特許第6183983号(P6183983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183983
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】無線通信装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H03M 13/45 20060101AFI20170814BHJP
   H03M 13/25 20060101ALI20170814BHJP
   H04L 27/01 20060101ALI20170814BHJP
   H04L 27/00 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   H03M13/45
   H03M13/25
   H04L27/01
   H04L27/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-547401(P2016-547401)
(86)(22)【出願日】2015年9月2日
(86)【国際出願番号】JP2015074958
(87)【国際公開番号】WO2016039236
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2016年11月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-186030(P2014-186030)
(32)【優先日】2014年9月12日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭
【審査官】 和平 悠希
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−042444(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/005467(WO,A1)
【文献】 特開2004−364046(JP,A)
【文献】 Chantri Polprasert, Siwaruk Siwamogsatham, James A. Ritcey,Performance analysis of the bit-interleaved coded modulation using turbo equalization with single carrier frequency domain equalization using subblock signal processing over fast fading channels,Computer Aided Modeling and Design of Communication Links and Networks(CAMAD), 2013 IEEE 18th International Workshop on,2013年 9月27日,pp.149-153
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 13/45
H03M 13/25
H04L 27/00
H04L 27/01
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信部ベースバンド信号処理部において、
変調ビット系列を所定のシンボルマッピング番号に変換する手段と、
前記シンボルマッピング番号に対するスクランブルコードを生成する生成手段と、
前記スクランブルコードを用いて前記シンボルマッピング番号をスクランブル処理して送信シンボルマッピング番号へ変換する手段と、
前記送信シンボルマッピング番号と変調方式によりマッピングする手段と、
前記マッピングの出力を時間信号に変換して送信周波数に変換し送信する変調送信手段を備え、
受信部ベースバンド信号処理部において、
前記変調送信手段により送信された信号を受信して検波する手段と、
前記検波された信号に対してチャネル等化処理を行う手段と、
変調方式における基準点を生成するための第一の基準点シンボルマッピング番号を発生させる手段と、
前記スクランブルコードを用いて前記第一の基準点シンボルマッピング番号をスクランブル処理して第一の基準点送信シンボルマッピング番号へ変換する手段と、
前記第一の基準点送信シンボルマッピング番号と変調方式によりマッピングする第一の基準点マッピング手段と、
前記第一の基準点マッピング手段からの出力と前記チャネル等化出力との距離を算出する手段と、
前記第一の基準点シンボルマッピング番号と前記距離を参照してビット尤度を算出する手段と、を備える無線通信装置。
【請求項2】
