特許第6184005号(P6184005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6184005
(24)【登録日】2017年8月4日
(45)【発行日】2017年8月23日
(54)【発明の名称】ティシュペーパー製品
(51)【国際特許分類】
   A47K 10/20 20060101AFI20170814BHJP
   B65D 83/08 20060101ALI20170814BHJP
【FI】
   A47K10/20 B
   B65D83/08 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-202752(P2013-202752)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-66149(P2015-66149A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】平田 記瑞
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−223603(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0243668(US,A1)
【文献】 特開2002−308351(JP,A)
【文献】 特開平02−109879(JP,A)
【文献】 特開2007−203089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/20
B65D 83/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に取出し口形成用の裂開用ミシン目線が形成された紙箱の前記上面の内側面に、スリットを設けたシート材を、そのスリットが前記裂開用ミシン目線で囲まれる範囲内に位置するようにして貼付した収納箱と、この収納箱内に収納された水系薬液が付与されたティシュペーパーを折り畳み積層されてなるティシュペーパー束と、を有するティシュペーパー製品であって、
前記裂開用ミシン目線の裂開によって取出し口とともにこの取出し口を開閉自在とするヒンジ蓋が形成されるとともに、前記裂開用ミシン目線で囲まれる範囲の紙箱の上面の内側面に、吸湿、水分の保持及び放散を行なう保湿調整剤が付与され、前記ヒンジ蓋により取出し口を閉じた際に、前記保湿調整剤が収納箱内面に対面して収納箱内の湿度が調整される、ことを特徴とするティシュペーパー製品。
【請求項2】
前記保湿調整剤は、吸湿力が前記ティシュペーパーよりも弱いものである、請求項1記載のティシュペーパー製品。
【請求項3】
前記保湿調整剤は、ムコ多糖類、ヘテロ多糖類の群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1又は2記載のティシュペーパー製品。
【請求項4】
裂開用ミシン目線で囲まれる範囲の紙箱の上面の内側面に、保湿調整剤の付与部分を被覆しかつ収納箱内空間に対して気密となるようにして、保護フィルムが剥離可能に貼付されている、請求項1〜3の何れか1項に記載のティシュペーパー製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保湿薬液が付与されたティシュペーパーの束が収納箱内に収められたティシュペーパー製品に関する。
【背景技術】
【0002】
複数枚のティシュペーパーからなる束が収納箱内に収納され、その収納箱(カートン箱或いはカートンとも称される)の上面に設けられた取出し口からティシュペーパーを順次一枚(一組とされたものも含む)ずつ引き出して使用するティシュペーパー製品はよく知られる。その取り出し方法は、一枚を取り出すとそれに連続して次ぎの一枚が取出し口から引き出されるポップアップ式となっている。
【0003】
これらのティシュペーパー製品の中には、ティシュペーパーに保湿性、柔軟性を付与する保湿薬液が付与された薬液付与タイプのものがあり、しっとり感、柔らかさにおいて汎用品のものよりも優れる。
【0004】
ティシュペーパーに保湿性、柔軟性を付与する保湿薬液は種々存在するが、水及びポリオールを主体とする水系薬液(「水系ローション剤」、「ローション薬液」とも呼ばれる)がよく用いられる。水系薬液は、シートに塗布等した場合にシートを構成するパルプ繊維との親和性に優れ、シートの厚み方向(Z方向とも称される)に含浸し、保湿薬液の吸湿作用によってシートにしっとり感と柔らかさを与える。
