(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リスク管理画面表示部は、前記口座グループの当座貸越/借越状況及び前記口座グループの拠点ごとの当座貸越/借越状況を含んだリスク管理画面を表示することを特徴とする請求項1に記載のノーショナルプーリングシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、昨今、日系企業を含めアジア進出企業の増加トレンドが継続し、進出形態の多様化、多国籍化の進行に伴い、プーリングサービスなどの財務管理ニーズが高度化している。
【0007】
グループ企業の親会社口座、子会社口座を一体的に管理するプーリングには、大きく分けて、アクチュアルプーリングとノーショナルプーリングとの2種類が存在する。アクチュアルプーリングとは、資金移動を伴って実際に親会社口座に残高を集中する仕組みである。特徴としては、余剰資金集約により財務資源の有効活用が可能であるが、同一通貨の口座が基本であり、利息計算、利払いは勘定系に依存する。また、別法人のプーリングは会社間の賃借が必要となる。一方、ノーショナルプーリングとは、資金移動は伴わずに、親会社、子会社の口座残高を仮想的に集中したと見なして相殺する仕組みである。特徴としては、余剰資金集約により財務資源の有効活用が可能なのは同様であるが、異通貨口座でもプーリングが可能で、利息計算、利払い方法の自由度が高いことである。また、別法人でも会社間賃貸は不要となる。
【0008】
また、前述のように、企業の進出形態の多様化、多国籍化の進行に伴い、特に、クロスボーダーのプーリングにおいては、ベネフィットの最適化だけでなく、リスク管理手段も提供されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、プーリングサービスにおける上記課題のうち、特に顧客にとってリスク管理を含むクロスボーダーのノーショナルプーリングのシステムを提供することを目的とし、以下のような解決手段を提供する。
【0010】
(1)本発明の第1の態様は、顧客の複数の口座間で資金集中及び資金配分を行うクロスボーダーのノーショナルプーリングシステムであって、前記顧客の情報を登録する顧客情報登録手段と、仮想的にプーリングを実行するプーリング実行手段とを備え、前記顧客情報登録手段は、企業グループの中のプーリング対象口座が登録される口座登録部と、前記口座登録部に登録された口座からなる複数の口座グループが登録される口座グループ登録部とを有し、前記プーリング実行手段は、前記顧客情報登録手段に登録された前記口座グループの情報に基づいて、前記プーリング対象口座の口座残高情報を取得する口座残高情報取得部と、前記取得した口座残高情報に基づいて、口座残高の資金を仮想的に移動した際の利息を計算する利息計算部と、前記利息計算部が通常の金利を用いて計算した利息と、プーリング契約により通常時に適用される金利よりも優遇された金利を用いて計算した利息との差をベネフィットとして計算するベネフィット計算部と、前記ベネフィットの合計をプールベネフィットとして計算するプールベネフィット計算部と、顧客の口座グループを識別する識別子の入力を受け付けて
、銀行側のリスク管理モニタリングのために、前記企業グループ全体の参加口座の総額の銀行に対する預貸比率を含む前記当座貸越/借越状況を表示するリスク管理画面表示部と、を有することを特徴とする
【0011】
(2)また、上記の(1)のシステムにおいて、前記リスク管理画面表示部は、前記口座グループの当座貸越/借越状況及び前記口座グループの拠点ごとの当座貸越/借越状況を含んだリスク管理画面を表示することを特徴とする。
【0012】
(3)また、上記の(1)又は(2)のシステムにおいて、前記リスク管理画面表示部は、前記口座グループにおける
参加口座の預貸比率の悪化に関する注意喚起条件及び警告条件を顧客に設定させ、前記設定された注意喚起条件及び警告条件に従って、注意喚起又は警告を表示することを特徴とする。
【0013】
(4)また、本発明の第2の態様は、 顧客の複数の口座間で資金集中及び資金配分を行うクロスボーダーのノーショナルプーリング方法であって、
コンピュータが、企業グループの中のプーリング対象口座が登録される段階と、前記登録された口座からなる複数の口座グループが登録される段階と、前記登録された前記口座グループの情報に基づいて、前記プーリング対象口座の口座残高情報を取得する段階と、前記取得した口座残高情報に基づいて、口座残高の資金を仮想的に移動した際の利息を計算する段階と、前記計算する段階において通常の金利を用いて計算した利息と、プーリング契約により通常時に適用される金利よりも優遇された金利を用いて計算した利息との差をベネフィットとして計算する段階と、前記ベネフィットの合計をプールベネフィットとして計算する段階と、表示す顧客の口座グループを識別する識別子の入力を受け付けて
