(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183923
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】オイルフェンス装置
(51)【国際特許分類】
E02B 15/06 20060101AFI20170814BHJP
B63B 35/32 20060101ALN20170814BHJP
【FI】
E02B15/06 E
!B63B35/32 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-92499(P2015-92499)
(22)【出願日】2015年4月30日
(65)【公開番号】特開2015-227607(P2015-227607A)
(43)【公開日】2015年12月17日
【審査請求日】2016年3月31日
(31)【優先権主張番号】特願2014-97477(P2014-97477)
(32)【優先日】2014年5月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】593066634
【氏名又は名称】海和テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(72)【発明者】
【氏名】小坂 康之
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−153009(JP,A)
【文献】
特開昭54−096233(JP,A)
【文献】
実開平02−057198(JP,U)
【文献】
特開2007−085128(JP,A)
【文献】
特開2001−348854(JP,A)
【文献】
米国特許第05064309(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 15/00〜 15/10
B63B 1/00〜 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の浮沈式のオイルフェンスを複数のコネクタを介して接続して、港湾内の係留設備に係留されたタンカーと、前記係留設備とを取り囲む構成とされ、
前記オイルフェンスは、フェンス上下方向に一定幅を有する帯状体を備え、前記帯状体のフェンス上下方向の中間位置にフェンス長手方向に沿ってフロートが一体に設けられ、前記帯状体の下部にはフェンス長手方向に沿って多数のウエイトが間隔をあけて設けられたものであり、
前記複数のコネクタのうち2つのコネクタに対して設けられている2つの第1給排気接続部と、前記複数のコネクタのうち前記2つのコネクタを除く残りのコネクタに対して設けられている複数の連通接続部と、前記2つの第1給排気接続部の間の中間位置に設けられている2つの強制沈下部とを備え、
前記各第1給排気接続部は、隣り合う前記フロートの各端部に一端部がそれぞれ連通されている2つの給排気ホースを有し、前記各給排気ホースの他端部が前記給排気ホースを通じての前記フロートの給排気制御を行うオイルフェンス操作装置に接続されているものであり、
前記各連通接続部は、隣り合う前記フロートを相互に連通する連通ホースを有するものであり、
前記各強制沈下部は、前記コネクタを中央としてフェンス長手方向の一定範囲で前記ウエイトが他の部分よりも、単位長さ当たりの重量が大きくなるように配置されているものであるオイルフェンス装置であって、
前記オイルフェンスの、フェンス長手方向の一部であって係留されている前記タンカーの船首に対応する部分に、前記タンカーが緊急避難するためのタンカー緊急避難部を設け、
前記タンカー緊急避難部は、他の部分よりも単位長さ当たりの重量が大きくなるように前記ウエイトが配置されている緊急沈下部を備えることを特徴とするオイルフェンス装置。
【請求項2】
前記タンカー緊急避難部は、さらに、前記緊急沈下部からフェンス長手方向に離れて設けられている第2給排気接続部を備え、
前記第2給排気接続部は、隣り合う前記フロートを相互に連通する連通ホースと、前記連通ホースに一端部が接続され他端部が前記オイルフェンス操作装置に接続されている給排気ホースとを備える、請求項1記載のオイルフェンス装置。
【請求項3】
前記タンカーの船首に対応する部分は、前記緊急沈下部と前記第2給排気接続部との間の部分である、請求項2記載のオイルフェンス装置。
【請求項4】
