特許第6183960号(P6183960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183960
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】土壌浄化装置
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/10 20060101AFI20170814BHJP
   B01D 53/38 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   B09B3/00 EZAB
   B01D53/38 110
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-134136(P2014-134136)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-10781(P2016-10781A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2016年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】三吉 純男
(72)【発明者】
【氏名】長 千佳
【審査官】 齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−279395(JP,A)
【文献】 特開2014−034028(JP,A)
【文献】 特開2002−136964(JP,A)
【文献】 特開平11−028436(JP,A)
【文献】 特開2004−202353(JP,A)
【文献】 特開平11−179336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09C 1/10
B01D 53/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油を分解する微生物が導入された油含有土壌の盛土の全体を取り囲むように設けられた囲繞部材と、
前記油含有土壌の盛土中に空気を供給する給気手段と、
前記囲繞部材により形成された室内の気体を外部に排出する排気手段と、
前記排気手段に接続され、前記囲繞部材により形成された室内の異臭物質を捕獲する捕獲手段と、
前記油含有土壌の盛土に水分を供給する給水手段と、
前記油含有土壌の盛土中の水分を排出する排水手段と、
を有し、
前記給水手段は、前記油含有土壌の盛土中に設けられた給水管を備え、
前記給水管は、内外を貫通する複数の給水孔が形成された給水内管と、その外周に設けられて内外を貫通する複数の給水孔が形成された給水外管とを備え、
前記給水外管の内周と前記給水内管の外周との間に形成された給水室を、前記給水管の延在方向に沿って複数の給水室に分割した、
ことを特徴とする土壌浄化装置。
【請求項2】
前記給気手段は、前記油含有土壌の盛土の底部に設けられた給気管を備え、
前記給気管と前記油含有土壌との間に給気管を保護する給気管保護部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の土壌浄化装置。
【請求項3】
前記給水手段は、前記油含有土壌の盛土中に設けられた給水管を備え、
前記給水管と前記油含有土壌との間に前記給水管を保護する給水管保護部材を設けたことを特徴とする請求項1または2記載の土壌浄化装置。
【請求項4】
前記給水手段は、前記囲繞部材により形成された室内に設けられ、前記油含有土壌の盛土の外部から水分を給水する給水装置を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の土壌浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌浄化装置に関し、例えば、油含有土壌を微生物により浄化する生物浄化技術(バイオレメディエーション)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオレメディエーションは、土壌中の有害物質を微生物により二酸化炭素や水等のような無害な物質に分解する技術であり、環境に優しく、洗浄法や加熱法等のような他の工法に比べて費用も安いこと等から油含有土壌の浄化工法として実用されている。
【0003】
特に、バイオレメディエーションの1つであるランドファーミング(固層処理法)は、作業性や管理性が良く、上記他の工法に比べて費用も安いこと等から油含有土壌の浄化に有利な工法として多用されている。
【0004】
このランドファーミングにおいては、例えば、油含有土壌を掘削して地上に盛土した後、その盛土に対して油分分解に優れた微生物および栄養塩を散布し、さらに、その盛土を重機により定期的に攪拌して土壌中を好気的条件に保つことにより、土着の微生物や散布した微生物の活性化を促して油分の分解を図るようにしている。
【0005】
