特許第6183919号(P6183919)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183919
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】フィルム外装電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20170814BHJP
【FI】
   H01M2/02 K
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-521449(P2014-521449)
(86)(22)【出願日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】JP2013066569
(87)【国際公開番号】WO2013191125
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2016年5月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-136721(P2012-136721)
(32)【優先日】2012年6月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310010081
【氏名又は名称】NECエナジーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091971
【弁理士】
【氏名又は名称】米澤 明
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100088041
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 龍吉
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(72)【発明者】
【氏名】市川 智之
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 育央
【審査官】 佐藤 知絵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/015659(WO,A1)
【文献】 特開2000−223090(JP,A)
【文献】 国際公開第01/056093(WO,A1)
【文献】 特開2000−223088(JP,A)
【文献】 特開2004−103409(JP,A)
【文献】 特開2004−095217(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/036674(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と負極をセパレーターを介して対向した発電要素を、熱溶着層、バリア層、保護層を積層したフィルム状外装材内に収容し、
前記発電要素を収容したフィルム状外装材の周囲を封止した封止部を有するフィルム外装電池であって、
前記封止部に凝集溶着部と、前記凝集溶着部の発電要素収部側に隣接してフィルム状外装材同士の接着界面を有する第一の界面接着部を有することを特徴とするフィルム外装電池。
【請求項2】
前記第一の界面接着部の接着界面の少なくとも一部に湾曲部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のフィルム外装電池。
【請求項3】
前記発電要素収納部側に前記第一の界面接着部と連続した第二の界面接着部を有する樹脂塊が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載のフィルム外装電池。
【請求項4】
前記樹脂塊と前記封止部が一体化または隣接していることを特徴とする請求項記載のフィルム外装電池。
【請求項5】
前記第二の界面接着部に湾曲部が形成されていることを特徴とする請求項記載のフィ
ルム外装電池。
【請求項6】
前記第一の界面接着部と前記第二の界面接着部とが連続していることを特徴とする請求項5記載のフィルム外装電池。
【請求項7】
正極と負極をセパレーターを介して対向した発電要素を、溶着層、バリア層、保護層を
積層したフィルム状外装材に収容して、前記フィルム状外装材の周囲を封止して封止部を
形成したフィルム外装電池の製造方法であって、
前記封止部を両面から加熱部材を押し当てて加熱した後に、加熱部材を押し当てた部分
から取り除き、冷却部材を前記加熱部材を押し当てた部分とともに隣接する発電要素収納
部側の一部にも押し当てて冷却して、凝集溶着部と、前記凝集溶着部に隣接した界面接着
部と、を形成することを特徴とするフィルム外装電池の製造方法。
【請求項8】
前記の両面の加熱部材を、前記フィルム状外装材の面に対して対称に押し当てたことを
特徴とする請求項7記載のフィルム外装電池の製造方法。
【請求項9】
