(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
継手用胴部の端部位置に樹脂管の内径に挿入される接合用円筒部を設けて樹脂製の継手基材を構成し、前記接合用円筒部の端部における流路内周を拡径して流路拡径部を形成し、この流路拡径部に樹脂管識別用の突起部を設けたことを特徴とする樹脂管用継手。
前記流路拡径部は、前記接合用円筒部の端部に向かって拡径するテーパ面とし、このテーパ面と前記接合用円筒部の流路との間の空間領域に前記テーパ面に沿って前記突起部を設けた請求項1に記載の樹脂管用継手。
前記接合用円筒部の内周を流路とし、外周は架橋ポリエチレン管又はポリブテン管の何れかの樹脂管内径を挿入すると共に、この外周を当該樹脂管を内周シールし又はロックする継手用部品の収納領域とした請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の樹脂管用継手。
継手用金型の組立時、管種又は管サイズ別の継手用部品の組込時或は継手の配管施工時の何れかの工程において、前記突起部の有無を識別することにより、前記継手用胴部に設けた前記接合用円筒部を管種又は管サイズに応じて識別するようにしたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の樹脂管用継手の識別方法。
筒状部とテーパ面を有する管種識別用治具の外周に管種識別用の表示部を施し、この治具を前記接合用円筒部のテーパ面に挿入して管種又は管サイズに対する識別誤りを回避するようにした請求項5に記載の樹脂管用継手の識別方法。
【背景技術】
【0002】
この種の給水給湯に用いられる樹脂管の種類には、主にポリブテン管(以下、「PB管」という。)と架橋ポリエチレン管(以下、「PEX管」という。)の2種類がある。これらの樹脂管では、呼び径によっては僅かながら外径及び内径の寸法が異なるので、何れかの管種に応じた継手が必要になる。
【0003】
配管施工時には、正しい対象管種の継手を識別できるよう、継手には対象管種の識別表示を施している。例えば、完成品の継手には樹脂管の接続部品におけるキャップの色を変えたり、キャップの外周部に「PB」、「PEX」といった文字等を表示することが行われている。
【0004】
また、継手製造時に使用する金型として、チーズ等の分岐継手では、継手用胴部の金型をPEX管とPB管で共用し、この継手用胴部の金型を共用部材として、分岐部となるPEX管或はPB管の接合用円筒部の金型(コマ金型)を交換して成型する金型構造(以下、「コマ分割構造」という。)を採用することがある。
【0005】
コマ分割構造は、継手形態のバリエーションが豊富で様々なパターンの配管要求に対応できる高い汎用性や、継手形態ごとに継手用胴部と接合用円筒部とを一体に個別の金型を製作して管継手を成型するよりも製造コストが安価である高いコストパフォーマンス性を有すること等から、金型構造としてよく採用されている。
【0006】
ここで、継手用胴部の端部位置にコマ分割構造で設けられる接合用円筒部は、内周は流路とし、外周は樹脂管とのシール部品やロックリング等の継手用部品の収容部が形成されている。そして、その収容部に継手用部品を組込む時、PEX管用とPB管用で使い分けられた接合用円筒部を正しく判別できなければならない。
【0007】
一方で、継手基材(継手用胴部及び接合用円筒部)はほぼ単一色の樹脂製部材であり、PEX管用とPB管用の接合用円筒部の内周、外周のサイズの違いは僅かでしかないため、部品の組込時に、それらを一見して判別することは困難である。しかも僅かなサイズの違いでしかないため、誤った部品も組み込むことができてしまう場合があり、一度誤って組み込まれた後はそれを検出して部品の組み直しをすることも困難であった。
【0008】
このため従来から、継手用部品を作業者が組み込む時には、継手ごとに何らかの標識を付する、或は金型により継手基材の外面に文字等を成型する等、誤った部品組込の防止を図る対策がなされていた。
