特許第6183963号(P6183963)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6183963ディーゼルエンジンの燃焼室、ディーゼルエンジンの燃焼室において燃料−空気の混合気を点火するための方法、およびディーゼルエンジン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183963
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ディーゼルエンジンの燃焼室、ディーゼルエンジンの燃焼室において燃料−空気の混合気を点火するための方法、およびディーゼルエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02B 23/02 20060101AFI20170814BHJP
   F02B 23/04 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   F02B23/02 N
   F02B23/04 A
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-535179(P2014-535179)
(86)(22)【出願日】2012年10月15日
(65)【公表番号】特表2014-528555(P2014-528555A)
(43)【公表日】2014年10月27日
(86)【国際出願番号】IB2012002237
(87)【国際公開番号】WO2013054188
(87)【国際公開日】20130418
【審査請求日】2015年10月13日
(31)【優先権主張番号】102011116372.0
(32)【優先日】2011年10月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514094117
【氏名又は名称】ボリソフスキー,ウラジミール
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ボリソフスキー,ウラジミール
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/059144(WO,A1)
【文献】 特開平09−317470(JP,A)
【文献】 特開2007−071037(JP,A)
【文献】 特開平06−074049(JP,A)
【文献】 実開昭50−008326(JP,U)
【文献】 特表2003−500608(JP,A)
【文献】 特開昭63−120815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 23/02
F02B 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン底面を有するピストン(2)とシリンダヘッド表面を有するシリンダヘッド(1)とを有し、燃焼室軸(7)を有する、ディーゼルエンジンの燃焼室であって、
ピストン底面及び/又はシリンダヘッド表面には、少なくとも1つの凹部(3、4)が設けられ、該少なくとも1つの凹部は、ピストンが上死点に位置するときに実質的に燃焼室を形成すると共に、該凹部に対向するピストン底面またはシリンダヘッド表面に対し遮られることなく面するように構成され、
燃料−空気の混合気の点火のための1つの点火装置(6、6a、6b)が、燃焼室軸に沿って配されるとともに、少なくとも1つの凹部に対し燃焼室軸の径方向に遮られることなく面するように構成され
点火装置は、i)凹部の全長にわたって延びるグロープラグを有するか、または、ii)凹部の全長にわたって延びるグロープラグおよびロッドを有し
ここで、点火装置(6、6a、6b)は、燃焼室軸に対してラジアルインパルス成分のみを有している、円筒状の点火インパルスが生じるような方法で、燃焼室軸(7)に沿って線形点火を生じさせるように調整されており、
ここで、シリンダヘッドにおける凹部は、以下の規則:
a) 凹部が、シリンダヘッド表面に位置し且つ円錐の形態を有し、その先端が、ピストン底面の方へ方向付けられておらず、点火装置が、円錐の先端に位置付けられている、または、
b) 凹部が、シリンダヘッド表面に位置し且つ円錐台の形態を有し、その先端が、ピストン底面の方へ方向付けられておらず、点火装置が、円錐台の軸上に位置付けられている、または、
c) 凹部が、シリンダヘッド表面に位置し且つ1つの円錐と少なくとも1つの円錐台との組み合わせから又は少なくとも2つの円錐台の組み合わせから結果として生じる段差状の形態を有し、点火装置が、凹部軸上に位置付けられている、
の1つによって形成され、
及び/又はピストン底面における凹部は、以下の規則:
d) 凹部が、ピストン底面に位置し且つ円錐の形態を有し、その先端が、シリンダヘッド表面の方へ方向付けられておらず、点火装置が、凹部軸上に位置付けられている、または、
e) 凹部が、ピストン底面に位置し且つ円錐台の形態を有し、その上面が、シリンダヘッド表面の方へ方向付けられておらず、点火装置が、凹部軸上に位置付けられている、または、