前記の両面の加熱部材の一方を、前記フィルム状外装材の面に対して他方よりも発電要
素側に近づけて押し当てたことを特徴とする請求項8記載のフィルム外装電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電要素がフィルム状外装材に収納された電池及びその製造方法に関し、特に長期信頼性が高いフィルム外装電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容量密度、質量密度の両者が大きなリチウムイオン電池は、携帯電話やデジタルカメラなどの携帯機器用のみならず、電動自転車、電動バイクや電気自動車等にも搭載している。電池の用途の多様化に伴い、電池の軽量化やデザインの自由度への要求も高まっている。
電池の外装体としては、金属容器やアルミニウム箔等と合成樹脂フィルムを積層したフィルム状外装材などを利用している。なかでも上記要求を満たす電池として、軽量かつ形状の自由度が高いフィルム状外装材を用いたフィルム外装電池の需要が高まっている。
【0003】
フィルム外装電池は、正極と負極を備える発電要素をフィルム状外装材で覆い、正極電極端子と負極電極端子とをフィルム状外装材の外部に導出するように密閉封止している。電池の外装体は内部の電解液の漏出や電池内部への水分の侵入を防ぐ役割があり、この封止部分は、電池の信頼性を左右するため、様々な工夫を行っている。
例えば、特許文献1は、図10で示すように、金属ラミネート樹脂フィルムケースの溶着部である凝集溶着部19の電極要素6の収納部6aの内側端部に樹脂塊32を設けている。これによって接合界面を曲面とし、応力を樹脂塊32の両端に分散されるようにすることで電池の気密性を高めることを提案している。
また、特許文献2には、フィルム状外装材の熱溶着部内側に溶着加工をしていない部分を設けている。これによって、樹脂のはみ出しによる切り欠き部状の部位の発生を防止して剥離強度の低下を防止することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−277066号公報
【特許文献2】特開2005−332726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の特許文献1に開示の電池構造は、充放電の繰り返しや高温環境下での使用等により、電池内部に気体が発生した場合には、以下の様な問題がある。
すなわち、図11で示す様に、発電要素6が膨らみ、フィルム状外装材4が変形し、樹脂塊32と熱溶着層13の境界に応力が集中する。その結果、熱溶着層13からバリア層12に向けて樹脂破断剥離部17による亀裂が生じる。
亀裂部分のバリア層12と電解液が接触することによりバリア層12のアルミニウム等の腐食が生じ、フィルム状外装材に穴、亀裂等の外部に通じる欠損が生じ、電解液が漏出するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、正極と負極をセパレーターを介して対向した発電要素を、熱溶着層、バリア層、保護層を積層したフィルム状外装材内に収容し、前記発電要素を収容したフィルム状外装材の周囲を封止した封止部を有するフィルム外装電池であって、 前記封止部に凝集溶着部と、前記凝集溶着部の発電要素収部側に隣接してフィルム状外装材同士の接着界面を有する第一の界面接着部を有するフィルム外装電池によって解決することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、フィルム状外装材の封止部の少なくとも一部に形成される凝集溶着部の発電要素側に隣接して界面接着部を設けている。したがって、電池内部で発生した気体によってフィルム外装電池が膨張した際には、封止部は界面接着部に沿って開裂する。その結果、凝集溶着部が損傷することはなく、フィルム状外装材の内層である金属製バリア層等のバリア層が電解液によって腐食することを防止できる。したがって、長期信頼性に優れたフィルム外装電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明のフィルム外装電池の一例を説明する図であり、平面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態を説明する図であり、図1のA−A’断面の一部を示す断面図である。
図3図3は、本発明のフィルム外装電池の封口工程を順に説明する図であり、図1におけるA−A’断面の断面図であり、図3Aは、加熱工程を説明し、図3Bは、冷却工程を説明する図であり、図3Cは、完了後の封口部を説明する図である。
図4図4は、本発明の他の実施の形態を説明する図であり、図1におけるA−A’断面の断面図である。
図5図5は、本発明の他の実施の形態を説明する図であり、図1におけるA−A’断面の断面図である。
図6図6は、本発明の他の実施の形態を説明する図であり、図1におけるA−A’断面の断面図である。
図7図7は、本発明の他の実施の形態を説明する図であり、図1におけるA−A’断面の断面図である。
