【実施例1】
【0021】
図3に実施例1に係る無線通信装置1の構成を示す。無線通信装置1は、誤り訂正符号化器11と、インタリーブ部12と、シリアル/パラレル変換部13と、シンボルマッピング番号変換部14と、スクランブルコード生成部15と、送信シンボルマッピング番号変換部16と、シンボルマッピング部17と、変調部18と、送信アンテナ19と、受信アンテナ20と、検波部21と、チャネル等化器22と、基準点シンボルマッピング番号生成部23と、スクランブルコード生成部24と、基準点送信シンボルマッピング番号生成部25と、基準点シンボルマッピング部26と、ビットLLR算出部27とデインタリーブ部28と、誤り訂正復号器29とを備える。
【0022】
誤り訂正符号化器11は、入力される情報ビット系列に対し、例えば、畳み込み符号化処理のような誤り訂正符号化処理を施し、インタリーブ部12へ出力する。
【0023】
インタリーブ部12は、入力されたビット系列を所定の順序に並び替え、シリアル/パラレル変換部13へ出力する。
【0024】
シリアル/パラレル変換部13は、入力されたビット系列を所定の変調方式の変調ビット数毎に束ね、シンボルマッピング番号変換部へ出力する。例えば、QPSKは2ビット、8PSKは3ビット毎の処理となる。
【0025】
シンボルマッピング番号変換部14は、入力された変調ビット系列を所定の変換則によってシンボルマッピング点番号に変換し、送信シンボルマッピング点番号変換部16へ出力する。シンボルマッピング点の変換則は、例えば、MIL-STD-188-110B Appendix Cでは
図4に示すような変換を行う。
【0026】
スクランブルコード生成部15は、所定の変調方式に応じたビット数のスクランブルコードビット系列を送信シンボルマッピング点番号変換部16へ出力する。スクランブルコードビット系列は、例えば、PN(Pseudo random Noise)発生器の予め定められた切り出し則による出力を用いる。
【0027】
送信シンボルマッピング番号変換部16は、例えば、背景技術で述べたように、シンボルマッピング番号をN(m)、スクランブルコードをN
SCR(m)とするとき、式1や式2を用いて送信シンボルマッピング番号N
TX(m)を計算し、送信シンボルマッピング番号N
TX(m)をシンボルマッピング部17へ出力する。
【0028】
シンボルマッピング部17は、入力された送信シンボルマッピング番号N
TX(m)を用いて所定のシンボルマッピング点を選択し、変調部18へ出力する。
【0029】
変調部18は、入力されたマッピング出力を時間信号に変換して送信周波数に変換し、送信アンテナ19へ出力する。
【0030】
送信アンテナ19は、入力された変調信号を無線伝送空間に送信する。
【0031】
受信アンテナ20は、無線伝送空間から送信信号を受信し、検波部21へ出力する。
【0032】
検波部21は、入力された信号を検波して周波数信号に変換し、チャネル等化器22へ出力する。
【0033】
チャネル等化器22は、入力された受信周波数信号の送受信間のチャネル歪を推定してそれを補正し、ビットLLR算出部27へ出力する。チャネル等化は、受信信号をY(m)、推定した送受信間のチャネルをH^(m)、等化出力をX^(m)とするとき、例えば、
【数3】
や、MMSE(Minimum Mean Square Error)規範による
【数4】
を用いてチャネル等化処理を行う。ここで、[・]
Hは複素共役、σ
2は雑音電力である。
【0034】
基準点シンボルマッピング番号生成部23は、当該変調方式で取り得るマッピング点数をQとするとき、0 .. Q-1の整数(基準点シンボルマッピング番号)を生成し、基準点の送信シンボルマッピング番号生成部25とビットLLR算出部27へ出力する。番号生成は例えば、予め用意したレジスタ値やROMの読出し値、カウンタ値を用いる。
【0035】
スクランブルコード生成部24は、スクランブルコード生成部15と同一の機能を有し、生成したスクランブルコードビット系列を基準点送信シンボルマッピング番号生成25へ出力する。
【0036】
基準点送信シンボルマッピング番号変換部25は、送信シンボルマッピング番号変換部16と同一の機能を有し、入力された基準点シンボルマッピング番号とスクランブルコードビット系列から基準点送信シンボルマッピング番号を生成し、基準点シンボルマッピング部26へ出力する。
【0037】
基準点シンボルマッピング部26は、シンボルマッピング17と同一の機能を有し、入力された基準点送信シンボルマッピング番号を用いて所定のマッピング点を選択し、ビットLLR算出部27へ出力する。
【0038】
ビットLLR算出部27は、入力されたチャネル等化出力と基準点マッピング出力と基準点シンボルマッピング番号を用いてビット尤度を算出し、デインタリーブ部28へ出力する。以下、送信側処理、基準点生成を含め、ビット尤度の算出について説明する。
