(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CVD法により形成されたシリコン酸化膜を、希ガスのプラズマに曝すことにより、前記シリコン酸化膜の表面から4nm以上300nm以下の深さまでの改質層を形成する曝露工程を含み、
前記シリコン酸化膜が形成されてから4000分経過後の前記シリコン酸化膜の応力値の絶対値が40MPa以下である前記シリコン酸化膜、又は前記シリコン酸化膜が形成されてから4000分経過後に、前記シリコン酸化膜の応力値の変動の幅が20MPa以下である前記シリコン酸化膜を形成する、
シリコン酸化膜の製造方法。
前記曝露工程において、前記プラズマに曝している間の少なくとも一部に、前記シリコン酸化膜に引き込むための電力が印加されていることにより、前記改質層を形成する、
請求項8に記載のシリコン酸化膜の製造方法。
前記曝露用チャンバーにおいて、前記プラズマを前記シリコン酸化膜に引き込むための電力が印加されている間の少なくとも一部に、前記プラズマに曝すことにより、前記改質層を形成する、
請求項15又は請求項16に記載のシリコン酸化膜の製造装置。
CVD法により形成されたシリコン酸化膜を、酸素又は窒素の高密度プラズマに曝すことにより、前記シリコン酸化膜の表面から4nm以上300nm以下の深さまでの改質層を形成する曝露工程を含み、
前記シリコン酸化膜が形成されてから4500分経過後の前記シリコン酸化膜の応力値の変動の幅が5MPa以下である、前記シリコン酸化膜を形成する、
シリコン酸化膜の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。尚、この説明に際し、全図にわたり、共通する部分には共通する参照符号を付す。また、図中、本実施形態の要素は必ずしもスケール通りに示していない。また、以下の各種ガスの流量は、標準状態の流量を示す。
【0025】
<第1の実施形態>
図2は、本実施形態のシリコン酸化膜の製造装置100の構成を示す一部断面図である。本図面は概略図であるため、公知のガス供給機構の一部や排気機構の一部を含む周辺装置は省略されている。
【0026】
図示しない基板搬送チャンバーによって搬送された基板20は、チャンバー40の中央付近に設けられたステージ41に載置される。基板20及びチャンバー40内は、チャンバー40の外壁に備え付けられたヒーター44a,44bにより加熱される。チャンバー40には、酸素(O
2)ガスのガスボンベ42aがガス流量調整器43aを介して接続されており、希ガス(代表的には、ヘリウムガス又はアルゴンガス)のガスボンベ42bがガス流量調整器43bを介して接続されている。また、テトラエチルオルソシリケート(以下、「TEOS」と表記する)用キャビネット42cが液体流量調整器43cを介して接続されている。なお、TEOS用キャビネット42cからチャンバー40に至るまでの配管は、図示されていないヒーターにより、約100℃に加熱されている。また、本実施形態では、TEOSが用いられているが、TEOSの代わりにシランやジシランが用いられてもよい。
【0027】
また、図示されていないが、本実施形態では、TEOS用キャビネット42cにはTEOSをチャンバー40に向けて送り出すためのキャリアガスが導入されている。また、酸素(O
2)ガスのガスボンベ42a、ヘリウムガス又はアルゴンガスのガスボンベ42b、及びTEOSキャビネット42cから送り込まれたガスは、最終的には同一の経路を通ってチャンバー40に到達する。高周波電源46aは、シャワーヘッドガス導入部45に高周波電力を印加することにより、シャワーヘッドガス導入部45から吐出した上記ガスをプラズマ化する。生成されたプラズマは、必要に応じて高周波電源46bにより高周波電力が印加されたステージ41上の基板20に到達する。本実施形態においては、(1)シリコン酸化膜の形成工程が行われた後、(2)希ガスプラズマの曝露工程が行われる。
【0028】
シャワーヘッドガス導入部45は、リング状のシール材Sによってチャンバー40とは電気的に絶縁されている。また、ステージ41もリング状のシール材Sによってチャンバー40とは電気的に絶縁されている。また、このチャンバー40内を減圧し、かつプロセス後に生成されるガスを排気するため、チャンバー40には真空ポンプ47が排気流量調整器48を介して接続されている。さらに、このチャンバー40からの排気流量は排気流量調整器48により変更される。上述のガス流量調整器43a,43b、液体流量調整器43c、ヒーター44a,44b、第1高周波電源46a、第2高周波電源46b及び排気流量調整器48は、制御部49により制御される。本実施形態においては、シリコン酸化膜の形成工程が行われた後、希ガスプラズマが生成される前に十分な排気が行われることが好ましい。
【0029】
なお、酸素プラズマに曝すことを確度高く防ぐために、本実施形態のチャンバー40における希ガスプラズマの曝露工程の代わりに、シリコン酸化膜を外気に曝すことなく、基板搬送チャンバーによって他のチャンバー40と同様の機能を備えたチャンバー内に基板20(及びシリコン酸化膜)を移した後、希ガスを含む(但し、酸素を含まない)ガスのプラズマに曝露する工程も、採用し得る他の一態様である。
【0030】
次に、チャンバー40におけるプロセスについて説明する。
【0031】
(1)シリコン酸化膜の形成工程
本実施形態では、まず、(1)シリコン酸化膜の形成工程として、加熱された基板20が、チャンバー40を用いてTEOSガスと酸素ガスとから形成されるプラズマに曝露される。具体的には、チャンバー40内の圧力が100Paとなるまで、50sccmのTEOSガスと酸素ガスがチャンバー40に供給される。次に、ステージ41の温度が200℃になるまでヒーター44bが加熱される。その後、シャワーヘッドガス導入部45には、13.56MHzにおいて450W〜500Wの高周波電力が印加される。また、ステージ41には、380kHzにおいて100Wの低周波電力が印加される。本実施形態では、上記のプラズマ条件によるシリコン酸化膜形成工程が10分間行われる。このシリコン酸化膜の形成工程において採用される条件によって、低ストレスの(内部応力が少ない)シリコン酸化膜が形成される。
【0032】
なお、本実施形態では、ステージ41の温度が200℃に設定されているが、本実施形態はこの温度に限定されない。例えば、ステージ41の温度が50℃以上であれば、処理時間は異なるが、本実施形態の効果と同様の効果が奏され得る。また、ステージ41の温度の上限は特に限定しないが、高コスト及び長時間のプロセスを避ける観点から、ステージ41の温度は500℃以下に設定されることが好ましい。特に、本実施形態において採用されるTEOSガスと酸素ガスとから形成されるプラズマによって形成されるシリコン酸化膜は、成膜の低温化を実現し得るプロセスとして技術的に優位である。同様の観点から、ステージ41の温度は350℃以下に設定されることがさらに好ましい。また、本実施形態の基板20の材質は特に限定されないが、代表的な材質はシリコンである。また、その他の採用し得る材質の例は、石英ガラス及びホウケイ酸ガラスに代表される耐熱ガラス、シリコンカーバイド(SiC)、各種セラミックス、ガリウム砒素(GaAs)、又はサファイアである。
【0033】
その後、チャンバー40内において、十分な排気が行われた後、シリコン酸化膜に対して、希ガスプラズマの曝露工程が行われる。
【0034】
(2)希ガスプラズマの曝露工程
