(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長手方向及びそれに直交する幅方向を有し、長手方向の一方の側に、着用時に着用者の腹側に位置する腹側部を備え、かつ長手方向の他方の側に、着用者の背側に位置する背側部を備える使い捨ておむつにおいて、
腹側部又は背側部における長手方向端部域が、複数枚のシートの積層構造から構成されており、該端部域において幅方向に延びる端縁が、複数枚の該シートが融着してなる融着部からなり、
融着部の厚みが、該融着部を構成する複数枚の前記シートの個々の厚みの総和よりも小さくなっている、使い捨ておむつ。
複数枚の前記シートの厚み方向に沿って、長手方向にわたる前記端縁の断面を観察したときに、尖鋭部が観察されない請求項1ないし3のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
腹側部又は背側部における長手方向端部域に、幅方向に延びる弾性部材が、複数枚の前記シートの間に配されており、それによって腹側部又は背側部は、幅方向に沿って伸縮可能になっており、
腹側部又は背側部を幅方向に沿って伸縮させたときに、前記融着部がその伸縮に呼応して変形可能になっている請求項1ないし6のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
前記使い捨ておむつは、腹側部の長手方向に沿う左右両側縁部と、背側部の長手方向に沿う左右両側縁部とが接合されて、一対のサイドシール部、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されている、パンツ型おむつであり、
前記融着部は、前記ウエスト開口部の端縁を形成している請求項1ないし7のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の使い捨ておむつの一実施形態であるパンツ型使い捨ておむつ1は、
図1〜
図3に示すように、吸収性本体2と、おむつの外面を形成する外装体3とを備え、前身頃F(腹側部1A)における外装体3の長手方向Xに沿う左右両側縁部A1,A1と後身頃R(背側部1B)における外装体3の長手方向Xに沿う左右両側縁部B1,B1とが接合されて一対のサイドシール部4,4、ウエスト開口部8及び一対のレッグ開口部9,9が形成されているパンツ型使い捨ておむつである。外装体3は、吸収性本体2の非肌当接面側に位置して該吸収性本体2を固定している。
【0012】
おむつ1は、
図3に示す如き展開かつ伸長状態の平面視において、着用者の前後方向に相当する長手方向Xとこれに直交する幅方向Yとを有している。おむつ1は、着用時に股下部に配される股下部1C並びにその長手方向Xの前後に位置する腹側部1A及び背側部1Bに区分することができる。腹側部1Aは、おむつ1の着用時に着用者の腹側に位置するものであり、おむつ1の長手方向Xの一方の側に配置されている。背側部1Bは、おむつ1の着用時に着用者の背側に位置するものであり、長手方向Xの他方の側に配置されている。股下部1Cにおける外装体3は、その長手方向Xに沿う左右両側縁部にレッグ開口部9,9形成用の凹欠部が形成されている。また、おむつ1は、
図3に示すように、おむつ1を長手方向Xに二分する仮想中心線CLを境にして、前身頃Fと後身頃Rとに区分することができる。
【0013】
本明細書において、肌当接面は、おむつ1又はその構成部材(例えば吸収性本体)における、着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌当接面は、おむつ1又はその構成部材における、着用時に着用者の肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面である。おむつ1において、長手方向Xは、おむつ1又はその構成部材である吸収性本体2の長辺に沿う方向(長手方向)に一致し、幅方向Yは、おむつ1又はその構成部材である吸収性本体2の幅方向に一致する。
【0014】
吸収性本体2は、
図3に示すように、一方向(長手方向X)が相対的に長い縦長の形状を有しており、肌当接面を形成する表面シート2aと、非肌当接面を形成する裏面シート2bと、これら両シート間に介在配置された液保持性の吸収体2cとを具備する。吸収体2cは、長手方向Xと同方向に長い形状を有している。吸収性本体2は、その長手方向を、展開かつ伸長状態におけるおむつ1の長手方向Xに一致させて、外装体3の中央部に公知の接合手段(接着剤等)により接合されている。ここで、展開かつ伸長状態とは、サイドシール部を引き剥がして、おむつを展開状態とし、その展開状態のおむつを、各部の弾性部材を伸長させて、設計寸法(弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に広げたときの寸法と同じ)となるまで広げた状態をいう。
【0015】
外装体3は、
図2及び
図3に示すように、おむつ1の外面(外装体3の非肌当接面)を形成する外層シート31と、該外層シート31の内面側に配され、おむつ1の内面(外装体3の肌当接面)を形成する内層シート32とを有している。両シート31,32の間には、接着剤により固定された複数本の糸状又は帯状のウエスト部弾性部材5が伸長状態で配置されている。ウエスト部弾性部材5は、幅方向Yに延びている。ウエスト部弾性部材5は、腹側部1A及び背側部1Bにおける長手方向Xの端部域1Ae,1Beに配されている。それによって腹側部1A及び背側部1Bの端部域1Ae,1Beは、幅方向Yに沿って伸縮可能になり、ウエストギャザーが形成される。端部域1Ae,1Beは、端縁1At,1Btを含み、かつ該端縁1At,1Btから長手方向Yの内方に向けて所定の距離までの領域を包含する。例えば、腹側部1A及び背側部1Bの端縁1At,1Btと、吸収性本体2の前後端縁との間の領域は、端部域1Ae,1Beに含まれる。
【0016】
外層シートシート31と内層シート32の間には、接着剤により固定された複数本の糸状又は帯状のレッグ部弾性部材7が伸長状態で配置されている。レッグ部弾性部材7は、外装体3の長手方向Xの中央域において、幅方向Yの両側縁の凹欠部の形状に沿って延びている。更に、ウエスト部弾性部材5とレッグ部弾性部材7との間には、接着剤により固定された複数本の糸状又は帯状の胴周り部弾性部材6が、両シート31,32の間に伸長状態で配置されている。胴周り部弾性部材6は、幅方向Yに延びている。レッグ部弾性部材7及び胴周り部弾性部材6を配置することで、おむつ1には、レッグギャザー及び胴周りギャザーが形成される。
【0017】
外装体3(外層シート31、内層シート32)は、樹脂材を含み、該樹脂材を主成分として形成されている。外装体3(外層シート31、内層シート32)の一例として、樹脂材としてポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の熱融着性の合成樹脂を含み、不織布、フィルム、不織布とフィルムとのラミネートシート等からなるものが挙げられる。不織布としては、エアースルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等が挙げられる。
