特許第6183993号(P6183993)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社川島織物セルコンの特許一覧

<>
  • 特許6183993-シート材 図000004
  • 特許6183993-シート材 図000005
  • 特許6183993-シート材 図000006
  • 特許6183993-シート材 図000007
  • 特許6183993-シート材 図000008
  • 特許6183993-シート材 図000009
  • 特許6183993-シート材 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6183993
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】シート材
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/02 20060101AFI20170814BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   B32B7/02 101
   B32B5/24
【請求項の数】4
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-89075(P2013-89075)
(22)【出願日】2013年4月22日
(65)【公開番号】特開2014-210413(P2014-210413A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148151
【氏名又は名称】株式会社川島織物セルコン
(74)【代理人】
【識別番号】100081891
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150153
【弁理士】
【氏名又は名称】堀家 和博
(72)【発明者】
【氏名】渡場 秀将
(72)【発明者】
【氏名】平井 義久
(72)【発明者】
【氏名】早瀬 重喜
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−125734(JP,A)
【文献】 特開2010−115869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 − 43/00
D06N 1/00 − 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の一方面材の一部又は全部に少なくともシート状の他方面材が接着されて2層以上を成す積層体を有し、前記他方面材の3%伸長時応力(単位:N/5cm)が、前記一方面材の3%伸長時応力(単位:N/5cm)より大きく、
前記一方面材は、使用時に前記他方面材に覆われる裏基材であり、
前記他方面材は、使用時に当該シート材の最表面で露出する表面材であり、
前記表面材が織物で構成されていることを特徴とするシート材。
【請求項2】
前記積層体は、前記積層体が溶融により加飾された加飾部と、前記加飾がされていない未加飾部を備え、前記未加飾部が、少なくとも前記積層体の周縁から所定距離までの範囲に設けられ
前記加飾部は、前記積層体を構成する各層をまとめて溶融することで加飾されていることを特徴とする請求項に記載のシート材。
【請求項3】
前記シート材全体に、前記表面材側を谷としてカールした反りが生じていないことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート材。
【請求項4】
前記積層体は、前記裏基材と前記表面材の間に1つ以上のシート状の中層材を備えて3層以上を成し、前記裏基材と前記表面材と前記中層材のうち少なくとも何れか2つの層間が、少なくとも一部で未接着であり、
前記中層材は、糸状ではなくシート状であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のシート材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の裏基材に少なくともシート状の表面材が接着されて2層以上を成す積層体を有したシート材に関するものである。
【0002】
従来、室内の壁面や天井面あるいは床面を装飾する用途に用いられることは勿論のこと、襖紙をはじめ各種の装飾シートや乗物の内装材としての用途にも供することができる高発泡性の壁紙が知られている(特許文献1)。
この壁紙は、ベースシート上に、発泡層、ガスバリヤー性フィルム層、次いで不織布層の順で該3層を積層してなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−155478号公報
【特許文献2】特開2000−333815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載された高発泡性壁紙は、ガスバリヤー性フィルム層を必須とし、このフィルム層の不透過性のため、汚染物や水の滲出等が防止され、目開きやオープンタイムの問題がないとされている(特許文献1の段落0080)。
しかしながら、特許文献1の高発泡性壁紙は、不織布層も必須としており、この必須の不織布層が、ガスバリヤー性フィルム層の上に積層されている(つまり、不透過性のフィルム層で覆われていない)ため、不織布層が汚染物や水の滲出等に晒されることから、目開き等の問題が皆無とは言えず、又、反りの問題も生じ得る。
【0005】
尚、反りの問題について、従来は、不織布の表裏層の繊維の複屈折率に差をつけること等で対処しており、この差によって、パイル面(表面側の層)がより収縮しにくい構造で、かつパイル面の反対面(バッキング面、つまり裏面側の層)がより収縮しやすい構造として、上反りが生じないとしている(特許文献2の特許請求の範囲、段落0081)。
すなわち、特許文献2では、裏面側の層をより収縮しやすい(伸び難く、伸長時応力が大きい)構造とし、表面側の層をより収縮しにくい(伸び易く、伸長時応力が小さい)構造とすることで、反りの問題に対処している。
【0006】
しかしながら、特許文献2では、不織布の表裏層の繊維の複屈折率に差をつけることを必須とし、この差は、不織布の片面のみを熱処理することでつけている(特許文献2の段落0023、0024等)ことから、片面のみの熱処理工程が、余計に必要となり、製造効率が低下する。
【0007】
本発明は、このような点に鑑み、裏基材に表面材が接着された積層体で、表面材の3%伸長時応力を、裏基材の3%伸長時応力より大きくすることで、製造効率の低下なしに、表面材側への反りを抑えたシート材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシート材1は、シート状の一方面材の一部又は全部に少なくともシート状の他方面材が接着されて2層以上を成す積層体を有し、前記他方面材の3%伸長時応力(単位:N/5cm)が、前記一方面材の3%伸長時応力(単位:N/5cm)より大きく、前記一方面材は、使用時に前記他方面材に覆われる裏基材であり、前記他方面材は、使用時に当該シート材の最表面で露出する表面材であり、前記表面材が織物で構成されていることを第1の特徴とする。