具体的なプロセスの一例を示すと、チャンバー40内の圧力が50Pa以上250Pa以下(代表的には、100Pa)となるまで、ヘリウムガスが100sccm以上2000sccm以下(代表的には、500sccm)供給される。
【0035】
次に、ステージ41の温度が50℃以上350℃以下(代表的には、200℃)になるまでヒーター44bが加熱される。ここで、基板20の温度を安定化させるため、60秒以上待機する。その後、シャワーヘッドガス導入部45には、第1高周波電源46aにより、200W以上1000W以下(代表的には、475W)の第1高周波電力が印加される。本実施形態では、シリコン酸化膜が、上記の条件によって生成されたプラズマに、約1分間〜約5分間曝される。なお、前述のステージの温度範囲に設定された場合の基板20の温度の上昇は、該ステージの温度よりも数十℃高くなる程度である。なお、本実施形態においては、円形のシャワーヘッドガス導入部(上部電極)の外径及び円形のステージ41(下部電極)の外径(
図1のd)のいずれもが240mmであることから、本実施形態の第1高周波電源46aによるパワー密度は、約0.44W/cm
2以上約2.21W/cm
2以下(代表的には、約1.05W/cm
2)になる。また、このパワー密度の算出方法は、後述する他の実施形態にも適用される。
【0036】
なお、第1高周波電源46aの印加電力は、上述の範囲内に限定されない。但し、仮に印加電力が200W未満の場合は、他の処理条件(例えば、チャンバー40内の圧力)との関係によって本実施形態の効果が十分に奏されない可能性が生じ得る。また、仮に印加電力が1000Wを超える場合は、正常な放電状態が形成され難くなるという問題が生じ得る。前述の各理由により、より好適な第1高周波電源46aの印加電力の範囲は、300W以上500W以下である。
【0037】
また、希ガスプラズマの曝露工程において、基板20に対して第2高周波電源46bが印加されなくても良いが、シリコン酸化膜に対してバイアスを印加することによってイオンを用いた物理的な改質効果を促進する観点から、第2高周波電源46bを印加することは好適な一態様である。代表的には、第2高周波電源46bにより、基板20に対して100W超1000W未満が印加される。加えて、希ガスプラズマの曝露工程において、例えば、特開2007−96051号公報に示される公知のカソードカップリング法が採用される態様(第1高周波電源46aが無く、第2高周波電源46bに13.56MHz印加)も、本実施形態の変形例として採用され得る。また、その他の採用し得る態様として、本実施形態の第2高周波電源46bの代わりに、第1高周波電源46aと同様の周波数(13.56MHz)の高周波電源も、本実施形態の他の変形例として採用され得る。
【0038】
さらに、希ガスプラズマの曝露工程における希ガスプラズマの曝露時間も、上述の期間に限定されない。但し、仮に曝露時間が1分よりも短い場合は、他の処理条件(例えば、チャンバー40内の圧力)との関係によって本実施形態の効果が十分に奏されない可能性が生じ得る。また、仮に曝露時間が15分を超える場合は、生産性を低下させる可能性が高まる。前述の各理由により、好ましい曝露時間は1分以上15分以下であり、より好適な曝露時間は3分間以上5分間以下である。
【0039】
上記のプロセスにより、
図3に示すように、シリコン酸化膜30が製造される。より具体的には、発明者らの本願出願時における知見によれば、シリコン酸化膜30の表面から4nm以上300nm以下の深さまでの改質層30aが形成され得る。なお、下限値を4nmとした理由は、後述する評価結果による。他方、改質層30a以外の領域は、実質的に希ガスプラズマに曝される前のシリコン酸化膜と同質のシリコン酸化膜30bが残存していると考えられる。また、4nm未満の深さの改質であれば、大気中に存在する水分等の外部要因の影響を十分に低減できない可能性が高まるため、好適ではない。一方、300nmを超える深さの改質は、生産性の低下を招く可能性があるため好適ではない。なお、特にストレスの絶対値に着目する場合は、改質層の深さが300nmを超える厚さになると、そのシリコン酸化膜自身の特性の変化を生じさせることに加えて、経時変化を生じ難くなったとしてもストレスの絶対値が大きくなるため、好ましくない。なお、
図3における説明は、後述する第2の実施形態のシリコン酸化膜130、第3の実施形態のシリコン酸化膜230、並びに第4の実施形態及びその変形例のシリコン酸化膜にも適用される。
【0040】
なお、上述のプロセス条件では、シリコン酸化膜をプラズマに曝露する時間を約1分以上としているが、曝露時間が1分未満(例えば45秒以上)であっても、
図3に示すようなシリコン酸化膜30が製造され得る。
【0041】
なお、本実施形態においては、希ガスとしてヘリウムガスを採用したが、希ガスの種類はこれに限定されない。例えば、ヘリウムガスの代わりに、ネオン(Ne)ガス、アルゴンガス、クリプトン(Kr)ガス、又はキセノン(Xe)ガスが用いられても良い。さらに、前述の各希ガスのうちの2種類以上のガスがチャンバー40内で混合して用いられることも採用し得る他の一態様である。なお、特に、アルゴンガスが採用された場合は、後述するように、シリコン酸化膜をアルゴンガスから生成したプラズマに曝露する時間が非常に短い時間(例えば、30秒)であっても、シリコン酸化膜の物性(特に、内部応力及びリーク電流値)の、成膜直後からの経時的な変化が低減されたシリコン酸化膜30を製造することができる。
【0042】
また、本実施形態においては、上述の(1)シリコン酸化膜の形成工程が行われたチャンバー40内において(2)希ガスプラズマの曝露工程が行われているが、本実施形態はこの態様に限定されない。例えば、外気(特に、外気中の水分)に曝されないように、図示しない十分に排気された基板搬送チャンバーを利用して、上述の(1)シリコン酸化膜の形成工程のチャンバーとは異なるチャンバーに移した後、該チャンバーにおいて(2)希ガスプラズマの曝露工程が行われることも採用し得る他の一態様である。
【0043】
なお、上述のシリコン酸化膜の形成工程と希ガスプラズマの曝露工程とが、それぞれ別の処理装置によって処理され、かつ上述の基板搬送チャンバーが設けられていない場合、シリコン酸化膜の形成工程と希ガスプラズマの曝露工程との間の基板20の搬送の際にシリコン酸化膜30が外気に曝されることは避けられない。しかしながら、そのような場合であっても、シリコン酸化膜30が外気に曝される時間が数十時間以内(より具体的には、約40時間以内)であって、より好ましくは、約10時間以内であれば、本実施形態によって得られる効果の少なくとも一部は奏され得る。加えて、上述のシリコン酸化膜の形成工程と希ガスプラズマの曝露工程との間の基板20の搬送に代表される、シリコン酸化膜30が外気に曝され得る状況下においては、湿度が適切に制御されたクリーンルーム内においてシリコン酸化膜30が外気に曝されることが好ましい。また、公知の密閉型容器内に基板20(及びシリコン酸化膜30)が収容された状態で、シリコン酸化膜30が外気に曝されることが好ましい。但し、最も好ましくは、シリコン酸化膜の形成工程と希ガスプラズマの曝露工程との間の基板20の搬送の際にシリコン酸化膜30が外気に曝されないようにすることである。従って、希ガスプラズマの曝露工程に至るまでに、シリコン酸化膜30ができるだけ外気に曝されないようにすることは、水分等の影響を極力低減することにつながるため、好ましい。
【0044】
<第2の実施形態>