【0039】
図5に、16QAMの送信信号例を示す。この図はシンボルマッピング番号が3、スクランブルコードが5のときの例である。式2を用いて送信シンボルマッピング番号が6に変換される。よって、このシンボルではシンボルマッピング番号6がマッピングされ出力される。
【0040】
図6に、
図5の送信信号を受信した場合の受信点及び基準点送信シンボル番号のスクランブル適用前後の状態を示す。
【0041】
まず、この受信信号を硬判定することを考える。本発明を適用しない場合、基準点のマッピング点配置は
図6の左図となる。図から最小距離の点が6であることは自明である。よって、硬判定するとこの受信信号の送信元の送信シンボルマッピング番号は6となる。6をデスクランブルすると3が得られ、送信元のシンボルマッピング番号と一致する。
【0042】
本発明を適用した場合、基準点のマッピング配置は
図6の右図となる。図から最小距離の点が3であることは自明である。よって、硬判定するとこの受信信号の送信元のシンボルマッピング番号が3であることが得られる。
【0043】
次に、軟判定ビット尤度の算出を考える。前述の通り、MIL-
STD-188-110B Appendix. Cのマッピング配置は格子状ではないため、等化出力の実数部や虚数部の値を尤度として用いることができないため、基準点との距離を測って尤度を算出する。ここでは、ビットLLR(Log Likelihood Ratio:対数尤度比)を考える。ビットLLR λ(m,bn)は、例えば、次式により算出する。
【数5】
ここで、bnは当該シンボルの変調ビットのnビット目、qは基準点シンボルマッピング番号、YR(m,q)は基準点シンボルマッピング出力である。ここで、近似式、
【数6】
を用いると、式5は次式のように近似できる。
【数7】
よって、各ビットに着目したときの1との最小距離、0との最小距離を使って計算する。以上の方法は、マッピング配置が格子状であっても適用可能である。また最小距離となるシンボルを全探索よりも効率的に見つけるための公知の手法を利用できる。
【0044】
本実施例におけるビット尤度算出処理は、格子状ではないマッピング配置の等化出力に対して基準点との距離を求めることにより尤度を算出する方法であり、チャネル推定値と基準マッピング点を使ってレプリカを生成し、受信信号とレプリカとの距離を計算するMLD(Maximum Likelihood Detection)とは異なる。
【0045】
図7に、対比のために、本実施例1のビット尤度算出処理を適用しない場合のLLR算出部30の構成を示す。LLR算出部30は、位相回転部31と、ビットLLR算出部27a,27bと、符号変換部32と、信号選択器33とを備える。ビットLLR算出部27a,27bは上述のビットLLR算出部27と同様なので、冗長な説明は省略する。
【0046】
位相回転部31は等化出力信号X^(m)に対して、スクランブルコードN
SCR(m)を用いた位相回転処理を行った信号X^'(m)をビットLLR算出部27へ出力する。位相回転は、例えば、次式のように算出する。
【数8】
ここで、jは虚数単位である。この操作は、PSKにおけるデスクランブルに相当する。
【0047】
一方、QAMの場合、ビットLLR算出部27bは、入力された等化出力信号X^(m)から、例えば式7に基づいてビットLLR λ
QAM(m,b
n)を計算する。
図8は、
図6の16QAMにおける受信点を(-0.9,0.3)とした場合の、ビットLLR計算の過程における距離計算結果である。各ビットのLLRを求めるにあたり、そのビットが0になるようなシンボルであって距離が最小のものと、そのビットが1になるようなシンボルであって距離が最小のもの(本例では、シンボルマッピング番号6、7、14)が選ばれる。
【0048】
符号変換部32は、ビットLLR算出部27bから入力されたビットLLR λ
QAM(m,b
n)に対してスクランブルコードN
SCR(m)に応じた符号変換を行い、符号変換したビットLLRλ'
QAM(m,b
n)を信号選択器33へ出力する。符号変換は、例えば、次式による。
【数9】
ここで、bitget(A,B)はAを2進数で表現したときのBビット目を抽出する関数である。この操作は、QAMにおけるデスクランブルに相当する。
【0049】
信号選択器33は、入力されたビットLLRλ
PSK(m,b
n)とλ'
QAM(m,b
n)について、変調方式がPSKであればλ
PSK(m,b
n)を選択して出力し、QAMであればλ'
QAM(m,b
n)を選択して出力する。
【0050】
ここで、受信点が(-0.9,0.3)の場合の、実施例1を適用しないときの式7に基づく各ビットLLR及び符号変換出力を