【0009】
本発明に係るシート材1の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、前記積層体は、前記積層体が溶融により加飾された加飾部と、前記加飾がされていない未加飾部を備え、前記未加飾部が、少なくとも前記積層体の周縁から所定距離までの範囲に設けられ、前記加飾部は、前記積層体を構成する各層をまとめて溶融することで加飾されている点にある。
【0010】
本発明に係るシート材1の第3の特徴は、上記第1又は2の特徴に加えて、前記シート材全体に、前記表面材側を谷としてカールした反りが生じていない点にある。
【0011】
本発明に係るシート材1の第4の特徴は、上記第1〜3の何れかの特徴に加えて、前記積層体は、前記裏基材と前記表面材の間に1つ以上のシート状の中層材を備えて3層以上を成し、前記裏基材と前記表面材と前記中層材のうち少なくとも何れか2つの層間が、少なくとも一部で未接着であり、前記中層材は、糸状ではなくシート状である点にある。
その他、シート材1は、前記表面材の表面又は裏面に沿う何れの方向の3%伸長時応力であっても、前記裏基材の表面又は裏面に沿う何れの方向の3%伸長時応力より大きいとしても良い。
【0012】
これらの特徴により、裏基材2に表面材3が接着された積層体4で、表面材3の3%伸長時応力Ff を、裏基材2の3%伸長時応力Fb より大きく(つまり、表面材3の方が、裏基材2よりも伸び難く)することで、裏基材2と表面材3の接着は、加熱工程など一切増やすことなく、例えば、接着工程などのシート材1における必須の工程だけで良いことから、製造工程が余計に増えたり、製造効率が低下するような、製造負担の増加をなくしつつ、表面材3側への反り(例えば、シート材1全体が表面材3側を谷としてカールしたような反りなど)が抑制できる。
ここで、本発明における「3%伸長時応力」とは、50×250mmの試験片につき、荷重・伸度測定試験機を用い、4.9Nの初荷重の下で、つかみ間隔を150mmとなるように試験片を取り付け、1分間当たりつかみ間隔の100%(150mm)の引張速度(つまり、150mm/分)で、伸びが3%となるまで試験片を伸ばし、そのときの荷重(伸長時応力、単位:N/5cm)を言う。
又、「3%伸長時応力」については、上記の測定方法において、初荷重を、試験片の幅で1mの長さにかかる重力に相当する[整数位までの値(N)]とし、つかみ間隔を、200m又は500mmとし、引張速度を、1分間当たりつかみ間隔の100%の速度としたJIS−L−1096:2010によって測定した伸長力を、本発明における「3%伸長時応力」としても良い。
つまり、本発明では、同じ測定方法によって測定した表面材3の3%伸長時応力Ff と、裏基材2の3%伸長時応力Fb の大小を比べて、表面材3の3%伸長時応力Ff を、裏基材2の3%伸長時応力Fb より大きく設定することとなる。
尚、「表面材3の3%伸長時応力Ff が、裏基材2の3%伸長時応力Fb より大きい」とは、表面材3の表面3a又は裏面3bに沿う方向の3%伸長時応力のうち、一方向でも、裏基材2の3%伸長時応力(裏基材2の表面2a又は裏面2bに沿う何れかの方向における3%伸長時応力)より大きければ良いことを言う。
【0013】
又、裏基材2と表面材3の間に中層材5を備え、これら3つの裏基材2、表面材3、中層材5のうち少なくとも何れか2つを、少なくとも一部で未接着にすることで、シート材1全体が折り曲げられた際であっても、裏基材2、表面材3、中層材5のうち、互いの未接着な部分同士で相対位置がずれ得るため、未接着な層間を持たない場合よりも、折り曲げられた際の山側(例えば、裏基材2側を谷として折り曲げられた際には、表面材3側であって、シート材1の最表面1a)に現れる皺を低減できる。
【0014】
更に、溶融による加飾がされていない未加飾部7を、少なくとも積層体4の周縁4cから所定距離Lまでの範囲に設ける(つまり、積層体4において、その周縁4cから所定距離Lの範囲で、溶融による加飾を行わない)ことで、積層体4(シート材1)の周縁4cの形状安定性が向上する。
詳解すれば、仮に、積層体4の周縁4cぎりぎりまで加飾を行った際には、加飾部6に伴って、周縁4cの部分までが溶融されてしまい、周縁4cが加飾部6近傍で鉛直方向(例えば、上方)へ突き出したり、加飾部6に沿って水平方向外方へ飛び出したりもして、ツノ様のもの(以下「ツノ」)が形成される場合がある。
しかし、周縁4cから所定距離Lの範囲で溶融の加飾を行わなければ、加飾部6に沿って外方に飛び出すことはなく、積層体4(シート材1)の最外形の形状が安定する。
【0015】
そして、表面材3における何れの方向の3%伸長時応力Ff であっても、裏基材2における何れの方向の3%伸長時応力Fb より大きければ、製造負担の増加抑制と同時に、更なる反りの抑制を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るシート材によると、裏基材に表面材が接着された積層体で、表面材の3%伸長時応力を裏基材の3%伸長時応力より大きくすることで、製造負担の増加なく、シート材における表面材側への反りが抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】は、本発明の第1実施形態に係るシート材とその断面を示す斜視図・一部拡大図である。
図2】は、(a)が第1実施形態に係るシート材における加飾部の1つのパターン例を示す斜視図であり、(b)が加飾部のその他のパターン例を示す斜視図である。
図3】は、本発明の第2実施形態に係るシート材とその断面を示す斜視図である。
図4】は、本発明の第3実施形態に係るシート材とその断面を示す斜視図・一部拡大図である。
図5】は、本発明の第4実施形態に係るシート材とその断面を示す斜視図・一部拡大図である。
図6】は、本発明の第5実施形態に係るシート材とその断面を示す斜視図・一部拡大図である。
図7】は、本発明に係るシート材の表面材と裏基材における各素材、経緯方向の3%伸長時応力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
図1〜3には、本発明の第1実施形態に係るシート材1が示されている。
このシート材1は、シート状の裏基材2と、シート状の表面材3と、これら裏基材2と表面材3との間にあるシート状の中層材5を備えて3層を成す積層体4を有している(換言すれば、積層体4自体で、シート材1を構成する)。
シート材1は、その最表面1a(表面材3の表面3a)などに表れて加飾する加飾部6(有底状の孔11)が形成されており、この加飾部6以外の部分で、未加飾部7を成している。
