(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6183937
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ワイヤーリガチャー
(51)【国際特許分類】
G10D 9/02 20060101AFI20170814BHJP
G10D 7/08 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
G10D9/02
G10D7/08
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-233458(P2016-233458)
(22)【出願日】2016年11月13日
【審査請求日】2016年11月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516359953
【氏名又は名称】熊谷 駿
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 駿
【審査官】
安田 勇太
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−064542(JP,A)
【文献】
特開2007−047548(JP,A)
【文献】
New AIZEN FREEDOM SAX LIGATURE,AIZEN[オンライン],2016年 2月,[検索日 2017年3月3日],インターネット:<URL:http://www.sax.co.jp/freedom_ligature_e.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 7/00 − 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製である単線を一体的に曲げ加工を施し、リードとマウスピースを巻回するコイル状に形成し、リードとマウスピースを差し込んだ際に前記のコイル内径を広げようとする力に対する金属線の反力を用いて、本装置とリード及びマウスピースの各接点においてリードとマウスピースを締め付けて固定する締付部と、前記のリードとマウスピースを締め付けて固定する締付部においてコイル状に形成した先に延伸する2対の単線に曲げ加工を施して、マウスピースと歌口受けコルクに接しない形状でネック方向に延伸しながら、ネックの直径より狭い2対の幅の距離となる2対の線状に形成された振動伝達部と、前記の振動伝達部からネックの直径より狭い2対の幅の距離を維持しながらネックを挟み込む形状に曲げ加工することで金属線の反力を用いて当接する2対の線状に形成されたネック接点部によって構成することで、リードとマウスピースに生じる振動と共振を、ネックに直接的に伝搬することを特徴とするリガチャー。
【請求項2】
請求項1の記載のリガチャーにおいて、本装置に用いる金属製である単線の素材には、金、銀、洋白、銅、真鍮、チタン、プラチナ、アルミ、ステンレスの何れか1つまたはその合金を用いることを特徴とし、前記の素材の仕上げには、素地の研磨加工、メッキ加工、塗装を施したものの、いずれかを用いることを特徴とするリガチャー。
【請求項3】
請求項1または、2記載のリガチャーにおいて、本装置に用いる金属製である単線の断面形状には、丸形、楕円形、多角形のいずれかを用い、単線を一体的に曲げ加工を施し前述のとおり構成されたネック接点部のネック方向への延伸した端部と金属線の多角形の断面の角部は、角のない丸みを帯びた形に加工して、滑らかに仕上げること特徴とするリガチャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サクソフォーンの、リードをマウスピースに固定するための装置であるリガチャーに関する。
【背景技術】
【0002】
サクソフォーンの構造は、大きく分類すると、息を吹込む方向から順に歌口、ネック、二番管、一番管、ベルで構成される。
【0003】
歌口は、リードとマウスピースとリガチャーで構成されており、リードをリガチャーでマウスピースに固定する。ネックは、吹込み側先端にコルク材でできた歌口受けコルクが巻き付けて接着されており、歌口を歌口受けコルクに差し込んで空気が漏れないように密着して固定する。