【0018】
おむつ1における一対のサイドシール部4,4は、
図1及び
図2に示すように、ウエスト開口部8とレッグ開口部9との間の全長にわたって連続して形成されている。サイドシール部4,4は、外装体3を構成する複数枚のシート(外層シート31、内層シート32)の縁部が重なった状態で、それらのシートの構成樹脂が溶融固化して形成されている。あるいは接着剤による接着で形成されている。
【0019】
おむつ1の腹側部1A及び背側部1Bの端部域1Ae,1Beは、外層シート31と内層シート32の2枚のシートの積層構造から構成されている。該端部域1Ae,1Beにおいて幅方向Yに沿って延びる端縁1At,1Btは、
図4に示すとおり、これら2枚のシートが融着してなる融着部40からなる。融着部40は、おむつ1の幅方向Yに沿って線状に連続して延びており、ウエスト開口部8の端縁を形成している。融着部40はおむつ1に形成されている一方のサイドシール部4から他方のサイドシール部4までにわたって形成されている。融着部40に断続部分は実質的に存在していない。融着部40は、端部域1Ae,1Beを構成する複数枚のシート(外層シート31、内層シート32)の縁部が重なった状態で、それらのシートの構成樹脂が溶融固化して形成されている。したがって融着部40は、これを構成するシートの樹脂がバルク状態になっているものである。バルク状態とは、融着部40を構成するシートである不織布の構成繊維が、溶融によって繊維状態であることを喪失して、塊状の樹脂になっている状態のことである。
【0020】
以下の説明では、
図4に示すとおり、端縁1At,1Btを構成する融着部40において、端縁1At,1Btが延びる方向、すなわち幅方向Yと直交する断面において、長手方向Xに沿う長さを幅Wと定義し、また同図中、長手方向Xと直交する方向、すなわち外装体3の厚み方向である横方向Zに沿う長さを厚みTと定義する。また融着部40の厚み方向は、該融着部40を構成するシートの厚み方向と、同じ方向である。そして融着部40はその厚みTが、該融着部40を構成する各シートの個々の厚みの総和、すなわち外層シート31及び内層シート32それぞれの厚みの総和よりも小さくなっている。つまり、外層シート31の厚みをTaとし、内層シート32の厚みをTbとしたとき、T<Ta+Tbの関係が成り立っている。融着部40の厚みTと、該融着部40を構成するシートの厚みとがこのような関係になっていることで、外層シート31と内層シート32とが口開きしないように封止することができるのみならず、肌側と非肌面側に突起が出ることがなく、肌触りが悪くなることが抑制される。また、腹側部1A及び/又は背側部1Bを幅方向Yに沿って伸縮させたときに、融着部40がその伸縮に呼応して変形可能になっている。換言すれば、端縁1At,1Btがウエスト部弾性部材5の伸縮に素早く追従するようになり、端縁1At,1Btの伸縮応答性が良好になる。また、端縁1At,1Btの形成に接着剤を使用していないので、該端縁1At,1Bt付近での通気性が損なわれにくくなっている。なお、
図4においては、融着部40の厚みTが、外層シート31の厚みTa及び内層シート32の厚みTbの和と同じに描かれているが、これは便宜上のものであり、実際は、上述のとおりT<Ta+Tbとなっている。
【0021】
以上の有利な効果を一層顕著なものにする観点から、融着部40を構成する各シートの厚みの総和をTtとしたとき(Tt=Ta+Tb)、該厚みの総和Ttに対する融着部40の厚みTの比率であるT/Ttの値は、0.9以下、特に0.8以下であることが好ましい。またT/Ttの値は、0.05以上、特に0.1以上であることが好ましい。例えばT/Ttの値は、0.05以上0.9以下であることが好ましく、0.1以上0.8以下であることが更に好ましい。
【0022】
同様の観点から、融着部40の厚みTは、該融着部40を構成する各シートそれ自体の厚みよりも大きいことが好ましい。例えば融着部40の厚みTは、外層シート31の厚みTaよりも大きいことが好ましい。また、融着部40の厚みTは、内層シート32の厚みTbよりも大きいことが好ましい。融着部40の厚みTは、該融着部40を構成する個々のシートの厚みのいずれよりも大きいことが特に好ましいが、これに限られず、融着部40を構成する個々のシートのうちのいずれか一つのシートの厚みよりも大きければよい。
【0023】
本発明において、融着部40の厚みTは、前身頃1A側の外装体3及び後身頃1B側の外装体3から
図4に示すとおりの断面を切り出し、切り出した断面をマイクロスコープ(KEYENCE社製 VHX−1000)によって観察することで測定する。切り出しは例えば剃刀を用いて行う。切り出しに先立ち、融着部40をコールドスプレーで冷却しておく。倍率は50倍〜200倍とする。そして観察像から厚みTを測定する。なお、後述する幅Wについても同様の方法で測定する。
【0024】
一方、融着部40を構成する各シートの厚みTa,Tbは、次のようにして測定される。測定位置は、融着部40から長手方向Xの内方に1mm〜11mm離れた位置とする。この位置において、前身頃1A側の外装体3及び後身頃1B側の外装体3のそれぞれからサンプルを切り出す。このサンプルを平板間に挟んで0.5cN/cm
2の荷重を加える。この状態における平板間の距離を測定し、その値を厚みとする。サンプルは10mm×10mmの正方形状に切り出す。該寸法を切り出せない場合には、それになるべく近い寸法に切り出す。シート間が接着剤で接合されている場合には、溶剤を用いて接着剤を溶解させて各シートを分離させる。
【0025】
融着部40の厚みT、及び該融着部40を構成する各シートの厚みの測定は、それぞれ、端縁1At,1Btに沿う方向の相異なる3か所の断面について行い、それらの測定値の平均値を各値とする。測定は0.01mmの単位まで行うことが好ましい。
【0026】
融着部40の厚みTと、これを構成するシートの厚みとの関係は上述のとおりであるところ、融着部40の厚みTそれ自体の値は0.05mm以上、特に0.1mm以上であることが好ましく、5mm以下、特に3mm以下であることが好ましい。例えば融着部40の厚みTは、0.05mm以上5mm以下であることが好ましく、0.1mm以上3mm以下であることが更に好ましい。融着部40の厚みTをこのような値に設定することで、該融着部40の接合強度を十分に高い値に保ちつつ、該融着部40の風合いを良好なものとすることができる。
【0027】
融着部40からなる端縁1At,1Btの風合いを高める観点からは、該融着部40の厚みTと幅Wとの関係を調整することも有利である。具体的には、融着部40の幅Wに対する厚みTの比である厚みT/幅Wの値が1以上、特に1.2以上であることが好ましい。厚みT/幅Wの値は、4以下、特に3.5以下であることが好ましい。例えば幅W/厚みTの値は、1以上4以下、特に1.2以上3.5以下であることが好ましい。