【0019】
図2に示されたように、シート材1の形状は、平面視で略矩形状であって、その各辺は何れの長さでも良いが、例えば、50mm以上5000mm以下、好ましくは100mm以上3000mm以下、更に好ましくは200mm以上2000mm以下であっても構わない。
シート材1の形状については、上述した略矩形状の他、平面視で、円形、楕円形をはじめ、三角形、六角形等の多角形であっても良い。
シート材1全体としての厚みは、特に限定はないが、例えば、1mm以上50mm以下、好ましくは3mm以上30mm以下、更に好ましくは5mm以上20mm以下であっても良い。
【0020】
<裏基材2、表面材3、中層材5>
図1に示された如く、裏基材2は、積層体4において、ベース(土台)として支えるシート状物であって、この裏基材2の表面(上面)2a側に、中層材5、表面材3が、この順で積層されている。逆に言えば、ベースである裏基材2は、表面材3等に覆われて、人目に触れる頻度が低い。
表面材3は、積層体4における最も上面(最表面)に位置し、中層材5の上に積層されるシート状物である。つまり、最表面にある表面材3は、当然、人目に触れる頻度が最も高く、意匠性(デザイン性)を発揮できる部分である。
中層材5は、裏基材2と表面材3に上下を覆われ、外部には露出していないシート状物である。
【0021】
裏基材2、表面材3及び中層材5は、上述したように、互いに積層されるシート状物であれば、何れの素材でも良いが、織物、編物、不織布等の布帛などから構成されていても良い。
これら織物などの布帛は、その繊維が熱により溶融又は軟化する特性(熱融着性)を有している。この熱融着性を有する繊維を例示すれば、ポリエステル、ナイロン、ポリオレフィン、アクリル、ポリウレタン、アセテート、ビニロン等を挙げること出来るが、これらのみに限定されるものではない。
又、布帛を構成する繊維の繊度も、何れの値でも良いが、例えば、総繊度で、20dtex以上3000dtex以下である。
【0022】
尚、裏基材2、表面材3、中層材5を構成する布帛が、織物である際には、平織や綾織、朱子織、二重織などであっても良い。
又、布帛が編物である際には、デンビー編(トリコット編)や、ラッシェル編、ダブルラッシェル編、バンダイク編(アトラス編)、コード編などの経編や、平編(天竺編)、ゴム編(リブ編)、パール編などの緯編など、それぞれ何れの組織であっても構わない。
【0023】
更に、布帛が不織布であれば、スパンボンド法や、乾式法、湿式法などによって、繊維の集積層(フリース)を形成し、このフリースを、ニードルパンチ法や、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、水流絡合法などで繊維同士を結合させる等、何れの方法で製造されたものでも構わない。
不織布に用いられる繊維は、短繊維(ステープル)でも、長繊維(フィラメント)でも良いが、例えば、短繊維を用いる場合では、その繊維長は、10mm以上70mm以下、好ましくは20mm以上60mm以下、更に好ましくは30mm以上60mm以下である。
不織布は、繊維の結合を促すバインダー(樹脂バインダー)を用いていても良く、その際、バインダーは、練込みであったり、パウダー状、繊維状等の形態で添加されても良く、例えば、アクリル系、スチレン−ブタジエン共重合系、ビニルアセテート−エチレン共重合系、ビニルアセテート−アクリル共重合系、ポリ酢酸ビニル系、アクリロニトリル系、ナイロン系、ポリエステル系、ポリオレフィン系等の接着剤が用いられる。
その他、不織布を構成する繊維を、鞘部の融点が芯部の融点より低い芯鞘構造等であっても良い。
【0024】
更に加えて、裏基材2と表面材3は、後述するような、裏基材2を成す素材の3%伸長時応力Fb が、表面材3を成す素材の3%伸長時応力Ff よりも小さいのであれば、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂などの熱融着性を有したフィルムなどであっても良い。
上述した裏基材2、表面材3、中層材5の素材には、所望により、酸化チタン、炭酸カルシウム等の体質顔料やフィラー(充填材)を任意に添加できるほか、消臭剤、抗菌剤、防カビ剤、難燃剤、撥水剤、防汚剤、着色剤、香料、発泡剤等を添加しても良い。
尚、上述したように、裏基材2、表面材3は、上述した何れの素材、構成でも構わないが、最も人目に触れる表面材3は、織物や編物など意匠性を発揮可能なものが好ましく(意匠性を発揮し難い不織布等は、表面材3として使用される頻度が低く)、その一方で、加工性・嵩高性などの機能面や、価格面から、裏基材2には、織物が使用される頻度は低い。
【0025】
<加飾部6>
図1、2で示されるように、加飾部6は、平面視で略格子状(グリッド状)に一列を成した複数の孔11、11、11・・・が、溶融によって、所定間隔dごとに形成された部分で構成されている。
それぞれの孔11は、シート材1の最表面1a側が開口した有底状(逆に、加飾部6(孔11等)が有底状である場合、孔11の開口がある側がシート材1の表面1a(表面材3)側)であって、このように底を有することで、当然、積層体4(シート材1)の表裏で、孔11を通っての空気の移動はない(貫通させた場合よりも、孔内の空気移動が少なく、孔11の周辺(孔周部11a)に汚れが付き難い)。
又、各孔11の平面視での形状は、略楕円形状であるが、この他、略円形状や、略矩形状のほか、三角形状、六角形状等の多角形状であっても構わず、又、1つのシート材1の中で、孔11の形状が複数の種類であっても良い。
【0026】
更に、各孔11が成す列(つまり、加飾部6が施されるパターン)は、積層体4(シート材1)の大きさに応じて、繰り返す格子の数に違いを設けても良い(図2(a)、(b))。
又、加飾部6のパターンは、平面視で略格子状でなくとも、略円形状や、略楕円形状、略三角形、略六角形状等の多角形状、略波線状、ハニカム状などであっても良く、これらが単独又は組み合わさって、それぞれが連続したり、互いに重なったりしても良い。
この他、加飾部6は、各孔11が、一列を成すだけでなく、縦横(行列状)に間隔をあけて並べられていても良く、これらの並びの最外形の孔11による図形も、略格子状をはじめ、略円形状、略楕円形状、略三角形等の多角形状、略波線状、ハニカム状などや、これらの組み合わせであっても良い。
【0027】
この加飾部6の形成は、溶融によって成されるのであれば、何れの手段であっても構わないが、例えば、超音波ミシンや、高周波ウェルダーを用いたり、ヒートカッターなどの熱を帯びた部材を用いても構わない。
又、これらの手段は、積層体4を構成する各層(裏基材2、表面材3、中層材5)をまとめて溶融することで、有底状の孔11を形成することから、当然、その孔11の周辺部分(孔周部11a)にも、溶融・軟化が起こっている。
【0028】
この各孔周部11aの溶融・軟化によって、積層体4における裏基材2、表面材3及び中層材5は、各孔11の孔周部11aで、互いに接着されている。