なお、バイオレメディエーションによる土壌浄化技術については、例えば、特許文献1,2に記載がある。特許文献1には、油含有土壌の浄化に適した微生物の種類等が開示されている。また、特許文献2には、難透水性の汚染土壌を原位置で解砕した後、その汚染土壌に微生物に対する栄養分溶液を供給し、汚染土壌領域をビニールシート等で被覆して嫌気性微生物を活性化させ、汚染土壌を浄化する土壌浄化方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−291679号公報
【特許文献2】特開2006−122880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、バイオレメディエーションを適用する場合には、その特徴や適用性について充分に検討し、最適な管理条件を見出して実施することが必要であり、例えば、汚染土壌に添加する栄養塩の添加量や種類によっては、微生物による有害物質の分解中にアンモニア臭や腐敗臭等のような異臭が発生し、近隣環境に多大な影響を与える場合がある。
【0008】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、その目的は、油含有土壌を微生物により浄化するバイオレメディエーションおける異臭の問題を防止することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の土壌浄化装置は、油を分解する微生物が導入された油含有土壌の盛土の全体を取り囲むように設けられた囲繞部材と、前記油含有土壌の盛土中に空気を供給する給気手段と、前記囲繞部材により形成された室内の気体を外部に排出する排気手段と、前記排気手段に接続され、前記囲繞部材により形成された室内の異臭物質を捕獲する捕獲手段と、前記油含有土壌の盛土に水分を供給する給水手段と、前記油含有土壌の盛土中の水分を排出する排水手段と、を有し、前記給水手段は、前記油含有土壌の盛土中に設けられた給水管を備え、前記給水管は、内外を貫通する複数の給水孔が形成された給水内管と、その外周に設けられて内外を貫通する複数の給水孔が形成された給水外管とを備え、前記給水外管の内周と前記給水内管の外周との間に形成された給水室を、前記給水管の延在方向に沿って複数の給水室に分割した、ことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の本発明は、上記請求項1記載の発明において、前記給気手段は、前記油含有土壌の盛土の底部に設けられた給気管を備え、前記給気管と前記油含有土壌との間に給気管を保護する給気管保護部材を設けたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の本発明は、上記請求項1または2記載の発明において、前記給水手段は、前記油含有土壌の盛土中に設けられた給水管を備え、前記給水管と前記油含有土壌との間に前記給水管を保護する給水管保護部材を設けたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載の本発明は、上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、前記給水手段は、前記囲繞部材により形成された室内に設けられ、前記油含有土壌の盛土の外部から水分を供給する給水装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、油含有土壌を微生物により浄化するバイオレメディエーションにおける異臭の問題を防止することが可能になる。
また、囲繞部材で囲まれた室内の油含有土壌に対して水分を供給することが可能になる。
さらに、油含有土壌に対し、給水管から均等になるように水分を供給することが可能になる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、土壌浄化装置において油含有土壌に対して空気を供給する給気管を保護することが可能になる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、土壌浄化装置において油含有土壌に対して水分を供給する給水管を保護することが可能になる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、油含有土壌の外部から水分を供給することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態に係る土壌浄化装置の一例の構成図である。
図2】(a)は図1の土壌浄化装置の給水管を長手方向に沿って切断した面の要部断面図、(b)は図2(a)の領域Aの拡大断面図である。
図3】(a)は土壌浄化工程中の説明図、(b)は図3(a)に続く土壌浄化工程中の説明図である。
図4】(a)は図3(b)に続く土壌浄化工程中の説明図、(b)は図4(a)に続く土壌浄化工程中の説明図である。
図5図4(b)に続く土壌浄化工程中の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、「油含有土壌」とは、原油、重油、軽油、灯油、ガソリン、潤滑油、切削油、作動油、圧延油、絶縁油、エンジンオイル、ギアオイル、グリース等のような石油または石油を原料とする有機物を含む土壌をいい、例えば、石油により汚染された海岸の砂および土壌、石油に汚染された工場やガソリンスタンドの跡地の土壌、石油に汚染された廃棄物最終処分場の土壌および油田等のような天然の状態で石油を含有する土壌を含むものである。また、「浄化」とは、残留油分、油臭および油膜の低減または除去を意味する。
