特許第6183890号(P6183890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183890
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   A61B8/00
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-107879(P2013-107879)
(22)【出願日】2013年5月22日
(65)【公開番号】特開2014-226296(P2014-226296A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年5月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】300019238
【氏名又は名称】ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(72)【発明者】
【氏名】神山 直久
【審査官】 宮澤 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−154980(JP,A)
【文献】 特表2010−537700(JP,A)
【文献】 特開昭55−029359(JP,A)
【文献】 特開昭56−085332(JP,A)
【文献】 特開昭60−129037(JP,A)
【文献】 特開昭62−044226(JP,A)
【文献】 特開平05−192337(JP,A)
【文献】 特開平06−022965(JP,A)
【文献】 特開平10−165399(JP,A)
【文献】 米国特許第06055861(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波振動子から超音波の送信を行なうコンベックスプローブと、
該コンベックスプローブによる超音波のスキャンを制御するスキャン制御部であって、カーブドリニアスキャン方式による超音波のスキャンを行なう第一のモードと、一フレームの超音波画像を作成するための超音波のスキャンに用いられる前記超音波振動子の開口が、前記第一のモードよりも小さく、なおかつセクタスキャン方式による超音波のスキャンを行なう第二のモードとの切り替えを行なうスキャン制御部と、
を備え
前記第二のモードにおける超音波のスキャン領域の視野角を二等分するスキャン中心線は、前記第一のモードにおける超音波のスキャン領域の視野角を二等分するスキャン中心線とは異なる位置であり、
前記第一のモードにおける前記超音波のスキャン中心線は、前記コンベックスプローブにおける前記超音波振動子の配列幅の中心を通る線であり、
前記第二のモードにおける前記超音波の前記スキャン中心線は、前記第一のモードにおける前記超音波のスキャン中心線に対し、前記被検体に対して刺入される穿刺針側に位置しており、
前記穿刺針は、前記コンベックスプローブにおける前記超音波振動子の配列方向の両端部のうち、少なくとも一方の端部側に位置している、
ことを特徴とする、超音波診断装置。
【請求項2】
前記第一のモードによる超音波の送信によって前記被検体から得られたエコー信号に基づいて、前記コンベックスプローブの超音波の送受信面における被検体との接触部分を特定する特定部を備え、
前記制御部は、前記特定部によって特定された接触部分を含む開口を有する前記第二のモードによる超音波のスキャンを行なわせる
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記第一のモードによる超音波の送信によって前記被検体からエコー信号が得られた超音波振動子を特定し、該超音波振動子の位置に基づいて前記接触部分を特定することを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
被検体に対して超音波振動子から超音波の送信を行なうコンベックスプローブと、
該コンベックスプローブによる超音波のスキャンを制御するスキャン制御部であって、カーブドリニアスキャン方式による超音波のスキャンを行なう第一のモードと、一フレームの超音波画像を作成するための超音波のスキャンに用いられる前記超音波振動子の開口が、前記第一のモードよりも小さく、なおかつセクタスキャン方式による超音波のスキャンを行なう第二のモードとの切り替えを行なうスキャン制御部と、
三次元空間における前記コンベックスプローブの傾きを検出する検出部と、
を備え、
前記スキャン制御部は、前記検出部によって検出された傾きに基づいて、前記第二のモードにおけるスキャンの開口を設定する
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
被検体に対して超音波振動子から超音波の送信を行なうコンベックスプローブと、
該コンベックスプローブによる超音波のスキャンを制御するスキャン制御部であって、カーブドリニアスキャン方式による超音波のスキャンを行なう第一のモードと、一フレームの超音波画像を作成するための超音波のスキャンに用いられる前記超音波振動子の開口が、前記第一のモードよりも小さく、なおかつセクタスキャン方式による超音波のスキャンを行なう第二のモードとの切り替えを行なうスキャン制御部と、
を備え、
前記コンベックスプローブの表面に、前記第二のモードによる超音波の開口の位置を示すインジケータを有することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
