(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
窓ガラスの開閉動作中にモータに流れる電流は、
図7に示すように、たとえば温度、電圧、負荷、回路、および部品などのばらつきの影響を受けて、変動し易い。具体的には、常温下より低温下の方が、モータ電流は増加する傾向にある。また、同じ温度下でも、モータや開閉機構の部品特性により、モータ電流はばらつく。
【0008】
このため、モータの電流など(モータの電流を変換した電圧の場合もある)を一定のモータ電流用閾値と比較した結果に基づいて、モータの電流などの積分を開始する場合、該積分開始点のばらつきが大きくなる。さらに、その積分値を一定の積分値用閾値と比較した結果に基づいて、開閉体の機械的拘束による過負荷を検出して、モータを停止させる場合、該停止点のばらつきも大きくなる。これらの結果、過負荷状態が長引いて、開閉体の開閉に関わる機械系部品や電気系部品が損傷するおそれがある。
【0009】
また、モータの性能により、モータ駆動回路からモータに流せる電流には上限がある。このため、このモータ電流の上限と上述のばらつきの影響を考慮すると、モータ電流用閾値を設定可能な範囲が狭くなり、該閾値を設定するのが難しくなる。
【0010】
本発明の課題は、種々のばらつきの影響を受けても、開閉体の全開閉時の機械的拘束による過負荷で開閉用部品が損傷するのを防止し、かつ閾値を容易に設定することができる開閉体制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による開閉体制御装置は、開閉体を開閉動作させるための電動機の駆動を制御する電動機制御部と、開閉体の開閉位置を検出する位置検出部と、電動機に流れる電流を検出する電流検出部と、電流検出部により検出された電動機の電流の変化量を算出する変化量算出部と、電流検出部により検出された電動機の電流に基づく積分値を算出する積分値算出部とを備える。そして、電動機制御部により電動機を駆動して、開閉体を開閉動作させている場合に、開閉体が全開位置または全閉位置の付近に設けられた所定の領域まで開閉したことを位置検出部により検出すると、変化量算出部により電動機の電流の変化量を算出し、該変化量が所定の第1閾値より大きくなると、積分値算出部により電動機の電流に基づく積分値を算出し、該積分値が所定の第2閾値より大きくなると、電動機制御部によりモータの駆動を停止させる。
【0012】
上記によると、開閉体の開閉動作中に、種々のばらつきの影響を受けて、電動機に流れる電流が変動しても、ばらつきの影響を受け難い電動機の電流の変化量が第1閾値より大きくなったときに、電動機の電流に基づく積分を開始するので、該積分開始点のばらつきを小さく抑えることができる。また、その積分値が第2閾値より大きくなったときは、開閉体の機械的拘束による過負荷状態であるため、電動機の駆動を停止することにより、該停止点のばらつきを積分開始点のばらつきと同程度に小さく抑えることができる。この結果、開閉体の機械的拘束による過負荷状態が長引くのを抑えて、該過負荷で開閉体の開閉用の機械系部品や電気系部品が損傷するのを防止することが可能となる。
【0013】
また、ばらつきの影響を受け難くて上限を考慮する必要がない電動機の電流の変化量を、第1閾値と比較するので、第1閾値を容易に設定することができる。また、ばらつきの影響を受け難く上限を考慮する必要がない電動機の電流に基づく積分値を、第2閾値と比較するので、第2閾値も容易に設定することができる。
【0014】
また、本発明では、上記開閉体制御装置において、電流検出部により検出された電動機の電流から電圧変動による電流成分を差し引いて、電動機の電流を補正する電流補正部をさらに備えてもよい。この場合、変化量算出部は、電流補正部による補正後の電動機の電流の変化量を算出し、積分値算出部は、電流補正部による補正後の電動機の電流に基づく積分値を算出する。
【0015】