図9に示す。なお、説明を平易にするため、σ
2 =1として計算した。
【0051】
図10に実施例1(基準点シンボルマッピング番号をスクランブル処理)による、ビットLLR計算結果を示す。両結果から同一の計算結果となることが分かる。本実施例を適用した場合は、
図7のようにPSK、QAMで処理を分け、出力を選択する必要がない。
【0052】
再び
図3に戻り、デインタリーブ部28は、入力されたビットLLRに対してインタリーブ部12によって並べ替えられたものを元の並び順に並び替え、誤り訂正復号器29へ出力する。
【0053】
誤り訂正復号器29は、入力されたビットLLRに対して、例えば、ビタビアルゴリズム復号処理のような誤り訂正復号処理を行い、誤り訂正結果を出力する。
【0054】
以上説明した実施例1によれば、送信側でシンボルマッピング番号にスクランブル処理された送信信号を受信し、基準点シンボルマッピング番号にスクランブル処理をして基準点を生成することにより、ビットLLRのような軟判定値を算出することが可能となる。
【実施例2】
【0055】
図11に本発明の実施例2に係る無線通信装置の構成を示す。実施例2の無線通信装置200は、誤り訂正符号化器11とインタリーブ部12とシリアル/パラレル変換部13とシンボルマッピング番号変換部14とスクランブルコード生成部15と送信シンボルマッピング番号変換部16とシンボルマッピング部17と変調部18と送信アンテナ19とを備える無線送信装置と、受信アンテナ20と検波部21とSC/MMSEフィルタ201と基準点シンボルマッピング番号生成部23とスクランブルコード生成部24と基準点送信シンボルマッピング番号生成部25と基準点シンボルマッピング部26とビットLLR算出部27とデインタリーブ部28と軟入力軟出力誤り訂正復号器202と硬判定部203とインタリーブ部204とビット確率計算部205とシンボルマッピング確率計算部206と基準点ソフトシンボルマッピング番号生成部207とスクランブルコード生成部208と基準点送信ソフトシンボルマッピング番号変換部209と基準点ソフトシンボルマッピング部210とソフトシンボル計算部211とを備える無線受信装置からなり、無線受信装置はソフトシンボル(軟判定値)を用いた反復復号を実現する。
【0056】
無線送信装置の全ての構成(誤り訂正符号化器11から送信アンテナ19)は実施例1と同一であり、図示を省略してある。
また、無線受信装置の構成の内、装置受信アンテナ20と、検波部21と、基準点シンボルマッピング番号生成部23と、スクランブルコード生成部24と、基準点送信シンボルマッピング番号生成部25と、基準点シンボルマッピング部26と、ビットLLR算出部27と、デインタリーブ部28は、実施例1と同一であるので、説明は省略する。
【0057】
SC/MMSEフィルタ201は、入力される受信信号から送受信間のチャネルを推定し、チャネル推定結果と入力されるソフトシンボルから受信信号に含まれる干渉成分の基準点を生成して受信信号から減じ、MMSE規範に基づく等化処理を行い、等化出力をビットLLR計算部27へ出力する。
【0058】
軟入力軟出力誤り訂正復号器202は、入力されるビットLLRに対して、例えば、SOVA(Soft Output Viterbi Algorithm)やBCJR(Bahl,Cocke,Jelinek,Raviv)アルゴリズムに基づいた軟入力軟出力誤り訂正復号を行い、復号結果を硬判定部203とインタリーブ部204へ出力する。
【0059】
硬判定部203は、例えば、入力されたビットLLRの符号が正であれば0、負であれば1を出力するような硬判定を行い、判定結果を出力する。
【0060】
インタリーブ部204は入力されるビットLLRをインタリーブ部12と同一の順序で並び替えを行い、ビット確率計算部205へ出力する。
【0061】
ビット確率計算部205は、入力されたビットLLRからビット確率を計算し、ビット確率をシンボルマッピング確率計算部206へ出力する。ビット確率の計算は、例えば、誤り訂正されたビットLLRをLeD(m,bn)、そのビットが0であるビット確率をp0(m,bn)、1であるビット確率をp1(m,bn)とするとき、次式で行う。
【数10】
【数11】
【0062】
シンボルマッピング確率計算部206は、入力されたビット確率p
0(m,b
n)、p
1(m,b
n)を用いてシンボルマッピング確率P
i(m)を計算し、ソフトシンボル計算部211へ出力する。シンボルマッピング確率計算は、例えば、次式による。
【数12】
ここで、Bは当該変調方式の変調ビット数である。また、uは次式で計算する。
【数13】
【0063】