f) 凹部が、ピストン底面に位置し且つ1つの円錐と少なくとも1つの円錐台との組み合わせから又は少なくとも2つの円錐台の組み合わせから結果として生じる段差状の形態を有し、点火装置が、凹部軸上に位置付けられている、
の1つによって形成され、
ここで、規則a)乃至c)に関して、ピストン底面と、円錐または円錐台の母線との角度が、40°〜50°で設けられており、規則d)乃至f)に関して、シリンダヘッド表面と、円錐または円錐台の母線との角度が、40°〜50°で設けられており、その結果、ラジアルインパルス成分は、その全体が、燃焼室軸に沿って凹部によって調整されることを特徴とする、燃焼室。
【請求項2】
中央の凹部およびその周囲の少なくとも1つの環状の溝が、シリンダヘッド及び/又はピストンに設けられ、ここで、点火室の中央の縦断面における凹部または溝は、三角形、台形、または段差状の形態を有し、点火装置は、中央の凹部軸上に位置付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の燃焼室。
【請求項3】
点火室の中央の縦断面における凹部はすべて、三角形、台形、または段差状の形態を有し、点火装置は、中央の凹部軸上に位置付けられていることを特徴とする、請求項2に記載の燃焼室。
【請求項4】
ピストン底面と、環状の溝および中央の凹部の母線との角度が、40°〜50°であり、及び/又はシリンダヘッド表面と、環状の溝および中央の凹部の母線との角度が、40°〜50°であることを特徴とする、請求項2または3に記載の燃焼室。
【請求項5】
延びたグロープラグ(6a)及び/又は金属またはセラミックのロッドが、点火装置(6、6a、6b)として設けられることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項6】
ロッド(6b)が、ピストン底面の中心から又はピストン(2)における凹部(4)の中心から突出することを特徴とする、請求項5に記載の燃焼室。
【請求項7】
点火装置(6、6a、6b)が、凹部(4)の軸全体上の燃料−空気の混合気の点火を同時に引き起こすように適合されて、設けられていることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項8】
点火装置(6、6a、6b)は、燃焼室軸に対する点火装置の垂直方向の延長が、≧10%、≧20%、≧30%、≧40%、≧50%、≧60%、≧70%、≧80%、または≧90%であるように適合されて、設けられていることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項9】
燃焼室軸(7)は、凹部(3、4)内に位置することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項10】
円錐の底面の半径は、シリンダの半径より小さく、及び/又は円錐台の底面の半径は、シリンダの半径より小さいことを特徴とする、請求項1乃至9のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項11】
少なくとも1つの注入手段は、燃料及び/又は空気の注入のために設けられ、ここで、これらの注入手段の少なくとも1つは、注入方向が燃焼室軸と一致しないように配向され、ここで注入方向は、30°〜150°、60°〜120°、または90°の角度で燃焼室軸に配向されることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項12】
注入手段の注入方向は、30°〜150°の角度で燃焼室軸に配向されることを特徴とする、請求項11に記載の燃焼室。
【請求項13】
注入手段の注入方向は、90°の角度で燃焼室軸に配向されることを特徴とする、請求項12に記載の燃焼室。
【請求項14】
空気用の注入手段および燃料用の注入手段が、燃焼室軸に対して対称的に配され、ここで、両注入手段の注入方向が1つの軸上または異なる軸上にあることを特徴とする、請求項11乃至13のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項15】
空気用の注入手段の注入方向および燃料用の注入手段の注入方向が、1つの軸上にあることを特徴とする、請求項14に記載の燃焼室。
【請求項16】
1つを超える凹部がある状態で、各々の追加の凹部の軸上に、燃料−空気の混合気のための追加の点火装置として機能するロッドが設けられることを特徴とする、請求項1乃至15のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項17】
環状の溝において、金属またはセラミックでできた円筒状の要素(16)が、燃料−空気の混合気のための追加の点火装置として機能するように挿入されることを特徴とする、請求項2に係る請求項3乃至16のいずれかに記載の燃焼室。
【請求項18】
ディーゼルエンジンの燃焼室において燃料−空気の混合気を点火するための方法であって、
ここで、燃焼室は、シリンダヘッド表面を有するシリンダと、ピストンヘッド底面を有するピストンと、燃焼室軸とを有するとともに、シリンダヘッド表面及び/又はピストン底面において凹部を有し、該凹部は、ピストンが上死点に位置するときに実質的に燃焼室を形成すると共に、該凹部に対向するピストン底面またはシリンダヘッド表面に対し遮られることなく面するように構成され、