図8図8は、本発明の実施例を説明する図であり、図1におけるA−A’断面の断面図である。
図9図9は、本発明の実施例を説明する図であり、図1におけるA−A’断面の断面図である。
図10図10は、従来のフィルム外装電池を説明する図であり、図1におけるA−A’断面に相当する部分の断面図である。
図11図11は、従来のフィルム外装電池を説明する図であり、図1におけるA−A’断面に相当する部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明のフィルム外装電池の一例を説明する図であり、平面図である。
フィルム外装電池1は、発電要素に装着した正極引出端子と負極引出端子のそれぞれに接合した正極電極端子2と負極電極端子3とを有している。
正極電極端子2および負極電極端子3をフィルム状外装材4から突出させ、フィルム状外装材4の周囲に熱溶着部5を形成して封口したものである。
【0010】
図1では、発電要素の収納部を設けた2枚の部材によって発電要素を収納した後に両部材の周囲の全てを封止した例を示しているが、他の封止方法によるものであってもよい。
例えば、一枚のフィルム状外装材を折り曲げて発電要素を収納したもの。あるいは、プレス成形によって形成した収納部に発電要素を収納した後に密閉したもの等を挙げることができる。
また、フィルム状外装材を筒状、あるいは封筒状に加工した部材に発電要素を収納した後に封口したものも用いることができる。
また、図1で説明した例のように同一の辺から正極電極端子2と負極電極端子3を取り出すものに限らない。それぞれの端子を対向する辺等のように別の辺から取り出したものであっても良い。
また、発電要素には、正極電極、セパレーター、負極電極を順に複数枚を積層した積層体、あるいは、帯状の積層体を巻回した巻回体等も用いることができる。
【0011】
図2は、本発明の図1に示すフィルム外装電池のA−A’での断面を示す一部を切り欠いた図である。
電池要素6を収納したフィルム状外装材4は、外面を保護する表面保護層11、気体の透過を阻止する金属バリア層等のバリア層12、電解液の浸透を防止し、フィルム状外装材を熱溶着する熱溶着層13で構成している。
表面保護層11には、フィルム状外装材4の加工時に破断しない程度の延性を有し、熱溶着層よりも融点または軟化点が高い合成樹脂材料を用いることができる。なかでも、加工時の延性が充分に得られ、高い融点,又は軟化点を持つ樹脂が好ましく、具体的にはナイロンまたはポリエチレンテレフタレートを挙げることができる。
【0012】
バリア層12は、気体の透過を阻止し、加工時に破断しない延性があれば、金属または金属酸化物の蒸着層、金属フィルム等の各種のものを用いることができる。特に、延性が大きく加工性に優れるアルミニウム又はアルミニウム合金の箔が望ましい。
熱溶着層13は、電解液に対して耐食性があって、熱溶着時の接着強度が優れた合成樹脂層を挙げことができる。具体的には、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系の合成樹脂、変成ポリオレフィン樹脂の一種または複数種を含むものを用いることができる。
【0013】
また、表面保護層11、バリア層12、熱溶着層13は、それぞれ1層のみから構成されるものに限らず、2層以上を積層したものであっても良い。複数層を積層したものの場合には特性の異なるものの複数層を積層したものであっても良い。
フィルム状外装材4の封止部18の電池要素6の収納部6a側には、凝集溶着層は熱溶着層が融点に達して溶融し、一体化することで生成する。熱溶着層が軟化・半溶解した状態で加圧することで数μm程度の熱溶着層の食い込みが起こり生成する界面接着部15が存在している。
また、界面接着部15の収納部6a側とは反対側に接して、熱溶着層が溶融状態となって形成された凝集溶着部19が存在している。
なお、以下の説明においては、界面接着部15が存在している範囲を界面接着領域15aと称し、凝集溶着部19が存在している範囲を凝集接着領域19aと称している。
【0014】
本発明のフィルム外装電池1は、凝集溶着部19に接して界面接着部15を有している。電池が膨れた際には、熱溶着層間に境界面が残る界面接着部15が境界面に沿って開裂するのみである。したがって、凝集接着部19に損傷が生じることはないのでバリア層が露出することを防止できる。
【0015】
図3は本発明のフィルム外装電池の製造方法を説明する図である。本発明の図1に示すフィルム外装電池をA−A’での断面を示す図であり、一部を切り欠いた図である。
図3Aに示すように、封止部18の両面から2本の加熱部材21によって押圧して熱溶着層の溶着面が溶融状態となるまで加熱する。
次いで、加熱部材21を取り除いた後に、図3Bに示すように両面から2本の冷却部材22によってエンボス加工部との境界部に位置する領域の冷却を行う。冷却領域は、加熱部材を押し当てた領域と、隣接する電池要素6の収納部6a側の領域である。これによって、凝集溶着部19が再結晶化で結晶粒が大きくなることを防止するとともに、加熱部材を押し当てた部分の近傍の封止部18に界面接着部15を形成する。