また、本発明では、上記開閉体制御装置において、変化量算出部は、開閉体の開閉位置が所定の領域に到ったときからの前記電動機の電流の変化量を算出してもよい。
【0016】
また、本発明では、上記開閉体制御装置において、前記電動機の電流の変化量が第1閾値以下の場合、積分値算出部が前記積分値の算出を停止して、該積分値を初期化してもよい。
【0017】
さらに、本発明の一実施形態では、開閉体は、車両の窓ガラスから成り、上記開閉体制御装置は、パワーウインドウ制御装置から成る。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、種々のばらつきの影響を受けても、開閉体の全開閉時の機械的拘束による過負荷で開閉用部品が損傷するのを防止し、かつ閾値を容易に設定することができる開閉体制御装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0021】
まず、実施形態の構成を、
図1を参照しながら説明する。以下では、「パワーウインドウ」を「PW」と表記する。
【0022】
図1は、PW制御システム100とPW制御装置1の構成を示した図である。PW制御システム100は、自動車に搭載され、PW制御装置1とその他の構成要素5〜9を含んでいる。
【0023】
PW制御装置1は、モータ9を駆動して、PW開閉機構8を作動させ、車両のドアに設けられた窓6の窓ガラス7を開閉動作させる。PW制御装置1は、本発明の「開閉体制御装置」の一例である。窓6および窓ガラス7は、本発明の「開閉体」の一例である。モータ9は、本発明の「電動機」の一例である。
【0024】
PW制御装置1には、制御部2、PW操作部3、およびモータ駆動部4が備わっている。
【0025】
制御部2は、マイクロコンピュータから成り、窓6の開閉を制御する。制御部2には、記憶部2a、モータ制御部2b、電流補正部2c、位置検出部2d、変化量算出部2e、および積分値算出部2fが設けられている。記憶部2aには、各部を制御するためのデータが記憶されている。
【0026】
PW操作部3は、窓6の開閉を操作するためのスイッチから成り、車内に設けられている。PW操作部3は、利用者により操作されて、その操作に応じた信号を出力する。制御部2は、PW操作部3から出力される信号に基づいて、PW操作部3の操作状態を検出する。本例では、PW操作部3でマニュアル開閉操作とオート開閉操作を行うことができる。
【0027】
モータ9は、直流モータから成る。モータ駆動部4は、モータ9を正転または逆転で駆動する回路から成る。モータ制御部2bは、PW操作部3の操作状態や窓ガラス7の開閉状態に応じて、モータ駆動部4を動作させて、モータ9の駆動を制御する。モータ9が正転または逆転することで、PW開閉機構8が作動して、窓ガラス7が下降または上昇し、窓6が開閉される。モータ制御部2bは、本発明の「電動機制御部」の一例である。
【0028】
モータ駆動部4には、電流検出部4aが設けられている。電流検出部4aは、シャント抵抗とCRローパスフィルタを含んだ回路から成り、モータ9に流れる電流(以下、「モータ電流」という。)を検出する。電流検出部4aで検出されたモータ電流は、制御部2に出力される。電流補正部2cは、後述するように、電流検出部4aにより検出されたモータ電流を補正する。
【0029】
パルス発生器5は、たとえばロータリエンコーダから成り、モータ9の回転状態に応じたパルス信号を制御部2に出力する。位置検出部2dは、パルス発生器5から出力されたパルス信号を検出し、該パルス信号に基づいて窓ガラス7の開閉位置を検出する。具体的には、位置検出部2dは、たとえばパルス発生器5から出力されるパルス信号の立ち上がりなどの数を数えて、その計数値から窓ガラス7の開閉位置を判断する。
【0030】
変化量算出部2eは、電流補正部2cにより補正された後のモータ電流の変化量を算出する。積分値算出部2fは、電流補正部2cにより補正された後のモータ電流に基づく積分値を算出する。
【0031】
次に、PW制御装置1によるモータ電流の補正方法について、
図2を参照しながら説明する。