【0004】
サクソフォーンは、演奏者から吹き込まれた息によってリードに振動を生じさせて、マウスピースにおいて発音し、主にネックへ空気振動によって音を伝搬する。
【0005】
演奏者から吹き込まれた息によってリードが振動して、マウスピースにおいて発音する際にマウスピースとリガチャーに生じる共振は、歌口受けコルクに吸音され減衰される。
【0006】
サクソフォーンの演奏においては、リガチャーを用いて、リードを演奏者の好みに応じた位置でマウスピースに固定することが一般的に行なわれている。またリードの種類やリードを固定する位置などによって音色が変わるため演奏者が容易に操作を可能にするために、特許文献1に開示されているようにリガチャーは、マウスピースに巻きつけたベルトの両端をネジによって締め付けるなどの複数の分割された部品によって構成されていることが多い。通常は、ネジを緩めて形成した環状リガチャーの中央部分の空間にリードとマウスピースを挿入してネジを締め付けることでリードをマウスピースに固定する。
【0007】
特許文献2に開示されているように、マウスピースで発音される音質や音量は、リードの種類やリガチャー及びマウスピースの材質や形状、リガチャーでリードを固定する位置などで変化し、またリードとマウスピースとリガチャーに生じる共振がリードの振動に影響して楽器の音色を左右すると考えられていることは、一般的に知られている。
【0008】
特許文献3に開示される通り、固定部材を金属製としたリガチャーでは、リードをマウスピースに対して強固に固定できる利点を有する反面、リードの振動によるリガチャーの共振を完全には抑えることができず、音色が硬くなるなど、濁りが生じる。一方、固定部材を非金属製としたリガチャーでは、リードの振動によって共振しないため、金属製の固定部材に比べて音の濁りを減少させることができ、軽やかで優しい音色を得ることができるとされている。
【0009】
サクソフォーンの発音については、特許文献2や特許文献3にみられるような、リガチャーによって共振を止めることにより、リードの振動による純粋な音をマウスピースによって発音させることで軽やかで濁りのない音色を得ることを目的とする発明もなされてきたが、現代音楽である、ジャズやロックなどのジャンルにおいては、濁り、硬さ、迫力を感じる音色などが、サクソフォーンの演奏において、求められる機会も多くなっている。
【0010】
演奏者は、好みの音質を得るために、リードやリガチャーやマウスピースをそれぞれ選択して組み合わせて用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−84756号公報
【特許文献2】特開2006−163382号公報
【特許文献3】特開2009−300674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、以上のように演奏者が、演奏曲に応じて多種多様な音質や、音量の増大を探求している点に鑑み、歌口をネックの歌口受けコルクに固定することで、歌口に生じた、振動と共振を歌口受けコルクに吸音され減衰しているため、歌口で発音した音は主に歌口からネックへ空気振動によって伝搬されていることに着目した。本発明は、サクソフォーンにおけるリガチャーであって金属製である単線に曲げ加工を施しリードとマウスピースで効率よく発音させ、歌口に生じる、振動と共振をネックに直接伝える経路を新たに設けることで、振動と共振を有効に活用して音量の増大と音質の変化をもたらすワイヤーリガチャーを通じて演奏者に提供する事を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するために、金属製である単線に曲げ加工を施し、コイル状に形成されたリードをマウスピースに固定する締付部と前記よりネック方向に延伸された線状の振動伝達部と前記よりネックを挟み込む様に曲げ加工された線状のネック接点部によって構成する。その結果、前記の構成を通じて、リードとリードをマウスピースに固定する締付部並びにマウスピースに生じる振動と共振を、ネックに直接的に伝搬する。
【0014】
