(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183928
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】流体ディスペンサー
(51)【国際特許分類】
B65D 47/20 20060101AFI20170814BHJP
B65D 77/04 20060101ALI20170814BHJP
B05C 17/005 20060101ALI20170814BHJP
B65D 35/10 20060101ALI20170814BHJP
B65D 35/28 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
B65D47/20 111
B65D77/04 F
B05C17/005
B65D35/10 Z
B65D35/28 D
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-548732(P2015-548732)
(86)(22)【出願日】2013年12月19日
(65)【公表番号】特表2016-508099(P2016-508099A)
(43)【公表日】2016年3月17日
(86)【国際出願番号】FR2013053198
(87)【国際公開番号】WO2014096724
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年9月9日
(31)【優先権主張番号】1262476
(32)【優先日】2012年12月20日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502343252
【氏名又は名称】アプター フランス エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100133950
【弁理士】
【氏名又は名称】向井 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100125438
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 公知
(72)【発明者】
【氏名】デュケ フレデリック
【審査官】
佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−324021(JP,A)
【文献】
特開2002−068263(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0111900(US,A1)
【文献】
特開2006−062700(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0043109(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
B05C 17/005
B65D 35/10
B65D 35/28
B65D 77/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体吐出通路を形成するディスペンサーバルブ(V)と、変形可能なパウチ状内部容器(61)と、変形可能な外部容器(51)と、から構成される貯蔵容器と、を備え、
前記変形可能なパウチ状内部容器(61)と前記変形可能な外部容器(51)とは、両容器間に隙間が生じるように協働し、
前記変形可能な外部容器(51)は、前記ディスペンサーバルブ(V)と係合する襟部(54)と、端部(55)により中央部に開口部が形成されるように前記襟部(54)の内側から中心に向かって延伸する環状フランジ(53)と、を有し、
前記変形可能なパウチ状内部容器(61)は、ネック部(64)を有し、
前記ネック部(64)は、前記流体吐出通路と連通するように前記開口部に配置され、前記環状フランジ(53)の前記端部(55)と、前記ディスペンサーバルブ(V)とにそれぞれ係合し、
前記ディスペンサーバルブ(V)は、前記変形可能なパウチ状内部容器(61)のネック部(64)と係合する入口スリーブ(31)と、前記変形可能な外部容器(51)の前記襟部(54)と係合する留めリング(35)と、を有し、
前記襟部(54)と前記ネック部(54)との間に環状のハウジング(L)が形成され、前記ディスペンサーバルブ(V)の一部が前記環状ハウジング(L)内に配置されている
ことを特徴とする流体ディスペンサー。
【請求項2】
前記入口スリーブ(31)は、流体が漏出されないように前記変形可能なパウチ状内部容器(61)の前記ネック部(64)にスナップ留めされている
