(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(Z)成分100質量部に対する(A)〜(C)成分の合計量が、0.0001〜10000質量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸素化物合成用の触媒。
さらに、(D)成分:ジルコニウム、マグネシウム、ランタノイド、鉄、セシウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、チタン、バナジウム、及びクロムからなる群から選ばれる何れか1以上を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の酸素化物合成用の触媒。
請求項1〜6のいずれか一項に記載の酸素化物合成用の触媒が充填された反応管と、前記混合ガスを前記反応管内に供給する供給手段と、前記反応管から生成物を排出する排出手段とを備えることを特徴とする酸素化物の製造装置。
請求項1〜6のいずれか一項に記載の酸素化物合成用の触媒に、水素と一酸化炭素とを含む混合ガスを接触させて酸素化物を得ることを特徴とする、酸素化物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<酸素化物合成用の触媒>
本発明の酸素化物合成用の触媒(以下、単に触媒ということがある)は、(A)成分:ロジウム(Rh)と、(B)成分:マンガン(Mn)と、(C)成分:アルカリ金属と、(Z)成分:酸化マグネシウムとを含むものである。(A)〜(Z)成分を含むことで、酸素化物を効率的に合成できる。
【0011】
(C)成分は、アルカリ金属である。(C)成分としては、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等が挙げられる。これらの中でも、副生成物の発生を低減し、CO転化率を高め、酸素化物をより効率的に合成できる観点から、リチウムが好ましい。なお、「CO転化率」とは、「混合ガス中のCOのモル数のうち、消費されたCOのモル数が占める百分率」を意味する。
【0012】
(Z)成分は、酸化マグネシウム(MgO)である。前記酸化マグネシウムとしては、天然のMgOであっても良いし、非天然の合成した結晶性のMgOであっても良い。本発明の触媒においては、酸素化物の合成効率を一層高める観点から、これらのMgOのなかでも、結晶学的な(111)面を有する酸化マグネシウムであることが好ましい。この好適な酸化マグネシウムをMgO(111)と略記する。(111)面は、面全体がMg
2+又はO
2−のみで構成される。このため、強力な静電界が(111)面と垂直に形成され、その表面は化学的に活性となる。本発明においては、この(111)面を有するMgO(111)が(A)〜(D)成分の触媒活性を向上させて、酸素化物の合成効率をより向上させることが可能になることを見出した。したがって、例えば、従来の担持触媒に用いられていたシリカ等の担体の代わりにMgO(111)を用いることによって、本発明にかかる触媒を調製することができる。
【0013】
MgOの(111)面は静電的に不安定であるため、天然には存在しないと言われる。天然のMgOの結晶をへき開しても中性の(100)面又は(110)面が現れ、(111)面は得難い。しかし、下記の参考文献1〜3に記載された方法によって、(111)面を有するMgOを調製することできる。この方法によって得られるMgO(111)の形状は、典型的には、直径が50〜200nmで厚みが3〜5nmのナノシート(nano-sheets)である。本発明の(Z)成分として使用可能なMgO(111)としては、下記参考文献の方法で調製されたMgO(111)が例示できる。なお、MgO(111)が触媒中に含まれることは、例えば広角X線回折(WAXD)等の公知方法により調べることができる。
・参考文献1:国際公開第2007/093415号
・参考文献2:米国特許出願公開第2007/0196266号明細書
・参考文献3:"Efficient Preparation and Catalytic Activity of MgO(111) Nano-sheets" (Angewandte Chemie International Edition Volume 45, Issue 43, pages 7277-7281, November 6, 2006)
【0014】
本発明の触媒における(Z)成分はMgO(111)であることが好ましい。MgO(111)の(111)面において酸素アニオンとマグネシウムカチオンの交互単層が形成され、(111)面に垂直方向に強静電場が形成されている。そのため、(111)面がCOと相互作用して、触媒による炭化水素生成をより促進できると考えられる。つまり、ローンペアを持つCO分子のCが、強くプラスに分極している(111)面のMg層側に引き付けられて配位結合し、CO結合がより分極することにより反応性が上がる。この結果、ロジウム系触媒の微粒子の近傍に反応性の高いCOが存在することにより、酸素化物を生成する触媒反応がより促進されると推察される。