尚、加飾部6が、所定間隔dをあけた複数の孔11が列を成して構成されているものである場合には、各孔11そのものだけでなく、各孔11間の部分(孔間部11b)も含めて、加飾部6とする。
又、孔間部11bは、孔周部11aでもあり、溶融や軟化や、各層の接着が起こっているものも含む。
【0029】
各孔11の大きさは、何れの値でも良いが、例えば、略楕円形状であれば、長径で0.5mm以上4.0mm以下、好ましくは0.7mm以上3.0mm以下、更に好ましくは1.0mm以上2.5mm以下であり、一方、短径は、0.4mm以上2.0mm以下、好ましくは0.6mm以上2.0mm以下、更に好ましくは0.8mm以上1.5mm以下である。
そして、各孔11同士の所定間隔dも、特に限定されるものではなく、例えば、0.3mm以上3.0mm以下、好ましくは0.5mm以上2.5mm以下、更に好ましくは0.5mm以上2.0mm以下である。又、各孔11間の所定間隔dは、常に一定でなくとも構わない。
【0030】
<未加飾部7>
図1、2に示す如く、未加飾部7は、積層体4において、上述の加飾部6以外の部分であり、少なくとも積層体4の周縁4cから所定距離L(所定幅L)までの範囲に設けられている。
つまり、積層体4は、その周縁4cから所定幅Lの部分(周縁部4d)には、加飾されておらず、周縁部4dが未加飾部7となって、積層体4を囲んでいる。
【0031】
これによって、積層体4の周縁4cぎりぎりまで加飾を行った場合のように、周縁4cが意図せず、加飾部6(孔11)に沿って外方へ飛び出る可能性はなく、裏基材2、表面材3、中層材5における裁断した当初の平面視形状がそのまま維持されることから、積層体4(シート材1)の最外形の形状安定性が向上する。
ここで、所定距離Lは、何れの値でも構わないが、例えば、1mm以上30mm以下、好ましくは2mm以上20mm以下、更に好ましくは3mm以上10mm以下である。
【0032】
又、未加飾部7の最外形でもある積層体4の周縁4cでも、加飾部6の周辺(孔周部11aや孔間部11b)のように、裏基材2、表面材3及び中層材5の各層が接着されている。
このような周縁4cでの接着は、各層が接着されるのであれば、接着剤を用いるなど、何れでも構わないが、例えば、裏基材2、表面材3及び中層材5の各層が重ねられた後に、各層をまとめて略同じ外形(略矩形状等)となるように、溶融しながら切断(裁断)することで、行っても良い。
尚、この裁断は、溶融によって成されるのであれば、何れの手段であっても構わないが、例えば、ヒートカッターなどの熱を帯びた部材や、超音波ミシンを用いたり(押し切ったり)、高周波ウェルダー等を用いても良い。
又、裏基材2、表面材3及び中層材5の接着は、周縁4cの接着であるか、加飾部6の接着であるかを問わず、シート状である各層2、3、5を拡げて行われる(つまり、裏基材2、表面材3及び中層材5の接着は、自ずと、シート状の各層を拡げたり、寸法を合わせたりするための所定張力下で(所定のテンションをかけて)行われる)。
尚、裏基材2、表面材3及び中層材5(や、後述の表面補材12等)を、所定張力下で接着させるためには、例えば、ロールに巻回された長尺状の裏基材2、表面材3、中層材5等の各層をそれぞれに所定のテンションをかけつつ巻き出し、巻き出した各層を積層させた(重ねた)状態で、ヒートカッターによる裁断や、超音波ミシンによる加飾などを行うライン生産によって、各層2、3、5等の接着を行っても良い。
又、台座などの上に、各層2、3、5等を積層して拡げた状態(所定張力下)で、所定形状・大きさにヒートカッターの裁断や、超音波ミシンの加飾、接着剤による接着などを行っても構わない。
【0033】
又、未加飾部7は、上述の周縁部4d以外で、略格子状等に設けられた加飾部6の間にも、加飾されていない部分があることから、積層体4は、加飾部6に囲まれた略矩形状等の未加飾部7が、1又は複数設けられていることとなる。
ここで、上述したように、加飾部6では、孔周部11a(及び/又は孔間部11b)で各層が互いに接着されているが、この加飾部6の間にある未加飾部7では、各層の裏基材2、表面材3、中層材5は、互いに接着されていない(つまり、未接着部8を持つ)。
【0034】
すなわち、これら3つの裏基材2、表面材3、中層材5は、少なくとも一部(加飾部6の間)で、互いに未接着となっている。
これによって、積層体4(シート材1)全体が折り曲げられた際であっても、裏基材2、表面材3、中層材5で、互いに相対位置がずれ得るため、裏基材2、表面材3、中層材5における互いに向い合う面を全て接着したような場合に比べれば、折り曲げられて現れる皺を低減できる。
具体的には、積層体4(シート材1)における裏面4b側(つまり、裏基材2側)を、谷として折り曲げられた際には、表面4a側(つまり、表面材3の表面3a側であって、シート材1の最表面1a)に現れる皺を低減できる。
【0035】
<表面材3の3%伸長時応力Ff と裏基材2の3%伸長時応力Fb
本発明に係るシート材1(積層体4)は、表面材3の3%伸長時応力Ff を、裏基材2の3%伸長時応力Fb より大きく(つまり、表面材3の方が、裏基材2よりも伸び難く)なるように設定されている。
これによって、シート材1が、表面材3側への反る(例えば、シート材1全体が表面材3側を谷としてカールしたように反る)ことが抑制できると同時に、裏基材2と表面材3の接着は、加熱などの余計な工程を要することは一切なく、ただ、裏基材2、表面材3等の接着工程だけで良いことから、製造負担の増加をなくすことが出来る。
尚、「表面材3の3%伸長時応力Ff が、裏基材2の3%伸長時応力Fb より大きい(つまり、Ff >Fb )」について、以下で詳解する。
「表面材3の3%伸長時応力Ff 」とは、表面材3の表面3a又は裏面3bに沿う方向における3%伸長時応力であって、この表面3a又は裏面3b沿う方向とは、例えば、表面材3が織物や編物であれば、経方向、緯方向、バイアス方向(経緯に対して、斜めの方向)等であり、不織布やフィルム等であれば、表面材3の表面3a又は裏面3bに沿うのであれば、何れの方向であっても構わない。
又、裏基材2においても同様で、「裏基材2の3%伸長時応力Fb 」とは、裏基材2の表面2a又は裏面2bに沿う方向(織物・編物であれば、経・緯・バイアス方向、不織布・フィルム等であれば、裏基材2の表面2a又は裏面2bに沿う何れの方向も含む)の3%伸長時応力を言う。
従って、「表面材3の3%伸長時応力Ff が、裏基材2の3%伸長時応力Fb より大きい」とは、表面材3の表面3a又は裏面3bに沿う方向の3%伸長時応力のうち、一方向でも、裏基材2の表面2a又は裏面2bに沿う何れかの方向における3%伸長時応力より大きければ良いことを言う。
ここで、シート材1(積層体4)の平面視における縦横等の方向(裏基材2、表面材3及び中層材5それぞれの平面視における縦横方向等)は、表面材3と裏基材2などが接着されることで、規定される。