【0028】
融着部40の幅Wそれ自体の値は、0.05mm以上、特に0.1mm以上であることが好ましく、1mm以下、特に0.7mm以下であることが好ましい。例えば融着部40の幅Wは、0.05mm以上1mm以下であることが好ましく、0.1mm以上0.7mm以下であることが更に好ましい。
【0029】
図4に示すとおり、外装体3の厚み方向に沿って融着部40を縦断面視した場合、該融着部40の外縁40aは、おむつ1の長手方向Xに沿う内方に向かって凸の弧状をなしている。融着部40は、外装体3の厚み方向(
図4中、横方向Z)に沿った中央域の厚みが最も大きく、該中央域から側方に向かうに連れて厚みが漸次小さくなっている。このような形状を有する融着部40は、いわゆる三日月状又は半月状となっている(
図4に示す融着部40は三日月状である。)。融着部40がこのような三日月状又は半月状に形成されていると、融着部40の横方向Zの両端部に存在する樹脂の量が中央域よりも少なくなるので、該融着部40を構成する各シートが本来有する柔軟性、肌触り感が損なわれ難くなる。また、融着部40の横方向Zの中央域には十分な量の樹脂が存在しているので、該融着部40は実用上十分な強度を有し、おむつ1の着用中に融着部40が破れる等の不都合が生じ難い。
【0030】
図4に示すとおり、腹側部1A及び背側部1Bにおける端縁1At,1Btから長手方向Xの内方に距離Dを隔てた位置に、幅方向Y(
図4中、紙面と直交する方向)に延びる複数のウエスト部弾性部材5が、外層シート31と内層シート32との間に挟まれて配されている。ウエスト部弾性部材5は、接着剤によって外層シート31及び内層シート32に接合されている。したがって、ウエスト部弾性部材5が存在する部位では、該ウエスト部弾性部材5を介して外層シート31と内層シート32とが固定されている。これとは対照的に、端縁1At,1Bと、ウエスト部弾性部材5との間(
図4中、符号Dで示す範囲)においては、外層シート31と内層シート32とを固定する接着剤が存在していない。したがって、端縁1At,1Bとウエスト部弾性部材5との間において、両シート31,32は非接合状態になっている。このような非接合状態にすることで、腹側部1A及び背側部1Bの端部域1Ae,1Beの風合いを一層良好にすることができる。また、ウエスト部弾性部材5の伸縮が阻害され難くなる。この場合、腹側部1A及び背側部1Bの幅方向Yの全域にわたって、端縁1At,1Bとウエスト部弾性部材5との間で、外層シート31と内層シート32とが非接合状態になっていることが最も好ましいが、端縁1At,1Bとウエスト部弾性部材5との間に、外層シート31と内層シート32とが非接合状態になっている部位が一部でもあれば、端部域1Ae,1Beの風合いが良好になる。
【0031】
端部域1Ae,1Beの風合いを一層良好にする観点からは、該端部域1Ae,1Beを、外装体3の厚み方向に沿って長手方向Xにわたる断面を観察したときに、端縁1At,1Btに尖鋭部が観察されないことが好ましい。尖鋭部は、着用者の肌に刺激を与えることがあるからである。尖鋭部としては、例えば端縁1At,1Btの断面(
図4参照)を観察したときに、二辺が交わることで先端が形成されている突起が挙げられる。特に二辺の交わる角度が鋭角である突起が観察されないことが好ましい。このような尖鋭部は、一般にカッターによるシートの裁断で形成されるものである。これに対して本実施形態では、後述するおむつ1の製造方法から明らかなとおり、カッターによるシートの裁断で端縁1At,1Btを形成していないので、尖鋭部は形成されにくくなっている。
【0032】
前述したおむつ1は、例えば以下に説明する製造方法によって製造することができる。おむつ1の製造方法は、帯状の外装体前駆体3’を製造する工程と;外装体前駆体3’に、その搬送方向と直交する向きに吸収性本体2を載置して固定する本体固定工程と;外装体前駆体3’における搬送方向に沿う両側部にレーザー光をそれぞれ照射して、連続した端縁1At,1Btを形成しておむつ連続体を製造するおむつ連続体製造工程と;おむつ連続体を、前身頃側と後身頃側とを重ねた状態に折り曲げる折り曲げ工程と;折り曲げられたおむつ連続体におけるサイドシール部の形成予定部位を加熱下に加圧状態にする加熱加圧工程と;加熱加圧部位を切断して、おむつ連続体から個々のおむつを製造する切断工程とを具備する。
【0033】
詳細に説明すると、先ず、
図5に示すように、原反ロール(図示せず)から連続的に供給される帯状の外層シート31と、原反ロール(図示せず)から連続的に供給される帯状の内層シート32の間に、ウエストギャザーを形成するウエスト部弾性部材5、胴回りギャザーを形成する胴回り部弾性部材6及びレッグギャザーを形成するレッグ部弾性部材7を、所定の伸長率に伸長させた伸長状態で各々複数本配する。このとき、レッグ部弾性部材7は、シートの流れ方向とは直交して往復運動する公知の揺動ガイド(図示せず)を介して、所定の脚周りパターンを形成しながら配される。また、帯状の外層シート31及び帯状の内層シート32には、それらを重ね合わせる前に、両シート31,32のいずれか一方又は双方の対向する面の所定部位に、接着剤塗工機(図示せず)によりホットメルト型接着剤を塗工することができる。またウエスト部弾性部材5、胴回り部弾性部材6及びレッグ部弾性部材7には、これらの弾性部材が両シート31,32間に配される前に、接着剤塗工機(図示せず)によりホットメルト型接着剤を塗工することができる。
【0034】
そして、
図5に示すように、一対のニップロール11,11の間に、ウエスト部弾性部材5、胴回り部弾性部材6及びレッグ部弾性部材7を伸長状態で挟み込んだ帯状の外層シート31及び帯状の内層シート32を送り込んで加圧することにより、帯状シート31,32間に複数本の弾性部材5,6,7が伸長状態で配された帯状の外装体前駆体3’を形成する。この外装体前駆体3’の形成工程においては、隣り合う2本の胴回り部弾性部材6,6間において帯状の外層シート31と帯状の内層シート32とを接合する複数の接合部を、凸ロール12とこれに対応するアンビルロール13等の接合手段を用いて形成する。その後、必要に応じて、弾性部材プレカット手段(図示せず)を用いて、後述する吸収性本体2を配する位置に対応させて、複数本の胴回り部弾性部材6及び複数本のレッグ部弾性部材7を押圧して、収縮機能が発現されないように個々複数個に分断する。前記弾性部材プレカット手段としては、例えば、特開2002−253605号公報に記載の複合伸縮部材の製造方法に用いる弾性部材分断部等が挙げられる。
【0035】
次いで、