【0009】
しかし、継手基材に標識を付与しても、その標識と別離してしまえば判別がつかなくなり、継手基材の外面に文字等を成型しても、継手用部品の組込後はそれが外部から視認できなくなってしまう等、従来の防止対策では不十分といえる問題点があった。
【0010】
さらに、コマ金型を正しく交換して継手基材のコマ分割構造による金型を組み立てる時、継手用胴部の金型に埋め込み式に識別表示を構成することは可能ではあるものの、コマ金型の組み合わせと識別表示を正しく合わせたコマ金型の交換ができなければ、誤った組立となる問題点があった。さらに、チーズ等では識別記号が様々となるため、交換間違いの可能性がさらに高まってしまう。
【0011】
従って、コマ分割構造の樹脂管用継手を実施するためには、完成後に樹脂管を接合する配管施工時のみならず、製造段階、すなわち継手用部品の組込時、或は継手用金型の組立時にも、正しい部品等の対応を識別できる標識が必要である。またそのような識別表示は、必然的に継手基材自体に設けられる必要がある。
【0012】
ただし、製造段階でも機能する識別表示を継手基材自体に設ける際には、以下の条件を配慮すべきである。すなわち、識別表示は、それを設けることで継手の強度を低下させてはならず、金型成型時のコマ金型の交換間違いを防ぐことができ、流量低下を発生させることがなく、耐圧検査時にも支障がなく、さらに、組立後(配管施工時)にも確認できる、という各条件を満たすように設けられるべきである。
【0013】
他方で、従来この種の継手及び接合管に施される識別表示として、次のような先行技術が提案されている。すなわち、特許文献1には、カラーのフランジ部に、配管系統・形式・サイズ等の情報を色彩・文字・図形等で表示した表示リングが取り付けられたホース継手が開示されている。特許文献2には、管継手のコレットの外部への露出部分が管の外面に付された識別表示と同色に着色されている識別表示技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記先行技術は、何れも完成した継手の外周等に表示されている識別表示であるから、配管施工時の接合管種の識別表示としてのみ機能するものである。よって、コマ分割構造の継手の継手用部品組込時において、接合用円筒部がPEX管用かPB管用の何れかを正しく認識させる識別表示としては機能しない。ましてや、コマ分割構造の継手の部品(継手用胴部及び接合用円筒部)を金型成型で製造する場合、コマ金型の配置時に正しいコマ金型を識別できる識別表示としても機能するものでもない。
【0016】
また、継手用部品組込前の半完成品である継手基材自体に、上記した条件を満たす識別表示を設けることに関連した技術は、未だ開示も示唆もない。
【0017】
そこで本発明は上記問題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、継手基材であっても完成継手であっても外部から確実に視認することができ、継手の強度を低下させず、流量低下を発生させず、耐圧検査時にも支障がない、という条件を満たす識別表示を継手基材自体に設けることで、継手用部品の誤った組込を確実に防止するとともに、継手用金型の組立時の誤ったコマ金型の交換、及び配管施工時の誤った樹脂管の接合をも防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、継手用胴部の端部位置に樹脂管の内径に挿入される接合用円筒部を設けて樹脂製の継手基材を構成し、前記接合用円筒部の端部における流路内周を拡径して流路拡径部を形成し、この流路拡径部に樹脂管識別用の突起部を設けた樹脂管用継手である。
【0019】
請求項2に係る発明は、前記流路拡径部は、前記接合用円筒部の端部に向かって拡径するテーパ面とし、このテーパ面と前記接合用円筒部の流路との間の空間領域に前記テーパ面に沿って前記突起部を設けた樹脂管用継手である。
【0020】
請求項3に係る発明は、前記突起部の内径寸法が前記接合用円筒部の流路口径寸法と同じか僅かに大きくした樹脂管用継手である。