【0023】
まず、本実施の形態の土壌浄化装置の一例について図1および図2を参照して説明する。図1は本実施の形態の土壌浄化装置の一例の構成図、図2(a)は図1の土壌浄化装置の給水管を長手方向に沿って切断した面の要部断面図、図2(b)は図2(a)の領域Aの拡大断面図である。なお、図1は構成図であるが、図面を見易くするために一部にハッチングを付している。
【0024】
図1に示す本実施の形態の土壌浄化装置1は、油を分解する能力を有する微生物(3菌株)を利用して油含有土壌Sを浄化する装置であり、ビニールハウス(囲繞部材)2と、給気系(給気手段)3と、排水系(排水手段)4と、排気系(排気手段)5と、給水系6とを備えている。
【0025】
ビニールハウス2は、油含有土壌Sの盛土の周囲全体を取り囲むように設けられた構造体であり、地上に設置された積載板2aと、積載板2a上の油含有土壌Sの盛土を取り囲むように設置されたフィルム部材2bと、フィルム部材2bを支える複数本のパイプ(図示せず)とを備えている。
【0026】
積載板2aは、地上において油含有土壌Sの盛土を積載する領域に設置された下地形成部材であり、遮水シートと、その上に載置された敷鉄板とを有している。フィルム部材2bは、油含有土壌Sの盛土を取り囲み空間Rを形成する部材であり、例えば、透明なポリ塩化ビニル系の合成樹脂により形成されている。さらに、フィルム部材2bを支えるパイプは、例えば、鋼材により形成されている。このパイプ同士は継ぎ手により接続されている。特に限定されるものではないが、ビニールハウス2の幅(図1の左右横方向の寸法)は、例えば5.4m、ビニールハウス2の長さ(図1の紙面に垂直な方向の寸法)は、例えば22m、ビニールハウス2の高さは、例えば3.4m、油含有土壌Sの盛土の高さは、例えば2.4m、油含有土壌Sの盛土の幅(図1の左右横方向の寸法)は、例えば4mである。なお、上記の例では、ビニールハウス2のフィルム部材2bが透明である場合について説明したが、油含有土壌Sに導入された微生物が光を嫌う性質を有する場合には、光の透過を低減または防止する遮光部材によって、ビニールハウス2のフィルム部材2bを形成したり、ビニールハウス2を覆ったりしても良い。
【0027】
このように油含有土壌Sの盛土をビニールハウス2によって取り囲むことにより、油含有土壌Sの油を微生物により分解したときに発生した異臭物質をビニールハウス2内の空間Rに閉じ込め、外部に漏れないようにすることができる。また、油含有土壌Sの盛土中に予期しない多量の雨水が浸入するのを防止することができるので、雨水に起因する栄養塩等の量の変動を防止することができる。このため、微生物による浄化効率が栄養塩の量の変動に起因して低下する不具合を防止することができる。
【0028】
次に、給気系3は、ビニールハウス2内における油含有土壌S中の微生物に空気(酸素)を供給するための構成であり、給気経路に沿って順に、コンプレッサ3aと、レシーバタンク3bと、外部給気管3dと、複数本の内部給気管(給気管)3eとを備えている。
【0029】
コンプレッサ3aは、圧縮空気を発生し、油含有土壌Sに連続的または間欠的に空気を供給する空気発生源(給気機構部)であり、ビニールハウス2の外部に設置されている。このコンプレッサ3aの排気口はバルブ(図示せず)を介してレシーバタンク3bの注入口に機械的に接続されている。レシーバタンク3bは、コンプレッサ3aから供給された圧縮空気を貯めるタンク(給気機構部)であり、ビニールハウス2の外部に設置されている。このレシーバタンク3bにより、ビニールハウス2側に安定した圧の空気を供給することができるとともに、コンプレッサ3aを保護することができる。レシーバタンク3bの排気口は、バルブ(図示せず)を介して外部給気管3dに機械的に接続されている。外部給気管3dは、レシーバタンク3bと内部給気管3eとを機械的に接続し、レシーバタンク3bから送られた圧縮空気を、油含有土壌Sの盛土内の各内部給気管3eに送る外部配管(給気機構部)である。レシーバタンク3bと内部給気管3eとの間に、内部給気管3eに供給する圧縮空気の供給量を調節するレギュレータ(給気機構部)を設けても良い。なお、バルブは、各配管を開閉する部品(給気機構部)である。
【0030】
内部給気管3eは、外部給気管3dから送られた圧縮空気(酸素)を、ビニールハウス2内の油含有土壌S中の微生物に供給するための内部配管であり、油含有土壌Sの盛土の底部に埋設されている。各内部給気管3eは、例えば、一方向(図1の紙面に垂直な方向)に沿って線状に延在した状態で積載板2a上に固定されている。
【0031】
また、各内部給気管3eは、例えば、硬質塩化ビニル管により形成されており、その外周には、配管の内外を貫通する複数の給気孔が形成されている。外部給気管3dから内部給気管3eに送られた圧縮空気は、内部給気管3eの複数の給気孔を通じて油含有土壌S中に供給されるようになっている。このため、油含有土壌S中に空気を含ませるために油含有土壌Sを重機により撹拌するような大がかりな作業を低減することができる。また、重機の使用を低減できるので、騒音の発生も低減することができる。
