【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、目的は、請求項1の方法及び請求項18のシステムによって達成される。
【0013】
請求項1によれば、複数の車両を含む車両交通流量と、好ましくは信号機のための信号灯コントローラの形態の、車両の外部にある少なくとも1つの交通流量規制デバイスとを適応させる方法は、
次の工程によって特徴付けられる:
a)車両の走行条件情報を含む、車両の現在の移動状態を判定する工程、
b)車両に対する移動プロファイル影響情報(moving profile impact information)を含む、交通流量規制デバイスのうち少なくとも1つの現在のデバイス状態を判定する工程、
c)対応する現在の状態に基づいて、車両の移動プロファイルを演算、及び/又は交通流量規制デバイスのうち少なくとも1つの動作プロファイルを演算する工程、
d)演算した移動プロファイル及び/又は演算した動作プロファイルのプロファイル情報を交換する工程、
e)工程d)の交換したプロファイル情報にしたがって、移動プロファイル及び/又は動作プロファイルを適応させる工程、
少なくとも工程d)及びe)は、既定の収束基準が満たされるまで反復して行われる。
【0014】
請求項18によれば、複数の車両を含む車両交通流量と、好ましくは信号機のための信号灯コントローラの形態の、車両の外部にある少なくとも1つの交通流量規制デバイスとを適応させるシステムであって、
好ましくは、請求項1〜17のいずれか一項による方法を行うためのものであり、次のものによって特徴付けられる:
車両の走行条件情報を含む車両の現在の移動状態を判定する、少なくとも2つの移動状態判定手段、
車両に対する移動プロファイル影響情報を含む、交通流量規制デバイスのうち少なくとも1つの現在のデバイス状態を判定する、デバイス状態判定手段、
車両の移動プロファイルを演算する、移動プロファイル演算手段、及び/又は、交通流量規制デバイスのうち少なくとも1つの動作プロファイルを演算する、動作プロファイル演算手段、
演算した移動プロファイル及び/又は演算した動作プロファイルのプロファイル情報を交換する、伝送手段、並びに、
交換したプロファイル情報にしたがって、移動プロファイル及び/又は動作プロファイルを適応させる、適応手段であって、伝送手段及び適応手段は、既定の収束基準が満たされるまで、移動プロファイル及び/又は動作プロファイルの交換と適応を反復して行うように動作可能である。
【0015】
「移動状態」という用語は、特に明細書中において、好ましくは請求項において、スピード、速度、又は加速度などのような、車両の現在の移動を表す変数の現在の値を意味する。移動状態は、例えば、移動プロファイルにおける特定の時点に対応する。
【0016】
「移動プロファイル」という用語は、特に明細書中において、好ましくは請求項において、位置の軌道並びにそれに対応する速度及び/又は加速度曲線などによって表される、例えば車両の現在及び未来の移動状態を意味する。
【0017】
「動作状態」という用語は、特に明細書中において、好ましくは請求項において、例えば信号灯コントローラの、現在のデバイス状態を表す変数に対する現在の値を意味する。信号灯コントローラは、動作プロファイルにしたがって操作される。
【0018】
「動作プロファイル」という用語は、特に明細書中において、好ましくは請求項において、例えば信号灯コントローラによって制御される信号機の、青信号位相、黄色信号位相、及び/又は赤信号位相によって表される、例えば信号機コントローラの現在及び未来のデバイス状態を意味する。
【0019】
「移動プロファイル影響情報」という用語は、特に明細書中において、好ましくは請求項において、移動プロファイル及び/又は移動状態の起こり得る補正につながる、特に交通に関連する情報を意味する。
【0020】
収束基準は、例えば交通処理量などを強化する、所望の最適化課題にしたがって決定されてもよい。反復工程は、最適化課題に対する解決策を改善するために行われる。
【0021】
本発明によれば、車両の移動プロファイル及び/又は交通規制デバイスの動作プロファイルを反復して交換し適応させることによって、交通最適化の課題のほとんどに対する、例えば信号機を有する交差点における車両の最大処理量などに対する、解決策の動的且つ分散的な検出、演算、又は判定が可能になることが、最初に認識されている。
【0022】