前記第一のモードと前記第二のモードのいずれかを選択する入力を行なう入力部を備え、
前記スキャン制御部は、前記入力部で選択された前記第一のモード又は前記第二のモードのいずれかのモードで超音波のスキャンを行なわせる
ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二種類のモードの超音波スキャンを切り替えることができる超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置においては、診断部位に合わせて種々の超音波プローブが用いられている。例えば、肝臓の超音波画像を得る場合においても、見たい部分によって、肋弓下から超音波の送受信を行なったり、肋間から超音波の送受信を行なったりする。肋弓下における超音波の送受信には、比較的大開口であるコンベックスプローブ(convex probe)が用いられることが多い。一方、肋間においては、限られた隙間から超音波の送受信を行なわなければならないこと、穿刺針を刺入する場合には、体表に近い部分の穿刺針を超音波画像でとらえる必要があること、などが理由で、比較的小開口であるマイクロコンベックスプローブ(micro convex probe)やセクタプローブ(sector probe)が用いられることが多い(例えば、特許文献1参照)。マイクロコンベックスプローブやセクタプローブは、開口が小さく、なおかつ超音波画像の視野角を確保することができるので、限られた隙間から超音波の送受信を行なうことができ、体表に近い部分の穿刺針を超音波画像でとらえることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−87668号公報(第3頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、診断部位に合わせて異なる種類の超音波プローブが用いられているので、一回の超音波検査で複数の診断部位を検査する場合、診断部位に合わせていちいち超音波プローブを変えなければならず、煩雑である。また、小開口のマイクロコンベックスプローブ又はセクタプローブは、特定部位や特定用途などに特化された専用プローブである。このため、超音波診断装置のユーザーは、汎用プローブである大開口のコンベックスプローブ以外に、前記マイクロコンベックスプローブ又はセクタプローブを購入して所持しておく必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するためになされた一の観点の発明は、被検体に対して超音波振動子から超音波の送信を行なうコンベックスプローブと、コンベックスプローブによる超音波のスキャンを制御するスキャン制御部であって、カーブドリニアスキャン方式による超音波のスキャンを行なう第一のモードと、一フレームの超音波画像を作成するための超音波のスキャンに用いられる前記超音波振動子の開口が、前記第一のモードよりも小さく、なおかつセクタスキャン方式による超音波のスキャンを行なう第二のモードとの切り替えを行なうスキャン制御部と、を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0006】
また、他の観点の発明は、前記一の観点の発明において、前記第一のモードによる超音波の送信によって前記被検体から得られたエコー信号に基づいて、前記コンベックスプローブの超音波の送受信面における被検体との接触部分を特定する特定部を備え、前記制御部は、前記特定部によって特定された接触部分を含む開口を有する前記第二のモードによる超音波のスキャンを行なわせることを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0007】
上記一の観点の発明によれば、カーブドリニアスキャン方式による超音波のスキャンを行なう第一のモードと、第一のモードよりも開口が小さくセクタスキャン方式による超音波のスキャンを行なう第二のモードとを切り替えることができるので、一つのプローブを、スキャンの開口が比較的大きいコンベックスプローブとして用いることもでき、スキャンの開口が比較的小さいマイクロコンベックスプローブ又はセクタプローブとしても用いることもできる。
【0008】
また、上記他の観点の発明によれば、前記特定部によって特定された接触部分を含む開口で前記第二のモードによるスキャンが行われるので、この第二のモードにおける開口を任意の位置に容易に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態(第一実施形態及び第二実施形態)における超音波診断装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図2】超音波プローブの一例を示す拡大図である。
図3】第一のモードのカーブドリニアスキャンを説明する図である。
図4】第一のモードのカーブドリニアスキャンにおける超音波のスキャン中心を説明する図である。
図5】第二のモードのセクタスキャンを説明する図である。
図6】第二のモードのセクタスキャンにおける超音波のスキャン中心を説明する図である。
図7】インジケータを有する超音波プローブを示す図である。
図8】第一実施形態の変形例において、被検体に対して穿刺針を刺入した状態を示す図である。
図9】第二実施形態における制御部の構成を示すブロック図である。
図10】第一のモードにおいて、超音波プローブを傾けた状態を示す図である。