図6に示すように、別工程で製造された吸収性本体2に予めホットメルト接着剤等の接着剤を塗工し、該吸収性本体2を90度回転させて、帯状の外装体前駆体3’を構成する内層シート32上に間欠的に供給して固定する。引き続き、同図に示すように、吸収性本体2が配置された帯状の外装体3におけるレッグ部弾性部材7で環状に囲まれた環状部の内側にレッグホールLO’を形成する。このレッグホール形成工程は、ロータリーカッター、レーザーカッター等の従来からこの種の物品の製造方法における手法と同様の手法を用いて実施することができる。
【0036】
次いで、こうして製造された帯状の外装体3に対して、
図6に示すように、レーザー式接合装置20を用いてレーザー光を照射して、連続した端縁1At,1Btを形成して外装体3を得る。レーザー式接合装置20は、
図6に示すように、矢印A方向に回転駆動される中空の円筒ロール23と、円筒ロール23の中空部に配され、円筒ロール23の周面部を形成する円筒状の支持部材21に向けてレーザー光30を照射する照射ヘッド35と、無端状の加圧ベルト24(押さえ部材)を備えたベルト式加圧装置26とを備えている。
【0037】
レーザー式接合装置20は、支持部材21(円筒ロール23の周面部)と加圧ベルト24との間隔を増減調整できる間隔調整機構(図示せず)を有し、該間隔の調整により、支持部材21と加圧ベルト24とによって、帯状の外装体3に加える圧力を適宜調整することができる。
【0038】
支持部材21は、円筒ロール23の周面部(被加工物との当接部)を形成しており、円筒ロール23の回転軸方向両端部を形成する一対の環状の枠体22,22間に挟持固定されている。支持部材21は、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、銅等の金属材料又はセラミックス等の耐熱性を有する材料からなる。
【0039】
支持部材21は、レーザー光が通過可能な光通過部(図示せず)を有している。光通過部は、支持部材21を厚み方向に貫通するスリット状の開口部(図示せず)からなる。開口部は、その長手方向を、帯状の外装体前駆体3’の搬送方向Aと同方向、より具体的には、円筒ロール23の回転方向と同方向に一致させて、円筒状の支持部材21に形成されている。支持部材21は、開口部ではレーザー光を通過させる一方、開口部以外の部分ではレーザー光を通過(透過)させない。支持部材21に開口部を形成する方法としては、環状の枠体22の周長と同じ長さの単一の環状部材からなる支持部材21の所定箇所にエッチング、パンチング、レーザー加工等により開口部を穿設する方法が挙げられる。
【0040】
ベルト式加圧装置26は、無端状の加圧ベルト24(押さえ部材)及び該加圧ベルト24が架け渡された状態で回転する3本のロール25a,25b,25cを備えている。ロール25a,25b,25cは駆動ロールでもよく、円筒ロール23に連れ回りする従動ロールでもよい。加圧ベルト24は、ロール25a,25b,25cのいずれか1以上を回転駆動として、又は円筒ロール23と連れ回りして、円筒ロール23(支持部材21)と同速度で移動する。支持部材21及び加圧ベルト24は、空冷、水冷等により温度を所定の温度範囲に維持することが好ましい。
【0041】
加圧ベルト24(押さえ部材)としては、加工時に発生する熱に耐え得る耐熱性を有する金属又は樹脂製のベルトを用いることができ、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料からなるものを用いることができる。また、加圧ベルト24としては、通常、被加工物である帯状の外装体前駆体3’に対して照射されるレーザー光の透過性を有しないものが用いられる。しかし、透過性を有するものを用いることもできる。
【0042】
図6に示すように、中空の円筒ロール23の中空部には、該円筒ロール23の周面部を形成する支持部材21に向けてレーザー光30を照射する照射ヘッド35が設けられている。照射ヘッド35は、レーザー光30を自在に走査するガルバノスキャナ(モータ軸にミラーが付いた装置)であり、レーザー光30を円筒ロール23の回転軸と平行な方向に進退させる機構、レーザー光30が支持部材21上の外装体前駆体3’に当たる位置(照射点)を円筒ロール23の周方向に移動させる機構、及び円筒ロール23の周面上でレーザー光30のスポット径を一定にする機構等を備えている。レーザー照射機構は、このような構成を有することによって、レーザー光30の照射点を、円筒ロール23の周方向及び該周方向と直交する方向の両方向に任意に移動させることができる。連続した端縁1At,1Btを同時に形成する観点からは、照射ヘッド35を2台用い、各照射ヘッド35からレーザー光30を同時に外装体前駆体3’に向けて照射することが好ましい。そのほかに、照射ヘッド35を1台用いて、照射ヘッドを外装体前駆体3’の腹側もしくは背側部どちらか一方に振ってレーザー光30を照射した後、もう一方の部分へ照射ヘッドを振りレーザー高30を照射することもできる。
【0043】
図6に示すように、帯状の外装体前駆体3’は、図示しない案内ロール等によって、所定のテンションが掛けられた状態で、矢印A方向に回転駆動される円筒ロール23の周面部を形成する支持部材21の外面上に導入され、該支持部材21に巻き掛けられるようにして該円筒ロール23の回転によりその周方向に所定距離搬送された後、図示しない導出ロール及びニップロール等によって該支持部材21から離れる。このように、帯状の外装体前駆体3’を、円筒ロール23の周面部を形成する支持部材21に所定のテンションで巻き掛けかつ加圧ベルト24によって圧接するようにして搬送することにより、外装体前駆体3’における支持部材21と加圧ベルト24とに挟まれた部分及びその近傍は、レーザー光の照射による分断前からその厚み方向に加圧(圧縮)された状態となる。このため、外装体前駆体3’が不織布を含む場合等に、該外装体前駆体3’をより効率的に圧縮させることができ、結果として、斯かる圧縮中の外装体前駆体3’に対してレーザー光を照射して、その両側部を分断したときに、その分断された部分を構成する複数枚のシート(外装体前駆体3’)の切断縁部どうしをより確実に融着させることが可能となり、端縁1At,1Btの融着強度の向上が図られる。
【0044】
なお、外装体前駆体3’は、その内層シート32上に吸収性本体2が載置されているので、厚みが均一となっていない。したがって、厚みの大きな部材である吸収性本体2が外装体前駆体3’を加圧するときの妨げになる場合がある。そこで、外装体前駆体3’に対して効果的な加圧を施す観点から、支持部材21の表面に、吸収性本体2が嵌まり込む凹部を設けておき、吸収性本体2が外装体前駆体3’を加圧することを妨げないようにしてもよい。
【0045】