請求項1記載の無線通信装置において、前記送信部ベースバンド信号処理部に誤り訂正符号化処理を備え、前記誤り訂正符号化された信号に対してインタリーブ処理して前記シンボルマッピング番号変換手段に出力する第一のインタリーブ手段を備え、前記受信部ベースバンド信号処理部において、前記ビット尤度をデインタリーブ処理する手段を備え、前記デインタリーブ処理した信号を軟入力軟出力誤り訂正復号する処理を備え、前記軟入力軟出力誤り訂正復号出力に対して前記第一のインタリーブ手段と同じインタリーブパターンの第二のインタリーブ手段を備え、前記第二のインタリーブ手段出力のビット尤度をビット確率に変換する手段を備え、前記ビット確率を変調方式に基づきシンボルマッピング確率を算出する手段を備え、ソフトシンボル計算用の第二の基準点シンボルマッピング番号を生成する手段を備え、前記第二の基準点シンボルマッピング番号に対し前記スクランブルコードを用いて第二の基準点送信シンボルマッピング番号を生成する手段を備え、前記第二の基準点送信シンボルマッピング番号と変調方式によりマッピングする第二の基準点マッピング手段を備え、前記シンボルマッピング確率算出手段出力と前記第二の基準点マッピング手段出力からソフトシンボルを算出する手段を備え、前記ソフトシンボル算出手段出力を前記チャネル等化手段にフィードバックするターボ等化手段を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項3】
送信側において、
変調ビット系列を所定のシンボルマッピング番号に変換し、
前記シンボルマッピング番号に対するスクランブルコードを生成し、
前記スクランブルコードを用いて前記シンボルマッピング番号をスクランブル処理して送信シンボルマッピング番号へ変換し、
前記送信シンボルマッピング番号と変調方式によりマッピングし、
前記マッピングの出力を時間信号に変換して送信周波数に変換し送信し、
受信側において、
前記送信された信号を受信して検波し、
前記検波された信号に対してチャネル等化処理を行い、
変調方式における基準点を生成するための第一の基準点シンボルマッピング番号を発生し、
前記スクランブルコードを用いて前記第一の基準点シンボルマッピング番号をスクランブル処理して第一の基準点送信シンボルマッピング番号へ変換し、
前記第一の基準点送信シンボルマッピング番号と変調方式によりマッピングし、
前記マッピングの出力と前記チャネル等化出力との距離を算出し、
前記第一の基準点シンボルマッピング番号と前記距離を参照してビット尤度を算出する、ことを特徴とする無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置及び方法に関し、符号がインタリーブされ且つ変調シンボル点がスクランブルされた受信信号から、ソフトシンボルを計算してデータを復号する無線通信装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、非特許文献1のMIL-STD-188-110Bにおいては、送信側ベースバンド信号処理において、誤り訂正符号化されインタリーブ処理された変調ビット系列x(m) (mはシンボル(時間方向の)番号)をシンボルマッピング番号N(m)に変換し、所定のスクランブルコードNSCR(m)によりスクランブル処理して送信シンボル番号NTX(m)に変換し、それを当該マッピングルールに基づきPSK(Phase-Shift Keying)変調あるいはQAM(Quadrature Amplitude Modulation)変調を行い送信することが規定されている。
【0003】
また、非特許文献1のAppendix Cにおいては、使用する変調方式としてQPSK(Quadrature-PSK)、8PSK、16QAM、32QAM、64QAMが規定され、それらのスクランブル処理は以下の様に規定されている。
【0004】
PSKのスクランブル処理は、
【数1】
である。ここで、mod(A,B)は、AをBで除算したときの剰余である。図1にPSKの送信シンボルマッピング番号とその配置を示す。図1と数式1より、PSKのスクランブルは(π/4)*NSCR(m)の位相回転操作となっていることが分かる。
【0005】
QAMのスクランブル処理は、
【数2】
である。ここで、bitxor(A,B)はA,Bをそれぞれ2進数に変換して各ビットのXOR(排他的論理和)をとる演算である。上式の通り、QAMの場合、PSKのような単純な位相回転ではなく、シンボルマッピング点が不規則に入れ替わるスクランブル処理である。さらに、MIL-STD-188-110B Appendix CのQAMのシンボルマッピング点は、図2に示すように、一般的な格子状ではない配置(12/4 star QAM)となっている。
【0006】
等化判定処理で硬判定を行う場合は、硬判定した受信ビット系列に対して、各変調方式のスクランブル処理の逆の操作によるデスクランブル処理を行えば良い。
【0007】