【0032】
図2は、モータ電流の補正の概要を示した図である。モータ9では、モータ駆動部4からモータ駆動電圧が印加されると、電圧−電流特性11により電圧に基づく電流成分が生成される。また、PW開閉機構8から外部トルク(負荷)が加わると、負荷−電流特性12により負荷に基づく電流成分が生成される。そして、電圧に基づく電流成分と負荷に基づく電流成分とが加算されて、モータ電流となる。このモータ電流は、電流検出部4aにより検出されて、制御部2に入力され、AD(アナログデジタル)変換部14によりAD変換される。
【0033】
制御部2では、モータ駆動部4から入力されたモータ駆動電圧が、AD変換部15によりAD変換されて、電流補正部2cに入力される。電流補正部2cでは、まず、AD変換後のモータ駆動電圧と機械的特性16により機械的電流成分が算出され、かつ、AD変換後のモータ駆動電圧と電気的特性17により電気的電流成分が算出される。次に、その機械的電流成分と電気的電流成分とが加算されて、電圧変動による電流成分(演算値)が算出される。そして、この電圧変動による電流成分が、電流検出部4aより入力されAD変換されたモータ電流(AD値)から差し引かれて、補正後のモータ電流が算出される。
【0034】
つまり、電流補正部2cでは、モータ駆動部4より取得したモータ駆動電圧に基づいて、電圧変動による電流成分が算出される。そして、その電流成分が電流検出部4aより取得したモータ電流から差し引かれることで、電圧変動の影響を除去した補正後のモータ電流が算出される。この補正後のモータ電流は、電流補正部2cから変化量算出部2eや積分値算出部2fに出力される。
【0035】
次に、PW制御装置1の動作を、
図3および
図4を参照しながら説明する。また適宜、
図1も参照する。
【0036】
図3は、PW制御装置1の動作を示したフローチャートである。
図4は、PW制御装置1における補正後のモータ電流(実線)とその積分値(破線)の変化の一例を示した図である。
図4では、横軸に窓ガラス7が開閉している時間または位置を示している(後述の
図5および
図6も同様)。
【0037】
PW操作部3で窓の開閉操作が行われると(
図3のステップS1)、モータ制御部2bが、その操作状態に応じてモータ駆動部4によりモータ9の駆動を開始する(
図3のステップS2)。これにより、窓ガラス7の開閉動作が開始される。そして、前述したように、電流検出部4aがモータ電流Aの検出を開始して(
図3のステップS3)、電流補正部2cがモータ電流Aの補正を開始する(
図3のステップS4)。また、位置検出部2dが窓ガラス7の開閉位置の検出を開始する(
図3のステップS5)。
【0038】
窓ガラス7の閉動作中に、窓ガラス7の上端が、
図1に示す閉方向側ロック検出領域Zcに入るまでは、PW制御装置1において、窓6への異物の挟み込みの検出処理が行われる。この挟み込みの検出処理は、公知の方法で行われる(説明省略)。
【0039】
図1に示す閉方向側ロック検出領域Zcは、窓ガラス7の全閉位置の付近に設定された領域である。窓ガラス7の閉動作中に、窓ガラス7の上端が閉方向側ロック検出領域Zcに入った後、窓ガラス7が全閉して、窓ガラス7やPW開閉機構8やモータ9が機械的に拘束されたロック状態になる。
【0040】
また、
図1に示す開方向側ロック検出領域Zoは、窓ガラス7の全開位置の付近に設定された領域である。窓ガラス7の開動作中に、窓ガラス7の上端が開方向側ロック検出領域Zoに入った後、窓ガラス7が全開して、窓ガラス7やPW開閉機構8やモータ9が機械的に拘束されたロック状態になる。閉方向側ロック検出領域Zcと開方向側ロック検出領域Zoは、本発明の「所定の領域」の一例である。
【0041】
モータ9が駆動して、窓ガラス7の開閉動作が開始されると、モータ電流Aおよび補正後のモータ電流A’は、一旦上昇した後、ほぼ一定で推移する。閉動作中の場合、窓ガラス7が閉方向側ロック検出領域Zcまで閉じた(窓ガラス7の上端が閉方向側ロック検出領域Zcに入った状態;
図4のP