図6に示す実施形態においては、外装体吸収性本体2が外装体前駆体3’を加圧するときの妨げを連続搬送しつつ、その一方の面を、円筒ロール23の周面部を形成しかつレーザー光30が通過可能なスリット状の開口部(図示せず)を有する支持部材21の外面に当接させ、支持部材21と加圧ベルト24(押さえ部材)とによって加圧状態となった外装体吸収性本体2が外装体前駆体3’を加圧するときの妨げに対して、支持部材21側から開口部を介してレーザー光30を照射することにより、外装体吸収性本体2が外装体前駆体3’を加圧するときの妨げの両側部を分断するのと同時に、その分断によって生じた前記加圧状態にある複数枚のシートの切断縁部どうしを融着させて、端縁1At,1Btを形成する。これによって、外装体前駆体3’から外装体3が得られる。外装体前駆体3’の搬送方向に沿う左右の側部は、レーザー光30の照射によって外装体3から分離し、トリムとして廃棄される。
【0046】
図7は、レーザー式接合装置20を用いて帯状の外装体前駆体3’を分断するのと同時に融着部40からなる端縁1At,1Btを形成する様子を説明する図である。
図7(a)には、帯状の外装体前駆体3’のレーザー光30による分断予定部分3C(端縁1At,1Btの形成予定部位)及びその近傍が模式的に示されている。図示の態様における外装体前駆体3’の分断予定部分3Cは、分断前の外装体前駆体3’における搬送方向Aに沿った左右の側縁から幅方向内方に所定の距離を隔てた位置である。この位置は、分断前の外装体前駆体3’における左右の側縁から幅方向内方に5mm〜100mm隔てた位置とすることができる。斯かる分断予定部分3Cは、外層シート31、内層シート32の2枚のシートが重ねられた2層構造部分となっている。
【0047】
帯状の外装体前駆体3’における2層構造の分断予定部分3Cにおいて、外装体前駆体3’の一方の面3a(支持部材21との当接面)を構成するシート(外層シート31及び内層シート32)は、いずれか1枚又はすべてが、レーザー光30を吸収して発熱するシートである。図示の態様においては、分断予定部分3Cを構成する2枚のシート31,32のすべてが、レーザー光30を吸収して発熱するシート(不織布)である。また、分断予定部分3C及びその近傍における互いに重なり合う外層シート31と内層シート32と間は、接着剤によって接合されていない。
【0048】
帯状の外装体前駆体3’は、
図7(b)に示すように、一方の面3aが支持部材21に当接しかつ分断予定部分3C(端縁1At,1Btの形成予定部位)がスリット状の開口部27上に位置するように、矢印A方向に回転する支持部材21上に導入されるとともに、他方の面3bに加圧ベルト24が押し付けられることによって、矢印A方向に搬送されつつ厚み方向に加圧(圧縮)される。そして、斯かる搬送中かつ加圧状態の分断予定部分3Cに対して、支持部材21側から開口部27を介してレーザー光30が照射される。前述したように、レーザー光30の照射点は、円筒ロール23の周面内において任意に移動可能に構成されており、開口部27の形状に追従して移動するように設定されているので、該開口部27上に位置する分断予定部分3Cには、外装体前駆体3’の搬送中にレーザー光30が一定時間連続的に照射される。
【0049】
2層構造の分断予定部分3Cにレーザー光30が照射されると、該分断予定部分3Cに存するシート31,32の形成材料(繊維等)は、レーザー光30の直射による発熱によって気化して消失し、該分断予定部分3Cの近傍に存する該形成材料は、レーザー光30によって間接的に熱せされて溶融する。その結果、
図7(c)に示すように、2層構造の分断予定部分3Cが溶断されて、帯状の外装体前駆体3’の搬送方向Aに沿う左右の側部が所定幅で切り分けられる形で、該外装体前駆体3’が分断されるのと同時に、その分断によって生じた該枚葉のシート積層体における2枚のシート31,32の切断縁部どうしが融着する。これらの切断縁部どうしは、それぞれ、その形成前(レーザー光30の照射による外装体前駆体3’の分断前)から、支持部材21と加圧ベルト24とに挟まれることによって加圧状態(圧縮状態)とされていたものである。図示の態様の方法によれば、このように、一回のレーザー光の照射で、帯状の外装体前駆体3’の分断と、その分断によって生じた加圧状態にある外装体3の切断縁部どうしの融着とを同時に実施でき、おむつ1を効率良く製造することができるという利点がある。
【0050】
以上のレーザー光30の照射によって、帯状の外装体前駆体3’から、帯状の外装体3が製造されるとともに、搬送方向に沿った左右の側部がトリムT(
図7(c)参照)として廃棄される。したがって外装体3は、レーザー光30の照射前の外装体前駆体3’に比べて幅が若干狭くなる。シート31,32の切断縁部は、レーザー光30の照射中及び照射終了直後は、発熱して溶融状態となっているが、レーザー光30の照射によって外装体3とトリムTとが切り離された状態の該外装体3は、支持部材21と加圧ベルト24とによる加圧状態が保持されたまま、照射終了後からは外気によって速やかに冷却されて固化し、該切断縁部の形成材料(繊維等)が溶融一体化した融着部40となる。必要に応じ、吸引装置、排気装置等の公知の冷却手段を用いてシート31,32の切断縁部を強制的に冷却し、融着部40の形成を促進してもよい。
【0051】
以上の工程においては、外装体前駆体3’における一方の側から、具体的には内層シート32の側からレーザー光30が照射されることで、融着部40が形成される。したがって、融着部40が形成された腹側部1A及び背側部1Bは、レーザー光30の照射面である内層シート32の面が肌対向面となっている。こうすることで、装着状態でのおむつ1の装着感を高めることができる。この理由は次のとおりである。外装体前駆体3’の一方の面側からレーザー光30を照射して融着部40を形成すると、該融着部40の形状は、先に述べた
図4及び
図7(c)に示すとおりとなる。しかしレーザー光30の照射条件等に起因して、場合によっては、レーザー光30の照射面と反対側の面に、樹脂の溶融及び固化に起因する突起が意図せず形成される場合がある。そのような突起を着用者の身体に向くようにおむつ1を装着した場合には、該突起が着用者の肌に刺激を与え、そのことに起因して装着感が低下することがある。これに対して、レーザー光30の照射面を肌対向面とすることで、意図せず生じた突起がおむつの外方を向くことになり、着用者に無用の刺激を与えなくても済むようになる。
【0052】
レーザー光30について説明すると、帯状の外装体前駆体3’に照射するレーザー光30としては、外装体前駆体3’を構成するシート(外層シート31、内層シート32)に吸収され該シートを発熱させる波長のレーザー光を用いる。ここで、「外装体を構成するシート」は、外装体の一方の面(支持部材21との当接面)を構成するシート(例えば前述した態様では外層シート31)に限定されず、外装体を構成するシートであればどれであってもよい。外装体に照射するレーザー光が、該外装体を構成する個々のシートについて、該シートに吸収されて該シートを発熱させる波長であるか否かは、シートの材質と、使用するレーザー光の波長との関係で決まる。外装体を構成するシートが、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品(サニタリー用品)の製造に汎用される合成樹脂製の不織布やフィルムである場合、レーザー光としては、CO