従来技術の特許文献1では、シンボルマッピングした信号を送信側ベースバンド信号処理部で(π/4) * NSCR(m)位相回転させ、受信側ベースバンド信号処理部では受信検波信号を-(π/4) * NSCR(m)させることでデスクランブルに相当する処理を行い、またはマッピングした基準点信号を(π/4) * NSCR(m)位相回転させる、あるいは基準点信号シンボルマッピング番号N(m)とスクランブルコードNSCR(m)との取り得るシンボルマッピング点の組み合わせ全パターンをROM(Read Only Memory)などに予め格納し、それを参照する手法が提案されている。
【0008】
また、QAMのデスクランブル方法については、ビット尤度を算出したあと、スクランブルコードを参照して符号変換(XOR操作に等価)処理する、原理に忠実な方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−42444号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】米国防総省、“Department of Defense, Interface Standard MIL-STD-188 110B Interoperability and Performance Standards for Data Modems”、[online]、2000年、[平成26年9月8日検索]、インターネット<URL:http://www.vocal.com/wp-content/uploads/2012/05/milstd_188110b.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、非特許文献1のようなQAMに対する復調処理においては、単純に振幅や位相を操作する方法ではデスクランブル処理を実現できない。また、軟判定値や尤度を扱う場合には、全てのシンボル点について仮にデスクランブルした場合の尤度を計算する必要がある。特許文献1の無線受信装置で非特許文献1のQAMを処理できるようにするためには、全基準点と全スクランブルパターンとの取り得る組合せの対応表をROMに格納し参照することになり、使用メモリ量も増大し、実装上好ましくない。
【0012】
さらに、従来技術を用いると、ビット尤度計算において、PSKの位相回転処理、QAMのビット符号変換処理の2つが必要となり、この2つの処理の実装及び処理選択の機能が必要となる。
【0013】
また、ターボ等化でのソフトシンボル算出処理の計算過程で必要となる基準点生成においても同様の問題が生じる。
【0014】
以上の課題を解決するため、基準点生成時のシンボル番号に対してスクランブル処理を行った送信シンボル番号を使って基準点を求める手段を提供することにより、簡易な実装でPSK、QAMともに復調処理及びソフトシンボル算出を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の一側面に係る無線通信システムは、
送信部ベースバンド信号処理部において、
変調ビット系列を所定のシンボルマッピング番号に変換する手段と、
前記シンボルマッピング番号に対するスクランブルコードを生成する生成手段と、
前記スクランブルコードを用いて前記シンボルマッピング番号をスクランブル処理して送信シンボルマッピング番号へ変換する手段と、
前記送信シンボルマッピング番号と当該変調方式によりマッピングする手段と、
前記マッピングの出力を時間信号に変換して送信周波数に変換し送信する変調送信手段を備え、
受信部ベースバンド信号処理部において、
前記変調送信手段により送信された信号を受信して検波する手段と、
前記検波された信号に対してチャネル等化あるいはそれに相当する処理を行う手段と、
当該変調方式における基準点を生成するための第一の基準点シンボルマッピング番号を発生させる手段と、
前記スクランブルコードを用いて前記第一の基準点シンボルマッピング番号をスクランブル処理して第一の基準点送信シンボルマッピング番号へ変換する手段と、
前記第一の基準点送信シンボルマッピング番号と当該変調方式によりマッピングする第一の基準点マッピング手段と、
前記第一の基準点マッピング手段からの出力と前記チャネル等化出力との距離を算出する手段と、
前記第一の基準点シンボルマッピング番号と前記距離を参照してビット尤度を算出する手段と、を備えた。
【0016】