燃焼室軸(7)に沿って、燃料−空気の混合気の点火のための点火装置が位置するとともに、該点火装置は、凹部に対し燃焼室軸の径方向に遮られることなく面するように構成され
ここで点火装置は、i)凹部の全長にわたって延びるグロープラグを有するか、または、ii)凹部の全長にわたって延びるグロープラグおよびロッドを有し
および点火装置は、燃焼室軸に対してラジアルインパルス成分のみを有している、円筒状の点火インパルスが生じるような方法で、燃焼室軸(7)に沿って線形点火を生じさせるように適合されており、
ここで、シリンダヘッドにおける凹部は、以下の規則:
a) 凹部が、シリンダヘッド表面に位置し且つ円錐の形態を有し、その先端が、ピストン底面の方へ方向付けられておらず、点火装置が、円錐の先端に位置付けられている、または、
b) 凹部が、シリンダヘッド表面に位置し且つ円錐台の形態を有し、その先端が、ピストン底面の方へ方向付けられておらず、点火装置が、円錐台の軸上に位置付けられている、または、
c) 凹部が、シリンダヘッド表面に位置し且つ1つの円錐と少なくとも1つの円錐台との組み合わせから又は少なくとも2つの円錐台の組み合わせから結果として生じる段差状の形態を有し、点火装置が、凹部軸上に位置付けられている、
の1つによって形成され、
及び/又はピストン底面における凹部は、以下の規則:
d) 凹部が、ピストン底面に位置し且つ円錐の形態を有し、その先端が、シリンダヘッド表面の方へ方向付けられておらず、点火装置が、凹部軸上に位置付けられている、または、
e) 凹部が、ピストン底面に位置し且つ円錐台の形態を有し、その上面が、シリンダヘッド表面の方へ方向付けられておらず、点火装置が、凹部軸上に位置付けられている、または、
f) 凹部が、ピストン底面に位置し且つ1つの円錐と少なくとも1つの円錐台との組み合わせから又は少なくとも2つの円錐台の組み合わせから結果として生じる段差状の形態を有し、点火装置が、凹部軸上に位置付けられている、
の1つによって形成され、
ここで、規則a)乃至c)に関して、ピストン底面と、円錐または円錐台の母線との角度が、40°〜50°で設けられており、規則d)乃至f)に関して、シリンダヘッド表面と、円錐または円錐台の母線との角度が、40°〜50°で設けられており、
ここで、燃焼室軸に沿った線形点火が実行され、その結果、ラジアルインパルス成分は、その全体が、燃焼室軸に沿って凹部によって調整されることを特徴とする、方法。
【請求項19】
請求項1乃至17のいずれかに記載の燃焼室が使用されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1乃至17のいずれかに記載の燃焼室を特徴とする、ディーゼルエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの燃焼室、ディーゼルエンジンの燃焼室において燃料−空気の混合気を点火するための方法、およびディーゼルエンジンに関する。
【0002】
本発明は、機械構造およびエンジン構造の分野に関し、異なるタイプのディーゼルエンジンの適用が見られ;それは、特別なタイプの燃焼室の構成によって、また燃料−空気の混合気のための定義された配置(orientation)を有する点火装置の併用によっても実現される。
【0003】
本発明は、燃料分子の運動エネルギーの、有用な仕事へのより効果的な変換、すなわち、ディーゼルエンジンの性能及び有効性の程度の向上を保証する。
【背景技術】
【0004】
ピストン底部およびシリンダヘッドにおける凹部によって構成され、円筒形状を有している、ディーゼルエンジンの燃焼室が知られている(Intellectual Property Certificate of the USSR no. 337547, Cl. F 02 B 23/08, 1972.)。
【0005】
円筒状の燃焼室を備えるが、燃料−空気の混合気のために必要な点火の変形(variants)を有さない、ピストンエンジンは、運動の燃料分子の有用な仕事への非効率的な変換のために、性能が低く、有効性の程度が低い。
【0006】
シリンダヘッドおよびピストン底部における凹部として構成され、上昇する(with elevation)バルブを備える、ディーゼルエンジンの燃焼室が知られている(Patent DE 3145073, Class F02 B 45/10, 1983)
【0007】
そのような燃焼室の構成、および燃料−空気の混合気の点火のために必要とされる変形の欠如は、燃料分子の運動エネルギーの有用な仕事への効果的な変換、および燃焼エンジンの性能及び有効性の程度の向上を許さない。
【0008】