1)後、窓ガラス7と窓枠との接触やPW開閉機構8の部品特性などにより、負荷がかかって、モータ電流A、A’が上昇する(
図4のP
2以降;補正後のモータ電流A’のみ図示)。そして、窓ガラス7が全閉して、窓ガラス7やPW開閉機構8やモータ9がロック状態になると、過負荷がかかり、モータ駆動部4からモータ9に流せる上限値であるロック電流でモータ電流A、A’が推移する(
図4のP
4、P
5)。
【0042】
また、開動作中の場合も、窓ガラス7が開方向側ロック検出領域Zoまで開いた(窓ガラス7の上端が開方向側ロック検出領域Zoに入った状態;
図4のP
1)後、窓ガラス7と窓枠との接触やPW開閉機構8の部品特性などにより、負荷がかかって、モータ電流A、A’が上昇する(
図4のP
2以降)。そして、窓ガラス7が全開して、窓ガラス7やPW開閉機構8やモータ9がロック状態になると、過負荷がかかり、モータ電流A、A’がロック電流で推移する(
図4のP
4、P
5)。
【0043】
窓ガラス7やPW開閉機構8やモータ9のロック状態で、モータ9の駆動が継続されると、窓ガラス7、窓枠、PW開閉機構8、およびモータ9に過負荷がかかり、これら各部が損傷するおそれがある。そこで、以下のように、ロック状態を検出して、過負荷状態を解除する。
【0044】
閉動作中の窓ガラス7が閉方向側ロック検出領域Zcまで閉じたこと、または開動作中の窓ガラス7が開方向側ロック検出領域Zoまで開いたことを、位置検出部2dにより検出すると(
図3のステップS6:YES、
図4のP
1)、変化量算出部2eが、補正後のモータ電流A’の変化量ΔA’を算出する(
図3のステップS7)。このとき、たとえば、窓ガラス7の開閉位置が閉方向側ロック検出領域Zcまたは開方向側ロック検出領域Zoに到ったときからの、補正後のモータ電流A’の変化量ΔA’が算出される。
【0045】
次に、制御部2が、変化量算出部2eにより算出された補正後のモータ電流A’の変化量ΔA’と、記憶部2aに記憶された積分開始判定閾値Xとを比較する。そして、変化量ΔA’が積分開始判定閾値Xより大きくなるまでは(ΔA’≦X、
図3のステップS8:NO)、積分値算出部2fが補正後のモータ電流A’に基づく積分値∫A’の算出を停止し、該積分値∫A’が初期値(=0)のままとなる(
図3のステップS10)。積分開始判定閾値Xは、本発明の「第1閾値」の一例である。
【0046】
再び、変化量算出部2eにより補正後のモータ電流A’の変化量ΔA’が算出されて(
図3のステップS7)、該変化量ΔA’が積分開始判定閾値Xより大きくなると(
図3のステップS8:YES、
図4のP
3、P
3’)、積分値算出部2fが、補正後のモータ電流A’ に基づく積分値∫A’の算出を開始する(
図3のステップS9)。
【0047】
このとき、積分値算出部2fは、たとえば
図4に示すハッチング部分を補正後のモータ電流A’ に基づく積分値∫A’として算出する。詳しくは、
図4のP
3、P
3’(補正後のモータ電流A’の変化量ΔA’が積分開始判定閾値Xより大きくなったとき)以降の補正後のモータ電流A’の値と、P
3、P
3’における補正後のモータ電流A’の値との差分を積分することにより、積分値∫A’を求める。あるいは、
図4のP
3またはP
3’における補正後のモータ電流A’の値と、P
3〜P
6区間またはP
3’〜P
7区間の値(移動時間または移動量)との積(
図4のハッチング部分の下方にある四角の面積)を、P
3またはP
3’以降の補正後のモータ電流A’の値の積分値から差し引くことにより、積分値∫A’を求めてもよい。
【0048】
また、他の例として、補正後のモータ電流A’そのものを積分することにより、積分値∫A’を求めてもよい(図示省略)。
【0049】
次に、制御部2が、積分値算出部2fにより算出された積分値∫A’と、記憶部2aに記憶されたロック判定閾値Yとを比較する。そして、積分値∫A’がロック判定閾値Yより大きくなるまでは(∫A’≦Y、
図3のステップS11:NO)、モータ制御部2bがモータ駆動部4によりモータ9の駆動を継続する(
