特許第6183913号(P6183913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183913
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】土壌浄化装置
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/10 20060101AFI20170814BHJP
   B01D 53/38 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   B09B3/00 EZAB
   B01D53/38 110
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-134135(P2014-134135)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-10780(P2016-10780A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2016年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】三吉 純男
(72)【発明者】
【氏名】長 千佳
【審査官】 齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−129519(JP,A)
【文献】 特開2005−066602(JP,A)
【文献】 特開2004−202353(JP,A)
【文献】 特開昭63−039678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09C 1/10
B01D 53/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油を分解する微生物が導入された油含有土壌を収容する容器を備えるとともに、前記容器の開口部を開閉する蓋部を備える浄化本体部と、
前記容器内の前記油含有土壌中に空気を供給する給気手段と、
前記容器内の気体を外部に排出する排気手段と、
前記排気手段に接続され、前記容器内の異臭物質を捕獲する捕獲手段と、
前記容器内の水分を排出する排水手段と、
を備え、
前記浄化本体部は、複数の前記容器を第1方向に沿って隣接させた状態で設置され、
前記排気手段は、前記容器の壁部において前記油含有土壌と前記蓋部との間の空間に開口するように形成されて前記複数の容器の室内を連通する排気孔を備え、
前記排気孔は、前記第1方向に隣接する前記排気孔同士が、前記第1方向に交差する第2方向の互いに反対の端部側に位置するように配置されている、
ことを特徴とする土壌浄化装置。
【請求項2】
前記給気手段は、
前記容器内の底面に設けられた給気管を備え、
前記給気管と前記油含有土壌との間に給気管を保護する給気管保護部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の土壌浄化装置。
【請求項3】
前記排水手段は、
前記容器内の底面に設けられた排水部を備え、
前記排水部と前記油含有土壌との間に前記排水部を保護する排水部保護部材を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の土壌浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌浄化装置に関し、例えば、油含有土壌を微生物により浄化する生物浄化技術(バイオレメディエーション)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオレメディエーションは、土壌中の有害物質を微生物により二酸化炭素や水等のような無害な物質に分解する技術であり、環境に優しく、洗浄法や加熱法等のような他の工法に比べて費用も安いこと等から油含有土壌の浄化工法として実用されている。
【0003】
特に、バイオレメディエーションの1つであるランドファーミング(固層処理法)は、作業性や管理性が良く、上記他の工法に比べて費用も安いこと等から油含有土壌の浄化に有利な工法として多用されている。
【0004】
このランドファーミングにおいては、例えば、油含有土壌を掘削して地上に盛土した後、その盛土に対して油分分解に優れた微生物および栄養塩を散布し、さらに、その盛土を重機により定期的に攪拌して土壌中を好気的条件に保つことにより、土着の微生物や散布した微生物の活性化を促して油分の分解を図るようにしている。