ピストンエンジンの燃焼室の変形が知られており、その構成は、ピストン底部の平面およびシリンダヘッドにおける少なくとも1つの凹部、またはシリンダヘッドの平面およびピストン底部の平面における少なくとも1つの凹部または少なくとも2つの凹部にあり、そのシリンダヘッドにおける凹部およびピストン底面における凹部から成り、あるいはピストン底面における1つの凹部およびシリンダヘッド表面における少なくとも1つの凹部とともにある。凹部は、角錐、角錐台、円錐、または円錐台の形態、燃焼室の縦断面で、半球、半球セグメント(hemisphere segment)、放物面、または段差の形態、あるいは燃焼室の横断面で、螺旋または環状の溝の形態を有する(Patent of the Russian Federation no. 2249718, Class F 02 F1/21, F02 F3/28, F02 B23/00, 2005)。
【0009】
ディーゼルエンジンにおける複数の適用の変形は、燃料分子の運動エネルギーの有用な仕事への効率的な変換を保証することができない。これらの燃焼室の最良の変形の欠点は、燃料−空気の混合気のために必要な点火の変形の欠如にあり、そのために、燃料分子の運動エネルギーの有用な仕事への最大の効率的な変化、およびエンジンの性能および有効性の程度の向上は可能ではない。
【0010】
レシピエント(recipient)においてN分子が存在する場合には、どんな時でも、N/3の分子が任意の方向に縦に移動し、これによって、それらの半分(すなわちN/6分子)は、現在の移動方向に関連して一方向に縦に移動し、残りの半分は、他方向に移動するはずであることが周知である(Saweljew I. W., General Physics Course in 4 volumes, Vol. 1, p. 363. Moskau, "Knorus" 2009.)。
【0011】
これはまた、ディーゼルエンジンの燃焼室における燃料−空気の混合気の燃焼の結果として形成された燃焼室で形成されたガスにも当てはまる。
【0012】
シリンダ壁によって、ならびにピストン底部およびピストンヘッドの表面によって形成された従来の燃焼室を使用するときには、ピストン底面に作用する燃料(燃焼生成物)の分子によってのみ有用な仕事が行われるように、膨張するガスのエネルギーの大部分は、効率的に使用されない。最大の有用な仕事は、ピストン底面に垂直に作用する分子によってのみ行われる。
【0013】
シリンダ壁に垂直に作用する分子は、ピストンが下死点の方向に移動する際に関与しない。
【0014】
ガス分子のかなりの部分が、シリンダ壁に対するその作用を発揮するとき、これらの分子の運動エネルギーは有効に使用されず、これらの分子によって行われた有用な仕事は、非常にわずかであり、結果として、燃焼エンジンの有効性の程度が十分でなく、同様に性能も十分でない。
【発明の概要】
【0015】
本発明の課題は、燃焼エンジンのための燃焼室を提供することにあり、それによって、より効率的な燃焼が可能となる。特に、ディーゼルエンジンの特別に設計された燃焼室の多くの変形が示され、その使用は、燃料分子の自由度間で必要とされた再分配につながる。さらに、ディーゼルエンジンの燃焼室における燃料−空気の混合気の点火のための手順が示される。
【0016】
この課題は、請求項1に係るディーゼルエンジンの燃焼室、請求項27に係るディーゼルエンジンの燃焼室における燃料−空気の混合気の点火のための手順、および請求項29に係るディーゼルエンジンの助けを借りて解決される。さらなる記載が従属請求項において提供される。
【0017】
本発明は、燃料分子によって行われる有用な仕事の大幅な向上に加えて、エンジンの有効性の程度の増加を可能にする。
【0018】
凹部および特別な点火設備を備えた推奨される本発明の使用により達成される技術的効果は、燃料分子の自由度間でのエネルギーの再分配にあり、そこで、ピストンの移動軸に対する長手方向における分子の前方への移動に関連付けられた自由度に対する最大エネルギーが除外され(換言すれば、相当する燃料分子の自由度の減少が生じる)、その結果、無秩序な動きは生じず、むしろ燃料分子のピストンの方向への目標を持った(targeted)移動が生じ、これにより、1サイクル内での衝撃波(衝撃波は、ピストンの移動軸に沿って仕事室内で移動する)の生成、維持および多重反射のための条件が保証される。これは、燃料分子の運動エネルギーの有用な仕事へのより効率的な変換、すなわち、ディーゼルエンジンの有効性の程度の向上につながる。
【0019】
本発明の本質的な側面は、点火装置が燃焼室の軸に対して長手方向に配置され、燃焼室の軸に対して線形の(linear)自己点火を起こすように適合されていることである。燃焼室の軸に沿った配置は、燃焼室の軸上に置くことのみならず、燃焼室の軸に平行な配置も含む。
【0020】
燃料分子の自由度間のエネルギーのこのような再分配は、燃料分子によって行われる有用な仕事、およびその結果の、エンジンの有効性の程度を実質的に向上させることができるという事実によって保証される。より正確には、組み合わせ効果(combinatory effect)は、特別な点火装置と組み合わせて、凹部を有する燃焼室の特別な幾何学的形状によって作り出される。これは、ディーゼル燃料分子の自由度間のエネルギーの再分配につながり、ピストンの移動軸に対して長手方向の分子の前方への移動に関連付けられた自由度に対する最大エネルギーの除外を引き起こす。したがって、無秩序な動きは生じず、むしろ燃料分子のピストンの方向への目標を持った移動が生じ、これにより、1サイクル内での衝撃波(衝撃波は、ピストンの移動軸に沿って仕事室内で移動する)の生成、維持および多重反射のための条件が保証される。