本発明の他の一側面に係る無線通信システムは、前記送信部ベースバンド信号処理部に誤り訂正符号化処理を備え、前記誤り訂正符号化された信号に対してインタリーブ処理して前記シンボルマッピング番号変換手段に出力する第一のインタリーブ手段を備え、前記受信部ベースバンド信号処理部において、前記ビット尤度をデインタリーブ処理する手段を備え、前記デインタリーブ処理した信号を軟入力軟出力誤り訂正復号する処理を備え、前記軟入力軟出力誤り訂正復号出力に対して前記第一のインタリーブ手段と同じインタリーブパターンの第二のインタリーブ手段を備え、前記第二のインタリーブ手段出力のビット尤度をビット確率に変換する手段を備え、前記ビット確率を当該変調方式に基づきシンボルマッピング確率を算出する手段を備え、ソフトシンボル計算用の第二の基準点シンボルマッピング番号を生成する手段を備え、前記第二の基準点シンボルマッピング番号に対し前記スクランブルコード用いて第二の基準点送信シンボルマッピング番号を生成する手段を備え、前記第二の基準点送信シンボルマッピング番号と当該変調方式によりマッピングする第二の基準点マッピング手段を備え、前記シンボルマッピング確率算出手段出力と前記第二の基準点マッピング手段出力からソフトシンボルを算出する手段を備え、前記ソフトシンボル算出手段出力を前記チャネル等化手段にフィードバックするターボ等化手段を備えた。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の一側面に係る無線通信方法は、
送信側において、
変調ビット系列を所定のシンボルマッピング番号に変換し、
前記シンボルマッピング番号に対するスクランブルコードを生成し、
前記スクランブルコードを用いて前記シンボルマッピング番号をスクランブル処理して送信シンボルマッピング番号へ変換し、
前記送信シンボルマッピング番号と当該変調方式によりマッピングし、
前記マッピングの出力を時間信号に変換して送信周波数に変換し送信し、
受信側において、
前記送信された信号を受信して検波し、
前記検波された信号に対してチャネル等化あるいはそれに相当する処理を行い、
当該変調方式における基準点を生成するための第一の基準点シンボルマッピング番号を発生し、
前記スクランブルコードを用いて前記第一の基準点シンボルマッピング番号をスクランブル処理して第一の基準点送信シンボルマッピング番号へ変換し、
前記第一の基準点送信シンボルマッピング番号と当該変調方式によりマッピングし、
前記マッピングの出力と前記チャネル等化出力との距離を算出し、
前記第一の基準点シンボルマッピング番号と前記距離を参照してビット尤度を算出する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、PSK、QAMの変調方式のいずれのシンボルマッピングパターンに対しても基準点を生成でき、復調およびソフトシンボル算出において簡易な手法により演算量、メモリ量の低減が実現できる。また、ビット尤度計算処理をPSK、QAMで統一することにより、実装規模削減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】MIL-STD-188-110B Appendix CにおけるPSKのシンボルマッピング点配置及び送信シンボルマッピング番号を示す図。
図2】MIL-STD-188-110B Appendix CにおけるQAMのシンボルマッピング点配置を示す図。
図3】本発明の第一の実施形態を示す機能ブロック図。
図4】シンボルマッピング番号変換の一例を示す図。
図5】送信信号及びスクランブル処理による動作の一例を説明する図。
図6】受信信号及びスクランブル処理による基準点の一例を説明する図。
図7図6における受信点と各基準点との距離算出結果。
図8】本発明を適用しない場合のビットLLR算出の機能ブロック図。
図9】本発明を適用しない場合のビットLLR計算結果。
図10】本発明を適用した場合のビットLLR計算結果。
図11】本発明における第二の実施形態を示す機能ブロック図。
図12】本発明を適用しない場合のソフトシンボル算出の機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0021】
図3に実施例1に係る無線通信装置1の構成を示す。無線通信装置1は、誤り訂正符号化器11と、インタリーブ部12と、シリアル/パラレル変換部13と、シンボルマッピング番号変換部14と、スクランブルコード生成部15と、送信シンボルマッピング番号変換部16と、シンボルマッピング部17と、変調部18と、送信アンテナ19と、受信アンテナ20と、検波部21と、チャネル等化器22と、基準点シンボルマッピング番号生成部23と、スクランブルコード生成部24と、基準点送信シンボルマッピング番号生成部25と、基準点シンボルマッピング部26と、ビットLLR算出部27とデインタリーブ部28と、誤り訂正復号器29とを備える。
【0022】
誤り訂正符号化器11は、入力される情報ビット系列に対し、例えば、畳み込み符号化処理のような誤り訂正符号化処理を施し、インタリーブ部12へ出力する。
【0023】
インタリーブ部12は、入力されたビット系列を所定の順序に並び替え、シリアル/パラレル変換部13へ出力する。
【0024】