本実施形態のシリコン酸化膜130及びその製造方法、並びにその製造装置は、第1の実施形態における(2)希ガスプラズマの曝露工程において希ガスのプラズマに加えて水素(H
2)ガスのプラズマを用いている点を除き、第1の実施形態と同様である。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0045】
図4は、本実施形態のシリコン酸化膜の製造装置200の構成を示す一部断面図である。第1の実施形態と同様に、本図面は概略図であるため、公知のガス供給機構の一部や排気機構の一部を含む周辺装置は省略されている。
【0046】
また、本実施形態では、第1の実施形態のシリコン酸化膜30の製造装置100に加えて、水素ガスのガスボンベ42dがガス流量調整器43dを介してチャンバー40に接続されている。
【0047】
上述の(1)シリコン酸化膜の形成工程が行われた後、本実施形態では、チャンバー40内において、十分な排気が行われた後、シリコン酸化膜に対して、(2)希ガスプラズマの曝露工程が行われる。
【0048】
具体的なプロセスの一例を示すと、チャンバー40内の圧力が50Pa以上250Pa以下(代表的には、100Pa)となるまで、ヘリウムガスが100sccm以上2000sccm以下(代表的には、500sccm)供給されるとともに、水素ガスが10sccm以上50sccm以下(代表的には、50sccm)供給される。
【0049】
なお、第2の実施形態においては、ヘリウムガスと水素ガスとが同時にチャンバー40内に導入されているが、本実施形態はこの態様に限定されない。例えば、シリコン酸化膜を、ヘリウムガスに代表される希ガスから生成されたプラズマに曝露した後に、水素ガスから生成されたプラズマに曝露することも採用し得る一態様である。他方、シリコン酸化膜を、水素ガスから生成されたプラズマに曝露した後に、ヘリウムガスに代表される希ガスのみから生成されたプラズマに曝露することも採用し得る他の一態様である。上述のいずれの態様であっても、本実施形態の効果と同等の又は少なくとも一部の効果が奏される。但し、より確度高く、第2の実施形態の効果を奏させる観点から言えば、ヘリウムガスと水素ガスとが同時にチャンバー40内に導入されることによってプラズマが形成されることが好ましい。
【0050】
次に、ステージ41の温度が50℃以上350℃以下(代表的には、200℃)になるまでヒーター44bが加熱される。ここで、基板20の温度を安定化させるため、60秒以上待機する。その後、シャワーヘッドガス導入部45には、第1高周波電源46aにより、200W以上1000W以下(代表的には、475W)の第1高周波電力が印加される。本実施形態では、シリコン酸化膜が、上記の条件によって生成されたプラズマに、約1分〜約5分間曝される。希ガスプラズマの曝露工程において、基板20に対して第2高周波電源46bが印加されなくても良いが、シリコン酸化膜に対してバイアスを印加することによってイオンを用いた物理的な改質効果を促進する観点から、第2高周波電源46bを印加することは好適な一態様である。なお、代表的には、第2高周波電源46bにより、基板20に対して50W以上500W以下が印加される。
【0051】
上記のプロセスにより、
図3に示すように、シリコン酸化膜130が製造される。より具体的には、発明者らの本願出願時における知見によれば、シリコン酸化膜130の表面から4nm以上300nm以下の深さまでの改質層130aが形成される。他方、改質層130a以外の領域は、実質的に希ガスプラズマに曝される前のシリコン酸化膜と同質のシリコン酸化膜130bが残存していると考えられる。なお、本実施形態においても、改質層の厚みについては、第1の実施形態と同様の理由から、第1の実施形態と同様の数値範囲が好ましい。
【0052】
なお、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、シリコン酸化膜130が外気に曝される時間が数十時間以内(より具体的には、約40時間以内)であって、より好ましくは、約10時間以内であれば、本実施形態によって得られる効果の少なくとも一部は奏され得る。また、第1の実施形態と同様に、シリコン酸化膜の形成工程によって形成されたシリコン酸化膜130が、希ガスプラズマの曝露工程に至るまでに、できるだけ外気に曝されないようにすることは、好適な一態様である。
【0053】
<第1及び第2の各実施形態におけるシリコン酸化膜の評価結果>
(1)内部応力の経時的変化
図5は、シリコン酸化膜30を外気に曝したときの該シリコン酸化膜30の内部応力の時系列的な変化を示すグラフである。なお、
図5においては、希ガスの例は、ヘリウムとアルゴンである。また、比較例として、第1の実施形態における希ガスの代わりに、プラズマ密度が比較的低い酸素(O
2)又は窒素(N
2)のみをシリコン酸化膜に曝したサンプルについても、内部応力の時系列的な変化を調査した。なお、この内部応力の値は、より具体的には、薄膜応力測定装置(東邦テクノロジー社、型式:FLX-2320-S(KLA Tencor))を用いて測定された。なお、前述の比較例においては、チャンバー40内の圧力が100Paとなるまで、酸素又は窒素が500sccm供給されることによって形成されたプラズマをシリコン酸化膜に曝している。
【0054】
図5に示すように、比較例のいずれもが、成膜直後から継続的に、内部応力が引張応力(+)から圧縮応力(−)に大きく変化することが明らかとなった。その一方で、シリコン酸化膜30は、希ガスがヘリウムであってもアルゴンであっても、成膜直後から180時間が経過しても、内部応力の変動が殆ど見られなかった。また、シリコン酸化膜30が形成されてから200時間経過後であっても、シリコン酸化膜30の応力値が−20MPa以上20MPa以下であることは特筆に値する。
【0055】
また、調査を進めた結果、
図6に示すように、シリコン酸化膜130の内部応力は、成膜直後(より具体的には、曝露工程の直後)から4000分(約66.67時間)が経過しても、その変動の幅が、20MPa以下に収まっていることも確認できた。なお、
図6に示す「第2の実施形態」の結果は、第2の実施形態における、ヘリウムガスが500sccm、水素ガスが47.5sccm、及び処理時間(プラズマの曝露時間)が5分の条件に基づく結果である。一方、
図6における比較例(A)、比較例(B)は、いずれも、一旦形成したシリコン酸化膜を外気に曝した後、希ガスプラズマの曝露工程をすることなく、大気中に放置した例である。シリコン酸化膜130の内部応力は、成膜直後から4000分(約66.67時間)が経過すると、その変動の幅が、130MPa程度となっている。詳細なメカズムは不明であるが、これは、主に外気(大気)中の水分吸着やその他の気体分子の吸着・化学反応等による影響であると考えられる。なお、比較例(A)、比較例(B)のデータの取得は、再現性の確認のため行われた。従って、第2の実施形態のシリコン酸化膜130によれば、シリコン酸化膜の物性(特に、内部応力)の、成膜直後からの経時的な変化が低減されたシリコン酸化膜を製造することができる。特に、シリコン酸化膜130が形成されてから4000分(約66.67時間)経過後であっても、シリコン酸化膜130の応力値の絶対値が40MPa以下であることが明らかとなった。その結果、該酸化膜が用いられた各種のデバイスの信頼性及び安定性の向上が実現され得る。なお、上述の
図5及び
図6におけるシリコン酸化膜30,130及び比較例の各シリコン酸化膜は、希ガスプラズマの曝露工程を除いて、いずれも同様の条件で形成されている。
【0056】