よって、表面材3、裏基材2等の何れもが、織物や、編物、延伸方向を有したフィルムなど方向性を持つ素材の場合には、表面材3と裏基材2の接着される向きによっては、表面材3自体における縦横方向と、裏基材2自体における縦横方向が食い違うケース(例えば、表面材3と裏基材2の両方が織物で、表面材3自体の経方向・緯方向と、裏基材2自体の経方向・緯方向が食い違う(ねじれの位置となる)ケース)もある。
このようなケースでも、シート材1における「表面材3の3%伸長時応力Ff >裏基材2の3%伸長時応力Fb 」とは、少なくとも「表面材3自体の経方向における3%伸長時応力が、裏基材2自体の緯方向における3%伸長時応力より大きい」や、「表面材3自体の緯方向における3%伸長時応力が、裏基材2自体の経方向における3%伸長時応力より大きい」などの何れかが、成り立っていれば良い。
これによって、「Ff >Fb 」となる方向(表面材3の経方向で且つ裏基材2の緯方向や、表面材3の緯方向で且つ裏基材2の経方向など)におけるシート材1の反りを、少なくとも抑えられる。
又、表面材3の3%伸長時応力Ff と裏基材2の3%伸長時応力Fb の差が最も大きい方向において「Ff >Fb 」となることが好ましい。
仮に、Ff とFb の差が最も大きい方向以外の方向において、表面材3の3%伸長時応力Ff と裏基材2の3%伸長時応力Fb の関係が逆(Ff <Fb )となっていても、Ff とFb の差が最も大きい方向で「Ff >Fb 」となっていれば、シート材1として、反りをより抑制できる。
【0036】
<第2実施形態>
図3には、本発明の第2実施形態に係るシート材1が示されている。
この第2実施形態において第1実施形態と最も異なるのは、積層体4の周縁4cにおいて、裏基材2、表面材3、中層材5が、互いに接着されていない点である。
このように、積層体4の周縁4cでは、各層が接着されていなくとも、周縁4cに最も近い加飾部6によって、裏基材2、表面材3、中層材5が接着されているため、各層の積層状態は周縁4c付近まで十分保たれると同時に、周縁4cを接着させる工程を省くことが出来るなど、製造効率の向上が図れる。
更には、裏基材2、表面材3、中層材5における互いに接着されていない(バラけた)周縁部4dを切って、シート材1の大きさを所望の寸法に調整する切り代とすることも可能であり、寸法調整の容易化が図れる。
【0037】
尚、第2実施形態では、積層体4の周縁4cから加飾していない所定距離Lを、より長く(未加飾部7の所定幅Lを、幅広に)とっており、バラけた各層2、3、5において、加飾されて鉛直方向(シート材1の表面1aの法線方向、例えば上方)へ突き出したり、水平方向(シート材1の表面1aに沿った方向、例えば左右)外方にツノが飛び出すことを更に抑え、寸法調整の幅をより広げている。
その他のシート材1の構成、作用効果及び使用態様は、第1実施形態と同様である。
【0038】
<第3実施形態>
図4には、本発明の第3実施形態に係るシート材1が示されている。
この第3実施形態は、中層材5を2つ有している(上中層材5a、下中層材5b)ことが、第1、2実施形態と最も異なった点である。
このように、中層材5を増やすことによって、シート材1全体を肉厚に、又は、シート材1の厚みを調整することが出来る。
【0039】
更に、これら2つの中層材5a、5b同士は、加飾部6間で、互いに未接着である(未接着部8を持つ)が、上中層材5aと表面材3は、互いに向い合う面同士(全面)で接着されており、下中層材5bと裏基材2も、全面で接着されている。
このように接着することで、各中層材5a、5bが、表面材3、裏基材2がより薄い(コシの弱い)場合であっても支えることが出来、製造時における表面材3、裏基材2の取扱いを容易にする。
その他のシート材1の構成、作用効果及び使用態様は、第1実施形態と同様である。
【0040】
<第4実施形態>
図5には、本発明の第4実施形態に係るシート材1が示されている。
この第4実施形態において第1〜3実施形態と最も大きい相違点は、表面材3の下面(裏面)3bに、シート状の表面下材(表面補材)12が設けられていることである。
尚、表面下材12と裏基材2との間に、2層(2つ)の中層材(上中層材5a、下中層材5b)を備えている。
【0041】
第4実施形態の表面下材12は、表面材3の裏面3bに接着剤(接着層13)を介して、全面が接着さており、この接着は、例えば、フレームラミネート、若しくは、表面下材12や表面材3の互いに向い合う面に接着剤を塗布する等によって行う。
又、この表面下材12は、例えば、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フェノール、シリコーン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ユリア、アクリル、ポリイミド等の樹脂発泡体のシート状物であっても良く、他の中層材5a、5b(例えば、不織布)と素材を変えても構わない。
この表面下材12(例えば、ポリポリウレタン樹脂発泡体をフレームラミネートしたウレタンラミ)によって、表面材3の表面3a側(シート材1の最表面1a)における皺が抑制できる。
表面下材12の厚みは、何れの値であっても構わないが、例えば、1mm以上10mm以下、好ましくは2mm以上8mm以下、更に好ましくは3mm以上7mm以下であっても良い。
【0042】
<表面材3の3%伸長時応力Ff
尚、第4実施形態でも、表面材3の3%伸長時応力Ff が、裏基材2の3%伸長時応力Fb より大きい(つまり、表面材3の方が、裏基材2よりも伸び難い)が、この表面材3の3%伸長時応力Ff とは、表面材3のみの3%伸長時応力を含むことは勿論、表面材3と表面下材(表面補材)12を合わせたものの3%伸長時応力も含む。
従って、本発明に係る第4実施形態は、表面材3のみの3%伸長時応力と、表面材3と表面補材12を合わせたものの3%伸長時応力の少なくとも一方(何れか1つ)の応力Ff が、裏基材2の3%伸長時応力Fb より大きければ良い。
【0043】
更に、第4実施形態では、裏基材2と、上中層材5a及び下中層材5bが、所定の間隔をおいて(加飾部6とはまた別個に)接着されている点が、上述の実施形態と異なる。
裏基材2、上中層材5a、下中層材5bは、それぞれ別の素材でも良いが、例えばこれら3層2、5a、5bを、ニードルパンチ法による不織布等の同一の素材で構成し、この3層の不織布を、超音波キルト(超音波ミシンによるキルティング縫製)や、高周波ウェルダー等で所定の間隔ごとに、接着(固着)させても構わない。
又、この固着のさせ方も、平面視で略格子状に固着しても良く、このとき固着された格子は、加飾部6の格子より間隔が狭かったり、格子における互いの縦横がズレていても良い。
【0044】
<裏基材2の3%伸長時応力Fb
尚、このように、裏基材2、上中層材5a、下中層材5bの3層の不織布が固着させている場合には、上中層材5a及び下中層材5bは、裏基上材(裏基補材)14でもある。 この裏基上材14をふまえ、裏基材2の3%伸長時応力Fb とは、裏基材2のみの3%伸長時応力を含むことは勿論、裏基材2と裏基上材(裏基補材)14を合わせたものの3%伸長時応力も含む。
