【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0031】
<方法>
被検者
リー脳症(LS)と診断された男性患者ら及びその両親からインフォームドコンセントを得た後、末梢血サンプルを採取した。QuickGene-610L(富士フィルム社)を指示書に従い用いて末梢血白血球からDNAを抽出した。家族員全員に由来するリンパ芽球様細胞株を樹立した。本研究は横浜市立大学医学部の倫理委員会に承認された。
【0032】
全エキソーム配列決定
2名の患者(
図1a中のII-2及びII-3)について、全エキソーム配列決定(Whole Exome Sequencing; WES)を行なった。末梢血より抽出したゲノムDNA(各サンプル3μg)をCovaris S2 system(Covaris社)を用いて200bpに剪断した。ゲノムパーティショニングは、II-2についてはSureSelect Human All Exon 50 Mb Kit(Agilent Technologies社)を、II-3についてはSureSelect Human All Exon Kit v4を用いて行なった。調製したライブラリーの配列決定はペアエンド法により行なった。インデックスリードを7bpとし、II-2については108bpのペアエンドをGenome Analyzer IIx(Illumina社)にて、II-3については101bpのペアエンドをHiseq2000(Illumina社)にて、それぞれ配列を決定した。Novoalign 3.0(http://www.novocraft.com)によりヒトリファレンスゲノムhg19に対してリードのアライメントを行なった。アライメントされたリードはPicard(http://picard.sourceforge.net)により処理してPCR duplicateを除去した。変異コールはGenome Analysis Toolkit 1.3-24(GATK; http://www.broadinstitute.org/gatk)を推奨される条件(GATK Best Practice Variant Detection v3; http://www.broadinstitute.org/gatk/guide/topic?name=best-practices)にて使用して実施し、ANNOVAR (2012Jun24) (http://www.openbioinformatics.org/annovar)によりアノテーションを行なった。これらの基準を用いて、コード領域及びその隣接する30pbの領域に位置する変異のみを抽出し、dbSNP build 137 (MAF≧0.01) (http://genome.ucsc.edu/cgi-bin/hgTrackUi?hgsid=316787363&g=snp135Common&hgTracksConfigPage=configure)に登録されているコモン変異を除外した。
【0033】
ミトコンドリアゲノムの変異を検出するため、各エキソームリードはまずNovoalign-2.08.02 (http://www.novocraft.com/)を用いてヒトミトコンドリアゲノムに対してアライメントし、次いでfastqフォーマットに変換した。これらのリードをNovoalign-2.08.02を用いてヒトリファレンスゲノムGRCh37 (NCBI)(核及びミトコンドリアのDNA)に対してアライメントし、次いでPicardにより処理してPCR duplicateを除去した。変異コールは上記と同様にGenome Analysis Toolkit 1.3-24を推奨される条件(GATK Best Practice Variant Detection v3)にて使用して実施した。このフローにより、コールされたミトコンドリアゲノムの全ての変異について、MITOMAP (http://www.mitomap.org/bin/view.pl/MITOMAP)による病原性か否かのチェックが行なわれた。
【0034】
候補変異の選択
家系図より、本疾患が常染色体劣性遺伝又はX染色体劣性遺伝であると仮定した。この仮定に従い、BITS(日本国東京)が創出したスクリプトを使用して、表4(後掲)に記載の基準で変異をフィルタリングした。
【0035】
原因遺伝子の同定