【0016】
次いで、図3Cに示すようにフィルム状外装材の外周の各辺を、電解液を注液する辺の電解液注液部を除いて熱溶着して封止するとともに、各辺の周囲を所定の形状に切断を行った。電解液注液部から電解液を注液の後に電解液注液部を他の部分と同様に熱溶着を行ってフィルム外装電池を得た。
【0017】
図4は、本発明の他の実施形態を説明する図である。本発明の図1に示すフィルム外装電池をA−A’での断面の一部を切り欠いた図である。
フィルム状外装材4の封止部18は凝集溶着部19と界面接着部15を備えており、界面接着部は湾曲部31を備えている。
この実施形態の電池は、加熱した2本の加熱部材(図示せず)によるフィルム状外装材の挟み込みに多少のずれを発生させて形成したものである。すなわち、封止部18の熱溶着層を軟化する領域にずれを発生させて形成した封止部を示している。
【0018】
この封止部は、一方の加熱部材のエンボス加工部側の端面が、他方よりもフィルム状外装材4の熱溶着層をエンボス加工部側へ押し出して形成したものである。
すなわち、電池要素6の収納部6a側へと押し出したことで界面接着部15に、その界面が湾曲した湾曲部31が生じたものである。
本発明では、相互の加熱部材の多少の位置ずれか生じた場合であっても、凝集溶着部19の電池要素の収納部6aには界面接着部15を同様に形成することができる。また湾曲によって長さが長くなった界面接着部15は開裂に対してより大きな抵抗力を発揮する。
【0019】
図5は、本発明の他の実施形態を説明する図である。本発明の図1に示すフィルム外装電池のA−A’断面の一部を切り欠いた図である。
フィルム状外装材4の封止部18に凝集溶着部19と界面接着部15を備えており、界面接着部に樹脂塊32を備えている。
この実施形態の電池は、図3で示したものに比べて2本の加熱部材(図示せず)の端面を、電池要素6の収納部6aのエンボス加工部と平坦部との境目の平坦部境目側へ近づけたものである。その結果、封止部よりも内側へ押し出した熱溶着層が発生し、それが樹脂塊32を形成したものと考えられる。
生じた樹脂塊32は界面接着部15と一体に生成しているので、界面接着部15は凝集溶着部19までの距離が長くなる。その結果、樹脂塊32の端部から始まる開裂が凝集溶着部19に達するまでの余裕度が大きくなるという作用を果たす。
【0020】
図6は、本発明の他の実施形態を説明する図である。本発明の図1に示すフィルム外装電池のA−A’断面の一部を切り欠いた図である。
この実施形態では、図3で示した方法に比べて以下の点が相違している。
すなわち、2本の加熱部材(図示せず)の端面を、電池要素6の収納部6aのエンボス加工部と平坦部との境目の平坦部境目側へ近づけている。更に、2本の加熱部材に多少の位置ずれを生じさせている。図6では、熱溶着層が溶融する領域にずれを生じさせた場合の封止部を説明している。
その結果、封止部よりも内側へ押し出した熱溶着層が発生し、それが樹脂塊32として形成されると共に、界面の湾曲部31を形成したものと考えられる。また、湾曲部31によって界面接着部15の長さが長くなり、開裂に対する強度が大きくなるとともに、樹脂塊32によって封止部18の強度が高められるものと考えられる。
【0021】
図6では、熱溶着時に押し出した樹脂塊32と、フィルム状外装材の内面の熱溶着層とが分離したように図示している。熱溶着層の境界がはっきりと分離するものではなく、押し出した樹脂塊とフィルム状外装材の内面の熱溶着層とは一体に生成している。これらは、他の図でも同様である。
【0022】
図7は、本発明の他の実施形態を説明する図である。本発明の図1に示すフィルム外装電池のA−A’断面の一部を切り欠いた図である。
図7の実施形態の電池は、図6で示したものとは2本の加熱部材の位置ずれの相違のために樹脂塊32が異なる部分に生成したものを示している。
すなわち、図6に示したものに比べて2本の加熱部材によるフィルム状外装材の挟み込みのずれ量をより大きくしている。また、加熱部の端面をエンボス加工部とフィルム状外装材の平坦部境目に近づけて封止している。その結果、電池内部側へ押し出す樹脂量を多くしたものである。したがって、加熱部材のずれ量に相当して樹脂が偏って押し出された結果、界面接着部15に湾曲部31を形成したものと考えられる。
界面接着部15に形成した湾曲部31は、図6で示したものと同様に界面接着部の界面の長さが長くなって開裂に対する強度が大きくなっている。その結果、凝集溶着部19の損傷に対する強度の低下を防止する上では大きな効果を奏するものである。
【0023】
図8は、本発明の他の実施形態を説明する図である。本発明の図1に示すフィルム外装電池をA−A’での断面の切り欠いた断面を示す図である。
図8の実施の形態は、フィルム状外装材の内部の圧力が上昇した結果、界面接着部15の端部に界面接着剥離部16を形成した状態を説明する図である。