一方、MgO(100)は、その表面において酸素アニオンとマグネシウムカチオンが均一に分散して安定な結合を形成しているため、MgO(111)と比較すると、その表面エネルギーが低く、化学的に安定している。そのため、MgO(111)と比較すると酸素化物の生成反応の効率において若干劣る場合がある。
【0015】
本発明の触媒においては、(Z)成分100質量部に対する(A)〜(C)成分の合計量が、0.0001〜10000質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部がより好ましく、0.1〜5質量部であることがさらに好ましい。上記範囲であると、(Z)成分によって(A)〜(C)成分の触媒活性がより向上し、酸素化物の合成効率をより向上させることができる。
本発明の触媒において(Z)成分の(111)面が触媒として機能する可能性を考慮し、触媒(A)〜(C)成分と同程度の量又は触媒(A)〜(C)成分より少ない量で、(Z)成分を使用しても構わない。
【0016】
本発明の触媒は、
(A)成分、(B)成分及び(C)成分を、下記(I)式
に示す比で含むことが好ましい。
aA・bB・cC ・・・・(I)
(I)式中、Aは(A)成分を表し、Bは(B)成分を表し、Cは(C)成分を表し、a、b及びcはモル分率を表し、a+b+c=1である。
(I)式中のaは、0.053〜0.98が好ましい。上記下限値未満であると(A)成分の含有量が少なすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがあり、上記上限値超であると(B)成分、(C)成分の含有量が少なくなりすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがある。
(I)式中のbは、0.00059〜0.67が好ましい。上記下限値未満であると(B)成分の含有量が少なすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがあり、上記上限値超であると(A)成分、(C)成分の含有量が少なくなりすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがある。
(I)式中のcは、0.00056〜0.51が好ましい。上記下限値未満であると(C)成分の含有量が少なすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがあり、上記上限値超であると(A)成分、(B)成分の含有量が少なくなりすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがある。
【0017】
本発明の触媒は、さらに、(D)成分として、ジルコニウム(Zr)、マグネシウム(Mg)、ランタノイド、鉄(Fe)、セシウム(Cs)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、及びクロム(Cr)からなる群から選ばれる何れか1以上を含んでいても良い。
ここで、ランタノイドは、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)等、原子番号が51〜71であるランタンからルテニウム(Ru)までの元素である。
なお、(D)成分がセシウムである場合、(C)成分はセシウム以外のアルカリ金属である。
【0018】
本発明の触媒に(D)成分が含まれることにより、酸素化物の合成効率を一層高められる場合がある。(D)成分を含むことで酸素化物の合成効率が高まる機構については明らかではないが、(D)成分を含むことで、(A)〜(C)成分の分散性が高まるためと推測される。
【0019】
本発明の触媒においては、(Z)成分100質量部に対する(A)〜(D)成分の合計量が、0.0001〜10000質量部であることが好ましく、0.01〜10質量部がより好ましく、0.1〜5質量部であることが好ましい。上記範囲であると、(Z)成分によって(A)〜(D)成分の触媒活性がより向上し、酸素化物の合成効率をより向上させることができる。
本発明の触媒において(Z)成分の(111)面が触媒として機能する可能性を考慮し、触媒(A)〜(D)成分と同程度の量又は触媒(A)〜(D)成分より少ない量で、(Z)成分を使用しても構わない。
【0020】
本発明の触媒が(D)成分を含む場合、
本発明の触媒は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を、下記(II)式
に示す比で含むことが好ましい。
aA・bB・cC・dD ・・・・(II)
(II)式中、Aは(A)成分を表し、Bは(B)成分を表し、Cは(C)成分を表し、Dは(D)成分を表し、a、b、c及びdはモル分率を表し、a+b+c+d=1である。
(II)式中のaは、0.053〜0.98が好ましい。上記下限値未満であると(A)成分の含有量が少なすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがあり、上記上限値超であると(B)〜(D)成分の含有量が少なくなりすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがある。