常染色体劣性モデル及びX染色体劣性モデルに基づく全ての候補変異について、両親及び患者兄弟においてサンガーシークエンシングにより配列の確認を行なった。ゲノムDNAを鋳型として増幅したPCR産物の配列をABI3500xl自動シークエンサー(Applied Biosystems社)にて決定し、Sequencher 5.0 (Gene Codes Corporation社)を用いて解析を行なった。家系図によると本疾患はミトコンドリア遺伝の可能性もあり、またLSはミトコンドリアゲノム変異により生じることが知られているので、既報のアルゴリズム(Picardi and Pesole (2012) Nat Methods 9: 523-524. doi: 10.1038/nmeth.2029)によりエキソームデータを用いてミトコンドリア全ゲノムの検査も行なった。
【0036】
構造モデリング
GYG2ミスセンス変異(アイソフォームa: NM_001079855中に発見されたc.665G>C, p.W222S)が分子構造レベルでその機能に及ぼす作用を評価するため、変異型分子構造を構築し、当該変異により生じる自由エネルギー変化をFoldXソフトウェア (version 3.0) (Guerois et al. (2002) J Mol Biol 320: 369-387.; Khan and Vihinen (2010) Hum Mutat 31: 675-684.)を用いて計算した。ヒトGYG2の結晶構造が利用不能であったため、ヒトGYG1(Protein Data Bank code; 3T7O)の結晶構造を構造モデルとして使用した。変異をGYG1ホモダイマーの1つのサブユニットに導入した。FoldXエネルギー機能はリガンドを扱えないことから、GYG1の結晶構造に含まれるリガンドは無視して計算を行なった。計算は3回反復して行ない、得られたデータは平均値±標準偏差で表した。
【0037】
哺乳動物発現ベクターの調製
pENTR221に組み込まれたヒトグリコゲニン2アイソフォームaのcDNAクローン(IMAGE Clone ID: 100008747)は、かずさDNA研究所より購入した。ミスセンス変異(c.665G>C, p.W222S)は、QuikChange II XL site-directed mutagenesis kit(Agilent Technologies社)を用いて部位特異的変異誘発により導入した。野生型及び変異型のC' V5/6xHisタグ付加GYG2コンストラクトは、pcDNA-DEST40(Invitrogen社)を用いてGatewayシステム(Invitrogen社)のLR組換えにより作出した。タグ無しコンストラクトは、最後のコドンを変異導入により停止コドンに変化させて作出した。
【0038】
自己グルコシル化解析
GYG2のグルコシルトランスフェラーゼ活性は既報(Lomako et al. (1988) FASEB J 2: 3097-3103)に若干の変更を加えた手法により測定した。簡潔に記載すると、10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)(Gibco-BRL社)、2 mM L-グルタミン(Sigma-Aldrich社)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich社)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Sigma-Aldrich社)中でCOS-1細胞を維持した。既報(Mu and Roach (1998) J Biol Chem 273: 34850-34856)の通り、〜80%コンフルエントのCOS-1細胞(〜1×10
7)に、野生型のヒトGYG2 (アイソフォームa)を発現するプラスミド又はW222S変異を導入したプラスミドのいずれか5μgをXtreamGENE9 DNA transfection reagent (Roche社) を用いて一過的にトランスフェクトした。24時間後、細胞を回収し、300μLのバッファー(50 mM HEPES, 0.5% Triton X-100, 1×EDTA-フリープロテアーゼインヒビターカクテル錠(Roche Applied Science社), 1×ホスファターゼ阻害剤カクテル(ナカライテスク社) 及び0.5mM β-メルカプトエタノール)中で溶解させた(Mu et al. (1997) J Biol Chem 272: 27589-27597)。14,000 rpmで15分間遠心した後、可溶性画分を回収し、100 mM HEPES (pH7.5), 10 mM MgCl, 4 mMジチオスレイトール(DTT) 及び40μM UDP-[