2レーザー、YAGレーザー、LDレーザー(半導体レーザー)、YVO
4レーザー、ファイバーレーザー等を用いることが好ましい。また、外装体を構成するシートが、合成樹脂として、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等を含む場合、該シートに吸収され該シートを良好に発熱させ得る波長としては、例えば、8.0μm以上15.0μm以下を用いることが好ましく、高出力のレーザー装置が存在するCO
2レーザーの発振波長の9.0μm以上11.0μm以下を用いることが特に好ましい。レーザー光のスポット径、レーザー出力等は、外装体を構成するシートの材質や厚み等を考慮して適宜選択することができる。
【0053】
次いで
図8に示すとおり、帯状の外装体3をその幅方向(外装体3の搬送方向と直交する方向)に折り畳む。より具体的には、外装体3を吸収性本体2と共にその幅方向に2つ折りする。こうして、おむつ連続体10が得られる。得られたおむつ連続体10は、サイドシール部の形成予定位置にヒートシール加工が施されて、ヒートシール部4’が形成される。ヒートシール加工は、サイドシール部の形成予定部位を加熱下に加圧状態にする加熱加圧工程によって行われる。次いでヒートシール部4’を、その幅方向の中央部において、おむつ1の長手方向Xに沿って切断することで、該ヒートシール部4’からサイドシール部4を形成して、おむつ連続体10から個々のおむつ1が得られる。なお、サイドシール部は、ヒートシール加工で形成することに限られず、他の方法、例えばサイドシール部の形成予定位置にレーザー光を照射することによって、溶断して形成することもできる。
【0054】
以上の製造方法では、レーザー光30の照射によって帯状の外装体前駆体3’を分断するのと同時に、融着部40を形成して端縁1At,1Btを製造したが、該融着部40を有する端縁1At,1Btは、これ以外の方法で製造することもできる。例えば、帯状の外装体前駆体3’における搬送方向Aの両側部を、加熱下に加圧して溶断させることで、目的とする融着部からなる端縁1At,1Btを有する外装体3を製造することができる。あるいは、帯状の外装体前駆体3’における搬送方向Aの両側部を、加熱下に加圧するヒートシール加工によって、該搬送方向Aに延びるヒートシール部を形成し、次いで該ヒートシール部の一部を該搬送方向に沿って切断して、該ヒートシール部が所定の厚みT(
図4参照)を有するようにしてもよい。
【0055】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態は、本発明をパンツ型使い捨ておむつに適用した例であるが、このおむつに代えて展開型のおむつにも本発明を同様に適用することができる。
【0056】
また、前記実施形態にパンツ型使い捨ておむつ1は、外装体3を構成する外層シート31及び内層シート32が、腹側部1Aから背側部1Bにわたる単一のシートから構成されていたが、これに代えて、例えば
図9に示すとおり、外装体3を、腹側部用外装体131、背側部用外装体132及び股下部用外装体133の3部材から構成し、これらを互いに接合することで、外装体を形成してもよい。
図9に示す腹側部用外装体131及び背側部用外装体132は、2枚のシート134,135間に、幅方向に延びる弾性部材136が長手方向に間隔を置いて複数本配置された状態になっているものである。弾性部材136は、伸長状態で固定されていてもよく、あるいは非伸長状態で固定されていてもよい、弾性部材136が非伸長状態で固定されている場合には、該弾性部材136を挟む2枚のシート134,135には、伸長可能な加工、例えば延伸加工が施されていることが好ましい。そのような延伸加工を施す方法は、例えば特開2008−179128号公報に記載されている。
【0057】
また、おむつの外装体における端縁域は、前記の実施形態ではウエスト部弾性部材を備えるものであったが、おむつの着用対象者に応じた具体的な用途によっては、該端縁域がウエスト部弾性部材を有していなくてもよい。
【0058】
また、おむつの外装体は、前記の各実施形態では、腹側部、背側部及び股下部に配置されていたが、これに代えて股下部には外装体を配置せず、腹側部及び背側部にのみ外装体を配置してもよい。この形態の場合、腹側部及び背側部として、例えば幅方向に伸縮性を有する弾性ベルトを用いることができる。
【0059】
更に、上述した形態を有する端縁は、腹側部及び背側部の双方に形成することを要せず、腹側部及び背側部のいずれか一方にのみ形成してもよい。
【0060】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の使い捨ておむつを開示する。
<1>
長手方向及びそれに直交する幅方向を有し、長手方向の一方の側に、着用時に着用者の腹側に位置する腹側部を備え、かつ長手方向の他方の側に、着用者の背側に位置する背側部を備える使い捨ておむつにおいて、
腹側部又は背側部における長手方向端部域が、複数枚のシートの積層構造から構成されており、該端部域において幅方向に延びる端縁が、複数枚の該シートが融着してなる融着部からなり、
融着部の厚みが、該融着部を構成する複数枚の前記シートの個々の厚みの総和よりも小さくなっている、使い捨ておむつ。
【0061】
<2>
腹側部及び背側部の両方が、複数枚のシートの積層構造から構成されており、
腹側部及び背側部における前記融着部が、それぞれ別個に形成されている前記<1>に記載の使い捨ておむつ。
<3>
腹側部又は背側部における前記端縁から長手方向の内方に距離を隔てた位置に、幅方向に延びる弾性部材が、複数枚の前記シートの間に配されており、
前記端縁と前記弾性部材との間に、該弾性部材を挟む2枚の前記シートどうしを固定する接着剤が存在していない前記<1>又は<2>に記載の使い捨ておむつ。
<4>
複数枚の前記シートの厚み方向に沿って、長手方向にわたる前記端縁の断面を観察したときに、尖鋭部が観察されない前記<1>ないし<3>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<5>
前記端縁の断面を観察したときに、二辺の交わる角度が鋭角である突起が観察されないものである前記<4>に記載の使い捨ておむつ。
<6>
融着部の幅に対する厚みの比である厚み/幅の値が1以上である前記<1>ないし<5>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<7>
融着部の幅に対する厚みの比である厚みT/幅Wの値が1.2以上である前記<6>に記載の使い捨ておむつ。
【0062】
<8>
融着部の幅に対する厚みの比である厚みT/幅Wの値が、4以下、特に3.5以下である前記<5>又は<6>に記載の使い捨ておむつ。
<9>
吸収性本体と、おむつの外面を形成する外装体とを備え、