このように、内部圧力の上昇時には、まず強度が小さい界面接着部15の発電要素側6aの内部に近い部分が端部が凝集溶着部19より強度が小さいために、選択的に開裂するものと考えられる。
その結果、界面接着剥離部16を生じるものと考えられる。界面接着剥離部16が生じても界面接着部15の全体の開裂、あるいは凝集溶着部19の損傷、アルミニウム等のバリア層12が露出することはない。
【0024】
図9は、本発明の他の実施形態を説明する図である。本発明の図1に示すフィルム外装電池のA−A’断面の一部を切り欠いた図である。
図9の実施の形態は、フィルム状外装材の内部の圧力が上昇した結果、界面接着部15の端部に設けた樹脂塊32に界面接着剥離部16が生成した状態を説明する図である。
内部圧力の上昇時には、まず界面接着部15の発電要素側の内部に近い部分の端部に、界面接着部15の端部が選択的に開裂する。その結果、界面接着剥離部16が生成するものと考えられる。界面接着剥離部16が生じても界面接着部15の全体の剥離や凝集溶着部19の損傷、あるいはアルミニウム等のバリア層12が露出することはない。
加えて、この例で示す様に界面接着部15に接して樹脂塊32を形成しているので、樹脂塊32の内部で開裂が止まる結果、界面接着部15には影響を及ぼさない電池を提供することができる。
【実施例】
【0025】
以下に、本発明の実施例,比較例を示し説明する。
実施例1
(正極の作製)
マンガン酸リチウム(LiMn2O4)粉末92質量部、カーボンブラック5質量部、ポリフッ化ビニリデン3質量部をNMPと共に混練して正極スラリーを調製した。得られた正極スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に塗布乾燥の後、ロールによって正極面を押圧した。
次いで、正極活物質を塗布したアルミニウム箔を切断し、長さ105mm、幅55mmの正極に、長さ15mm、幅10mmの正極タブを一体に形成した正極電極を作製した。
【0026】
(負極の作製)
グラファイト91質量部、カーボンブラック1質量部、ポリフッ化ビニリデン8質量部をNMPと共に混練して負極スラリーを調製した。得られた負極スラリーを厚さ10μmの銅箔の両面に塗布乾燥の後、ロールによって負極面を押圧した。
次いで、負極活物質を塗布した銅箔を切断し、長さ109mm、幅59mmの負極に、長さ12mm、幅10mmの負極タブを一体に形成した負極電極を作製した。
【0027】
(発電要素の作製)
作製した正極電極と負極電極を、長さ111mm、幅59mm、厚さ25μmのポリプロピレン製のセパレーターを介して最外層が負極となるように交互に積層して発電要素を作製した。それぞれの積層枚数は、正極電極15枚、負極電極16枚とした。
フィルム状外装体の外部に導出するための正極リード端子として長さ30mm、幅10mm、厚さ200μmのアルミニウム箔を用いた。また、封口時にフィルム状外装材と一体となる合成樹脂層を形成したアルミリード端子を積層した正極電極の正極タブに接合した。
また、負極電極にも負極リード端子として長さ30mm、幅10mm、厚さ200μmの銅箔を用いた。また、封口時にフィルム状外装材と一体となる合成樹脂層を形成した銅製リード端子を積層した負極タブに接合した。
【0028】
(フィルム外装電池の作製)
フィルム外装材としては、以下の積層フィルムを用いた。
表面保護層:厚さ25μmのナイロン製
バリア層:厚さ40μmのアルミニウム箔
接着性内面層:厚さ50μmの融点145℃、軟化点120℃のランダム−ブロック−ランダム三層構造を有するポリプロピレンフィルム
上記の長さ180mm、幅100mmの厚さ115μmのフィルム状外装材を2枚用意した。このフィルム状外装材の中央に長さ120mm、幅70mm、深さ3mmの凹部をエンボス加工により形成した。
【0029】
エンボス加工によって作製した凹部に発電要素を収納し、1辺から正極リード端子、負極リード端子をフィルム状外装材の外部に導出した。
リード端子を取り出す辺と、リード端子を取り出す辺と接する2辺を封止して、正極電極端子、負極電極端子を形成した。
次いで、両電極端子を取り出した辺と対向する辺を注液辺として、電解液を注液して最後に注液辺を封止した。電解液としては、エチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートからなる混合溶媒に、リチウム塩としてLiPF6を含む電解液を使用した。
【0030】
端子辺は温度180℃の幅5mmの2本の加熱部材を、加熱部材のエンボス加工部側の端面が、フィルム状外装材のエンボス加工部と平坦部境目から平坦部側へ0.5mm離れた位置に配置した。次いで、2本の加熱部材間の間隔が0.2mmとなるように6秒間挟み込んで封止した。
この後、25℃の幅5.6mmの2本の冷却部材を、2本の冷却部材のエンボス加工部側の端面がエンボス加工部と平坦部境目となる位置に配置した。次いで、2本の冷却部材間の間隔が0.2mmとなるようにして1.5秒間挟み込んで冷却した。
【0031】