14C]-グルコース(250 mCi/mmol; PerkinElmer社、米国) を含む2×反応バッファー10μLと可溶性画分10μLを混合した(Cao et al. (1993) J Biol Chem 268: 14687-14693)。30℃で30分間インキュベートした後、2×Laemmli sample buffer (Sigma-Aldrich社) 20μLを添加して反応を停止させた(Viskupic et al. (1992) J Biol Chem 267: 25759-25763)。各サンプル15μLをSDS-ポリアクリルアミド電気泳動に付した。Gel drying solution (Bio-Rad Laboratories社)で30分間処理した後、ゲルを乾燥させた。乾燥させたゲルをX線フィルムに2週間曝露し、GYG2へのUDP-[
14C]-グルコースの取り込みを検出した。さらに、イメージングアナライザーBAS2500 (富士フィルム社)を用いて
14Cシグナルの強度を評価した。実験は独立で3回反復して行なった。
【0039】
ウエスタンブロット解析
GYG2タンパク質の検出には、ウサギポリクローナル抗GYG2抗体(1:500希釈; Abcam社、Cat.#HPA00549)及びセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗ウサギIgG(1:10,000希釈; Jackson ImmunoResearch社、Cat.#111-035-003)を用いた。免疫ブロットの化学発光反応は、基質としてSupersignal West dura(Thermo Fisher Scientific社)を用いて行なった。化学発光シグナルの画像はFluorChem 8900(Alpha Innotech社)によりキャプチャーした。シグナル強度はAlphaEase FC (Alpha Innotech社)により測定した。実験は独立に3回反復して行なった。
【0040】
<結果>
臨床所見
患者II-2(
図2a、表3)は、近親婚ではない両親の子として出生した26歳齢の男性である。母親は自然流産の経験あり。患者II-2は平穏な妊娠経過の末に妊娠39週で仮死なく出生した。出生時体重3,680 g (+1.6 SD)、身長50.0 cm (-0.5 SD)、頭囲34.0 cm (- 0.5 SD)。初期発育は正常であり、4ヶ月で定頸及び玩具に手を伸ばす動作、6ヶ月で寝返り、7ヶ月で二指間つまみ。10ヶ月時に座位の異常があり病院Aに来院、来院時の体重は9,120g (+0.0 SD)、身長76.0 cm (+1.3 SD)、頭囲48.0 cm (+1.4 SD)。笑み及び嚥下は良好。両側斜視を認めた。小奇形は認めず。筋緊張は正常。バビンスキー徴候陰性で深部腱反射は正常。体幹及び四肢のアテトーゼ様運動を認めた。引き起こし反応において内反尖足を呈した。乳酸値及びピルビン酸値はそれぞれ12.2 mg/dl及び0.89 mg/dl (L/P比=13.7)で正常。血液ガス、血糖、アンモニア、AST、ALT、BUN、クレアチン、TSH、T3、T4、アミノ酸及び尿中有機酸分析等のその他の臨床検査は全て正常。脳波(EEG)は異常なし。運動障害性脳性麻痺が疑われ、リハビリテーション部に紹介。2歳ではいはい可能。6歳時に発熱を伴う意識喪失後の全身性強直間代痙攣を経験し、病院Bに入院。大脳基底核の両側梗塞と診断された。EEGは異常なしであったが、症候てんかんの疑いがあったためクロナゼパムを開始。9歳時に再度病院Aに来院。体重19.1kg (-4.5 SD)、身長115.0 cm (-2.8 SD)。数語の発語が不能になり、利き手が右から左に変化していた。深部腱反射の上昇を伴う痙縮やバビンスキー徴候陽性をはじめ、退行の他の徴候も認めた。さらに、両側性の股関節脱臼を患い、足部変形は悪化。四肢の全てに拘縮を認めた。脳MRIにより淡蒼球の両側性壊死病斑を発見(