従って、本発明に係る第4実施形態は、裏基材2のみの3%伸長時応力と、裏基材2と裏基補材14を合わせたものの3%伸長時応力の少なくとも一方(何れか1つ)の応力Fb が、表面材3の3%伸長時応力Ff (表面材3のみの3%伸長時応力と、表面材3と表面補材12を合わせたものの3%伸長時応力の少なくとも一方(何れか1つ)の応力Ff )より小さければ良い。
【0045】
更に、第4実施形態の変形例としては、裏基材2は、スパンボンド法又はニードルパンチ法による不織布で構成し、上中層材5aや下中層材5bは、ニードルパンチ法による不織布で構成したり、中層材5を1層だけとしたものや、中層材5を有さないものであっても構わない。
その他のシート材1の構成、作用効果及び使用態様は、第1実施形態と同様である。
【0046】
<第5実施形態>
図6には、本発明の第5実施形態に係るシート材1が示されている。
この第5実施形態は、中層材5を有さないことが、大きな特徴であって、これにより、構造を単純化できる。
尚、この実施形態では、裏基材2、表面材3を、他の実施形態よりも、若干厚手のものにしても良い。
【0047】
このほか、第5実施形態は、加飾部6(孔11)が、有底状ではなく、貫通孔15である点も異なっている。
この貫通孔15は、仮に、所定のテンションで張りながら、裏基材2、表面材3に対して、加飾部6を形成し、周縁4cの接着をした後に、テンションを解いた際の寸法のズレ(例えば、テンションがなくなり、シート材1全体が若干縮む等の縮みなど)が生じても貫通孔15が、そのズレをより吸収してくれる。
【0048】
尚、加飾部6が貫通孔15であるため、シート材1の最表面1aだけでなく、最裏面1bにも、貫通孔15の開口が表れる。
又、第5実施形態では、未加飾部7を、積層体4の周縁部4dに設けていない。
その他のシート材1の構成、作用効果及び使用態様は、第1実施形態と同様である。
【実施例】
【0049】
本発明のシート材1について実施例に基づき、更に詳細に説明を行う。
尚、実施例における「3%伸長時応力」は、50×250mmの試験片につき、荷重・伸度測定試験機を用い、4.9Nの初荷重の下で、つかみ間隔を150mmとなるように試験片を取り付け、1分間当たりつかみ間隔の100%(150mm)の引張速度(つまり、150mm/分)で、伸びが3%(4.5mm)となるまで試験片を伸ばし、そのときの荷重(伸長時応力、単位:N/5cm)をもって、「3%伸長時応力」とする。
【0050】
<試験A>
試験Aにおいて、表面材3としての織物は、紋織であって、経糸として、総繊度167dtexのポリエステル(詳しくは、PETであり、以下の試験A、Bにおけるポリエステルも同様)マルチフィラメント糸を使用し、緯糸には、総繊度356dtexのポリエステルマルチフィラメント糸と、総繊度500dtexのポリエステルマルチフィラメント糸と、綿番手20番単糸のポリエステル紡績糸(スパン糸)を使用し、経糸密度が622本/10cm、緯糸密度が314本/10cmで、目付が390g/m2 である(以下「織物A」)。
この織物Aに対し、裏基材2として、厚み50μmのPETフィルム(以下「フィルム」)を用いたもの(比較例A1)、ニードルパンチ法による、目付130g/m2 、厚み2mmでポリエステル繊維の不織布(以下「ニーパン130」)を用いたもの(実施例A1−1)、スパンボンド法による、目付100g/m2 、厚み1mmでポリエステル繊維の不織布(以下「スパンボンド」)を用いたもの(実施例A1−2)、ニードルパンチ法による、目付100g/m2 、厚み2mmでポリエステル繊維の不織布(以下「ニーパン100薄」)を用いたもの(実施例A1−3)によるシート材をそれぞれ得た。
尚、上述した比較例A1、実施例A1−1〜実施例A1−3における中層材5には、ニードルパンチ法による、目付100g/m2 、厚み8mmでポリエステル繊維の不織布(以下「ニーパン100厚」)を1枚用いた。
更に、試験Aでは、表面材3として、上記織物Aの裏面に、ウレタンラミ、つまり、シート状で厚さ3mmのウレタン発泡体(つまり、表面補材12)をフレームラミネートにより貼り付けたもの(以下「織物Aラミ」)を用い、裏基材2として、フィルムを用いたもの(比較例A2)、ニーパン130を用いたもの(実施例A2−1)、スパンボンドを用いたもの(実施例A2−2)、ニーパン100薄を用いたもの(実施例A2−3)によるシート材をそれぞれ得た。
尚、上述の比較例A2、実施例A2−1〜実施例A2−3における中層材5には、上記ニーパン130の不織布を2層重ねた状態で超音波キルトにより平面視で略格子状に固着させたものを用いた。
【0051】
ここまで述べた比較例A1、A2、実施例A1−1〜実施例A2−3(及び後述する比較例B1、B2、実施例B1−1〜実施例B2−3)は、平面視で略矩形状であり、長辺方向の長さが1515mm、短辺方向の長さが606mmであって、超音波ミシンで形成され且つ連続した複数の孔11による加飾部6が形成されている。
この加飾部6(連続した複数の孔11)は、シート材1の周縁1c(積層体4の周縁4c)から303mm間隔で、略格子状を成している。この略格子状の加飾部6は、シート材1の周縁1cまで設けられている(つまり、図6中の加飾部6の如く、周縁1cからの所定距離Lがゼロ(0)となっている)。
尚、比較例A1、A2、実施例A1−1〜実施例A2−3(及び後述する比較例B1、B2、実施例B1−1〜実施例B2−3)は、ロールに巻回された長尺状の裏基材2、表面材3、中層材5等の各層をそれぞれに所定のテンションをかけつつ(所定張力下で)巻き出し、巻き出した各層を積層させた状態で、シート材の長辺が巻き出し方向に沿う向きに超音波ミシンの押し切りによって裁断され、超音波ミシンによって加飾されるライン生産により、得られている。
これら比較例A1、A2、実施例A1−1〜実施例A2−3において、表面材3の経方向・緯方向の3%伸長時応力Ff (織物Aラミでは、表面材3と表面補材12を合わせたものの経方向・緯方向の3%伸長時応力Ff )と、裏基材2の各素材ごとの3%伸長時応力Fb を、図7と、以下の表1で示し、更に、表1では、表面材3、裏基材2の3%伸長時応力Ff 、Fb の大小、反りの具合、シート材の状態を示す。
【0052】
【表1】
尚、表1中と以下の表2中の反りの具合において、「×」は、シート材として反りが発生していることを示すが、「△」は、シート材に反りが抑制され、ほぼ発生していないことを示し、「○」は、シート材に反りが発生していないことを示し、「◎」は、シート材の反りの発生がないことはもちろん、加飾部6によって、積層体4(シート材1)の周縁4cやその周辺部からツノが飛び出る頻度も小さいことを示す。
【0053】
これら表1、図7に示されたように、裏基材2、表面材3において、3%伸長時応力Ff 、Fb を比較した際に、比較例A1、A2では、表面材3における緯方向・経方向の何れの3%伸長時応力Ff もが、裏基材2の3%伸長時応力Fb より小さくなっており、シート材に反りが発生し、全体的にカールしたような形状となった。
