特許第6183864号(P6183864)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6183864車両交通流量を適応させる方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183864
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】車両交通流量を適応させる方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/083 20060101AFI20170814BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20170814BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   G08G1/083
   G08G1/09 F
   G08G1/16 E
【請求項の数】20
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-502113(P2015-502113)
(86)(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公表番号】特表2015-514261(P2015-514261A)
(43)【公表日】2015年5月18日
(86)【国際出願番号】EP2012055910
(87)【国際公開番号】WO2013143621
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2014年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】508342183
【氏名又は名称】エヌイーシー ヨーロッパ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NEC EUROPE LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(72)【発明者】
【氏名】フランチェスコ・アレシアニ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・バルデッサリ
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−170555(JP,A)
【文献】 特開2012−003602(JP,A)
【文献】 特開2001−307288(JP,A)
【文献】 特開2000−331282(JP,A)
【文献】 米国特許第06246954(US,B1)
【文献】 特開2009−009288(JP,A)
【文献】 特開2006−331002(JP,A)
【文献】 特開平08−171694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/083
G08G 1/09
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両を含む車両交通流量と、前記車両の外部にある少なくとも1つの交通流量規制デバイスとを適応させる方法であって、
次の工程によって特徴付けられる:
a)車両の走行条件情報を含む、前記車両の現在の移動状態を判定する工程、
b)前記車両に対する移動プロファイル影響情報を含む、交通流量規制デバイスのうち少なくとも1つの現在のデバイス状態を判定する工程、
c)対応する現在の状態に基づいて、前記車両の移動プロファイルを演算、及び/又は前記交通流量規制デバイスのうち少なくとも1つの動作プロファイルを演算する工程、
d)演算した前記移動プロファイル及び/又は演算した前記動作プロファイルのプロファイル情報を交換する工程、および
e)工程d)の交換した前記プロファイル情報にしたがって、前記移動プロファイル及び前記動作プロファイルのうち少なくとも前記移動プロファイルを適応させる工程、
を有し、動作プロファイルおよび移動プロファイル影響情報の少なくとも一つが車両に対する信号位相情報を含み、
少なくとも工程d)及びe)は、既定の収束基準が満たされるまで反復して行われる、方法。
【請求項2】
動作プロファイル及び移動プロファイル影響情報が、車両に対して、少なくとも1つの信号灯コントローラの、信号位相情報を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
車両の前記走行条件情報が、スピードプロファイル及び/又は好ましくは直接隣接する車両に対する相対距離を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程a)〜e)が、前記複数の車両のうちの車両によって、好ましくは前記交通流量規制デバイスに最も近い前記車両によって開始される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記現在の移動プロファイルのプロファイル情報が、前記交通流量規制デバイスによって受信され、その動作プロファイルが、受信した前記情報にしたがって適応される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記交通流量規制デバイスの前記動作プロファイルが、経路外情報にしたがって適応される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記交通流量規制デバイスの前記動作プロファイルが、外部物理情報にしたがって適応される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
動作プロファイルが適応されると、前記移動プロファイルに対して、少なくとも前記工程d)〜e)の反復が再び行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記移動プロファイル及び前記車両間に対してのみ、少なくとも前記工程d)〜e)の反復が再び行われる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記反復の結果が前記交通流量規制デバイスに伝送され、前記交通流量規制デバイスの前記動作プロファイルが、伝送された前記結果にしたがって適応される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程d)において、前記状態に対する制約情報及び/又は優先度情報が交換される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記状態に対する前記制約情報及び/又は前記優先度情報が重み付けされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記移動プロファイル、好ましくは車両の前記スピードプロファイルが、合計加速度、絶対スピード、総走行距離、車両の隊列化、最大加速度変化、及び/又は先行車両との隊列化に基づいて演算される、請求項3〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記移動プロファイル、好ましくは前記スピードプロファイルが、先行車両の少なくとも部分的に分かっている移動プロファイル、好ましくは少なくとも位置、スピード、及び加速度のいずれかに基づいて演算される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記交通流量規制デバイスにおいて、各車両に対して時間スロットが割り当てられる、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記時間スロットが安全時間マージンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記交通流量規制デバイスの前記動作プロファイルが、前記収束基準が満たされている過去の完全な反復、並びに隣接した交通流量規制デバイスの動作プロファイルの交換及び適応の反復に基づいて演算される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