(II)式中のbは、0.00059〜0.67が好ましい。上記下限値未満であると(B)成分の含有量が少なすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがあり、上記上限値超であると(A)成分、(C)成分、(D)成分の含有量が少なくなりすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがある。
(II)式中のcは、0.00056〜0.51が好ましい。上記下限値未満であると(C)成分の含有量が少なすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがあり、上記上限値超であると(A)成分、(B)成分、(D)成分の含有量が少なくなりすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがある。
(II)式中のdは、0.0024〜0.94が好ましい。上記下限値未満であると(D)成分の含有量が少なすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがあり、上記上限値超であると(A)〜(C)成分の含有量が少なくなりすぎて、酸素化物の合成効率が十分に高まらないおそれがある。
【0021】
(D)成分がチタンの場合、(II)式中、aは、0.053〜0.98が好ましく、0.24〜0.8がより好ましく、0.32〜0.67がさらに好ましい。
(D)成分がチタンの場合、(II)式中、bは、0.0006〜0.67が好ましく、0.033〜0.57がより好ましく、0.089〜0.44がさらに好ましい。
(D)成分がチタンの場合、(II)式中、cは、0.00056〜0.51が好ましく、0.026〜0.42がより好ましく、0.075〜0.33がさらに好ましい。
(D)成分がチタンの場合、(II)式中、dは、0.0026〜0.94が好ましく、0.02〜0.48がより好ましく、0.039〜0.25がさらに好ましい。
【0022】
(D)成分がバナジウムの場合、(II)式中、aは、0.06〜0.98が好ましく、0.23〜0.8がより好ましく、0.27〜0.69がさらに好ましい。
(D)成分がバナジウムの場合、(II)式中、bは、0.00068〜0.67が好ましく、0.034〜0.57がより好ましく、0.072〜0.45がさらに好ましい。
(D)成分がバナジウムの場合、(II)式中、cは、0.00064〜0.51が好ましく、0.027〜0.42がより好ましく、0.063〜0.33がさらに好ましい。
(D)成分がバナジウムの場合、(II)式中、dは、0.0024〜0.93が好ましく、0.017〜0.45がより好ましく、0.022〜0.41がさらに好ましい。
【0023】
(D)成分がクロムの場合、(II)式中、aは、0.061〜0.98が好ましく、0.23〜0.8がより好ましく、0.28〜0.69がさらに好ましい。
(D)成分がクロムの場合、(II)式中、bは、0.0007〜0.67が好ましく、0.035〜0.57がより好ましく、0.073〜0.45がさらに好ましい。
(D)成分がクロムの場合、(II)式中、cは、0.00065〜0.51が好ましく、0.027〜0.42がより好ましく、0.063〜0.33がさらに好ましい。
(D)成分がクロムの場合、(II)式中、dは、0.0024〜0.93が好ましく、0.017〜0.44がより好ましく、0.022〜0.4がさらに好ましい。
【0024】
(D)成分がホウ素の場合、(II)式中、aは、0.057〜0.98が好ましく、0.12〜0.78がより好ましく、0.22〜0.55がさらに好ましい。
(D)成分がホウ素の場合、(II)式中、bは、0.00065〜0.67が好ましく、0.015〜0.57がより好ましく、0.055〜0.39がさらに好ましい。
(D)成分がホウ素の場合、(II)式中、cは、0.00061〜0.51が好ましく、0.013〜0.41がより好ましく、0.05〜0.28がさらに好ましい。
(D)成分がホウ素の場合、(II)式中、dは、0.0024〜0.94が好ましく、0.028〜0.8がより好ましく、0.13〜0.57がさらに好ましい。
【0025】
(D)成分がアルミニウムの場合、(II)式中、aは、0.053〜0.98が好ましく、0.19〜0.78がより好ましく、0.22〜0.68がさらに好ましい。
(D)成分がアルミニウムの場合、(II)式中、bは、0.00059〜0.67が好ましく、0.026〜0.57がより好ましく、0.055〜0.45がさらに好ましい。
(D)成分がアルミニウムの場合、(II)式中、cは、0.00056〜0.51が好ましく、0.022〜0.41がより好ましく、0.05〜0.33がさらに好ましい。
(D)成分がアルミニウムの場合、(II)式中、dは、0.0024〜0.95が好ましく、0.028〜0.6がより好ましく、0.036〜0.57がさらに好ましい。
【0026】
(D)成分が鉄の場合、(II)式中、aは、0.064〜0.98が好ましく、0.23〜0.81がより好ましく、0.28〜0.7がさらに好ましい。
(D)成分が鉄の場合、(II)式中、bは、0.00074〜0.67が好ましく、0.035〜0.58がより好ましく、0.0074〜0.45がさらに好ましい。