本発明は、金属製である単線に曲げ加工を施し上述の構成を一体的に形成する。従来の一般的なリガチャーは、マウスピースに巻きつけたベルトの両端をネジによって締め付けるなどの複数の分割された部品によって構成することに対して、本発明は、単線である金属線に曲げ加工を施し、一体的にリードをマウスピースに固定する締付部を形成することで、リードの振動をマウスピースで効率よく発音させ、リードとリードをマウスピースに固定する締付部並びにマウスピースに生じる振動と共振を1本の金属線上を減衰することなく効率よく、上述の構成を通じてネックまで直接的に伝搬する経路を設ける。
【0015】
本発明における、前述のコイル状に形成されたリードをマウスピースに固定する締付部は、金属製である単線に曲げ加工を施し一体的に形成する。その詳細は、本装置とリードが当接してリードの振動を受振する機能を持ちリードをマウスピースに固定する本装置とリード接点と、本装置とマウスピースに当接してリードの振動に起因するマウスピースの共振を受振する機能を持ちマウスピースに固定する本装置とマウスピース接点、並びにリードとマウスピースを巻回するコイル状に可動可能にすることでクリップ状に形成された金属線の両端が交差した先でネック方向に屈曲させたコイル可動調整部によって構成する。前記のリードとマウスピースを巻回するコイル状に形成された内径は、マウスピースにリードを所定の位置に当接した状態での直径に微小に足りない内径に形成し、コイルの内側にリードとマウスピースを差し込んで装着した際にコイルの内径が拡径して、前記の本装置とリード接点及び、本装置とマウスピース接点において、リードとマウスピースから広げようとする力に対する金属製である単線の反力を用いてリードをマウスピースに締め付けて固定する。
【0016】
本発明は、前述のクリップ状に形成されたコイル可動調整部を自在に可動可能とすることで、コイル状に曲げ加工して形成したコイルがクリップ状に伸縮し、リードをマウスピースに固定する締付部が変位可能に形成され、前記のクリップ状のコイル可動域調整部を指で挟んで押し縮めることで、リードをマウスピースに固定する締付部を形成するコイルの内径寸法を拡径する可動域を持つことを特徴とする。
【0017】
前述による本発明を構成するリードをマウスピースに固定する締付部からネック方向に延伸された線状の振動伝達部と前記よりネックを挟み込む様に曲げ加工された線状のネック接点部は、リードをマウスピースに固定する締付部のコイル状に形成された2対の単線に曲げ加工を施してネック方向に屈曲させ線状に延伸された2対の前記振動伝達部と前記ネック接点部の形状と長さは、マウスピースと歌口受けコルクに接しない形状にすることでリードとマウスピースに生じる振動と共振を減衰することなくネックに伝搬する。
【0018】
前述による本発明を構成するネックを挟み込む様に曲げ加工された線状のネック接点部は、ネックの直径より狭い2対間の距離となるように曲げ加工してネック接点部を形成し、ネックを挟んで装着した際にネックの幅より狭い金属線の反力を用いて、前記のネック接点においてネックを挟み込んで当接してリードとマウスピースで発音された際に生じる振動と共振をネックに伝達する。
【0019】
前述によるネック接点部は、線状にして歌口受けコルクを迂回する先に曲げ加工して線状にネックを挟み込んでネックに接する形状にすることでネック接点部の挟み込む線状の長さに応じて、挟み込むネック接点の接続する許容範囲を広げる。
【0020】
本発明に用いる金属製である単線の素材には、金、銀、洋白、銅、真鍮、チタン、プラチナ、アルミ、ステンレスの何れか1つまたはその合金を用いる。
【0021】
本発明に用いる金属製である単線の素材の仕上げには、素地の研磨加工やメッキ加工、塗装を施したもののいずれかを施す。
【0022】
本発明に用いる金属製である単線の断面形状には、丸形、楕円形、多角形のいずれかを用いる。
【0023】
前述による金属製である単線の断面の角部及びネック接点部のネック方向への延伸した端部は、角のない丸みを帯びた形に加工して、滑らかに仕上げる。
【0024】
本発明において、前述によるリードをマウスピースに固定する締付部を形成するにあたり、金属製である単線の断面形状に、丸形、楕円形、または多角形の角部が当接するようにリードとマウスピースを巻付けるコイル状に曲げ加工することにより、リードとの接触面積を減らす。
【0025】