好ましくは、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法を行うための、複数の車両を含む車両交通流量と、前記車両の外部にある少なくとも1つの交通流量規制デバイスとを適応させるシステムであって、次のことを特徴とする:
車両の走行条件情報を含む車両の現在の移動状態を判定する、少なくとも2つの移動状態判定手段、
前記車両に対する移動プロファイル影響情報を含む、前記交通流量規制デバイスのうち少なくとも1つの現在のデバイス状態を判定する、デバイス状態判定手段、
車両の移動プロファイルを演算する、移動プロファイル演算手段、及び/又は、前記交通流量規制デバイスのうち少なくとも1つの動作プロファイルを演算する、動作プロファイル演算手段、
演算した前記移動プロファイル及び/又は演算した前記動作プロファイルのプロファイル情報を交換する、伝送手段、並びに、
交換した前記プロファイル情報にしたがって、前記移動プロファイル及び前記動作プロファイルのうち少なくとも前記移動プロファイルを適応させる、適応手段、
を有し、前記動作プロファイルおよび前記移動プロファイル影響情報の少なくとも一つが車両に対する信号位相情報を含み、
前記伝送手段及び前記適応手段が、既定の収束基準が満たされるまで、前記移動プロファイル及び/又は前記動作プロファイルの交換と適応を反復して行うように動作可能である、システム。
【請求項19】
前記移動プロファイル演算手段が3つのモジュールの形で提供される、請求項18に記載のシステムであって、
第1のモジュールが、前記交通流量規制デバイスに隣接している車両に対して請求項1に記載の工程a)〜e)を行うように動作可能であり、
第2のモジュールが、前方に先行車両を有する車両に対して前記工程a)〜e)を行うように動作可能であり、
第3のモジュールが、前記第1及び第2のモジュールによる結果を組み合わせるように動作可能である、システム。
【請求項20】
前記第1のモジュールがモデル予測制御を行うように動作可能であり、前記第2及び第3のモジュールがファジー論理を行うように動作可能である、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の車両を含む車両交通流量と、車両の外部にある少なくとも1つの交通流量規制デバイスとを適応させる方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
クルーズコントロール(CC)システム及び最新のオートクルーズコントロール(ACC)システムのような運転者支援システムは両方とも、車両の運転者の安全性及び快適性を増大させる。オートクルーズコントロールによって、車両の運転者は、所望のスピードと、それに加えて先行車両に対する所望の安全距離とを簡単に維持することができる。オートクルーズコントロールは、運転者の車両の前方に車両があるか否かを継続的に判断し、先行車両までの距離を測定し、また、先行車両との衝突を回避するために運転者が介入する必要なしに、所望の安全距離を維持するように運転者の車両のスピードを適応させる。従来のアダプティブクルーズコントロールシステムによって、更に、隊列走行安全距離自動制御(vehicle platooning, safe distance automatic control)のような適用、及び更なるクルーズコントロールの適用が可能になる。
【0003】
米国特許第8,010,274 B2号では、自車両と先行車両との間の現在の位置関係が考慮され、先行車両に対する自車両のその後の走行が、自車両が前方車両に接近し過ぎることなく円滑に可能である、車両運転支援装置が記載されている。これは、先行車両に対する必須の車間距離と、制御目標時間としての、この必須の車間距離に達するまでの時間とを設定することによって実施される。更に、制御目標時間が経過した後の先行車両の推定位置が計算され、加えて、事前設定された目標車間距離(制御目標時間が経過した時点での自車両のスピードにおける前方車両までの車間距離)に至らせる、現在の車両スピードからの加速度が計算される。この加速度は、前方車両までの現在の車間距離と、制御目標時間が経過した後の前方車両の推定位置とに基づいて、目標加速度として使用される。前方車両に追随するため、自動制動制御及び自動加速制御が実施される。
【0004】
Nauらの非特許文献、「Design and implementation of parametarized adaptive cruise control:An explicit model predictive control approach」、Control Engineering Practice 18(2010)882〜892では、オートクルーズコントロールの適応のための限定された数の直感的な同調変数を用いた、明示的なモデル予測制御に基づく、パラメータ化したオートクルーズコントロールが記載されている。
【0005】
更に、非特許文献、「Design of a Hybrid Adaptive Cruise Control Stop−&−Go system」、master thesis of Roel van den Bleek,2006では、アダプティブクルーズコントロールのストップアンドゴーの適用が記載されている。モデル予測制御(MPC)は、リアルタイム適用の高速サンプリングに使用される。
【0006】
無線LAN、ブルートゥースなどのような近距離通信システムの将来的な高い利用可能性によって、アダプティブクルーズコントロールシステムは、オートクルーズコントロールシステムを強化するために付加的な車両間通信を使用する、いわゆる協調型アダプティブクルーズコントロールシステム(CACC)にますます取って代わられる。
【0007】
Alesiani F.及びFranco G.の非特許文献、「Optimal Speed Profile Trajectory Computation for Vehicle Approach at Intersections with Adaptive Traffic Control」、Proceedings 16th World Congress on Intelligent Transport Systems,Stockholm,September 2009では、交通制御戦略に沿った車両のスピードの適応を可能にする、協調型クルーズコントロールシステムが示されている。車両の運転者は、車両の位置及びスピード、車両の加速度、並びに現在及び未来の交通状態を考慮に入れたスピードのアドバイスを得る。
【0008】