、銀行側のリスク管理モニタリングのために、前記企業グループ全体の参加口座の総額の銀行に対する預貸比率を含む前記当座貸越/借越状況を表示する段階と、を
実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リスク管理を含むクロスボーダーのノーショナルプーリングのシステムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願明細書は、出願済の特願2014−260658の記載内容をベースとしており、上記出願の記載内容を引用することにより、本願の明細書の一部を構成するものとする。以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、以降の図においては、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。また、機能構成の図において、機能ブロック間の矢印は、データの流れ方向、又は処理の流れ方向を表す。
【0017】
<ノーショナルプーリングの実例>
前述したように、ノーショナルプーリングは、資金移動は伴わないがリーダー口座、メンバー口座の残高を仮想的に集中したと見なす仕組みである。最もシンプルな基本形としては、同一国内・同一銀行支店内で行うものであるが、クロスボーダーでノーショナルプーリングを行う場合は、事前にクロスボーダー資金移動を行った上で、前述の基本形と同様の状態を作り出して実施する実例が多いと考えられる。しかし、資金をリーダー国に移動することが困難である場合などに、資金移動を伴わずに仮想的に口座残高情報などを集約して利計算するノーショナルプーリングも存在する。参加口座の名義人が複数存在する場合は、プーリング参加者間での相互認証、メンバーの破たん時の預金による資金の操作合意などにより、信用リスクの削減が図られる。また、資金移動を伴わずに仮想的に口座残高情報などを集約して利計算するもう1つの方法として「インタレストオプティマイゼーション」と呼ばれるスキームもある。このスキームでは、プーリング参加者間での相互認証、メンバーの破たん時の預金による資金の操作合意などの信用リスクの削減に繋がる契約は結ばれない。
【0018】
<ノーショナルプーリングシステムの概要>
図1は、本発明の実施形態に係るグローバルプーリングシステム(以下、GPS:Global Pooling Systemと呼ぶ)の概要(システム対応の概要)を示す図である。GPSは、資金集中と資金配分を行うプーリングサービスにおいて、クロスボーダーのノーショナルプーリングサービスを提供する中核のシステムである。GPSの処理は、図示するように、(1)契約・金利・為替登録、(2)口座残高照会、(3)利息・ベネフィット額計算・配賦、(4)利息受払、(5)顧客・行内レポート作成の段階に分かれる。以下、概要を順に説明する。
【0019】
(1)契約・金利・為替登録の段階は、顧客との契約内容に基づいてプーリング対象口座を登録する段階である。ここでは、顧客の企業グループが存在する各拠点の銀行において、その銀行の担当者の端末からGPSに対して、顧客との間の契約情報、金利情報、為替情報などの各種データが入力され、プーリングの事前準備の登録がなされる。なお図では、本邦又は豪亜の拠点から登録する場合を示している。
【0020】
(2)口座残高照会の段階は、勘定系システムより対象口座の残高を取得する段階である。ここでは、プーリング実行時に、企業グループのプーリングの対象の全口座に対して、残高照会がなされる。企業グループの拠点は、本邦、豪亜、欧米にあるものとし、各拠点を担当する銀行支店間を、SWIFTネットワークシステムを経由して接続している。なお、SWIFTネットワークシステムとは、国際銀行間通信協会(SWIFT:Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)が提供するグローバルな金融メッセージサービスのシステムであり、以下では、この金融メッセージサービスシステム自体を「SWIFT」と呼ぶことにし、図中ではSWIFTのシンボルマークで表現することにする。図では省略しているが、豪亜システムと本邦システム間もSWIFTで接続されている。
【0021】