側辺には温度160℃の幅7.5mmの2本の加熱部材を、加熱部材のエンボス加工部側の端面を、フィルム状外装材のエンボス加工部と平坦部境目から0.5mm離れた位置に配置した。加熱部材の間隔が0.1mmとなるように5秒間挟み込んで加熱して封止した。
この後、室温の幅10mmの2本の冷却部材を、2本の冷却部材のエンボス加工部側の端面がエンボス加工部とフィルム外装平坦部境目になる位置に配置した。冷却部材の間隔が0.15mmとなるように3秒間挟み込んで冷却した。
上記のようにして作製した注液前のフィルム外装電池に、注液辺より電解液を注入した。
この後、注液辺を170℃に加熱した幅7.5mmの2本の加熱部材を、加熱部材のエンボス加工部側の端面がエンボス加工部とフィルム状外装材の平坦部境目から0.5mm離れた位置に配置した。次いで、加熱部材の間隔が0.075mmとなるように5秒間挟み込んで加熱して封止した。
この後、室温の幅10mmの2本の冷却棒を、2本の冷却部材のエンボス加工部側の端面がエンボス加工部とフィルム状外装材の平坦部境目になる位置に配置した。次いで、冷却棒の間隔0.15mmで3秒間挟み込んで冷却した。
最後に側辺および注液辺の溶着部分を5mm残し、その他の部分を切断して外形を整えて、図2に示す断面構造を有するフィルム外装電池を得た。
【0032】
本発明では、溶着個所の温度特性が異なる点を考慮して、溶着個所に応じた温度設定によってすべての溶着個所で、凝集溶着層と界面接着層が形成されるようにした。
【0033】
実施例2
実施例1における2本の加熱部材のうち一方の加熱部材を加熱部材の端面がエンボス加工部とフィルム外装材の平坦部境目から0.5mmに配置した。また、他方の加熱部材を加熱部材の端面がエンボス加工部とフィルム外装材の平坦部境目から平坦部側へ0.6mmに配置して封止を行った。
その他の条件は実施例1と同様にしてフィルム外装電池を作製した。その結果、図4に断面構造を持つフィルム外装電池を得た。
【0034】
加熱した2本の加熱部材によるフィルム状外装材の挟み込みに、多少のずれを生じさせたことで封止部の熱溶着層が軟化する位置にずれが生じた。
その結果、加熱部材のエンボス加工部側の端面がエンボス加工部とフィルム状外装材の平坦部境目により近い側に接しているフィルム状外装材の熱溶着層が押し出された。それによって他方の加熱部材が接しているフィルム状外装材の熱溶着層より電池内部側へ押し出された。このために界面接着部が現れる界面が歪曲した歪曲部が形成されるためと考えられる。
作製した電池を実施例1と同様に劣化加速試験を行いその結果を表1、表2に示す。
【0035】
実施例3
実施例1における加熱部材を、加熱部材の端面がエンボス加工部とフィルム状外装材の平坦部境目から平坦部側へ0.3mmとして封止を行った。その他の条件は実施例1と同じにしてフィルム外装電池を作製した。その結果、図5に示す断面構造を持つフィルム外装電池を得た。
これは加熱部材の端面をエンボス加工部とフィルム状外装材との境目から0.3mmの距離だけフィルム状外装材の平坦部との境目側へ近づけて封止したものである。
その結果、封止部よりも内側へ押し出した熱溶着層が発生し、それが樹脂塊32として形成したためである。
作製した電池を実施例1と同様に劣化加速試験を行いその結果を表1、表2に示す。
【0036】
実施例4
実施例3における一方の加熱部材を加熱部材の端面がエンボス加工部とフィルム状外装材の平坦部との境目から0.3mmとした。
また、他方の加熱部材を加熱部材のエンボス加工部側の端面をエンボス加工部とフィルム状外装材の平坦部境目から平坦部側へ0.4mmとなるようにして封止を行った。その他の条件は実施例1と同様にしてフィルム外装電池を作製した。その結果、図6に示す断面構造を持つフィルム外装電池を得た。
作製した電池を実施例1と同様に劣化加速試験を行いその結果を表1、表2に示す。
【0037】
この実施例の電池では、加熱した2本の加熱部材によるフィルム状外装材の挟み込みに多少のずれを生じさせる結果、封止部の熱溶着層の軟化される位置にずれを生じている。 そして、加熱部材のエンボス加工部側の端面がエンボス加工部とフィルム状外装材の平坦部との境目により近い側に接しているフィルム状外装材の熱溶着層が押し出されることとなる。すなわち、他方の加熱部材が接しているフィルム状外装材の熱溶着層より電池内部側へ押し出されることとなる。
更に、界面接着部に現れる界面31が歪曲し、その歪曲部が樹脂塊32にまで及んでいるためと考えられる。
作製した電池を実施例1と同様に劣化加速試験を行いその結果を表1、表2に示す。
【0038】
実施例5
実施例4における一方の加熱部材を、加熱部材の端面がエンボス加工部とフィルム状外装材の平坦部境目から平坦部側へ0.2mm移動した。また、他方の加熱部材を加熱部材のエンボス加工部側の端面がエンボス加工部とフィルム状外装材の平坦部境目から平坦部側へ0.4mmに配置して封止を行った。
その他の条件は実施例3と同じにしてフィルム外装電池を作製した。その結果、図7に示す断面構造を持つフィルム外装電池を得た。