Ploeg,J.,Scheepers,B.T.M.,van Nunen,E.,van de Wouw,N.及びNijmeijer,H.の非特許文献、「Design and Experimental Evaluation of Cooperative Adaptive Cruise Control」、14th international IEEE conference and intelligent transports systems,2011,Washington D.C.,U.S.A.では、同じ速度レベルを維持しながら車間距離を減少させることによって、限定的なハイウェイの交通容量の問題に対処する、協調型アダプティブクルーズコントロールが記載されている。小さい車両間時間間隔が車群安定性であることが示されており、1秒を大幅に下回る隣接した移動車両間の時間間隔で、安全走行が可能になっている。
【0009】
従来の協調型アダプティブクルーズコントロールシステムの不利な点の1つは、異なる車両間の協調性が限定されることである。更に、従来の方法は、ほとんどの場合、例えば車両の隊列のスピードに関して、また非常に限定された数の特定の交通状況において、精度の低い解決策しか提供しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、より柔軟性が高く、より多数の交通状況で使用することができる、複数の車両を含む車両交通流量と、車両の外部にある少なくとも1つの交通流量規制デバイスとを適応させる方法及びシステムを提供することである。
【0011】
本発明の更なる目的は、交通に関連する問題の、特に、更なる交通関連情報を考慮に入れたエネルギー及び交通効率の問題の、より高精度及びより高性能な解決策を可能にする、複数の車両を含む車両交通流量と、車両の外部にある少なくとも1つの交通流量規制デバイスとを適応させる方法及びシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、目的は、請求項1の方法及び請求項18のシステムによって達成される。
【0013】
請求項1によれば、複数の車両を含む車両交通流量と、好ましくは信号機のための信号灯コントローラの形態の、車両の外部にある少なくとも1つの交通流量規制デバイスとを適応させる方法は、
次の工程によって特徴付けられる:
a)車両の走行条件情報を含む、車両の現在の移動状態を判定する工程、
b)車両に対する移動プロファイル影響情報(moving profile impact information)を含む、交通流量規制デバイスのうち少なくとも1つの現在のデバイス状態を判定する工程、
c)対応する現在の状態に基づいて、車両の移動プロファイルを演算、及び/又は交通流量規制デバイスのうち少なくとも1つの動作プロファイルを演算する工程、
d)演算した移動プロファイル及び/又は演算した動作プロファイルのプロファイル情報を交換する工程、
e)工程d)の交換したプロファイル情報にしたがって、移動プロファイル及び/又は動作プロファイルを適応させる工程、
少なくとも工程d)及びe)は、既定の収束基準が満たされるまで反復して行われる。
【0014】
請求項18によれば、複数の車両を含む車両交通流量と、好ましくは信号機のための信号灯コントローラの形態の、車両の外部にある少なくとも1つの交通流量規制デバイスとを適応させるシステムであって、
好ましくは、請求項1〜17のいずれか一項による方法を行うためのものであり、次のものによって特徴付けられる:
車両の走行条件情報を含む車両の現在の移動状態を判定する、少なくとも2つの移動状態判定手段、
車両に対する移動プロファイル影響情報を含む、交通流量規制デバイスのうち少なくとも1つの現在のデバイス状態を判定する、デバイス状態判定手段、
車両の移動プロファイルを演算する、移動プロファイル演算手段、及び/又は、交通流量規制デバイスのうち少なくとも1つの動作プロファイルを演算する、動作プロファイル演算手段、
演算した移動プロファイル及び/又は演算した動作プロファイルのプロファイル情報を交換する、伝送手段、並びに、
交換したプロファイル情報にしたがって、移動プロファイル及び/又は動作プロファイルを適応させる、適応手段であって、伝送手段及び適応手段は、既定の収束基準が満たされるまで、移動プロファイル及び/又は動作プロファイルの交換と適応を反復して行うように動作可能である。
【0015】
「移動状態」という用語は、特に明細書中において、好ましくは請求項において、スピード、速度、又は加速度などのような、車両の現在の移動を表す変数の現在の値を意味する。移動状態は、例えば、移動プロファイルにおける特定の時点に対応する。
【0016】
「移動プロファイル」という用語は、特に明細書中において、好ましくは請求項において、位置の軌道並びにそれに対応する速度及び/又は加速度曲線などによって表される、例えば車両の現在及び未来の移動状態を意味する。
【0017】
「動作状態」という用語は、特に明細書中において、好ましくは請求項において、例えば信号灯コントローラの、現在のデバイス状態を表す変数に対する現在の値を意味する。信号灯コントローラは、動作プロファイルにしたがって操作される。
【0018】
「動作プロファイル」という用語は、特に明細書中において、好ましくは請求項において、例えば信号灯コントローラによって制御される信号機の、青信号位相、黄色信号位相、及び/又は赤信号位相によって表される、例えば信号機コントローラの現在及び未来のデバイス状態を意味する。
【0019】
「移動プロファイル影響情報」という用語は、特に明細書中において、好ましくは請求項において、移動プロファイル及び/又は移動状態の起こり得る補正につながる、特に交通に関連する情報を意味する。
【0020】
収束基準は、例えば交通処理量などを強化する、所望の最適化課題にしたがって決定されてもよい。反復工程は、最適化課題に対する解決策を改善するために行われる。
【0021】
本発明によれば、車両の移動プロファイル及び/又は交通規制デバイスの動作プロファイルを反復して交換し適応させることによって、交通最適化の課題のほとんどに対する、例えば信号機を有する交差点における車両の最大処理量などに対する、解決策の動的且つ分散的な検出、演算、又は判定が可能になることが、最初に認識されている。
【0022】
本発明によれば更に、方法及びシステムは、従来の方法及びシステムよりも柔軟性が高いことが最初に認識されており、本発明によって、様々な異なる交通状況により高い複雑性を組み込む一方で、交通関連の最適化の課題に対する固有の解決策を提供することが可能になる。複雑性とは、特に、例えばより多数の車両、若しくは信号機を有するより多数の交差点によって表される、交通計画又は交通状況の複雑性を意味する。
【0023】
更なる特徴、利点、及び好ましい実施形態は、以下の下位請求項に記載される。
【0024】
好ましい一実施形態によれば、動作プロファイル及び/又は移動プロファイル影響情報は、車両に対する、好ましくは少なくとも1つの信号灯コントローラの、信号位相情報を含む。信号位相情報によって、信号機を有する交差点における車両のストップアンドゴーを提供する情報を、交通インフラストラクチャデバイスの一例として組み込むことが可能になる。当然ながら、これは1つの信号機のみには限定されず、車両の目的地への経路上にある異なる信号機に割り当てられた、車両に対する複数の信号情報も、車両のスピードを適応させるため、例えばプログレッシブ信号システムによって提供される青信号交通波(green traffic wave)を効率的に使用するために、考慮に入れられてもよい。
【0025】