(3)利息・ベネフィット額計算・配賦の段階は、通常金利・優遇金利を利用した利息とプールベネフィットを計算し、顧客の要望に応じてプールベネフィットを各口座に配賦する段階である。ここで、「プールベネフィット」とは、プーリング契約内の条件により、通常時に適用される金利よりも優遇された金利が適用されたことに起因する支払利息の削減額と受取利息の増加額の合計をいう。ノーショナルプーリングでは、預貸の残高は相殺されずにそのまま残存するが、利息計算はあたかも預貸が相殺されたかのように取扱い、計算することができ、これを「みなし相殺」と呼んでいる。
【0022】
(4)利息受払の段階は、勘定系システムへ利息額の連携を行う段階である。
【0023】
(5)顧客・行内レポート作成の段階は、顧客向けプーリングレポート、行内向けレポートを提供する段階である。これらのレポートには、プーリングの利用状況のデータの他、後述するリスク管理の画面が提供される。顧客は、インターネットバンキングなどユーザインターフェースを提供する各国のEBシステム(Electronic Banking System)からレポートを直接見ることができる。
【0024】
なお、関連システムとして、(6)欧米残高連携、(7)利息組入、(8)レポーティングがある。(6)欧米残高連携は、欧米口座の残高情報について、欧米勘定系システムからSWIFTあてに発信された残高情報をGPSに連携させる機能を有する。また、(7)利息組入(勘定系)は、GPSからの処理に基づき利息受払処理を実施する機能を有する。また、(8)レポーティングは、上記のEBシステムであり、顧客向けレポートを実際に顧客に提供する窓口(ポータル)となる機能を有する。
【0025】
<資金集中の具体例>
図2は、ノーショナルプーリングにおける資金集中を説明するための図である。この図は、ノーショナルプーリングにおける仮想的な資金集中の具体例として、多通貨を1カ国に集中させる場合の簡単な例を示している。一例として、GPSが英国拠点における2つの口座、A口座(ユーロ通貨立て)とB口座(米ドル通貨立て)の当日最終残高に基づいて、利息計算を行う処理について説明する。
【0026】
GPSの利息計算期間開始日において、A口座の当日最終残高が▲100EURであり、B口座の当日最終残高が+300USDであったとすると、この時点のA口座とB口座を合わせた仮想残高は、+150USDとなる。ただし、為替レートは、1EUR=1.5USDとする(以下同じ)。また、この時点の仮想残高に基づいて計算されたベネフィットは、+5USDであったとする。
【0027】
一方、別の日の利息計算期間開始日において、A口座の当日最終残高が▲200EURであり、B口座の当日最終残高が+600USDであったとすると、この時点のA口座とB口座を合わせた仮想残高は、+300USDとなる。そして、この時点の仮想残高に基づいて計算されたベネフィットは、+10USDであったとする。
【0028】
その後、同様な計算を日ごとに繰り返し、利息計算の終了日を迎えた時点では、プールベネフィットが、60USDに確定したとすると、GPSは、参加口座への配分金額を計算する。ここでは、配分率(按分率)をA口座に25%、B口座に75%とすると、利払日に、ベネフィット配賦額を、A口座に10EUR、B口座に45USDが配分される。
【0029】
<GPSの機能構成>
図3は、本発明の実施形態に係るグローバルプーリングシステムの機能構成を示す図である。GPS100は、GPS−勘定系連携基盤150を介して、各国の勘定系システム200と通信可能に接続される。各国の勘定系システム200は、図では、本邦勘定系システム、豪亜勘定系システム、欧米勘定系システムの3つに分けて示しているが、このような分け方に限定されるものではない。また、GPS−勘定系連携基盤150は、その名称のとおり、GPS100と各国の勘定系システム200を連携させるためのサブシステムであるが、本発明の要部ではないので、ここでは説明を省略する。
【0030】
以下、GPS100の機能構成について説明する。図示するようにGPS100は、大きく分けて、顧客との契約情報などを事前登録する顧客情報登録手段1と、プーリング実行手段であるプーリングエンジン2とに分けられる。顧客情報登録手段1及びプーリングエンジン2は、1つのサーバ内に構築しても、複数のサーバをネットワークによって接続することによって構築してもよい。以下、GPS100のノーショナルプーリング時の機能を中心に説明するが、GPS100自体は、アクチュアルプーリングもサポート可能である。
【0031】
(顧客情報登録手段)
顧客情報登録手段1は、企業グループ登録部11、口座登録部12、契約情報登録部13、口座グループ登録部14、プーリングルール保持部15、及び与信管理情報登録部16を備える。以下、顧客情報登録手段1の各部について説明する。