基準点シンボルマッピング番号生成部207は、基準点シンボルマッピング点番号生成部23と同一の機能を有し、当該変調方式で取り得るマッピング点数をQとするとき、0..Q-1の整数(基準点ソフトシンボルマッピング番号)を生成し、基準点送信ソフトシンボルマッピング番号変換部209へ出力する。番号生成は例えば、予め用意したレジスタ値やROMの読出し値、カウンタ値を用いる。
【0064】
スクランブルコード生成部208は、スクランブルコード生成部15及びスクランブルコード生成部24と同一の機能を有し、生成したスクランブルコードビット系列を基準点送信ソフトシンボルマッピング番号変換部209へ出力する。
【0065】
基準点送信ソフトシンボルマッピング番号変換部209は、送信シンボルマッピング番号変換部16、基準点送信シンボルマッピング番号変換部25と同一の機能を有し、入力された基準点シンボルマッピング番号とスクランブルコードビット系列から基準点送信シンボルマッピング番号を生成し、基準点ソフトシンボルマッピング部210へ出力する。
【0066】
基準点ソフトシンボルマッピング部210は、シンボルマッピング17と基準点シンボルマッピング部26と同一の機能を有し、入力された基準点送信ソフトシンボルマッピング番号を用いて所定のマッピング点を選択し、ソフトシンボル計算部211へ出力する。
【0067】
ソフトシンボル計算部211は、入力されたシンボルマッピング確率P
i(m)と基準点シンボルマッピング出力S
q(m)を用いてソフトシンボルを計算し、計算結果をSC/MMSEフィルタ部201へ出力する。ソフトシンボルS~(m)の計算は、例えば、次式による。
【数14】
ここで、q'は、変調方式がPSKのとき、
【数15】
であり、変調方式がQAMのとき、
【数16】
である。
【0068】
図12に本実施例2を適用しない場合のソフトシンボル算出の構成を示す。
図12のソフトシンボル算出は、インタリーブ204と符号変換部401と信号選択器402とビット確率計算部205とシンボル確率計算部206と基準点シンボルマッピング生成部207とスクランブルコード生成部208と基準点シンボルマッピング部210とソフトシンボル計算部211と位相回転部403と信号選択器404とを備える。
【0069】
インタリーブ204とビット確率計算部205とシンボル確率計算部206と基準点シンボルマッピング生成部207とスクランブルコード生成部208と基準点シンボルマッピング部210とソフトシンボル計算部211は第二の実施形態と同一であるため、説明は省略する。
【0070】
符号変換部401は符号変換部302と同一の機能を有し、入力されたビットLLR L
eD(m,b'
n)に対して入力されたスクランブルコードN
SCR(m)に応じた符号変換を行い、符号変換したビットLLR L
e'
D(m,b'
n)を信号選択器402へ出力する。
【0071】
信号選択器402は、入力されたビットLLR L
eD(m,b'
n)と符号変換されたビットLLR L
e'
D(m,b'
n)から、変調方式に応じて変調方式がPSKであればL
eD(m,b'
n)を、変調方式がQAMであればL
e'
D(m,b'
n)を選択してビット確率計算部205へ出力する。
【0072】
位相回転部403は位相回転部301と同一の機能を有し、入力されたソフトシンボルS~'(m)に対してスクランブルコードN
SCR(m)に応じた位相回転を行い、位相回転したソフトシンボルS~'
ROT(m)を信号選択器404へ出力する。
【0073】
信号選択器404は、入力されたソフトシンボルS~'(m)と位相回転されたソフトシンボルS~'
ROT(m)から変調方式に応じて、変調方式がPSKであればS~'
ROT(m)を、変調方式がQAMであればS~'(m)を選択して出力する。
【0074】
このように、本実施例2を適用しない場合は符号変換と位相回転の二つの処理が必要となる。
【0075】
以上述べた実施例2によれば、送信側でシンボルマッピング番号にスクランブル処理された送信信号を受信し、ターボ等化処理に用いるソフトシンボルを計算する際、基準点シンボルマッピング番号にスクランブル処理をして基準点信号を生成することにより、ソフトシンボルを算出することが可能となる。また、本実施例2を適用しない場合は符号変換、位相回転処理が必要となるが、本発明はそれらが不要となり、実装規模削減が実現できる。
【0076】
また、本発明は、MIL-STD-188-110B で規定されている無線通信システムに対して特に好適であるが、これに限定されるものではない。
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと同様な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。更に、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。