(2)フッ化水素(蒸気)に対する耐エッチング性
加えて、本願発明者らによる更なる研究と分析によって、以下の興味深い知見が得られた。具体的には、シリコン酸化膜30,130に対して、フッ化水素(蒸気)に曝露することによって表面から約11nmの深さまでエッチングしてから少なくとも2時間、該シリコン酸化膜の応力の経時的変化が約2MPa以内に収まっており、ほとんど変化がなかった。一方、シリコン酸化膜30,130に対して、前述の同様の方法で表面から約27nmの深さまでエッチングしてから該シリコン酸化膜の応力の変化を調べると、当初約−15MPaであったのが、2時間後には約−100MPaになっていることが確認された。従って、25nm以下の深さまでの改質層30aが形成されていることが分かる。この範囲の深さであれば、シリコン酸化膜の物性の経時変化を抑えるとともに、生産性の低下及び/又はシリコン酸化膜の特性の変化を招くことなく、シリコン酸化膜全体の物性への影響を抑える観点から好適な一態様である。なお、改質層30a,130aの実効性を高める観点も併せて考慮すれば、該改質層30a,130aの深さがシリコン酸化膜30,130の表面から25nm以上であることがより好ましい。
【0057】
また、本願発明者らの研究と分析によれば、第2の実施形態のシリコン酸化膜130は、その応力値及びフッ化水素(蒸気)に対する耐エッチング性の観点で、第1の実施形態のシリコン酸化膜30のそれらの結果と同等又はそれらよりも好ましい結果であることが分かった。
【0058】
さらに、本願発明者らは、シリコン酸化膜30,130について内部応力とは別の観点から特性を調査した。表1は、本実施形態におけるシリコン酸化膜30の、フッ化水素(蒸気)に対する耐エッチング性を示している。比較のために、上述の(1)シリコン酸化膜の形成工程が行われただけの(つまり、希ガスプラズマの曝露工程がされていない)シリコン酸化膜と、公知の条件による熱酸化膜についても、同様にフッ化水素(蒸気)に曝露したときの耐エッチング性を調査した。なお、本特性の測定(エッチレートの測定)は、大日本スクリーン社製の膜厚測定装置(型式:ラムダエースVM−1200)を用いて、エッチング前後の膜厚を測定することによって行われた。
【0059】
表1に示すように、第1及び第2の実施形態におけるシリコン酸化膜30,130は、フッ化水素の蒸気に曝されたときに、少なくとも改質層30a,130aのエッチレートが30nm/分以下という、従来の低ストレスを目的としたCVD法によるシリコン酸化膜には見られなかった耐エッチング性の高い、非常に興味深い物性を備えていることが確認できた。なお、表1の「希ガスプラズマの曝露工程後」における数値27(nm/min.)は、該シリコン酸化膜形成直後、及び該シリコン酸化膜形成から4000分(約66.67時間)外気に曝した後の値である。また、表1の「希ガスプラズマ+水素プラズマの曝露工程後」における数値11(nm/min.)は、該シリコン酸化膜形成直後の値であり、数値12(nm/min.)は、該シリコン酸化膜形成から4000分(約66.67時間)外気に曝した後の値である。また、表1の「希ガスプラズマの曝露工程なし」における数値178(nm/min.)は、該シリコン酸化膜形成直後の値であり、数値263(nm/min.)は、該シリコン酸化膜形成から4000分(約66.67時間)外気に曝した後の値である。従って、希ガスプラズマの曝露工程が行われていない場合は、該シリコン酸化膜形成から時間が経つほど、エッチレートが速くなることが確認された。
【0060】
一方、上述の各実施形態においては少なくとも改質層30a,130aではないと考えられる、深さ300nmを超える領域(
図3における30b,130b)のエッチレートが、希ガスプラズマに曝される前のシリコン酸化膜と同程度である非常に高い値(例えば、200nm/分)であることが分かった。換言すれば、上述の各実施形態においては、少なくとも深さ300nm以下の範囲が改質層30a,130aであると考えられる。これらの結果から、第1及び第2の実施形態におけるシリコン酸化膜30,130は、上述のとおり、エッチレートの経時変化が少ない改質層30a,130aと、それ以外の層(
図3における30b,130b)とを備えていることが分かる。なお、特に、第2の実施形態におけるシリコン酸化膜130においては、熱酸化膜に匹敵する耐エッチング性が得られたことは特筆に値する。
【0062】
(有効な改質層の厚みの特定)
また、本願発明者らは、希ガスプラズマの曝露時間(各グラフ中では「処理時間」として表されている)を変化させたときの、フッ化水素に曝露した積算時間の変化に対するシリコン酸化膜のエッチング速度の変化とともに、シリコン酸化膜の内部応力の時系列的な変化を調査、分析することにより、有効な改質層の下限値を特定する実験を行った。より具体的には、希ガスプラズマの曝露時間を変化させて作製された各サンプルに対して、フッ化水素に30秒ずつ曝露させたものについて、それぞれエッチレートの測定が行われた。
【0063】
図7は、第1の実施形態の実施形態における希ガスプラズマの曝露時間を変化させたときの、フッ化水素に曝露した積算時間の変化に対するシリコン酸化膜のエッチング速度の変化を示すグラフである。ここで、
図7における横軸は、30秒ずつ曝露させる処理の積算時間を意味している。また、
図8は、
図7の結果を踏まえて作成された、希ガスプラズマの曝露時間を変化させたときのシリコン酸化膜の改質層の厚みに関する近似式を得るためのグラフである。具体的には、
図8は、
図7から得られた、エッチレートの変動が少ない時間の幅(時間の長さ)を、改質層の膜厚に換算した値又は算出値をグラフ化したものである。加えて、
図9は、第1の実施形態の実施形態における希ガスプラズマの曝露時間を変化させたときのシリコン酸化膜の内部応力の時系列的な変化を示すグラフである。なお、
図7における比較例として、公知の条件で作製された熱酸化膜に対する結果が示されている。また、
図8における白抜きの菱形で示される値は、近似式から算出された、処理時間1分未満(具体的には、15秒と30秒)における算出値である。
【0064】
図7乃至
図9に示すように、希ガスプラズマの曝露時間(処理時間)が1分以上であれば、経時的な応力の変動が抑えられることが確認できた。従って、
図8のグラフから、改質層の厚みが40Å、すなわち4nm以上であれば、応力の経時的な変化が抑えられることが明らかとなった。
【0065】
(3)リーク電流値の評価
第1の実施形態のシリコン酸化膜30を外気に曝したときの、リーク電流値(絶縁性)の経時変化を評価した。表2は、第1の実施形態のシリコン酸化膜30のリーク電流値の経時変化を表した表である。また、比較例として、第1の実施形態における希ガスプラズマの曝露工程を行っていないシリコン酸化膜を採用した。なお、リーク電流測定時の電界強度は、3MV/cmであった。
【0067】
表2に示すように、第1の実施形態のシリコン酸化膜は、膜の形成後4000分(約66.67時間)が経過しても実質的にリーク電流値が変化していないことが確認できた。より具体的には、第1の実施形態のシリコン酸化膜は、膜の形成後4000分(約66.67時間)が経過しても10
−9(A/cm
2)のオーダーを維持することが出来た点は特筆に値する。他方、比較例については、4000分(約66.67時間)経過後のリーク電流値が当初の値に比較して2桁劣化していることが分かる。なお、本測定は第1の実施形態のシリコン酸化膜30について示しているが、第2の実施形態のシリコン酸化膜130は、第1の実施形態のシリコン酸化膜30よりもリーク電流値が小さいという結果が得られている点は特筆すべきである。