また、前述によるリードをマウスピースに固定する締付部を形成するにあたり、単線である金属製である単線の断面形状に、多角形を用いて前記多角形の平面部が当接するようにリードとマウスピースを巻付けるコイル状に曲げ加工することにより、リードとの接触面積を増やす。
【0026】
さらに前述によるリードをマウスピースに固定する締付部を形成するにあたり、金属製である単線をリードとマウスピースを巻回するコイル状に形成する曲げ加工は、リードの適正なリガチャー固定範囲内において巻回数を問わず、複数周巻付けてコイル状に曲げ加工することにより、リードとマウスピースの接点を増やす。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、前述した構成による金属製である単線に曲げ加工を施し、コイル状に形成されたリードをマウスピースに固定する締付部、ネック方向に延伸された線状の振動伝達部、ネックを挟み込む様に曲げ加工された線状のネック接点部によって構成する結果、従来の歌口におけるリードとリガチャーとマウスピースに生じる振動と共振を、ネックに直接的に伝搬する経路を得ることで、サクソフォーンの演奏に濁り、硬さ、迫力を感じる音色を提供するなど音量の増大と音質に変化をもたらす。
【0028】
本発明は、前述のとおり金属製である単線に曲げ加工を施し、リードをマウスピースに固定する締付部、ネック方向に延伸された線状の振動伝達部、ネックを挟み込む様に曲げ加工された線状のネック接点部を一体的に形成することで、リードの振動をマウスピースで効率よく発音させ、従来の歌口におけるリードとリガチャーとマウスピースに生じる振動と共振を、減衰することなく効率よくネックまで直接的に伝搬する経路を設けるため、音量の増大と音質の変化をもたらす。
【0029】
また前述したリードをマウスピースに固定する締付部は、金属製である単線に曲げ加工を施し、リードとマウスピースを巻回するコイル状に形成して、リードとマウスピースから広げようとする力に対する単線である金属線の反力を用いてリードをマウスピースに締め付けて固定することで、リードをマウスピースに対して強固に固定できるとともにリードの振動によるリガチャーの共振を活用して、硬く、濁りのある迫力を感じる音色を提供する。
【0030】
本発明において、前述のとおり単線である金属線をコイル状に曲げ加工して形成したコイルの交差した先にあたるコイル可動調整部を自在に可動可能とすることで、コイル状に曲げ加工して形成したコイルがクリップ状に伸縮することで、リードをマウスピースに固定する締付部が変位可能に形成され、コイル可動域調整部を指で挟んで押し縮めることで、リードをマウスピースに固定する締付部を形成するコイルの内径寸法を拡径する可動域を持つことを特徴とする、リードをマウスピースに固定する締付部を形成することで、リードの固定位置の範囲拡大、多様なマウスピースの選択を可能にして、演奏者の多様な選択性を可能にして音質の追求に応える。
【0031】
本発明は、前述のとおりリードをマウスピースに固定する締付部から、ネック方向に線状に延伸された2対の振動伝達部とネック接点部の形状と長さをマウスピースと歌口受けコルクに接しない形状にすることでリードとマウスピース及びリガチャーに生じる振動と共振を減衰することなくネックに伝搬することで、音量の増大と音質の変化を提供する。
【0032】
本発明を構成するネックを挟み込む様に曲げ加工された線状のネック接点部は、ネックの直径より狭い2対間の距離となるように曲げ加工してネック接点部を形成し、ネックを挟んで装着した際にネックの幅より狭い金属線の反力を用いて、前記のネック接点においてネックを挟み込んで当接してリードとマウスピースで発音された際に生じる振動と共振をネックに伝達するとで、楽器本体を反響させ音量の増大と音質の変化を提供する。
【0033】
前述によるネック接点部は、線状にして歌口受けコルクを迂回する先に曲げ加工して線状にネックを挟み込んでネックに接する形状にすることでネック接点部の挟み込む線状の長さに応じて、挟み込むネック接点の接続する許容範囲を広げることで、多種にわたるマウスピースとネックおよびサクソフォーンに適応可能になるとともに、リードをマウスピースに固定する位置の範囲拡大や歌口受けコルクへの差し込み深さの変化に対応可能にし、演奏者の選択の幅を広げることが出来る。
