二次開口627および628を介してキャビティ16および23内に吸入され、これにより、一次開口625および626の正圧源が得られる。
【0047】
図10Cは、2キャビティポンプ70の別の構成を示し、この構成では、ポンプ70のキャビティ16および23の一次開口および二次開口の両方が、キャビティの端壁の中心付近に位置している。この構成では、一次開口および二次開口の両方に、図示されているように弁が設けられているため、流体は、一次開口725および726を介してキャビティ16および23に吸入され、二次開口727および728を介してキャビティ16および23から排出される。
図10Cに模式的に示されている2弁構成の利点は、2弁構成が、キャビティ16および23内の圧力振動の全波整流を可能にすることである。
図10Aおよび
図10Bに示されている構成は、半波整流のみを行うことができる。従って、ポンプ70は、同じ駆動条件下でポンプ10および60よりも高い差圧を生じさせることができるが、ポンプ10および60は、ポンプ70よりも高い流量を送達することができる。一部の適用例では、高圧性能および高流量性能の両方を有する2キャビティポンプを使用することが望ましい。
【0048】
図10Dは、2キャビティハイブリッドポンプ90の別の代替の構成を示し、この構成では、キャビティ16は、一次開口925および二次開口927を備え、この一次開口925には、
図10Aのポンプ10のキャビティ16の構成と同様の方式で弁935が配設されている。キャビティ23は、
図10Cのポンプ70のキャビティ23の構成と同様の方式で弁936が配設された一次開口926および弁938が配設された二次開口928を備えている。従って、ハイブリッドポンプ90は、特定の適用例で必要な場合には、高圧と高流量の両方を実現することができる。2つのキャビティ16と23は、適切なマニホールド装置を使用することによって、直列に接続して圧力を高めることもできるし、または並列に接続して流量を増やすこともできる。このようなマニホールドは、円筒壁11、ベース12、円筒壁18、およびベース19に組み込んで組み立てを容易にし、かつポンプ10の組み立てに必要な部品の数を減らすことができる。
【0049】
例えば、ある適用例は、創傷治療にハイブリッドポンプを使用する。ハイブリッドポンプ90は、創傷治療用の包帯に使用されるマニホールドに負圧をかけるのに有用であり、この創傷治療では、包帯は、創傷部に隣接して配置され、創傷部位内の負圧を遮断するドレープによって覆われる。一次開口925および926が共に周囲圧力であり、アクチュエータ40が振動し始めて、上記のようにキャビティ16および23内で圧力振動が発生すると、空気が弁935および936を選択的に流れ始め、空気が二次開口927および928から流出し、これにより、ハイブリッドポンプ90が、「自由流動」モードで動作し始める。一次開口925および926の圧力が、周囲圧力から徐々に高い負圧まで上昇すると、ハイブリッドポンプ90は、最終的に最大目標圧力に達し、この時点で2つのキャビティ16および23を流れる気流はごく僅かである、即ち、ハイブリッドポンプ90は、空気が流れない「機能停止状態」である。ハイブリッドポンプ90のキャビティ16からの流量の増加が、2つの治療条件に必要である。第1に、高流量は、包帯から流体が迅速に排出されるように自由流動モードで負圧治療を開始して、ドレープが創傷部位を確実に密封し、創傷部位の負圧を維持するために必要である。次に、一次開口925および926の圧力が最大目標圧力に達して、ハイブリッドポンプ90が機能停止状態になった後、ドレープまたは包帯に漏れが生じて密封が弱くなったときに目標圧力を維持するために高流量が再び必要である。
【0050】
ここで、
図11を参照すると、ハイブリッドポンプ90がより詳細に示されている。上述のように、ハイブリッドポンプ90は、以下により詳細に説明されているように、
図1に示されているポンプ10と実質的に同様である。ハイブリッドポンプ90は、
図10Dを参照して上記説明されたように反対方向の空気流を可能にする弁936および938を有する二重弁構造を備えている。弁936および938は共に、上記のように、弁35および36と同様の方式で機能する。より詳細には、弁936および938は、
図3、
図3A、および
図3Bを参照して説明されたように弁50と同様に機能する。弁936および938は、
図12に示されているように、1つの二方向弁930として構成することができる。2つの弁936と938は、共通壁または分割障壁940を共有するが、他の構造も可能である。弁938の前後の差圧が、当初は負であり、正の差圧(+ΔP)に逆転すると、弁936が、その通常の閉位置から開き、流体が、矢印939によって示されている方向に流れる。しかしながら、弁936の前後の差圧が、当初は正であり、負の差圧(−ΔP)に逆転すると、弁936が、通常の閉位置から開き、流体が、矢印937によって示されている反対方向に流れる。結果として、弁936と938の組み合わせは、差圧(ΔP)の周期に応答して両方向に流体を流すことができる二方向弁として機能する。
【0051】
ここで、
図13を参照すると、本発明の別の例示的な実施形態によるポンプ190が示されている。ポンプ190は、