ことを特徴とする請求項1に記載の流体ディスペンサー。
【請求項3】
前記ディスペンサーバルブ(V)は、前記入口スリーブ(31)と留めリング(35)とが形成された基部(3)を有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の流体ディスペンサー。
【請求項4】
前記基部(3)に、環状の溝(32)が形成され、当該環状溝(32)が、前記環状ハウジング(L)内に配置されている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の流体ディスペンサー。
【請求項5】
前記隙間(E)は、前記端部(55)と前記ネック部(64)との間、前記環状ハウジング(L)内、及び、前記襟部(54)と前記ディスペンサーバルブ(V)との間を通る通気路に沿って外部に通じている
ことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の流体ディスペンサー。
【請求項6】
前記ディスペンサーバルブ(V)の前記流体吐出通路には流体吐出用の開口部(11)が形成され、当該開口部は、両面に流体が同時に接触する差動膜に取り付けられているピン(21)によって選択的に閉口される
ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の流体ディスペンサー。
【請求項7】
前記環状フランジ(53)の前記端部(55)には、前記隙間(E)と外部を連通させる1つ以上の切り欠き部(56)が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の流体ディスペンサー。
【請求項8】
前記ネック部(64)の外壁には前記環状フランジ(53)の前記端部(55)と係合されるスナップ留め部(65)が形成されている
ことを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の流体ディスペンサー。
【請求項9】
前記変形可能なパウチ状内部容器(61)の前記ネック部(64)は、実質的に環状の肩部(63)から上方に伸びており、前記変形可能な外部容器(51)の前記環状フランジ(53)は、前記環状肩部(63)と実質的に平行に前記環状肩部(63)から微小間隔を隔てて伸びている
ことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の流体ディスペンサー。
【請求項10】
前記ネック部(64)は、前記襟部(54)から実質的に前記ネック部(64)の直径に相当する間隔を隔てた位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の流体ディスペンサー。
【請求項11】
前記襟部(54)は、前記ディスペンサーバルブ(V)に非密閉な状態でスナップ留めされている
ことを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の流体ディスペンサー。
【請求項12】
前記変形可能なパウチ状内部容器(61)と前記変形可能な外部容器(51)は、前記ディスペンサーバルブ(V)から遠ざかる方向にある各末端部(62,52)が一緒に熱融着されている
ことを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の流体ディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体ディスペンサーに関し、特に流体吐出通路を有するディスペンサーバルブと、変形可能なパウチ(袋)状内部容器と変形可能な外部容器とを有し、両容器間に隙間が生じるように両容器が協働してなる貯蔵容器と、を備える流体ディスペンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような流体ディスペンサーにおいて、外部容器を押し込むと、パウチ状内部容器が絞られ、当該パウチ状内部容器内の流体がディスペンサーバルブに向かって排出され、排出された流体の流圧によりディスペンサーバルブが開く。本発明の適用に有利な分野としては、化粧品や医薬品の分野が挙げられるが、これらの分野に限定されず、食品やボディケア製品等の分野においても利用可能である。
【0003】
従来技術として、特許文献1には、内部に可撓性のパウチ状容器を収納する可撓性の外部容器を備え、当該パウチ状容器が、開口部を有する可撓膜を備えたディスペンサーバルブと連結されており、上記開口部が、ピンで閉じられるように構成されている流体ディスペンサーの貯蔵容器が記載されている。