【0005】
しかし、従来の水系薬液を用いたティシュペーパー製品は、低湿度環境下において吸湿作用が十分ではなくなり、ティシュペーパーに十分に水分が取り込まれなかったり、取り込まれた水分を放出してしまったりして、しっとり感と柔らかさが感じられ難くなるという問題があった。水系薬液中における吸湿成分を増量することにより吸湿作用を高めることはできるが、このようにすると高湿度環境においてティシュペーパーがべたつくようになるという問題が生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−83866号公報
【特許文献2】特許第4568739号公報
【特許文献3】特開2008−207852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の主たる課題は、周辺の湿度環境に応じてティシュペーパーの保湿具合を調整できるティシュペーパー製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決した本発明は以下のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
上面に取出し口形成用の裂開用ミシン目線が形成された紙箱の前記上面の内側面に、スリットを設けたシート材を、そのスリットが前記裂開用ミシン目線で囲まれる範囲内に位置するようにして貼付した収納箱と、この収納箱内に収納された水系薬液が付与されたティシュペーパーを折り畳み積層されてなるティシュペーパー束と、を有するティシュペーパー製品であって、
前記裂開用ミシン目線の裂開によって取出し口とともにこの取出し口を開閉自在とするヒンジ蓋が形成されるとともに、前記裂開用ミシン目線で囲まれる範囲の紙箱の上面の内側面に、吸湿、水分の保持及び放散を行なう保湿調整剤が付与され、前記ヒンジ蓋により取出し口を閉じた際に、前記保湿調整剤が収納箱内面に対面して収納箱内の湿度が調整される、ことを特徴とするティシュペーパー製品。
【0009】
〔請求項2記載の発明〕
前記保湿調整剤は、吸湿力が前記ティシュペーパーよりも弱いものである、請求項1記載のティシュペーパー製品。
【0010】
〔請求項3記載の発明〕
前記保湿調整剤は、ムコ多糖類、ヘテロ多糖類の群から選ばれる少なくとも一種である、請求項1又は2記載のティシュペーパー製品。
【0011】
〔請求項4記載の発明〕
裂開用ミシン目線で囲まれる範囲の紙箱の上面の内側面に、保湿調整剤の付与部分を被覆しかつ収納箱内空間に対して気密となるようにして、保護フィルムが剥離可能に貼付されている、請求項1〜3の何れか1項に記載のティシュペーパー製品。
【0012】
〔作用効果〕
本発明では、裂開用ミシン目線の裂開によって取出し口とともにこの取出し口を開閉自在とするヒンジ蓋状に形成されるようにした。したがって、取出し口をそのヒンジ蓋によって閉じることで、収納箱内空間を外気からほぼ遮断して内外の空気の流通を極めて低下させることができる。これにより、特に収納箱外の空間が乾燥した環境にあっても、収納箱内のティシュペーパーの水分が、取出し口を介して外部に放散されることが防止される。
【0013】
さらに、本発明では、その裂開用ミシン目線で囲まれる範囲の紙箱の上面の内側面に、吸湿、水分の保持及び放散を行なう保湿調整剤が付与した。したがって、ヒンジ蓋により取出し口を閉じた際には、その保湿調整剤が収納箱内面に対面するようになる。そして、上記のとおりヒンジ蓋状を閉じることにより、収納箱内空間は収納箱外空間からの外気の流通が極めて低下するため、この閉じた状態においては、収納箱内空間を収納箱外空間の湿度に関係なく保湿調整剤によって調整することが可能となる。
【0014】
さらに、この点を説明すると、ティシュペーパー製品は、ティシュペーパーを収納箱から引き出せるように、ヒンジ蓋は開放された状態で使用される。このときには、本発明の保湿調整剤は、収納箱内ではなく、収納箱外部に暴露された状態にあるため周辺空気の水分を吸湿して保持する。
【0015】
そして、ティシュペーパー製品を使用しない場合、ヒンジ蓋を閉じることにより、十分に水分を含み保持している保湿調整剤が、収納箱内空間に対面することになり、その際に、収納箱内が乾燥状態となっている場合に、水分を放散して収納箱内の湿度を上昇させてティシュペーパーの乾燥が防止される。
【0016】