図11】第二のモードのセクタスキャン方式による超音波の送信を説明する図である。
図12】第三実施形態の超音波診断装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図13】第三実施形態における制御部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について、図1図7に基づいて詳細に説明する。図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信ビームフォーマ3、エコーデータ処理部4、表示制御部5、表示部6、操作部7、制御部8及び記憶部9を備える。
【0011】
前記超音波プローブ2は、図2に示すようにコンベックスプローブであり、超音波の送受信面2aが凸状の曲面になっている。前記超音波プローブ2は、アレイ(array)状に配置された複数の超音波振動子2bを有して構成され、この超音波振動子によって被検体に対して超音波を送信し、そのエコー信号を受信する。前記超音波振動子2bは、前記送受信面2aに沿うように凸状に配置されている。
【0012】
前記送受信ビームフォーマ3は、前記制御部8からの制御信号により、後述するように第一のモードと第二のモードのいずれかのモードで、超音波の送信ビームと受信ビームを形成するスキャンを行なう。
【0013】
前記送受信ビームフォーマ3は、所定の送信パラメータで前記超音波振動子2bから超音波を送信させて送信ビームを形成する。また、前記送受信ビームフォーマ3は、前記超音波プローブ2で受信したエコー信号について、整相加算処理等の信号処理を所定の受信パラメータで行ない、受信ビームを形成する。そして、前記送受信ビームフォーマ3は、信号処理後のエコーデータを前記エコーデータ処理部4へ出力する。
【0014】
前記エコーデータ処理部4は、前記送受信ビームフォーマ3から出力されたエコーデータに対し、超音波画像を作成するための信号処理などを行なう。例えば、前記エコーデータ処理部4は、Bモード処理を行なう。前記Bモード処理は、対数圧縮処理、包絡線検波処理等を含む。前記Bモード処理によってBモードデータが作成される。
【0015】
前記エコーデータ処理部4は、直交検波処理、MTIフィルタ(Moving Target Indication filter)処理、自己相関演算処理等を含むカラードプラ処理を行なってカラードプラデータを作成してもよい。
【0016】
前記表示制御部5は、前記エコーデータ処理部4で得られたデータをスキャンコンバータ(Scan Converter)によって走査変換して超音波画像データを作成する。例えば、前記画像データ作成部51は、前記Bモードデータを走査変換してBモード画像データを作成したり、前記カラードプラデータを走査変換してカラードプラ画像データを作成したりする。
【0017】
また、前記表示制御部5は、前記超音波画像データに基づく超音波画像を前記表示部6に表示させる。例えば、前記超音波画像は、Bモード画像やカラードプラ画像である。
【0018】
前記表示部6は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などで構成される。前記操作部7は、特に図示しないが、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード(keyboard)、ダイヤル(dial)及びポインティングデバイス(pointing device)などを含んで構成されている。前記操作部7は、本発明における入力部の実施の形態の一例である。
【0019】
前記制御部8は、CPU(Central Processing Unit)であり、前記記憶部9に記憶された制御プログラムを読み出し、前記超音波診断装置1の各部における機能を実行させる。前記制御部8は、前記第一のモードと前記第二のモードとの切り替えを行なう。前記制御部8は、本発明におけるスキャン制御部の実施の形態の一例である。
【0020】
前記記憶部9は、例えばHDD(Hard Disk Drive)や半導体メモリ(memory)などである。
【0021】
さて、本例の超音波診断装置1における超音波の送受信について説明する。本例の超音波診断装置1では、第一のモードと第二のモードの二つのモードのうち、いずれかが選択されて超音波のスキャンが行われる。前記第一のモードと前記第二のモードとの切り替えは、前記操作部7の入力に基づいて、前記制御部8が行なう。
【0022】
先ず、前記第一のモードについて説明する。前記第一のモードでは、図3に示すように、被検体の体表面Bに当接した前記超音波プローブ2により、カーブドリニアスキャン(curved linear scan)方式、言い換えればコンベックススキャン方式による超音波のスキャンが行われる。
【0023】
この第一のモードにおけるカーブドリニアスキャンでは、全ての超音波振動子2bのうち、一部のみを用いて一音線分の超音波の送信ビームと受信ビームが形成される。そして、前記超音波振動子2bの配列方向(アジマス(azimuth)方向)に順次送信ビームと受信ビームが形成され、全ての超音波振動子2bが用いられると、一フレームの超音波画像を作成するための超音波のスキャンが完了する。図3において、符号S1は、一フレーム分の超音波のスキャン領域を示している。また、図3では、一音線分の送信ビーム及び受信ビームを形成する超音波振動子2bが括弧でくくられている。また、矢印は、音線を示している。