更なる好ましい実施形態によれば、車両の走行条件情報は、スピードプロファイル、及び/又は好ましくは直接隣接した車両までの相対距離を含む。この情報は、重要な車両関連情報であり、したがって、複数の車両を含む車両交通全体を効率的に適応させるのに使用することができる。特に重要なのは、安全上の理由による、1台以上の先行車両に対する相対距離である。
【0026】
更なる好ましい実施形態によれば、工程a)〜e)は、複数の車両のうちの一車両、好ましくは交通流量規制デバイスに最も近い車両によって開始される。交通流量規制デバイスに対して最短距離を有する車両はまた、概して、交通流量規制デバイス、例えば信号機までの最短走行時間を有する。したがって、工程a)〜e)を開始することによって、この車両の走行がより効率的且つ最適になって、例えば信号機における停止が回避される。車両及び適用可能な場合は他の後続の車両が信号機を通過するための走行時間を最小限に抑えることができ、その結果、少なくとも、車両又は複数の車両が停止しなければならないときの待ち時間が低下する。かかる停止は、信号機の赤信号位相の結果であってもよく、信号機に達する前の時点で工程a)〜e)を開始することによって回避するか、又は少なくとも低減させてもよい。これによって、エネルギーがより効率的に使用され、並びに、信号機に近付いたときの、走行時間、停止時間などのような、車両(1台以上)の運転者(1人以上)の快適性が強化される。次に、車両(1台以上)のスピードは、移動プロファイルにしたがって適応され、その際、移動プロファイルは、信号機を車両が通過するときに、信号機の青信号位相に達するような形で適応される。
【0027】
更なる好ましい実施形態によれば、現在の移動プロファイルのプロファイル情報は交通流量規制デバイスによって受信され、その動作プロファイルは受信した情報にしたがって適応される。交通流量規制デバイス、例えば対応する信号機が割り当てられた信号機コントローラは、信号機に近付く車両の全てのスピードプロファイルを、全体的な又は個別のメッセージとして受信してもよい。受信したプロファイル(1つ以上)にしたがって、信号機コントローラは、例えば、青信号位相の残り時間を調節又は補正して、車両を停止させる代わりに近付いてくる車両を通過させてもよい。更に、青信号位相時間窓の未使用部分は、他の方向の車両が交通流量規制デバイスによって更に待たされることなく交差点を通過してもよいように、それらの車両に割り当てられてもよい。
【0028】
更なる好ましい実施形態によれば、交通流量規制デバイスの動作プロファイルは、経路外(ex-route)情報にしたがって適応される。経路外情報は、例えば、他の交差路で青信号位相時間窓を待っている車両の数、他の相反方向における車両の存在などを含む。このことによって更に、方法及びシステムの柔軟性と効率が強化されるが、それは、移動プロファイル及び動作プロファイルを適応させるのに、より一層詳細な情報を使用できるためである。
【0029】
更なる好ましい実施形態によれば、交通流量規制デバイスの動作プロファイルは、外部物理情報にしたがって適応される。外部物理情報は、例えば、特定の市街地におけるエネルギー及び/又は排気の問題、例えば粒子状物質の削減、並びに例えば、信号機を通過する車両の数などを含んでもよい。このことによって、例えば環境を考慮して物理情報も組み込むことにより、本発明の柔軟性を更に強化することができる。更に、他の交通測定システムによって提供されてもよい、車両計数を統合することが可能であり、そのため、例えば、交通流量規制デバイスは、例えば信号機を有する交差点に近付いてくる車両隊列の最後の車両の移動プロファイルに基づいて、青信号位相時間窓を低減する。交通流量規制デバイスは、次に、受信した車両の移動プロファイルに基づいて、隊列のどの車両が、交差点の信号機それぞれを通過することが許可される最後の車両となるかを選択してもよい。
【0030】
更なる好ましい実施形態によれば、少なくとも工程d)〜e)の反復が、動作プロファイルを適応させたときの移動プロファイルに対して再び行われる。例えば、信号機コントローラの形態の交通流量規制デバイスは、反復プロセスを再開して、信号機の新しい青信号位相時間窓に基づいて新しいスピードプロファイルを得る。この反復プロセスによって、例えば、全体のエネルギー効率を改善しなければならないとき、又は車両交通処理量を改善しなければならないときの、青信号位相時間窓の低減、拡大、又は移動のような適応が可能になる。各反復において、新しく提案される青信号位相時間窓は、車両隊列における各車両によって検証されてもよい。成功する折衝反復手順それぞれの終了時に、即ち、スピードプロファイルを受信し、青信号位相時間窓を適応させ、適応された青信号位相時間窓を車両に伝送すると、交通流量規制デバイスは、受理した青信号位相時間窓を承認してもよい。このプロセスは、車両のうち少なくとも1台が新しく提案される青信号位相時間窓を受理するまで継続してもよい。その結果、近付いてくる車両の軌道上にない青信号位相時間窓に対応する赤信号位相時間窓により、交差点で待っている他の車両には、短縮された赤信号位相時間窓が提供されてもよい。交差点にある交通流量規制デバイスはまた、車両を停止させるか、又は通過する窓、即ち青信号位相時間窓を拡大して、停止中の車両を通過させてもよい。
【0031】
更なる好ましい実施形態によれば、少なくとも工程d)〜e)の反復は、移動プロファイルに対して、且つ車両の間でのみ再び行われる。例えば、車両隊列の車両は、車両隊列の他の車両から受信したスピードプロファイル情報に基づいて、車両隊列全体のスピードプロファイルを更に最適化するために、反復を再開する。新しい反復の間、各車両は、例えば、車両隊列の全ての車両の集約したスピードプロファイルに基づいて、そのスピードプロファイルを修正してもよい。したがって、利点の1つは、例えば、交通流量規制デバイスを含む完全な反復サイクルが、演算時間及び交換すべきデータ量を必ずしも削減しない点である。更なる利点は、より短い車間距離によって表される、車両の移動プロファイルを互いにより近付けることができる点である。
【0032】
更なる好ましい実施形態によれば、反復の結果は交通流量規制デバイスに伝送され、交通流量規制デバイスの動作プロファイルは、伝送された結果にしたがって適応される。これによって、交通流量規制デバイスの現在のデバイス状態及び/又は動作プロファイルの高速且つ簡単な適応が可能になる。例えば、交通流量規制デバイスとしての信号灯コントローラは、車両隊列における車両の最後に受信したスピードプロファイルを使用して、信号灯位相の個々の時間窓を調節してもよい。更に複雑な演算、及び/又は交通流量規制デバイスと車両との間での情報の伝送は不要である。
【0033】
更なる好ましい実施形態によれば、工程d)で、プロファイルの少なくとも1つに対する制約情報及び/又は優先度情報及び/又はプロファイル演算パラメータが交換される。「プロファイル」という用語は、本明細書では、特に、移動プロファイル及び/又は動作プロファイルを含む。制約情報及び/又は優先度情報は、特定の制約、例えば最小及び/又は最大加速度、軌道情報の優先度、及び/又は速度プロファイル演算に関する情報を含んでもよい。優先度情報は、安全性の強化、排気低減、時間効率、1つ以上の交差点の処理量最大化、走行の快適性などを含んでもよい。例えば、車両の優先度の変更は、逆方向の制約として、先行車両又は後続車両に追加されてもよい。現在の車両は、例えば、後続車両に先行しているものとする。更に、後続車両に対する利点が存在するか否か、例えば青信号位相時間窓の相当部分が後続車両に残されているかのチェックが行われてもよい。プロファイル演算パラメータは、車両の排気及び/又は消費パラメータ、並びに/或いは、例えば載荷車両若しくは非載荷車両を表す車両重量に基づいて、排気及び/又は燃料消費を現在のスピード及び/又は現在の加速度及び/又は車両状態に関係付ける一次関数の詳述を含んでもよい。