シリアル/パラレル変換部13は、入力されたビット系列を所定の変調方式の変調ビット数毎に束ね、シンボルマッピング番号変換部へ出力する。例えば、QPSKは2ビット、8PSKは3ビット毎の処理となる。
【0025】
シンボルマッピング番号変換部14は、入力された変調ビット系列を所定の変換則によってシンボルマッピング点番号に変換し、送信シンボルマッピング点番号変換部16へ出力する。シンボルマッピング点の変換則は、例えば、MIL-STD-188-110B Appendix Cでは図4に示すような変換を行う。
【0026】
スクランブルコード生成部15は、所定の変調方式に応じたビット数のスクランブルコードビット系列を送信シンボルマッピング点番号変換部16へ出力する。スクランブルコードビット系列は、例えば、PN(Pseudo random Noise)発生器の予め定められた切り出し則による出力を用いる。
【0027】
送信シンボルマッピング番号変換部16は、例えば、背景技術で述べたように、シンボルマッピング番号をN(m)、スクランブルコードをNSCR(m)とするとき、式1や式2を用いて送信シンボルマッピング番号NTX(m)を計算し、送信シンボルマッピング番号NTX(m)をシンボルマッピング部17へ出力する。
【0028】
シンボルマッピング部17は、入力された送信シンボルマッピング番号NTX(m)を用いて所定のシンボルマッピング点を選択し、変調部18へ出力する。
【0029】
変調部18は、入力されたマッピング出力を時間信号に変換して送信周波数に変換し、送信アンテナ19へ出力する。
【0030】
送信アンテナ19は、入力された変調信号を無線伝送空間に送信する。
【0031】
受信アンテナ20は、無線伝送空間から送信信号を受信し、検波部21へ出力する。
【0032】
検波部21は、入力された信号を検波して周波数信号に変換し、チャネル等化器22へ出力する。
【0033】
チャネル等化器22は、入力された受信周波数信号の送受信間のチャネル歪を推定してそれを補正し、ビットLLR算出部27へ出力する。チャネル等化は、受信信号をY(m)、推定した送受信間のチャネルをH^(m)、等化出力をX^(m)とするとき、例えば、
【数3】
や、MMSE(Minimum Mean Square Error)規範による
【数4】
を用いてチャネル等化処理を行う。ここで、[・]Hは複素共役、σ2は雑音電力である。
【0034】
基準点シンボルマッピング番号生成部23は、当該変調方式で取り得るマッピング点数をQとするとき、0 .. Q-1の整数(基準点シンボルマッピング番号)を生成し、基準点の送信シンボルマッピング番号生成部25とビットLLR算出部27へ出力する。番号生成は例えば、予め用意したレジスタ値やROMの読出し値、カウンタ値を用いる。
【0035】
スクランブルコード生成部24は、スクランブルコード生成部15と同一の機能を有し、生成したスクランブルコードビット系列を基準点送信シンボルマッピング番号生成25へ出力する。
【0036】
基準点送信シンボルマッピング番号変換部25は、送信シンボルマッピング番号変換部16と同一の機能を有し、入力された基準点シンボルマッピング番号とスクランブルコードビット系列から基準点送信シンボルマッピング番号を生成し、基準点シンボルマッピング部26へ出力する。
【0037】
基準点シンボルマッピング部26は、シンボルマッピング17と同一の機能を有し、入力された基準点送信シンボルマッピング番号を用いて所定のマッピング点を選択し、ビットLLR算出部27へ出力する。
【0038】
ビットLLR算出部27は、入力されたチャネル等化出力と基準点マッピング出力と基準点シンボルマッピング番号を用いてビット尤度を算出し、デインタリーブ部28へ出力する。以下、送信側処理、基準点生成を含め、ビット尤度の算出について説明する。
【0039】
図5に、16QAMの送信信号例を示す。この図はシンボルマッピング番号が3、スクランブルコードが5のときの例である。式2を用いて送信シンボルマッピング番号が6に変換される。よって、このシンボルではシンボルマッピング番号6がマッピングされ出力される。
【0040】
図6に、図5の送信信号を受信した場合の受信点及び基準点送信シンボル番号のスクランブル適用前後の状態を示す。
【0041】
まず、この受信信号を硬判定することを考える。本発明を適用しない場合、基準点のマッピング点配置は図6の左図となる。図から最小距離の点が6であることは自明である。よって、硬判定するとこの受信信号の送信元の送信シンボルマッピング番号は6となる。6をデスクランブルすると3が得られ、送信元のシンボルマッピング番号と一致する。
【0042】
本発明を適用した場合、基準点のマッピング配置は図6の右図となる。図から最小距離の点が3であることは自明である。よって、硬判定するとこの受信信号の送信元のシンボルマッピング番号が3であることが得られる。
【0043】