【0021】
請求項4に係る発明は、前記接合用円筒部の内周を流路とし、外周は架橋ポリエチレン管又はポリブテン管の何れかの樹脂管内径を挿入すると共に、前記接合用円筒部と当該樹脂管の内周をシールするシール部材の収納領域とした樹脂管用継手である。
【0022】
請求項5に係る発明は、継手用金型の組立時、管種又は管サイズ別の継手用部品の組込時或は継手の配管施工時の何れかの工程において、前記突起部の有無又は突起部用凹部の有無を識別することにより、前記継手用胴部に設けた前記接合用円筒部を管種又は管サイズに応じて識別するようにした樹脂管用継手の識別方法である。
【0023】
請求項6に係る発明は、筒状部とテーパ面を有する管種識別用治具の外周に管種識別用の表示部を施し、この治具を前記接合用円筒部のテーパ面に挿入して管種又は管サイズに対する識別誤りを回避するようにした樹脂管用継手の識別方法である。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に係る発明によると、継手用胴部に樹脂管の内径に挿入される接合用円筒部を設け、この接合用円筒部の端部における流路内周を拡径して流路拡径部を形成し、この流路拡径部に樹脂管識別用の突起部を設けているので、接合用円筒部へ継手用部品を組込む時に、この突起部を識別標識として認識することで、誤った組込を防止できる。しかも、継手用部品を外周に組込んで継手として完成させた後も外部から視認できるため、管を接合する配管施工時の識別表示としても機能する。
また、コマ金型に形成される突起部の対応部も識別標識として機能するので、継手用金型の組立時に、この対応部を認識することで、コマ金型を正しく配置することができる。しかも、継手用胴部の金型の加工は一切不要であり、コマ金型に必要な加工も極めて単純なので、識別表示を設けるための加工コストが大きく抑えられる。
また、識別標識としての突起部が接合用円筒部の端部から外方へ突出していないので、クランプによる耐圧検査をする際に、物理的な障害とならない。
さらに、突起部は接合用円筒部の内周に設けられていることから、管の内径を円筒部位の外周に挿入する際に、物理的な障害とならない。しかも、端部の流路内周を拡径して形成した流路拡径部に突起部を設けた構造は、接合用円筒部の強度低下を生じるおそれもない。
【0025】
請求項2に係る発明によると、接合用円筒部の流路拡径部は、前記接合用円筒部の端部に向かって拡径するテーパ面とし、このテーパ面と前記接合用円筒部の流路との間の空間領域に前記テーパ面に沿って突起部を設けている。このため、突起部は流路拡径部のテーパ面に沿って形成されていることから、流体にほとんど抵抗を生じない。
【0026】
請求項3に係る発明によると、突起部の内径寸法が前記接合用円筒部の流路口径寸法と同じか僅かに大きいため、突起部の流体への物理的な抵抗の影響がほとんどない。
【0027】
請求項4に係る発明によると、前記接合用円筒部の内周を流路とし、外周は架橋ポリエチレン管又はポリブテン管の何れかの樹脂管の内径を挿入すると共に、この外周を当該樹脂管を内周シールし又はロックする継手用部品の収納領域としているので、接合用円筒部の外周が継手用部品の収納領域として確保されるため、内周シールに適した樹脂管用継手を得ることができる。
【0028】
請求項5に係る発明によると、継手用金型の組立時、管種又は管サイズ別の継手用部品の組込時或は継手の配管施工時の何れかの工程において、前記突起部の有無を識別することにより、前記継手用胴部に設けた前記接合用円筒を管種又は管サイズに応じて確認できるため、突起部の有無の確認という極めて簡単な作業だけで、継手用金型の組立時、継手用部品の組込時、継手の配管施工時の何れの時点でも、間違いなく確実に正しい管種の識別をすることができ、各工程における組み合わせのミスを確実に回避できる。
【0029】