なお、取出し口にはシート材が貼付されているが、シート材に設けられたスリットを介して本発明の効果は達成される。また、一般的なティシュペーパー製品に用いられるシート材における透湿性であれば、スリットの有無に関係なく、本発明の効果を十分に達成できる。
【0017】
ここで、特にその保湿調整剤は、ティシュペーパーよりも吸湿力が低く、さらに吸湿速度が遅いものであるのが望ましい。このようにティシュペーパーよりも吸湿力が低い場合には、収納箱に対面した際に、ティシュペーパーが収納箱内の水分を吸湿することで、収納箱内空間が乾燥状態となるにつれて、保湿調整剤から水分が効果的に放散されて、ティシュペーパーへ水分が移行されるようにすることができる。
【0018】
なお、特に周辺環境の湿度が高い場合には、収納箱内空間の水分が飽和することになり、保湿調整剤が過度にティシュペーパーを保湿するということはない。むしろ、保湿調整剤の水分保持量に余裕があれば、収納箱内空間の水分を吸湿して、ティシュペーパーの過度の吸湿によるベタツキを防止することができる。
【0019】
ここで、上記のメカニズムによる収納箱内空間の湿度調整によるティシュペーパーの保湿具合の調整が容易に行える好ましい保湿調整剤は、ヒアルロン酸、コンドロイチンなどのムコ多糖類、グルコマンナン、寒天などのヘテロ多糖類の群から選ばれる少なくとも一種であるのが望ましい。これらは、少量で多量の水分を保持することができ、内部のティシュペーパーが乾燥状態にある場合に、そのティシュペーパーに水分を与えるように作用する。
【発明の効果】
【0020】
以上のとおり、本発明によれば、周辺の湿度環境に応じてティシュペーパーの保湿具合を調整できるティシュペーパー製品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るティシュペーパー製品の斜視図である。
図2】本発明に係る収納箱の展開図の例である。
図3】本発明に係る収納箱の特に側短面の構成と取出し口を説明するための斜視図である。
図4】本発明に係るティシュペーパー製品の使用時の斜視図である。
図5図4のA−A断面を模式的に表した図である。
図6】本発明に係る保湿調整剤付与部分を説明するための箱内側から上面をみた図である。
図7】本発明に係るティシュペーパー製品の特にヒンジ蓋を閉じた状態を示す断面図である。
図8】本発明に係る保湿調整剤付与部分を被覆するフィルムが貼付された態様を説明するための収納箱内側から上面をみた他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次いで、本発明の実施の形態を図面を参照しながら以下に詳述する。図1〜8に、本発明に係るティシュペーパー製品100を示す。
【0023】
本実施形態に係るティシュペーパー製品100は、複数枚のティシュペーパー2t,2t…が、折り畳まれ重層されてなるティシュペーパー束2が、上面11に取出し口形成用の裂開用ミシン目線20が形成された収納箱1に収納され、使用時に当該取出し口20Xからティシュペーパー2tを取り出すと、隣接して積層されている下層のティシュペーパーの一部が取出し口20Xから露出されるように構成したものである。
【0024】
ティシュペーパー束2は、方形のティシュペーパー2tが実質的に二つ折りされ、その折り返し片の縁が上下に隣接するティシュペーパーの折り返し内面に位置するようにして、互い違いに重なり合いつつ積層されたものである。なお、ここで実質的にとは、製造上の形成される縁部の若干の折り返しを許容する意味である。
【0025】
この積層構造のティシュペーパー束2は、最上位に位置する一枚の折り返し片を上方に引き上げると、その直下で隣接する他の一枚の折り返し片が、摩擦により上方に引きずられて持ち上げられる。そして、かかる構造のティシュペーパー束2は、その最上面が上述の上面11に取出し口20Xを有する収納箱1の当該上面に向かいあって収納され、前記取出し口20X、特にスリット31から最初の一組(最上面に位置する一組)が引き出されたときに、その直近下方に位置する他の一組の一部が露出される。なお、本発明のおけるティシュペーパー2tの積層枚数が限定されないが、この種の製品の一般的な積層枚数を例示すれば、120〜240組である。このティシュペーパー束2は、マルチスタンド式、ロータリ式の既知のインターフォルダにより製造することができる。
【0026】