上記貯蔵容器の可撓性の外部容器が絞られると、それに応じて可撓性のパウチ状容器も変形し、当該パウチ状容器内に含まれる流体が押圧されてディスペンサーバルブ内へ押し出されて可撓性膜がピンから離されるように構成されている。
【0004】
さらに詳細に説明すると、可撓性のパウチ状容器は、その開口部が、外部容器に形成された剛性が高いネック部に係合されている剛性が高いのパウチ支持部材に熱融着されている。上記パウチ支持部材は、上記外部容器のネック部の外壁に形成されたねじ山にディスペンサーバルブが螺合されることにより、上記ネック部に固定される。
上述したように、上記流体ディスペンサーの貯蔵容器を組み立てるには、可撓性のパウチ状容器を剛性が高いパウチ支持部材に熱融着し、さらに、当該パウチ状容器を上記外部容器の剛性が高いネック部へ挿入することが必要であり、その後、上記ディスペンサーバルブが上記外部容器のネック部に螺合されることにより組み立てが完了する。
【0005】
組み立て後の上記貯蔵容器には、上記パウチ状容器と上記外部容器との間に隙間が形成される。上記隙間は、上記パウチ支持部材と上記ディスペンサーバルブとの間に形成される通気路と合流して当該通気路を介して外部に通じるように構成されており、上記隙間を外部に通じさせる通気路が特に複雑に形成されている。
本発明は、パウチ状容器と当該パウチ状容器を内部に収容する外部容器とから構成される上記従来技術の貯蔵容器において、その設計を簡素化すること、その組み立てを容易にすること、上記ディスペンサーバルブの固定性及び密閉性を改良すること、上記隙間を外部に通じさせる通気路を簡素化することを目的とする。
【0006】
又、別の従来技術として、特許文献2には、膜の両面が流体によって同時に押圧される可撓性差動膜を有するバルブ形式の流体ディスペンサーが記載されている。より詳しくは、当該流体ディスペンサーでは、上記可撓性差動膜に複数の貫通孔が形成されており、当該複数の貫通孔を介して上記可撓性差動膜の下面側と上面側にそれぞれ形成されたチャンバーが連通するように構成されている。
【0007】
上面側のチャンバー内の流体から流圧を受ける上記可撓性差動膜の上面側の面積は、下面側のチャンバー内の流体から流圧を受ける上記可撓性差動膜の下面側の面積より大きいため、流体から上記可撓性差動膜に加わる圧力は、下面よりも上面の方が大きくなる。
その結果、流体から上記可撓性差動膜の上面に加わる力が、弾性手段の付勢力を上回ると、流体ディスペンサーが休止状態にある間、吐出口を塞いでいる閉塞ピンによる閉塞状態を解除するように、上記可撓性差動膜が移動し、吐出口が開状態になる。特許文献2に記載のディスペンサーバルブは、容量可変流体貯蔵容器のネック部に形成された雄ねじ部とねじ結合する雌ねじ部を有する。
【0008】
本発明の別の目的は、外部容器の内部にパウチ状容器が挿入されて構成される流体貯蔵容器へ可撓性差動膜を有するディスペンサーバルブを取り付けた場合の固定性及び密閉性を改良することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州公開第473994号公報
【特許文献2】国際公開第2012/059691号公報
【発明の概要】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明が提案する流体ディスペンサーは、流体吐出通路を形成するディスペンサーバルブと、変形可能なパウチ状内部容器と変形可能な外部容器と、から構成される貯蔵容器と、を備え、前記変形可能なパウチ状内部容器と前記変形可能な外部容器とは、両容器間に隙間が生じるように協働し、前記外部容器は、前記ディスペンサーバルブと係合する襟部と、縁部により中央部に開口部が形成されるように前記襟部の内側から中心に向かって延伸する環状フランジと、を有し、前記パウチ状内部容器は、ネック部を有し、前記ネック部は、前記流体吐出通路と連通するように前記開口部に配置され、前記環状フランジの前記縁部と、前記ディスペンサーバルブとにそれぞれ係合し、前記ディスペンサーバルブは、前記変形可能なパウチ状内部容器のネック部と係合する入口スリーブと、前記変形可能な外部容器の前記襟部と係合する留めリング(fastener ring)とを有する。
【0011】
これにより、前記ディスペンサーバルブを非常に安定した状態で前記貯蔵容器に取り付けられる。
有利な構成として、入口スリーブは、流体が漏出されないように前記変形可能なパウチ状内部容器の前記ネック部にスナップ留めされている。
本発明の別の特徴として、前記ディスペンサーバルブは、前記入口スリーブと留めリングとが形成された基部を有することとすることができる。前記基部は、一体部品であることが好ましい。
【0012】