【0024】
第一のモードのカーブドリニアスキャンでは、超音波のスキャン中心線M1は、図4に示すように、前記超音波振動子2bの配列幅の中心になっている。前記超音波のスキャン中心線M1は、前記スキャン領域S1の視野角θ1を二等分している。前記スキャン中心線M1は、本発明における超音波のスキャン中心の実施の形態の一例である。
【0025】
次に、前記第二のモードについて説明する。前記第二のモードでは、図5に示すように、セクタスキャン(sector scan)方式による超音波のスキャンが行われる。この第二のモードにおけるセクタスキャンでは、一部の超音波振動子2bのみを用いて、一フレーム分の超音波画像を作成するための超音波のスキャンが行われる。図5において、符号S2は、一フレーム分の超音波のスキャン領域を示している。また、図5では、一フレーム分の超音波のスキャンに用いられる超音波振動子2bが括弧でくくられている。また、矢印は、音線を示している。
【0026】
第二のモードのセクタスキャンでは、一フレームの超音波画像を作成するための超音波のスキャンに用いられる超音波振動子2bの開口が、前記第一のモードのカーブドリニアスキャンよりも小さくなっている。例えば、前記第二のモードの開口は、前記第一のモードの開口よりも40%以下の大きさ(アジマス方向における幅)になっている。さらに望ましくは、前記第二のモードの開口は、前記第一のモードの開口の20%以上40%以下の大きさである。
【0027】
また、第二のモードのセクタスキャンでは、超音波のスキャン中心線M2は、第一のモードにおける前記スキャン中心線M1とは異なる位置になっている。具体的には、図6に示すように、前記スキャン領域S2の視野角θ2を二等分するスキャン中心線M2は、前記超音波振動子2bの配列幅の中心に対して、アジマス方向における超音波プローブ2の端部側に位置している。従って、前記スキャン中心線M2は、超音波プローブ2のアジマス方向の中心軸Aに対して交差している。ちなみに、前記中心軸Aは、超音波振動子2bの配列幅の中心を通る。前記スキャン中心線M2は、本発明におけるスキャン中心の実施の形態の一例である。
【0028】
前記第二のモードで超音波の送信に用いられる超音波振動子2bは予め設定されていてもよい。この場合、図7に示すように、前記超音波プローブ2の筐体表面に、第二のモードによる超音波の開口の位置を示すインジケータInが表示されていてもよい。本例では、前記インジケータInは、送信開口に対応するように帯状の円弧になっている。
【0029】
前記第二のモードにおける超音波のスキャン領域S2の視野角θ2(図6参照)は、前記第一のモードにおける超音波のスキャン領域S1の視野角θ1とほぼ同じ角度である。従って、第二のモードでは、比較的小さい送信開口でありつつ、第一のモードとほぼ同じ視野角を確保することができる。
【0030】
操作者は、例えば被検体の肋弓下において超音波のスキャンを行なう場合など、送信開口が比較的大きいコンベックスプローブとして前記超音波プローブ2を用いる場合、前記操作部7において第一のモードを選択する入力を行なう。この操作部7における入力により、前記制御部8は、第一のモードによる超音波のスキャンが行われるよう制御を行なう。
【0031】
一方、操作者は、例えば被検体の肋間において超音波のスキャンを行なう場合など、送信開口が比較的小さいマイクロコンベックスプローブ又はセクタプローブとして、前記超音波プローブ2を用いる場合、前記操作部7において第二のモードを選択する入力を行なう。この操作部7における入力により、前記制御部8は、第二のモードによる超音波のスキャンが行われるよう制御を行なう。第二のモードにおいては、操作者は、前記図5に示されるように、前記超音波プローブ2を、中心軸A(図5では図示省略)を傾けた状態で体表面Bに当接し、超音波のスキャンを行なう。
【0032】
以上説明した本例の超音波診断装置1によれば、一つの超音波プローブ2を、開口が比較的大きいコンベックスプローブとして用いることができ、開口が比較的小さいマイクロコンベックスプローブ又はセクタプローブとしても用いることができる。従って、例えば肋弓下の超音波検査と肋間の超音波検査とを一回の検査で行なう場合であっても、超音波プローブを変える必要がない。
【0033】
なお、上述の実施形態では、送信ビームの形成と受信ビームの形成の両方について、前記第一のモード又は前記第二のモードによる制御を行なう場合について説明したが、本発明においては、送信ビームの形成のみについて、前記第一のモード又は前記第二のモードによる制御、すなわち第一のモードではカーブドリニアスキャン方式による超音波の送信を行ない、第二のモードでは、第一のモードよりも小さい開口でセクタスキャン方式による超音波の送信を行なってもよい。また、受信ビームの形成のみについて、前記第一のモード又は前記第二のモードによる制御、すなわち第一のモードではカーブドリニアスキャン方式による超音波の受信を行ない、第二のモードでは、第一のモードよりも小さい開口でセクタスキャン方式による超音波の受信を行なってもよい。本発明において、「スキャン」という語には、送信ビームの形成のみを意味する場合と受信ビームの形成のみを意味する場合が含まれる。
【0034】
次に、第一実施形態の変形例について説明する。この変形例では、図8に示すように、被検体の体表面Bから穿刺針Nが刺入される。この穿刺針Nは、超音波プローブ2に取り付けられた図示しない穿刺ガイド治具に装着されていてもよい。
【0035】