他方、ティシュペーパー束2を構成するティシュペーパー2tは、2枚〜3枚の薄葉紙が積層されたプライ構造を有している。その薄葉紙の原料パルプとしては、NBKPとLBKPとを配合したものであり、適宜古紙パルプが配合されていてもよいが、風合いなどの点で、NBKPとLBKPのみから構成されているのがよい。その場合配合割合としては、NBKP:LBKP=20:80〜80:20がよく、特に、NBKP:LBKP=30:70〜60:40が望ましい。
【0027】
ティシュペーパー2tの各プライを構成する薄葉紙1枚あたりの米坪は、薬液を含んだ状態で、好ましくは10〜25g/m2、より好ましくは12〜18g/m2である。米坪が10g/m2未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、使用に耐えうる十分な強度を適正に確保することが困難となる。逆に米坪が25g/m2を超えると紙全体が硬くなるとともに、ゴワ付き感が生じてしまい肌触りが悪くなる。なお、米坪は、JIS P 8124(1998)の米坪測定方法による。
【0028】
他方、ティシュペーパーの紙厚は、2プライの状態で100〜180μm、より好ましくは120〜150μmであるのが望ましい。紙厚が100μm未満では、柔らかさの向上の観点からは好ましいものの、ティシュペーパーとしての強度を適正に確保することが困難となる。また、180μm超では、ティシュペーパーの肌触りが悪化するとともに、使用時にゴワツキ感が生じるようになる。
【0029】
紙厚の測定方法としては、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて2プライの状態で測定するものとする。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この紙厚測定時の荷重は、約70gfである。なお、紙厚は測定を10回行って得られる平均値とする。
【0030】
他方、本発明に係るティシュペーパーは、水系薬液が付与されたものであり、その保湿効果をもたらす主たる吸湿成分としてはポリオールである。このポリオールとしては、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、およびその誘導体等の多価アルコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類が例示される。なかでも、グリセリンが効果的である。
【0031】
本発明に係るティシュペーパーにおけるポリオールの含有量は、絶乾で1.5〜5.5g/m2であり、含有率は8〜24質量%であるのが望ましい。この範囲であるとポリオールによる吸湿によるしっとり感と柔らかさ感の向上が得られる。
【0032】
他方、本発明に係るティシュペーパーは、ポリオール以外に、適宜の機能性薬剤が含有されていてもよい。この機能性薬剤としては、界面活性剤、無機および有機の微粒子粉体、油性成分などがある。界面活性剤はティシュペーパーにいっそうの柔軟性を与えたり、表面を滑らかにしたりする効果がある。界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性イオン界面活性剤を用いることができる。無機および有機の微粒子粉体は表面を滑らかな肌触りとする。油性成分は滑性を高める働きがあり、流動パラフィン、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高吸アルコールを用いることができる。
【0033】
他方で、ティシュペーパーの束を収納する収納箱1は、カートン箱とも呼ばれる直六面体形状の箱体であり、製品外観をなすものである。この収納箱1は、上面11に取出し口20Xを形成するための裂開用ミシン目線20を有する紙箱10と、前記ミシン目線20により囲まれる範囲20aを紙箱内側から覆うシート材30とを有している。
【0034】
紙箱10は、収納箱1の外郭をなす概ね紙製の箱体であり、その大きさ、形状、展開形状等は既知の収納箱の紙箱の構成が採用される。一般的な収納箱の大きさは、概ね長手縁L1が110〜320mm、短手縁L2が70〜200mm、高さL3が40〜150mm程度であり、本発明に係る収納箱1もこの大きさとすることができる。
【0035】
また、紙箱10の基材は、バージンパルプ、古紙パルプ等の各種のパルプを主原料とする既知の紙素材が採用でき、好適な紙箱10の素材は、坪量250〜500g/m2のコートボール紙である。
【0036】