本発明の別の有利な実施態様として、前記襟部と前記ネック部との間に環状のハウジングが形成され、前記ディスペンサーバルブの一部が前記環状ハウジング内に配置されている構成とすることができる。
この構成により、前記襟部と前記ネック部との間の空間がデッドスペースにならず、前記ディスペンサーバルブの高さをかなり低くすることができる。
【0013】
又、有利な構成として、前記基部に、環状の溝が形成され、当該環状溝が、前記環状ハウジング内に配置されている構成とすることができる。前記環状フランジにより、前記襟部を前記ネック部から離隔させることができ、これにより、前記貯蔵容器に取り付けた時の前記ディスペンサーバルブの安定性を向上させることができる。
前記ネック部から離隔された位置にある前記襟部は、外縁側で前記ディスペンサーバルブを固定するのに用いられ、前記襟部より中央側に位置する前記ネック部は、前記ディスペンサーバルブの中心軸の周囲において前記ディスペンサーバルブを固定し、密閉するのに用いられる。言い換えれば、前記襟部により、前記ディスペンサーバルブの外縁側の安定化或いは固定化が実現され、前記ネック部により前記ディスペンサーバルブの中央側の固定化と密閉化が実現される。
【0014】
さらに、有利な構成として注意すべき点は、前記パウチ状内部容器の前記ネック部が前記外部容器の前記環状フランジの縁部とスナップ留めにより係合し、その襟部とは係合していないことである。又、可撓性の前記パウチ状内部容器を剛性が高いパウチ支持部材に熱融着する必要がない点についても注意すべきである。
上述した構成では、前記パウチ状内部容器の組み立て及び当該パウチ状内部容器の前記外部容器への組み込み工程を著しく簡素化することができる。同様のことが、前記ディスペンサーバルブの前記貯蔵容器への取り付け工程についても当てはまる。なぜなら、前記襟部と前記ネック部の両者が、前記ディスペンサーバルブを、前記貯蔵容器の外縁側及び中央側へそれぞれ導くガイド部材として機能するからである。
【0015】
又、有利な構成として、前記隙間は、前記環状フランジの縁部と前記ネック部との間、前記環状ハウジング内、及び、前記襟部と前記ディスペンサーバルブとの間を通る通気路に沿って外部に通じている構成とすることができる。前記環状フランジの縁部には、前記隙間と外部を連通させる1つ以上の切り欠き部が形成されていることが好ましい。このように構成することで、前記ネック部と前記環状のフランジの縁部とが密着された状態でも通気用の前記切り欠き部により前記隙間と外部とを連通させる通路が確保される。
【0016】
本発明の別の特徴として、前記ディスペンサーバルブは流体吐出用の開口部を有し、当該開口部は、両面に流体が同時に接触する差動膜に取り付けられているピンによって選択的に閉塞される。
又、本発明の別の有利な面は、前記ネック部の外壁に前記環状フランジと係合されるスナップ留め部が形成されていることである。このようにスナップ留めされることにより、前記パウチ状内部容器と前記外部容器とを結合させることができる。
【0017】
又、本発明の別の有利な面は、前記パウチ状内部容器の前記ネック部が、実質的に環状の肩部から上方に伸びており、前記外部容器の前記環状フランジが、前記環状肩部と実質的に平行に前記環状肩部から微小間隔を隔てて伸びていることである。これにより、前記パウチ状内部容器を非常に安定した状態で前記外部容器内に収容することができる。
又、本発明の別の特徴として、前記ネック部は、前記襟部から実質的に前記ネック部の直径に相当する間隔を隔てた位置に配置されている構成としてもよい。この特徴により、前記ネック部と前記襟部との間隔をネック部の直径により定量化することができる。
【0018】
又、本発明の別の特徴として、前記襟部は、前記ディスペンサーバルブに非密閉な状態でスナップ留めされている。又、本発明の別の特徴として、前記パウチ状内部容器と前記外部容器は、前記ディスペンサーバルブから遠ざかる方向にある各末端部が一緒に熱融着されている。このように、前記パウチ状内部容器と前記外部容器の形状を、両者を一緒に熱融着できるチューブ形状とすることができる。この特徴により、前記パウチ状内部容器を前記外部容器の内部に挿入し、当該パウチ状内部容器内に流体を充填した後、最後に両者を一緒に熱融着するようにすることができる。
【0019】
本発明の1つの思想は、前記ディスペンサーバルブを前記外部容器と前記パウチ状内部容器の両容器に固定することにある。又、もう1つの思想は、前記ディスペンサーバルブを前記貯蔵容器へ取り付けた時の当該ディスペンサーバルブの安定性をよくするために、前記外部容器への固定と、前記パウチ状内部容器への固定を離隔された位置で行うことにある。本発明では、前記パウチ状内部容器が前記外部容器にスナップ留めされた後、前記ディスペンサーバルブが前記外部容器と前記パウチ状内部容器にそれぞれスナップ留めされるので、前記流体ディスペンサーの組み立て作業を非常に簡素化することができる。