前記外装体は、帯状の外装体前駆体における搬送方向の両側部を、加熱下に加圧して溶断させることで、前記融着部からなる前記端縁が形成されたものである前記<1>ないし<8>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<10>
吸収性本体と、おむつの外面を形成する外装体とを備え、
前記外装体は、帯状の外装体前駆体における搬送方向の両側部を、加熱下に加圧するヒートシール加工によって、該搬送方向に延びるヒートシール部を形成し、次いで該ヒートシール部の一部を該搬送方向に沿って切断して、該ヒートシール部が所定の厚みを有するようにしたものである前記<1>ないし<8>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<11>
吸収性本体と、おむつの外面を形成する外装体とを備え、
前記外装体は、帯状の外装体前駆体における搬送方向の両側部に、レーザー光を照射することで形成されたものである前記<1>ないし<8>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<12>
前記融着部が、複数枚の前記シートの積層構造に、一方の面からレーザー光を照射することで形成されたものである前記<1>ないし<8>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<13>
前記融着部が形成された腹側部又は背側部は、レーザー光の照射面が肌対向面となっている前記<12>に記載の使い捨ておむつ。
<14>
照射ヘッドを2台用い、各照射ヘッドからレーザー光を同時に前記外装体における前腹部及び背側部の端縁に向けてそれぞれ照射し、連続した端縁を形成する前記<12>又は<13>に記載の使い捨ておむつ。
<15>
照射ヘッドを1台用いて、照射ヘッドを外装体前駆体の前腹部及び背側部のどちらか一方に振ってレーザー光を照射したのち、もう一方の部分へ照射ヘッドを振りレーザー光を照射し、連続した端縁を形成する前記<12>又は<13>に記載の使い捨ておむつ。
【0063】
<16>
前記融着部は、非肌対抗面に向けて突起がでている前記<1>ないし<15>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<17>
腹側部又は背側部における長手方向端部域に、幅方向に延びる弾性部材が、複数枚の前記シートの間に配されており、それによって腹側部又は背側部は、幅方向に沿って伸縮可能になっており、
腹側部又は背側部を幅方向に沿って伸縮させたときに、前記融着部がその伸縮に呼応して変形可能になっている前記<1>ないし<16>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<18>
吸収性本体と、おむつの外面を形成する外装体とを備え、
前記外装体は樹脂材を含み、該樹脂材を主成分として形成されている前記<1>ないし<17>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<19>
吸収性本体と、おむつの外面を形成する外装体とを備え、
腹側部における外装体の長手方向に沿う左右両側縁部と、背側部における外装体の長手方向に沿う左右両側縁部とが接合されて一対のサイドシール部が形成されており、
前記融着部はおむつに形成されている一方のサイドシール部から他方のサイドシール部までにわたって形成されている前記<1>ないし<18>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<20>
前記融着部に断続部分が実質的に存在していない前記<1>ないし<19>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
【0064】
<21>
前記融着部を構成する各シートの厚みの総和をTtとしたとき、該厚みの総和Ttに対する前記融着部の厚みTの比率であるT/Ttの値が、2以下、特に1.5以下である前記<1>ないし<20>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<22>
T/Ttの値が0.05以上、特に0.1以上である前記<1>ないし<21>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<23>
前記融着部の厚みが、該融着部を構成する個々のシートのうちのいずれか一つのシートの厚みよりも大きくなっている前記<1>ないし<22>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<24>
前記融着部の厚みが、該融着部を構成する個々のシートの厚みのいずれよりも大きくなっている前記<1>ないし<13>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<25>
前記融着部の厚みが0.05mm以上、特に0.1mm以上である前記<1>ないし<24>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
【0065】
<26>
前記融着部の厚みが5mm以下、特に3mm以下である前記<1>ないし<24>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<27>
前記融着部の幅が0.05mm以上、特に0.1mm以上である前記<1>ないし<26>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<28>
前記融着部の幅が1mm以下、特に0.7mm以下であるいずれか1に記載の使い捨ておむつ前記<1>ないし<27>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<29>
前記外装体の厚み方向に沿って前記融着部を縦断面視した場合、該融着部の外縁が、おむつの長手方向に沿う内方に向かって凸の弧状をなしている前記<1>ないし<28>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<30>
前記融着部は、前記外装体の厚み方向に沿った中央域の厚みが最も大きく、該中央域から側方に向かうに連れて厚みが漸次小さくなっている前記<1>ないし<29>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<31>
前記融着部は、前記外装体の厚み方向に沿った断面が三日月状又は半月状に形成されている前記<1>ないし<30>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<32>
前記使い捨ておむつは、腹側部の長手方向に沿う左右両側縁部と、背側部の長手方向に沿う左右両側縁部とが接合されて、一対のサイドシール部、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部が形成されている、パンツ型おむつであり、