【0032】
企業グループ登録部11には、顧客として金融機関とプーリングサービスの契約を結ぶ企業グループが登録される。登録される情報は企業グループ名、統括会社名など企業グループに関する情報である。
【0033】
契約情報登録部13には、企業グループ登録部11に登録された企業グループと金融機関との、プーリングのサービス契約の内容が登録される。登録される契約情報には、プーリングのサービス契約開始日と終了日、レポート配信方式、利息計算方式、適用する為替レートなどがある。
【0034】
プーリングルール保持部15には、プーリングエンジン2が資金移動を指図する際のプーリングルールが、口座グループごとに登録される。プーリングルールとしては、プーリングエンジン2の起動条件、起動時間、口座間の資金の移動方向(1Way/2Way)、プーリング方式などの条件が登録される。プーリングルール保持部15は、上記の条件をデータとして保持するだけでなく、プーリングルールを実行するロジック又はそのロジックを実行するプログラム自体を記憶するようにしてもよい。そのようにすることで、プーリングエンジン2を修正することなく、プーリングルールの新設や変更に柔軟に対応することができる。なお、以下に記載する口座グループや口座のヒエラルキー及びプーリングルールの詳細については、特願2014−260658の明細書を参照されたい。なお、口座グループ(例えば第1口座グループ)は、別の口座グループ(例えば第2の口座グループ)と紐づけられ、新しい第3の口座グループを形成することもできる。
【0035】
口座登録部12には、登録された会社のプーリングで取り扱う口座情報が登録される。口座情報には、口座名、口座種別、口座番号など、各国の勘定系システム200と連携させるために必要な情報と、プーリングシステムにおいて顧客が指定する口座グループ名、及び口座グループにおける役割が親口座か子口座かについての情報が登録される。
【0036】
口座グループ登録部14は、口座登録部12に登録されている各口座の、指定された口座グループ名と親口座か子口座かの役割についての情報に基づいて、口座グループに属する口座のリストを作成し、各口座グループの親口座と子口座を設定し登録する。このとき、顧客によって2つの口座グループに属することが指定されている口座は、1つの口座グループ(第1口座グループ)では親口座、別の口座グループ(第2口座グループ)では子口座として登録される。
【0037】
また、口座グループ登録部14は、作成した口座グループにプーリングルール保持部15に登録されたプーリングルールを割り付ける。口座グループ登録部14に登録される情報には、口座グループ名、親子口座、プーリングルール名、通貨方式、銀行種別、及び口座情報が登録される。口座情報には、詳しい説明は省略するが、グループ企業の口座ごとに、口座名、銀行種別、通貨、会社名、BICコード、拠点名、口座番号、用途、着地残高/トリガー、ターゲット残高、レンジ上限/下限などの情報が登録される。また、与信管理情報登録部16は、後述するリスク管理のための設定条件等の与信情報を登録する。
【0038】
(プーリングエンジン)
プーリングエンジン2は、設定されたプーリングルールに従って、口座残高情報を取得し、子口座から親口座に移動する資金集約と親口座から子口座に移動する資金分配の額である資金移動額を計算し、資金移動指図を行う。プーリングエンジン2は、口座残高情報取得部21、資金移動額計算部22、資金移動指図部23、利息・ベネフィット計算部24、配賦金額処理部25、顧客レポート作成部26を有している。以下、プーリングエンジン2の各部について説明する。
【0039】
前述の顧客情報登録手段1は、プーリングルール保持部15に第1口座グループのプーリングルールとして登録されている起動条件から、第1口座グループのプーリングを実施するタイミングであると判断すると、プーリングエンジン2にプーリングの開始を指示し、プーリングエンジン2は、プーリングルール保持部15及び口座グループ登録部14に登録されているプーリングルール及び口座グループの情報を取得する。
【0040】
プーリングエンジン2の口座残高情報取得部21は、入手した口座グループに属する口座の情報に基づいて、GPS−勘定系連携基盤150を介して各国の勘定系システム200から口座グループに属する口座の口座残高情報を取得する。
【0041】
資金移動額計算部22は、取得した口座残高情報とプーリングルールに従って、口座グループの親口座と各子口座の間で仮想的に移動する資金額を算出する。ノーショナルプーリングにおいては実際に口座間で資金が移動されるわけではない。
【0042】