【0034】
本体に用いる金属製である単線の素材を、金、銀、洋白、銅、真鍮、チタン、プラチナ、アルミ、ステンレスの何れか1つまたはその合金を用いるなど素材を変えることで各々の素材の特性を生かした音質の変化を提供する。
【0035】
また前述の本体に用いる金属製である単線の素材の仕上げを、素地の研磨仕上げやメッキ仕上げ、塗装などに変えることで各々の仕上げの特性を生かした音質の変化を提供する。
【0036】
前述の本体に用いる金属製である単線の断面形状を、丸形、楕円形、多角形を用いることで、各々の断面形状の特性を生かした音質の変化を提供する。
【0037】
前述のとおり本発明において、リードをマウスピースに固定する締付部を形成するにあたり、金属製である単線の断面形状に、丸形、楕円形、または多角形の角部が当接するようにリードとマウスピースを巻付けるコイル状に曲げ加工することにより、リードとの接触面積を減らすことで、リードの振動を減衰させずに効率よく発音させ音量の増大と音色の変化を提供する。
【0038】
また、前述のとおりリードをマウスピースに固定する締付部を形成するにあたり、金属製である単線の断面形状に、多角形を用いて、前記多角形の平面部が当接するようにリードとマウスピースを巻付けるコイル状に曲げ加工することにより、リードとの接触面積を増やすことにより、リードをマウスピースに固定する締付部の接触面積を増やすことにより、リードを安定して固定し、多くの共振を得てネックに伝達することで迫力を感じる音色を提供する。
【0039】
さらに、前述のとおり、リードをマウスピースに固定する締付部を形成するにあたり、金属製である単線をリードとマウスピースを巻回するコイル状に形成する曲げ加工は、リードの適正なリガチャー固定範囲内において巻回数を問わず、複数周巻付けてコイルを形成することにより、リードとマウスピースの接点を増やすことでリードを安定して強固に固定し、音色の変化を提供する。
【0040】
本発明における金属製である単線の断面の頂部及びネック接点部のネック方向への延伸した端部は、角のない丸みを帯びた形に加工して、滑らかに仕上げることで、本装置の当接するリードとマウスピース及びネックへの締付時や取り付け時の摩擦などによる損傷を削減する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】断面形状が丸形の金属線を用いた本装置の全体図を示す斜視図
【
図2】断面形状が丸形の金属線を用いた本装置を吹込み側から見た平面図
【
図3】断面形状が丸形の金属線を用いた本装置をネック側から見た平面図
【
図4】断面形状が丸形の金属線を用いた本装置上側から見た平面図
【
図5】断面形状が丸形の金属線を用いた本装置右側から見た平面図
【
図6】断面形状が丸形の金属線を用いた本装置下側から見た平面図
【
図7】断面形状が丸形の金属線を用いた本装置左側から見た平面図
【
図8】断面形状が丸形の金属線を用いてリードとマウスピースを単周、コイル状に巻付ける曲げ加工を施した本装置を装着した実施例を示す斜視図
【
図9】断面形状が丸形の金属線を用いてリードとマウスピースを複数周、コイル状に巻付ける曲げ加工を施した本装置を装着した実施例を示す斜視図
【0042】
以下に図面を参照して、本発明を実施するための形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の記載に示される構成要素は、あくまでも例示とし本発明の技術範囲を例示の通り限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0043】
図1、
図4、
図5、
図8を用いて、本発明の実施形態としての本装置の構成を説明する。
図1は、断面形状が丸形の金属線を用いた本装置全体を示す斜視図である。
図4は、断面形状が丸形の金属線を用いた本装置を上側から見た平面図である。
図5は、断面形状が丸形の金属線を用いた本装置を右側から見た平面図である。
図8は、断面形状が丸形の金属線を用いた本装置をリードとマウスピースを単周、コイル状に巻付ける曲げ加工を施した本装置を装着した実施例を示す斜視図である。
【0044】