前記融着部は、前記ウエスト開口部の端縁を形成している前記<1>ないし<31>のいずれか1に記載の使い捨ておむつ。
<33>
前記融着部は一方の前記サイドシール部から他方の前記サイドシール部までにわたって形成されている前記<32>に記載の使い捨ておむつ。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0067】
〔実施例1〕
図1ないし
図4に示す構成のパンツ型使い捨ておむつを、
図5ないし
図8に示す方法で製造した。外層シートはPET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)樹脂の繊維からなる(繊度3.0dtex)、坪量50g/m
2の伸縮不織布から構成した。内層シートは、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PE(ポリエチレン)樹脂の繊維からなる(繊度2.6dtex)、坪量18g/m
2のスパンボンド不織布から構成した。レーザー光の光源としては、CO
2レーザーを用いた。得られたおむつにおける端縁1At,1Btを構成する融着部の断面形状は
図4に示すとおりであった。融着部の厚みT及び幅Wは以下の表1に示すとおりであった。融着部を構成する各シートの厚みも同表に示してある。
【0068】
〔実施例2〕
実施例1において、レーザー光の照射による融着部の形成に代えて、ヒートシール溶断によって融着部を形成した。溶断の条件は、FUJI IMPULSE社製の商品名「AUTO SEALER」を用いて、加熱設定7、冷却設定9、クリアランス設定標準で、3回同じ位置にシールをした。融着部の厚みT及び幅Wは以下の表1に示すとおりであった。
【0069】
〔実施例3〕
実施例1において、レーザー光の照射による融着部の形成に代えて、ヒートシールによってヒートシール部を形成し、形成されたヒートシール部を裁断することで融着部を形成した。融着部の厚みT及び幅Wは以下の表1に示すとおりであった。
【0070】
〔比較例1〕
本比較例では、レーザー光の照射による融着部の形成を行わずにおむつを製造した。このおむつにおける腹側部及び背側部の端縁は、外層シート及び内層シートを吸収性本体側に折り返した折り返し部から構成されていた。したがって、腹側部及び背側部の端部域は、合計5枚のシートの積層構造になっていた。折り返し部分は、ホットメルト接着剤で接合した。
【0071】
〔比較例2〕
本比較例でも、レーザー光の照射による融着部の形成を行わずにおむつを製造した。このおむつにおいては腹側部及び背側部を構成する各シートをホットメルト接着剤で接着し、接着箇所を幅方向にわたってカッターによって裁断した。したがって、端縁では外層シート及び内層シートの2枚のシート間がホットメルト接着剤で接合されて封止状態になっていた。
【0072】
〔比較例3〕
本比較例は、実施例3において、ヒートシール部を形成した後に、該ヒートシール部の裁断を行わなかった例である。つまり、端縁の融着部は、ヒートシールしたままの状態になっていた。融着部の厚みT及び幅Wは以下の表1に示すとおりであった。
【0073】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られたおむつについて、腹側部及び背側部の端部域の通気性、曲がりやすさ、柔らかさ、口開き防止性、及び伸縮追従性を以下のとおりに評価した。その結果を以下の表1に示す。
【0074】
〔通気性〕
KES−F8―AP1 AIR PERMEABILITY TESTER(KATO TECH社製)に30mm×30mm以上にカットしたサンプルを挟み、融着部以外の箇所の通気抵抗(R)の測定を行った。サンプルは、腹側部又は背側部から端部域と端縁が含まれるようにカットし、腹側部及び背側部のそれぞれの外装体において、融着部を避けて、重なっている複数枚をすべて合わせて測定した。得られた値を以下の式にあてはめ、通気度(S)への換算を行った。測定はサンプル3つについて行い、平均を求めた。
S=12.5/R
【0075】
〔曲がりやすさ〕
所定のサンプルの端部域の製品X方向が折れ曲がり線となるように、両手で5cm程度間隔をあけ、その間にサイドシール部がないように持ち曲げた時の曲がりやすさを、官能評価で5点満点で、女性5名に評価してもらった時の平均点を計算した。それぞれのサンプル1枚ずつについて点数付を行った。また点数付は各個人の絶対評価で行った。
【0076】
〔柔らかさ〕
所定のサンプルの端縁部分の柔らかさを、女性5名に端部を人差し指で製品Y方向になぞるように弱い力で撫でてもらい柔らかさの評価をした。そのときの柔らかさを5点満点で、女性5名に評価してもらい平均点を計算した。それぞれのサンプル1枚ずつについて点数付を行った。また点数付は各個人の絶対評価で行った。
【0077】
〔口開き防止性〕
口開き防止性は、ウエスト端部のウエストゴムを挟んでいる2層の不織布の剥離強度の最大値を測定することで評価した。ウエスト端部を幅30mm、長さ50mmでカットし、15mm程度2層間を予め剥がし、2層のそれぞれをORIENTEC社製、商品名「RTC―1150A TENSILON」の上下のチャックに挟み、300mm/sで引っ張った時の剥離強度の最大値を測定した。測定はサンプル3つについて行い、平均を求めた。なお、測定サンプルとして、長さが50mmに満たない場合はチャック間距離を狭めて測定することができる。
【0078】
〔伸縮追従性〕
伸縮時シートの伸縮にウエスト部の端部が追従するかどうかを目視で評価した。収縮によって生じる皺の波の数を、ウエスト弾性部材がある領域と、ウエスト部の端縁部とで比較した。具体的には、サイドシール部を除いた任意の幅30mmの箇所を選んだ。その範囲のウエスト弾性部材による波の数(A)と、端縁部の波の数(B)を数え、B/A×100の値(%)を求めた。この測定を、それぞれのサンプルについて行った。B/A×100は、その値が100%に近いほど、伸縮追従性が良好であることを意味する。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例のおむつは、通気性が高く、曲がりやすく、柔らかさであり、口開き防止性及び伸縮追従性に優れたものであることが判る。これに対して、外層シート及び内層シートを折り返して端部域を形成した比較例1のおむつでは、端部域を構成するシートの枚数が5枚と多くなってしまったので、通気性が低下し、また曲がりにくいものとなってしまった。端部域をホットメルト接着剤で封止した比較例2のおむつも、ホットメルト接着剤の使用に起因して通気性が低下し、また曲がりにくいものとなってしまった。ヒートシール部のみで融着部を形成した比較例3では、ヒートシール部の厚みが大きくなり、そのことに起因して曲がりにくく、また柔らかさに劣るものとなってしまった。更に、伸縮追従性も低かった。