図3のステップS12)。ロック判定閾値Yは、本発明の「第2閾値」の一例である。
【0050】
この後、再び変化量算出部2eにより補正後のモータ電流A’の変化量ΔA’が算出されて(
図3のステップS7)、該変化量ΔA’が積分開始判定閾値以下になったとする(
図3のステップS8:NO)。すると、積分値算出部2fが、補正後のモータ電流A’ に基づく積分値∫A’の算出を停止し、該積分値∫A’を初期化する(
図3のステップS10)。
【0051】
一方、変化量ΔA’が積分開始判定閾値Xより大きくなって(
図3のステップS8:YES)、積分値∫A’の算出が開始された(
図3のステップS9)後、積分値∫A’がロック判定閾値Yより大きくなったとする(
図3のステップS11:YES、
図4のT
6、T
7)。すると、制御部2が、ロック状態であると判断する(
図3のステップS13)。このとき、窓ガラス7が全閉または全開して、窓ガラス7やPW開閉機構8やモータ9が機械的に拘束されて、過負荷がかかった状態になっている。
【0052】
この場合、モータ制御部2bが、モータ駆動部4によりモータ9に流す電流を遮断して、モータ9の駆動を停止させる(
図3のステップS14)。これにより、電流検出部4aにより検出されるモータ電流Aと、電流補正部2cにより算出される補正後のモータ電流A’とが0まで低下して(
図4のP
6、P
7)、窓ガラス7やPW開閉機構8やモータ9の過負荷状態が解除される。
【0053】
そして、積分値算出部2fが、積分値∫A’の算出を停止して、該積分値∫A’を初期化する(
図3のステップS15)。また、電流検出部4aがモータ電流Aの検出を停止し(
図3のステップS16)、電流補正部2cがモータ電流Aの補正を停止する(
図3のステップS17)。さらに、位置検出部2dが窓ガラス7の開閉位置の検出を停止する(
図3のステップS18)。
【0054】
上記実施形態によると、窓ガラス7の開閉動作中に、たとえば温度、電圧、負荷、回路、および部品などのような、種々のばらつきの影響を受けて、モータ電流Aが変動しても、ばらつきの影響を受け難い補正後のモータ電流A’の変化量ΔA’と、積分開始判定閾値Xとを比較している。そして、変化量ΔA’が積分開始判定閾値Xより大きくなったときに、補正後のモータ電流A’に基づいて積分を開始するので、該積分開始点(
図4および
図5のP
3、P
3’)のばらつきを小さく抑えることができる。
【0055】
また、その補正後のモータ電流A’に基づく積分値∫A’がロック判定閾値Yより大きくなったときに、窓ガラス7やPW開閉機構8やモータ9がロック状態にあると判断して、モータ9の駆動を停止するので、該停止点(
図4のP
6、P
7)のばらつきを積分開始点のばらつきと同程度に小さく抑えることができる。しかも、窓6への異物の挟み込みによる過負荷状態や、モータ9の駆動直後または外乱による瞬間的な過負荷状態などと区別して、窓ガラス7の機械的拘束による過負荷(ロック)状態を検出して、モータ9を確実に停止させることができる。この結果、窓ガラス7の機械的拘束による過負荷状態が長引くのを抑えて、該過負荷で窓ガラス7の開閉用の機械系部品や電気系部品が損傷するのを防止することが可能となる。
【0056】
また、ばらつきの影響を受け難く上限を考慮する必要がない補正後のモータ電流A’の変化量ΔA’を、積分開始判定閾値Xと比較するので、制約を受けることなく、積分開始判定閾値Xを容易に設定することができる。また、ばらつきの影響を受け難くて上限を考慮する必要がない補正後のモータ電流A’に基づく積分値∫A’を、ロック判定閾値Yと比較するので、制約を受けることなく、ロック判定閾値Yも容易に設定することができる。
【0057】
また、上記実施形態では、窓ガラス7の開閉位置がロック検出領域Zc、Zoに到ったときからの、補正後のモータ電流A’の変化量ΔA’を算出している。このため、窓ガラス7が全開または全閉して、機械的に拘束されたことによる過負荷状態を確実に検出し、モータ9の駆動を停止させて、過負荷状態を解除し、開閉用の部品が損傷するのを防止することができる。