【0005】
なお、バイオレメディエーションによる土壌浄化技術については、例えば、特許文献1,2に記載がある。特許文献1には、油含有土壌の浄化に適した微生物の種類等が開示されている。また、特許文献2には、難透水性の汚染土壌を原位置で解砕した後、その汚染土壌に微生物に対する栄養分溶液を供給し、汚染土壌領域をビニールシート等で被覆して嫌気性微生物を活性化させ、汚染土壌を浄化する土壌浄化方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−291679号公報
【特許文献2】特開2006−122880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、バイオレメディエーションを適用する場合には、その特徴や適用性について充分に検討し、最適な管理条件を見出して実施することが必要であり、例えば、汚染土壌に添加する栄養塩の添加量や種類によっては、微生物による有害物質の分解中にアンモニア臭や腐敗臭等のような異臭が発生し、近隣環境に多大な影響を与える場合がある。
【0008】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、その目的は、油含有土壌を微生物により浄化するバイオレメディエーションおける異臭の問題を防止することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の土壌浄化装置は、油を分解する微生物が導入された油含有土壌を収容する容器を備えるとともに、前記容器の開口部を開閉する蓋部を備える浄化本体部と、前記容器内の前記油含有土壌中に空気を供給する給気手段と、前記容器内の気体を外部に排出する排気手段と、前記排気手段に接続され、前記容器内の異臭物質を捕獲する捕獲手段と、前記容器内の水分を排出する排水手段と、を備え、前記浄化本体部は、複数の前記容器を第1方向に沿って隣接させた状態で設置され、前記排気手段は、前記容器の壁部において前記油含有土壌と前記蓋部との間の空間に開口するように形成されて前記複数の容器の室内を連通する排気孔を備え、前記排気孔は、前記第1方向に隣接する前記排気孔同士が、前記第1方向に交差する第2方向の互いに反対の端部側に位置するように配置されている、ことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の本発明は、上記請求項1記載の発明において、前記給気手段は、前記容器内の底面に設けられた給気管を備え、前記給気管と前記油含有土壌との間に給気管を保護する給気管保護部材を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の本発明は、上記請求項1または2記載の発明において、前記排水手段は、前記容器内の底面に設けられた排水部を備え、前記排水部と前記油含有土壌との間に前記排水部を保護する排水部保護部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、油含有土壌を微生物により浄化するバイオレメディエーションにおける異臭の問題を防止することが可能になる。
また、複数の容器の各室内における気体の排気性を向上させることが可能になる。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、土壌浄化装置を構成する容器内の給気管を保護することが可能になる。
【0015】
請求項3記載の発明によれば、土壌浄化装置を構成する容器内の排水部を保護することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係る土壌浄化装置の一例の平面図である。
図2図1の土壌浄化装置の排気経路の一例を示す平面図である。
図3図1の土壌浄化装置を構成する浄化槽の1つを抜き出して示した平面図である。
図4】(a)は図3のI−I線の断面図、(b)は図3の浄化槽の短辺側の側面図である。
図5図3のII−II線の断面図である。
図6図4の領域A1の拡大断面図である。
図7】(a)は土壌浄化工程中の説明図、(b)は図7(a)に続く土壌浄化工程中の説明図である。
図8】(a)は図7(b)に続く土壌浄化工程中の説明図、(b)は図8(a)に続く土壌浄化工程中の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、「油含有土壌」とは、原油、重油、軽油、灯油、ガソリン、潤滑油、切削油、作動油、圧延油、絶縁油、エンジンオイル、ギアオイル、グリース等のような石油または石油を原料とする有機物を含む土壌をいい、例えば、石油により汚染された海岸の砂および土壌、石油に汚染された工場やガソリンスタンドの跡地の土壌、石油に汚染された廃棄物最終処分場の土壌および油田等のような天然の状態で石油を含有する土壌を含むものである。また、「浄化」とは、残留油分、油臭および油膜の低減または除去を意味する。