次に、軟判定ビット尤度の算出を考える。前述の通り、MIL-STD-188-110B Appendix. Cのマッピング配置は格子状ではないため、等化出力の実数部や虚数部の値を尤度として用いることができないため、基準点との距離を測って尤度を算出する。ここでは、ビットLLR(Log Likelihood Ratio:対数尤度比)を考える。ビットLLR λ(m,bn)は、例えば、次式により算出する。
【数5】
ここで、bnは当該シンボルの変調ビットのnビット目、qは基準点シンボルマッピング番号、YR(m,q)は基準点シンボルマッピング出力である。ここで、近似式、
【数6】
を用いると、式5は次式のように近似できる。
【数7】
よって、各ビットに着目したときの1との最小距離、0との最小距離を使って計算する。以上の方法は、マッピング配置が格子状であっても適用可能である。また最小距離となるシンボルを全探索よりも効率的に見つけるための公知の手法を利用できる。
【0044】
本実施例におけるビット尤度算出処理は、格子状ではないマッピング配置の等化出力に対して基準点との距離を求めることにより尤度を算出する方法であり、チャネル推定値と基準マッピング点を使ってレプリカを生成し、受信信号とレプリカとの距離を計算するMLD(Maximum Likelihood Detection)とは異なる。
【0045】
図7に、対比のために、本実施例1のビット尤度算出処理を適用しない場合のLLR算出部30の構成を示す。LLR算出部30は、位相回転部31と、ビットLLR算出部27a,27bと、符号変換部32と、信号選択器33とを備える。ビットLLR算出部27a,27bは上述のビットLLR算出部27と同様なので、冗長な説明は省略する。
【0046】
位相回転部31は等化出力信号X^(m)に対して、スクランブルコードNSCR(m)を用いた位相回転処理を行った信号X^'(m)をビットLLR算出部27へ出力する。位相回転は、例えば、次式のように算出する。
【数8】
ここで、jは虚数単位である。この操作は、PSKにおけるデスクランブルに相当する。
【0047】
一方、QAMの場合、ビットLLR算出部27bは、入力された等化出力信号X^(m)から、例えば式7に基づいてビットLLR λQAM(m,bn)を計算する。
図8は、図6の16QAMにおける受信点を(-0.9,0.3)とした場合の、ビットLLR計算の過程における距離計算結果である。各ビットのLLRを求めるにあたり、そのビットが0になるようなシンボルであって距離が最小のものと、そのビットが1になるようなシンボルであって距離が最小のもの(本例では、シンボルマッピング番号6、7、14)が選ばれる。
【0048】
符号変換部32は、ビットLLR算出部27bから入力されたビットLLR λQAM(m,bn)に対してスクランブルコードNSCR(m)に応じた符号変換を行い、符号変換したビットLLRλ'QAM(m,bn)を信号選択器33へ出力する。符号変換は、例えば、次式による。
【数9】
ここで、bitget(A,B)はAを2進数で表現したときのBビット目を抽出する関数である。この操作は、QAMにおけるデスクランブルに相当する。
【0049】
信号選択器33は、入力されたビットLLRλPSK(m,bn)とλ'QAM(m,bn)について、変調方式がPSKであればλPSK(m,bn)を選択して出力し、QAMであればλ'QAM(m,bn)を選択して出力する。
【0050】
ここで、受信点が(-0.9,0.3)の場合の、実施例1を適用しないときの式7に基づく各ビットLLR及び符号変換出力を図9に示す。なお、説明を平易にするため、σ2 =1として計算した。
【0051】
図10に実施例1(基準点シンボルマッピング番号をスクランブル処理)による、ビットLLR計算結果を示す。両結果から同一の計算結果となることが分かる。本実施例を適用した場合は、図7のようにPSK、QAMで処理を分け、出力を選択する必要がない。
【0052】
再び図3に戻り、デインタリーブ部28は、入力されたビットLLRに対してインタリーブ部12によって並べ替えられたものを元の並び順に並び替え、誤り訂正復号器29へ出力する。
【0053】
誤り訂正復号器29は、入力されたビットLLRに対して、例えば、ビタビアルゴリズム復号処理のような誤り訂正復号処理を行い、誤り訂正結果を出力する。
【0054】
以上説明した実施例1によれば、送信側でシンボルマッピング番号にスクランブル処理された送信信号を受信し、基準点シンボルマッピング番号にスクランブル処理をして基準点を生成することにより、ビットLLRのような軟判定値を算出することが可能となる。
【実施例2】
【0055】