請求項6に係る発明によると、筒状部とテーパ面を有する管種識別治具の外周に管種識別用の表示部を施し、この治具を前記接合用円筒部のテーパ面に挿入して管種又は管サイズの誤りの対応を回避できるので、接合用円筒部に継手用部品を組み込む時に、極めて単純な構造の確認用治具により、それを流路に挿入するという極めて簡単な作業だけで、接合用円筒部が何れの管種用であるかを確実に識別することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、本発明における樹脂管用継手及び樹脂管用継手の識別方法の好ましい実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、本発明の識別表示を設けた継手基材の斜視図である。
図2においては、
図1の継手基材の横側断面図である。
【0032】
先ず、本発明の樹脂管用継手を実施する継手の好ましい実施形態を説明する。
図1、
図2において、1aは半完成品の継手基材であり、1aは接合用円筒部2及び継手用胴部3からなる。本例では、継手用胴部3がチーズ形態のため、接合用円筒部2は3つ結合されており、これらは、継手基材1aに応じて、それぞれ同種でも異種でもよい。また、本例以外にエルボソケット等にも応用できる。
【0033】
本例では、接合用円筒部2及び継手用胴部3は、接合用円筒部2の金型(以下、「コマ」という。)及び共用の継手用胴部3の金型(以下、「胴金型」という。)からなる金型にてプラスティック射出成型することで、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)等の剛性の高い樹脂で一体的に形成されている(
図1参照)。
【0034】
本例における金型は、図示しないが、次のような入れ子構造である。例えば、
図1に示すチーズの継手を成型する場合は、胴金型は、中央部に継手用胴部3の型を有し、その型に隣接して3方にコマを配置できる領域を有する大型の母型であり、当該領域に、継手により必要となる種類のコマを3つ嵌めこんで配置することで、特定の継手に対応した金型を組み立てる。
【0035】
胴金型は、ソケット、エルボソケット、チーズソケットA、チーズソケットB等、製造しようとする継手の形態ごとにそれぞれ1つ又は複数のタイプがあり、それら各胴金型のタイプごとに、接合管の種類やサイズ等によって複数種類あるコマを用いて、1つ又は複数のコマの配置パターンがある。コマ分割構造は、少数の種類の胴金型及びコマから、特定の継手に対応した配置パターンを多数実現できることから、配管を金型で成型する際、個別の配管パターンごとに金型も個別に製造する構造と比較して、製造コストを大幅に抑えることができ、投資金額を抑えて継手の種類を増やすことができる。
【0036】
図1において、接合用円筒部2の内部は、接合される樹脂管と共通する流路10となっており、その外径4は、樹脂管の内径に応じた所定の外径4に設けられている。この場合、外径4は、同じ呼び径であっても樹脂管がPEX管であるかPB管であるかで異なる。例えば、呼び径16A用の接合用円筒部2の場合、PEX管用の外径4は、PEX管の内径φ16.2mmと略同径となり、PB管用の外径4は、PB管の内径と略同径のφ16.8mmに形成される。また、呼び径20A用の接合用円筒部2の場合は、PEX管用の外径4は、PEX管の内径と略同径のφ20.5mmとなり、PB管用の外径4は、PB管の内径と略同径のφ21.2mmに形成される。
【0037】
外径4を構成する外周面5の適宜位置には、装着溝6、6が2箇所に形成され、この装着溝6には、樹脂管を内周シールするシール部材の継手用部品として、例えば、EPDM等のゴム製のシールリングが装着される。また、凹凸状の係合部7は、継手用部品を構成する外筒25を圧入装着する部位である。なお、継手用部品については後述する。
【0038】
継手用胴部3は、チーズ、エルボ、ソケット等複数の形態があるが、接合用円筒部2の種類によらず、継手基材1の形態に応じた共通部品である。
図1に示す継手用胴部3はチーズ形態であり、接合用円筒部2の軸心と垂直にフランジ8、8が3箇所に設けられている。