資金移動指図部23は、アクチュアルプーリングにおいては、資金移動額計算部22で算出された資金額を、各国の勘定系システム200に送信し、口座グループの各口座の資金移動が実行される。しかし、ノーショナルプーリングにおいては、資金移動指図部23がプーリングの際の実際の口座間の資金移動指図をすることはないが、得られたベネフィットから各口座へ配分される利息額確定後に資金移動指図の処理で口座へ入金指示は指図する。
【0043】
なお、ノーショナルプーリングでは、アクチュアルプーリングと異なり、実際の資金移動をしないので、拠点によっては大きな赤残になってしまう可能性がある。そのため、拠点で赤残が発生したとき(あるいは当座貸越が一定割合をオーバーしたとき)と判断した場合は、資金移動指図部23を実行するように制御してもよい。
【0044】
プーリングエンジン2の利息・ベネフィット計算部24は、取得した口座残高情報に基づいて、口座残高の資金を仮想的に移動した際の利息及びベネフィットを計算する。詳細には、通貨、為替レート/金利等リファレンスデータ及び顧客口座関連マスタ(図示省略)のデータベースを参照し、利息及びベネフィットの計算を行う。利息・ベネフィット計算部24は、より詳細には、3つの部分に分かれ、取得した口座残高情報に基づいて、口座残高の資金を仮想的に移動した際の利息を計算する利息計算部と、利息計算部が通常の金利を用いて計算した利息と、プーリング契約により通常時に適用される金利よりも優遇された金利を用いて計算した利息との差をベネフィットとして計算するベネフィット計算部と、前記ベネフィットの合計をプールベネフィットとして計算するプールベネフィット計算部とを有する。
【0045】
顧客口座関連マスタは、詳細な説明は省略するが、顧客コード/顧客名/所属国、支店名/口座番号/預貸区分/通貨/居住区分/預金・貸金契約番号、口座グループ/ヒエラルキー情報、預貸通常金利、預貸優遇金利、優遇条件金利計算モード(複利、Act/Actなど)、機能通貨/参照為替レート、金利計算・受渡サイクル、カットオフ設定(自動/手動など)、送金設定(Sweep頻度/Target額など)、当座貸越枠(会社別、グループ別)、会社間ローン金利、グループ間与信枠、借入金/貸出(金額、利率)制限、税率−顧客(源泉税率、VATなど)、税率−銀行、グロスネット区分、手数料などのデータを格納したデータベースである。
【0046】
プーリングエンジン2の配賦金額処理部25は、利息・ベネフィット計算部24が計算した利息とプールベネフィットの配賦、支払のための処理を行う。ノーショナルプーリングにおいて、プールベネフィットの配賦が発生する場合は、顧客からの指示に基づき、銀行が最終的な口座ごとの利息を各口座と受払する。ただしグループ全体でみた際に、銀行がグループ全体に受払する利息の合計は、ベネフィット配賦しない場合と変わらない。
【0047】
プーリングエンジン2の顧客レポート作成部26は、利息・ベネフィット計算部24の計算の結果であるプールベネフィットの配賦を含んだ顧客レポートを作成する。顧客レポートは、顧客の口座グループを識別する識別子の入力を受け付けて顧客の口座グループの当座貸越/借越状況を表示するリスク管理画面表示部を備え、後述するリスク管理画面を表示するようにしてもよい。顧客レポートには、顧客用のレポートの他行内用のレポートも含む。レポートの内容(開示範囲など)は、顧客用と行内用で異なっていてもよい。このレポートには様々なものがあるが、そのうちリスク管理レポートに関し、リスク管理画面の具体例を
図4〜
図7に示す。
【0048】
図4は、リスク管理画面における顧客の企業グループ(口座グループ)の当座貸越/借越状況(Overdraft Usage)及び最新のバランスデータ(差引残高)の状況(Latest Balance Acquisition Date and Time)を示す図である。ここでは、各拠点に点在している企業グループの貸越枠をグループ与信の観点から一元的に枠の利用実績を管理することを目的とした画面を表示する。
【0049】
図5は、リスク管理画面における拠点(Branch)ごとの当座貸越/借越状況を示す図である。ここでは、各拠点の金繰り担当者が自拠点、他拠点で通貨ごとに貸越枠とその利用実績をモニターする機能を有する画面の例であり、流動性リスク管理を補助することを目的とした画面を表示する。ここで、顧客レポート作成部26のリスク管理画面表示部は、顧客の口座グループの当座貸越/借越状況及び前記口座グループの拠点ごとの当座貸越/借越状況を含んだリスク監理画面を表示する。
【0050】