前記穿刺針Nを刺入する時には、第二のモードが選択される。この第二のモードにおける超音波のスキャン中心線M2は、前記第一のモードにおける超音波のスキャン中心線M1に対し、前記穿刺針N側に位置している。第二のモードのセクタスキャンが行われることにより、コンベックススキャンと比べて、前記穿刺針Nを体表面Bに近い位置から超音波画像でとらえることができる。
【0036】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。ただし、上記第一実施形態と同一事項については説明を省略する。
【0037】
図9に示すように、本例において、前記制御部8は、特定部81を有している。この特定部81は、本発明における特定部の実施の形態の一例である。
【0038】
前記特定部81は、第一のモードによる超音波の送信によって前記被検体から得られたエコー信号に基づいて、前記超音波プローブ2の送受信面2aにおける被検体の体表面Bとの接触部分を特定する。具体的に前記接触部分の特定について図10に基づいて説明する。例えば、操作者が前記第一のモードにおいて、前記超音波プローブ2を体表面Bに対して垂直な状態から、図10に示すように傾けたとすると、前記送受信面2aは、体表面Bと一部分において接触する。ちなみに、図10において、斜線で示した領域ssは、エコー信号が得られる領域である。
【0039】
前記送受信面2aにおける体表面Bとの接触部分をTとすると、前記特定部81は前記接触部分Tを次のようにして特定する。先ず、前記特定部81は、前記超音波プローブ2における全ての超音波振動子2bのうち、前記被検体からエコー信号が得られた超音波振動子2bbを特定する。この超音波振動子2bbは、図10において丸で囲まれた部分の超音波振動子である。
【0040】
次に、前記特定部81は、前記超音波振動子2bbの位置に基づいて前記接触部分Tを特定する。より詳細には、前記特定部81は、前記超音波振動子2bと前記送受信面2aとの距離及び超音波の音線方向とに基づいて、前記接触部分Tを特定する。
【0041】
操作者が、前記操作部7において第二のモードを選択する入力を行なうと、前記制御部8は、図11に示すように、前記特定部81によって特定された接触部分Tを含む開口を有するセクタスキャン方式による超音波のスキャンを行なわせる。ここで、前記「開口」とは、一フレームの超音波画像を作成するためのスキャンにおける開口を意味している。
【0042】
本例によれば、第一のモードから第二のモードへ切り替えられると、前記送受信面2aにおいて特定された体表面Bとの接触部分Tを含むように自動的に開口が設定される。従って、第二のモードにおける開口を任意の位置に容易に設定することができる。
【0043】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態について説明する。ただし、上記第一、第二実施形態と同一事項については説明を省略する。
【0044】
本例では、図12に示すように、前記超音波プローブ2に、例えばホール素子で構成される磁気センサ10が設けられている。この磁気センサ10により、例えば磁気発生コイルで構成される磁気発生部11から発生する磁気が検出されるようになっている。前記磁気センサ10における検出信号は、前記制御部8へ入力されるようになっている。
【0045】
前記制御部8は、図13に示すように、傾き検出部82を有する。この傾き検出部82は、前記磁気センサ10からの磁気検出信号に基づいて、三次元空間において、前記磁気発生部11を原点とする座標系における前記超音波プローブ2の傾きの情報を算出する。前記磁気検出信号に基づいて、前記超音波プローブ2の位置情報が算出されてもよい。前記傾き検出部82は、本発明における検出部の実施の形態の一例である。
【0046】
第二のモードを選択する入力が前記操作部7において行われた後においては、前記制御部8及び前記送受信ビームフォーマ3は、前記傾き検出部82で検出された前記超音波プローブ2の傾きに基づいて、超音波の送信に用いる超音波振動子2bを決定する。送信に用いられる超音波振動子2bは、前記超音波プローブ2の傾きに応じて予め設定されている。前記記憶部9に、前記超音波プローブ2の傾きと送信に用いられる超音波振動子2bとを定めたテーブルが記憶されていてもよい。この場合、前記制御部8及び前記送受信ビームフォーマ3は、前記テーブルを参照して送信に用いる超音波振動子2bを決定する。
【0047】
送信に用いる超音波振動子2bは、前記超音波プローブ2を傾けた状態において、前記送受信面2aにおける被検体の体表面Bとの接触部分Tが開口になるように設定される。
【0048】
本例によれば、第二のモードにおいて、前記超音波プローブ2を傾けると、その傾きに応じて、前記送受信面2aにおける体表面Bとの接触部分Tが開口となるように、自動的にスキャンに用いられる超音波振動子2bが決定される。従って、第二のモードにおける開口を任意の位置に容易に設定することができる。
【0049】
以上、本発明を前記実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。
【符号の説明】
【0050】
1 超音波診断装置
2 超音波プローブ
2a 送受信面
2b 超音波振動子
7 操作部(入力部)
8 制御部(スキャン制御部)
81 特定部
82 傾き検出部(検出部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13