【0020】
本発明は、図面を参照することにより、以下により詳しく記述される。参照する図面は、本発明の実施例を非限定的に例示するものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施例に係る流体ディスペンサーの分解斜視図である。
【
図2】
図1に示す流体ディスペンサーの組み立て完了後の斜視図である。
【
図3】ディスペンサーバルブと貯蔵容器の上部とを含む部分における流体ディスペンサーの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、
図1及び
図2を参照して本発明に係る流体ディスペンサーの構成について概説する。上記流体ディスペンサーは、3つの基本構成要素、すなわち、外部容器5、パウチ状内部容器6、ディスペンサーバルブVから構成される。外部容器5とパウチ状内部容器6は、互いに係合して貯蔵容器Rを形成し、ディスペンサーバルブVは、貯蔵容器Rに取り付けられる。
【0023】
外部容器5及びパウチ状内部容器6の両容器は、手で、好ましくは、片手で変形させたり、絞ったりすることができるように、変形可能な又は可撓性の容器である。外部容器5は、外部から圧力が付加されなくなったときに、初期の休止状態の形状に戻ることが可能な弾性形状記憶材料で構成されていることが好ましい。パウチ状内部容器6は、弾性形状記憶材料で構成されていてもよいし、弾性記憶材料以外の塑性材料で構成されていてもよい。
【0024】
外部容器5は、上記流体ディスペンサーの組み立てが完了する前の初期状態において、底部52が開口しているチューブ51で構成される。上記外部容器の上端には、中心に向かって径方向内側に延伸する、実質的に環状のフランジ53が形成されている。上記環状フランジは、中央に縁部55により形成される開口部を有する。上記縁部が形成する形状は、円形であってもよいし、楕円形であってもよい。又、上記縁部には、以下に詳述する機能を有する切り欠き部56が形成されていることが好ましい。
【0025】
襟部54は、環状フランジ53から上方に突出している。襟部54は、環状フランジ53の外縁部の近傍に配置されている。襟部54は、1つ以上の留め形状又はスナップ留め形状を外壁に有していると有利である。
パウチ状内部容器6も上記流体ディスペンサーの組み立てが完了する前の初期状態において、開口した底部62を有するチューブ61で構成される。パウチ状内部容器6は、上端部に実質的に環状の肩部63を形成し、当該環状肩部63は、内縁部から上方に突き出して突出ネック部64を形成する。有利な構成として、上記ネック部は、外壁にスナップ留めビード(snap-fastener bead)65を有し、内壁にスナップ留め溝66を有する。
【0026】
パウチ状内部容器6は、開口した底部52から外部容器52内部に挿入され、そのネック部64が、環状フランジ53と係合される。ここでの有利な構成として、上記ネック部の外壁は、環状フランジ53の縁部55にスナップ留めされて係合される。具体的には、スナップ留めビード65を環状フランジ63の上方に配置させてスナップ留めさせることができる。
【0027】
スナップ留め時に上記ネック部と上記環状フランジの縁部55とは、非密閉な状態で接触するようにすることが好ましい。仮に両者の接触状態が潜在的に密閉状態になる可能性ある場合でも通気用の切り欠き部56を形成することにより、密閉状態を解除することができる。
環状フランジ53と肩部63とは、ごくわずかな間隔を隔てて配置されている点、或いは、両者は、接触して配置されていてもよい点に注意すべきである。又、襟部54は、ネック部64の周囲において軸方向に沿って伸び、当該ネック部64からその直径とほぼ同じ長さの間隔を隔てた位置に配置されている点に注意すべきである。
【0028】
上記間隔は、上記襟部と上記ネック部とをつなぐ環状フランジ53により形成される。これにより、上記襟部と上記ネック部との間に環状のハウジングLが形成され、その底部が環状フランジ53により形成される。
上記パウチ状内部容器においては、上記開口底部62から流体を充填することができる。上記外部容器の開口底部52及び上記パウチ状内部容器の開口底部62は、その後、挟み込まれて
図2に示すような接合部52'が形成されるように熱融着される。これにより、上記パウチ状内部容器と上記外部容器との間に隙間Eが形成される。上記隙間Eは、通気用の切り欠き部56を設けることが可能な環状フランジ53に非密閉状態で係合されているネック部64を介して外部に通じている。