【0019】
まず、本実施の形態の土壌浄化装置の一例について図1図6を参照して説明する。図1は本実施の形態の土壌浄化装置の一例の平面図、図2図1の土壌浄化装置の排気経路の一例を示す平面図、図3図1の土壌浄化装置を構成する浄化槽の1つを抜き出して示した平面図、図4(a)は図3のI−I線の断面図、図4(b)は図3の浄化槽の短辺側の側面図、図5図3のII−II線の断面図、図6図4の領域A1の拡大断面図である。なお、図1および図3は平面図であるが、図面を見易くするために一部にハッチングを付している。
【0020】
図1に示す本実施の形態の土壌浄化装置1は、油を分解する能力を有する微生物(3菌株)を利用して油含有土壌S(図4(a)および図5参照)を浄化する装置であり、浄化本体部2と、給気系(給気手段)3と、排水系(排水手段)4と、排気系(排気手段)5とを備えている。
【0021】
浄化本体部2は、油含有土壌Sを浄化する本体部であり、複数の浄化槽(容器)2a(図1図5参照)と、各浄化槽2aに設けられた複数の上蓋(蓋部)2b(図4(a)および図5参照)とを備えている。特に限定されるものではないが、浄化本体部2の第1方向(図1の左右横方向)の全長は、例えば11m68cm、第1方向に交差(直交)する第2方向(図1の上下縦方向)の全長は、例えば66cmである。
【0022】
各浄化槽2aは、油含有土壌Sを収容する直方体形状等に形成された容器であり、その各々の長辺の側壁部を接触させた状態で第1方向に沿って並んで設置されている。また、各浄化槽2aは、例えば、建設工事用の水槽を転用したものであり、互いに同一の形状および寸法に形成されている。特に限定されるものではないが、各浄化槽2aの第1方向の長さ(短辺の長さ)は、例えば、2m36cm、高さは、例えば、1m95cmである。
【0023】
各浄化槽2a内には、図4(a)および図5に示すように、油含有土壌Sが収容されている。ただし、油含有土壌Sは、浄化槽2a内に充填されておらず、油含有土壌Sと上蓋2bとの間に空間Rを形成した状態で収容されている。特に限定されるものではないが、浄化槽2aの上部から油含有土壌Sの上面までの長さは、例えば、50cmである。
【0024】
また、各浄化槽2aの上面には、開口部2cが形成されている。上記した油含有土壌Sは、各浄化槽2aの開口部2cを通じて、浄化槽2a内に収容されたり、浄化槽2aから排出されたりする。微生物による油含有土壌S中の油の分解処理において、各浄化槽2aの開口部2cは、上蓋2bにより開閉可能な状態で閉止される。このように上蓋2bを設けたことにより、各浄化槽2a中の油含有土壌Sの油を微生物により分解したときに発生した異臭物質を空間Rに閉じ込め、外部に漏れないようにすることができる。また、各浄化槽2a内に予期しない多量の雨水が浸入するのを防止することができるので、雨水に起因する栄養塩等の量の変動を防止することができる。このため、微生物による浄化効率が栄養塩の量の変動に起因して低下する不具合を防止することができる。
【0025】
この上蓋2bは、図6に示すように、平板状の蓋本体部2b1と、その外周近傍に設けられた枠体部2b2とを有している。上蓋2bの蓋本体部2b1は、例えば発泡スチロールにより形成されている。枠体部2b2は、例えば、プラスチックにより形成されている。このように上蓋2bの大半を占める蓋本体部2b1を軽い発砲スチロールで形成するとともに、その外周に強度の高いプラスチック製の枠体部2b2を設けることにより、上蓋2bの機械的強度を確保したまま上蓋2bを軽量化することができるので、上蓋2bの取り扱いを容易にすることができる。
【0026】
図1に示す給気系3は、浄化槽2a内における油含有土壌S中の微生物に空気(酸素)を供給するための構成であり、コンプレッサ3aと、レシーバタンク3bと、レギュレータ3cと、外部給気管3dと、内部給気管(給気管)3eと、複数のバルブ3f1,3f2,3f3とを備えている。
【0027】