しかし、実施例A1−実施例1〜A2−3のように、表面材3における緯方向・経方向両方の3%伸長時応力Ff が、裏基材2の3%伸長時応力Fb より大きい場合には、シート材としての反りが発生しない。
【0054】
ウレタンラミの有無については、表面材3のみの織物Aを用いた比較例A1、実施例A1−1〜実施例A1−3と、表面材3と表面補材12を合わせた織物Aラミを用いた比較例A2、実施例A2−1〜実施例A2−3の状態を比較すると、表面材3のみの3%伸長時応力Ff 、又は、表面材3と表面補材12を合わせた織物Aラミ全体としての3%伸長時応力Ff の何れであっても、裏基材2の3%伸長時応力Fb より大きければ、シート材としての反りを抑えられる。
更に、ウレタンラミ(表面補材12)が、表面材3の表面3a(シート材1の最表面1a)における皺を抑制している(仮に、平面置きをした際の圧縮特性に寄与する)。
又、ウレタンラミは、織物Aに対する緯方向・経方向の3%伸長時応力Ff (伸縮特性)には、ほぼ影響を与えていないこともわかる。
【0055】
<試験B>
試験Bにおける試験Aとの違いは、表面材3が異なる点である。
試験Bにおいて、表面材3としての織物は、紋織であって、経糸として、総繊度84dtexのポリエステルマルチフィラメント糸を使用し、緯糸には、総繊度167dtexのポリエステルマルチフィラメント糸と、綿番手30番双糸のポリエステル紡績糸(スパン糸)を使用し、経糸密度が687本/10cm、緯糸密度が483本/10cmで、目付が310g/m2 である(以下「織物B」)。
この表面材3の織物Bに対し、裏基材2として、フィルムを用いた比較例B1、ニーパン130を用いた実施例B1−1、スパンボンドを用いた実施例B1−2、ニーパン100薄を用いた実施例B1−3のシート材をそれぞれ得た。
尚、上述の比較例B1、実施例B1−1〜実施例B1−3における中層材5には、上記ニーパン100厚を1枚用いた。
更に、試験Bでも、上記織物Bの裏面に、シート状で厚さ3mmのウレタンラミをした(つまり、表面補材12を貼り付けた)もの(以下「織物Bラミ」)を用い、裏基材2に、フィルムを用いた比較例B2、ニーパン130を用いた実施例B2−1、スパンボンドを用いた実施例B2−2、ニーパン100薄を用いた実施例B2−3のシート材もそれぞれ得た。
尚、上述の比較例B2、実施例B2−1〜実施例B2−3における中層材5には、上記ニーパン130の不織布を2層重ねた状態で超音波キルトにより平面視で略格子状に固着させたものを用いた。
これら比較例B1、B2、実施例B1−1〜実施例B2−3において、表面材3の経方向・緯方向の3%伸長時応力Ff (織物Bラミでは、表面材3と表面補材12を合わせたものの経方向・緯方向の3%伸長時応力Ff )と、裏基材2の各素材ごとの3%伸長時応力Fb を、図7と、以下の表2で示し、更に、表2では、表面材3、裏基材2の3%伸長時応力Ff 、Fb の大小、反りの具合、シート材の状態を示す。
【0056】
【表2】
尚、表2中の反りの具合における「×」、「○」、「◎」は、表1と同様である。
【0057】
これら表2、図7に示されたように、試験Bで、表面材3に用いられる織物(織組織や、構成する繊維の繊度等)が異なっても、表面材3における緯方向・経方向両方の3%伸長時応力Ff が、裏基材2の3%伸長時応力Fb より小さい比較例B1、B2のシート材には、反りが発生し、全体的にカールしたような形状となった。
しかし、実施例B1−1〜B2−3のように、表面材3における緯方向・経方向のうち、少なくとも何れの3%伸長時応力Ff が、裏基材2の3%伸長時応力Fb より大きい場合には、表面材3の素材の相違に拠らず、シート材としての反りが発生しない。
尚、実施例B1−2と実施例B2−2では、表面材3における緯方向・経方向のうち何れか(緯方向)の3%伸長時応力Ff が、裏基材2の3%伸長時応力Fb より大きくなっている。
一方、実施例B1−1、実施例B1−3、実施例B2−1、実施例B2−3では、表面材3における緯方向・経方向の3%伸長時応力Ff うちの両方が、裏基材2の3%伸長時応力Fb より大きくなっており、実施例B1−2と実施例B2−2より、ツノが飛び出る頻度を抑えることが出来、更に好ましい。
【0058】
この他、表面材3(織物B)のみの3%伸長時応力Ff 、又は、表面材3(織物B)と表面補材12(ウレタンラミ)を合わせた織物Bラミ全体としての3%伸長時応力Ff の何れかが、裏基材2の3%伸長時応力Fb より大きければ、シート材としての反りを抑えられる点、表面材3の織物にウレタンラミされたほうが、表面材3の表面3a(シート材1の最表面1a)における皺を抑制できる点、ウレタンラミは、織物Aに対する緯方向・経方向の3%伸長時応力Ff (伸縮特性)には、ほぼ影響を与えていない点などは、試験Aと同様である。
又、試験A、Bにおいて、裏基材2が、ニーパン130やニーパン100薄である(つまり1枚当たりの3%伸長時応力Fb が「8.6N/5cm」や「16.1N/5cm」である)際に、裏基補材14として、同じ素材のニーパン130やニーパン100薄を1、2枚、裏基材2に固着させたとしても、裏基材2と裏基補材14を合わせたものの3%伸長時応力Fb は、2倍の「17.2N/5cm」や「32.2N/5cm」や、3倍の「25.8N/5cm」や「48.3N/5cm」にしかならず、これらFb の値より、表面材3(又は表面材3と表面補材12を合わせたもの)における3%伸長時応力Ff の方が大きければ、シート材の反りを抑えられる。
【0059】
<その他>
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。シート材1の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
裏基材2が表面材3や中層材5を支えるのであれば、シート材1(積層体4)において、最も下面(最裏面)1bに位置することは必須ではなく、この裏基材2の裏面2b側に、更に、ポリエチレン樹脂等で樹脂コーティング等や、シート状物の貼付が施されていても良い。
又、表面材3も、意匠性(デザイン性)を発揮させるためであれば、シート材1の最も上面(最表面)1aに位置することは必須ではなく、表面材3の表面3a側を、レース地などの間隙の多いシート状物や樹脂コーティング等で、更に覆っても構わない。
【0060】
<表面材3の3%伸長時応力Ff と裏基材2の3%伸長時応力Fb
上述のように、裏基材2の裏面2b側にコーティング等がされたり、表面材3の表面3a側がシート状物等で覆われている場合、第4実施形態で示した如く、表面下材(表面補材)12や、裏基上材(裏基補材)14を備えている場合の3%伸長時応力Ff 、Fb について、以下に述べる。