(D)成分が鉄の場合、(II)式中、cは、0.00069〜0.51が好ましく、0.028〜0.42がより好ましく、0.065〜0.33がさらに好ましい。
(D)成分が鉄の場合、(II)式中、dは、0.0024〜0.93が好ましく、0.016〜0.43がより好ましく、0.021〜0.39がさらに好ましい。
【0027】
(C)成分がリチウムであり、且つ(D)成分がセシウムの場合、(II)式中、aは、0.1〜0.98が好ましく、0.26〜0.83がより好ましく、0.33〜0.71がさらに好ましい。
(C)成分がリチウムであり、且つ(D)成分がセシウムの場合、(II)式中、bは、0.0014〜0.67が好ましく、0.043〜0.58がより好ましく、0.092〜0.46がさらに好ましい。
(C)成分がリチウムであり、且つ(D)成分がセシウムの場合、(II)式中、cは、0.0012〜0.51が好ましく、0.033〜0.43がより好ましく、0.077〜0.34がさらに好ましい。
(C)成分がリチウムであり、且つ(D)成分がセシウムの場合、(II)式中、dは、0.0024〜0.83が好ましく、0.0071〜0.24がより好ましく、0.009〜0.21がさらに好ましい。
【0028】
(D)成分がマグネシウムの場合、(II)式中、aは、0.18〜0.78がより好ましく、0.21〜0.68がさらに好ましい。
(D)成分がマグネシウムの場合、(II)式中、bは、0.025〜0.57がより好ましく、0.052〜0.45がさらに好ましい。
(D)成分がマグネシウムの場合、(II)式中、cは、0.021〜0.41がより好ましく、0.047〜0.33がさらに好ましい。
(D)成分がマグネシウムの場合、(II)式中、dは、0.028〜0.63がより好ましく、0.036〜0.59がさらに好ましい。
【0029】
(D)成分がランタノイドの場合、(II)式中、aは、0.11〜0.98がより好ましく、0.27〜0.83がさらに好ましく、0.33〜0.71が特に好ましい。
(D)成分がランタノイドの場合、(II)式中、bは、0.0014〜0.67がより好ましく、0.044〜0.58がさらに好ましく、0.092〜0.46が特に好ましい。
(D)成分がランタノイドの場合、(II)式中、cは、0.0012〜0.51がより好ましく、0.033〜0.58がさらに好ましく、0.078〜0.34が特に好ましい。
(D)成分がランタノイドの場合、(II)式中、dは、0.0024〜0.83がより好ましく、0.0068〜0.23がさらに好ましく、0.0087〜0.21が特に好ましい。
【0030】
(D)成分がジルコニウムの場合、(II)式中、aは、0.09〜0.98が好ましく、0.25〜0.82がより好ましく、0.31〜0.71がさらに好ましい。
(D)成分がジルコニウムの場合、(II)式中、bは、0.001〜0.67が好ましく、0.04〜0.58がより好ましく、0.085〜0.46がさらに好ましい。
(D)成分がジルコニウムの場合、(II)式中、cは、0.0009〜0.51が好ましく、0.031〜0.42がより好ましく、0.073〜0.34がさらに好ましい。
(D)成分がジルコニウムの場合、(II)式中、dは、0.0024〜0.88が好ましく、0.01〜0.31がより好ましく、0.012〜0.28がさらに好ましい。
【0031】
本発明の触媒において、(A)〜(C)成分がそれぞれ独立して存在していてもよいし、(A)〜(C)成分が合金を形成していてもよい。
本発明の触媒は、(A)〜(C)成分及び(Z)成分の集合物であってもよいし、(A)〜(C)成分が(Z)成分に担持された担持触媒であってもよく、担持触媒であることが好ましい。担持触媒とすることで、(A)〜(C)成分及び(Z)成分と混合ガスとの接触効率が高まり、酸素化物をより効率的に合成できる。また、(A)〜(C)成分を担体に担持させて、これを(Z)成分と混ぜることにより、前記集合物を調製してもよい。
【0032】
本発明の触媒において、(A)〜(D)成分がそれぞれ独立して存在していてもよいし、(A)〜(D)成分が合金を形成していてもよい。
本発明の触媒は、(A)〜(D)成分及び(Z)成分の集合物であってもよいし、(A)〜(D)成分が(Z)成分に担持された担持触媒であってもよく、担持触媒であることが好ましい。担持触媒とすることで、(A)〜(D)成分及び(Z)成分と混合ガスとの接触効率が高まり、酸素化物をより効率的に合成できる。また、(A)〜(D)成分を担体に担持させて、これを(Z)成分と混ぜることにより、前記集合物を調製してもよい。
【0033】
前記担体としては、金属触媒の担体として周知のものを用いることができ、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、セリア等が挙げられる。これらの中でも、触媒反応の選択率を高める観点、CO転化率を高める観点、比表面積や細孔径が異なる種々の製品が市場で調達できることから、シリカが好ましい。
なお、「選択率」とは、混合ガス中の消費されたCOのモル数のうち、特定の酸素化物へ変換されたCのモル数が占める百分率である。例えば、下記(α)式によれば、酸素化物である酢酸の選択率は100モル%である。一方、下記(β)式によれば、酸素化物である酢酸の選択率は50モル%であり、酸素化物であるアセトアルデヒドの選択率も50モル%である。