2本の加熱部材によるフィルム状外装材の挟み込みのズレをより大きくしたので加熱部材の端面がエンボス加工部とフィルム状外装材の平坦部境目に近づけて封止することとなる。
その結果、加熱部材のずれの分だけ、樹脂が偏って押し出されるとともに界面接着部に現れる界面が歪曲しためと考えられる。
作製した電池を実施例1と同様に劣化加速試験を行いその結果を表1、表2に示す。
【0039】
実施例6
実施例1における各冷却部材による冷却を、加熱部材による加熱熱完了後4秒後とした点を除き、実施例1と同様にして劣化加速試験を行いその結果を表1、表2に示す。
【0040】
実施例7
実施例2に実施例1における各冷却部材による冷却を、加熱部材による加熱熱完了後4秒後とした点を除き、実施例1と同様にして劣化加速試験を行いその結果を表1、表2に示す。
【0041】
実施例8
実施例3における各冷却部材による冷却を、加熱部材による加熱熱完了後4秒後とした点を除き、実施例1と同様にして劣化加速試験を行いその結果を表1、表2に示す。
【0042】
実施例9
実施例4における各冷却部材による冷却を加熱部材による加熱熱完了後4秒後とした点を除き実施例1と同様にして劣化加速試験を行いその結果を表1、表2に示す。
【0043】
実施例10
実施例5における各冷却部材による冷却を、加熱部材による加熱熱完了後4秒後とした点を除き、実施例1と同様にして劣化加速試験を行いその結果を表1、表2に示す。
【0044】
比較例1
封止部の熱溶着時の加熱部材の温度を端子取出辺は200℃、側辺は180℃、注液辺は190℃と設定することで、それぞれの封止部の熱溶着部の温度を155〜165℃にした。
これによって、熱溶着部の溶着温度を融点より十分高い温度としたことで、封止部および樹脂塊が結晶部のみからなるようにした。
その他の条件は実施例3と同じにしてフィルム外装電池を作製した。その結果、図10に示すように凝集溶着部19には、樹脂塊32が形成された。
実施例1と同様にして劣化加速試験を行いその結果を表1、表2に示す。
【0045】
比較例2
比較例1における各冷却部材による冷却を過熱完了後4秒後とした点を除き比較例1と同様にして電池を作製した。
実施例1と同様にして劣化加速試験を行いその結果を表1、表2に示す。
【0046】
評価試験方法1
引張り試験結果
作製した電池を以下の評価方法によって試験を行ってその結果を表に示す。
側面部のフィルム外装材を熱溶着方向に対して垂直方向に幅15mm、長さ50mmに切り取り、引っ張り試験用の試験片を作製した。この試験片を未溶着部2枚が一直線になるよう折り曲げ、T字型の試験片を作製した。このT字型試験片の未溶着部の一方を固定し、もう一方を引っ張りゲージで10mm/minの速度で鉛直方向に引っ張り、最大の引っ張り強度とアルミニウム層の露出が見られる位置を確認した。その結果を表1に示す。
【0047】
引っ張り強度については、加熱後の冷却までの時間が1秒間である実施例1〜5、および比較例1においては140N/15mm前後であった。また、加熱後の冷却までの時間が4秒間である実施例6〜10および比較例2においては110N/15mm前後となった。これは、冷却までの間隔が開くことにより熱溶着層の再結晶化が進み、凝集溶着部の脆化が進んだものと考えられる。
アルミニウム層の露出までの距離については、比較例1、2に対し、実施例1、3では0.5mm、実施例2は0.6mm、実施例4では0.7mm、実施例5では0.9mmとなった。
また、比較例1,2に対し、実施例1〜10は形成された界面接着層が裂けて凝縮溶着層に達してからアルミニウム層の露出が起きていた。また、実施例2,4,5,7,9,10においては界面接着層が湾曲することで裂ける距離が延びるため、実施例1、3、6、8よりも金属層露出までの距離が大きいためと考えられる。
【0048】
表1
引っ張り強度(N/15mm) アルミニウム層露出位置(mm)
実施例1 143 0.5
実施例2 141 0.6
実施例3 138 0.5
実施例4 142 0.8
実施例5 144 0.9
実施例6 112 0.5
実施例7 115 0.6
実施例8 114 0.5
実施例9 112 0.8
実施例10 116 0.9
比較例1 140 0.0
比較例2 142 0.0
【0049】
評価試験方法2
劣化加速試験結果
以上の実施例1〜10および比較例1,2についてそれぞれ40個ずつを満充電状態に充電した後に以下の試験を行った。
アルミニウム製の治具で電池の厚さ方向を定寸で固定することで溶着部分付近のみが膨れるようにした。
20個を70℃の環境下に2ヶ月間、残り20個を85℃の環境下に2ヶ月間に放置することで電池の劣化加速試験を行った。
これらの試験電池について、試験前に対して体積比10%以上の膨れの有無、外装体の封止部付近にリトマス試験紙を貼りつけて電解液の漏液の有無を確認した。
外装体の膨れが確認されたものについては図1におけるA−A’断面状態の観察を行った。
【0050】
70℃劣化評価結果を表2に示し、85℃評価結果を表3に示す。