【0034】
更なる好ましい実施形態によれば、状態に対する制約情報及び/又は優先度情報は重み付けされる。これによって、本発明の柔軟性が更に強化され、様々な異なる交通計画、例えば都市、小さい村、又は高速道路における交通渋滞に対する、簡単な適応が可能になる。
【0035】
更なる好ましい実施形態によれば、移動プロファイル、好ましくは車両のスピードプロファイルは、合計加速度、絶対スピード、総走行距離、車両の隊列化、最大加速度変動、及び/又は先行車両との隊列化に基づいて演算される。これによって、各車両並びに交通流量規制デバイスにとって重要なパラメータを考慮に入れて、車両の移動プロファイルのより精密な演算が可能になる。
【0036】
更なる好ましい実施形態によれば、移動プロファイル、好ましくはスピードプロファイルは、部分的に分かっている移動プロファイル、好ましくは、先行車両の少なくとも位置、スピード、及び加速度に少なくとも基づいて演算される。これによって、更には、移動プロファイルを演算するために大量の情報を車両間で交換する必要なしに、移動プロファイルの演算が可能になり、したがって、車両間通信が低減される。
【0037】
更なる好ましい実施形態によれば、交通流量規制デバイスにおいて各車両に時間スロットが割り当てられる。これによって、更には、柔軟性が強化され、交通流量が最適化されるが、それは、例えば隊列の各車両間で、他の方向の他の車両が青信号を受け取って交差点を通過してもよいためである。車両の隊列化は、異なる時間スロットによって理論上でのみ中断されるが、目的地への経路上にある車両全体の隊列化が維持される。
【0038】
更なる好ましい実施形態によれば、時間スロットは安全時間マージンを含む。例えば赤信号位相と青信号位相との間の1つ以上の安全マージンによって、車両が交差点にある交通流量規制デバイスを通過するときの事故確率が低減される。赤信号位相から青信号位相へ、且つその逆へと切り替わる度に、安全マージンによってより長い時間が掛かる場合であっても、対応する運転者にとって走行の快適性がより高い、信号機における車両の処理量が拡大してもよい。
【0039】
更なる好ましい実施形態によれば、交通流量規制デバイスの動作プロファイルは、収束基準を満たしていた過去の完全な反復と、隣接した交通流量規制デバイスの動作プロファイルの交換及び適応の反復とに基づいて演算される。交通流量規制デバイスは、その結果、隊列の車両間で交換されたスピードプロファイルの過去の反復と、交通流量規制デバイスをそれぞれ有する隣接した交差点間での信号位相の反復交換との両方を考慮に入れることが可能になる。これによって、例えば、交差点における交通処理量を提供すること、又は大きな青信号交通波を可能にすることが更に強化される。
【0040】
請求項18のシステムの更なる好ましい実施形態によれば、移動プロファイル演算手段は3つのモジュールの形で提供され、第1のモジュールは、交通流量規制デバイスに隣接している車両に対して請求項1の工程a)〜e)を行うように動作可能であり、第2のモジュールは、前方に先行車両を有する車両に対して工程a)〜e)を行うように動作可能であり、第3のモジュールは、第1及び第2のモジュールによる結果を組み合わせるように動作可能である。例えば、第1のモジュールは、前方に車両がいない場合の計画における最適スピードを計算してもよい。第2のモジュールは、オンボードの車両レーダーシステムなどのような距離測定システム、又は隊列化及び安全距離を保っている先行車両との直接通信のどちらかに基づいて、スピード及び加速度を計算する。次に、第3のモジュールは、先行車両に対する距離情報に基づいて、最適なスピード及び加速度両方の情報を統合する。
【0041】
更なる好ましい実施形態によれば、第1のモジュールはモジュールの予測制御を行うように動作可能であり、第2及び第3のモジュールはファジー論理制御を行うように動作可能である。ファジー論理は、例えば、厳密ではなく近似的な推論を用いて、問題に対する解決策を決定してもよい。
【0042】
有利な形で本発明の教示を設計し更に展開する、いくつかの手法が存在する。この目的のため、一方では、特許請求項1及び18に従属する特許請求項を参照し、他方では、図面によって例証される、本発明の実施形態の好ましい例についての以下の説明を参照する。図面を用いた本発明の好ましい実施形態の説明と併せて、本教示の一般に好ましい実施形態及び更なる展開について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図面中、
図1】信号付き交差点に近付く車両を示す図である。
図2】車両に関連する入力パラメータを有する車両を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態によるスピードプロファイル計算を示す概略図である。
図4】信号機の青信号位相を有するスピードプロファイルを示す図である。
図5】異なる信号機に連続的に近付く車両を示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態による方法を示す図である。
図7】スピードプロファイルに基づく信号位相調節を示す図である。
図8】本発明の第3の実施形態による方法を示す図である。
図9】本発明の第4の実施形態を示す図である。
図10】車両軌道の不確実性の影響を示す図である。
図11】異なる重み選択の影響を示す図である。
図12】信号位相分割を示す図である。
図13】安全時間マージンを有する、及び有さない、信号位相の開始及び終了時間を示す図である。
図14】2台の車両の部分的に共通の走行経路を示す図である。
図15】本発明の第5の実施形態によるシステムを示す図である。
図16】本発明の第6の実施形態によるフローチャートを示す図である。
図17】本発明の第7の実施形態によるフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、信号付き交差点に近付く車両を示す。
【0045】
図1では、道路Rを左から右へと移動している3台の車両V1、V2、V3が示されている。第1の車両V1は、第1の車両V1に先行している第2の車両V2までの距離D12を有する。第3の車両V3は第2の車両V2に先行し、第2の車両V2までの距離D23を有する。第3の車両V3は、信号機TLに最も近く、信号機TLまでの距離DVTLを有する。
【0046】
図2では、車両に関連する入力パラメータIPが、車両V1、V2、V3それぞれに、次式のように割り当てられている。
【0047】
【数1】
は、車両の現在の位置、スピード、及び加速度である。
t=t+1,...,t+Tは、未来の時点における時間である。
【0048】
図3では、入力パラメータIPを用いてスピードプロファイル計算が行われる。
【0049】
【数2】
は、青信号位相、位置、及び時間の集合であり、Mは、近付いている交差点の数である。
【0050】
【数3】
は、車両の現在の位置及びスピードである。
【0051】
【数4】
は、先行車両の現在及び未来の位置である。
【0052】
【数5】
は、先行車両に対する現在及び過去の距離とスピードの差である。
t=,t,t+1,...,t+Tは、現在及び未来の時点における時間である。
また、出力パラメータOPを用いて、
【0053】
【数6】
は、現在の車両の未来の位置、スピード、及び加速度である。
【0054】