図3では、継手用胴部3を一点鎖線で包囲して示している。
【0039】
続いて、本発明に係る樹脂管用継手の識別表示として接合用円筒部2に設けられる突起部について説明する。
図1ないし
図4及び
図6に示す本発明の突起部11は、前述した円筒2の外周面5に接合する樹脂管の管種を識別するための表示である。
【0040】
突起部11は、流路10の内周面13の端部9より内側付近を拡径して流路拡径部12を形成し、この流路拡径部12と一体的に設けられる。この流路拡径部12は、どのように拡径されていてもよいが、本例では、内周線14より端部9に向かって拡径するテーパ面12aである。このテーパ面12aと端部9の接続及びテーパ面12aと内周面13の接続は、何れも不連続でも滑らかでもよい。
【0041】
突起部11の形状は特に限定されないが、本例では、テーパ面12aの一部がその軸心と平行な矩形状に突起することで形成されており、
図1、
図4に示すように外面11a、R面11b、内面11c、端11d、側面11eからなる。また、突起部11とテーパ面12aは一体的な部材である。さらに、接合用円筒部2の軸心に対して対称的に、テーパ面12aに2つの突起部11が設けられている。
【0042】
端部9の形成する平面と平行な外面11aは、滑らかなR面11bを介して、流路10と平行な内面11cとなっている。内面11cのテーパ面12aに対する高さは、内面11cが流路10と平行に維持されるので、内面11cが接合用円筒部2の内方へ延出するに従って減少し、端11dで高さがなくなることで、テーパ面12aと突起部11が一体となる。
【0043】
本例では、内周線14と端11dは接しているが、端11dは直線状にテーパ面12a上にあってもよく、外面11aの端11fも端面9と接しているが、端11fも直線状にテーパ面12a上にあってもよい。また、外面11aの位置は、端部9が形成する平面と一致しているが、その平面より内方にあってもよい。
【0044】
また、
図2に示すように、対向する2つの突起部11の最も近い位置同士の直線距離を突起部の内径寸法15とし、内周面13の直径を流路口径寸法16とすると、前記突起部の内径寸法15は、前記流路口径寸法16と同じ寸法か僅かに大きい寸法であることが望ましい。このように形成することで、突起部11の識別表示としての機能を維持しつつ流体に及ぼす抵抗をさらに低減することができる。
【0045】
突起部11の形状と位置は、上記のようにテーパ面12aに凸状に設けられ、流路10を流れる流体と平行な矩形状であるから、接合用円筒部2の強度低下を招く構造ではなく、流体への抵抗もほとんど生じない形状である。さらに、突起部11は端部9の外方へは全く突出していないため、継手基材1aを耐圧検査する際、各端部9に耐圧検査機の接続面が押し当てられる時に物理的な障害とならない。
【0046】
次いで、継手基材1aを完成させた継手1bについて説明する。
図3においては、
図1の継手基材1aに各種の継手用部品を組み込んで完成品とした継手1bに、本発明に係る識別表示としての突起部11が設けられている。
【0047】
外筒25は、例えば、非結晶性ナイロンやPPSU(ポリフェニルサルフォン樹脂)など透明或は半透明の樹脂により形成される。そのため、外筒25の外部より樹脂管や挿入ガイド26の挿入状態を透視可能になっている。
【0048】
外筒25の接合用円筒部2への取付け内周側には、この接合用円筒部2の係合部7とスナップ嵌合可能な係合部27が設けられている。外筒25の他端側の外周側には、凹凸状の係合段部28が設けられている。外筒25は、係合部7、27のスナップ嵌合により接合用円筒部2と一体化され、その嵌合後には外筒25と接合用円筒部2とが相互に回転可能になる。図示しないが、外筒25の内径は、挿入ガイド26の外径の寸法と略同じ寸法に設けられている。外筒25の入口側内周には内向きのテーパ面29と、このテーパ面29になだらかにつながるR面30が形成されている。
【0049】