【0068】
従って、シリコン酸化膜30,130は、既に述べたように、極めて表層のみの改質層を備えることにより、該酸化膜の全体としての物性の変動を防ぎつつ、大気中に存在する水分等の外部要因の影響を顕著に低減することが可能となる。なお、各種のデバイスに適応した、換言すれば、各種のデバイスへの最適化を図ったシリコン酸化膜の成膜条件を一旦導き出した後、その成膜条件によるシリコン酸化膜の物性値が経時的に変動してしまうという問題は、そのシリコン酸化膜の信頼性や安定性に大きな影響を与えることになる。従って、一旦導き出された最適な成膜条件によるシリコン酸化膜の物性値を実質的に変動させないという、経時的変化への耐性を備えることは、シリコン酸化膜の成膜条件の最適化を図るために要する時間の顕著な短縮化と、作業の高効率化を実現することになるため、大変意義深い。
【0069】
加えて、上述の各実施形態においては、出発材としてのシリコン酸化膜がCVD法によって形成されている。そのため、CVD法を用いれば、熱酸化によって形成されるシリコン酸化膜のような緻密な膜ではない、いわゆる疎な膜を形成することができる。上述の各実施形態は、従来、そのような疎な膜を形成することによって生じていた内部応力の経時変化等の諸問題を、主たる疎な膜への影響を抑えつつその表層において改質層を形成することによって解決した。なお、この特筆に値する効果は、後述する実施形態にも当て嵌まる。
【0070】
ところで、上述の各実施形態におけるシリコン酸化膜の製造装置100,200に備えられている制御部49は、コンピュータ60に接続されている。コンピュータ60は、上述の各プロセスを実行するためのシリコン酸化膜30,130の製造プログラムにより、上述の各プロセスを監視し、又は統合的に制御する。以下に、具体的な製造フローチャートを示しながら、シリコン酸化膜30,130の製造プログラムを説明する。なお、本実施形態では、上述の製造プログラムがコンピュータ60内のハードディスクドライブ、又はコンピュータ60に設けられた光ディスクドライブ等に挿入される光ディスク等の公知の記録媒体に保存されているが、この製造プログラムの保存先はこれに限定されない。例えば、この製造プログラムの一部又は全部は、本実施形態における各プロセスチャンバーに備えられている制御部49内に保存されていてもよい。また、この製造プログラムは、ローカルエリアネットワークやインターネット回線等の公知の技術を介して上述の各プロセスを監視し、又は制御することもできる。
【0071】
以下に、上述の各実施形態についてのシリコン酸化膜の製造プログラムを説明する。
図10は、上述の各実施形態におけるシリコン酸化膜の製造フローチャートである。
【0072】
図10に示すとおり、まず、ステップS101において、基板20がチャンバー40内に導入される。その後、シリコン酸化膜の製造装置100,200において一般的に行われているプロセス、例えば、所定の圧力になるまでの排気、及びステージ41の加熱及び待機等が行われる。
【0073】
次に、ステップS102において、上述の各実施形態における(1)シリコン酸化膜の形成工程を行うステップが実行される。このステップS102により、基板20上にシリコン酸化膜が形成される。
【0074】
その後、ステップS103において、上述の各実施形態における(2)希ガスプラズマの曝露工程を行うステップが実行される。このステップS103においては、上述の各実施形態に示すように、希ガスのみから生成されるプラズマ、又は希ガスと水素とが混合されたガスによって生成されるプラズマに、基板20上のシリコン酸化膜が所定時間曝される。なお、既に述べたとおり、上述の(1)シリコン酸化膜の形成工程が行われたチャンバー40とは異なるチャンバーにおいて(2)希ガスプラズマの曝露工程が行われることも採用し得る他の一態様である。
【0075】
最後に、ステップS104において、プロセスの終了後に基板20がチャンバー40から取り出される。上述のとおり、ステップS101乃至ステップS104が実行されることにより、シリコン酸化膜の物性(特に、内部応力及びリーク電流値)の、成膜直後からの経時的な変化が低減されたシリコン酸化膜30,130を製造することができる。その結果、該酸化膜が用いられた各種のデバイスの信頼性及び安定性の向上を実現することができる。
【0076】
なお、上述の各実施形態によって形成されるシリコン酸化膜は、該シリコン酸化膜のより深い層の物性を維持しつつ、大気中に存在する水分等の外部要因の影響を顕著に低減することを実現しうる。従って、このようなシリコン酸化膜の用途は広範囲に渡る。例えば、光スキャナセンサ又はLED等を含む各種のMEMSデバイスは、前述の特長を特に活かしうる好適なデバイスの例である。
【0077】
<その他の実施形態>
ところで、上述の実施形態では、制御部49が排気流量調整器38等に直接接続されていたが、上述の各実施形態の態様は、そのような構成に限定されない。例えば、制御部49が、ローカルエリアネットワークやインターネット回線等の公知の技術を介して、いわば間接的に、排気流量調整器48等と接続されている態様も上述の各実施形態の他の採用し得る一態様に含まれ得る。
【0078】
さらに、プラズマ生成手段として上述の実施形態では平行平板型(CCP;Capacitive-Coupled Plasma)を用いたが、上述の各実施形態はこれに限定されない。他の高密度プラズマ、例えば、ICP(Inductively-Coupled Plasma)やECR(Electron Cyclotron Resonance Plasma)を用いても、上述の各実施形態の効果と同等又は少なくとも一部の効果を得ることができる。
【0079】
さらに、上述の実施形態においては、一旦形成したシリコン酸化膜を外気に曝すことなく希ガスを含むガスのプラズマに曝露する工程について説明しているが、上述の実施形態はこの態様に限定されない。例えば、一旦形成したシリコン酸化膜を外気に曝した後、希ガスを含むガスのプラズマに曝露する工程も、採用し得る他の一態様である。以下に、第1の実施形態の変形例を説明する。
【0080】
<第1の実施形態の変形例>
図11は、本実施形態におけるシリコン酸化膜の内部応力の時系列的な変化を示すグラフである。また、
図11に示す比較例(C)は、一旦形成したシリコン酸化膜を大気に曝した後、実質的に真空にしたチャンバー40内に放置した例である。また、比較例(D)は、一旦形成したシリコン酸化膜を大気に曝した後、ヘリウムガス雰囲気にしたチャンバー40内に放置した例である。
【0081】
図11に示すように、比較例(C)及び比較例(D)のシリコン酸化膜の応力が時間とともに大幅に変化している一方、本実施形態のシリコン酸化膜の応力の変動幅が顕著に小さいことが確認できた。従って、仮に、一旦形成したシリコン酸化膜を大気に曝した後であっても、その後の希ガスを含む(但し、酸素を含まない)ガスのプラズマに曝露する工程により、シリコン酸化膜の内部応力及びリーク電流値の経時的な変化を低減することができる。但し、
図5及び
図6に示すように、シリコン酸化膜を形成した後、外気に曝すことなく第1の実施形態又は第2の実施形態に示す希ガスプラズマの曝露工程を行うことが、応力及びリーク電流値の変化をより低減する観点から好ましい。
【0082】
<第1及び第2の実施形態の比較>
また、