【0021】
より正確には、燃焼室の幾何学的形状は、燃焼室の縦軸に沿った衝撃波の前後振動を可能にし、これにより、凹部の特別な幾何学的形状は、燃焼室の軸の半径方向から長手方向に点火インパルスの方向転換を引き起こす。このような燃焼室の幾何学的形状は、WO2004/059144 A1から既知であるが、特別な点火装置とは組み合わせられていない。
【0022】
様々な点火装置がこれまでに知られているが、それらは、常に点状(punctual)点火を引き起こし、その結果、球状の点火インパルスが形成された。この球状の点火インパルスにより、分離された立体角セグメントのみが凹部を通って燃焼室の縦軸の方向に方向転換され、一方、大きな角度セグメント領域は、長手方向のいずれのインパルスにも寄与しない。
【0023】
この状況は、ここで点火装置が燃焼室の軸に沿って線形点火を作り出すように適合されているという事実によって、本発明によって改善される。点状点火または無秩序な自己点火の代わりに、中心から発する球状(spherical)点火がここでは生じず、むしろ円筒状の点火インパルスが生じ、そこで、燃焼室の長手方向の軸に対してラジアルインパルス成分のみが存在する。これらのラジアルインパルス成分は、燃焼室の軸に対して長手方向の凹部によってのみ、その全体が調整され得る。
【0024】
したがって、点状点火または無秩序な自己点火の場合には、点火インパルスの分離された立体角領域のみを移動軸に対して長手方向の凹部によって調整することができ、本発明において用いられる線形点火の場合には、線形点火は、半径方向の効果を有するインパルスおよび(シリンダインパルスの被覆表面が考慮される場合には)移動軸の長手方向の効果を有するインパルスからなるため、これは、本質的には、点火インパルス全体を指す。
【0025】
燃焼室の軸に対して長手方向の関係にある線形点火を用いて、凹部と組み合わせて本発明において特定されるように、ディーゼルエンジンの有効性の程度が著しく向上する。
【0026】
公知のように、ディーゼル燃料は、特定の温度で自己点火し、この必要な温度は、ディーゼル燃料の注入前に供給された空気の断熱圧縮によって提供されている。点火の補助物(auxiliary)(例えば、グロープラグの形態)が、開始手順のみに必要である。本発明の教示を実施するために、専門家は、自己点火のプロセスのための生殖細胞として実際に作用し、ディーゼル燃料によって燃焼室の軸上の自己点火を誘発させる、適切な自己点火装置を選択しなければならない。
【0027】
燃焼室の軸の長手方向の経路上の自己点火を引き起こす点火装置として、特に長い構成のグロープラグ自体に加えて、燃焼室の軸上で配置された、燃焼温度に感知しない金属(例えばステンレススチール)、セラミックなどの物質でできたロッドを使用することができる。そのようなロッドが認識される場合、点火の補助物は、燃焼室の軸上に必ずしも配置される必要はない。好ましくは、点火の補助物およびロッドは組み合わされ、その結果、本質的に、燃焼室の軸全体が覆われる。
【0028】
特に、点火装置の調整が好適であり、これは、燃焼室の軸全体にわたって自己点火に本質的に影響を与えるはずである。「燃焼室の軸全体」とは、点火時にピストン表面とシリンダヘッド表面との間の明確な高さであると理解され、これによって、凹部は、特にこの明確な高さにわたって延び、つまり、明確な高さ全体は、本質的に凹部内にある。
【0029】
代替的には、燃焼室に対する点火装置の垂直方向の延長はまた、≧10%、≧20%(好適)、≧30%(より好適)、≧40%(さらにより好適)、≧50%(高度に好適)、≧60%(より高度に好適)、≧70%(特に好適)、≧80%(非常に好適)、および≧90%(とりわけ好適)の顕著な利点をもたらす。
【0030】
特に好適な発達において、少なくとも1つの注入手段、特に注入ノズルは、ディーゼル燃料及び/又は空気の注入のためと認識され、これによって、これらの注入手段の少なくとも1つは、注入の方向が燃焼室の軸と一致しないように配される。したがって、注入装置は、燃焼室の軸に対して、30°〜150°の角度、好ましくは60°〜120°の角度、および特に90°の角度で配される。このような場合には、注入中に既に、ディーゼル燃料−空気の混合気には半径方向の動きが与えられ、これは、燃焼に対して好ましい効果を有する。
【0031】
この文脈において、空気注入手段およびディーゼル燃料注入手段が、燃焼室の軸に対して対称的に配置されることが好適であり、両注入手段の注入方向が1つの軸上に位置している場合は特に好適である。
【0032】
凹部が方向転換を特に効果的にするように構成されているため、燃料−空気の混合気のための異なる点火手順を併用して、特別に設計された燃焼室を使用することによって、前記技術的効果は、以下に列挙される本発明の変形の各々において特に効果的となる。
【0033】