紙箱10の構造は、図2図3に示すように、底面12と一方の長側面13を糊代部12Aで糊付けして筒状とした後、上面11、底面12及びこれらを連接する長側面13から延出する各フラップF,F…を箱内面側に折り返し、各フラップF,F…の当接部分をホットメルト接着剤等により接着して短側面14を構成した構造となっている。なお、本発明の紙箱10は、この構造に限定されるわけではない。
【0037】
他方、収納箱1は、その紙箱10の上面に形成される裂開用ミシン目線20は環状又は略C状をなし、適宜のカットタイ比で構成される。図示の形態は、裂開用ミシン目線を環状に配している例である。裂開用ミシン目線20は、通常のミシン目線の他、二重ミシン目線、ジッパーミシン目線等で構成することができる。一部分のみ二重ミシン目線としてもよい。
【0038】
裂開用ミシン目線20は、紙箱長手方向に延在する長辺21,21とこの長辺21,21の端同士を繋ぐ短手縁に平行な短辺22,22とを有し、裂開用ミシン目線20に囲まれる範囲20aの形状は、収納箱1の長手方向に沿う方向が長い適宜の形状となっている。一般的には、収納箱1の長手方向に沿うやや細長い角取り矩形、或いはその矩形の長辺21,21の中央部を外方に向かってやや膨張させてアーチ状とし、楕円に近い形状としたものである。図示の形態は後者の例である。
【0039】
本発明に係るティシュペーパー製品は、特に図1、3〜5から理解されるように、特に、裂開用ミシン目線20の裂開によって取出し口とともにこの取出し口を開閉自在とするヒンジ蓋20Fが形成されるようにする。図示の形態のように裂開用ミシン目線20を環状に配する形態であれば、裂開用ミシン目線20の一部を切り残すようにして、その切り残し部分をヒンジ蓋20Fのヒンジ軸20Gとすればよい。また、図示はしないが、環状に裂開用ミシン目線20を配する場合、その裂開用ミシン目線20の一部を直線状に配するようにすれば、その直線状部分をヒンジ軸20Gとして効果的にヒンジ蓋20Fを形成できる。さらに、裂開用ミシン目線20を環状ではなく、略C状に配することで、裂開用ミシン目線20を完全に切り剥がせないようにしておけば、誤ってヒンジ蓋20Fが形成されない態様で裂開用ミシン目線20で囲まれる範囲20aを切り剥がしてしまう誤操作を防止できる。この場合、その略C状の裂開用ミシン目線20の両端間がヒンジ軸となる態様でヒンジ蓋が形成されるので、略C状に裂開用ミシン目線20の両端間に折り筋などを形成しておけば、ヒンジ蓋20Fをより形成しやすくなる。
【0040】
このように本発明に係るティシュペーパー製品100では、開閉自在なヒンジ蓋20Fが形成されるようにすることにより、特に図7に示すように、そのヒンジ蓋20Fで取出し口20Xを閉じることで、収納箱内空間を外気からほぼ遮断して内外の空気の流通を極めて低下させることができ、特に収納箱外の空間が乾燥した環境にあっても、収納箱内のティシュペーパー2t或いはその束2の水分が、取出し口20X及びスリット31を介して収納箱外空間に放散されることが防止される。
【0041】
さらに、本発明に係るティシュペーパー製品100では、特徴的に、収納箱1(紙箱10)の裂開用ミシン目線20で囲まれる範囲20aの紙箱10の上面の内側面11iに保湿調整剤40が付与されている。この保湿調整剤40は、吸湿、水分の保持及び放散を行なうものであり、特に、収納箱外空間の水分を取り込み可能であり、かつ、収納箱内空間へ水分の放散が可能なものとなっている。
【0042】
本実施形態の収納箱10では、上記のとおり裂開用ミシン目線20で囲まれる範囲20aはヒンジ蓋20Fとなるため、そのヒンジ蓋20Fを空けた状態では、保湿調整剤40が収納箱外空間に暴露され、その一方、ヒンジ蓋20Fを閉じた際には、その水分を保持した状態の保湿調整剤40が収納箱内面に対面するようになる。したがって、保湿調整剤40が、外部に暴露されている際に、周辺環境の水分を吸湿して水分を保持し、ヒンジ蓋20Fを閉じた状態で収納箱内空間が乾燥している場合には、その保持した水分を放散し、収納箱内のティシュペーパー2tの保湿具合が適切な範囲に調整される。この作用についてさらに説明すると、ティシュペーパー製品100は、ティシュペーパー2tを収納箱1から引き出せるように、通常は、ヒンジ蓋20Fを開いた状態で使用される。そしてこのヒンジ蓋20Fが開いている状態では保湿調整剤40は収納箱外空間に暴露され、その際には周辺環境が乾燥していても、保湿調整剤40は、自身の吸湿力と水分保持力に応じてある程度まで周辺環境の水分を吸湿して保持する。このとき、収納箱内の水系薬液が付与されたティシュペーパー2tは、既に水分をある程度含んだ状態から、取出し口20Xのシート材を透過して或いはスリット31を介して、乾燥状態の収納箱外へと取り込んだ水分が徐々に放散して乾燥していく。