コンプレッサ3aは、圧縮空気を発生する空気発生源(給気機構部)である。このコンプレッサ3aの排気口はバルブ3f1を介してレシーバタンク3bの注入口に機械的に接続されている。レシーバタンク3bは、コンプレッサ3aから供給された圧縮空気を貯めるタンク(給気機構部)である。このレシーバタンク3bにより、浄化槽2a側に安定した圧の空気を供給することができるとともに、コンプレッサ3aを保護することができる。レシーバタンク3bの排気口は、レギュレータ3cおよびバルブ3f2を順に介して外部給気管3dに機械的に接続されている。レギュレータ3cは、浄化槽2a側に供給する圧縮空気の供給量を調節する調節器(給気機構部)である。外部給気管3dは、レギュレータ3cと各浄化槽2a内の内部給気管3eとを機械的に接続する外部配管(給気機構部)であり、レギュレータ3cを介して送られた圧縮空気を、各浄化槽2a内の内部給気管3eに送れるように多数に分岐された状態で設置されている。なお、バルブ3f1,3f2,3f3は、各配管を開閉する部品(給気機構部)である。
【0028】
内部給気管3eは、外部給気管3dから送られた圧縮空気(酸素)を、各浄化槽2a内の油含有土壌S中の微生物に供給するための内部配管である。この内部給気管3eは、例えば、各浄化槽2aに2本ずつ設置されており、各浄化槽2aの長手方向に沿って延在した状態で各浄化槽2a内の底面に固定されている。また、内部給気管3eは、例えば、硬質塩化ビニル管により形成されており、その外周には、配管の内外を貫通する複数の給気孔が形成されている。外部給気管3dから内部給気管3eに送られた圧縮空気は、内部給気管3eの複数の給気孔を通じて、各浄化槽2a内の油含有土壌S中に連続的または間欠的に供給されるようになっている。このため、油含有土壌S中に空気を含ませるために油含有土壌Sを重機により撹拌するような大がかりな作業を低減することができる。また、重機の使用を低減できるので、騒音の発生も低減することができる。
【0029】
なお、各浄化槽2aに設置される内部給気管3eの数は2本に限定されるものではなく種々変更可能であり、例えば、1本でも3本以上でも良い。また、内部給気管3eは線状に限定されるものではなく、例えば、各浄化槽2a内において1本から複数に分岐した形状にしても良い。また、内部給気管3eは、塩化ビニル管に限定されるものではなく種々変更可能であり、例えば、金属により形成しても良い。
【0030】
図1に示す排水系4は、浄化槽2a内の油含有土壌S中の水分(微生物による油の分解により生じた水分を含む)を集めて浄化本体部2の外部に排出するための構成であり、排水部材(排水部)4aと、排水管4bと、バルブ4cとを備えている。
【0031】
排水部材4aは、浄化槽2a内の油含有土壌S中の水分を集める部材であり排水経路を形成している。この排水部材4aは、各浄化槽2aに、例えば3本ずつ配置されており、内部給気管3eを挟むように各浄化槽2aの長手方向に沿って延在した状態で各浄化槽2a内の底面に固定されている。この排水部材4aは、例えば多孔質材料により形成されており、その排水経路の端部において浄化本体部2の外部の排水管4bと機械的に接続されている。各浄化槽2a内の油含有土壌S中の水分は、各浄化槽2aの底面の排水部材4aで集められ、排水管4bを通じて浄化本体部2の外部に排出されるようになっている。なお、バルブ4cは、排水管4bを開閉する部品である。
【0032】
図4(a)および図5に示すように、上記した内部給気管3eおよび排水部材4aは、保護部材(給気管保護部材、排水部保護部材)8により覆われている。この保護部材8は、内部給気管3eおよび排水部材4aを保護する部材であり、内部給気管3eおよび排水部材4aと油含有土壌Sとの間に設けられている。この保護部材8は、例えば、弾力性に優れた立体網状フィラメントを不織布フィルターにより被覆することで形成されており、(1)耐圧縮性、耐衝撃性に強く、排水性の著しい低下が無い、(2)軽量で運搬および施工が容易である、(3)砕石と同等以上の性能がある、(4)耐薬品性や耐微生物性に優れている、等のような優れた特徴を有している。
【0033】
このような保護部材8を設けたことにより、内部給気管3eや排水部材4aの損傷を防止することができる。また、内部給気管3eの給気孔が、油含有土壌S中の石や泥等により塞がるのを防止することができる。このため、各浄化槽2a内の油含有土壌S中の微生物に対して安定した状態で空気を供給することができるので、微生物の増殖や活性を促進させることができる。また、排水部材4aの排水孔が、油含有土壌S中の石や泥等により塞がるのも防止することができるので、各浄化槽2a内の油含有土壌S中の水分を外部に良好に放出することができる。
【0034】
図1および図2に示す排気系5は、各浄化槽2aの空間R(図4(a)および図5参照)内の気体を外部に放出するための構成であり、排気管(排気孔)5aと、排気ブロア5bと、吸着塔(捕獲手段)5cとを備えている。
【0035】