本発明によれば更に、方法及びシステムは、従来の方法及びシステムよりも柔軟性が高いことが最初に認識されており、本発明によって、様々な異なる交通状況により高い複雑性を組み込む一方で、交通関連の最適化の課題に対する固有の解決策を提供することが可能になる。複雑性とは、特に、例えばより多数の車両、若しくは信号機を有するより多数の交差点によって表される、交通計画又は交通状況の複雑性を意味する。
【0023】
更なる特徴、利点、及び好ましい実施形態は、以下の下位請求項に記載される。
【0024】
好ましい一実施形態によれば、動作プロファイル及び/又は移動プロファイル影響情報は、車両に対する、好ましくは少なくとも1つの信号灯コントローラの、信号位相情報を含む。信号位相情報によって、信号機を有する交差点における車両のストップアンドゴーを提供する情報を、交通インフラストラクチャデバイスの一例として組み込むことが可能になる。当然ながら、これは1つの信号機のみには限定されず、車両の目的地への経路上にある異なる信号機に割り当てられた、車両に対する複数の信号情報も、車両のスピードを適応させるため、例えばプログレッシブ信号システムによって提供される青信号交通波(green traffic wave)を効率的に使用するために、考慮に入れられてもよい。
【0025】
更なる好ましい実施形態によれば、車両の走行条件情報は、スピードプロファイル、及び/又は好ましくは直接隣接した車両までの相対距離を含む。この情報は、重要な車両関連情報であり、したがって、複数の車両を含む車両交通全体を効率的に適応させるのに使用することができる。特に重要なのは、安全上の理由による、1台以上の先行車両に対する相対距離である。
【0026】
更なる好ましい実施形態によれば、工程a)〜e)は、複数の車両のうちの一車両、好ましくは交通流量規制デバイスに最も近い車両によって開始される。交通流量規制デバイスに対して最短距離を有する車両はまた、概して、交通流量規制デバイス、例えば信号機までの最短走行時間を有する。したがって、工程a)〜e)を開始することによって、この車両の走行がより効率的且つ最適になって、例えば信号機における停止が回避される。車両及び適用可能な場合は他の後続の車両が信号機を通過するための走行時間を最小限に抑えることができ、その結果、少なくとも、車両又は複数の車両が停止しなければならないときの待ち時間が低下する。かかる停止は、信号機の赤信号位相の結果であってもよく、信号機に達する前の時点で工程a)〜e)を開始することによって回避するか、又は少なくとも低減させてもよい。これによって、エネルギーがより効率的に使用され、並びに、信号機に近付いたときの、走行時間、停止時間などのような、車両(1台以上)の運転者(1人以上)の快適性が強化される。次に、車両(1台以上)のスピードは、移動プロファイルにしたがって適応され、その際、移動プロファイルは、信号機を車両が通過するときに、信号機の青信号位相に達するような形で適応される。
【0027】
更なる好ましい実施形態によれば、現在の移動プロファイルのプロファイル情報は交通流量規制デバイスによって受信され、その動作プロファイルは受信した情報にしたがって適応される。交通流量規制デバイス、例えば対応する信号機が割り当てられた信号機コントローラは、信号機に近付く車両の全てのスピードプロファイルを、全体的な又は個別のメッセージとして受信してもよい。受信したプロファイル(1つ以上)にしたがって、信号機コントローラは、例えば、青信号位相の残り時間を調節又は補正して、車両を停止させる代わりに近付いてくる車両を通過させてもよい。更に、青信号位相時間窓の未使用部分は、他の方向の車両が交通流量規制デバイスによって更に待たされることなく交差点を通過してもよいように、それらの車両に割り当てられてもよい。
【0028】
更なる好ましい実施形態によれば、交通流量規制デバイスの動作プロファイルは、経路外(ex-route)情報にしたがって適応される。経路外情報は、例えば、他の交差路で青信号位相時間窓を待っている車両の数、他の相反方向における車両の存在などを含む。このことによって更に、方法及びシステムの柔軟性と効率が強化されるが、それは、移動プロファイル及び動作プロファイルを適応させるのに、より一層詳細な情報を使用できるためである。
【0029】