前記他の部分は、前記強制沈下部付近を除く部分である、請求項1〜3のいずれか1つに記載のオイルフェンス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてタンカーが港湾内の係留設備に係留された状態で、前記タンカーを取り囲むオイルフェンス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、タンカーが港湾内の係留設備に係留された状態で、浮沈式オイルフェンスで前記タンカーを取り囲むオイルフェンス装置は知られている(例えば特許文献1参照)。このようなオイルフェンス装置は、例えば
図8に示すように、複数の浮沈式のオイルフェンス(長さは異なるがすべて101として表示する)101を複数のコネクタを介して接続して、港湾内の係留設備103に係留されたタンカーTと、係留設備103とを取り囲む構成とされている。オイルフェンス101は、フェンス上下方向(深さ方向)に一定幅を有する帯状体を有し、この帯状体のフェンス上下方向の中間位置にフロートがフェンス長手方向に沿って一体に設けられ、下部にフェンス長手方向に沿って多数のウエイトが間隔を開けて設けられている。
【0003】
そして、前記複数のコネクタのうち2つのコネクタに対して給排気ホースが設けられて、前記フロートの給排気を行う給排気接続部102Aとされ、残りのコネクタに対して隣り合うフロートの端部同士を接続する連通ホースが設けられて、連通接続部102Bとされている。そして、前記給排気ホースを通じて空気を給気したり排気したりすることで、浮沈式オイルフェンスを浮上させたり沈下させたりするようになっている。その場合、給排気接続部102Aの間の中間位置が、沈下の際に最も早く沈下する強制沈下部P1,P2とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−348854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述したようなオイルフェンス装置では、津波発生時などの、タンカーを避難させる必要がある緊急事態においては、浮沈式オイルフェンス101を沈下させ、タンカーTを速やかに出航させて、避難させたい要求があるにもかかわらず、タンカーが通過できる程度まで沈下させるのに25分間程度を要しているのが現状である。そのため、オイルフェンス101をより早く沈下させて、タンカーTの速やかな緊急避難を行えることが望まれている。
【0006】
本発明は、速やかに沈下させることできるタンカー緊急避難部を形成し、津波発生時などの場合において、速やかなタンカーの避難を実現することができるオイルフェンス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、複数の浮沈式のオイルフェンスを
複数のコネクタを介して接続して、港湾内の係留設備に係留されたタンカーと、前記係留設備とを取り囲む構成とされ、前記オイルフェンスは、フェンス上下方向に一定幅を有する帯状体を備え、前記帯状体のフェンス上下方向の中間位置にフェンス長手方向に沿ってフロートが一体に設けられ、前記帯状体の下部にはフェンス長手方向に沿って多数のウエイトが間隔をあけて
設けられたものであり、前記複数のコネクタのうち2つのコネクタに対して設けられている2つの第1給排気接続部と、前記複数のコネクタのうち前記2つのコネクタを除く残りのコネクタに対して設けられている複数の連通接続部と、前記2つの第1給排気接続部の間の中間位置に設けられている2つの強制沈下部とを備え、前記各第1給排気接続部は、隣り合う前記フロートの各端部に一端部がそれぞれ連通されている2つの給排気ホースを有し、前記各給排気ホースの他端部が前記給排気ホースを通じての前記フロートの給排気制御を行うオイルフェンス操作装置に接続されているものであり、前記各連通接続部は、隣り合う前記フロートを相互に連通する連通ホースを有するものであり、前記各強制沈下部は、前記コネクタを中央としてフェンス長手方向の一定範囲で前記ウエイトが他の部分よりも、単位長さ当たりの重量が大きくなるように配置されているものであるオイルフェンス装置であって、前記オイルフェンスの、フェンス長手方向の一部であって係留されている前記タンカーの船首に対応する部分に、前記タンカーが緊急避難するためのタンカー緊急避難部を設け、前記タンカー緊急避難部は、他の部分よりも単位長さ当たりの重量が大きくなるように前記ウエイトが配置されている緊急沈下部を備えることを特徴とする。ここで、「他の部分よりも単位長さ当たりの重量が大きくなるように前記ウエイトが配置されている」とは、他の部分よりもウエイトが密に配置されていたり(つまりウエイトの配列間隔が他の部分の配列間隔よりも小さくなっていたり)、他の部分よりも重量が大きいウエイトが配置されていたりすることを意味する。
【0008】