したがって、出力パラメータOPは、車両V1、V2、V3それぞれの未来の位置、スピード、及び加速度を示す。
【0055】
入力パラメータIP及び出力パラメータOPを用いたスピードプロファイル計算は、次式のように実施されてもよい:
【0056】
(1)
【数7】
式中、
【0057】
【数8】
【0058】
パラメータhは車頭時間(time headway)である。乗数は各車両の優先度を表す:
・λ:合計加速度
・λ:絶対スピード(安全性及び排気基準)
・λ:総走行距離(時間効率)
・λ:隊列化(処理量最大化)
・λ:最大加速度変化(走行の快適性)
・λ:先行車両との隊列化
【0059】
2つの選択肢(a,a’)及び(b,b’)は、(a)先行車両の全軌道が分かっている場合、(b)先行車両の現在の位置、スピード、及び加速度のみが分かっている場合を表す。関数
【0060】
【数9】
は、先行車両の軌道の進展を表す入力加速度の任意の適切な関数であり、(a’)及び(b’)は、条件(a)及び(b)を一般化したものであり、それは、現在の車両軌道を計算するのにすべての先行車両を考慮することができる。条件(a)は、任意の先行車両軌道に対する距離の最小値に置き換えることができる。pは、複数位相信号が利用可能なときの、交差点iの信号位相を表す。
【0061】
図4では、図3にしたがって車両によって計算されるスピードプロファイルの図式的表現が示され、スピードプロファイル1は、時間軸としての水平軸10と、距離s、スピードv、及び加速度aを任意単位で表す垂直軸11とを有する、二次元図を含む。曲線2は、時間に伴う車両の位置sの展開を示し、曲線3は、時間に伴うスピード又は速度vの展開を示し、曲線4は、時間に伴う車両の加速度aの展開を示す。更に、スピードプロファイル1では、2つの青信号位相GP1及びGP2が示され、対応する水平線によって表されている。スピード曲線3は0の値に達することがないので、曲線2、3、及び4に対応する車両は、青信号位相GP1及びGP2を使用して、対応する信号機を通過し、信号機で停止する必要はない。
【0062】
図5は、左から右へと進む過程で3つの信号機TL1、TL2、及びTL3に近付く車両Vを示し、車両Vの経路上に複数の信号機がある状況を示している。
【0063】
図6は、本発明の第2の実施形態による方法を示す。
【0064】
図6では、3台の車両V1、V2、V3が示され、信号機TLは図1に対応している。図6では、ここでは例えば信号機TLがある交差点に最も近い車両V3であるが、広くは必ずしもそうではない先頭車両は、伝送TTLを介して信号機TLから受信した情報に基づいて、自身のスピードプロファイル1aを計算する。伝送される情報は、図6では参照符号20で示される、特定の時間及び長さの青信号位相時間窓を含む。第3の車両V3は、次に、信号機TLの青信号位相情報20に基づいて自身のスピードプロファイル1aを計算し、自身の計算したスピードプロファイル1aを第2の車両V2に対して放送する(参照符号T3)。例えば、第2の車両V2は、青信号位相図20を、第3の車両V3の位置曲線2aを含むスピードプロファイル1aと併せて受信する。第2の車両V2は、次に、青信号位相情報20及び第3の車両V3のスピードプロファイル1aを考慮して、自身のプロファイル1bを計算する。第2の車両V2は、次に、自身のスピードプロファイル1bを、青信号位相図20、第3の車両V3のスピードプロファイル1a、及び自身のスピードプロファイル1bと併せて、第1の車両V1に対して放送する(参照符号T2)。第1の車両V1は、次に、自身のスピードプロファイル1cを計算し、青信号位相図20及び過去のスピードプロファイル1a、1bの情報を再び使用して、自身のスピードプロファイル1cを計算する。スピードプロファイルは、次に、他の車両のスピードプロファイル又は動作プロファイルの更なる適応のため、他の車両に対して再び放送されてもよい(参照符号T1)。このプロセスは、各車両V1、V2、V3で継続的に適用され、過去に伝送された演算したスピードプロファイル1a、1b、1cを考慮に入れて、自身のスピードプロファイル1a、1b、1cを計算し、また、青信号図20による青信号時間窓についても考慮する。図6では、情報伝播は、3台の車両V1、V2、及びV3の走行方向に対して逆方向であってもよい。過去に受信したスピードプロファイル1a、1b、1c及び信号機情報(青信号図20)は、車両V1、V2、V3によってピギーバック方式で放送され(piggybacked)てもよい。
【0065】
各車両V1、V2、V3は、加速度を含む自身のスピードプロファイル1a、1b、1cを、現在のスピード及び位置、他の車両までの、特に信号機TLに最も近い車両までの距離、周囲の車両の予測軌道、及び交通インフラストラクチャによって、即ち図6では信号機TLによって通信される信号時間窓を含む、自身の移動状態に基づいて計算する。自身のスピードプロファイルを演算するとき、インフラストラクチャ情報又は信号機に隣接している車両までの距離のような制約として、他の車両のスピードプロファイルが考慮される。
【0066】
図7は、スピードプロファイルに基づく信号位相調節を示す。
【0067】
図7では、受信したスピードプロファイルに基づいて、信号機に対する信号機コントローラによって操作される、信号位相調節が行われる。信号機TL又はそれに対応するコントローラは、例えば、集約された、又は個々のメッセージの形の、全てのスピードプロファイル1a、1b、1cを受信し、青信号位相の時間窓GP1、GP2を適宜適応させる。
【0068】
信号機、又はより一般的には信号機付きインフラストラクチャは、信号機TLに近付いている車両隊列V1、V2、V3の最後の車両V1のスピードプロファイル1aに基づいて、青信号位相時間窓GP1、GP2を適応させる。交通インフラストラクチャは、受信したスピードプロファイル1a、1b、1c、及び他の交差道路で青信号位相時間窓を待っている車両の数(経路外情報)に基づいて、どの車両V1、V2、V3が、青信号位相時間窓内で通過させることができる最後の車両になるかを動的に選択してもよい。その決定はまた、外部情報、例えば他の相反方向における車両の存在(経路外情報)に基づくか、又は特に車両隊列中におけるエネルギー若しくは排気の問題(優先度情報)によってもよい。図7では、例えば、車両V1、V2、V3の軌道2a、2b、及び2cが、第1の青信号位相時間窓GP1の後半で、青信号位相時間窓GP1内にある信号機TLを通過するので、第1の青信号位相GP1が例えば低減される。したがって、青信号位相時間窓GP1の開始を後の時間にずらして、他の交差路にある車両がより長い青信号位相時間窓を備えることを可能にしてもよい。第1の青信号位相GP1は、軌道2a、2b、及び2cがそれぞれ第1の青信号位相時間窓GP1内にあるままであってもよいようにして補正される。したがって、第2の交差点における第2の青信号位相時間窓GP2も補正されてもよい。図7では、車両隊列V1、V2、V3が青信号位相時間窓GP2の前半で対応する信号機を通過するので、第2の青信号位相時間窓GP2の終了が低減されてもよく、その結果、青信号位相時間窓GP2の時間長が低減されてもよい。
【0069】
図8は、本発明の第3の実施形態による方法を示す。
【0070】