図12は、上述の第1及び第2の実施形態におけるシリコン酸化膜の内部応力の時系列的な変化を比較したグラフである。なお、この比較においては、第1の実施形態と第2の実施形態との各改質層を備えたシリコン酸化膜へのフッ化水素(蒸気)への曝露条件(曝露時間を含む)が同じであるが、その曝露によってエッチングされた厚さ(深さ)が異なっている。具体的には、第1の実施形態の結果は、表面から約270Åの深さまでエッチングされた後に測定された内部応力の変化を示している。また、第2の実施形態の結果は、表面から約115Åの深さまでエッチングされた後に測定された内部応力の変化を示している。
図12に示す結果から、定性的に以下の(1)及び(2)を確認することができた。
(1)同じ曝露条件によって、エッチングされる深さが異なることから、第1及び第2の実施形態のシリコン酸化膜の改質層の質又は厚みが異なる。
(2)
図12に示すように、同じ曝露条件によって、第1の実施形態と第2の実施形態との間に、内部応力の時系列的な変化の差が生じる。
上述の結果を踏まえると、希ガスプラズマの曝露工程において希ガスのプラズマに加えて水素(H
2)ガスのプラズマを用いた方が、改質層の質が良い、改質層が厚い、及び経時的な応力の変化が少ない、という効果の群から選ばれる少なくとも1つが該当することが確認された。従って、改質層の質を高める、改質層を厚くする、及び/又は経時的な応力の変化を低減する観点からいえば、第1の実施形態よりも第2の実施形態を採用することが好ましい。
【0083】
<第3の実施形態>
本実施形態においては、第1の実施形態におけるシリコン酸化膜の形成工程と希ガスプラズマの曝露工程との間に、「基板の一部を除去する除去工程」、代表的には、基板20の一部をエッチングするエッチング工程が行われる点を除き、第1の実施形態と同様である。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。なお、
図13(a)〜(d)は、本実施形態におけるシリコン酸化膜230の製造方法の一過程を示す一部断面図である。
【0084】
(シリコン酸化膜の形成工程)
まず、第1の実施形態と同様に、
図13(a)に示すように、シリコン酸化膜230が基板20上に形成される。なお、本実施形態の基板20は、シリコン基板である。また、シリコン酸化膜230の形成工程は、第1の実施形態のシリコン酸化膜30の形成工程と同じである。
【0085】
その後、本実施形態においては、
図13(b)に示すように、シリコン酸化膜230の一部を除去するためのパターン形成工程が行われる。このパターン形成工程は、公知のフォトリソグラフィー法及びプラズマエッチング処理によって行われる。なお、このパターン形成工程を行う前に、既にシリコン酸化膜230の所望のパターンが形成されている場合は、このパターン形成工程は省略される。
【0086】
その後、
図13(c)に示すように、基板20の一部を除去する除去工程が行われる。本実施形態においては、二フッ化キセノン(XeF
2)ガスを用いたシリコンの等方性エッチングプロセスを採用することによって除去工程が行われる。
【0087】
(基板の一部を除去する除去工程)
具体的なプロセスの一例を示すと、まず、排気可能な密閉チャンバー内に、パターンが形成されたシリコン酸化膜230を備える基板20を載置する。排気を十分に行った後、室温(約25℃)下、圧力を400Pa(約3Torr)の二フッ化キセノン(XeF
2)ガスに30秒間、基板20を曝露することにより、
図13(c)に示すような構造体が形成される。
【0088】
(希ガスプラズマの曝露工程)
上述の基板20の除去工程の後、第1の実施形態における希ガスプラズマの曝露工程が行われる。本実施形態の希ガスプラズマの曝露工程は、第1の実施形態の希ガスプラズマの曝露工程と同じである。
【0089】
その結果、
図13(d)に示すように、希ガスプラズマに曝露され得るシリコン酸化膜2300の表面からある深さの領域内に改質層が形成されることになる。一方、該改質層以外の領域は、実質的に希ガスプラズマに曝される前のシリコン酸化膜と実質的に同質と考えられるシリコン酸化膜230bが存在する。
【0090】
なお、シリコン酸化膜230のうち、シリコン酸化膜230のパターンの存在によって形成された端面(いわば、シリコン酸化膜230の側面)の改質層230cの厚みは、シリコン酸化膜230が形成された直後から存在する表面(いわば、シリコン酸化膜230の上面)の改質層230aの厚みよりも薄い場合がある。また、シリコン酸化膜230のうち、基板20のエッチングによって希ガスプラズマに曝露され得る状態となった表面(いわば、シリコン酸化膜230の下面)の改質層230dの厚みは、上述のシリコン酸化膜230改質層230aの厚み及び/又は上述のシリコン酸化膜230の改質層230cの厚みよりも薄い場合がある。
【0091】
本実施形態を採用することにより、基板20のエッチングによって希ガスプラズマに曝露され得る状態となった表面(いわば、シリコン酸化膜230の下面)についても、シリコン酸化膜230の物性(特に、内部応力及びリーク電流値)の、成膜直後からの経時的な変化が低減されたシリコン酸化膜230を製造することができる。また、
図13(d)に示す基板20と、物性の経時変化を低減したシリコン酸化膜230とからなる構造体を実現することは、MEMSデバイス又はNEMSデバイスの構造、あるいは半導体素子の構造の信頼性、安定性の向上に大きく寄与し得る。より具体的な一例を挙げると、
図13(d)に示す「梁」(基板20に接していないシリコン酸化膜230)の領域が、時間の経過とともに反ったり撓んだりすることが大きく低減され得る。なお、本実施形態における「梁」は、特にその態様が限定されない。片持ち梁、両持ち梁、ブリッジ構造体、及びメンブレン構造体は、本実施形態における「梁」の代表的な例である。
【0092】
ところで、本実施形態においても、希ガスの種類はヘリウムガスに限定されない。例えば、ヘリウムガスの代わりに、ネオン(Ne)ガス、アルゴンガス、クリプトン(Kr)ガス、又はキセノン(Xe)ガスが用いられても良い。さらに、前述の各希ガスのうちの2種類以上のガスがチャンバー40内で混合して用いられることも採用し得る他の一態様である。なお、特に、アルゴンガスが採用された場合は、上述のとおり、特筆すべき効果が得られる。
【0093】
また、本実施形態における基板の一部を除去する除去工程、より具体的には、基板20のうちシリコン酸化膜230の下面の一部が顕わになるように、基板20の下方の一部を除去する除去工程においては、二フッ化キセノンガスによるエッチングが採用されている。しかしながら、本実施形態における除去工程は、その態様に限定されない。例えば、ガスによるエッチングの代わりに、いわゆるウェットプロセスによるエッチングを採用することも、好適な一態様である。具体的なプロセスの一例を示すと、濃度が40wt%の水酸化カリウム(KOH)溶液を80℃に加熱した状態において、基板20をその水酸化カリウム溶液中に浸漬することにより、
図13(c)に示すような構造体が形成される。なお、ウェットプロセスを採用した場合は、例えば水分等の影響を低減するために、ベーキング処理をするのが望ましい。
【0094】
また、その他の有効な除去工程として、例えば、プラズマ処理によるエッチング工程を採用することができる。具体的なプロセスの一例を示すと、まず、ICP装置のチャンバー内の20℃に設定されたステージ上に配置された基板20上のシリコン酸化膜に対して、200sccm(200mL/min.)の六フッ化硫黄(SF