2H
2+2CO→CH
3COOH ・・・・・(α)
5H
2+4CO→CH
3COOH+CH
3CHO+H
2O ・・・(β)
【0034】
前記担体としては、比表面積が10〜1000m
2/gであり、かつ1nm以上の細孔径を有するものが好ましい。
加えて、担体は、粒子径の分布が狭いものが好ましい。担体の平均粒子径は、特に限定されないが、0.5〜5000μmが好ましい。
本発明において、(A)〜(C)成分又は(A)〜(D)成分を前記担体に担持させる場合、担体100質量部に対する(A)〜(C)成分又は(A)〜(D)成分の合計量は、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。上記下限値未満では、酸素化物の合成効率が低下するおそれがあり、上記上限値超では、(A)〜(D)成分が均一かつ高分散な状態となりにくく、酸素化物の合成効率が低下するおそれがある。
【0035】
本発明の触媒は、従来公知の貴金属触媒の製造方法に準じて製造される。触媒の製造方法としては、例えば、含浸法、浸漬法、イオン交換法、共沈法、混練法等が挙げられ、中でも含浸法が好ましい。含浸法を用いることで、得られる触媒は、(A)〜(C)成分又は(A)〜(D)成分がより均一に分散され、混合ガスとの接触効率がより高められ、酸素化物をより効率的に合成できる。
触媒調製に用いられる(A)〜(D)成分の原料化合物としては、酸化物、塩化物、硝酸塩、炭酸塩等の無機塩、シュウ酸塩、アセチルアセトナート塩、ジメチルグリオキシム塩、エチレンジアミン酢酸塩等の有機塩又はキレート化合物、カルボニル化合物、シクロペンタジエニル化合物、アンミン錯体、アルコキシド化合物、アルキル化合物等、(A)〜(D)成分の化合物として、通常貴金属触媒を調製する際に用いられるものが挙げられる。
【0036】
含浸法について説明する。まず、(A)〜(C)成分又は(A)〜(D)成分の原料化合物を水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等の溶媒に溶解し、得られた溶液(含浸液)に担体を浸漬する等して、含浸液を(Z)成分又は前記担体に付着させる。前記担体として多孔質体を用いる場合には、含浸液を担体の細孔内に十分浸透させた後、溶媒を蒸発させて触媒とする。
含浸液を(Z)成分又は前記担体に含浸させる方法としては、全ての原料化合物を溶解した溶液を(Z)成分又は前記担体に含浸させる方法(同時法)、各原料化合物を別個に溶解した溶液を調製し、逐次的に(Z)成分又は前記担体に各溶液を含浸させる方法(逐次法)等が挙げられる。
【0037】
逐次法としては、例えば、(D)成分を含む溶液(一次含浸液)を(Z)成分又は前記担体に含浸させ(一次含浸工程)、これを乾燥して(D)成分を(Z)成分又は前記担体に担持させた一次担持体を得(一次担持工程)、次いで(A)〜(C)成分を含む溶液(二次含浸液)を一次担持体に含浸させ(二次含浸工程)、これを乾燥する(二次担持工程)方法が挙げられる。このように、(D)成分を(Z)成分又は前記担体に担持させ、次いで(A)〜(C)成分を担体に担持させることで、触媒は(A)〜(D)成分がより高分散なものとなり、酸素化物をより効率的に合成できる。
【0038】
一次担持工程は、例えば、一次含浸液が含浸された担体を乾燥し(一次乾燥操作)、これを任意の温度で加熱して焼成する(一次焼成操作)方法が挙げられる。
一次乾燥操作における乾燥方法は特に限定されず、例えば、一次含浸液が含浸された担体を任意の温度で加熱する方法が挙げられる。一次乾燥操作における加熱温度は、一次含浸液の溶媒を蒸発できる温度であればよく、溶媒が水であれば、80〜120℃とされる。一次焼成操作における加熱温度は、例えば、300〜600℃とされる。一次焼成操作を行うことで、(D)成分の原料化合物に含まれていた成分の内、触媒反応に寄与しない成分を十分に揮散し、触媒活性をより高められる。
【0039】
二次担持工程は、例えば、二次含浸液が含浸された一次担持体を乾燥し(二次乾燥操作)、さらに任意の温度で加熱して焼成する(二次焼成操作)方法が挙げられる。
二次乾燥操作における乾燥方法は特に限定されず、例えば、二次含浸液が含浸された一次担持体を任意の温度で加熱する方法が挙げられる。二次乾燥操作における加熱温度は、二次含浸液の溶媒を蒸発できる温度であればよく、溶媒が水であれば、80〜120℃とされる。二次焼成操作における加熱温度は、例えば、300〜600℃とされる。二次焼成操作を行うことで、(A)〜(C)成分の原料化合物に含まれていた成分の内、触媒反応に寄与しない成分を十分に揮散し、触媒活性をより高められる。
【0040】
上述の方法によって調製された触媒は、通常、還元処理が施されて活性化され、酸素化物の合成に用いられる。還元処理としては、水素を含む気体に、触媒を接触させる方法が簡便で好ましい。この際、処理温度は、ロジウムが還元される程度の温度、即ち100℃程度であればよいが、好ましくは200〜600℃とされる。加えて、(A)〜(D)成分を十分に分散させる目的で、低温から徐々にあるいは段階的に昇温しながら水素還元を行ってもよい。また、例えば、一酸化炭素と水との存在下、又はヒドラジン、水素化ホウ素化合物もしくは水素化アルミニウム化合物等の還元剤の存在下で、触媒に還元処理を施してもよい。