蓋部材31は、例えば、引張り弾性率が外筒25よりも高く、透明性を有するポリアセタールなどの樹脂によりキャップ状に形成されている。蓋部材31の外端面32にはすり鉢面33が形成され、このすり鉢面33よりも外径側にはC面状の切欠き面34が設けられている。すり鉢面33は、軸心方向に向けて緩やかに傾斜するテーパ面状に設けられ、このすり鉢面33に続けて、蓋部材31及び外筒25からなる部材の内周面の一部を構成する筒状内周面35が形成されている。筒状内周面35は、接合用円筒部2の軸心と略平行に形成され、この筒状内周面35により樹脂管の外周面を保持して案内可能になっている。樹脂管の挿入時には、この樹脂管がすり鉢面33により筒状内周面35まで調芯されながら案内され、この筒状内周面35を含む蓋部材31及び外筒25からなる部材の内周面と接合用円筒部2の外周面5とにより、軸心との傾きが抑えられた状態で管挿入口36に挿入される。
【0050】
すり鉢面33、筒状内周面35は、蓋部材31に形成された環状凸部37に設けられている。環状凸部37は、蓋部材31の内周端部側に突設形成され、この環状凸部37により、外筒25を接合用円筒部2に装着した後のロックリング38の抜け出しが防止される。環状凸部37の図示しない内径(筒状内周面35の内径)は、接合用円筒部2の外径と同様に樹脂管の外径に応じて設定される。この外径も、前述した内径の場合と同様に、同じ呼び径であっても僅かにサイズが異なる場合がある。例えば、呼び径16Aの場合、PEX管の外径は21.5mm、PB管の外径は22.0mmである。
【0051】
蓋部材31の外筒側内周には、外筒25の係合段部28にスナップ嵌合可能な係合段部39が形成されている。蓋部材31は、係合段部28、29のスナップ嵌合により外筒25に取付けられ、その取付け後には蓋部材31と外筒25とが相互に回転可能になっている。
【0052】
ロックリング38は、ステンレス鋼等により略環状に形成され、環状部40と、この環状部40の内径側の爪部41とを有している。爪部41は、環状部40から所定の傾斜角度で屈曲形成されて樹脂管の表面に係止可能になっている。ロックリング38は、外筒25の開口側と蓋部材31の内周部位との間に形成される空隙に装着される。樹脂管の挿入時には、爪部41により挿入がスムーズになり、この爪部41が樹脂管に係止することで樹脂管に引抜き荷重が加わったときに引抜き阻止力が発揮される。このため、樹脂管は、引き抜き防止状態で速やかに接合される。
【0053】
挿入ガイド26は、樹脂管のガイド用として配設され、シールリング42とロックリング38との間の管挿入口36に装着される。挿入ガイド26は、例えば、弾性を有するポリアセタール等の硬質樹脂を材料として形成され、適宜の色に着色されている。挿入ガイド26の外周には複数の弾性舌片43が形成され、この弾性舌片43は、外筒25に形成された内径凸部44に係止可能になっている。弾性舌片43は、内径凸部44を乗り越えたときにクリック音を発生可能になっており、作業者は、このクリック音と、挿入ガイド26に着色された色を外筒から視認することにより、樹脂管が所定の状態まで挿入されたことを確認可能になっている。
【0054】
上述した内部構造により、継手1bは、ロックリング38で引き抜き防止状態にしながら樹脂管を接合し、接合用円筒部2に装着されたOリング42でこの樹脂管の内周をシールする、内周シール構造になっている。この継手1bは、同じ呼び径で内外径の異なる架橋ポリエチレン管やポリブテン管などの樹脂管を接合する場合、樹脂管の内外径に応じた継手用部品に交換することで対応する。このように継手1bは、同じ呼び径で内外径の異なる樹脂管を接合可能な継手である。
【0055】
このように半完成品である継手基材1aにおいて、接合用円筒部2の外周を、Oリング、外筒、蓋部材、挿入ガイド、ロックリング等各種の継手用部品を組み込む収納領域として確保し、それらを組み込んで完成品の継手1bとすれば、接合される樹脂管を内周シールするとともに、引き抜き防止ロック等ができるようになる。さらに、例えば、外筒25の内周にOリングを装着する等により、樹脂管を外周シールしてもよい。