【0032】
また、各内部給気管3eの外周は、保護部材(給気管保護部材、図示せず)により覆われている。この保護部材は、内部給気管3eを保護する部材であり、例えば、不織布により形成されている。このように内部給気管3eの外周に保護部材を設けたことにより、内部給気管3eの損傷を防止することができる。また、内部給気管3eの給気孔が、油含有土壌S中の石や泥等により塞がるのを防止することができる。このため、油含有土壌S中の微生物に対して安定した状態で空気を供給することができるので、微生物の増殖や活性を促進させることができる。なお、内部給気管3eは線状に限定されるものではなく、例えば、ビニールハウス2内において1本から複数に分岐した形状にしても良い。また、内部給気管3eは、塩化ビニル管に限定されるものではなく種々変更可能であり、例えば、金属により形成しても良い。また、上記においては各内部給気管3eの外周に保護部材を設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、複数本の全ての内部給気管3eをシート状の保護部材により覆うようにしても良い。この場合の保護部材は、例えば、弾力性に優れた立体網状フィラメントを不織布フィルターにより被覆することで形成されている。
【0033】
次に、排水系4は、油含有土壌S中の水分(微生物による油の分解により生じた水分を含む)を集めてビニールハウス2の外部に排出するための構成であり、排水路4aと、排水貯留槽(図示せず)とを備えている。排水路4aは、油含有土壌S中の水分を集める水路であり、ビニールハウス2内において油含有土壌Sの盛土の外周を取り囲むように形成されている。この排水路4aは、上記排水貯留槽に機械的に接続されている。
【0034】
次に、排気系5は、ビニールハウス2内の空間Rの気体を外部に放出するための構成であり、排気経路に沿って順に、排気管5aと、排気ブロア5bと、吸着塔(捕獲手段)5cとを備えている。
【0035】
排気管5aは、油含有土壌Sの盛土の外周を取り囲むように、ビニールハウス2の内壁面に沿って設置されている。この排気管5aを、例えば、硬質塩化ビニル管により形成されている。ただし、排気管5aを、例えば、鋼製パイプにより形成して上記したフィルム部材2bを支持する部材の一部としても良い。この排気管5aは、ビニールハウス2の外部の排気ブロア5bに機械的に接続されている。排気ブロア5bは、ビニールハウス2内の空間Rの気体を外方に吸引する装置であり、例えば、電動式の送風機により構成されている。この排気ブロア5bにより、ビニールハウス2内の空間Rの気体は、ビニールハウス2の外部に連続的または間欠的に排気されるようになっている。この排気ブロア5bの排気口は、ビニールハウス2の外部の吸着塔5cに機械的に接続されている。
【0036】
吸着塔5cは、排気ブロア5bから送られた気体中の異臭物質を吸着することにより、異臭物質が外部に漏れないようにする装置である。本実施の形態においては、ビニールハウス2内の油含有土壌S中の油を微生物により分解したときに発生した異臭物質等を吸着塔5cにより捕獲することができるので、バイオレメディエーションにおける異臭の問題を防止することができる。ここでは、吸着塔5cが1台の場合を例示したが、複数個の吸着塔5cを直列に接続しても良い。これにより、吸着塔5cが1台の場合よりも吸着塔5cの吸着面積を増やせるので異臭物質の吸着性能を向上させることができる。吸着塔5cの吸着材には、例えば、活性炭が使用されている。ただし、吸着材は、活性炭に限定されるものではなく種々変更可能である。また、異臭物質の種類に応じて、異なる吸着材を持つ吸着塔5cを直列に接続しても良い。
【0037】
次に、給水系6は、主にビニールハウス2内の油含有土壌Sの盛土中の微生物に水分を供給するための構成であり、複数本の給水管6aと、散水機(給水装置)6bとを備えている。
【0038】
給水管6aは、油含有土壌Sの盛土の内部から油含有土壌Sに水分を供給する配管であり、油含有土壌Sの盛土内において高さ方向のほぼ中間辺りに埋設されている。各給水管6aは、図1の紙面に対して垂直な方向に線状に延在しており、その一端部側で鋼矢板等により支持されている。そして、各給水管6aの一端部は、1つの配管に機械的に接続され、さらにビニールハウス2の外部に設置された給水ポンプ(図示せず)に機械的に接続されている。この給水ポンプにより、各給水管6aに対して水分が連続的または間欠的に送られ油含有土壌S内に供給されるようになっている。
【0039】
ここで、図2に示すように、給水管6aは、給水内管7と、その外周に設けられた給水外管8とを有する二重管構造になっている。給水内管7および給水外管8は、例えば、塩化ビニル管により形成されており、その各々の外周には、配管の内外を貫通する複数の給水孔7a,8a(図2(b)参照)が形成されている。特に限定されるものではないが、給水内管7の外径は、例えば、20mm、給水外管8の外径は、例えば、60mmである。
【0040】