【0029】
外部容器5を例えば、片手で絞り込むと、パウチ状内部容器6も絞り込まれてパウチ状内部容器6から流体が押し出される。絞り込み動作が終了後は、上記外部容器の形状は、絞込み前の初期状態の形状に戻るように構成することが好ましい。一方、上記パウチ状内部容器は、上記外部容器に被覆されているので、形状が変形した状態であってもよい。
ディスペンサーバルブVは、
図3に詳細に示すように、カバー1、可撓部2、基部3の3つの基本構成要素から構成される。各基本構成要素は、適当な射出成形プラスチック材料から作成することができる。各基本構成要素は、全て、ほぼ円対称の構造を有している。カバー1と基部3は、実質的に剛性が高く、可撓部2は、弾性変形が可能である。カバー1とこれに結合する基部3は、互いに組み合わさって、以下に説明するように可撓部2を収容する一種のケースを形成する。可撓部2は、カバー1及び基部3と組み合わさって、以下に説明するように流体密閉シールを形成する。
【0030】
特に本実施例では、カバー1は、中央部に流体吐出用の開口部11が形成された回収皿
を有する蓋状の形態を有している。カバー1の外縁部には、実質的に円筒のスカート13が形成されている。本実施例では、カバー1の横断面は円形であるが、横断面は、円形以外の他の形状とすることも可能である。
可撓部2は、上記ディスペンサーバルブの動的部分を構成するので、上記ディスペンサーの一種のモーターに相当する構成要素である。可撓部2は、初期状態においてディスク形状の可撓性膜20を有する。可撓性膜20には当該膜を貫通する複数の貫通孔が形成されている。可撓性膜20の中央部には、閉塞部材として密閉閉塞ピン21が上方に突き出すように設けられている。
【0031】
可撓性膜20は、上面と底面とを有し、密閉閉塞ピン21は、上面に設けられている。上面と底面は、複数の貫通孔22を介して流体が直接行き来できるようにされている。又、可撓部2は、上記可撓性膜の底面から下方に伸びる固定スタブ23(anchor stub)を有する。固定スタブ23は、軸方向への収縮を可能とする蛇腹部を有する。可撓性膜20は、外縁部が第2固定スタブ(second anchor stub)24につながっている。戻しばね25は、可撓性膜20の底面を押圧し、流体吐出用の開口部11が閉塞されるように密閉閉塞ピン21を上記開口部11へ付勢する。
【0032】
有利な構成として、基部3は、入口スリーブ31を有しており、当該入口スリーブ31の外壁には、ネック部64の内壁に形成されたスナップ留め溝66と係合するスナップ留めビードが形成されている。上記基部には、入口スリーブ31の上方に、入口スリーブ31の外側において実質的に軸方向に伸びる内壁33を有する環状溝32が形成されている。
又、上記基部には、環状溝32の上方に、上向きに突出する環状ブッシュ34が形成されている。最後に、有利な構成として、上記基部には、留めリング35が形成され、留めリング35は、その内面において上記環状ハウジングの外壁と係合してスナップ留めされるように構成されている。
【0033】
又、ディスペンサーバルブVは、ブロッキングリング(blocking ring)4を有し、当該ブロッキングリング4は、環状溝32の内壁33に可撓部2の第1固定スタブ23が密着するように当該第1固定スタブ23を内壁33に押し付けるように環状溝32に配置されている。このように、ブロッキングリング4は、固定化機能と密閉化機能の両方を備えている。
【0034】
ディスペンサーバルブVの構成要素は、次のようにして組み立てられる。上述したように、可撓部2の第1固定スタブ23は、まず最初に、内壁33とブロッキングリング4との間に押し詰めされる。戻しばね25により、環状溝32の底部が最初に押圧され、次に可撓部2の可撓性膜20の底面が押圧される。カバー1が嵌め込まれると、可撓部2の第2固定スタブ24が基部3の環状ブッシュ34と係合される。さらに、密閉閉塞ピン21が流体吐出用開口部11に係合し、当該開口部が弾性的に密閉される。カバー1の円筒スカート13は、基部3の留めリング35に圧力嵌めされる。これにより、可撓性膜20の下側に底面側チャンバーCiが形成される。底面側チャンバーCiは、入口スリーブ33の内部に伸びるように形成される。さらに、可撓性膜20とカバー1との間に密閉閉塞ピン21を囲むように上面側チャンバーCsが形成される。底面側チャンバーCiと上面側チャンバーCsとは、貫通孔22により互いに連通される。このように、ディスペンサーバルブVには、底面側チャンバーCi、複数の貫通孔22、上面側チャンバーCsを経由して入口スリーブ31から流体吐出用開口部11へ到る流体吐出通路が形成され、当該通路は、密閉閉塞ピン21が流体吐出用開口部11から離れる時に密閉閉塞ピン21の周囲を通るように形成される。