図3a, b)。EEG及び運動伝達速度は正常。乳酸値及びピルビン酸値をはじめ臨床検査は全て正常。12歳時に急性気管支炎で入院、入院時に血中ケトン体の上昇を認めた: アセト酢酸値720μmol/l; 3-OHBA値974μmol/l、尿中ケトン(+++)。血中のアンモニア濃度(18μmol/l)、糖濃度(125 mg/dl)及び乳酸/ピルビン酸レベル(5.1/0.29 mg/dl) はいずれも正常範囲。血中ケトン体値は発熱が終わると正常値に戻った。線維芽細胞を用いた酵素学的分析により、3-ケトチオラーゼ及びスクシニルCoA:3-オキソ酸CoAトランスフェラーゼの欠損は除外された。臨床症状及び繰り返し行なったMRIの所見は、患者II-2の疾患が非進行性であることを示している。現在、患者II-2は一人座り及び発語が不能。カルバマゼピン及びラモトリジンを追加しているが、依然として全身性強直間代痙攣を年に数回呈している。過緊張対策としてダントロレンナトリウム、ジアゼパム、バクロフェン及びレボドパ等の医薬も服薬している。
【0041】
患者II-3(
図2a、表3)は、II-2の弟であり、異常なく出生した。平穏な妊娠経過の末に妊娠37週で仮死なく出生。出生時体重3,668 g (+1.5 SD)、身長50.0 cm (+0.5 SD)、頭囲36.0 cm (-0.5 SD)。1ヶ月齢で原因不明の細菌性髄膜炎を罹患。意識喪失後の痙攣と胃腸炎を1歳11ヶ月齢で発症。脳MRIにより大脳基底核の著明な腫脹を認めた(
図3c、3d)。大脳基底核の両側梗塞と診断された。その後に患者II-3は左利きに変化。2歳時に外科手術にて両側性内斜視を矯正。4歳時に検査のため病院Aに来院、来院時体重11.0 kg (-2.2 SD)、身長92.5 cm (-1.2 SD)、頭囲49.5 cm (-1.3 SD)。あやし笑いは可能。定頸せず、運動機能の発達は遅延。小奇形は認めず。筋緊張は低張。深部腱反射は悪化しバビンスキー徴候陽性、足クローヌスあり。内反尖足あり。血中アセト酢酸値は1,270μmol/l、3-OHBAは3,270μmol/lと顕著に上昇していた。血中乳酸値及びピルビン酸値は正常(それぞれ6.2 mg/dl及び0.48 mg/dl、L/P比=12.9)。脳脊髄液の乳酸値及びピルビン酸値はそれぞれ11.3 mg/dl及び1.11 mg/dlとわずかに上昇していた。血液ガス、血糖、アンモニア、AST、ALT、BUN、クレアチン、TSH、T3、T4、アミノ酸及びリソソーム酵素等のその他の臨床検査は全て正常。尿中有機酸分析ではアセト酢酸、3-OHBA、及び3-OH-イソ吉草酸の上昇を認めた。EEGでは発作波を認めず。筋生検でも特異的異常を認めず、赤色ぼろ線維は確認されなかった。シトクロームcオキシダーゼの染色は正常(データ示さず)。脳MRIにより大脳基底核及び脳深部白質でのT2延長を確認した(
図3e、3f)。5歳時に発熱を伴う嗜眠を呈し、6歳時にも再び嗜眠を呈した。生化学分析により尿中ケトン体の顕著な上昇が確認された: アセト酢酸値1,337μmol/l; 3-OHBA値4,845μmol/l、尿中ケトン(+++)。血中のアンモニア濃度(28μmol/l)、糖濃度(78 mg/dl)、乳酸値(5.1 mg/dl) 及びピルビン酸値(0.43 mg/dl)はいずれも正常範囲。血液ガス分析により、アニオンギャップの上昇(22.4 mEq/l、正常値は12+2)を伴う代謝性ケトアシドーシスが確認された。静脈内輸液により数日以内に意識及び生化学的測定値が正常に回復した。同様のケトアシドーシス発作は繰り返し観察され、左腎の形成不全と神経因性膀胱障害が8歳時に確認された。間欠導尿を開始し、尿路感染症を繰り返して慢性腎不全となった。繰り返し行なった脳MRI検査の所見は、大脳及び小脳の萎縮の進行を示している。患者II-3は現在19歳であり、運動機能及び知的能力の獲得は4歳時以降認められていない。過緊張対策としてダントロレンナトリウム及びジアゼパムを、腎不全対策として球形吸着炭及びアロプリノールを服薬している。
【0042】
【表3】
【0043】
エキソーム配列決定によるGYG2変異の同定