排気管5aは、各浄化槽2aの空間Rを連通するように各浄化槽2aの側壁部に設置されている。各排気管5aは、第1方向(図1および図2の左右横方向)に隣接する排気管5a同士が、第2方向(図1および図2の上下縦方向)の互いに反対の端部側に位置するように配置されている。すなわち、第1方向に隣接する複数の排気管5aが、千鳥状に配置されている。これにより、図2に示すように、各浄化槽2aの空間R内の気体をまんべんなく排出することができる。すなわち、複数の浄化槽2aの各空間Rにおける気体の排気性を向上させることができる。
【0036】
浄化本体部2の第1方向の一端部の浄化槽2aの排気管5aは、排気ブロア5bに機械的に接続されている。排気ブロア5bは、各浄化槽2aの空間R内の気体を外方に吸引する装置であり、例えば、電動式の送風機により構成されている。この排気ブロア5bにより、各浄化槽2aの空間Rの気体は、浄化本体部2の外部に連続的または間欠的に排気されるようになっている。この排気ブロア5bの排気口は吸着塔5cに機械的に接続されている。
【0037】
吸着塔5cは、排気ブロア5bから送られた気体中の異臭物質を吸着することにより、異臭物質が外部に漏れないようにする装置である。これにより、各浄化槽2aにおいて微生物による油含有土壌S中の油の分解等により発生した異臭物質を吸着塔5cにおいて捕獲することができるので、バイオレメディエーションにおける異臭の問題を防止することができる。ここでは、例えば、2台の吸着塔5cが機械的に直列に接続されている。これにより、吸着塔5cが1台の場合よりも吸着塔5cの吸着面積を増やせるので異臭物質の吸着性能を向上させることができる。ただし、吸着塔5cは、2台に限定されるものではなく種々変更可能であり、1台または3台以上としても良い。各吸着塔5cの吸着材には、例えば、活性炭が使用されている。ただし、吸着材は、活性炭に限定されるものではなく種々変更可能である。また、異臭物質の種類に応じて、異なる吸着材を持つ吸着塔5cを直列に接続しても良い。
【0038】
次に、本実施の形態の土壌浄化方法の一例について図7および図8を参照して説明する。図7および図8は土壌浄化工程の説明図である。
【0039】
まず、図7(a)に示すように、作業者は、土壌を浄化する対象領域の油含有土壌Sに対して所定量の微生物(3菌株)および栄養塩を散布する。栄養塩としては、例えば硫安(窒素(N))および過リン酸石灰(リン(P))が使用されている。
【0040】
続いて、図7(b)に示すように、微生物等が散布された油含有土壌Sを重機10により撹拌することにより油含有土壌Sと微生物および栄養塩とを混合した後、図8(a)に示すように、その油含有土壌Sを重機10により土壌浄化装置1の各浄化槽2aの開口部2cを通じて各浄化槽2a内に投入する。ここでは、油含有土壌Sを各浄化槽2a内に目一杯入れずに、油含有土壌Sの上方に空間が形成される程度に油含有土壌Sを入れたところで投入作業を終了する。
【0041】
その後、図8(b)に示すように、土壌浄化装置1の各浄化槽2aの開口部2cを上蓋2bで閉じた後、給気系3により各浄化槽2a内の油含有土壌Sに空気を送り込むとともに、各浄化槽2aの空間R内の気体を排気系5により浄化本体部2の外部に排気する。このとき、本実施の形態においては、各浄化槽2aにおいて微生物による油含有土壌S中の油の分解等により発生した異臭物質を吸着塔5cにおいて捕獲することができるので、バイオレメディエーションにおける異臭の問題を防止することができる。
【0042】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0043】
例えば、土壌浄化装置の浄化槽は少なくとも1つあれば良い。また、土壌浄化装置の浄化本体部を構成する浄化槽の底面に車輪を取り付けることにより、浄化本体部を移動させることが可能な構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明に係る土壌浄化装置は、微生物による油含有土壌の浄化に有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 土壌浄化装置
2 浄化本体部
2a 浄化槽
2b 上蓋
2b1 蓋本体部
2b2 枠体部
2c 開口部
3 給気系
3a コンプレッサ
3b レシーバタンク
3c レギュレータ
3d 外部給気管
3e 内部給気管
3f1,3f2,3f3 バルブ
4 排水系
4a 排水部材
4b 排水管
4c バルブ
5 排気系
5a 排気管
5b 排気ブロア
5c 吸着塔
8 保護部材
10 重機
S 油含有土壌
R 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8