給水内管7の外周には、吸収膨張性部材9が設置されている。吸収膨張性部材9は、例えば、吸水性ポリマーとスチレンブタジエンゴム(SBR)系合成ゴムとにより形成されており、水の吸収により膨張し、遮水をすることが可能な部材である。この吸収膨張性部材9は、給水管6aの延在方向に沿って予め決められた間隔(例えば2m)毎に設置されている。これにより、給水内管7の外周と給水外管8の内周との間の給水室は、給水管6aの延在方向に沿って上記予め決められた間隔毎に分割されている。その結果、長い給水管6aから油含有土壌Sに対して、ほぼ均等に水分を供給することができる。
【0041】
給水外管8の外周には、その延在方向に沿って凹凸が繰り返し形成されており、保護部材(給水管保護部材)10がバンド(図示せず)等により固定されている。この保護部材10は、給水管6aを保護する部材であり、例えば、不織布により形成されている。このように給水管6aの外周に保護部材10を設けたことにより、給水管6aの損傷を防止することができる。また、給水外管8の給水孔8aが、油含有土壌S中の石や泥等により塞がるのを防止することができる。このため、油含有土壌S中の微生物に対して安定した状態で水分を供給することができるので、微生物の増殖や活性を促進させることができる。また、上記したように給水管6aを二重管構造にするとともに、給水管6aの外周を保護部材10で覆うことにより、給水管6aに供給された水分は、油含有土壌S中に急激に放出されず、少しずつ放出されるようになっている。
【0042】
散水機6bは、油含有土壌Sの盛土の外側から油含有土壌Sに対して水分を供給する散水装置であり、ビニールハウス2内の天井に設置されている。散水機6bは、ビニールハウス2内の天井に固定しても良いが、油含有土壌Sの平面の長手方向(図1の紙面に垂直な方向)に沿って移動可能な状態で設置しても良い。このように本実施の形態においては、油含有土壌Sの盛土の内部に給水管6aを設けるとともに、油含有土壌Sの盛土の外部に散水機6bを設けることにより、油含有土壌Sの盛土の内外から水分を供給することができる。このため、油含有土壌Sの全域に水分を供給することができるので、微生物の増殖や活性を促進させることができる。なお、給水管6aと散水機6bとのいずれか一方を設置する構成にしても良い。また、油含有土壌Sに対して水分供給(微生物に対する水分供給と、その他の場合も含む)の必要が無い場合は、給水系6を設けなくても良い。
【0043】
次に、本実施の形態の土壌浄化方法の一例について図3図5を参照して説明する。図3図5は土壌浄化工程の説明図である。
【0044】
まず、図3(a)に示すように、作業者は、土壌を浄化する対象領域の油含有土壌Sに対して所定量の微生物(3菌株)および栄養塩を散布する。栄養塩としては、例えば硫安(窒素(N))および過リン酸石灰(リン(P))が使用されている。
【0045】
続いて、図3(b)に示すように、微生物等が散布された油含有土壌Sを重機15により撹拌することにより油含有土壌Sと微生物および栄養塩とを混合した後、図4(a)に示すように、その油含有土壌Sを重機15により土壌積載領域の積載板2a上に盛り上げる。積載板2a上には、複数本の内部給気管3eが予め設置されている。また、積載板2aの上方の予め決められた高さには、給水管6aが鋼矢板等により支持されている。このため、図4(b)に示すように、積載板2a上に油含有土壌Sを堆積し終えると、複数本の内部給気管3eおよび給水管6aは油含有土壌Sの盛土内に埋め込まれる。
【0046】
その後、油含有土壌Sの盛土を取り囲むようにビニールハウス2を組み立てた後、図5に示すように、給気系3、排気系5および排水系6を構築する。その後、給気系3によりビニールハウス2内の油含有土壌Sに空気(酸素)を連続的または間欠的に送り込むとともに、給水系6により油含有土壌Sの内外に水分を連続的または間欠的に供給する。また、ビニールハウス2の空間R内の気体を排気系5によりビニールハウス2の外部に連続的または間欠的に排気する。このとき、本実施の形態においては、ビニールハウス2内において、微生物による油含有土壌S中の油の分解等により発生した異臭物質を吸着塔5cにおいて捕獲することができるので、バイオレメディエーションにおける異臭の問題を防止することができる。
【0047】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0048】
例えば、ビニールハウスの底部に車輪を取り付ける等により、ビニールハウスを移動させることが可能な構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明に係る土壌浄化装置は、微生物による油含有土壌の浄化に有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 土壌浄化装置
2 ビニールハウス
2a 積載板
2b フィルム部材
3 給気系
3a コンプレッサ
3b レシーバタンク
3d 外部給気管
3e 内部給気管
4 排水系
4a 排水路
5 排気系
5a 排気管
5b 排気ブロア
5c 吸着塔
6 給水系
6a 給水管
6b 散水機
7 給水内管
8 給水外管
9 吸収膨張性部材
10 保護部材
15 重機
S 油含有土壌
R 空間
図1
図2
図3
図4
図5