【0043】
一方、ティシュペーパー製品100を使用しない場合、例えば、夜間などヒンジ蓋20Fを閉じれば、十分に水分を含み保持している保湿調整剤40が、収納箱内空間に対面するようになる。それとともに、ヒンジ蓋20Fが閉じられることにより、収納箱内空間の外部との気密性が高まり、ティシュペーパー2t或いはその束2から収納箱外空間への水分の放散が停止される。このとき、収納箱内空間は収納箱外空間と比較して非常に狭いため、収納箱内空間ではティシュペーパー2t或いはその束2からの水分の放散が停止されるとともに、空間内の水分が直ぐに飽和し、逆に乾燥されたティシュペーパーがその狭い空間にある水分を取り込もうとするようになる。すなわち、ヒンジ蓋20Fを閉じることにより、収納箱内空間はティシュペーパー2t或いはその束2からの水分の放散が停止されるとともに逆に水分を取り込もうとする作用が高まる。そして、その乾燥された空間に、十分に水分を取り込んだ保湿調整剤40が対面していると、その保湿剤調整剤40からシート材30を透過して或いはシート材30のスリット31から収納箱内空間に水分が放散されて、ティシュペーパー2t或いはその束2が再度保湿されるようになるのである。
【0044】
なお、本実施形態のティシュペーパー製品100では、使用開始後には、最上面のティシュペーパー2tがスリット31から外部に一部露出している状態となるため、図7にも示されるように、ヒンジ蓋20Fを閉じた際に、シート材30とヒンジ蓋20Fとの間にその露出部分が挟まれることになることもあるが、このような状態となってもティシュペーパー自体は、低密度で非常に通気性のあるものであるから、本発明の効果は十分に達成可能である。
【0045】
上記の作用が発揮される保湿調整剤40の付与量や種類は、保湿調整剤40の自身の吸湿力、水分の保持性、水分の放散、収納箱内空間の体積やティシュペーパー2tに付与された保湿成分の吸湿力、水分の保持性、水分の放散性及びティシュペーパー2tの所望の保湿具合との関係で適宜に設計すればよい。
【0046】
保湿調整剤種類の選定及び付与量を決定するに際しては、概ね、湿度20〜70%、温度1〜30℃の環境下の24L程度の空間内に、ティシュペーパーの束と保湿調整剤とを存在させた際に、ティシュペーパーの水分率が8〜20質量%の範囲に調整されるようなものとするのがよい。このような保湿調整剤40であれば、本発明のメカニズムによるティシュペーパー2tの保湿具合の調整が十分に発揮される。
【0047】
また、保湿調整剤種の選定にあたっては、ティシュペーパーよりも吸湿力が低く、さらに吸湿速度が遅いものであるものとするのがよい。具体的には、収納箱内空間のティシュペーパーの水分量が所望の水分量以下である場合に、その水分量となるまで収納箱内空間に水分を放散する程度の吸湿力及び水分の放散性を有するものであるのがよい。このような保湿調整剤40であれば、本発明のメカニズムによるティシュペーパーの保湿具合の調整を発揮させやすい。加えて、保湿調整剤の空間の水分を吸湿する速度がティシュペーパーよりも遅いものであるものとするのがよい。これにより、空間からティシュペーパーへの吸湿と、保湿調整剤の空間への水分の放散が時間あたりの速度が異なることで、保湿調整剤により収納箱内空間の調整がよりゆるやかにおこなわれ、本発明のメカニズムによるティシュペーパーの保湿具合の調整の効果をより発揮させやすい。
【0048】
そして、特に本発明の作用効果を容易に達成可能な、具体的な保湿調整剤40としては、ヒアルロン酸、コンドロイチンなどのムコ多糖類、グルコマンナン、寒天などのヘテロ多糖類の群から選ばれる少なくとも一種である。これらの保湿調整剤40は、ティシュペーパーの主たる保湿成分であるポリオールと比較して、水分をゆっくりと時間を掛けて取り込むとともに、ゲル状や半ゲル状となる程度まで多量に水分を保持する。したがって、ヒンジ蓋を閉じたさいに、収納箱内空間に非常に湿った状態で対面されるようになるため、ティシュペーパーを十分な保湿具合に調整することが容易に行える。
【0049】