図11に本発明の実施例2に係る無線通信装置の構成を示す。実施例2の無線通信装置200は、誤り訂正符号化器11とインタリーブ部12とシリアル/パラレル変換部13とシンボルマッピング番号変換部14とスクランブルコード生成部15と送信シンボルマッピング番号変換部16とシンボルマッピング部17と変調部18と送信アンテナ19とを備える無線送信装置と、受信アンテナ20と検波部21とSC/MMSEフィルタ201と基準点シンボルマッピング番号生成部23とスクランブルコード生成部24と基準点送信シンボルマッピング番号生成部25と基準点シンボルマッピング部26とビットLLR算出部27とデインタリーブ部28と軟入力軟出力誤り訂正復号器202と硬判定部203とインタリーブ部204とビット確率計算部205とシンボルマッピング確率計算部206と基準点ソフトシンボルマッピング番号生成部207とスクランブルコード生成部208と基準点送信ソフトシンボルマッピング番号変換部209と基準点ソフトシンボルマッピング部210とソフトシンボル計算部211とを備える無線受信装置からなり、無線受信装置はソフトシンボル(軟判定値)を用いた反復復号を実現する。
【0056】
無線送信装置の全ての構成(誤り訂正符号化器11から送信アンテナ19)は実施例1と同一であり、図示を省略してある。
また、無線受信装置の構成の内、装置受信アンテナ20と、検波部21と、基準点シンボルマッピング番号生成部23と、スクランブルコード生成部24と、基準点送信シンボルマッピング番号生成部25と、基準点シンボルマッピング部26と、ビットLLR算出部27と、デインタリーブ部28は、実施例1と同一であるので、説明は省略する。
【0057】
SC/MMSEフィルタ201は、入力される受信信号から送受信間のチャネルを推定し、チャネル推定結果と入力されるソフトシンボルから受信信号に含まれる干渉成分の基準点を生成して受信信号から減じ、MMSE規範に基づく等化処理を行い、等化出力をビットLLR計算部27へ出力する。
【0058】
軟入力軟出力誤り訂正復号器202は、入力されるビットLLRに対して、例えば、SOVA(Soft Output Viterbi Algorithm)やBCJR(Bahl,Cocke,Jelinek,Raviv)アルゴリズムに基づいた軟入力軟出力誤り訂正復号を行い、復号結果を硬判定部203とインタリーブ部204へ出力する。
【0059】
硬判定部203は、例えば、入力されたビットLLRの符号が正であれば0、負であれば1を出力するような硬判定を行い、判定結果を出力する。
【0060】
インタリーブ部204は入力されるビットLLRをインタリーブ部12と同一の順序で並び替えを行い、ビット確率計算部205へ出力する。
【0061】
ビット確率計算部205は、入力されたビットLLRからビット確率を計算し、ビット確率をシンボルマッピング確率計算部206へ出力する。ビット確率の計算は、例えば、誤り訂正されたビットLLRをLeD(m,bn)、そのビットが0であるビット確率をp0(m,bn)、1であるビット確率をp1(m,bn)とするとき、次式で行う。
【数10】
【数11】
【0062】
シンボルマッピング確率計算部206は、入力されたビット確率p0(m,bn)、p1(m,bn)を用いてシンボルマッピング確率Pi(m)を計算し、ソフトシンボル計算部211へ出力する。シンボルマッピング確率計算は、例えば、次式による。
【数12】
ここで、Bは当該変調方式の変調ビット数である。また、uは次式で計算する。
【数13】
【0063】
基準点シンボルマッピング番号生成部207は、基準点シンボルマッピング点番号生成部23と同一の機能を有し、当該変調方式で取り得るマッピング点数をQとするとき、0..Q-1の整数(基準点ソフトシンボルマッピング番号)を生成し、基準点送信ソフトシンボルマッピング番号変換部209へ出力する。番号生成は例えば、予め用意したレジスタ値やROMの読出し値、カウンタ値を用いる。
【0064】
スクランブルコード生成部208は、スクランブルコード生成部15及びスクランブルコード生成部24と同一の機能を有し、生成したスクランブルコードビット系列を基準点送信ソフトシンボルマッピング番号変換部209へ出力する。
【0065】
基準点送信ソフトシンボルマッピング番号変換部209は、送信シンボルマッピング番号変換部16、基準点送信シンボルマッピング番号変換部25と同一の機能を有し、入力された基準点シンボルマッピング番号とスクランブルコードビット系列から基準点送信シンボルマッピング番号を生成し、基準点ソフトシンボルマッピング部210へ出力する。
【0066】
基準点ソフトシンボルマッピング部210は、シンボルマッピング17と基準点シンボルマッピング部26と同一の機能を有し、入力された基準点送信ソフトシンボルマッピング番号を用いて所定のマッピング点を選択し、ソフトシンボル計算部211へ出力する。
【0067】
ソフトシンボル計算部211は、入力されたシンボルマッピング確率Pi(m)と基準点シンボルマッピング出力Sq(m)を用いてソフトシンボルを計算し、計算結果をSC/MMSEフィルタ部201へ出力する。ソフトシンボルS~(m)の計算は、例えば、次式による。