なお、治具で固定することで電池の厚さが変わらない状態で試験電池が10%以上膨れた場合、膨れにより溶着部分に負荷がかかり始めることを確認した。
また、70℃劣化試験では実施例1〜10においては漏液が確認できなかったのに対し、比較例1においては3個、比較例2においては5個について漏液を確認した。
【0051】
一方、85℃劣化試験では実施例4、5においては漏液が確認できなかった。
以下の実施例では、それぞれ、以下の個数の漏液を確認した。
実施例1は5個、実施例2は3個、実施例3は4個、実施例6は9個、実施例7は7個、実施例8は9個、比較例1は14個、比較例2は18個
【0052】
70℃劣化試験後に断面積を観察した結果、実施例1、2、6、7において膨れを観察したものはいずれも図8のように界面接着部に界面溶着剥離部を形成したものであった。
また、アルミニウム層の露出はなかった。
また、実施例3〜5、8〜10において膨れを確認したものはいずれも図8のように界面接着部15に界面溶着剥離部16を形成していたが、アルミニウム層の露出はなかった。
これは、封止部や樹脂塊に一体化せずに接着している界面接着部15が存在しているものと考えられる。
前記接着部15は、加熱後の冷却までの時間が、熱溶着層や一体化して接着した凝集溶着部19より強度が小さいために、界面接着部15の端部が優先的に剥離するためであると考えられる。
加えて、界面接着部に接して樹脂塊が形成されているものについては樹脂塊中の面で剥離が止まっており、封止部にすら到達していないものも確認できた。
さらに、実施例2、4、5、7、9、10のように界面接着部に歪曲部を形成したものは、剥離距離は同じであるが、湾曲により界面接着層の距離が延びるため、それぞれ実施例1、3、6,8よりも界面接着部の接着力が大きなものとなる。
【0053】
また、85℃劣化試験後に断面を観察した結果、実施例1〜3、6〜8において膨れを確認したもののうち、漏液があるものは界面溶着剥離部が凝集接着面まで達していた。また、その部分から樹脂層の破断が起きてアルミニウム層が露出しており、電解液による腐食を確認した。
一方、漏液がないものは界面溶着剥離部が凝集溶着部まで達しておらず、アルミニウム層の露出はなかった。
実施例1〜3と実施例6〜8を比較すると、実施例6〜8においては冷却までの間隔が長くなったことで熱溶着層の脆化が進んだものと考えられる。そして、脆化が進み、凝集接着面に達した場合に熱溶着層の亀裂が生じやすくなっているものと考えられる。
【0054】
また、実施例4、5、9、10において膨れを確認したものいずれも図9のように界面溶着剥離部が凝集接着面まで達しておらず、アルミニウム層の露出はなかった。これは、樹脂塊32が存在するとともに界面接着部が湾曲することで界面溶着剥離部が凝集接着面まで達する距離が他の例に比べて長いことによるものと考えられる。
【0055】
一方、比較例1、2において膨れの観察されたものうち、それぞれ3個、5個は図11のように樹脂塊と封止部とは反対側の熱溶着層の境目に亀裂が生じ、アルミニウム層が内部側に露出しており、電解液による腐食が確認された。
【0056】
表2
漏液数 膨れの有無 アルミニウム層の腐食
実施例1 0 7 0
実施例2 0 6 0
実施例3 0 5 0
実施例4 0 8 0
実施例5 0 6 0
実施例6 0 5 0
実施例7 0 6 0
実施例8 0 7 0
実施例9 0 6 0
実施例10 0 7 0
比較例1 3 11 3
比較例2 5 14 5
【0057】
表3
漏液数 膨れの有無 アルミニウム層の腐食
実施例1 5 20 5
実施例2 3 20 3
実施例3 4 20 4
実施例4 0 20 0
実施例5 0 20 0
実施例6 9 20 9
実施例7 7 20 7
実施例8 0 20 9
実施例9 0 20 0
実施例10 0 20 0
比較例1 14 20 14
比較例2 18 20 18
【産業上の利用可能性】
【0058】
保護層、金属箔等のバリア層、熱溶着層を積層したフィルム状外装材の封止部の少なくとも一部に形成される凝集溶着部の発電要素側に隣接して界面接着部を設けたので、凝集溶着部の端部に形成される凝集塊や凝集ダマ等が開裂の基点となることが防止できる結果、電池内部で発生した気体によってフィルム状外装電池が膨張した際にも、フィルム状外装材の金属箔等のバリア層が露出して電解液によって腐食することを防ぎ、長期信頼性に優れたフィルム外装電池を提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・フィルム外装電池、2・・・正極電極端子、3・・・負極電極端子、4・・・フィルム状外装材、6・・・電池要素、6a・・・電池要素の収納部、11・・・表面保護層、12・・・バリア層、13・・・熱溶着層、15・・・界面接着部、16・・・界面溶着剥離部、17・・・樹脂破断剥離部、18・・・封止部、19・・・凝集溶着部、21・・・加熱部材、22・・・冷却部材、32・・・樹脂塊
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11