図8では、例えば図7に記載されるような、新しい青信号位相タイミングに基づいて、車両隊列V1、V2、V3の新しいスピードプロファイルを得るため、信号機TLが反復プロセスを再開する。この折衝プロセスは、例えば、車両隊列の全体的なエネルギー効率の改善、又は信号機TLを有する交差点における交通処理量の最大化について、複数の目的で、青信号位相時間窓を低減、拡大、及び/又は移動することを目的としている。信号機TLは、自身の青信号位相情報20を車両V1、V2、V3に送信する。車両V1、V2、V3は、自身のスピードプロファイル1a、1b、1cを計算し、それを信号機TLに返送する。信号機TLは、次に、自身の青信号位相時間窓を再計算し、新しい青信号位相情報を車両V1、V2、V3に返送する。車両V1、V2、V3は、次に、信号機TLの新しい青信号位相情報20に基づいて、再び自身のスピードプロファイル1a、1b、1cを再計算し、ここまでのプロセスが同様に続けられる。
【0071】
各反復工程において、信号機TLの新しく提案される青信号位相タイミングは、車両隊列V1、V2、V3の各車両V1、V2、V3によって検証されてもよい。成功する折衝反復それぞれの終わりに、信号機TLは、受理された新しい青信号位相を承認する。この折衝プロセスは、隊列の車両のうち1台、数台、又は全てが新しく提案される青信号位相タイミングを受理するまで継続してもよい。更に、車両軌道2a、2b、2cにある程度の安全マージンを加えたものによって使用されていない部分について、信号機TLの赤信号位相を短縮することが可能である。また、信号機TLが、一部の車両を停止させるか、又は青信号位相時間窓を拡大して、停止している車両を通過させてもよいことも可能である。
【0072】
図9は、本発明の第4の実施形態を示す。
【0073】
図9では、異なる車両V、V1、V2、V3間での反復プロセスが示される。車両隊列V、V1、V2、V3の車両Vは、図8とは対照的に、車両隊列の他の車両V1、V2、V3から受信した情報に基づいて、隊列全体のスピードプロファイルを更に最適化するために、反復を再開する。反復の間、各車両V、V1、V2、V3は、車両隊列の全ての車両V、V1、V2、V3の集約したスピードプロファイルに基づいて、自身のスピードプロファイルを修正する。各車両V、V1、V2、V3について、最後に受信したプロファイルは、新しいものが伝送されるまで有効である。これは、完全な反復を完了する必要がないことを意味する。信号機TLは、最後に受信したプロファイルを使用して、青信号位相時間窓を含む信号位相を調節してもよい。
【0074】
図9では、車両Vは、自身のスピードプロファイルを計算し、車両隊列の他の車両V1、V2、V3にそのスピードプロファイルを伝送する。他の車両V1、V2、V3は、伝送された車両Vのスピードプロファイルに基づいて、自身のスピードプロファイルを計算し、自身のスピードプロファイルを車両Vに送り返す。車両Vは、改善の余裕(improvement margins)が提供されたかを評価する。改善の余裕が提供された場合、車両Vは、改善の余裕に基づいて自身のスピードプロファイルを再計算し、自身のスピードプロファイルを車両隊列の他の車両V1、V2、V3に返送する。他の車両V1、V2、V3は、次に、車両Vの改善されたスピードプロファイルに基づいて、自身のスピードプロファイルを再計算し、ここまでのプロセスが同様に続けられる。更に、車両が自身の優先度を変更し、次に、逆方向の制約として先行車両軌道を追加することを予見することが可能であり、その場合、現在の車両は後続車両に先行し、その後、後続車両に対して何らかの利点があるか否か、例えば、後続車両に交差点を通過させるための青信号位相時間がまだ残っているかをチェックする。
【0075】
図10は、車両軌道の不確実性の影響を示す。
【0076】
図10では、車両の現在の移動状態における小さいばらつきを有する、時間に伴う車両軌道21、22、23、24、及び25の展開が示される。異なる軌道21、22、23、24、25における将来の分散の展開を定義する、更なる分散VAR1、VAR2、及びVAR3が示される。最小及び/若しくは最大加速度又は軌道計算の優先度のような、特定の制約に関する情報を含む、車両同士の情報の交換によって、スピードプロファイルの演算を、異なる比重量又は確率を有する軌道群を考慮することにより、公称軌道を超える範囲まで拡大することができる。交換情報は、例えば、多少の風によるスピードの変動などの局所的摂動に対してより堅牢である、軌道を演算するのに使用される。図10は、車両の将来の軌道における不確実性のかかる影響を示す。
【0077】
図11は、異なる重み選択の影響を示す。
【0078】
図11では、図3の式(1)による、異なる重み選択の影響が示される。演算における重み付けパラメータの異なる選択によって、総走行距離s’及びsを表す、異なる軌道21、22が得られる。当然ながら、これによって、異なる合計スピード及び異なる合計加速度も得られる。
【0079】
【数10】
【0080】
図11に示されるように、異なる青信号位相時間窓GP1及びGP2は適宜適応させなければならず、そうでなければ、軌道21、22を有する車両は停止しなければならない。
【0081】
図12は、信号位相分割を示す。
【0082】
図12では、複数の車両に対応するための信号位相分割が示される。青信号位相時間窓GP全体が、各車両に割り付けられる単一のスロットGP1、GP2、GP3、及びGP4に分割される。ti,1及びti,2は、i番目の交差点にあるi番目の信号機における、青信号位相時間窓GPの開始時間及び終了時間を表す。
【0083】
図13は、安全時間マージンを有する、及び有さない、信号位相の開始及び終了時間を示す。図13では、ti,1及びti,2は、i番目の交差点にあるi番目の信号機における、青信号位相時間窓GPの開始時間及び終了時間を表す。これは図13の上側の線に示される。下側の線は、赤信号位相から青信号位相GP’に変わるときの、信号機の黄色信号位相として実施されてもよい安全要件に対する安全マージンSM1及びSM2を含む。青信号位相時間窓に基づいてスピードプロファイルを演算するのに式(1)を適用するとき、より適切である青信号位相時間窓が選択される、実現可能性工程も行われるべきであり、実現不可能性が検出されると、到達不能な青信号位相時間窓が除去される。
【0084】
図14は、2台の車両の部分的に共通の走行経路を示す。
【0085】
図14は、複雑な交差点モデルを示し、第1の車両V1の途中経路は、3つの交差点IS1、IS2、及びIS3、並びにそれに対応する、3つの交差点IS1、IS2、及びIS3における車両流量を規制する信号機TL1、TL2、及びTL3である。第2の車両V2の途中経路は、第2及び第3の交差点IS2及びIS3である。第2の車両は、第1の車両V1とは別の方向から第2の交差点に近付いているので、第2の車両は、第2の交差点IS2では信号機TL2’を、また第3の交差点IS3では第1の車両V1と同じ信号機TL3を通過する。2台の車両V1、V2は、したがって、第2及び第3の交差点の間の、図14に参照符号Aで表される走行経路を部分的にのみ共有する。当然ながら、本発明の方法による制約は、共通経路区分Aについてのみ考慮されてもよい。信号機TL1、TL2、及びTL3は第1の車両V1の経路上にあり、信号機TL2’及びTL3は第2の車両の経路上にある。各交差点IS1、IS2、IS3において、信号灯コントローラTFRD1、TFRD2、及びTFRD3は、対応する交差点に対する対応する信号機TL1、TL1’、TL2、TL2’、及びTL3を制御し、例えば、第1の交差点IS1では、信号灯コントローラTFRD1は信号機TL1、TL1’を制御する。
【0086】
図15は、本発明の第5の実施形態によるシステムを示す。
【0087】