【0056】
本発明に係る識別表示としての突起部11は、ここまで説明したように、継手基材の接合用円筒部の端部内周に構造的に設けられているものである。識別表示をこのような構成としたのは、以下のような理由からである。
【0057】
例えば、継手用胴部3を着色して識別表示としようとすると、耐熱性及び耐圧強度が要求される継手用胴部3の特性上、材料の成型色が限られていることから、不向きである。また、接合用円筒部2の内周又は外周にV字又は深い凹溝を付けることで識別表示とした場合、ノッチ効果で強度低下を招いてしまう。さらに、接合用円筒部2の外周に文字等の表示を設けた場合は、後述する継手用部品の組込後はクリアカバー越しに透過した表示となってしまい視認性に劣る表示となるし、凸状の識別表示を設ければ、樹脂管挿入の障害物となってしまう。
【0058】
そこで、本発明に係る識別表示は、上記のような条件を考慮した上で、以下の条件(A)乃至(E)を満たすように、接合用円筒部2内周の端部9付近に単純な物理的構造として設けたものである。
(A)継手の強度低下とならない識別表示であること
(B)金型を準備する際の誤配置を防止できる識別表示であること
(C)流体に抵抗を生じない識別表示であること
(D)クランプによる耐圧検査時に障害とならない識別表示であること
(E)継手の完成後も視認しやすく、誤接合を防止できる識別表示であること
【0059】
続いて、本発明に係る樹脂管用継手の識別方法の好ましい実施形態を説明する。本例では、上記のような突起部11を識別表示とし、例えば、接合用円筒部2がPB管用であれば突起部11が有り、PEX管用であれば突起部11を無しとすることで識別する。
【0060】
コマ分割構造の継手の金型は上述したようにコマ及び胴金型からなるため、図示しないが、突起部11に対応した突起用凹部をコマに形成する必要がある。この突起用凹部が、コマの識別表示として機能する。
【0061】
例えば胴金型のある箇所にはPEX管用接合用円筒部2のコマ、ある箇所にはPB管用接合用円筒部2のコマを配置して金型を組み立てなければならない場合、本例ではPB管用接合用円筒部2のコマには突起用凹部が設けられるため、コマを胴金型に配置する作業者等は、この突起用凹部の有無を目で見て確認する、或は触って確認することで、正しい種類のコマを正しい位置に配置することができ、コマの誤配置を防止することができる。
【0062】
上記のように識別表示を突起用凹部としてコマに設けているので、胴金型への加工は一切不要である。また、コマへ突起用凹部を設ける加工も極めて簡単な加工で済ませることができる。
【0063】
継手基材1aにおいては、
図2に示すように、識別表示としての突起部11は内周面13の出口付近に設けられているため、接合用円筒部2の内部を覗いて確認することで、半完成品の継手基材1aでも完成品の継手1bでも、容易に外部から視認できる位置及び形状である。また、端部9付近を指で触って突起部11を確認することもできる。このような確認作業により、継手用部品の誤組込を防止することができる。
【0064】
完成した継手1bに樹脂管を接合する時には、PB管用の接合用円筒部2には突起部11が設けられるため、樹脂管を接合する作業者等は、この突起部11の有無を目で見て確認する、或は触って確認することで、正しい種類の樹脂管を正しい接合用円筒部2に接合することができ、樹脂管の誤接合を防止することができる。
【0065】
従って、突起用凹部又は突起部11の有無の確認により、金型成型におけるコマ配置時、継手用部品の組込時、配管施工における樹脂管接合時の何れの時においても、接合用円筒部2がPEX管用であるかPB管用であるかを識別することができる。
【0066】
また、金型成型後の接合用円筒部2に対しては、接合される樹脂管の管種及びサイズを、
図5、
図6に示す治具17を用いて、マニュアル作業的に確認してもよい。このような確認作業により、識別をより確実にできるため、継手用部品の誤組込及び樹脂管の誤接合をより確実に防止できる。