還元処理における加熱時間は、例えば、1〜10時間が好ましく、2〜5時間がより好ましい。上記下限値未満では、(A)〜(D)成分の還元が不十分となり、酸素化物の製造効率が低下するおそれがある。上記上限値超では、(A)〜(D)成分における金属粒子が凝集し、酸素化物の合成効率が低下したり、還元処理におけるエネルギーが過剰になり経済的な不利益が生じたりするおそれがある。
【0041】
一次担持工程の後で二次含浸工程の前に、一次担持体にアルカリ水溶液を接触させて表面処理を施す表面処理工程が設けられていてもよい。表面処理工程を設けることで、一次担持体の表面の一部を水酸化物とし、(A)成分を含む金属粒子の分散性がより向上するものと推察される。
表面処理工程に用いられるアルカリ水溶液は、(D)成分の種類や担体の種類等を勘案して決定でき、例えば、アンモニア水溶液等が挙げられる。アルカリ水溶液の濃度は、(D)成分の種類や担体の種類等を勘案して決定でき、例えば、0.1〜3モル/Lとされる。
一次担持体にアルカリ水溶液を接触させる方法は、特に限定されず、例えば、アルカリ水溶液に一次担持体を浸漬する方法、アルカリ水溶液を一次担持体に噴霧等により塗布する方法等が挙げられる。
【0042】
(酸素化物合成用の製造装置)
本発明の酸素化物合成用の製造装置(以下、単に製造装置ということがある)は、本発明の触媒が充填された反応管と、混合ガスを反応管内に供給する供給手段と、反応管から生成物を排出する排出手段とを備えるものである。
【0043】
本発明の製造装置の一例について、
図3を用いて説明する。
図3は、本発明の一実施形態にかかる製造装置10を示す模式図である。製造装置10は、触媒が充填されて反応床2が形成された反応管1と、反応管1に接続された供給管3と、反応管1に接続された排出管4と、反応管1に接続された温度制御部5と、排出管4に設けられた圧力制御部6とを備えるものである。
【0044】
反応管1は、原料ガス及び合成された酸素化物に対して不活性な材料が好ましく、100〜500℃程度の加熱、又は10MPa程度の加圧に耐え得る形状のものが好ましい。
反応管1としては、例えば、ステンレス製の略円筒形の部材が挙げられる。
供給管3は、混合ガスを反応管1内に供給する供給手段であり、例えば、ステンレス製等の配管が挙げられる。
排出管4は、反応床2で合成された酸素化物を含むガス(生成物)を排出する排出手段であり、例えば、ステンレス製等の配管が挙げられる。
温度制御部5は、反応管1内の反応床2を任意の温度にできるものであればよく、例えば、電気炉等が挙げられる。
圧力制御部6は、反応管1内の圧力を任意の圧力にできるものであればよく、例えば、公知の圧力弁等が挙げられる。
また、製造装置10は、マスフロー等、ガスの流量を調整するガス流量制御部等の周知の機器を備えていてもよい。
【0045】
(酸素化物の製造方法)
本発明の酸素化物の製造方法は、混合ガスを触媒に接触させるものである。本発明の酸素化物の製造方法の一例について、
図3の製造装置を用いて説明する。
まず、反応管1内を任意の温度及び任意の圧力とし、混合ガス20を供給管3から反応管1内に流入させる。
【0046】
混合ガス20は、水素と一酸化炭素とを含むものであれば特に限定されず、例えば、天然ガス、石炭から調製されたものであってもよいし、バイオマスをガス化して得られるバイオマスガス等であってもよい。バイオマスガスは、例えば、粉砕したバイオマスを水蒸気の存在下で加熱(例えば、800〜1000℃)する等、従来公知の方法で得られる。
混合ガス20として、バイオマスガスを用いる場合、混合ガス20を反応管1内に供給する前に、タール分、硫黄分、窒素分、塩素分、水分等の不純物を除去する目的で、ガス精製処理を施してもよい。ガス精製処理としては、例えば、湿式法、乾式法等、当該技術分野で知られる各方式を採用できる。湿式法としては、水酸化ナトリウム法、アンモニア吸収法、石灰・石膏法、水酸化マグネシウム法等が挙げられ、乾式法としては、圧力スイング吸着(PSA)法等の活性炭吸着法、電子ビーム法等が挙げられる。
【0047】
混合ガス20は、水素と一酸化炭素とを主成分とするもの、即ち混合ガス20中の水素と一酸化炭素との合計が、50体積%以上であることが好ましく、80体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることがさらに好ましく、100体積%であってもよい。水素と一酸化炭素との含有量が多いほど、酸素化物の生成量をより高められ、酸素化物をより効率的に製造できる。
水素/一酸化炭素で表される体積比(以下、H
2/CO比ということがある)は、0.1〜10が好ましく、0.5〜3がより好ましく、1.5〜2.5がさらに好ましい。上記範囲内であれば、混合ガスから酸素化物が生成される反応において、化学量論的に適正な範囲となり、酸素化物をより効率的に製造できる。
なお、混合ガス20は、水素及び一酸化炭素の他に、メタン、エタン、エチレン、窒素、二酸化炭素、水等を含んでいてもよい。
【0048】