6)が導入されるとともに、チャンバー内の圧力は20Paに制御される。その後、誘導コイルに13.56MHzの高周波電力2000Wが印加されることによって形成されるプラズマ処理により、
図13(c)に示すような構造体が形成される。
【0095】
なお、基板の一部を除去する除去工程における二フッ化キセノンガスの代わりに、三フッ化塩素(ClF
3)を用いることもできる。また、基板の一部を除去する除去工程における水酸化カリウムの代わりに、水酸化ナトリウム(NaOH)を用いることもできる。また、基板の一部を除去する除去工程における六フッ化硫黄の代わりに、五フッ化ヨウ素(IF
5)に代表される各種のフッ化ヨウ素、又は三フッ化窒素(NF
3)を用いることもできる。
【0096】
なお、ガスの種類、溶液の種類、又は基板の材質が異なれば、基板の一部を除去する上述の各エッチング条件は変動し得る。
【0097】
また、上述の各除去工程のうち、密閉空間を構成し得るチャンバー内において処理が可能な、ガスエッチング処理又はプラズマ処理による基板の一部を除去する除去工程を採用すれば、その後の希ガスプラズマの曝露工程を行うまでに、シリコン酸化膜が外気に曝されないようにすることが可能となる点は、特筆に値する。例えば、該除去工程のチャンバーと同じチャンバーにおいて希ガスプラズマの曝露工程を行うか、あるいは、外気に曝されないように、図示しない十分に排気された基板搬送チャンバーを利用して、該除去工程のチャンバーから希ガスプラズマの曝露工程が行われるチャンバーに移動させることによって、外気に曝されなくすることを実現し得る。
【0098】
ここで、本実施形態においては、シリコン酸化膜の形成工程が行われた後にパターン形成工程が行われるために、シリコン酸化膜230は、一旦外気に曝されることになる。従って、外気(水分を含む)に曝されることによって生じ得るシリコン酸化膜230の膜質の変動をできるだけ低減するために、以下に示す第3の実施形態の変形例(1)又は第3の実施形態の変形例(2)を採用することは、好適な一態様である。
【0099】
一方、上述のパターン形成工程を行う前に、既にシリコン酸化膜230の所望のパターンが形成されている場合は、本実施形態におけるパターン形成工程が不要になる。従って、その場合は、上述と同様に、シリコン酸化膜の形成工程と同じチャンバーにおいて希ガスプラズマの曝露工程を行うか、あるいは、外気に曝されないように、図示しない十分に排気された基板搬送チャンバーを利用して、シリコン酸化膜の形成工程のチャンバーから希ガスプラズマの曝露工程が行われるチャンバーに移動させることができる。
【0100】
なお、本実施形態においては、シリコン酸化膜の形成工程と基板の一部を除去する除去工程との間の基板20の搬送の際、あるいは、基板の一部を除去する除去工程と希ガスプラズマの曝露工程との間の基板20の搬送の際に、シリコン酸化膜230が外気に曝されることが避けられない場合がある。しかし、第1及び第2の実施形態と同様に、そのような場合であっても、シリコン酸化膜230が外気に曝される時間が数十時間以内(より具体的には、約40時間以内)であって、より好ましくは、約10時間以内であれば、本実施形態によって得られる効果の少なくとも一部は奏され得る。また、第1及び第2の実施形態と同様に、シリコン酸化膜の形成工程によって形成されたシリコン酸化膜230が、希ガスプラズマの曝露工程に至るまでに、できるだけ外気に曝されないようにすることは、好適な一態様である。
【0101】
<第3の実施形態の変形例(1)>
ところで、第3の実施形態における希ガスプラズマの曝露工程を、
図13(b)に示すシリコン酸化膜のパターニングの前に行うことも、採用し得る好適な他の一態様である。この変形例によれば、
図14に示すように、シリコン酸化膜230の一部を除去するためのパターン形成工程の前に、シリコン酸化膜230が改質層230aを備えている。その結果、たとえシリコン酸化膜の形成工程が行われた後にパターン形成工程が行われるために一旦外気に曝されることになっても、その外気による影響を低減することができる。
【0102】
<第3の実施形態の変形例(2)>
ところで、第3の実施形態における希ガスプラズマの曝露工程を、
図13(b)に示すシリコン酸化膜のパターニングの前に行うとともに、そのパターニングの後に、追加的に希ガスプラズマの曝露工程を行うことも、採用し得る好適な他の一態様である。この変形例によれば、
図15に示すように、基板20の一部を除去する除去工程の前に、シリコン酸化膜230が改質層230a及び改質層230cを備える。その結果、たとえ基板20の一部を除去する除去工程が行われるために一旦外気に曝されることになっても、その外気による影響を低減することができる。
【0103】
上述のとおり、第3の実施形態の変形例(1)及び第3の実施形態の変形例(2)の工程を採用すれば、シリコン酸化膜の製造工程における時間的余裕を生じさせることができるため、各工程間の時間管理の自由度を高める観点から極めて有用である。
【0104】
<第3の実施形態の変形例(3)>
ところで、第3の実施形態及びその変形例(1)及び(2)における希ガスプラズマの曝露工程の代わりに、希ガスのプラズマに加えて水素(H
2)ガスのプラズマを用いた希ガスプラズマの曝露工程が採用されることも、好適な他の一態様である。この変形例によって形成されるシリコン酸化膜は、第2の実施形態のシリコン酸化膜130と同様に、希ガスに対して水素(H
2)ガスが追加されたプラズマによる効果、代表的にはフッ化水素(蒸気)に対する耐エッチング性の顕著な向上という、特筆すべき効果が奏され得る。
【0105】
<第4の実施形態>
本実施形態は、第1の実施形態のTEOSの代わりにシラン(SiH
4)が採用された例である。従って、本実施形態のシリコン酸化膜の製造装置は、TEOSの代わりにシランが採用されたこと以外は、第1の実施形態のシリコン酸化膜の製造装置100の構成と同じであるため、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0106】
以下に、チャンバー40におけるプロセスについて説明する。
【0107】
(1)シリコン酸化膜の形成工程
本実施形態では、まず、(1)シリコン酸化膜の形成工程として、加熱された基板20が、チャンバー40を用いてシランガスと一酸化二窒素(N
2O)ガスとから形成されるプラズマに曝露される。具体的には、チャンバー40内の圧力が200Paとなるまで、100sccmのシランガスと1000sccmの一酸化二窒素(N
2O)ガスがチャンバー40に供給される。次に、ステージ41の温度が200℃になるまでヒーター44bが加熱される。その後、シャワーヘッドガス導入部45には、13.56MHzにおいて300Wの高周波電力が印加される。また、本実施形態においては、ステージ41には低周波電力が印加されない。また、上記のプラズマ条件によるシリコン酸化膜形成工程が3分間行われる。このシリコン酸化膜の形成工程において採用される条件によって、低ストレスの(内部応力が少ない)シリコン酸化膜が形成される。
【0108】
その後、チャンバー40内において、十分な排気が行われた後、シリコン酸化膜に対して、希ガスプラズマの曝露工程が行われる。
【0109】
(2)希ガスプラズマの曝露工程
本実施形態のプロセスの一例を示すと、チャンバー40内の圧力が50Pa以上250Pa以下(代表的には、100Pa)となるまで、ヘリウムガスが100sccm以上2000sccm以下(代表的には、500sccm)供給される。
【0110】