ピストン底部の平面によって、およびシリンダヘッド内の凹部によって形成されたディーゼルエンジンの燃焼室では、本発明の凹部は、円錐の形状を有し、その先端は、ピストン底部の表面に向いておらず、ピストン底部の平面と円錐の母線との角度は、40〜50°であり、円錐の基底面の半径は、シリンダの半径以下であり得、これによって、燃焼室の軸上に延びたグロープラグは、点火装置として機能するか、あるいは点火装置は、凹部の軸に位置する、グロープラグと、スチールロッドまたは高い熱容量を有する別の物質でできたロッドとの組み合わせであり得る。
【0034】
ディーゼルエンジンの燃焼室の第2の変形では、シリンダヘッドの凹部は、円錐台の形状を有し、その上面は、ピストン底部の平面の方向に配されておらず、ピストン底部の平面と円錐の母線との角度は、40〜50°であり、円錐の基底面の半径は、シリンダの半径以下であり得、これによって、燃焼室の軸上に延びたグロープラグは、点火装置として機能するか、あるいは点火装置は、凹部の軸に位置する、グロープラグと、スチールロッドまたは高い熱容量を有する別の物質でできたロッドとの組み合わせであり得る。
【0035】
ディーゼルエンジンの燃焼室の第3の変形では、シリンダヘッドの凹部は、円錐および少なくとも1つの円錐台の組み合わせによって、または少なくとも2つの円錐台の組み合わせによって形成された段差状の構成を有し、ピストン底部の平面と円錐の母線との角度は、40〜50°であり、円錐の基底面の半径は、シリンダの半径以下であり得、これによって、燃焼室の軸上に延びたグロープラグは、点火装置として機能するか、あるいは点火装置は、凹部の軸に位置する、グロープラグと、スチールロッドまたは高い熱容量を有する別の物質でできたロッドとの組み合わせであり得る。
【0036】
第4の変形では、ディーゼルエンジンの燃焼室は、ピストン底部の平面およびシリンダヘッドにおける少なくとも1つの凹部によって形成され、本発明に係るこの凹部は、環状の溝として又は中央の凹部と少なくとも1つの環状の溝との組み合わせとして構成され、中央の縦断面における凹部は、三角形、台形、または段差状の形態を有し、およびピストン底部の平面と環状の溝の母線との角度は、40〜50°であり、円錐の基底面の半径は、シリンダの半径以下であり得、これによって、燃料−空気の混合気のための点火装置(例えば、スパークプラグ、グロープラグまたはレーザスパークプラグ)は、その軸に沿って円錐の先端またはシリンダヘッドの表面の中心に配される。
【0037】
第5の変形では、ディーゼルエンジンの燃焼室は、シリンダヘッドの平面およびピストン底面における少なくとも1つの凹部によって形成され、本発明に係るこの凹部は、円錐として構成され、その先端は、シリンダヘッド表面の方に方向付けられておらず、シリンダヘッドの平面と円錐の母線との角度は、40〜50°であり、円錐の基底面の半径は、シリンダの半径以下であり得、これによって、燃焼室の軸上に延びたグロープラグは、点火装置として機能するか、あるいは点火装置は、凹部の軸に位置する、グロープラグと、スチールロッドまたは高い熱容量を有する別の物質でできたロッドとの組み合わせであり得る。
【0038】
ディーゼルエンジンの燃焼室の第6の変形では、ピストン底面における凹部は、円錐台の構成を有し、その上面は、シリンダヘッド表面の方に方向付けられておらず、ピストン底部の平面と円錐の母線との角度は、40〜50°であり、円錐の基底面の半径は、シリンダの半径以下であり得、これによって、燃焼室の軸上に延びたグロープラグは、点火装置として機能するか、あるいは点火装置は、凹部の軸に位置する、グロープラグと、スチールロッドまたは高い熱容量を有する別の物質でできたロッドとの組み合わせであり得る。
【0039】
ディーゼルエンジンの燃焼室の第7の変形では、ピストン底面における凹部は、円錐および少なくとも1つの円錐台の組み合わせによって、または少なくとも2つの円錐台の組み合わせによって形成された段差状の構成を有し、ピストン底部の平面と円錐の母線との角度は、40〜50°であり、円錐台の基底面の半径は、シリンダの半径以下であり得、これによって、燃焼室の軸上に延びたグロープラグは、点火装置として機能するか、あるいは点火装置は、凹部の軸に位置する、グロープラグと、スチールロッドまたは高い熱容量を有する別の物質でできたロッドとの組み合わせであり得る。
【0040】
第8の変形では、ディーゼルエンジンの燃焼室は、シリンダヘッドの表面およびピストン底面における少なくとも1つの凹部によって形成され、本発明に係るこの凹部は、環状の溝として又は中央の凹部と少なくとも1つの環状の溝との組み合わせとして構成され、中央の縦断面における凹部は、三角形、台形、または段差状の形態を有し、およびシリンダヘッドの平面と環状の溝の母線との角度は、40〜50°であり、これによって、燃焼室の軸上に延びたグロープラグは、点火装置として機能するか、あるいは点火装置は、凹部の軸に位置する、グロープラグと、スチールロッドまたは高い熱容量を有する別の物質でできたロッドとの組み合わせであり得、および環状の溝において、燃料−空気の混合気のための点火装置としても機能することができる要素である、同じ物質でできた円筒要素があり得る。
【0041】
列挙されたすべての変形において、燃焼室の滑らかな壁の加工品質がより精確になるほど、本発明の有用な仕事がより効率的になる。
【0042】