更なる好ましい実施形態によれば、交通流量規制デバイスの動作プロファイルは、外部物理情報にしたがって適応される。外部物理情報は、例えば、特定の市街地におけるエネルギー及び/又は排気の問題、例えば粒子状物質の削減、並びに例えば、信号機を通過する車両の数などを含んでもよい。このことによって、例えば環境を考慮して物理情報も組み込むことにより、本発明の柔軟性を更に強化することができる。更に、他の交通測定システムによって提供されてもよい、車両計数を統合することが可能であり、そのため、例えば、交通流量規制デバイスは、例えば信号機を有する交差点に近付いてくる車両隊列の最後の車両の移動プロファイルに基づいて、青信号位相時間窓を低減する。交通流量規制デバイスは、次に、受信した車両の移動プロファイルに基づいて、隊列のどの車両が、交差点の信号機それぞれを通過することが許可される最後の車両となるかを選択してもよい。
【0030】
更なる好ましい実施形態によれば、少なくとも工程d)〜e)の反復が、動作プロファイルを適応させたときの移動プロファイルに対して再び行われる。例えば、信号機コントローラの形態の交通流量規制デバイスは、反復プロセスを再開して、信号機の新しい青信号位相時間窓に基づいて新しいスピードプロファイルを得る。この反復プロセスによって、例えば、全体のエネルギー効率を改善しなければならないとき、又は車両交通処理量を改善しなければならないときの、青信号位相時間窓の低減、拡大、又は移動のような適応が可能になる。各反復において、新しく提案される青信号位相時間窓は、車両隊列における各車両によって検証されてもよい。成功する折衝反復手順それぞれの終了時に、即ち、スピードプロファイルを受信し、青信号位相時間窓を適応させ、適応された青信号位相時間窓を車両に伝送すると、交通流量規制デバイスは、受理した青信号位相時間窓を承認してもよい。このプロセスは、車両のうち少なくとも1台が新しく提案される青信号位相時間窓を受理するまで継続してもよい。その結果、近付いてくる車両の軌道上にない青信号位相時間窓に対応する赤信号位相時間窓により、交差点で待っている他の車両には、短縮された赤信号位相時間窓が提供されてもよい。交差点にある交通流量規制デバイスはまた、車両を停止させるか、又は通過する窓、即ち青信号位相時間窓を拡大して、停止中の車両を通過させてもよい。
【0031】
更なる好ましい実施形態によれば、少なくとも工程d)〜e)の反復は、移動プロファイルに対して、且つ車両の間でのみ再び行われる。例えば、車両隊列の車両は、車両隊列の他の車両から受信したスピードプロファイル情報に基づいて、車両隊列全体のスピードプロファイルを更に最適化するために、反復を再開する。新しい反復の間、各車両は、例えば、車両隊列の全ての車両の集約したスピードプロファイルに基づいて、そのスピードプロファイルを修正してもよい。したがって、利点の1つは、例えば、交通流量規制デバイスを含む完全な反復サイクルが、演算時間及び交換すべきデータ量を必ずしも削減しない点である。更なる利点は、より短い車間距離によって表される、車両の移動プロファイルを互いにより近付けることができる点である。
【0032】
更なる好ましい実施形態によれば、反復の結果は交通流量規制デバイスに伝送され、交通流量規制デバイスの動作プロファイルは、伝送された結果にしたがって適応される。これによって、交通流量規制デバイスの現在のデバイス状態及び/又は動作プロファイルの高速且つ簡単な適応が可能になる。例えば、交通流量規制デバイスとしての信号灯コントローラは、車両隊列における車両の最後に受信したスピードプロファイルを使用して、信号灯位相の個々の時間窓を調節してもよい。更に複雑な演算、及び/又は交通流量規制デバイスと車両との間での情報の伝送は不要である。
【0033】
更なる好ましい実施形態によれば、工程d)で、プロファイルの少なくとも1つに対する制約情報及び/又は優先度情報及び/又はプロファイル演算パラメータが交換される。「プロファイル」という用語は、本明細書では、特に、移動プロファイル及び/又は動作プロファイルを含む。制約情報及び/又は優先度情報は、特定の制約、例えば最小及び/又は最大加速度、軌道情報の優先度、及び/又は速度プロファイル演算に関する情報を含んでもよい。優先度情報は、安全性の強化、排気低減、時間効率、1つ以上の交差点の処理量最大化、走行の快適性などを含んでもよい。例えば、車両の優先度の変更は、逆方向の制約として、先行車両又は後続車両に追加されてもよい。現在の車両は、例えば、後続車両に先行しているものとする。更に、後続車両に対する利点が存在するか否か、例えば青信号位相時間窓の相当部分が後続車両に残されているかのチェックが行われてもよい。プロファイル演算パラメータは、車両の排気及び/又は消費パラメータ、並びに/或いは、例えば載荷車両若しくは非載荷車両を表す車両重量に基づいて、排気及び/又は燃料消費を現在のスピード及び/又は現在の加速度及び/又は車両状態に関係付ける一次関数の詳述を含んでもよい。