次に、ステージ41の温度が50℃以上350℃以下(代表的には、200℃)になるまでヒーター44bが加熱される。ここで、基板20の温度を安定化させるため、60秒以上待機する。その後、シャワーヘッドガス導入部45には、第1高周波電源46aにより、200W以上1000W以下(代表的には、300W)の第1高周波電力が印加される。本実施形態では、上記の条件によって生成されたプラズマに、シリコン酸化膜が約1分間〜約5分間曝される。なお、前述のステージの温度範囲に設定された場合の基板20の温度の上昇は、該ステージの温度よりも数十℃高くなる程度である。
【0111】
上記のプロセスにより、本実施形態のシリコン酸化膜が製造される。
【0112】
<第4の実施形態の変形例>
本実施形態は、第4の実施形態において、希ガスプラズマの曝露工程が行われる時間において、ステージ41に、380kHzにおいて300Wの低周波電力が印加されること以外は、第4の実施形態のシリコン酸化膜の製造方法と同じ方法が採用される。従って、この変形例においては、希ガスプラズマの曝露工程において、シリコン酸化膜に対してバイアスを印加することにより、イオンを用いた物理的な効果が促進され得る。なお、第1及び第4の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0113】
図16は、第4の実施形態、第4の実施形態の変形例に、及び比較例におけるシリコン酸化膜の内部応力の時系列的な変化を示すグラフである。なお、比較例は、第4の実施形態においてシリコン酸化膜の形成工程によって形成され、それ以外の処理は施されていないシリコン酸化膜である。
【0114】
図16に示すように、第4の実施形態、及び第4の実施形態の変形例のシリコン酸化膜の内部応力は、比較例の内部応力よりも経時変化が小さいことを確認することができた。
特に興味深いことに、第4の実施形態の変形例のシリコン酸化膜の内部応力が、該シリコン酸化膜の形成後約60分間、ほとんど経時変化しないことが明らかとなった。
【0115】
また、第4の実施形態、及び第4の実施形態の変形例のシリコン酸化膜のリーク電流値の、成膜直後からの経時的な変化も、内部応力と同様に、比較例に比べて小さいことが分かった。従って、第4の実施形態、及び第4の実施形態の変形例のシリコン酸化膜を採用することは、該酸化膜が用いられた各種のデバイスの信頼性及び安定性の向上に大きく貢献し得る。
【0116】
なお、第4の実施形態の変形例においては、希ガスプラズマの曝露工程が行われる時間においてステージ41に300Wの電力が印加されているが、第4の実施形態の変形例の印加電力は、300Wに限定されない。例えば、ステージ41に対する印加電力、換言すれば、基板20に対して印加される電力が100W超1000W未満であれば、第4の実施形態の変形例の効果と同様の、又は同傾向の効果を奏することができる。
【0117】
また、第4の実施形態の変形例においては、希ガスプラズマの曝露工程が行われる時間においてのみステージ41に電力が印加されているが、第4の実施形態の変形例は、その態様に限定されない。例えば、希ガスプラズマの曝露工程が行われる時間の少なくとも一部においてステージ41に電力が印加されれば、第4の実施形態の変形例の効果の少なくとも一部の効果が奏され得る。加えて、第1の実施形態において説明したとおり、シリコン酸化膜の形成工程においても、高周波電源46bによりステージ41に対して高周波電力が印加されることも採用し得る一態様である。従って、上述の各実施形態においては、
シリコン酸化膜に対して希ガスのプラズマに曝している間の少なくとも一部に、シリコン酸化膜に引き込むための電力(バイアス電力)が印加されていることによって改質層を形成する態様を採用することができる。
【0118】
また、第4の実施形態又は第4の実施形態の変形例において採用された平行平板型のプラズマ生成装置の代わりに、例えば、誘導結合型のプラズマ形成装置のように、プラズマの生成と自己バイアスによるイオン等の引き込みを行う装置が採用された場合であっても、第4の実施形態又は第4の実施形態の変形例の効果と同傾向の効果が奏され得る。
【0119】
さらに、第4の実施形態又は第4の実施形態の変形例において採用された、これらの実施形態の効果を奏し得るシリコン酸化膜の製造装置の構成又はシリコン酸化膜の製造方法の各工程は、その他の実施形態にも適用され得る。
【0120】
<第5の実施形態>
本実施形態においては、上述の各実施形態において採用されている希ガスのプラズマの曝露工程の代わりに、ある特定の条件における酸素プラズマ又は窒素プラズマの曝露工程によって、上述の各実施形態の効果と同様の効果が奏され得ることを説明する。なお、本実施形態において用いられたシリコン酸化膜の製造装置は、該シリコン酸化膜の改質層(改質層30aに相当)の形成のためのプラズマを生成するためのガスが異なる点以外は、第1の実施形態のシリコン酸化膜の製造装置100の構成と同じであるため、第1の実施形態)及びそれらの効果と重複する説明は省略され得る。従って、本明細書を理解するいわゆる当業者であれば、例えば、
図10のうち、「希ガス」との表現を「酸素」又は「窒素」に読み替えることができる。
【0121】
本実施形態においては、第1の実施形態の(1)シリコン酸化膜の形成工程が行われた後、チャンバー40内において、十分な排気が行われた後、シリコン酸化膜に対して、(2)酸素プラズマ又は窒素プラズマの曝露工程が行われる。
【0122】
具体的なプロセスの一例を示すと、チャンバー40内の圧力が約35Paとなるまで、酸素ガス又は窒素ガスが50sccm供給される。従って、本実施形態の酸素プラズマは、上述の「第1及び第2の各実施形態におけるシリコン酸化膜の評価結果」における比較例の酸素プラズマの密度よりも約6.25倍の高密度のプラズマである。同様に、本実施形態の窒素プラズマは、上述の「第1及び第2の各実施形態におけるシリコン酸化膜の評価結果」における比較例の窒素プラズマの密度よりも約1.44倍の高密度のプラズマである。従って、本実施形態によれば、より高い密度の酸素プラズマ又は窒素プラズマを採用することによって、他の実施形態における希ガスプラズマの曝露工程と同様の効果を奏し得る。
【0123】
本実施形態によって形成されるシリコン酸化膜は、第1の実施形態又は第2の実施形態の各効果と同傾向の効果が得られる。
図17は、本実施形態におけるシリコン酸化膜の内部応力の時系列的な変化を示すグラフである。
【0124】
図17に示すように、本実施形態のシリコン酸化膜の内部応力は、他の実施形態の希ガスのプラズマによって改質されたシリコン酸化膜と同様に、経時変化が小さいことを確認することができた。従って、シリコン酸化膜の形成工程後に、シリコン酸化膜をある特定の条件、すなわち高密度の酸素プラズマ又は窒素プラズマに曝露する工程を採用すれば、内部応力の経時変化が小さいシリコン酸化膜を形成することができることが明らかとなった。
【0125】
また、本実施形態のシリコン酸化膜のリーク電流値の、成膜直後からの経時的な変化も、内部応力と同様に小さいことが分かった。従って、本実施形態のシリコン酸化膜を採用することは、該酸化膜が用いられた各種のデバイスの信頼性及び安定性の向上に大きく貢献し得る。
【0126】
表3に、上述の各実施形態及び変形例に関する、処理条件の一覧を示す。なお、表中、「←」の記号は、「同左」を意味する。
【0128】
なお、上述の各実施形態の開示は、それらの実施形態の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。