上記の凹部形状(これにより、ディーゼルエンジンの燃焼室が構成される)は、燃料−空気の混合気のための点火装置(ロッドおよび高い熱容量を有する円筒状の金属要素)との組み合わせで、燃料分子の目標を持った動きの好適な形成を生じさせ、これにより、最大数の燃料分子を有効な仕事に変換することができる。上死点(upper dead center)におけるピストンの位置決めの際に、推奨されるエンジン室の変形において円筒状の壁が存在しないことは、燃料分子におけるエネルギーの非有効利用の減少(例えば、スパークプラグまたは短いグロープラグを使用するとき)を決定付ける。
【0043】
燃料−空気の混合気のための本発明の点火装置(ロッドおよび高い熱容量を有する円筒状の金属要素)と組み合わせて、推奨される燃焼室の変形を使用することは、燃料分子の運動エネルギーの有用な仕事へのより効率的な変換に加えて、ディーゼルエンジンの性能の向上および有効性の程度の向上につながる。
【0044】
各燃焼室の変形における壁の最大の平滑さが、波効果の抑制を目的とし、衝撃波、ならびに電磁気、光、赤外線、紫外線波が、燃焼室壁に反射されるとき、燃焼室の、発熱が減少される。したがって、燃焼室壁における熱損失および冷却手段への熱放出に起因する熱損失を減少させることができる。さらに、過度に高い温度による燃焼室の破壊を防止することができる。
【0045】
燃焼室において作り出された音響波及び衝撃波は、燃焼室壁による反射によってさらなる有用な仕事をもたらす。これは、燃料分子の運動エネルギーの有用な仕事への効率的な変換の改善に加えて、燃焼エンジンの性能の向上および有効性の程度の向上につながる。
【0046】
本発明に記載されるように、独立した保護が点火手順および燃焼エンジンに必要とされる。本発明に記載されるようなディーゼルエンジンは、専門家に既知の様式で構築され、本発明に記載されるような点火装置を含む。
【0047】
特に他に明記のない限り、本発明の様々な特徴は、互いに組み合わせることができる。
【0048】
本発明の特徴および他の利点は、好適な実施例の記載により以下において明らかになる。本発明の説明は、以下の完全な概略図によって行われる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は、ピストン底部の平面によって及びシリンダヘッドにおける凹部によって形成された燃焼室を通る縦断面を示し;凹部は、円錐の形状を有し、点火装置は、円錐軸上にある。
図2図2は、シリンダヘッドの表面、およびピストン底面における円錐台の形態で凹部にある燃焼室を示す。
図3図3は、ピストン底部の平面によって及びシリンダヘッドにおける段差状の凹部によって形成された燃焼室、ならびに燃焼室の縦断面を示す。
図4図4は、シリンダヘッド表面及びピストン底面における段差状の凹部によって形成された燃焼室、ならびに燃焼室の縦断面を示す。
図5図5は、ピストン底部の平面によって形成された、およびシリンダヘッドにおける中央の凹部と環状の溝との組み合わせからの、燃焼室を示し;縦断面における凹部は、三角形を有し、図は、溝における円形−円筒状の要素を表わす(この図はまた、ピストン底部またはシリンダヘッドにおける7つの円錐状の凹部によって形成された、燃焼室の縦断面を示す)。
図6】シリンダヘッド平面から成る、およびピストン底部における中央の凹部と環状の溝との組み合わせからの、燃焼室を示し;縦断面において、凹部は、段差状の形態を有する(この図はまた、ピストン底部またはシリンダヘッドにおける7つの円錐状の凹部によって形成された、燃焼室の縦断面を示す)。
図7図7は、図6に提示される燃焼室の断面(中央の凹部と環状の溝との組み合わせ)を示す。
図8図8は、ピストン底部の平面と、7つの円錐状の凹部を有するシリンダヘッドから成る燃焼室の横断面を示す(この燃焼室の中央の縦断面は、図5で表わされる)。
図9図9は、注入配列(injection collocation)に関する構成を示す。
図10図10は、注入配列に関する構成を示す。
図11図11は、注入配列に関する構成を示す。
図12図12は、点火装置に関する構成を示す。
図13図13は、点火装置に関する構成を示す。
図14図14は、点火装置に関する構成を示す。
図15図15は、点火装置に関する構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明に記載されるように燃焼エンジンの燃焼室は、シリンダ1およびピストン2を示すことが明らかに分かる。燃焼室は、ピストン底部2の平面およびシリンダヘッドにおける凹部3によって形成される(例えば、図1参照)。燃焼室はまた、シリンダヘッド1の平面およびピストン底部における凹部4によって形成することができる(例えば、図2参照)。代替的には(図示せず)、ピストン2およびシリンダヘッド1における凹部を組み合わせることができる。
【0051】
凹部3及び4の各々は、円錐、円錐台または段差の形状を有する。凹部3及び4はまた、螺旋または環状の溝として構成することができ、この溝は、燃焼室の縦断面において、三角形、台形または段差状の形態を有し、または半円またはアーチに限定される。
【0052】
燃焼室壁5の表面は、衝撃効果を反映するために、最大の平滑さで製造される。また、点火装置6、6a、6bおよび燃焼室は、燃焼室の軸7を有することが分かる。図1乃至4では、燃料−空気の混合気のための点火装置6が、凹部の軸上に位置付けられることが留意され得る。