混合ガス20と触媒とを接触させる際の温度(反応温度)、即ち反応管1内の温度は、例えば、150〜450℃が好ましく、200〜400℃がより好ましく、250〜350℃がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、触媒反応の速度を十分に高め、酸素化物をより効率的に製造できる。上記上限値以下であれば、酸素化物の合成反応を主反応とし、酸素化物をより効率的に製造できる。
【0049】
混合ガス20と触媒とを接触させる際の圧力(反応圧力)、即ち反応管1内の圧力は、例えば、0.1〜10MPaが好ましく、0.2〜7.5MPaがより好ましく、0.3〜5MPaがさらに好ましい。上記下限値以上であれば、触媒反応の速度を十分に高め、酸素化物をより効率的に製造できる。上記上限値以下であれば、酸素化物の合成反応を主反応とし、酸素化物をより効率的に製造できる。
【0050】
流入した混合ガス20は、反応床2の触媒と接触しながら流通し、その一部が酸素化物となる。
混合ガス20は、反応床2を流通する間、例えば、下記(1)〜(5)式で表される触媒反応により酸素化物を生成する。
3H
2+2CO→CH
3CHO+H
2O・・・(1)
4H
2+2CO→CH
3CH
2OH+H
2O・・・(2)
H
2+CH
3CHO→CH
3CH
2OH・・・(3)
2H
2+2CO→CH
3COOH・・・(4)
2H
2+CH
3COOH→CH
3CH
2OH+H
2O・・・(5)
【0051】
そして、この酸素化物を含むガス22(生成ガス)は、排出管4から排出される。ガス22は、酸素化物を含むものであれば特に限定されないが、酸素化物を含むものが好ましく、メタノール又はエタノールを含むものがより好ましい。このようなアルコール等の酸素化物を製造する方法において、本発明の触媒の効果が顕著なためである。
【0052】
混合ガス20の供給速度は、例えば、反応床2における混合ガスの空間速度(単位時間当たりガスの供給量を触媒量(体積換算)で除した値)が標準状態換算で10〜100000L/L−触媒/hとなるように調節されることが好ましい。空間速度は、目的とする酸素化物に適した反応圧力、反応温度、及び原料である混合ガスの組成を勘案して、適宜調整される。
【0053】
必要に応じ、排出管4から排出されたガス22を気液分離器等で処理し、未反応の混合ガス20と酸素化物とを分離してもよい。
【0054】
本実施形態では、固定床の反応床2に混合ガスを接触させているが、例えば、触媒を流動床又は移動床等、固定床以外の形態とし、これに混合ガスを接触させてもよい。
【0055】
本発明では、得られた酸素化物を蒸留等によって、必要成分毎に分離してもよい。
また、本発明では、エタノール以外の生成物(例えば、酢酸、アセトアルデヒド等、エタノールを除くC2化合物)を水素化してエタノールに変換する工程(エタノール化工程)を設けてもよい。エタノール化工程としては、例えば、アセトアルデヒド、酢酸を含む酸素化物を水素化触媒に接触させてエタノールに変換する方法が挙げられる。
ここで、水素化触媒としては、当該技術分野で知られる触媒が使用でき、銅、銅−亜鉛、銅−クロム、銅−亜鉛−クロム、鉄、ロジウム−鉄、ロジウム−モリブデン、パラジウム、パラジウム−鉄、パラジウム−モリブデン、イリジウム−鉄、ロジウム−イリジウム−鉄、イリジウム−モリブデン、レニウム−亜鉛、白金、ニッケル、コバルト、ルテニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム、酸化白金、酸化ルテニウム等が挙げられる。これらの水素化触媒は、本発明の触媒に使用可能な担体と同様の担体に担持させた担持触媒であってもよい。この担持触媒としては、銅、銅−亜鉛、銅−クロム又は銅−亜鉛−クロムをシリカ系担体に担持させた銅系触媒が好適である。担持触媒である水素化触媒の製造方法としては、前記同時法又は逐次法が挙げられる。
【0056】
上述したように、本発明の触媒を用いることで、混合ガスから酸素化物を効率的に合成できる。加えて、本発明の触媒を用いることで、酸素化物中のメタノール量、エタノール量の生成量を高められる。
【実施例】
【0057】
以下に、実施例を示して本発明を説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0058】
[MgO(111)の作製]
純度99.5%の金属マグネシウム(Aldrich社製;型番13103 259)の表面の酸化被膜を洗浄し、1.1gを秤量して二口丸型フラスコにMgに投入し、MeOH(純度99.8%)100mLを加えた。フラスコ中でスピナーを100rpmで回しながら窒素ガスを吹き込んで2〜3分間パージした。1時間の攪拌を行って完全にMgを溶解した後、BZ(4-methoxybenzyl alcohol)を3.13g加えた。さらにMeOH 7mLを追加して混合し、窒素ガスのパージを2〜3分行った後、5時間攪拌した。その後、H
2O 1.62gとMeOH 30mLを加え、窒素ガスのパージを2〜3分行った後、12時間攪拌した。
得られた溶液をオートクレーブ(高温高圧耐性容器)に移し替えて、アルゴンガスでオートクレーブ内の空気をパージした後、さらにアルゴンガスで10barまで加圧し、その後、265℃、5時間の条件で加圧及び加温した(攪拌なし)。