このようにすれば、タンカーの船首対応する部分に設けられているタンカー緊急避難部が、他の部分よりも早く強制的に沈下されるので、津波発生時などの緊急時に、前記タンカー緊急避難部を通じてタンカーを速やかに出航させて退避させることができる。ウエイトの配列間隔が小さくなるタンカー緊急避難部用の緊急沈下部を設けているだけであるので、コスト面においても有利である。
【0009】
請求項2に記載のように、前記タンカー緊急避難部は、さらに、前記緊急沈下部からフェンス長手方向に離れて
設けられる第2給排気接続部を
備え、前記第2給排気接続部は、隣り合う前記フロートを相互に連通する連通ホースと、前記連通ホースに一端部が接続され他端部が前記オイルフェンス操作装置に接続される給排気ホースとを備えることが望ましい。
【0010】
このようにすれば、ウエイトの配列間隔が小さくなるタンカー緊急避難部用の緊急沈下部と、タンカー緊急避難部用の給排気接続部との併用により、速やかな沈下を実現できる。
【0011】
請求項3に記載のように、前記タンカーの船首に対応する部分は、前記緊急沈下部と前記
第2給排気接続部との間の部分である、構成とすることができる。
【0012】
このようにすれば、タンカーを速やかに避難させる上で有利となる。
【0013】
また、本発明は、強制沈下部と、給排気接続部とを有する既設のオイルフェンス装置に適用することも可能で、その場合は、請求項4のようになる。
【0014】
請求項4に記載のように、前記他の部分は、前記強制沈下部付近を除く部分である、構成とすることができる。ここで、「前記強制沈下部付近を除く」と
は、緊急沈下部と前記強制沈下部とで単位長さ当たりの重量が等しくなるようにウエイトが配置されている場合を含むことを意味する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、他の部分よりも早く強制的に沈下させられるタンカー緊急避難部を、オイルフェンスの、フェンス長手方向の一部であって係留されている前記タンカーの船首に対応する部分に設けたので、津波発生時などの緊急時に、前記タンカー緊急避難部を通じてタンカーを早期に出航させて退避させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】係留設備にタンカーが係留された状態を示す、本発明のオイルフェンス装置を概略的に示す平面図である。
【
図2】前記オイルフェンス装置の強制沈下部(
図1のP1,P2参照)の説明図である。
【
図3】前記オイルフェンス装置の連通接続部の詳細図である。
【
図4】前記オイルフェンス装置の給排気接続部の詳細図である。
【
図5】前記オイルフェンス装置の緊急沈下部(
図1のP3参照)の詳細図である。
【
図6】前記オイルフェンス装置のウエイトの配置の説明図である。
【
図7】緊急沈下部でのウエイトの配置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0018】
図1は係留設備にタンカーが係留された状態を示す、本発明のオイルフェンス装置を概略的に示す平面図である。
【0019】
図1に示すように、タンカーTは係留設備11に係留され、油荷役作業が行われる。係留設備11は、大型のプラットホーム12を中心に、中型のプラットホーム13、小型のプラットホーム14が間隔を開けて配置され、各プラットホーム12〜14の間が桟橋15で接続される構成となっている。具体的には図示していないが、陸上に設置された油タンクなどの油貯留設備からの油給排用配管が大型のプラットホーム12を通じてタンカーTの油送出口に接続される。これにより、タンカーTと油貯留設備との間で、油の給排が行われる。
【0020】
フェンス長さ(例えば、100m,95m,75m)が異なる複数種類の浮沈式オイルフェンス1(長さが異なってもすべて1として表示する)を、コネクタ2を介して接続することで、タンカーTおよび係留設備11の周囲を囲むオイルフェンス装置3が構成されている。各オイルフェンス1は、多数のアンカー4付きロープ5でもって張設され、移動しないようにされている。
【0021】
各オイルフェンス1は、例えば
図2に示すように、フェンス上下方向(深さ方向)に一定幅を有する帯状体6を備え、帯状体6のフェンス上下方向の中間位置においてフロート7がフェンス長手方向に沿って一体に設けられている。帯状体6は、例えば補強基布を芯体として内蔵するゴムシートで、帯状体6の下部にはフェンス長手方向に沿って多数のウエイト8が間隔を開けて設けられている。
【0022】
隣り合うオイルフェンス1はコネクタ2によって接続されている。コネクタ2は、
図3に示すように隣り合うフロート7を相互に連通する連通ホース9Bが設けられ隣り合うフロート7の同士を連通する連通接続部10Aとなるか、