【0034】
更なる好ましい実施形態によれば、状態に対する制約情報及び/又は優先度情報は重み付けされる。これによって、本発明の柔軟性が更に強化され、様々な異なる交通計画、例えば都市、小さい村、又は高速道路における交通渋滞に対する、簡単な適応が可能になる。
【0035】
更なる好ましい実施形態によれば、移動プロファイル、好ましくは車両のスピードプロファイルは、合計加速度、絶対スピード、総走行距離、車両の隊列化、最大加速度変動、及び/又は先行車両との隊列化に基づいて演算される。これによって、各車両並びに交通流量規制デバイスにとって重要なパラメータを考慮に入れて、車両の移動プロファイルのより精密な演算が可能になる。
【0036】
更なる好ましい実施形態によれば、移動プロファイル、好ましくはスピードプロファイルは、部分的に分かっている移動プロファイル、好ましくは、先行車両の少なくとも位置、スピード、及び加速度に少なくとも基づいて演算される。これによって、更には、移動プロファイルを演算するために大量の情報を車両間で交換する必要なしに、移動プロファイルの演算が可能になり、したがって、車両間通信が低減される。
【0037】
更なる好ましい実施形態によれば、交通流量規制デバイスにおいて各車両に時間スロットが割り当てられる。これによって、更には、柔軟性が強化され、交通流量が最適化されるが、それは、例えば隊列の各車両間で、他の方向の他の車両が青信号を受け取って交差点を通過してもよいためである。車両の隊列化は、異なる時間スロットによって理論上でのみ中断されるが、目的地への経路上にある車両全体の隊列化が維持される。
【0038】
更なる好ましい実施形態によれば、時間スロットは安全時間マージンを含む。例えば赤信号位相と青信号位相との間の1つ以上の安全マージンによって、車両が交差点にある交通流量規制デバイスを通過するときの事故確率が低減される。赤信号位相から青信号位相へ、且つその逆へと切り替わる度に、安全マージンによってより長い時間が掛かる場合であっても、対応する運転者にとって走行の快適性がより高い、信号機における車両の処理量が拡大してもよい。
【0039】
更なる好ましい実施形態によれば、交通流量規制デバイスの動作プロファイルは、収束基準を満たしていた過去の完全な反復と、隣接した交通流量規制デバイスの動作プロファイルの交換及び適応の反復とに基づいて演算される。交通流量規制デバイスは、その結果、隊列の車両間で交換されたスピードプロファイルの過去の反復と、交通流量規制デバイスをそれぞれ有する隣接した交差点間での信号位相の反復交換との両方を考慮に入れることが可能になる。これによって、例えば、交差点における交通処理量を提供すること、又は大きな青信号交通波を可能にすることが更に強化される。
【0040】
請求項18のシステムの更なる好ましい実施形態によれば、移動プロファイル演算手段は3つのモジュールの形で提供され、第1のモジュールは、交通流量規制デバイスに隣接している車両に対して請求項1の工程a)〜e)を行うように動作可能であり、第2のモジュールは、前方に先行車両を有する車両に対して工程a)〜e)を行うように動作可能であり、第3のモジュールは、第1及び第2のモジュールによる結果を組み合わせるように動作可能である。例えば、第1のモジュールは、前方に車両がいない場合の計画における最適スピードを計算してもよい。第2のモジュールは、オンボードの車両レーダーシステムなどのような距離測定システム、又は隊列化及び安全距離を保っている先行車両との直接通信のどちらかに基づいて、スピード及び加速度を計算する。次に、第3のモジュールは、先行車両に対する距離情報に基づいて、最適なスピード及び加速度両方の情報を統合する。
【0041】
更なる好ましい実施形態によれば、第1のモジュールはモジュールの予測制御を行うように動作可能であり、第2及び第3のモジュールはファジー論理制御を行うように動作可能である。ファジー論理は、例えば、厳密ではなく近似的な推論を用いて、問題に対する解決策を決定してもよい。
【0042】
有利な形で本発明の教示を設計し更に展開する、いくつかの手法が存在する。この目的のため、一方では、特許請求項1及び18に従属する特許請求項を参照し、他方では、図面によって例証される、本発明の実施形態の好ましい例についての以下の説明を参照する。図面を用いた本発明の好ましい実施形態の説明と併せて、本教示の一般に好ましい実施形態及び更なる展開について説明する。