【0035】
上記貯蔵容器Rから排出される加圧された流体が上記ディスペンサーバルブに到達すると、当該流体は、複数の貫通孔22を介して底面側チャンバーCiと上面側チャンバーCs間を容易に行き来して流れ、両チャンバーに流体が充填される。底面側チャンバーCiにおいては、可撓性膜20の底面部分(以下、「底面領域Si」という。)に圧力が加わる。可撓性膜20の反対側においては、上記可撓性膜20上面部分(以下、「上面領域Ss」という。)に圧力が加わる。底面領域Siの方が上面領域Ssより面積がずっと小さくなっていることは、上記の図から容易に認めることができる。上記図に示されている実施例においては、両領域の比(Ss/Si)は、約3又は4である。その結果、上面領域Ssにかかる流体の圧力により加えられる力は、底面領域Siにかかる流体の圧力により加えられる力よりずっと大きくなる。加わる圧力に応じて可撓性膜20は、流体吐出用開口部11から密閉閉塞ピン21が外れるように、カバー1及び基部3に対して相対移動する。上記可撓性膜は、両側の面に加わる圧力差に応じて移動するので、このような性質を有する膜は、可撓性差動膜と呼ばれる。圧力が高くなるに従って上面側チャンバーCsの容積が大きくなり、一方、底面側チャンバーCiの容積は小さくなる。しかしながら、可撓性膜20は、後述する弾性手段によりカバー1側に付勢されているので、弾性手段による付勢力に打ち勝って上記移動が行われるためには、両チャンバー内の圧力が所定の圧力閾値に達していることが必要となる。上記弾性手段は、複数の弾性を有する個々の手段、すなわち、可撓性膜20、第1固定スタブ23、戻しばね25の各手段を組み合わせた手段である。その他、
図3に示すように、吐出用開口部11は、密閉閉塞ピン21により密閉されている。これにより、上面側チャンバーCsが完全に密閉されるように外部から隔離される。これに対し、流体が吐出されている間は、密閉閉塞ピン21が吐出用開口部11の縁部から離れて上面側チャンバーCsが外部と連通され、流体を外部へ吐出する通路が開通される。
【0036】
上記のディスペンサーバルブVの内部構成は、本発明に必須のものではなく、本発明に係る上記貯蔵容器に取り付けるのに必要な特徴を備えるものであれば、他の内部構成のディスペンサーバルブであっても本発明に用いることができる。言い換えれば、本発明に適用できるディスペンサーバルブは、上記の構成と同一又は実質的に同様の構成の有する基部を備えるものでなければならない。
【0037】
上記ディスペンサーバルブVは、以下のようにして貯蔵容器Rに取り付けられる。入口スリーブ31をネック部64内に挿入し、環状溝32の内壁33をネック部64の外周部に係合させ、環状溝32をハウジングL内に侵入させ、留めリング35を襟部64と係合させる。上記の各取り付け操作は、同時に行われる。
図3に示すように組立が終了した状態では、入口スリーブ31の外壁に形成されたスナップ留め部が、流体が漏出されないようにネック部64の環状スナップ留め溝66に係合され、環状溝32は、ほぼ完全にハウジングLの内部に収容され、留めリング35は、襟部54の外周部にスナップ留めされている。有利な構成として、留めリング35と襟部64とは、非密閉状態で接触するように構成され、上記隙間Eは、上記ネック部と環状フランジ53の縁部とが非密閉状態で接触している接触部、ハウジングL、及び留めリング35と襟部64とが非密閉状態で接触している接触部を介して外部と連通されるように構成されている。
【0038】
上記ディスペンサーバルブの一部、すなわち、環状溝32がハウジングLの内部に配置されるように構成することで上記ディスペンサーバルブの高さをかなり低くし、その結果、上記ディスペンサーバルブのサイズをかなり小さくすることができる点に注意すべきである。
図3には、ブロッキングリング4、戻しばね25の一部、及び第1固定スタブ23の一部がハウジングLの内部に配置された構成が示されており、この構成により、上記ディスペンサーバルブのサイズをかなり小さくすることができることが理解される。
【0039】
上記外部容器の縁部側に襟部を形成し、上記パウチ状内部容器の中央部にネック部を形成することにより、ディスペンサーバルブVの上記貯蔵容器への固定及び保持がかなり改善される。
本発明により、特に頑丈、かつ、密閉した状態でディスペンサーバルブをパウチ‐イン‐シェル型の貯蔵容器(パウチ状内部容器と当該容器を内部に収容する外部容器とから構成される貯蔵容器)に取り付けることができる。上記ディスペンサーバルブは、差動膜を有するものであることが有利である。