本発明における表面材3の3%伸長時応力Ff とは、表面材3のみの3%伸長時応力を含むことは勿論、表面材3と表面下材(表面補材)12を合わせたものの3%伸長時応力と、表面材3とその表面3a側を覆うシート状物等を合わせたものの3%伸長時応力と、表面材3とその表面3a側を覆うシート状物等と表面下材(表面補材)12を合わせたものの3%伸長時応力も含む。
一方、本発明における裏基材2の3%伸長時応力Fb とは、裏基材2のみの3%伸長時応力を含むことは勿論、裏基材2と裏基上材(裏基補材)14を合わせたものの3%伸長時応力と、裏基材2とその裏面2b側のコーティング等を合わせたものの3%伸長時応力と、裏基材2とその裏面2b側のコーティング等と裏基上材(裏基補材)14を合わせたものの3%伸長時応力も含む。
従って、本発明では、表面材3のみの3%伸長時応力と、表面材3と表面補材12を合わせたものの3%伸長時応力と、表面材3とその表面3a側を覆うシート状物等を合わせたものの3%伸長時応力と、表面材3とその表面3a側を覆うシート状物等と表面下材(表面補材)12を合わせたものの3%伸長時応力の少なくとも何れか1つの応力Ff が、裏基材2のみの3%伸長時応力と、裏基材2と裏基上材(裏基補材)14を合わせたものの3%伸長時応力と、裏基材2とその裏面2b側のコーティング等を合わせたものの3%伸長時応力と、裏基材2とその裏面2b側のコーティング等と裏基上材(裏基補材)14を合わせたものの3%伸長時応力の少なくとも何れか1つの応力Fb より大きければ良い。
尚、上記3%伸長時応力Ff 、Fb の大小関係の判断は、これら表面下材(表面補材)12、表面材3の表面3a側を覆うシート状物等、裏基上材(裏基補材)14、裏基材2の裏面2b側のコーティング等の数(層数)は問わず、シート材1において、最表面1a側と最裏面1b側に未接着部8などにより分けられるものや、表面材3や裏基材2それぞれに全面接着や固着されているものにおける表面材3の3%伸長時応力Ff と裏基材2の3%伸長時応力Fb であっても、当て嵌まる。
又、シート材1としての3%伸長時応力を測定したとすれば、それぞれの方向(縦(経)方向・横(緯)方向・斜め(バイアス)方向等)において、当該方向における表面材3の3%伸長時応力Ff と裏基材2の3%伸長時応力Fb を合算したものとなる。従って、Ff 、Fb それぞれの値は、シート材1(積層体4)として積層された裏基材2、表面材3等を剥がして測定したものであっても良く、剥がした裏基材2、表面材3との間における何れかの方向で、「Ff >Fb 」が成り立っていれば良い。
【0061】
加飾部6は、平面視で列を成した複数の孔11によって形成していたが、シート材1(積層体4)を、略円形状や略矩形状など所定形状に刳り抜いたり、シート材1の周縁1c(積層体4の周縁4c)から内方側に切り欠くことで、加飾しても良い。
このような刳り抜き・切り欠きは、加飾部6であると共に、シート材1を刳り抜いた縁(刳り抜き縁)や、切り欠いた縁(切り欠き縁)は、シート材1の周縁1c(積層体4の周縁4c)であるとも言え、この場合、刳り抜き縁(周縁4c)等から外方側へ所定距離Lまでの範囲に、未加飾部7を設けても良い。
又、加飾部6自体を設けていなくとも良い。
更に、加飾部6は、孔11ではなく、所定深さの溝(有底状の溝)としてもよく、この溝における平面視形状(溝のパターン)も、略格子状や、略円形状、略楕円形状、略三角形、略六角形状等の多角形状、略波線状、ハニカム状などであっても良く、これらが単独又は組み合わさって、それぞれが連続したり、互いに重なったりしても良い。
尚、加飾部6を全く設けない場合、シート材1(積層体4)全体が未加飾部7となる。
【0062】
又、加飾部6が複数の孔11以外で構成されている場合には、各層の裏基材2、表面材3や、中層材5が、互いに接着されている部分は、孔周部11aや孔間部11bではなく、加飾部6の周辺となる。
裏基材2と表面材3は、積層体4の周縁4cや、加飾部6の周辺(孔11の孔周部11a等)で互いに接着されているとされたが、裏基材2と表面材3は、積層体4の周縁4c及び加飾部6の周辺以外の何れか一部で接着していても良く、逆に、裏基材2と表面材3の互いに向い合う面が、全部接着されていても良い。
【0063】
これは、裏基材2と表面材3と共に、1つ以上の中層材5も有している場合も同様であって、裏基材2、表面材3、中層材5全てが、互いに、積層体4の周縁4c及び加飾部6の周辺以外の何れか一部で接着されて(つまり、何れかの層間で未接着部8を持って)いたり、互いに向い合う面の全部が接着されていても(つまり、未接着部8を一切持たなくても)良い。
又、裏基材2、表面材3、中層材5のうち少なくとも何れか2つが、少なくとも一部で 更に、加飾部6を、有底状の孔11や溝とした際には、加飾部6であっても、各層の裏基材2、表面材3、中層材5のうち、互いに接着されていない層があっても良く、このように未接着となる部分が層間で生じるように(又は、シート材1を、超音波ミシンや高周波ウェルダー等で押しきってしまわない程度に)、有底状の孔11や溝を浅めに設定しても構わない。
【0064】
シート材1における裏基材2、表面材3、中層材5等に用いる素材の組合せは、上述の実施例に限らず、例えば、裏基材2には、上記スパンボンドの不織布を用い、表面材3及び表面補材12には、上記織物Bの裏面にシート状で厚さ7mmのウレタンラミをした(表面補材12を貼り付けた)ものを用い、中層材5には、上記ニーパン130の不織布を用いても良い。このとき、中層材5である上記ニーパン130と裏基材2であるスパンボンドの2層を重ねた状態で超音波キルトにより平面視で略格子状に固着させても構わない。
又、この他の各層2、3、5等に用いる素材の組合せとして、表面材3及び表面補材12には、上記織物Bの裏面にシート状で厚さ7mmのウレタンラミをしたものを用い、中層材5は用いず、裏基材2には、ニードルパンチ法による、目付150g/m2 、厚み2mmでポリエステル繊維(詳しくは、PET)の不織布を用いても良く、このとき、裏基材2の裏面2b(シート材1の裏面1b)に、ポリエチレン樹脂で厚み50μmの樹脂コーティングを施しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、建物内においては、床面や壁面、天井に限らず、システムキッチンのキャビネットや家具・インテリアの開閉扉、飾り板などに用いられるものであると共に、屋外における塀、設置物の外装等にも使用可能であり、更には、自動車、車両の車内、航空機の機内、船舶の船内における壁面、天井、床面にも利用することが出来る。
【符号の説明】
【0066】
1 シート材
2 裏基材
2a 裏基材の表面
2b 裏基材の裏面
3 表面材
3a 表面材の表面
3b 表面材の裏面
4 積層体
4c 積層体の周縁
5 中層材
6 加飾部
7 未加飾部
f 表面材の3%伸長時応力
b 裏基材の3%伸長時応力
L 所定距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7