図4に示すように、フロート7の給排気を行う給排気ホース9Aが設けられている第1給排気接続部10Bとなるか、
図5に示すように、フロート7の給排気を行う給排気ホース9Aと隣り合うフロート7を相互に連通する連通ホース9Bとが設けられている第2給排気接続部10Cとなる構成とされている。 連通接続部10Aは、隣り合うフロート7を相互に連通する一般接続部になる場合と、後述する強制沈下部P1,P2を構成する場合とがある。
【0023】
第1給排気接続部10Bは、各給排気ホース9Aの上端部がフロート7の端部に接続され、下端部が具体的に図示していないが、例えばプラットホーム14上に配置されるオイルフェンス操作装置から延びる給排気ホースのホース端部が接続され、オイルフェンス操作装置によって各給排気ホース9Aを通じての、フロート7の給排気制御が行われる。
【0024】
第2給排気接続部10Cは、従来設けられていた2つの第1給排気接続部10Bに加えて、係留されているタンカーTの船首に対応する部位に、新たに設けられる、もう1つの給排気接続部で、フロート7の給排気を行う給排気ホース9Aが、隣り合うフロート7を相互に連通する連通ホース9Bに接続されている。この第2給排気接続部10Cは、隣り合うフロート7が連通ホース9Bにて相互に連通された状態となっているので、給排気を行っていない状態では、隣り合うフロート7の同士を連通するだけの一般接続部と同じである。この第2給排気接続部10Cが、タンカーTが緊急避難するためのタンカー緊急避難部Aの一部を構成することになる、緊急避難部専用の給排気接続部である。なお、第2給排気接続部10Cにおいて、給排気ホース9Aは2本設ける必要はなく、1本とすることも可能である。
【0025】
ウエイト8は、大部分においては、
図6に示すように、第1の間隔L1でもって規則的に配置され、強制沈下部P1,P2となる部分や緊急沈下部(強制沈下部P3)となる部分では、
図7に示すように、ウエイト8の配列間隔が第1の間隔L1よりも小さい第2の間隔L2でもって規則的に配置される。この実施の形態では、第2の間隔L2は、第1の間隔L1の1/2程度としている。
【0026】
強制沈下部P1,P2となる部分では、連通接続部10Aを挟んで、一定長さだけウエイト8の配列間隔が第2の間隔L2となっている。緊急沈下部(強制沈下部P3)となる部分では、第2給排気接続部10Cからフェンス長手方向に沿ってタンカーTが係留されている側に少し離れた部分でフェンス長手方向に沿って一定長さL3(
図1参照)だけ、第2の間隔L2となっている。この部分が緊急沈下部となる。この緊急沈下部では、強制沈下部P1,P2と同様に、ウエイト8が他の部分よりも密に配置されていることになり、その中央位置が強制沈下部P3となる。
【0027】
よって、フロート7内の空気を排気すると、第2の間隔L2でもってウエイト8が設けられている緊急沈下部(強制沈下部P3)は、第2の給排気接続部10C(緊急避難部専用の給排気接続部)を設けていることによって、第1の間隔L1でもってウエイト8が設けられている他の部分や強制沈下部P1,P2よりも早く沈下する。この強制沈下部P3と、第2給排気接続部10Cとの間が、係留されているタンカーTの船首が対向し、タンカーTが緊急避難するためのタンカー緊急避難部Aを形成している。この早い沈下によって、従来よりも短い時間での、タンカーTの避難を実現することができる。
【0028】
なお、タンカーの出航が速やかに行えるのであればよいのであるから、緊急沈下部(強制沈下部P3)と第2給排気接続部10Cとの間に、係留されているタンカーTの船首が対向している必要はなく、例えば係留されているタンカーTの船首が、最も早く沈下することになる強制沈下部P3に対向する配置としてもよい。つまり、係留されているタンカーTの船首が対応していればよい。
【0029】
前記オイルフェンス装置3によれば、タンカーTが港湾内に入港して係留設備11に係留される前には、オイルフェンス1は海底に沈下している。そして、タンカーTが入港してタンカーTが係留設備11に係留された状態で、図示しないオイルフェンス操作装置を操作して、各接続部10A〜10Cにおいて給排気ホース9A及び連通ホース9Bを通じて各オイルフェンス1のフロート7に空気を導入する。これにより、オイルフェンス1は、空気が導入されたフロート7の浮力により海面に浮上する。
【0030】
オイルフェンス1はあらかじめ多数のアンカー4付きロープ5に接続されているから、海面に浮上したときに浮遊状態で定位置に配置され、漂流が防止される。
【0031】
このとき、係留設備11も、タンカーTと一緒にオイルフェンス1により取り囲まれる。これにより、油の荷役作業を開始し、仮に油送出口等から油が漏れ出しても、周囲に油が拡散するのが、オイルフェンス1によって防止される。