次に、MeOH等の溶媒を排気して取り除いた後、アルゴンガスでパージして室温になるまで放置した。その後、容器内の固形物を耐熱ビーカーに移し、焼結オーブンによって焼成した。焼成は、室温(20℃)から500℃まで3℃/分で昇温し、500℃で6時間保持するプログラムで行った。上記方法によって、MgO(111)を得た。
【0059】
[実施例1]
まず、フラスコ中に0.4739gのRhCl
3・3H
2O、0.0356gのMnCl
2・4H
2O、及び0.0327gのLiCl・H
2Oを投入し、10mLのH
2Oを加えて、室温で、スピナーを200rpmで回転させながら12時間撹拌して、触媒溶液を調製した。
次に、1.0gのMgO(111)をガラス瓶にとり、前記触媒溶液を約1.11g滴下した。これを均一に混ぜて30分置いた後、95℃のオーブン中に3時間置いて、溶媒である水を蒸発させた。つづいて、オーブンから取り出して冷却し、再度、前記触媒溶液を約1.11g滴下した。これを均一に混ぜて30分置いた後、95℃のオーブン中に3時間置いて溶媒である水を除去し、オーブンから取り出した。得られた試料を磁器に入れて焼成した。焼成は、室温(20℃)から450℃まで1.5時間で昇温し、450℃で3時間保持するプログラムで行った。上記方法によって、酸素化物合成用の触媒を調製した。
実施例1で得た触媒において、(A)〜(C)成分の比は、Rh:Mn:Li=10:1:3(モル比)=0.714:0.0714:0.214(モル分率)であった。また、(Z)成分であるMgO(111)100質量部に対する(A)〜(C)成分の合計量は、約4.2質量部であった。
【0060】
直径1/2インチ、長さ50cmのステンレス製の円筒型の反応管の中央部に、調製した酸素化物合成用の触媒0.5g及びシリカサンド(硅砂)2.5gを充填して反応床を形成した。反応床に、窒素ガスを200mL/分で流通させて反応管内の空気をパージした。次に、水素ガス200mL/分及び窒素ガス50mL/分で流通させながら、室温から320℃まで1.5時間で昇温し、その後、320℃で2.5時間保持して、触媒に還元処理を施した。
次いで、反応温度250℃、反応圧力0.35MPaの条件下で、混合ガス(H
2 200mL/分,CO 100mL/分,N2 35mL/分)を335mL/分で反応床に流通させて、酸素化物の製造を行った。
混合ガスを反応床に3時間流通させ、得られたガスを回収し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。ガスクロマトグラフィーのチャートを
図1に示す。また、チャート中のメタン(ピーク1)、アセトアルデヒド(ピーク2)、メタノール(ピーク3)、エタノール(ピーク4)及び酢酸(ピーク6)に対応するピークの面積と、「Relative conversion」とを表1に併記する。ここで「Relative conversion」は、比較例1の対応するピーク面積を100%とした場合のピーク面積の比率を示す。なお、ピーク5に対応する物質は未同定である。
【0061】
[比較例1]
シリカゲル(比表面積:310m
2/g、平均細孔径:14nm、細孔容量:1.1cm
3/g)1.0gに、実施例1で調製した前記触媒溶液を約1.11g滴下して含浸させた。これを110℃で3時間乾燥した後、再度、前記触媒溶液を1.11g滴下して含浸させ、さらに450℃で3時間焼成して、比較例1の触媒を調製した。
【0062】
次に、調製した触媒を用いて、実施例1と同じ条件で酸素化物の製造を行った。混合ガスを反応床に3時間流通させ、得られたガスを回収し、ガスクロマトグラフィーにより分析した。ガスクロマトグラフィーのチャートを
図2に示す。また、チャート中のメタン(ピーク1)、アセトアルデヒド(ピーク2)、メタノール(ピーク3)、エタノール(ピーク4)及び酢酸(ピーク6)に対応するピークの面積と、「Relative conversion」とを表1に併記する。なお、比較例1の「Relative conversion」は基準として使用するため、全て100%にした。なお、ピーク5に対応する物質は未同定である。
【0063】
【表1】
【0064】
比較例1の触媒、調製したMgO(111)及び実施例1の触媒について、表面積とポアサイズを測定した。測定には、マイクロメリティックス社のSurfacearea and Porosity Analyzer装置を使用した。その測定結果と、各試料の塩基特性(acid-base properties)を表2に併記する。
【0065】
【表2】
【0066】
実施例1の触媒を用いた場合、比較例1と比べて、メタンの生成量が1.7倍以上、メタノールの生成量が9.9倍以上、エタノールの生成量が2.1倍以上、検出した全酸素化物及びメタンの平均生成量が1.4倍以上、向上している。
これらの結果から、本発明の酸素化物合成用の触媒を用いることにより、酸素化物の生成量を高め、混合ガスから酸素化物を効率的に製造できることが明らかである。
なお、本発明の酸素化物合成用の触媒は、酸素化物に加えてメタンの生成効率にも優れる。故に、本発明の酸素化物合成用の触媒を、メタン合成用の触媒に転用しても良い。