図8に示す、5のワイヤーリガチャー本体は、演奏者が息を吹込んで、2のマウスピースに5のワイヤーリガチャー本体によって、6のリードをマウスピースに固定する締付部に固定された1のリードを振動させ、2のマウスピースにおいて発音する。その際に1のリード、2のマウスピースに生じた振動と共振を7の本装置とリード接点並びに8の本装置とマウスピース接点より受振して、6のリードをマウスピースに固定する締付部全体に伝達され、9のコイル可動調整部、10のコイル可動域調整部、11のネック接点加圧調整部、12のネック接点を通じて3のネックに直接伝搬する経路を形成する。
【0045】
従来のサクソフォーンにおける音の伝搬は、演奏者が息を吹込んで1のリードが振動して、2のマウスピースで発音された音の空気振動が3のネックに伝わる空気伝搬と、1のリードと2のマウスピースに生じた共振をリガチャーや4の歌口受けコルクに吸音されながら減衰して振動を伝搬する。5のワイヤーリガチャー本体は、それら従来の伝搬に加えて、
図7に示すとおり、1のリードと2のマウスピースと6のリードをマウスピースに固定する締付部に生じた振動と共振を5のワイヤーリガチャー本体各部を通じて直接3のネックに伝搬することで、楽器本体を反響させ、従来のリガチャーよりも大きな音量を得ることができる。また、音質においては、濁り、硬さ、迫力を感じる、はっきりとした輪郭のある音色を提供することができる。
【0046】
5のワイヤーリガチャー本体を形成する断面形状が丸形の金属線の素材には、金、銀、洋白、銅、真鍮、チタン、プラチナ、アルミ、ステンレスの何れか1つまたはその合金を用い、さらにメッキを施したものでも良い。素材に銀を用いた場合は、重厚感のある遠鳴りする特色ある音質を提供し、素材に銅を用いた場合は透明感のある優しい感じの音色を提供し、また素材に真鍮を用いた場合は、はっきりとしながらも柔らかな感じの音色などの変化を提供する。
【0047】
図1に示すとおり5のワイヤーリガチャー本体は、断面形状が丸形の金属線である単線を曲げ加工を施し、6のリードをマウスピースに固定する締付部、9のコイル可動調整部、10のコイル可動域調整部、11のネック接点加圧調整部、12のネック接点を断面形状が丸形の金属線で一体的に形成し、従来のリガチャーに見られる締付部をネジで固定するなどの各部品間の分離や結合装置を無くして形成することにより、体鳴楽器であるトライアングルのように振動の伝達を減衰することなく効率的に行うことで、1のリードと2のマウスピースと6のリードをマウスピースに固定する締付部に生じた共振を減衰されることなく3のネックに伝搬して、楽器本体を反響させて、音量を増大する。
【0048】
図4に示す通り、リードをマウスピースに固定する締付部を形成するにあたり、単線である断面形状が丸形の金属線をリードとマウスピースを巻付けるコイル状に曲げ加工することにより、単線である断面形状が丸形の金属線の丸形断面の頂部が、本装置とリード接点においてリードと線状に接触することで、リードとの接触面積を減らしリードの振動を減衰させないため、発音を大きくして、音量を増大させる。
【0049】
図8に示すとおり、5のワイヤーリガチャー本体に単線である断面形状が丸形の金属線を用いることで、5のワイヤーリガチャー本体に接する1のリード、2のマウスピース、3のネックへの着脱時及び締付時の摩擦等による損傷を削減する。
【0050】
図8に示すとおり、12のネック接点部の3のネック方向に延伸した端部は、半球形に滑らかに施工して、着脱時のネックへの損傷を防止する。
【0051】
図8に示すとおり、5のワイヤーリガチャー本体を構成する単線である断面形状が丸形の金属線の太さは、曲げ加工を容易にする強度を持つものとし、コイル状に曲げ加工された1のリードに7の本装置とリード接点と8の本装置とマウスピース接点、3のネックに12のネック接点で接して、単線である断面形状が丸形の金属線の適切な反力を得て2のマウスピースと3のネックに5のワイヤーリガチャー本体を固定することが出来る。
【0052】
図4に示すとおり、14のネック接点部は、2対の線状にして、3のネック側面に、2対である11のネック接点加圧調整部の間隔を3のネックの直径より狭くすることで断面形状が丸形の金属線の持つ曲げ反力を得て挟み込んで接することで5のワイヤーリガチャー本体の固定を補助し、10のコイル可動域調整部と11の接点加圧調整部並びに