【0032】
そして、油荷役作業が終了した場合、あるいは同作業が終了してタンカーTが出港する場合には、オイルフェンス操作装置を操作して、第1および第2給排気接続部10B,10Cにおいて給排気ホース9Aを通じてオイルフェンス1のフロート7内の空気を排出する。フロート7は連通ホース9Bにより相互に連通されているので、すべてのフロート7から空気が排気される。これにより、オイルフェンス1は海面下に沈下する。
【0033】
この際、第1の給排気接続部10B間の中央位置が、オイルフェンスが最初に沈下する強制沈下部P1,P2となる。また、ウエイト8の配列間隔がL2である部分の中央位置も強制沈下部P3となるが、タンカー緊急避難部Aにおいて第2給排気接続部10Cの給排気ホース9Aを通じて排気を行われなければ、従来通り、2つの強制沈下部P1,P2が最も早く沈下することになる。オイルフェンス1はいずれも多数のアンカー4付きロープ5に接続されているので、漂流が防止される。
【0034】
また、津波発生時など、タンカーTを緊急避難させる必要がある緊急事態にも、オイルフェンス操作装置を操作して、出港のために、オイルフェンス1のフロート7内の空気を排出し、オイルフェンス1は海面下に沈下させる必要がある。この場合、ウエイト8が密に配置された緊急沈下部の中央位置の強制沈下部P3が、専用の給排気接続部として第2給排気接続部10Cを設けていることによって、他の強制沈下部P1,P2よりも早く、つまり最も早く海面下に沈下するので、強制沈下部P3と、給排気接続部10Cとの間を含むタンカー緊急避難部Aを通じて、タンカーTは速やかに出港して避難することができる。
【0035】
よって、2つの強制沈下部P1,P2を有するだけである従来の場合(
図8参照)に比べて、タンカーTが出港して避難するのに要する時間が大幅に短縮される。
【0036】
本発明は、前述したほか、次のように変更して実施することもできる。
【0037】
(i)前記実施の形態では、タンカー緊急避難部Aが、第2給排気接続部10Cと、ウエイト8の配列間隔が他の部分より密になっている緊急沈下部(強制沈下部P3)とを備えるようにしているが、第1給排気接続部10Bの給排気能力で足りる場合には、第2給排気接続部10Cを省略することも可能である。
【0038】
(ii)前記実施の形態では、第2の間隔L2は第1の間隔L1の1/2程度としているが、本発明はこれに制限されるものではなく、例えば1/3程度でもよく、他の部分よりも密に配置されていればよい。
【0039】
また、緊急沈下部で、他の部分よりもウエイト8の配置間隔を密にするのに代えて、他の部分よりも重量が大きいウエイトを配置することで、早く沈下させるようにしてもよいし、ウエイトの配置間隔を密にするのと重量を大きくするのとを併用してもよい。つまり、単位長さ当たりの重量が大きくなるようにウエイトが配置されていればよい。
【0040】
(iii)前記実施の形態では、係留されているタンカーTの船首が対向(対応)することになる部位にだけタンカー緊急避難部Aを1つ設けているだけであるが、例えば前記タンカー緊急避難部Aと対称にもう1つのタンカー緊急避難部を設けることも可能である。それにより、緊急避難時には、タンカーTの船首が対向(対応)することになる部位のタンカー緊急避難部Aを利用することで、タンカーTの船首の向きにかかわらず、緊急避難させることができる。
【0041】
(iv)前記実施の形態では、2つの第1給排気接続部10Bと、2つの強制沈下部P1,P2とを予め備える既設のオイルフェンス装置に適用する場合について説明しているが、既設のオイルフェンス装置が有する給排気接続部や強制沈下部の数は、2つに限らず、特に制限されない。また、本発明は既設のオイルフェンス装置に適用する場合に限定されるものではなく、オイルフェンス装置を新設する場合にも適用することができるのはいうまでもない。
【0042】
(v)前記実施の形態では、係留されるタンカーが一隻の場合について説明しているが、2隻のタンカーが並んで係留されている場合や複数のタンカーが係留されている場合にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 浮沈式オイルフェンス
2 コネクタ
3 オイルフェンス装置
4 アンカー
5 ロープ
6 帯状体
7 フロート
8 ウエイト
9A 給排気ホース
9B 連通ホース
10A 連通接続部
10B 第1給排気接続部
10C 第2給排気接続部
11 係留設備
12〜14 プラットホーム
15 桟橋
A タンカー緊急避難部
P1〜P3 強制沈下部
T タンカー