【0053】
ピストンヘッドまたはシリンダヘッドと、円錐または円錐台の母線との間で設定される最適な角度は、40°〜50°である。角度が、40°より小さい又は50°より大きくなる場合は、燃料分子の運動エネルギーの有用な仕事への変換効率が減少する。
【0054】
本発明は以下のように機能する。以下の変形を考えてみると:円錐状の凹部は、平面と円錐の母線とを45°の角度で、延びたグロープラグの使用および点火装置(高い熱容量を有する金属ロッド)によって、燃料−空気の混合気の同時点火を決定付ける。
【0055】
レーザビームまたはグロープラグを使用するときに、燃焼室の軸7に沿ったグロープラグ単独での又は組み合わさった点火装置6a、6bでの燃料−空気の混合気の点火は、点火線に対して半径方向の移動方向を燃料分子(燃焼生成物の分子)に向ける。45°より小さい角度で凹部壁5で反射された後、分子は、平行で、非交差の移動経路上をピストン運動の方向に沿ってその動きを続け、その後平面によって反射され、円錐状の凹部の方向にその動きを再開し;これは、1サイクルの過程で数回起こる。燃料分子とシリンダ壁の表面との間では接触は起こらない、つまり、すべての分子が有用な仕事を行う。時間単位の経過において分子が包含する距離が等しくなると、分子は、ピストン底部の平面またはシリンダヘッドに対して平行に狭い前方に移動し、これは、エンジンのサイクル時間を著しく超える長時間の間に、分子の起こり得る衝突およびシステムの混乱を防止する。結果として生じる電磁波および衝撃波に加えて、高エネルギーガス粒子は、燃焼室の平滑面5によって反射され、それにより、その発熱が減少し、ガスおよび波の両方の運動エネルギーの有用な仕事への効率的な変換が保証される。このようにして、ピストンへの圧力が著しく増加し、燃焼エンジンのシリンダブロックの発熱が著しく減少し、これは、結果として、そのライフサイクルの延長をもたらす。
【0056】
図9において、シリンダヘッド1における点火装置6(長いグロープラグとして構成される)、空気用の注入ノズル8、およびディーゼル燃料用の注入ノズル9が提示されている。注入ノズル8、9は、その注入方向がライン10上にあり、対称に配されていることが分かる。このライン10は、燃焼室軸7に対して垂直に配される。このようにして、作り出された燃料−空気の混合気が既に燃焼室軸7に対してラジアルインパルス部分を示しているため、最大効果が達成され、これとは別に、混合気の画像は非常に対称的に構成され、混合気の一部は、空気と燃料との衝突により非常に細かく粉砕され、これがまた、より良い燃焼につながる。
【0057】
図10において、2つの注入ノズル8、9は、垂直に配されておらず、むしろ燃焼室軸7に対して鋭角α未満で配されている。ここでも、好ましい効果が得られ、なぜなら、燃料−空気の混合気は、ラジアルインパルス部分を示すからである。
【0058】
図9および図10は、シリンダヘッド1において凹部3を有する燃焼室の幾何学的形状を示し、図11は、ピストン2に凹部4を有する燃焼室の幾何学的形状を示し、ここで、注入ノズル8、9は、垂直に配されておらず、むしろ燃焼室軸7に対して鋭角α未満で配されている。
【0059】
図12乃至15では、様々な点火装置の変形が、異なる燃焼室の幾何学的形状と関連してさらに詳細に示され、これによって、図12および14の凹部3は、シリンダヘッド1に位置付けられ、および図13および15の凹部4は、ピストン底部2に位置付けられる。図12および13では、点火装置6は、長いロッド6bを有する短いグロープラグとして構成されるが、一方で、図14および15では、点火装置は、短いロッド6bを有する長いグロープラグとして構成される。
【0060】
ディーゼルエンジンを始動させるときに、グロープラグ6aは、点火の補助物として機能し、操作中に、グロープラグ6aおよびロッド6bは、燃焼室軸上の自己点火を誘発するための点火装置6として共に作用する。グロープラグ6aおよびロッド6bは共に、本質的に、燃焼室軸全体を覆い、その結果、完全なシリンダ形状のインパルス分布(impulse distribution)が結果的に生じる。ロッド6bが省略されるか又は短くされると、この効果は縮小され、一方で、本発明では、自己点火が、燃焼室軸の一部に直線的に並んで起こることが分かる。
【0061】
<ソースリスト>
1. Intellectual Property USSR no. 337547, KI F 02 B 23/08, 1972.

2. Patent DE 3145073 A1, Class F 02 B 45/10, 1983

3. Patent of the Russian Federation no. 224918, Cl. 02 F1/21, F 02 F3 28, F 02 B23/00, 2005

4. Saweljew I. W., General Physics Course in 4 volumes, Vol. 1, p. 363. Moscow, "Knorus" 2009
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