図11のポンプ90と実質的に同様であるが、ポンプ本体が、切頭円錐形である端壁13’を形成する上面を有するベース12’を備えている点が異なる。結果として、キャビティ16’の高さが、側壁15の高さから、端壁13’、14の中心における端壁13’と14との間の低い高さまで変化している。切頭円錐形の端壁13’は、キャビティ16’の高さが低いキャビティ16’の中心の圧力を、キャビティ16’の高さが高いキャビティ16’の側壁15の圧力よりも高くする。従って、等しい中心圧力振幅を有する円柱キャビティ16と切頭円錐キャビティ16’を比較すると、切頭円錐キャビティ16’は、一般に、このキャビティ16’の中心から離れた位置で小さい圧力振幅を有し;キャビティ16’の高さの増加が、圧力波の振幅を小さくする働きをすることが明らかである。キャビティ16’内の流体の振動中に粘性損失および熱エネルギー損失が、このような振動の振幅と共に増大するため、切頭円錐の設計を採用することによってキャビティ16’の中心から離れた圧力振動の振幅を小さくすることがポンプ190の効率にとって有利である。キャビティ16’の直径が約20mmであるポンプ190の例示的な一実施形態では、側壁15におけるキャビティ16’の高さは、約1.0mmであり、端壁13’の中心の約0.3mmの高さに向かって次第に低くなっている。端壁13’または20’の何れか一方が、切頭円錐形を有し得る。
【0052】
上記の通り
図9Aに示されているように、正の差圧55は、正圧期間(t
p+)に亘って弁50の前後にかかり、負の差圧65は、方形波の負圧期間(t
p−)に亘って弁50の前後にかかる。アクチュエータ40が、キャビティ16内に正の差圧55を生じさせると、
図9Cに示されているように、同時に負の差圧57が、他方のキャビティ23内に必然的に生じる。相応して、アクチュエータ40が、キャビティ16内に負の差圧65を生じさせると、同様に
図9Cに示されているように、同時に正の差圧67が、他方のキャビティ23内に必然的に生じる。
図9Cは、同時の差圧57と67の方形波の周期によって変化する開位置と閉位置との間の弁936および938の動作周期のグラフを示している。このグラフは、弁936および938のそれぞれが閉位置から開くときのこれらの各弁の半周期を示している。弁936の前後の差圧が、当初は負であり、正の差圧(+ΔP)に逆転すると、弁936が、上記のように、グラフ946によって示されているように開き、流体が、
図12の矢印937によって示されている方向に流れる。しかしながら、弁938の前後の差圧が、当初は正であり、負の差圧(−ΔP)に逆転すると、弁938は、上記のように、グラフ948によって示されているように開き、流体が、
図12の矢印939によって示されている反対方向に流れる。結果として、弁936と938の組み合わせは、差圧(ΔP)の周期に応答して両方向に流体を流すことができる二方向弁として機能する。
【0053】
図14を参照すると、異なる弁構造を有するポンプの圧力と流量のグラフが示されている。例えば、(i)グラフ100は、ポンプ10などの単一弁構造の圧力と流量の特性を示し、(ii)グラフ700は、ポンプ70などの二方向またはスプリット弁構造の圧力と流量の特性を示し、(iii)グラフ800は、米国特許出願第61/537,431号に示されているポンプ80などの二重弁構造の圧力と流量の特性を示し、および(iv)グラフ900は、ハイブリッドポンプ90などのハイブリッドポンプ構造の圧力と流量の特性を示している。上述のように、二方向ポンプ70は、同じ駆動条件下で単一弁ポンプ10および60よりも高い差圧を生じさせることができ、これは、低流量F1に制限されるという犠牲を払うが高圧P1を達成できることを示しているグラフ700によって例示されている。逆に、単一弁ポンプ10および60は、同じ駆動条件下で二方向ポンプ70よりも高い流量を送達することができ、これは、低圧P2に制限されるという犠牲を払うが高流量F2を達成できることを示しているグラフ100によって例示されている。米国特許出願第61/537,431号に開示されている二重弁ポンプ80は、高圧P1と高流量F2の両方を達成することができるが、グラフ800に示されているように、キャビティが、アクチュエータアセンブリを貫通する開口に空気連通しているため、この流量はその値に制限される。ハイブリッドポンプ90のキャビティ16および23は、アクチュエータ40を介して空気連通していないため、キャビティ16、23を、マニホールドによって並列に別々に接続することができる。別々の接続により、グラフ900によって示されているように、二重弁ポンプ80よりも高い高流量F3が実現される。高流量F3は、様々な適用例、例えば、上記の2つの創傷治療条件の高流量を必要とする創傷治療の適用例に有用である。
【0054】
上記説明から、ハイブリッドポンプ90が、様々な流体動的性能、例えば、目標の圧力に迅速に到達してこの圧力を維持する高流量などを必要とする他の負圧の適用例および正圧の適用例にも有用であることが明らかであろう。
【0055】
また、上記説明から、大きな利点を有する発明が提供されることが明らかであろう。本発明は、ごく少数の形態で示されているが、示されているこれらの形態に限定されるものではなく、むしろ、本発明の概念から逸脱することなく様々な変更および改良を行うことができる。