保湿剤調整剤40の具体的な付与態様としては、裂開用ミシン目線20で囲まれる範囲20aの紙箱10の上面の内側面11iに直接的に保湿調整剤を塗布する態様、樹脂製フィルムシートの一方面に保湿調整剤を塗布して、その塗布した樹脂製フィルムシートを当該範囲20aに接着剤等で保湿調整剤塗布面が収納箱内面側に向く方向で貼着する態様が例示できる。直接的に保湿調整剤を塗布する場合、保湿調整剤塗布部分が吸湿によって変形等しないように予め、少なくとも保湿剤調整剤塗布部分を耐水性コーティング等の処理をしておくのが望ましい。樹脂製フィルムシートを貼着する態様のほうが、紙箱の素材を汎用素材とすることができるため、製造が容易となり望ましい。
【0050】
他方、本実施形態の収納箱においては、特に、図8に示すように、裂開用ミシン目線20で囲まれる範囲20aの紙箱の上面の内側面11iに、保湿調整剤40の付与部分を被覆しかつ収納箱内に対して気密となるようにして、保護フィルム50を剥離可能に貼付するのが望ましい。このようにすれば、裂開用ミシン目線20で囲まれる範囲20aを開封してティシュペーパー製品100を使用する前に内部のティシュペーパーの水分を保湿補助剤40が吸湿してしまうことが防止される。保護フィルム50としては、透湿性を有さないフィルムであり、例えば、塩化ビニリデンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、エチレン‐ビニルアルコール共重合体などが例示できる。気密に貼付するには、例えば、図示例のように保湿調整剤40の付与部分を取り囲むように接着剤51を配するようにして保護フィルム50を収納箱内面に貼付すればよい。
【0051】
他方、収納箱1におけるシート材30は、前記裂開用ミシン目線20により囲まれる範囲20aより大きく、例えば、矩形や楕円形であり、紙箱上面の内面側において、特に裂開用ミシン目線20の切り剥がしに影響がないように、裂開用ミシン目線20の外側で図示されない接着剤52によって接着されている。このシート材30には、スリット31が形成されており、このスリット31は裂開用ミシン目線20により囲まれる範囲20aで長手方向に沿って位置されている。したがって、図3図4に示すとおり、裂開用ミシン目線20に沿ってその裂開用ミシン目線20で囲まれる範囲20aをヒンジ蓋状に切り剥がすことにより、紙箱上面11に取出し口20Xが形成されるとともに、前記シート材30及びそれに形成されたスリット31が取出し口20Xを介して露出される。
【0052】
収納箱1に束として収納されているティシュペーパー2t等は、図示例のとおり、前記スリット31を介して取出し口20Xから一枚ずつ取り出される。そして、当該スリット31は、取出し口20Xから露出するティシュペーパー2tの一部を支持して収納箱内部に落ち込むことを防止する。
【0053】
ここで、本実施形態に係る収納箱1では、シート材30がスリットを有するため、ヒンジ蓋20Fを閉じても、そのスリット31を介して、収納箱内に保湿調整剤40からティシュペーパー2t或いはその束2への水分付与が十分に行える。好ましい、シート材30としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのある程度の透湿性を有するものである。このようなフィルムであれば、フィルムを通して保湿調整剤40からティシュペーパーへの水分付与が行なわれるようになる。さらに、シート材30としては、耐水紙など耐水性のある繊維素材で形成した透湿性のあるシート材などとしてもよい。
【0054】
シート材30の厚みとしては、10〜200μmが適し、10μm未満では、強度的に不足し、ティシュペーパー2tの取り出し時において裂けあるいは破断の確率が高くなり、逆に、200μmを超えると、強度の問題はないものの、取り出し難くなり、またコスト高となる。
【符号の説明】
【0055】
100…ティシュペーパー製品、2t…ティシュペーパー、2…ティシュペーパー束、11…収納箱(紙箱)上面、20…裂開用ミシン目線、1…収納箱、20X…取出し口、31…スリット、30…シート材、10…紙箱、L1…収納箱の長手縁、L2…収納箱の短手縁、L3…収納箱の高さ、12…収納箱(紙箱)底面、12A…糊代部、13…収納箱(紙箱)長側面、14…収納箱(紙箱)短側面、F…フラップ、21…裂開用ミシン目線の長辺、22…裂開用ミシン目線の短辺、20F…ヒンジ蓋、20G…ヒンジ軸、20a…取出し口形成部(裂開用ミシン目線で囲まれる範囲)、11i…の裂開用ミシン目線で囲まれる範囲の収納箱(紙箱)上面の内側面、40…保湿調整剤、50…保護フィルム、51、52…接着剤。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8