【数14】
ここで、q'は、変調方式がPSKのとき、
【数15】
であり、変調方式がQAMのとき、
【数16】
である。
【0068】
図12に本実施例2を適用しない場合のソフトシンボル算出の構成を示す。図12のソフトシンボル算出は、インタリーブ204と符号変換部401と信号選択器402とビット確率計算部205とシンボル確率計算部206と基準点シンボルマッピング生成部207とスクランブルコード生成部208と基準点シンボルマッピング部210とソフトシンボル計算部211と位相回転部403と信号選択器404とを備える。
【0069】
インタリーブ204とビット確率計算部205とシンボル確率計算部206と基準点シンボルマッピング生成部207とスクランブルコード生成部208と基準点シンボルマッピング部210とソフトシンボル計算部211は第二の実施形態と同一であるため、説明は省略する。
【0070】
符号変換部401は符号変換部302と同一の機能を有し、入力されたビットLLR LeD(m,b'n)に対して入力されたスクランブルコードNSCR(m)に応じた符号変換を行い、符号変換したビットLLR Le'D(m,b'n)を信号選択器402へ出力する。
【0071】
信号選択器402は、入力されたビットLLR LeD(m,b'n)と符号変換されたビットLLR Le'D(m,b'n)から、変調方式に応じて変調方式がPSKであればLeD(m,b'n)を、変調方式がQAMであればLe'D(m,b'n)を選択してビット確率計算部205へ出力する。
【0072】
位相回転部403は位相回転部301と同一の機能を有し、入力されたソフトシンボルS~'(m)に対してスクランブルコードNSCR(m)に応じた位相回転を行い、位相回転したソフトシンボルS~'ROT(m)を信号選択器404へ出力する。
【0073】
信号選択器404は、入力されたソフトシンボルS~'(m)と位相回転されたソフトシンボルS~'ROT(m)から変調方式に応じて、変調方式がPSKであればS~'ROT(m)を、変調方式がQAMであればS~'(m)を選択して出力する。
【0074】
このように、本実施例2を適用しない場合は符号変換と位相回転の二つの処理が必要となる。
【0075】
以上述べた実施例2によれば、送信側でシンボルマッピング番号にスクランブル処理された送信信号を受信し、ターボ等化処理に用いるソフトシンボルを計算する際、基準点シンボルマッピング番号にスクランブル処理をして基準点信号を生成することにより、ソフトシンボルを算出することが可能となる。また、本実施例2を適用しない場合は符号変換、位相回転処理が必要となるが、本発明はそれらが不要となり、実装規模削減が実現できる。
【0076】
また、本発明は、MIL-STD-188-110B で規定されている無線通信システムに対して特に好適であるが、これに限定されるものではない。
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと同様な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。更に、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、ホワイトスペースを利用して無線通信を行う種々の形式の無線通信システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
11…誤り訂正符号化器、 12…インタリーブ部、 13…シリアル/パラレル変換部、 14…シンボルマッピング番号変換部、 15…スクランブルコード生成部、 16…送信シンボルマッピング番号変換部、 17…シンボルマッピング部、 18…変調部、 19…送信アンテナ、 20…受信アンテナ、
21…検波部、 22…チャネル等化部、 23…基準点シンボルマッピング番号生成部、 24…スクランブルコード生成部、 25…基準点送信シンボルマッピング番号生成部、 26…基準点シンボルマッピング部、 27…ビットLLR算出部、 28…デインタリーブ部、 29…誤り訂正復号器、
201…ソフト干渉キャンセラ/MMSE等化部、 202…軟入力軟出力誤り訂正復号器、 203硬判定部、 204…インタリーブ部、 205…ビット確率計算部、 206…シンボル確率計算部、 207…基準点シンボルマッピング番号生成部、 208…スクランブルコード生成部、 209…基準点送信シンボルマッピング番号変換部、
210…基準点シンボルマッピング部、 211…ソフトシンボル計算部、
301…位相回転部、 302…符号変換部、 303…信号選択器、
401…符号変換部、 402…信号選択器、 403…位相回転部、 404…信号選択器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12