図15では、本発明によるシステムの実現例が示される。第1のモジュールM1は、前方に車両が存在しないか否かに係わらず、計画における最適スピードを計算し、即ち、先行車両に対する現在及び過去の距離とスピードの差は入力パラメータとして使用されない。第2のモジュールM2は、モジュールM1の入力パラメータと、更に、先行車両に対する現在及び過去の距離とスピードの差とを使用する。第2のモジュールM2は、隊列距離及び安全距離を保っている先行車両のスピード及び加速度、距離及び位置を感知するため、レーダーセンサに接続されてもよい。当然ながら、この情報はまた、先行車両との直接通信によって得られてもよい。モジュールM2は、出力パラメータとして、現在の車両の未来の位置、スピード、及び加速度を提供する。第3のモジュールM3は、次に、妥当な場合は先行車両の現在及び未来の位置に基づいて、現在の車両の未来の位置、スピード、及び加速度を計算する。第1のモジュールM1は、式(1)を使用すると共にMPCを使用することによって実施することができ、他の2つのモジュールM2、M3は、ファジー論理制御(FLC)に基づいて実施されてもよい。
【0088】
また、例えば図9による、車両同士のスピードプロファイル交換の過去の反復と、例えば交通流量を更に強化するための、隣接した更なる信号機同士での青信号位相時間窓の更なる反復交換との両方を考慮に入れることによって、交通コントローラそれぞれの交通インフラストラクチャによって提案される、青信号位相時間窓を演算することが可能である。
【0089】
図16は、本発明の第6の実施形態によるフローチャートを示す。開始(工程S1)の後、第2の工程S2で、信号位相情報並びに先行及び/又は後続車両のスピードプロファイルが受信される。第3の工程S3で、車両は、例えば現在のスピードを設定するのに使用される、自身のスピードプロファイルを計算する。計算の出力、即ち計算したスピードプロファイルは、次に、第4の工程S4で、改善の余裕に関して評価される。改善の余裕がある場合、スピードプロファイルは再演算され、改善の余裕に関して再チェックされる。改善の余裕がない場合、計算したスピードプロファイルは、他の車両及び交通インフラストラクチャに、例えば信号機に通信又は伝送され、第5の工程S5で、車両コントローラが始動され、それが第6の工程S6で、他の車両及び/又は交通インフラストラクチャに対するフィードバックが必要であるかを決定する。必要である場合、第7の工程S7で、フィードバックが他の車両及び/又は交差点信号に、例えば交通信号機に送信される。第8の工程S8で、計算済みの改善されたスピードプロファイルが他の車両及び/又は信号機に送信される。第9の工程S9で、例えば車両に提供された追加の外部情報を受信しているとき、工程S2〜S9を再び行うべきかが決定される。外部情報がない場合、プロセスは第10の工程S10で終了する。工程S2〜S9は、車両の移動状態及び移動プロファイルの変更、並びに場合によっては車両に提供される外部情報の変更により、時間に伴って反復して行われる。
【0090】
図17は、本発明の第7の実施形態によるフローチャートを示す。図17では、信号機コントローラのフローチャートが示される。開始(工程S1)の後、第2の工程S2で、信号位相情報並びに先行及び/又は後続車両のスピードプロファイルが受信される。工程S3で、次に、受信情報に基づいて、改善された信号位相が計算される。第4の工程S4で、信号機の計算された信号位相が依然として改善の余裕を提供するかが決定される。次に、工程S3及び再び工程S4が繰り返される。改善の余裕がもうない場合、この情報は、第5の工程S5で、信号機コントローラの対応するコントローラユニットに伝送される。信号機コントローラは、次に、工程S6’で、改善された信号位相を車両に送信する。第7の工程S7’で、工程S2〜S7’を繰り返すことが決定される。繰り返さない場合、第8の工程S8’で工程S2’〜S7’は終了し、そうでなければ、工程S2〜S7’が行われる。
【0091】
信号機コントローラは、工程S2〜S7’にしたがって、近付いてくる車両及び/又は周囲の更なる信号機若しくは交差点コントローラから受信するスピードプロファイルに基づいて、自身の信号位相を更新する。工程S2〜S7’はまた、反復して行われてもよい。図17及び図16による反復は、連続的なものと見なすべきではない。特に、最後の車両は、他の車両を待つことなく自身のスピードプロファイルを計算してもよい。
【0092】
概して、本発明は、車両が信号付き交差点を通過する滑らかな軌道と、更に、車両隊列内の青信号位相及び信号交差点自体の折衝とを可能にする。本発明は更に、車両のスピードプロファイル及び信号機位相を計算するため、複数の車両からのスピードプロファイルの統合を提供する。本発明は更に、信号機位相最適化及び車両の隊列内のスピードプロファイル最適化を含む一方で、安全性、車両特性、エネルギー効率、及び快適性に関する車両隊列の要件をそれぞれ維持しながら、交差点の交通効率を最適化することを担保する、交通の最適化のための入れ子状になった反復折衝プロセスを提供する。
【0093】
本発明は更に、滑らかなスピードのアドバイスのためのクルーズコントロールシステムにおける交通インフラストラクチャ情報の統合を提供し、車両の距離判定システムからの異なる情報源を、放送メッセージからの情報と統合する。本発明は更に、隊列化の解決策を提供するため、先行車両及び後続車両からの情報の統合を提供する。本発明は、更にまた、信号付き交差点との相互作用及び他の車両との相互作用を提供し、車両及び他の交差点との折衝に基づいて、信号機の信号位相の最適化を可能にする。
【0094】
本発明はまた、不完全な反復サイクルによる安定性の問題を引き起こさない、反復メカニズムを提供する。車両及び交差点コントローラの間での、且つ交差点のコントローラ同士での反復は、例えばより良好な処理量、より少ないエネルギー、より少ない総走行時間に基づいて、目標関数を使用して交差点コントローラによって測定される肯定的な影響が修正によってもたらされる場合にのみ進行する。特定の青信号位相時間窓に対する反復はまた、安全マージンを考慮することができるので、例えば、青信号位相が開始されると、開始時間を修正できなくなる。従来の反復方法は、位相の開始値及び終了値が最小値の近くで振動すると、リップル現象を起こすので、目標関数の最小点に近付くと反復工程が低減されることがある。単一の青信号位相に対する反復プロセスは、交差点コントローラによって任意の時点で終了させることができ、この場合、最後に特定された解決策が交通コントローラによって適用される。
【0095】
本明細書で説明される本発明の多くの修正及び他の実施形態は、上記説明及び関連図面に提示される教示の利益を有する、本発明が関連する分野の当業者には想起されるであろう。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されず、修正及び他の実施形態が添付の請求項の範囲に含まれるものとすることを理解されたい。本明細書において特定の用語を用いているが、それらは、限定目的ではなく、包括的且つ説明的な意味でのみ使用される。
図1
図2
図3
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図5
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図8
図9
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図11
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