合計2,433,011,483 bps (II-2) 及び7,926,169,749 bps (II-3) をコードDNA配列(CDS)にマップした。CDSの83.3%及び96.0%が10以上のリードでカバーされていた。本症候群が常染色体劣性遺伝又はX染色体劣性遺伝であるという仮説に基づき、常染色体上のホモ又は複合ヘテロ変異及びX染色体上のヘミ変異に着目した。インシリコ解析で4つの候補遺伝子が得られたが、GYG2遺伝子上のヘミ接合ミスセンス変異のみがこれらの遺伝モデル(常染色体劣性又はX染色体劣性)に合致した(表4)。GYG2 (アイソフォームa: NM_001079855) における変異c.665G>C (p.W222S) が患者2名ではヘミ、母親ではヘテロであることはサンガーシークエンシングで確認済みであり(
図2b)、X染色体劣性モデルに合致した。該変異は1000 Genomesデータベース及びESP6500には存在しなかった。さらに、エキソーム配列解析の結果、ミトコンドリアDNAには病原性変異が検出されなかった(データ省略)。
【0044】
【表4】
【0045】
GYG2遺伝子がコードするGYG2タンパク質には、アイソフォームa (NM_001079855)、アイソフォームb (NM_003918)、アイソフォームc (NM_001184702)、アイソフォームd (NM_001184703)、アイソフォームe (NM_001184704)の少なくとも5種のアイソフォームが存在する。このうち少なくとも2つのアイソフォーム(a及びb)は肝臓、心臓及び膵臓で優先的に発現していることが報告されているが(Mu et al. (1997) J Biol Chem 272: 27589-27597)、他のアイソフォームについては発現及び機能の詳細は未だ不明である。更に、我々はGYG2が胎児期および成人期において、脳にも発現していることを明らかにした。グリコシルトランスフェラーゼファミリー8ドメインを有し、O-グルコシル化(自己グルコシル化)を経てそのチロシン残基(アイソフォームaではY197)にグルコース付加を開始するほか、さらにUDP-グルコース7〜10残基を自身に付加することもできる(Bollen et al. (1998) Biochem J 336: 19-31; Lomako et al. (2004) Biochim Biophys Acta 1673: 45-55.; Zhai et al. (2001) IUBMB Life 51: 87-91.)。グリコシルトランスフェラーゼファミリー8ドメイン内のW222は酵母S. cerevisiaeからヒトに至るまで進化的に高度に保存されている(
図2C, 2D)。このアミノ酸残基は全てのアイソフォームが有している。従って、この残基における変異によりGYG2タンパク質の生物学的機能が障害されるものと考えられる。
【0046】
ヒトGYG2におけるp.W222S変異の構造的考察
GYG2の結晶化構造解析がなされていないため、GYG2 (アイソフォームa) のアミノ酸残基W222をヒトGYG1の結晶構造(Chaikuad et al. (2011) Proc Natl Acad Sci U S A 108:21028-21033.)にマップした。W222はY17及びK220と共にUDP-グルコース (UDPG) 結合部位近傍の疎水性コアに関与している (
図4A, 4B)。Y17及びK220の側鎖はUDPGに水素結合しており、前者はさらにファンデルワールス力によりUDPGのウリジン環にスタッキングしている。従って、UDPGの結合には疎水性コアの形成が必須的であると考えられる。
【0047】
W222S変異がタンパク質の安定性に及ぼす影響を調べるため、変異構造をモデリングし、FoldXソフトウェアを用いて該変異による自由エネルギー変化を計算した。その結果、該変異は自由エネルギーを約4 kcal/mol増大させ、タンパク質構造を不安定化するものと予測された(
図4C)。このことは、W222S変異によりUDPGの結合が障害されることを示唆している (
図4B)。
【0048】
自己グルコシル化解析
インビトロでGYG2変異の機能的効果を調べるため、COS-1細胞内で野生型(WT)及びW222S変異型のGYG2 (アイソフォームa) を一過的に過剰発現させ、自己グルコシル化の観察により各GYG2のグルコシルトランスフェラーゼ活性を測定した。免疫ブロッティングにより、組換えWT GYG2及び変異型GYG2のバンドが予測される通りの52 kDaのサイズで検出され、発現量は同程度であった(
図5A)。WT GYG2が妥当なグルコシルトランスフェラーゼ活性を示したのに対し、変異型GYG2は酵素活性がほぼ完全に失われており、Mockと同レベルであった(
図5B, 5C)。