図4に示すように14のネック接点部の長さに応じた多種にわたるマウスピースやマウスピースの歌口受けコルクへの差し込み長さ並びに多種にわたるネックの形状に対応する。
【0053】
図1並びに
図4に示すとおり、5のワイヤーリガチャー本体の2対で構成されるクリップ状の10のコイル可動域調整部の2対の幅の距離に応じて、9のコイル可動調整部の幅を指で縮める際の可動域が変化して、6のリードをマウスピースに固定する締付部のコイル状の内径の拡径状態を作り出す。その結果、1のリードを7の本装置とリード接点である固定位置を変えることを可能にして演奏者の好みの音質を提供し、また多種の外形直径寸法を持つマウスピースの種類に多様に対応することを可能にして、演奏者のマウスピースの選択の幅を広げることができる。
【0054】
5のワイヤーリガチャー本体は、上下反転して、取り付けることによっても、音色の変化を得ることができる。
【0055】
5のワイヤーリガチャー本体の取り付け方法は、1のリードを2のマウスピースに当接した状態を指で保持しながら、2のマウスピースの先端である息の吹込み口側より、10のコイル可動域調整部を押し狭めてコイル状に形成された6のリードをマウスピースに固定する締付部の内径を拡径状態にして、1のリードを2のマウスピースに当接した状態に6のリードをマウスピースに固定する締付部を差し込み1のリードを2のマウスピースに仮固定する。2のマウスピースのネック側の歌口受けコルク挿入口下部に、4の歌口受けコルク下端を合わせて、11のネック接点加圧調整部に指を入れて広げながら、3のネックを上に起こして、14のネック接点部で4の歌口受けコルクを挟み込んで、2のマウスピースを4の歌口受けコルクに押し込み、2のマウスピースを装着する。10のコイル可動域調整部を押し狭めて拡径状態にして好みの位置で1のリードを2のマウスピースに適切に合わせて、1のリードを2のマウスピースに固定しながら、12のネック接点が3のネック挟み込むように調整する。
【実施例2】
【0056】
図9を用いて、本発明の実施形態の応用例としての本装置の構成を説明する。
図9は、断面形状が丸形の金属線を用いた本装置をリードとマウスピースを複数周、コイル状に巻付ける曲げ加工を施した本装置を装着した実施例を示す斜視図である。
【0057】
図9に示すように、5のワイヤーリガチャー本体を構成する単線である断面形状が丸形の金属線を1のリードと2のマウスピースを複数周巻付けるコイル状に曲げ加工して、6のリードをマウスピースに固定する締付部を形成し、7の本装置とリード接点と8の本装置とマウスピース接点を増加させることで、より安定した1のリードと2のマウスピースとの強固な固定を可能にして、音質の変化を得ることができることで、演奏者の嗜好性に対応することを可能にする。
【産業上の利用可能性】
【0058】
サクソフォーン全体に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 リード
2 マウスピース
3 ネック
4 歌口受けコルク
5 ワイヤーリガチャー本体
6 リードをマウスピースに固定する締付部
7 本装置とリード接点
8 本装置とマウスピース接点
9 コイル可動調整部
10 コイル可動域調整部
11 ネック接点加圧調整部
12 ネック接点
13 振動伝達部
14 ネック接続部
【要約】
【課題】 本発明はサクソフォーンにおけるリガチャーであって、歌口に生じた振動と共振を歌口受けコルクに吸音され減衰されることなく演奏者が探求する音量の増大と音質の変化をもたらすワイヤーリガチャーを演奏者に提供することを目的としている。
【解決手段】 金属製である単線を一体的に曲げ加工を施し、リードとマウスピースを巻回するコイル状に形成しリードとマウスピースを差し込んで装着した際に、コイルの内径がクリップ状に伸縮することでリードとマウスピースを締め付けて固定する締付部と、前記の先にネック方向に延伸する2対の線状に形成された振動伝達部とネックを挟み込む形状に曲げ加工することで金属線の反力を用いて当接する2対の線状に形成されたネック接点部によって構成することで、リードとマウスピースに生じる振動と共振を、ネックに直接的に伝搬するワイヤーリガチャーを構成している。
【選択図】
図8