【0058】
また、上記実施形態では、補正後のモータ電流A’の変化量ΔA’が積分開始判定閾値X以下の場合に、積分値算出部2fが補正後のモータ電流A’に基づく積分値∫A’の算出を停止して、該積分値∫A’を初期化している。このため、外乱による瞬間的な過負荷状態を誤検出して、モータ9の駆動が停止され、窓6が全開または全閉されなくなるのを防止することができる。
【0059】
なお、窓ガラス7が全開位置または全閉位置の付近まで開閉した後、たとえばクランキングの発生やエアコンの操作などの外乱により、
図6に示すように、モータ駆動電圧が瞬時低下することがある。この場合、従来のようにモータ電流Aが補正されないと、
図6に破線で示すように、モータ電流Aも瞬時低下してしまう。そして、モータ電流Aが一定のモータ電流用閾値(従来の閾値)以下になることで、モータ電流Aの積分が停止されて、該積分値が初期化され、ロック状態の検出やモータ9の駆動停止が遅れてしまう。
【0060】
然るに、上記実施形態では、電流補正部2cが、電流検出部4aで検出されたモータ電流Aからモータ駆動電圧の変動による電流成分を差し引いて、モータ電流Aを補正している。このため、窓ガラス7がロック検出領域Zc、Zoまで開閉した後、
図6に示すように、外乱によりモータ駆動電圧が瞬時低下しても、
図6に実線で示すように、補正後のモータ電流A’は瞬時低下しなくなる。そして、補正後のモータ電流A’の変化量ΔA’や積分値∫A’が算出されて、それぞれ閾値X、Yと比較されるので、外乱によるモータ駆動電圧の変動の影響を抑制して、積分値∫A’が初期化されたり、該積分開始やロック状態の検出やモータ9の駆動停止が遅れたりするのを防止することができる。この結果、窓ガラス7やPW開閉機構8やモータ9がロック状態になったことを早期に検出して、モータ9の駆動を停止し、過負荷で窓ガラス7の開閉用の部品が損傷するのを一層効果的に防止することが可能となる。
【0061】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、以上の実施形態では、窓ガラス7の開閉位置がロック検出領域Zc、Zoに到ったときからの補正後のモータ電流A’の変化量ΔA’を算出した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、所定の時間または開閉量の間隔で、補正後のモータ電流A’の変化量ΔA’を算出してもよい。
【0062】
また、以上の実施形態では、モータ駆動電圧の変動に基づいてモータ電流Aを補正した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、温度検出手段により検出した周囲温度などのような、他のばらつき要因に基づいて、モータ電流Aを補正してもよい。そして、その補正後のモータ電流の変化量や積分値を算出して、それぞれ閾値X、Yと比較すればよい。
【0063】
また、以上の実施形態では、モータ9の回転状態に応じてパルス発生器5から出力されたパルス信号に基づいて、窓ガラス7がロック検出領域Zc、Zoまで開閉したことを検出した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、電流検出部4aからの出力信号をバンドパスフィルタに通過させることにより、モータ電流に含まれるリップルを抽出し、該リップルに基づいて窓ガラス7がロック検出領域Zc、Zoまで開閉したことを検出してもよい。また、たとえば、ドアや窓枠などにセンサやスイッチを設けて、それらの出力信号に基づいて、窓ガラス7がロック検出領域Zc、Zoまで開閉したことを検出してもよい。
【0064】
さらに、以上の実施形態では、自動車のPW制御装置1に本発明を適用した例を挙げたが、これに限るものではない。これ以外の、たとえば電動式開閉ルーフなどのような、車両用の開閉体制御装置または車両以外の用途の開閉体制御装置に対しても、本発明を適用することは可能である。