【0067】
治具17は、
図5に示すように、内周面13に収納させることができる円筒状の先端部18と、テーパ面12aに収納させることができるテーパ面部12bと、円筒状の筒状部19からなり、接合用円筒部2の外方から流路10に挿入することができる。
【0068】
識別表示としての突起部11の有無が、接合用円筒部2がPEX管用であるかPB管用であるかに対応していることから、治具17を流路10へ挿入して、
図5に示すようにその挿入がテーパ面12aにテーパ面部12bが収納される場合と、
図6に示すように接点21で突起部11とテーパ面12bが衝突し挿入が途中で係止される場合とで、直ちに接合用円筒部2の種類を感触的に識別することができる。
【0069】
このため、治具17を流路10へ挿入した時に、しっかり嵌って治具17が固定された感触とした方がより識別にあたって好ましいため、テーパ面12aとテーパ面12bを略同一形状とすること等により、治具17が流路10へ密着して収納される構造とすることが好ましい。
【0070】
また、治具17には、表示部20が設けられている。表示部20は、例えば、
図5及び
図6に示すような標線22a、22bや文字23a、23bである。
【0071】
標線22aは、
図5に示すように、突起部11を有するPB管用の接合用円筒部2へ治具17を挿入した際、テーパ面部12bと2か所の突起部11が2か所の接点21で衝突して治具17の流路10への挿入が係止され、治具17の中心軸と接合用円筒部2の中心軸が略同軸となった時、接合用円筒部2の端部9が形成する平面と略同一平面内に入る線分となるように、テーパ面部12bに設けられた標線である。
【0072】
標線22bは、
図4に示すように、突起部11を有さないPEX管用の接合用円筒部2へ治具17を挿入した際、テーパ面部12bがテーパ面12aに収納されて治具17の流路10への挿入が完了し、治具17の中心軸と円筒2の中心軸が略同軸となった時、接合用円筒部2の端部9が形成する平面と略同一平面内に入る線分となるように、筒状部19とテーパ面部12bの境界に設けられた標線である。
【0073】
また、治具17の先端部18を上とすると、標線22aのすぐ下に、PB管用であることが一見して視認できる表示として「PB」の文字23aを、標線22bのすぐ下に、PEX管用であることが一見して視認できる表示として「PEX」の文字23bを、それぞれ治具17に設けている。
【0074】
これらの表示部20は、次のように機能することで、作業者等が円筒2をPB管用であるかPEX管用であるか識別する作業に役立つ。
【0075】
図5では、PEX管用の接合用円筒部2に治具17が、テーパ面12aにテーパ面部12bが収納されて挿入が完了しており、この状態で、標線22bは端面9の位置に来ている。この標線22bを目安として、その下の「PEX」を示す文字23bを視認することで、作業者等は容易に接合用円筒部2がPEX管用であることを識別できる。
図6でも同様に、PB管用の接合用円筒部2に治具17が挿入され、それぞれ2か所ある突起部11及び接点21で治具17が係止しており、この状態で、標線22aは端面9の位置に来ている。この標線22aを目安として、その下の「PB」を示す文字23aを視認することで、作業者等は容易に接合用円筒部2がPB管用であることを識別できる。
【0076】
このように本発明に係る治具17を用いた樹脂管用継手の識別方法では、治具17の挿入感覚という触感的認識と、表示部20の視認という視覚的認識の両面で識別できるので、より確実な誤組込及び誤接合の防止が実現できる。
【0077】
更に、本発明は、前記実施の形態の記載に限定されるものではなく、前記突起部に代えて流路拡径部に強度低下を生じない程度の樹脂管識別用の浅い窪み部を設ける等、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変更ができるものである。