図6は、ある口座グループ(Account Group)における注意喚起・警告条件の設定画面を示す図である。すなわち、プーリングの全体スキームを登録する画面、スキーム参加口座の設定と与信状況の悪化を検知する仕組みとして、参加する口座全体の預貸比率を登録するための画面の例である。ここで、図の枠で囲った部分「Alarm Threshold(deposit coverage ratio)」とは、貸金総額と預金総額の割合であり、例えば、預金100>貸金80(80%)であったとすると、預金100=貸金100(100%)となる。
【0051】
図7は、業務上、異例な事態やユーザでの判断を要する事態が発生した場合にユーザへ通知する画面の例である。この例の画面では、ノーショナルプーリング参加口座の預貸比率の悪化を注意喚起(caution)と警告(warning)の2段階で通知している。このことにより、預貸比率の悪化を早い段階から通知することができる。ここでは、顧客レポート作成部26のリスク管理画面表示部は、前記口座グループにおける注意喚起条件及び警告条件を顧客に設定させ、設定された注意喚起条件及び警告条件に従って、注意喚起又は警告を発生させる。
【0052】
本システムでは、上記のような構成をとることで、(1)異なる国に口座を保有するグループ企業の資金管理について、複数の勘定系システムを跨る口座であっても、仮想的に残高と利息額を計算することができる。(2)GPSと直接接続を行う拠点とSWIFTを介して接続する拠点の両方の口座を一元的に処理することができる。(3)顧客のプーリング金額だけでなく、異なる勘定系システムを跨る口座の預貸比率をモニターし、アラームする銀行側のリスク管理モニタリングが可能となる。(4)地域によって異なるEBシステムへの顧客向レポート還元が可能となる。
【0053】
上記のシステムの機能構成は、あくまで一例であり、一つの機能ブロック(データベース及び機能処理部)を分割したり、複数の機能ブロックをまとめて一つの機能ブロックとして構成したりしてもよい。各機能処理部は、装置に内蔵されたCPU(Central Processing Unit)が、ROM(Read Only Memory)又はハードディスクなどの記憶装置に格納されたコンピュータ・プログラムを読み出し、CPUにより実行されたコンピュータ・プログラムによって実現される。すなわち、各機能処理部は、このコンピュータ・プログラムが、記憶装置に格納されたデータベース(DB;Data Base)やメモリ上の記憶領域からテーブルなどの必要なデータを読み書きし、場合によっては、関連するハードウェア(例えば、入出力装置、表示装置、通信インターフェース装置)を制御することによって実現される。また、本発明の実施形態におけるデータベース(DB)は、商用データベースであってよいが、単なるテーブルやファイルの集合体をも意味し、データベースの内部構造自体は問わないものとする。
【0054】
(実施形態の効果)
上記の本発明の実施形態によれば、リスク管理を含むクロスボーダーのノーショナルプーリングシステムを提供することができる。このリスク管理においては、企業グループの貸越枠をグループ与信の観点から一元的に枠の利用実績を管理することができる。また、各地に点在している拠点ごとに、各拠点の金繰り担当者が自拠点、他拠点で通貨ごとに貸越枠とその利用実績をモニターする機能を有し、流動性リスク管理を補助することができる。さらに、プーリングの全体スキームを登録する画面に加え、スキーム参加口座の設定と与信状況の悪化を検知する仕組みとして、参加する口座全体の預貸比率を登録することができる。また、注意喚起と警告の画面を提供することにより、預貸比率の悪化を早い段階から通知することができる。
【0055】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。なお、上記の実施形態では、本発明を物の発明としてプーリングシステムについて説明したが、本発明は、方法の発明(ノーショナルプーリング方法)としても捉えることもできる。
【解決手段】顧客の情報を登録する顧客情報登録手段1と、プーリングを実行するプーリングエンジン2とを備え、顧客情報登録手段1は、プーリングに参加する企業グループの中のプーリング対象口座が登録される口座登録部12と、口座登録部12に登録された口座からなる複数の口座グループが登録される口座グループ登録部14とを有する。プーリングエンジン2は、プーリング対象口座の口座残高情報を取得し、口座残高の資金を仮想的に移動した際の利息及びベネフィットを計算する利息・ベネフィット計算部24と、顧客の口座グループを識別する識別子の入力を受け付けて口座グループの当座貸越/借越状況を表示するリスク管理画面表示部と、を有する。